事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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売上
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利益
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利益率
最新年度
セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
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組織培養事業 | 2,269 | 43.6 | 765 | 50.4 | 33.7 |
微生物事業 | 1,782 | 34.2 | 441 | 29.0 | 24.7 |
細胞加工事業 | 1,155 | 22.2 | 313 | 20.6 | 27.1 |
事業内容
3 【事業の内容】
当社グループは、当社、国内連結子会社(エンバイオ株式会社)1社、海外連結子会社(孝仁生物控股(香港)有限公司、高金生物科技(上海)有限公司)2社及び持分法適用関連会社(味の素コージンバイオ株式会社)1社の計5社で構成されており、細菌検査用培地(注1)、体外診断用医薬品、細胞培養用培地の製造・販売、及び細胞加工の受託を主な事業として取り組んでおります。
当社及び当社の関係会社の事業における位置付け及びセグメントとの関連は、次のとおりであります。なお、以下に示す事業の区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントと同一であります。
組織培養事業
組織培養事業では、ヒト、動物、昆虫などの細胞を増殖させることを目的とした細胞培養用培地の開発・製造・販売をしております。細胞培養用培地は、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、微量金属、無機塩などから構成される溶液で、ヒトや動物の血液成分であるウシ血清(FBS)などを添加して使用する基礎培地と血清の添加を必要としない無血清培地に分類することができます。
基礎培地は、1960年代の細胞培養の研究の黎明期に開発された培地で、含有される成分のすべてが公開されていることがその特徴となります。こうした基礎培地は十数種類存在し、基礎研究を中心に世界中の大学、企業等で使用されております。一方、無血清培地は、1986年に狂牛病(BSE)の存在が確認されたことを受け、ウシ血清等を研究等に使用することへの安全性の確保が難しくなったことを背景に開発が進められた培地であります。基礎培地の組成が公開されているのに対し、無血清培地は各社の技術の粋を集めたもので、基本的に組成は非公開とされております。加えて、基礎培地は血清を添加することで、複数種類の細胞を培養できるのに対し、無血清培地は細胞の種類ごとに専用の培地が存在している点も基礎培地と無血清培地の大きな違いであります。
ウシ血清等を添加している基礎培地が安価であるのに対し、無血清培地は血清の代替として、高額な細胞増殖因子を添加しているため、価格帯は高額となります。しかしながら、血清を添加している基礎培地にはウイルスのコンタミネーション(注2)の懸念があるのに対し、無血清培地では、ウイルス等の外来因子の排除が可能なことから、高額であっても再生医療の研究開発に欠かせない製品となっており、当社としては無血清培地の開発と販売に注力しております。
これまでは、細胞培養用培地は研究用としての使用が主流でありましたが、近年では、再生医療分野や抗体医薬品の製造などにも多く使用されるようになってきたことから、その市場規模は数年間で急速に成長を続けており、さらに大きな市場に拡大していくと予想しております。特に再生医療分野におきましては、幹細胞、免疫細胞が注目されており、これらの細胞はアンメットメディカルニーズ(注3)の治療領域を満たすものとして、世界中で盛んに研究が行われております。その中でも間葉系幹細胞(注4)は、こうした再生医療に使用される細胞としては最も有力な細胞の一つであり、当社もKBM ADSCシリーズとして2014年から発売を開始し、主力製品の一つとなっております。また、免疫細胞に代表されるT細胞は、遺伝子改変細胞(注5)のターゲットとなっており、最新のがん治療薬として開発が進められております。当社は、こうした免疫細胞を培養する培地の開発を最も得意としており、KBM500シリーズとして販売されている免疫細胞培養用培地は、末梢血から単離したPBMC(注6)から目的の細胞であるT細胞やNK細胞を培養した際に、有効な細胞増殖性能があると大学や企業を含む顧客よりご評価いただいております。
これら培地に加えて、当社は、脳梗塞等の治療で注目される神経幹細胞(注7)を培養するKBM Neural Stem Cell(注8)、様々な組織を作製する上で必須となる血管網の構築を促す血管内皮細胞を培養するKBM VEC-1(注9)、皮膚の再生に必要となる表皮角化細胞を培養するKBM NHEK-XF2(注10)など、再生医療に関連する製品を多数ラインナップしております。
