事業内容
セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
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セグメント別売上構成
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セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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セグメント別利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | セグメント別 売上高 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
セグメント別 利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
---|---|---|---|---|---|
(単一セグメント) | 1,411 | 100.0 | 508 | 100.0 | 36.0 |
事業内容
3 【事業の内容】
(1) 事業の概要
当社は、「モノづくりのあり方を変え、世界を変えていく」ことをミッションに掲げ、製造業界向けに、AI技術及びIoT(注1)技術等の新しい技術を活用したサービスを提供しております。当社がサービスを提供している日本の製造業界は、グローバル化やアジアの国々を代表とする新興国の発展による「国際競争の激化」や少子高齢化に伴う「人手不足」等の構造的な課題に直面していると当社では捉えております。これらの課題に対処すべく製造業界においては生産性向上のためのAIやIoT等の新しい技術を活用したDX(注2)が強く求められていると判断しております。
当社が製造業界に提供するものは、生産性向上のソリューションとして、自社開発したプロダクトを提供する「AIシステム」及び顧客のDX推進を支援する「DXコンサルティング」の2つとなります。AIシステム及びDXコンサルティングは、以下に記載する特徴があると考えておりますが、それらは製造業に特化することでノウハウや専門性を短期間に有し、より高品質なソリューションの提供ができるように努めてきたことによります。
当社の見解では現在、製造業に向けて両ソリューションを提供している企業は国内において多くなく、当社の優位性に繋がるものと考えております。また、同一企業へ両ソリューションの導入を推進することにより、企業のDXを加速させ、一企業における収益の最大化を図っております。
[当社が提供する2つのソリューション]
なお、当社では、AIシステムを提供した顧客へはDXコンサルティングを、DXコンサルティングを提供した顧客へはAIシステムを提供することを推進しており、両ソリューションは完全に分離されるものではなく、両要素を異なるバランスで含んでいることから、経営管理上はセグメントの分離をせず、「製造業DX事業」の単一セグメントとしております。
(注) 1.IoT(Internet of Things)
IoTは、あらゆるモノをインターネット(あるいはネットワーク)に接続する技術であり、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。
2.DX(Digital Transformation)
DXは、デジタルトランスフォーメーションの略となります。デジタルトランスフォーメーションとは、企業がデジタル技術によって業務やビジネスの変革をすることを指します。
① AIシステム
(特徴)
当社は、自社のエンジニア部門においてAIシステムの企画・研究・開発を行っており、特定の顧客ごとに仕様を大幅に調整する必要がない汎用性の高いシステムを開発しています。顧客の製造ラインの製造環境及び解決したい課題に合わせて、AIシステムの提供だけでなく、撮像機器等の周辺のハードウェアと組み合わせて提供することで、顧客の製造ラインの自動化を実現しています。
従来、製造ラインの検査工程において検査員の目で行われていた良品/不良品の判定について、人の目に頼らず省力化・自動化を可能にするAI外観検査システム「Phoenix Vision/Eye」の開発・販売を行っております。
さらに当社は、顧客に対して、このようなAIシステムの販売に加えて、より高い検査精度を達成するための撮像環境を構築するために、カメラ等の撮像機器や装置・排出機構についても、組み合わせて提案・提供を行っております。
[AIシステム導入による効果]
[当社製品AIシステム「Phoenix Vision/Eye」]
[製造ラインでの運用イメージ]
(当社の強み)
a 製造業に対する豊富な知識
当社が対面している製造業の顧客にサービスの価値を訴求し販売を行うには、豊富な製造業の知識及び高い精度の実現が必要になります。製造業界においては、商談やサービス提供の過程において、高度な業界知識、製品知識及び製造工程に関する知識が求められます。当社は、製造業界出身者が多く在籍していることに加え、マニュアル化や社内教育により、製造業界出身者以外の者でも十分なパフォーマンスを発揮できるための仕組みを整えていると考えております。
