2024年12月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 1,229 100.0 66 100.0 5.4

事業内容

3【事業の内容】

 当社は、AIを活用したレコメンド技術(※1)及びそれをベースとしたAIマーケティングサービス事業を行っております。

 

当社が所属するデジタルマーケティング領域におけるECサイト(※2)運営者の課題は、顧客満足度向上、リピート率向上、売上増加です。変化の激しい顧客ニーズに対応し、売上に繋げるため、個別顧客の好みに応じてパーソナライズなコンテンツを提供するレコメンドサービスが活用されています。

レコメンドサービスはパーソナライゼーション(※3)の一環であり、顧客のウェブサイト上やPOSなどのチャネルから閲覧や購買といった顧客行動データとして取り込み、AI技術を用いて、自動的に個別顧客の次の行動を予測し提示することで、その顧客が欲している商品や情報をリアルタイムに取得し、顧客満足を提供します。

当社は、顧客企業が自らの顧客を知り、顧客に対して最大の価値をすべてのタッチポイント(※4)においてリアルタイムで提供できるように、AI技術をベースに企業のマーケティングを支援します。

 

当社のサービスの特徴は、レコメンドエンジン「アイジェント」の活用によるリアルタイム解析とパーソナライズ・ターゲティングです。

 

当社が提供する主なサービスは以下のとおりです。

 

「アイジェント・レコメンダー」

 当社独自のリアルタイム・レコメンドサービスです。サイトに訪れるユーザーの行動データをリアルタイムに取得・解析して、その時点における各ユーザーの嗜好に合わせたおすすめ商品やコンテンツを顧客のサイトやアプリ内といった様々なタッチポイントで表示することができるサービスです。また、独自のリアルタイム・ユーザー動線分析技術により、単純な商品軸のレコメンデーションに比べ、より一人一人の嗜好に合わせたレコメンデーションが可能で、サービス・ドミナント・ロジックを強力に支援します。

 当社が提供する管理画面とリリース後のレポーティングサービスにより、費用対効果を明確にすることができます。

 当社は、顧客企業の投資対効果を最大化するため、成果報酬型料金体系を主軸としております。この料金体系では、提供するサービスによる成果に対してのみ料金が発生するため、顧客企業はリスクを最小限に抑えつつ、費用対効果の高いマーケティング活動を展開できます。さらに、顧客企業の多様なニーズに対応するため、ページの表示回数に基づくPVベース型料金体系も提供しております。この柔軟な料金体系により、顧客企業は自社のマーケティング戦略や予算に応じて最適なプランを選択できます。

 

「レコガゾウ」

 配信するHTMLメール(※5)内にタグ(※6)を設置することで、ユーザーがメールを開封した時点で、そのユーザーの嗜好にマッチしたレコメンド結果をリアルタイムで抽出して表示することができる、リアルタイム・レコメンドメールサービスです。従来のレコメンドメールでは、レコメンドエンジンで生成されたレコメンド結果をメール配信システムに連携させる必要があり、システム構築の複雑さや導入コストの高さが課題となっておりました。また、リアルタイム配信が困難であるため、メール開封時に商品が在庫切れとなる等のタイムラグによる顧客体験の悪化も課題として存在しておりました。レコガゾウはこれらの課題を解消し、より簡易かつリアルタイム性の高いレコメンドメール配信を実現します。本サービスの基本的な課金体系は、配信リクエスト数に応じた従量課金制を採用しております。

 

「ホットビュー」

 当社の「アイジェント・レコメンダー」のレコメンドエンジンを基盤とするレコメンド広告サービスであり、ユーザーの嗜好に合致する商品を動的に表示します。これにより、サイト運営者は自社サイトへの関心が高いユーザーを効果的に誘導し、購入、問い合わせ、資料請求といったコンバージョンを促進することが可能となります。

 本サービスは、他社DSP(※7)と連携して利用することが可能です。個々のエンドユーザーの嗜好に合わせてパーソナライズされたレコメンド広告バナーの生成機能と、DSPが提供する高度なターゲティング機能を組み合わせることで、インターネット広告の効果を最大化します。課金体系は、成果報酬型と広告リクエスト数に応じた従量課金制の二種類があり、顧客のニーズに合わせて最適なプランを選択いただけます。

 

「プロスペクター」

 購買履歴等のユーザー行動データを取得・解析し、特定の商品の購買意欲が高いと予測される顧客層を抽出するサービスです。従来の不特定多数に向けた広告配信は、費用対効果の低下に加え、顧客の嗜好にあわない広告が表示されることでブランドからの離反が生じるリスクがありました。本サービスは、「アイジェント・レコメンダー」の機械学習技術とノウハウを応用し、年齢・性別等の属性情報に加えて、個々のユーザーの嗜好に基づく精密な分析を可能にすることで、アウトバウンド広告においても高精度なパーソナライゼーションを実現いたしました。キャンペーン配信機能とレポート機能を標準装備しており、ユーザー分析からプロモーション実行、効果測定までをワンストップで提供いたします。