今後の開発の方向性といたしましては、抗体医薬品の70%以上がCHO細胞(注11)により生産されていること、CAR-T細胞(注12)等の遺伝子改変細胞を作製するために使用されるウイルスベクター(注13)の生産のほぼすべてはHEK293細胞(注14)と呼ばれる細胞株が使用されていることから、これらの産業利用される細胞培養用培地の市場規模は、数年で非常に大きく急成長すると予想しており、これらの開発に注力しております。これら培地は、無血清培地でありながら、細胞増殖因子を含まず、アミノ酸、ビタミン、微量金属などの化学合成物質のみから構成されるChemically Defined(CD)培地で、非常に開発が困難な培地ですが、CHO細胞用培地は現在上市しております。また、HEK293細胞培養用培地に関しましても開発は順調に進んでおり、来年度上市を予定しております。さらに、こうした培地は使用量が数千リットルから数万リットルと大量なため、国内外を問わず粉末での供給が一般的ですが、そうした技術開発にも成功しております。
再生医療市場は、2020年には0.6兆円であったところ、2040年には11.6兆円の予測(再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業 中間評価 技術評価報告書(2023年3月 産業構造審議会 産業技術環境分科会 研究開発・イノベーション小委員会評価ワーキンググループ))となっており、市場規模は拡大傾向にあります。
※組織培養事業が担うのは赤枠内
(注) 1.培地は、微生物や生物組織(細胞)が成長しやすいよう人工的に作られた環境を提供するもの。寒天などで固められた固体培地や、液体状で存在する液体培地などがあり、生育させる微生物、細胞の種類により、培地の成分形状は異なる
2.細胞や微生物などを人工的に培養するときの、微生物などによる汚染
3.未だ満たされていない医療ニーズ、つまり、未だ有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ
4.間葉系幹細胞は、生体内に存在し、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞等に変化できる細胞で膝関節の治療をはじめとする様々な損傷治療に使用できる細胞として注目されている
5.細胞の機能を決定する遺伝子を導入し、これまでにない機能等を与えられた細胞の総称
6.PBMC(Peripheral Blood Mononuclear Cellsの略)は、末梢血から分離される単核細胞で、T細胞、B細胞、NK細胞、単球及び樹状細胞などの多様なリンパ球を含む
7.神経幹細胞は、脳の中に存在する幹細胞で、ニューロンといった神経機能を担う細胞に変化する能力を持ち、こうした機能から筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった難病の治療が期待される細胞
8.KBM Neural Stem Cellは、神経幹細胞を培養するための当社製品
9.KBM VEC-1は、血管の内側に存在する血管内皮細胞を培養するための当社製品
10.KBM NHEK-XF2は、ヒトの皮膚の元を作り出す表皮角化細胞を培養するための当社製品
11.CHO細胞(Chinese Hamster Ovaryの略)は、チャイニーズハムスターの卵巣に由来する上皮細胞で、組換えタンパク質の生産によく使用される
12.CAR-T細胞は、T細胞にChimeric Antigen Receptor(CAR)を導入した遺伝子改変細胞で、がんに対する攻撃力を高めた細胞
13.ウイルスベクターは、細胞内に効率的に遺伝物質を運び込むために、ウイルスの感染能力を利用して作製されたツール
14.HEK293細胞(Human Embryonic Kidneyの略 )は、ヒト胚性腎臓細胞から作製された細胞で、組み換えタンパク質やウイルスを増幅させるために使用される細胞
(主な関係会社) 当社、高金生物科技(上海)有限公司及び味の素コージンバイオ株式会社
微生物事業
微生物事業では、感染症や食品汚染の原因となる微生物を特定するための製品の開発と製造・販売を行っています。目に見えない微小な微生物を特定するためには、微生物に由来する物質を着色したり、微生物そのものを増殖させたりして、人が視覚的に確認できるようにする必要があります。
○細菌検査用培地
当社は、創業から長年培った微生物そのものを増殖させる細菌検査用培地の製造ノウハウを保持しており、KBMブランドとして多くの製品群を市場に提供しております。
微生物の増殖のためには、目的とする微生物にとっての最適な環境を整える必要があります。一定の栄養素(アミノ酸、糖質、無機塩類)に加え、特定の栄養素(ビタミン等)や血液を発育成分として要求する微生物、酸素の有無や二酸化炭素濃度(酸化還元電位)、水素イオン濃度(pH)なども微生物によって異なります。従って、ある特定の微生物の生育に適した環境を人工的に模造することで、微生物を選択的に増殖させることも可能であり、このような微生物の培養に適した環境を与える材料を容器に閉じ込めた製品が細菌検査用培地であります。