なお、外観検査システムは通常1製造ラインごとの導入となり、その製造ラインでの効果が実証されることにより同一企業の別ラインへの追加導入へと繋がり、継続的な収益を見込むことが可能であると考えております。当社は工場現場の状況やデータ、解決したい課題に基づき、顧客に合わせた自動化や効率化の提案ができる点に強みがあると考えており、その実績により複数の企業で追加導入に至っております。
b 企画から導入までワンストップ対応
当社はAIシステムの開発・販売だけでなく、企画からカメラやセンサー等の撮像機器及び検査装置の製作等の提案、設置、稼働までをワンストップで提供しております。AI外観検査システムは、撮像条件により大きく検査精度が左右されるため、当社以外のAIベンダーでは、ソフトウェアのみを販売し撮像機器等については顧客側で別途調達しており、本番環境下において導入検討時と同水準の検査精度を出せない事例が多く見られます。
当社は、製造業界や画像検査領域での知見が豊富であり、ソフトウェアと撮像環境をワンストップで企画・提案・販売することにより、導入後の本番環境下でも高い検査精度を実現することが可能であると考えております。
c 自社開発のAI技術による外観検査処理
外観検査の処理技術には、従来技術であるルールベースと当社が開発しているAI技術を用いた2つが存在します。ルールベースは、人が設定した検査ルールに基づいて良品/不良品を判断することから検査基準が明確となりますが、設定には専門知識が必要なうえ、条件が複数ある場合にはその分の検査基準を事前に全て登録する必要があり、検査結果もその検査基準に完全に一致したもののみを検出します。そのため、明るさ等の環境変化に応じた設定を行うことは大変難しく、大量の製品を製造しつつ不良品の出荷をゼロとするには、例え良品であっても一定の基準を満たさない製品を歩留まりにして熟練の検査員による検査をもって良品/不良品を判断している製造現場があります。このような製造現場では、良品でありながらも歩留まりにせざるを得ないことに頭を悩ませている場面が見受けられます。
一方で、AI技術を用いた場合は、良品/不良品の画像を学習データとして与えて自己学習させていくことで特徴を自動的に抽出して判断するようになります。曖昧さや柔軟性等は、試行回数を増やせば増やすほど数値化して表現することができ精度も高められることから、熟練の検査員による官能検査が必要なケースに非常に有効です。工数削減又は歩留まりの大幅な解消が期待できると当社では考えております。
d 汎用性の高さ
AI外観検査システムの核となる基盤は、自社が開発する汎用性の高いソフトウェアであるため、特定の顧客ごとに仕様を大幅に調整する必要がなく、注文を受けてから1週間程度で導入することが可能です。操作性も容易なため、顧客側での設定調整や導入後の運用において、操作者の熟練度等に左右されません。
また、当社製品の外観検査処理にはAI技術に加え、ルールベースも搭載しております。学習データ用の良品/不良品画像を蓄積し十分に学習させるまでは、従来のルールベースで使用することも可能です。このように、汎用性の高さにより検査する商品や特徴が変わっても顧客の要望に合わせて対応が可能なため、大手製造業で同一工場に複数のラインがあっても、大きな仕様変更を行うことなく、全ラインに導入の機会があります。加えて、大手製造業であれば国内だけでも複数の工場を保有しているため、今後は、既存顧客のリピート案件の比率が高まることが予想され、獲得コストの低減に繋がると考えております。
(導入実績)
これまでの「AIシステム開発・販売」の実績は、自動車業界及び食品業界を中心に、導入してまいりました。AIシステム及びその周辺機器の販売を通じた2024年2月期の平均販売単価は、16,080千円であります。導入事例として、大手自動車メーカーにおける「部品の傷の自動検査」、大手即席麺メーカーにおける「かやくとソースの自動分類」、大手ハムメーカーにおける「生成されたハムの自動検査」等があり、人が行っていた業務の自動化を実現しています。
[外観検査自動化例]
② DXコンサルティング
(特徴)
日本の製造業界は、新興国の工業化による国際競争力の激化や少子高齢化に伴う労働人口の減少等の構造的な課題に直面していると当社では捉えております。当社は、その課題解決にDXコンサルティングが有効と考えており、AIやIoT等の新しい技術を活用した顧客のDX推進を支援するサービスを提供しております。
当社のコンサルタントが顧客のDXプロジェクトにおいて、課題設定フェーズから運用フェーズまでのプロジェクト全体に携わっております。
[サービスの内容]
(当社の強み)
当社が対面している製造業界においては、製造現場の生産性向上を目的としたDXの推進が急務となっているものの、製造業の企業にはAIやIoT等の新しい技術に精通している人材が不足しており、必要なデータがない、データが生産設備から取得できないことによってDXの推進が想定通りにいかないケースがあると当社では捉えています。
また、製造現場におけるDXには、製造業界や製造工程に対する豊富な知見が必要になる一方で、AIベンダーやDXコンサル企業に、製造業界や製造工程に対する豊富な知見を有している人材は多くなく、そのため製造現場にDXのコンサルサービスを十分なレベルで提供できる企業は多くはないと当社では想定しております。