 課金体系は、顧客企業のニーズに合わせて複数のプランを用意した固定料金制を採用しております。

 

[事業系統図]

用 語 解 説

 

※1 レコメンド技術

 オンラインショップなどで、利用者の好みにあった物品やサービスを推薦するための技術・手法。ショップの利用者の購入履歴や行動履歴等の情報を分析し、適切な物品やサービスを絞り込んで推薦し、顧客と消費者間のサービス・ドミナント・ロジックを強力に支援。

 

※2 ECサイト

 インターネット上で商品等を販売するウェブサイト。

 

※3 パーソナライゼーション

 顧客のウェブ閲覧行動、購買行動などの情報を基に、その顧客に最適な情報を提供すること。又はその技術。

 

※4 タッチポイント

 企業やブランドと顧客とのすべての接点のこと。企業やブランドについて顧客に何らかの印象が残るあらゆる接点が当てはまる。従業員のみでなくウェブサイト、スマートフォン、コールセンター、タブレット、広告など顧客がブランドに接するメディアも含まれる。

 

※5 HTMLメール

 HTML(HyperText Markup Language)は、ウェブページの記述やレイアウトに用いられるマークアップ言語をいい、HTMLメールとは、電子メールの本文をHTMLで記述したものを指す。マークアップ言語とは、文書の一部を「タグ」と呼ばれる特別な文字列で囲うことにより、文章の構造や、修飾情報を、文章中に記述していく記述言語をいう。

 

※6 タグ

 コンピュータで扱う文書(テキストデータ)中に埋め込む特殊な記号や文字列のこと。デザイン、レイアウト、論理構造、意味を記述する。主にHTMLやXMLといったマークアップ言語で用いられる。

 

※7 DSP

 デマンドサイドプラットフォーム(Demand-Side Platform)の略。オンライン広告において、広告主(購入者)側の広告効果の最大化を支援するツールのこと。広告枠の買い付けや配信、クリエイティブ分析(広告の認知・表現要素等の分析)までを自動で行い、最適化を行う。

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度、当社が属する国内の情報通信サービス市場においては、企業が収集するあらゆるデジタルデータを活用した業務効率化、サステナビリティ経営の実現に向けたIT環境整備とシステム更新需要が依然として高まっております。また、エンドユーザーとの接点強化など、企業成長と競争力強化を目的とするクラウドサービスや、生成AIなどのテクノロジーに対するIT投資が堅調に推移しており、大企業ではIT投資が実装段階に移行しています。

国内SaaS市場は高い成長率を維持し、国内SaaS市場は2027年度に2兆990億円(2024年度見込比6,862億円増)(注1)、DX市場は2030年度に8兆350億円(2023年度見込比4兆153億円増)(注2)の規模に達すると予想されており、当社が事業を展開している国内のEC市場規模拡大も継続しております。このような環境下において、AIクラウド型サービスのリーディングカンパニーとして当社が果たすべき役割は、重要性を増しています。

当社は2024年度を事業拡大期と位置づけ、事業の収益構造の変革を事業目標に掲げております。今後の力強い事業成長の足掛かりの実現に向け、当社のAI技術を軸として、既存事業と新領域の二つの事業を両輪とした企業活動を行っており、当事業年度における取り組み事例は次のとおりです。

既存事業においては、当社のレコメンドサービスの優位性である『高性能』を最大限に磨くことに注力してまいりました。個別クライアントにおける多様なユーザー行動に対応する、複数の新アルゴリズムを同時に開発いたしました。一部顧客への先行導入において、業界トップクラスのレコメンド精度を確認いたしました。2025年より、より多くの顧客への提供を開始する予定です。また、プライバシー保護の潮流に対応するため、世界水準のセキュリティ基準への準拠を完了いたしました。さらに、従来のレコメンドサービスにとって大きな障壁であったデータが少なくレコメンドがうまくできないというコールドスタート問題に対応した、LLM(大規模言語モデル)を活用した新機能サービス「V-レコ」をリリースいたしました。また、高性能かつコストパフォーマンスに優れた機能限定版の低価格モデル「アイジェント・レコメンダーS」を提供開始することで、多様な企業のニーズに対応できるサービスラインナップを構築いたしました。