細菌検査用培地は、用途に応じて、液体、固体、半流動の状態で利用されます。試料(検体)に含まれる微生物の数を知りたい場合等には固形の細菌検査用培地を、試料(検体)中に含まれる微生物の数が少なく速やかな増殖を期待する場合には液体の細菌検査用培地を、微生物の性状を知りたい場合等には半流動の細菌検査用培地を用います。また、細菌検査用培地は、抗生物質に感受性なのか耐性なのかを判断する場合等にも利用されます。このように細菌検査用培地は、微生物の種類や医療(感染症)、食品(病原菌)、製薬・化粧品(品質)などの検査の目的により、様々な種類の製品が存在し、当社においては2025年3月期に年間300品目を超える細菌検査用培地等を製造販売しております。
○体外診断用医薬品
体外診断用医薬品は、身体を直接の被検体とせずに、人に由来する試料を検体とし、検体中の物質等を検出又は測定することにより、診断に用いることの出来る医薬品です。製品として販売する場合は、厚生労働省のガイドラインに基づいた審査を受け、承認基準に適合する必要があります。当社は、微生物に由来する物質を可視化するため、抗原抗体反応を利用した検査キットを開発し、体外診断用医薬品の認可を受けた製品化に成功いたしました。この検査キットは、抗体を結合させた金コロイド粒子(粒子径10nmから100nm程度の金の粒子)の共鳴反応が関与しており、金コロイド粒子の集積に基づく発色技術(注)が使用されています。また、抗体は病原体に由来する物質と特異的に反応するため、対象微生物の特定も可能となります。従って、様々な感染症の原因となる微生物を特定するための製品群を開発することが可能となります。近年では、新型コロナウイルス感染症の抗原を検査するためのキット「KBMラインチェックnCoV(スティックタイプ)」が、体外診断用医薬品として製造販売許可申請が承認され、ひいては、国からの増産要請を受けて月産最大約20万検体分の製造を行うことで、未曽有の感染拡大を続ける新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた製品提供を果たしました。また、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザを同時に検出する体外診断用医薬品「KBMラインチェックnCoV/Flu」の発売も開始しました。さらに、インフルエンザのA型とB型を区別するための「KBMラインチェックFlu AB」、小児の呼吸器感染症の原因ウイルスであるRSウイルスを判別する「KBMラインチェックRSV」も体外診断用医薬品として製造販売を続けています。また、これらの製品に加え、新たに自己免疫性肺胞蛋白症の診断の補助を目的として、血清中の抗GM-CSF抗体を検出するために使用される抗GM-CSF抗体キット「KBMラインチェック APAP」の製造販売を開始しました。これらの抗原検査キットは、方法が簡便であるにも関わらず、15分程度で結果が得られることから、迅速検査が望まれる医療施設や臨床検査センターなどで利用されています。近年では、新型コロナウイルス感染症抗原検査キットに加え、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時抗原検査キットが薬局での販売も可能となり、国民の健康維持には欠くことの出来ないアイテムとして認知されています。
新型の感染症が問題視される一方で、未だ世界規模で流行している感染症も多くあります。エイズ、結核、マラリアは、「三大感染症」と呼ばれています。2000年の世界保健総会において、「ストップ結核パートナーシップ」 が発足しました。WHOが中心となり、2050年までに世界の結核を100万人に一人まで減らすことが目標として策定され、日本国内においても、「ストップ結核ジャパンアクションプラン」が策定されています。当社は、発育の遅い結核菌のための培養技術の改善を目指し、国内の研究機関と連携した製品開発を進めております。また、世界規模のマラリア対策を進めるため、WHO、UNICEF、UNDP、世界銀行が中心となって「ロールバック・マラリア・パートナーシップ」 が設立され、死亡率及び有病率の半減が目標として掲げられました。当社は、マラリア診断に寄与すべく、血液を試料とする抗原検査キットの開発に着手しております。また、研究用試薬となりますが、近年東南アジアを中心に猛威を振るっているNDM型カルバペネマーゼ産生菌(薬剤耐性菌)の検査キット(KBMラインチェックNDM)の開発に成功し、開発途上国の抱える課題の解決に取り組んでおります。抗原検査キットは、簡便かつ迅速な手法であることから、電源事情の悪い地域での活用が期待されております。
微生物製品の開発や製品化においては、現在も共同研究やOEM受託等も積極的に行い、微生物検査を取り巻く市場や顧客ニーズの変化に対応した製品を提供し続けています。
(注)金コロイド粒子の集積に基づく発色原理:金属に光が当たると、金属表面の電子がその影響を受けて集団的な振動が起こります。振動と入射した光とが共鳴すると、特定の波長の光(緑色)が強く吸収されるようになります。その結果、金コロイド粒子が、一定の波長の光(赤色系)を帯びて視認されるようになります。
(主な関係会社) 当社及びエンバイオ株式会社
細胞加工事業
細胞加工事業では、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(以下、再生医療等安全性確保法)における再生医療の健全な普及に向け、特定細胞加工物製造受託及び再生医療等法規対応サポートを行っています。
