2025年6月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

信頼性評価事業 微細加工事業 その他
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
信頼性評価事業 3,554 88.3 1,061 86.1 29.9
微細加工事業 414 10.3 185 15.0 44.7
その他 58 1.4 -13 -1.1 -23.2

事業内容

3【事業の内容】

当社の事業につきましては、信頼性評価事業、微細加工事業及びその他事業の3つの柱で構成されております。

当社及び当社の関係会社の事業に係る位置付け及びセグメントとの関連は、次のとおりであります。なお、以下に示す区分は、セグメントと同一の区分であります。

また、当事業年度より報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。

 

(信頼性評価事業)

当事業においては、電子部品等に対する環境試験、電気試験、パワーサイクル試験等からなる信頼性評価試験、分析・故障解析、分析及びその前工程となる試料作製のための断面研磨、試験装置の設計、製造、販売等を行っております。

単なる解析業務にとどまらず、故障や不良の真因を見つけ出すための再現実験を行い、顧客の技術課題を根本から解決できる会社を志向し、企画提案力と技術力を融合した技術営業体制を構築しております。また、近年では受託試験を通じて蓄積した技術・ノウハウを活かしたパワー半導体の信頼性評価装置の開発・販売にも積極的に取組んでおります。

当社では電気自動車の開発・普及が急速に拡大すると予測される以前から電気自動車の基幹部品であるインバータの中のパワー半導体の信頼性評価試験や故障解析に取組み、実績を積み上げてきました。電子回路、ソフトウエア、水冷機構などの試験環境を自社内で開発できることから、顧客の多種多様なニーズに対応してまいりました。また、信頼性評価試験の前後において、部品や基板の実装部の解析や評価、改善提案までトータルで対応できることで、パワー半導体の信頼性評価試験において強みを有しております。

近年では、信頼性評価試験を実施するだけでなく、国際規格に基づく試験の実施から規格認証の取得まで、トータルに対応できる体制を構築しております。現在では、IPC(米国電子回路協会)やJEITA(電子情報技術産業協会)に参画し、信頼性評価試験の規格を策定する、いわゆるルールメーカーとしての活動にも力を入れております。

当事業では、顧客より試験や検査、分析、解析、加工、機器販売の役務提供の対価として収益を得ております。

 

(微細加工事業)

当事業においては、ビルドアップ基板やフレキシブルプリント基板(薄く柔らかい屈曲可能な基板)等に対する試作及び、それらの量産レーザ加工や新しい材料や最先端の材料への表面加工処理の条件出しから試作まで請け負っている表面処理技術を行っております。

スマートフォンから医療機器まで、あらゆる製品領域において、ジャンルを問わない幅広い対応力で顧客のニーズに対応してまいりました。また、顧客の要望に応えるために必要な設備を揃えることで電子部品業界の技術的なニーズに応える体制を整えてまいりました。

温湿度などの少しの環境変化で加工の仕上がりに影響が出たり、設備ごとの個体差があるなど管理が非常に難しいレーザ加工機を自社では持たずアウトソーシングする基板メーカーに対して、大ロットの量産加工から新材料のレーザ加工性評価や極短納期の試作品加工まで、多様な依頼に柔軟に対応できることが当社の強みであり、20年以上の長きに亘って事業を継続できている理由であると考えております。また、近年ではガラス基板や低誘電材など、レーザ加工が困難とされてきた素材に対しての加工やその評価を行っており、微細加工の特殊技術力を強化しております。

当事業では、顧客より加工の役務提供の対価として収益を得ております。

 

(その他事業)

当事業においては、バイオ医薬品の製造工程に使用される製品(包装材料、シリンジなど)の受託試験を行うバイオ、品質コンサルティングや技術指導を行うゼロ・イノベーションによる指導を行っております。

顧客が開発する製品は、高品質かつ高い信頼性を求められており、その実現に向けて素材等の改善提案をしております。そのために当社は、基礎実験や再現実験を繰り返し、ノウハウとデータの蓄積を地道に行ってまいりました。

当事業では、検査や指導の役務提供の対価として収益を得ております。

 

 

これらの事業に加えて研究開発部門を有しており、「オートモーティブとエネルギー」をキーワードにパワー半導体の実装関連、電池関連の信頼性についての研究開発を行っております。

・パワー半導体実装に関する研究

市場が拡大しているパワー半導体について、当社はパワー半導体の信頼性評価試験であるパワーサイクル試験受託市場での実績を持っております。その実績を活かし、当社の得意とする実装技術との融合による高信頼性品質を提供するために、次の研究開発に取組んでおります。

