リスク
3【事業等のリスク】
当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
1 事業環境・事業内容リスクについて
①マネー・ローンダリング対策市場について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
Fintechの普及により、換金手段が多様化し犯罪者にとっても利便性が向上する中、マネー・ローンダリング対策市場は全世界で大きく拡大しており、2020年から2027年には15.60%以上で成長すると予測されております。(注)当社は、国内におけるマネー・ローンダリング対策市場において、2016年12月に法人向けクラウド型不正アクセス検知サービス「Fraud Alert(フロードアラート)」の提供を開始し、その方向性をリードしつつマネー・ローンダリング対策事業の拡大に努めておりますが、競合会社の積極参入による競争が激化した場合及び日本国民の消費活動がキャッシュレス決済から現金決済へ回帰してしまう場合、並びに当該市場を取り巻く新たな規制の導入やその他予期せぬトラブル等により、市場の成長が鈍化した場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(注)出典: Report Ocean 「Global Anti Money Laundering Market Size study」(2022年1月22日公表)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004911.000067400.html
②技術革新への対応について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
当社が属するマネー・ローンダリング対策の分野は、日々発生する新たな脅威や技術革新等による環境変化に伴い、ニーズが変化しやすい特徴があります。今後、Google Inc.及びApple Inc.のプライバシーポリシーが強化されることで、端末識別の難易度が技術的に高まった場合、Fraud Alert(フロードアラート)単体での不正行為抑止効果が薄れていく可能性があります。当社では、顧客のニーズを的確に捉え、より実効性のあるサービスを提供すべく、新たな脅威や技術革新等に関する情報収集に努めております。しかし、これらの技術革新への対応が遅れ、他社に大きく先行された場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③法的規制について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、主要なビジネスに関係する犯罪による収益の移転防止に関する法律及び個人情報保護法等に関しては、関係当局及び法律専門家に照会・確認のうえ、適用関係を確認済であり、当社の事業を制限する直接的かつ特有の法的規制は本書提出日現在において存在しないと考えております。しかしながら、今後、当社の事業を直接的に制限する法的規制がなされた場合、また、従来の法的規制の運用に変更がなされた場合には、当社の事業展開は制約を受ける可能性があります。加えて、個人情報を活用した新しいサービス作りにおいては法的整備が絡む可能性があり、継続的なロビイング活動の強化が求められる可能性があります。当社としては引き続き法令を遵守した事業運営を行っていくべく、今後も法令遵守体制の強化や社内教育などを行っていく方針ですが、今後当社の事業が新たな法的規制の対象となった場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④競争状況について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
当社は、金融機関を主な顧客とし、マネー・ローンダリング対策領域で多角的なサービスを提供しており、独自のサービスポジションを獲得しております。これは、データ検知のサービスを提供するセキュリティ企業が多い中で、マネー・ローンダリング対策分野においては常に新しい犯罪手口が発生するために、データ検知サービスでは対応が後手になってしまうこと(当社想定)から、当社がデータモニタリングという独自の内容と価格でのサービス提供を実現させてきたことによると考えておりますが、新規参入等により競合が出現し競争が激化した場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑤当社が提供するサービスの瑕疵について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
不正検知サービス「Fraud Alert」等、当社が提供するサービスでは、ソフトウエアの開発から販売までの過程において数多くの品質チェックを行い、プログラムの動作確認には万全を期しておりますが、販売時には予想し得なかったソフトウエア特有のバグ(不具合)が販売後に確認されることもあります。その場合、当社では速やかにソフトウエアのアップデート(修正)プログラムを提供し対応しております。顧客の不正検知確認体制不備は一義的には顧客の責任であり当社の責任は限定的ではあるものの、こうしたバグによりサービスの提供ができなくなる場合、バグの解決に非常に長期間を要した場合、またはバグの解決に至らなかった場合は、サービスの売上の減少だけでなく、当社への信頼が低下する恐れがあり、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑥マネー・ローンダリング対策特化による需要低下リスク(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
当社は、不正検知サービス「Fraud Alert」に代表されるマネー・ローンダリング対策事業に特化しております。今後、経済環境の悪化その他の要因により、マネー・ローンダリング対策市場の需要が低迷した場合等には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
⑦SLA(サービスレベルアグリーメント)抵触によるリスク(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、当社サービスの月間の稼働時間及び一定時間あたりの処理速度(一定時間あたりのアクセス数)等の技術的なサービス提供能力について、2023年12月末時点で12社に対して一定の保証水準を設けており、あらかじめこれを提示しております。当社は、SLAに定めるサービスコミットメントを達成できなかった場合には、SLAのサービスコミットメント条項に基づき、月次利用料金の範囲内で利用料金を減額しなければならず、かかる減額が多額になった場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑧システム等に関するリスクについて(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の事業は、外部クラウドサーバー(Amazon Web Services、以下「AWS」という。)が提供する各種サービスをインターネットを介して顧客企業に提供することを前提としております。当社では、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得し、リスクマネジメントに努め、また、システム障害の発生やサイバー攻撃によるシステムダウン等を回避すべく、サーバー設備の強化や稼働状況の監視等により未然防止策を実施しております。しかしながら、サイバー攻撃や自然災害や事故などによる不測の事態が発生し、万が一、AWS自体にシステム障害が起こるような場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑨特定顧客への依存について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