○特定細胞加工物製造受託
免疫療法や幹細胞治療等の再生医療等を提供されている医療機関より依頼を受けて、厚生労働省より許可を得た細胞培養加工施設(施設番号:FA3190002、細胞培養加工施設の名称:コージンバイオ株式会社 埼玉加工センター)にて、当該医療機関が患者より採取した組織を預かり、特定細胞加工物の製造を受託しております。
特定細胞加工物とは、再生医療等安全性確保法第2条で、「再生医療等に用いられる細胞加工物のうち再生医療等製品であるもの以外のもの」と定義されており、当社においては免疫細胞や幹細胞を中心に医療機関より受託しております。医療機関において採取された組織(血液や脂肪細胞等)を、当社の細胞培養加工施設にて受領し、そこから目的の細胞(免疫細胞や幹細胞)を取り出します。それら細胞をその管理項目に合った環境下において増殖させ、医療機関指定の細胞数まで増やしたうえで、医療機関からご指定の日に合うように納品いたします。
特定細胞加工物の製造には、自社製の細胞培養用培地を使用しており、組織培養事業と連携することで、双方の技術開発及び、製品の品質向上に努めております。培地の製造メーカーである当社が、自社製の細胞培養用培地を用いて特定細胞加工物の製造を行い、さらに、自社製の細菌検査用培地を用いて品質管理試験を行うことで、費用を抑えることができ、柔軟な価格設定が可能となります。そこで、再生医療を身近な医療として認知度を高め、治療の医療負担を軽減させることを目的に、特定細胞加工物を医療機関へ提供しております。
2022年7月からは、東京大学医学部附属病院との社会連携講座「臨床幹細胞生物学講座」を通じて、細胞治療のメカニズム究明やエビデンス取得のための臨床解析を行っております。
また、共同研究の成果といたしましては、三重大学大学院 医学系研究科 個別化がん免疫治療学のグループにて開発されたトリプルネガティブ乳がんに対し、GD2を標的としたCAR-T細胞を用いた医師主導型治験における治験薬の製造を予定しております。
○再生医療等法規対応サポート
医療機関が患者に再生医療を提供する場合、再生医療等安全性確保法に基づき、製造委託の有無や細胞培養加工施設に関する情報を含め、提供しようとする再生医療のリスクに応じた再生医療等提供計画を作成し、認定再生医療等委員会の意見を付して、厚生労働大臣に提出することが義務付けられております。かかる法的手続きなどを経ないまま、再生医療等の提供あるいは特定細胞加工物の製造は医療機関においては法律違反となり、罰則が科されることとなります。当社では、再生医療を行う医療機関より委託を受けて、医療機関が患者に再生医療を提供する際に必要となる各種申請・届出業務に係る書類作成等のサポート及び治療提供のために必要な行政手続きの支援業務を行っております。
(主な関係会社) 当社
事業の系統図は、次のとおりであります。
業績
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、円安を背景とする訪日外国人数が過去最高の水準となったことから、インバウンド消費が復調し、また、雇用や所得環境の改善、設備投資の持ち直しなどの動きも見られ、景気は緩やかな回復基調となりました。
一方で、不安定な国際情勢、エネルギーコスト上昇や原材料価格の高騰に伴うインフレ懸念に加え、2025年1月に発足した米国トランプ政権による政策転換の影響が見えず、先行きは不透明な状況で推移いたしました。
このような経済状況の中で、当社グループは感染症対策や再生医療の発展のために、経営理念に掲げる「顧客第一主義・品質第一主義」のもと、全従業員がグループ全体の更なる成長とステークホルダーへの貢献に努めております。
当連結会計年度におきましては、国内外で再生医療市場の拡大が続いていることから、細胞培養用培地の売上高が増加いたしました。また、新型コロナウイルスが5月から感染者数が増加、7月に感染拡大のピークとなり、さらに11月から年末に向けてインフルエンザウイルス感染者数の急増と新型コロナウイルス感染者数の増加が同時に発生したことから、関連製品の販売が大きく増加いたしました。なお、同感染症関連製品については前連結会計年度に関連棚卸資産の評価損218百万円を計上しておりましたが、前述の事由により販売数量が増加したことから当連結会計年度において207百万円の戻入益を計上しております。一方、基幹システム変更に伴う支払手数料の増加等により販売費及び一般管理費が増加いたしましたが、利益につきましては概ね計画どおりとなりました。
当連結会計年度の売上高は5,206百万円(前年同期比9.1%の増加)となり、営業利益は991百万円(前年同期比66.1%の増加)、経常利益は1,065百万円(前年同期比67.6%の増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は794百万円(前年同期比106.4%の増加)となりました。
セグメント別の経営成績を示すと、以下のとおりであります。
(組織培養事業)
当連結会計年度における組織培養事業は、国内外で再生医療の研究開発や臨床試験が活発に実施されており、ここで使用される細胞培養用培地の販売数量が増加いたしました。また、日本では自由診療による再生医療を受けるインバウンド患者数が高水準となっていることから、この分野で使用される培地の需要が増加しており、中国を中心として、アジア圏で細胞治療用培地の販売数量も増加いたしました。