当社は、製造業に特化してきたことにより、製造業及び製造工程における多くの知見と実績やノウハウを有することができ、顧客の生産設備からデータを取得するためのデバイスの選定から、データ取得、分析、結果を踏まえた実際の運用までを支援しています。そして、製造現場の様々な課題への解決実績を積み上げることで、より質の高いサービスを提供できるよう取り組んでおります。また、当社は、人材育成、テーマ選定、検証、開発、運用に至るまで、単なるアドバイスではなく、ハンズオンでの開発支援ができることが特徴であると考えております。
[当社が導入したソリューション]
※1 Computer Aided Engineeringの略。
設計した製品のシミュレーションや解析をコンピューター上で実施すること。
(導入実績)
これまでの「DXコンサルティング」の実績は、自動車業界及び食品業界を中心に生産工程における複数の領域で導入した他、同一企業から幅広く課題に対する相談を受け複数回の成約を獲得しています。2024年2月期のDXコンサルティングの平均販売単価は、2,019千円であります。
[事業系統図]
業績
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当事業年度における我が国経済は、米国を中心に海外経済の下振れリスクが薄らぐ中で、円安を背景とする輸出の増加、コロナ禍明けのインバウンド需要の復活等によって景気は順調に推移している一方で、資源・エネルギー価格の上昇、国内外マクロ経済におけるインフレ・金融引き締めの傾向が見られつつあり、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。
こうした経営環境の中、当社は製造業の品質検査における労働集約的作業や従来製品に代わる手段として、AIを活用した画像検査システム「Phoenix Vision/Eye」を提供してまいりました。また、製造業の生産工程の自動化のためにAI技術を活用するコンサルティングサービスを提供してまいりました。
当事業年度では、AIシステムにおいて1件あたりの受注金額が2千万円以上となる複数の大型案件を獲得した他、販売した先の同業他社への横展開の販売が実現する等、利益貢献にも繋がっております。当社設立から4期目となる当事業年度は、毎月新規ユーザー及びリピート需要の獲得が進み、累計取引社数は169社となりました(前期比66社増)。
この結果、当事業年度においては、売上高1,411,008千円(前期比128.5%増)、営業利益508,156千円(前期比690.1%増)、経常利益495,677千円(前期比681.8%増)、当期純利益330,161千円(前期比561.2%増)となり、当事業年度末の受注残高として304,819千円を来期に繰り越すことになりました。
なお、当社は、製造業DX事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。
② 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における資産合計につきましては、前事業年度末に比べ1,108,786千円増加し、1,449,901千円となりました。これは主に、当社株式上場に伴う株式の発行等の影響で現預金が944,017千円増加、売上高増加に伴い売掛金及び契約資産が134,613千円増加したこと等によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債合計につきましては、前事業年度末に比べ200,956千円増加し、452,860千円となりました。これは主に、顧客からの前受金受領による契約負債が30,661千円、業績・事業規模拡大に伴い未払法人税等が154,578千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計につきましては、前事業年度末に比べ907,829千円増加し、997,040千円となりました。これは主に、利益剰余金が330,161千円増加したことに加え、当社株式上場に伴う株式の発行により資本金及び資本準備金がそれぞれ288,834千円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前事業年度末に比べ944,017千円増加した結果、962,104千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とその要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動によるキャッシュ・フローは435,922千円の収入(前年同期は40,931千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純利益495,677千円の計上及び売上債権の増加134,613千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動によるキャッシュ・フローは18,609千円の支出(前年同期は39,689千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出18,073千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動によるキャッシュ・フローは526,704千円の収入(前年同期は16,804千円の収入)となりました。これは主に、株式の発行による収入577,668千円及び長期借入金の返済による支出50,964千円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b 受注実績