2023年12月期における当社の売上高に占める主要取引先上位10社の売上高合計の割合は69.0%であり、また、それら取引先は銀行、証券会社などの金融機関、クレジットカード事業者であることから、特定の業界・顧客企業への依存度が高い状況にあります。本書提出日現在において、マネー・ローンダリング対策市場は、将来の成長が見込まれており、他の業界・顧客企業との取引額の拡大を図り、特定顧客への依存リスクの分散に努めておりますが、今後、見込みどおりに顧客拡大が進まない場合や予期しない環境の変化により価格改定を余儀なくされる等、当該市場の成長に何らかの問題が生じた場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、現時点において、当該顧客企業と当社との関係は良好な状態でありますが、それらの顧客企業の経営方針に変更が生じ、契約条件の変更等があった場合は、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑩研究開発リスクについて(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社では、既存事業の強化及び新規事業創出のため積極的に研究開発活動を行っております。しかし、技術革新のスピードが速くタイムリーに新製品の開発ができないなど、期待した成果が得られず計画を断念することになった場合には、投下した研究開発費を回収できないため、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、これらの研究開発体制の維持・強化のためには、高度な技術を持った人材の確保が不可欠であり、技術者が十分に確保できない場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
2 経営管理体制に関するリスク
①人材の採用・育成について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の属するマネー・ローンダリング対策業界では、専門知識を有する人材の不足が共通課題とされております。今後、当社の業容が拡大する一方で、十分な人材を確保できない場合には、サービス提供の遅れや生産性の低下等により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、社内人材については、中途採用を中心に即戦力として活用できる技術経験者を採用し、採用後は、当社の教育講座を受講する等により専門知識の向上を図るとともに、職場環境の整備やモチベーション向上等に注力することで、人材流出を防ぎ、ノウハウや経験の社内蓄積に努めております。
②特定人物への依存について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の創業者であり大株主でもある代表取締役社長島津敦好は、当社の強みである事業の創出やノウハウを蓄積しており、事業の推進において重要な役割を果たしております。当社は、同氏に過度に依存しない経営体制の構築を目指し、幹部人材の育成及び強化を進めております。しかしながら、何らかの理由により同氏が当社の業務執行ができない事態となった場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③小規模組織であることのリスクについて(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は小規模な組織であり、現在の人員構成において最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社は、今後の業容拡大及び業務内容の多様化に対応するため、人員の増強、内部管理体制及び業務執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④コンプライアンス体制について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は企業倫理の確立による健全な事業活動を基本方針とする「コンプライアンスの基本方針」を制定し、当社の役員・従業員への教育啓発活動を随時実施し、企業倫理の向上および法令遵守の強化に努めています。しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全には回避できない可能性があり、法令等に抵触する事態が発生した場合、当社の社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑤情報管理体制について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社のサービスでは個人関連情報等の顧客の重要な情報を入手します。これらの情報は基本的には暗号化されており、当社単体では個人との紐づけは不可能となっておりますが、これらの顧客情報の漏洩は事業展開において大きなリスクであります。当社では、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得し、社内教育の実践、各種データのアクセス権限による制約、書面情報の施錠管理、オフィスの入退室管理等、対策を講じて実践しておりますが、顧客情報の漏洩が発生した場合、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑥知的財産権の管理について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社による第三者の知的財産権侵害の可能性につきましては、専門家と連携しながら調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに第三者の知的財産権を侵害してしまう可能性があります。この場合、使用料の請求や損害賠償請求等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社に対する知的財産権の使用料の請求や損害賠償請求等が発生することや、当社が保有している知的財産権が第三者により侵害された場合には、法的措置を含めた対応を要するなど、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑦内部管理体制の整備状況にかかるリスクについて(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、企業価値を最大化すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と位置づけ、多様な施策を実施しております。また、業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