これら再生医療市場の拡大を背景に、新規顧客からの培地の製造受託や既存顧客からの新たな製造受託案件も増加しており、同事業は順調に推移いたしました。
この結果、売上高は2,268百万円(前年同期比19.1%の増加)、セグメント利益(営業利益)は765百万円(前年同期比25.6%の増加)となりました。
(微生物事業)
当連結会計年度における微生物事業は、期中に新型コロナウイルス、及びインフルエンザウイルスの感染者数が増加したことにより、関連製品の販売が大きく増加、特にドラッグストア等で販売される一般用製品の売上が増加しました。加えて、同感染症関連製品について前述の事由により、当連結会計年度において関連棚卸資産の評価損207百万円の戻入益を計上しております。また、病院等の臨床細菌検査市場はこれまでと大きな変動はなく、製薬企業等の産業細菌検査市場は、競合する海外輸入品に対し安価で安定供給が可能な当社グループ製品のシェアが拡大しております。
この結果、売上高は1,781百万円(前年同期比7.6%の増加)、セグメント利益(営業利益)は441百万円(前年同期は69百万円の損失)となりました。
(細胞加工事業)
当連結会計年度における細胞加工事業は、細胞加工製品の原材料の見直しにより、期中に製品の販売を一時見合わせていたことから、同製品群の売上が期初計画を大きく下回りました。なお、同製品の販売は2025年2月より再開しております。一方、細胞加工受託については、インバウンドでの日本の医療サービスを目的とする外国人患者数が高い水準を維持しており、また、国内患者による細胞治療の需要も拡大したことで、細胞加工受託件数が大きく増加いたしました。既契約医療機関からの受託件数の増加と多数の医療機関との新たな細胞加工の委受託契約の締結により、細胞加工施設はフル稼働の状況となっておりますが、広島県の新たな細胞加工施設の稼働が始まったことにより、稼働率が落ち着く見込みとなっております。
この結果、売上高は1,155百万円(前年同期比4.5%の減少)、セグメント利益(営業利益)は313百万円(前年同期比33.6%の減少)となりました。
当連結会計年度における当社グループの財政状態は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末に比べ1,657百万円増加の5,066百万円となりました。これは主に、東京証券取引所グロース市場への株式上場、及び第三者割当増資に伴う新株式発行による払込等により現金及び預金が1,422百万円増加したことや、原材料及び貯蔵品が121百万円増加したこと等によるものであります。また、固定資産は、前連結会計年度末に比べ820百万円増加の3,999百万円となりました。これは主に、現在建設中の新倉庫に係る建設仮勘定の増加等により有形固定資産が666百万円増加したこと、及び持分法による投資利益98百万円の計上等により投資その他の資産が129百万円増加したことによるものであります。
この結果、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ2,477百万円増加の9,066百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末に比べ89百万円増加の2,487百万円となりました。これは主に、未払法人税等が57百万円増加したことによるものであります。また、固定負債は前連結会計年度末に比べ51百万円減少の797百万円となりました。これは主に、中国子会社の賃貸借契約更新によりリース債務が68百万円増加したものの、1年内返済予定の長期借入金150百万円を流動負債に振替えたことによるものであります。
この結果、当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べ37百万円増加の3,284百万円となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ2,439百万円増加の5,781百万円となりました。これは主に、剰余金の配当58百万円があったものの、上述にある新規上場及び第三者割当増資に伴う新株式発行により、資本金及び資本剰余金がそれぞれ827百万円増加したこと、また、親会社株主に帰属する当期純利益794百万円の計上によるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して1,222百万円増加の2,949百万円となりました。