1)パワー半導体の接合不具合要因となる、ボイド/クラック現象の進展予測技術の研究

2)はんだ接合部などのボイド/クラックについてX線画像をもとにした画像解析ソフトの開発

3)はんだ接合部に関連する信頼性試験時間の短縮化に向けた研究

4)高温接合に適した焼結材料の評価技術の開発

・電池に関する研究

自動車をはじめ様々な電子機器やインフラ設備において、電池は重要な基幹製品となっています。当社では、長年に亘る水系電解液の研究開発で培ってきた電気化学に関する技術知見を電池の品質解析に活かすべく、キャパシタへの技術応用の試み、あるいは電池の性能判定に必要な特徴的な電気特性の抽出の研究を進めてまいりました。その実績を活かし、高度化する電池特性に関する顧客ニーズにお応えすべく、次の研究に取組んでおります。

1)液系や固体系に関わらず、電池性能試験の基本のひとつとして提唱するインピーダンス特性の測定方法確立

2)インピーダンス測定の知見を活かした、電池の寿命予測技術の開発

3)多価金属二次電池材料、フッ化物固体二次電池材料の合成、解析を通し、電池としての品質維持に必要な技術要素の抽出及び性能評価法確立

 

事業の系統図は、次のとおりであります。

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における総資産は4,346,082千円となり、前事業年度末に比べ205,351千円増加いたしました。

流動資産は2,522,985千円となり、前事業年度末に比べ371,020千円減少いたしました。これは主に「売掛金」106,319千円増加、「現金及び預金」367,757千円減少、「電子記録債権」60,745千円減少及び「仕掛品」53,362千円減少によるものであります。固定資産は1,823,096千円となり、前事業年度末に比べ576,371千円増加いたしました。これは主にパワエレテクノセンター開設に係る工事や分析・試験設備等の取得に伴う「工具、器具及び備品」272,390千円、「建物」265,608千円、「リース資産」96,255千円の増加、及び「投資有価証券」49,999千円減少によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債は1,068,995千円となり、前事業年度末に比べ84,243千円増加いたしました。

流動負債は665,933千円となり、前事業年度末に比べ23,178千円減少いたしました。これは主に分析・試験設備の取得等に伴う「未払金」109,573千円増加、「未払費用」61,759千円減少、「未払法人税等」52,741千円減少及び「1年内返済予定の長期借入金」12,500千円減少によるものであります。固定負債は403,062千円となり、前事業年度末に比べ107,422千円増加いたしました。これは主に「リース債務」76,650千円増加及び「退職給付引当金」21,915千円増加によるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産は3,277,086千円となり、前事業年度末に比べ121,107千円増加いたしました。

これは主に「当期純利益」219,807千円の計上及び剰余金の配当98,700千円によるものであります。

 

② 経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、景気回復が緩やかに進んでいると考えられます。インバウンド需要が回復し、消費は消費者マインドに弱さがみられるものの堅調な動きを見せております。もっとも、円安の長期化や中国経済の先行き懸念、ウクライナ・中東の地政学的リスク、米国関税の政策運営等、わが国経済を取り巻く世界情勢は依然として予断を許さない状況となっております。

一方、当社を取り巻く環境は、主要顧客が属する自動車業界においては、電動化推進の動きが活発になっております。環境問題に関しての脱炭素化への取組も加速しており、特に電力消費削減技術としてパワー半導体の需要が高まっております。パワー半導体は自動車やエネルギー産業での使用が拡大しており、今後も開発競争が続くと見ております。

 

このような状況で、当社は主力事業である信頼性評価事業において成長戦略に向けた拡販体制増強を図り、車載及び半導体産業を中心に顧客需要に積極的に対応してまいりました。

 

この結果、当事業年度の経営成績は、売上高4,025,193千円(前年同期比11.1%増)となりました。営業利益は主に労務費の計上により売上原価2,786,295千円(同10.5%増)を計上、給料手当、研究開発費を中心とした販売費及び一般管理費を854,111千円(同18.4%増)計上した結果、384,786千円(同0.9%増)となりました。また、経常利益は、営業外収益にて主に固定資産売却益の計上により1,403千円(同9.7%減)を計上、営業外費用にて主に支払利息の計上により1,766千円(同89.1%減)を計上した結果、384,423千円(同4.8%増)となり、投資有価証券評価損等の特別損失の影響により当期純利益は219,807千円(同18.6%減)となりました。売上高と営業利益はともに過去最高額を更新し、増収増益となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

なお、当事業年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較分析しております。

 

(信頼性評価事業)