新領域の事業においては、LLMを活用したダイレクトリクルーティング分野のサービス「レコタレント」β版を、2024年11月にリリースいたしました。さらに建設会社の課題解決を目的としてDXシステム開発に取り組み、2024年12月に納品いたしました。当初予定のスケジュールからは若干遅れがあるものの、収益基盤の強靭化に向けて複数の新領域のサービス開発に着手し、収益源の種を蒔くことができました。

既存事業の進化と新領域の二つの事業を支える人材活用戦略の一環として、従業員の健康やウェルビーイングに配慮し、組織生産性の向上を両立させるオフィスづくりを目指し、東京オフィス移転と大阪オフィスリニューアルを行いました。

このような状況のもと、当事業年度の営業収益は、主要顧客であるアパレル業界のECサイトにおいて秋冬物の需要が低迷している影響を受け、1,229,202千円(前年同期比2.2%減)となりました。想定以上の減収に加え、為替変動によるクラウドサービス利用料の増加や、次年度以降の収益源の拡大に向けた投資の結果、営業利益は65,779千円(同31.4%減)、経常利益は66,249千円(同30.7%減)、当期純利益は30,304千円(同48.7%減)となりました。

なお、当社は、レコメンデーションサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。

 

(注)1.「2024デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編/企業編」富士キメラ総研刊行

2.「ソフトウェアビジネス新市場 2024年版」富士キメラ総研

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,179,431千円となりました。

なお、当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における営業活動の結果、得られた資金は、102,736千円となりました。主な内訳は、未払金の減少額31,825千円があった一方で、税引前当期純利益の計上額50,735千円、減価償却費の計上額27,908千円及び法人税等の還付額36,989千円があったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における投資活動の結果、支出した資金は25,029千円となりました。これは、有形固定資産の取得による支出10,461千円及び差入保証金の差入による支出14,568千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における財務活動の結果、得られた資金は4,940千円となりました。主な内訳は、新株予約権の行使による株式の発行による収入5,000千円があったこと等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績は次のとおりであります。

サービスの名称

当事業年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

レコメンデーションサービス事業(千円)

1,229,202

97.8

合計(千円)

1,229,202

97.8

 (注)1.当社の事業セグメントは、レコメンデーションサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載をいたしておりません。

2.主要な販売先については、相手先別販売実績の総販売実績に対する割合がいずれも100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社の財務諸表の作成にあたり採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。

 

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

(イ)財政状態

(資産)

当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べ16,223千円増加し、1,521,525千円となりました。主な内訳は、売掛金の減少9,746千円、未収還付法人税等の減少36,224千円、ソフトウエアの減少25,638千円及び繰延税金資産の減少9,438千円があった一方で、現金及び預金の増加82,647千円及び差入保証金の増加20,866千円があったこと等によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末の負債は、前事業年度末に比べ26,039千円減少し、101,286千円となりました。主な内訳は、未払法人税等の増加15,945千円があった一方で、未払金の減少24,903千円、未払消費税等の減少9,029千円及び賞与引当金の減少8,516千円があったこと等によるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ42,262千円増加し、1,420,239千円となりました。主な内訳は、新株予約権の増加7,017千円及び当期純利益の計上による利益剰余金の増加30,304千円があったこと等によるものであります。

 

(ロ)経営成績

(営業収益)

 当事業年度の営業収益につきましては、主要顧客であるアパレル業界のECサイトにおいて秋冬物の需要が低迷している影響を受けた結果、1,229,202千円(前年同期比2.2%減)となりました。

 

(営業利益)

 当事業年度の営業費用につきましては、為替変動によるクラウドサービス利用料の増加や、次年度以降の収益源の拡大に向けた投資を行いました。その結果、想定以上の減収もあり、営業利益は65,779千円(同31.4%減)、売上高営業利益率は5.4%(前事業年度7.6%)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

 当事業年度の営業外収益は503千円(前事業年度は7千円)となりました。

これは主に還付加算金の影響によるものであります。

 この結果、経常利益は66,249千円(同30.7%減)となり、売上高経常利益率は5.4%(前事業年度7.6%)となりました。

 

(特別利益、特別損失及び当期純利益)

 当事業年度の特別損失につきましては、主にオフィス移転に伴い、固定資産除却損を12,498千円及び事務所移転費用3,016千円を計上いたしました。

 これらの結果、当期純利益は30,304千円(同48.7%減)となり、売上高当期純利益率は2.5%(前事業年度4.7%)となりました。

 

(ハ)キャッシュ・フローの状況の分析

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因

当社は、「3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、組織体制、法的規制等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社は、健全で安定した財務体質の形成に努めております。

必要な運転資金及び設備投資資金を全額自己資金で賄っており、自己資金の範囲内で安全かつ安定的な資金運用が可能と認識しております。