当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果取得した資金は915百万円(前年同期比91百万円の収入増加)となりました。これは主に、法人税等の支払額201百万円(前年同期比274百万円の支出減少)や、棚卸資産の増加による減少188百万円(前年同期比613百万円の減少)があったものの、税金等調整前当期純利益1,015百万円(前年同期比379百万円の増加)や、減価償却費360百万円(前年同期比61百万円の増加)の計上があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は1,090百万円(前年同期比513百万円の支出増加)となりました。これは主に、現在建設中の新倉庫を始めとする有形固定資産の取得による支出861百万円(前年同期比298百万円の支出増加)、及び定期預金の預入による支出200百万円(前年同期は無し)によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果取得した資金は1,376百万円(前年同期比1,377百万円の収入増加)となりました。これは主に、新規上場及び第三者割当増資に伴う株式の発行による収入1,653百万円(前年同期は無し)があったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、製造原価によっております。
b. 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、仕入価格によっております。
c. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 組織培養事業及び微生物事業については見込生産であり、該当事項はありません。
d. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
なお、前連結会計年度の販売実績は、総販売実績の10%未満であるため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」に記載のとおりであります。
② 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③ 経営戦略の現状と見直し及び経営者の問題認識と今後の方針
経営戦略の現状と見通し及び経営者の問題認識と今後の方針については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
④ 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
財政状態とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b. 経営成績
(売上高)
売上高は、5,206百万円(前年同期比9.1%の増加)となりました。これは主に、細胞加工事業において、前述のとおり製品の販売を一時見合わせていた影響により同製品群の売上が大きく減少したものの、組織培養事業において、細胞培養用培地、細胞治療用培地共に国内外を問わず需要が増加したことにより、関連製品の売上が増加したためであります。
(売上原価及び売上総利益)
売上原価は、2,840百万円(前年同期比1.7%の減少)となりました。売上原価率は54.6%となり、前連結会計年度と比して6.0%減少いたしました。これは主に、微生物事業において、前述のとおり新型コロナウイルス感染症関連棚卸資産の評価損207百万円の戻入益を計上したためであります。
(販売費及び一般管理費、営業利益、経常利益)
販売費及び一般管理費は、1,374百万円(前年同期比7.0%の増加)となりました。これは主に、基幹システム変更に伴う支払手数料が増加したことによります。この結果、営業利益は991百万円(前年同期比66.1%の増加)となりました。
営業外損益は、持分法による投資利益98百万円と受取賃貸料11百万円の計上により営業外収益は117百万円となり、支払利息30百万円と支払手数料10百万円の計上により営業外費用は43百万円となりました。この結果、経常利益は1,065百万円(前年同期比67.6%の増加)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
特別損益は、固定資産売却益1百万円の計上により特別利益は1百万円となり、基幹システム変更に伴う損失51百万円の計上により特別損失は51百万円となりました。法人税、住民税及び事業税を246百万円、法人税等調整額を△26百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は794百万円(前年同期比106.4%の増加)となりました。
⑤ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b. 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,949百万円となっており、主に製品製造に必要な原材料の仕入及び生産設備の維持管理費用、従業員に支払う給与、各事業所等の賃借料等といった事業成長に伴う運転資金、並びに新規事業案件への投資に備えております。なお、資金調達の機動性及び安定性の確保を目的として、取引金融機関と当座貸越契約を締結しております。
セグメント情報
(セグメント情報等)
【セグメント情報】
1.報告セグメントの概要
(1) 報告セグメントの決定方法
当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が経営資源の配分決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものであります。