信頼性評価事業では、パワーサイクル試験において主要顧客からの受注が好調に推移していることや顧客の内製化の動きにより、過去販売したパワーサイクル試験装置の改造案件が業績を牽引しました。信頼性試験では、顧客要望に対応した試験メニューの拡大により受注が順調に推移しました。断面研磨も引き続き順調な受注推移となっております。売上原価は成長戦略に向けた拡販体制増強により費用が膨らむも、売上総利益は増益となりました。この結果、当事業年度の経営成績は、売上高3,553,606千円(前年同期比11.2%増)、営業利益1,061,076千円(同7.8%増)となりました。

 

(微細加工事業)

微細加工事業では、レーザ加工において試作品加工が堅調な受注を獲得しております。また、当事業年度より当セグメントとなった表面処理技術においては、主要顧客の開発案件受注が好調に推移したことにより業績に寄与しました。売上原価は減価償却費が減少し、売上総利益は増益となりました。この結果、当事業年度の経営成績は、売上高413,667千円(前年同期比8.2%増)、営業利益184,725千円(同42.3%増)となりました。

 

(その他事業)

その他事業では、バイオにおいて厚生労働省案件である医療用消耗品の信頼性試験受注が好調に推移したことにより、売上高が大きく伸長しました。この結果、当事業年度の経営成績は、売上高57,919千円(前年同期比25.4%増)、営業損失13,422千円(前年同期は営業損失19,091千円)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により514,294千円増加、投資活動により738,718千円減少、財務活動により143,344千円減少の結果、前事業年度末に比べ367,768千円減少し1,370,466千円となりました。

 

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果増加した資金は514,294千円(前年同期は637,627千円の増加)となりました。これは主に「減価償却費」346,142千円及び「税引前当期純利益」314,886千円の資金の増加と、「未払費用の減少額」61,759千円、「売上債権の増加額」39,697千円及び「未払又は未収消費税等の増減額」33,843千円の資金の減少によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果減少した資金は738,718千円(前年同期は429,881千円の減少)となりました。これは主にパワエレテクノセンター開設等に伴う「有形固定資産の取得による支出」734,279千円の資金の減少によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果減少した資金は143,344千円(前年同期は431,516千円の増加)となりました。これは主に「配当金の支払額」98,363千円及び「長期借入金の返済による支出」30,000千円の資金の減少によるものであります。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

イ.生産実績

当社が提供する主要なサービスの性格上、当該記載が馴染まないことから、記載を省略しております。

 

ロ.受注実績

当社が提供する主要なサービスは、受注から売上計上までの期間が短期間であり、受注実績と販売実績に大きな乖離が生じないため、記載を省略しております。

 

ハ.販売実績

当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当事業年度

(自 2024年7月1日

至 2025年6月30日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

信頼性評価事業

3,553,606

111.2

微細加工事業

413,667

108.2

その他

57,919

125.4

合計

4,025,193

111.1

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自  2023年7月1日

至  2024年6月30日)

当事業年度

(自  2024年7月1日

至  2025年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社デンソー

631,778

17.4

597,248

14.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

② 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、売上高及び売上高営業利益率を重要な経営指標と位置づけ、各種経営課題に取組んでおります。

当社の信頼性評価事業のビジネスモデルの特徴として、固定比率の高いコスト構造となっており、売上高増が営業利益増に直結する傾向にあります。現在は積極的な投資を推進しており、その影響により売上高営業利益率は概ね同水準で推移しております。

なお、当期の売上高は信頼性評価事業の受注が堅調に推移したことにより4,025,193千円となり、売上高営業利益率は9.6%となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社の資金需要の主なものは、設備投資資金として、主要事業である信頼性評価事業に係る信頼性評価試験及び分析・故障解析に関する新しい分野を開拓するための試験設備の購入であり、運転資金として、事業を拡大するための消耗部材の購入、サービスや技術向上を目的とする人員を確保するための人件費や外注費であります。

資本の財源及び資金の流動性について、設備投資資金及び運転資金は主として自己資金で充当し、必要に応じて借入及びリースによる資金調達を実施することを基本方針としています。

当事業年度において、設備投資資金及び運転資金は自己資金を充当し、現金及び現金同等物の残高は1,370,466千円となっております。

当社は、引き続き強固な財務基盤を構築するため、有利子負債の削減に努め、健全な財務状態、安定的なフリーキャッシュ・フローの創出を図り、成長を維持するために将来必要な設備投資資金及び運転資金を調達する予定であります。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

イ.繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産については、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

ロ.固定資産の減損処理

固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討を行っておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。