3 その他のリスクについて
①自然災害、事故等について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
地震や天災といった災害、国内におけるテロ活動などの予期せぬ事態により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のため、当社では、テレワークや時差出勤など事業運営に極力支障が生じない体制を構築しており、勤務時においては役職員へのマスク着用、手洗い、消毒の推奨等により感染防止に向けた対策を講じております。しかしながら、当社の役職員が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染する可能性を完全に排除することは困難であり、万一、社内での感染が拡大した場合は、事業運営の一部に支障をきたす可能性や、オフィスの閉鎖等の対応を余儀なくされる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が長期化し、企業活動が長期間にわたり大幅に制限される等の理由により、景気が著しく悪化し、多くの顧客企業がセキュリティ投資を抑制した場合には、売上の減少や利益率の低下、回収サイトの長期化など、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
②訴訟について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の事業運営にあたって、予期せぬトラブルや問題が生じた場合、当社の瑕疵にかかわらずこれらに起因する損害賠償の請求や、訴訟の提起を受ける可能性があります。これらの事象が発生した場合は、起訴内容や損害賠償額の状況及びその結果によっては当社の社会的信用が低下することに加え、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③配当政策について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社では、利益配分につきましては、経営成績及び財政状態を勘案して、株主への利益配当を実現することを基本方針としております。しかしながら、当社は本書提出日現在成長過程にあり、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先して、創業以来無配当としてまいりました。現在は、内部留保の充実に努めておりますが、将来的には、経営成績及び財政状態を勘案しながら株主への利益の配当を検討する方針であります。ただし、配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定であります。
④大株主について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社創業者かつ代表取締役社長である島津敦好の本書提出日現在での議決権所有割合は、直接保有分として6.2%であります。また、島津敦好の資産管理会社である株式会社rhizomeの議決権を合算した所有割合は59.6%となっております。島津敦好及び当該資産管理会社は引き続き当社の株式を保有し、大株主となる見込みであります。島津敦好は、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しています。
島津敦好は、当社の創業者かつ代表取締役社長であるため、当社としても安定株主であると認識していますが、将来的に何らかの事情により当社株式が売却された場合には、当社株式の市場価格及び流通状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑤株式の追加発行等による株式価値の希薄化について(発生可能性:高、発生する時期:数年以内、影響度:小)
当社は、当社の役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。また、今後においても新株予約権を活用したインセンティブプランを活用していく方針であります。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。本書提出日現在、これらの新株予約権による潜在株式数は780,100株であり、発行済株式総数6,086,700株の12.8%に相当しております。
⑥資金使途について(発生可能性:低、発生する時期:数年以内、影響度:中)
当社の公募増資による資金調達は、プロダクトであるFraud Alertの開発及び運用費及び借入金の返済に充当する予定です。しかしながら、外部環境等の影響により、目論見どおりに事業計画が進展せず、調達資金が上記の予定どおりに使用されない可能性があります。資金使途計画が変更となる場合には、速やかに開示いたします。また、予定どおりに使用された場合でも、想定どおりの効果を上げることができず、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を経営上の重要課題と認識しており、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を勘案し、利益還元策を決定していく所存であります。当社は現在、成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、事業の効率化と事業拡大のための投資等に充当し、なお一層の事業拡大を目指すことが、株主に対する最大の利益還元に繋がると考えております。
当事業年度においては、上記の理由から配当を実施しておりません。内部留保資金については、プロダクト開発、運営投資、または収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に活用する方針であります。
将来的には、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対する利益還元を検討していく方針ですが、現時点において配当実施の可能性及び実施時期等については未定であります。
なお、当社が剰余金の配当を行う場合は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本としており、中間配当を行うことができる旨を定款で定めております。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。