当社グループは、取り扱う製品・商品及びサービス分野毎に事業部門を分けて事業活動を管理、運営しており、組織細胞用培地の製造・販売を主な事業とする「組織培養事業」、臨床・食品分野の病原菌検査等に使用する微生物検査用培地の製造・販売を主な事業とする「微生物事業」、及び医療機関からの委託を受けて細胞加工を行う「細胞加工事業」の3つを、当社グループの報告セグメントとしております。
(2) 各報告セグメントに属する製品及びサービスの種類
「組織培養事業」は、再生医療や免疫療法の研究用途で使用される無血清培地をはじめとする組織培養用培地を開発、製造・販売しております。
「微生物事業」は、臨床・食品分野の病原菌検査や、医薬品・化粧品など様々な分野の品質検査に使用される多種多様な微生物検出用培地を開発、製造・販売しております。
「細胞加工事業」は、再生医療等安全性確保法に基づき特定細胞加工物製造の許可を取得した施設において、医療機関からの委託を受けて細胞加工事業を行っております。
2.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額の算定方法
報告されている事業セグメントの会計処理の方法は、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」における記載と概ね同一であります。なお、セグメント間の内部取引は発生しておりません。
3.報告セグメントごとの売上高、利益の金額に関する情報及び収益の分解情報
前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
(注) 1.調整額は、以下のとおりであります。
(1) セグメント利益又は損失(△)の調整額△415,195千円は、各報告セグメントへ配分していない全社費用です。全社費用は、主に報告セグメントに帰属しない一般管理費であります。
(2) セグメント資産については、事業セグメントに資産を配分していないため記載しておりません。
(3) 報告セグメントに対して特定の資産は配分しておりませんが、減価償却費等の関連費用は配分しております。なお、減価償却費の調整額14,549千円には、報告セグメントに帰属しない管理部門に係る減価償却費が含まれております。
2.セグメント利益又は損失(△)は、連結損益計算書の営業利益と調整を行っております。
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
(注) 1.調整額は、以下のとおりであります。
(1) セグメント利益の調整額△528,441千円は、各報告セグメントへ配分していない全社費用です。全社費用は、主に報告セグメントに帰属しない一般管理費であります。
(2) セグメント資産については、事業セグメントに資産を配分していないため記載しておりません。
(3) 報告セグメントに対して特定の資産は配分しておりませんが、減価償却費等の関連費用は配分しております。なお、減価償却費の調整額15,746千円には、報告セグメントに帰属しない管理部門に係る減価償却費が含まれております。
2.セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益と調整を行っております。
【関連情報】
前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
1.製品及びサービスごとの情報
セグメント情報に同様の情報を開示しているため、記載を省略しております。
2.地域ごとの情報
(1) 売上高
(単位:千円)
(注)1.売上高は顧客の所在地を基礎とし、国又は地域に分類しております。
2.アジアの売上高には、連結損益計算書の売上高10%以上を占める中国の売上高509,962千円が含まれております。
(2) 有形固定資産
本邦に所在している有形固定資産の金額が連結貸借対照表の有形固定資産の金額の90%を超えるため、記載を省略しております。
3.主要な顧客ごとの情報
外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載はありません。
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
1.製品及びサービスごとの情報
セグメント情報に同様の情報を開示しているため、記載を省略しております。
2.地域ごとの情報
(1) 売上高
(単位:千円)
(注)1.売上高は顧客の所在地を基礎とし、国又は地域に分類しております。
2.アジアの売上高には、連結損益計算書の売上高10%以上を占める中国の売上高766,786千円が含まれております。
(2) 有形固定資産
本邦に所在している有形固定資産の金額が連結貸借対照表の有形固定資産の金額の90%を超えるため、記載を省略しております。
3.主要な顧客ごとの情報
(単位:千円)
【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】
該当事項はありません。
【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】
該当事項はありません。
【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】
該当事項はありません。