当事業年度における受注実績は次のとおりであります。
(注) 当社は、製造業DX事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。
c 販売実績
当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
(注) 1.当社は、製造業DX事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。サービス別に記載をしております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、高いレベルの成長性、収益性を実現するための参考指標として、「受注残高」、「累計取引社数」、「継続顧客売上高」についても、モニタリングをしております。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は、「モノづくりのあり方を変え、世界を変えていく」ことをミッションに掲げて、製造業界向けにAI技術及びIoT技術等の新しい技術を活用したサービスを提供しております。顧客が抱える課題を解決するサービスを提供することでサービスの付加価値は高められ、付加価値を最大化することこそ、多くの顧客の需要に応えることができ、顧客基盤の拡充に繋がるものと考えております。付加価値の最大化に向けて継続的にモニタリングするKPIは、以下のとおりです。
(注) 売上高成長率は、前年同期比の増減率となります。
「売上高」及び「売上高成長率」は、自社の成長性及び市場への浸透度をモニタリングするため、重要な経営指標と位置付けております。
「売上総利益」「売上総利益率」「営業利益」「営業利益率」は、自社の収益性及び付加価値の1つのバロメーターとしてモニタリングしております。
「受注残高」及び「累計取引社数」並びに「継続顧客売上高」は、新規顧客の開拓と既存顧客の深掘り、それら新規及び既存顧客からの受注残高を自社の成長性及び収益性としてモニタリングしております。
これまでの導入実績を前面に打ち出すことで新たな顧客を発掘して累計取引社数を増やすと共にリピーターとなる継続顧客からの案件も獲得しております。当社が提供するサービスの付加価値を高めるべく、AIシステムでは、より多くの顧客需要を満たせるように既存製品(Phoenix Vision/Eye)の汎用性を高めた他、次世代機(Phoenix Edge)の開発に着手いたしました。また、DXコンサルティングでは、継続顧客からの課題を深く多岐にわたり解決いたしました。その結果、当事業年度においては、売上高1,411百万円、売上高成長率128.7%、売上総利益1,135百万円、売上総利益率80.4%、営業利益508百万円、営業利益率36.0%、受注残高304万円、累計取引社数169社、継続顧客売上高546百万円となっております。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金需要のうち主なものは、従業員の給与手当の他、販売費及び一般管理費の営業費用であります。当社は、事業運営上必要な資金を安定的に確保するために、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入等でバランスよく調達していくことを基本方針としております。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。また、今後の経営成績に影響を与える課題につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
④ 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりましては、資産・負債及び収益・費用の報告数値及び開示に影響を与える見積り及び仮定の設定を行っております。
当該見積りにつきましては、過去の実績や現状等を勘案して合理的に判断を行っておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる可能性があります。なお、当社が財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針につきましては「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針に関して
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。