リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
1 デイサービス事業・施設サービス事業に伴うリスク
(1)施設設置基準について
当社グループは、2024年3月末現在、デイサービスセンター29施設、有料老人ホーム44施設、グループホーム2施設を運営しております。
デイサービスセンター(通所介護施設)については、人員、設備等に関して「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第37号)」(以下「基準省令」という)により各種基準が定められており、介護保険上の通所介護事業者となるためには、設備基準として食堂及び機能訓練室(3㎡に利用定員を乗じて得た面積以上)、相談室、事務室、その他必要な設備及び備品を設けること、また、人員基準として利用定員が11人以上の事業所の場合、生活相談員、介護職員、看護職員、管理者を配置することとされており、さらには機能訓練加算を請求する場合は機能訓練指導員を配置する必要があります。
有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)については、基準省令第177条において耐火建築物又は準耐火建築物であること、居室の定員は原則1名とされ13㎡以上の床面積を確保すること等が定められており、基準省令第175条においては看護職員及び介護職員の合計数は、常勤換算方法で要介護者である利用者の数が3またはその端数を増すごとに1人を(3対1基準)、看護職員は、利用者の数が30を超える特定施設にあっては、常勤換算方法で1に利用者の数が30を超えて50又はその端数を増すごとに1を加えた人数、機能訓練指導員、計画作成担当者はそれぞれ1名ずつ、生活相談員は利用者の数が100又はその端数を増すごとに1名以上配置することが定められております。現在国の方でICTや介護ロボットを導入した場合の実証実験を行い3対1基準の見直しの検討が行われています。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護施設)については、設備基準として1ユニット定員は5人以上9人以下とし、居室においては定員を1名、床面積7.43㎡以上とし、ほかに居間、食堂、台所、浴室など日常生活を営む上で必要な設備を設けること、人員基準として介護従事者、計画作成者に加えて施設ごとに認知症介護に関する専門知識を有する常勤で専任の管理者を置くことなどが定められております。
現在、開設済みの当社グループ施設は、上記基準に定めるすべての基準を満たしておりますが、今後欠員が生じた場合や上記基準の変更により追加的な人員補充が必要となった場合等、上記基準を満たせなくなった場合には、現在提供している介護保険法上のサービスが通常の介護報酬で請求できなくなる(減額請求)可能性があります。
また、事業拡張に伴う施設の増設に当たっては、建物や有資格者の人員の確保について、制約を受けることとなります。
当社においては、人員基準を満たす人材獲得及び研修等に積極的に取り組み、職員定着率の向上に努めております。
(2)デイサービスセンター及び有料老人ホームの新規開設について
当社グループの今後の事業拡大においては、主力事業であるデイサービスセンター及び有料老人ホームを展開していく必要があります。しかし、デイサービスセンター及び有料老人ホームの開設については、訪問系介護サービス施設に比べ、施設規模が大きいため多額の資金負担が生じます。また、デイサービスセンター及び有料老人ホームの運営は人件費等の固定的な費用が多いため、新規施設では多くの利用者や入居者を獲得し経営が軌道に乗るまでは赤字が継続することとなり、一時期に複数のデイサービスセンターや有料老人ホームを新設した場合は、業績が一時的に悪化する可能性があります。さらに、有料老人ホームについては市町村もしくは広域連合の公募により選定されますので、時期や開設数を当社グループでコントロールできない可能性があります。
当社においては、各行政の施設整備計画を定期的に確認して公募の状況を把握し、用地に関する情報を多方面から収集して、事業所新設が円滑に行われるように努めております。
2 在宅サービス事業に伴うリスク
(1)設置基準について
当社グループは、2024年3月末現在、訪問看護ステーション6事業所、ヘルパーステーション3事業所、ケアプランセンター23事業所を運営しております。
これらの在宅サービス事業を行うには、各事業所ごとに厚生労働省令で定められた人員基準を満たす必要があります。また、人員基準を満たすには所定の有資格者を配置することが必要となります。現在、当社グループが運営している事業所は、人員基準をすべて満たしておりますが、今後欠員が生じた場合や基準の変更により追加的な人員補充が必要となった場合等、人員基準を満たせなくなった場合には、現在提供している介護保険法上のサービスが通常の介護報酬で請求できなくなる可能性があります。
当社においては、人員基準を満たす人材獲得及び研修等に積極的に取り組み、職員定着率の向上に努めております。
3 事業全体に係るリスク
(1)競合について
2000年4月の介護保険法の施行により、介護サービス業者の新規設立、大手企業や異業種の新規参入、地方自治体、医療法人等の様々な事業主体が介護市場に参入しました。高齢化社会の進展により要介護認定者の増加基調が予想されることから、今後も既存事業者の事業拡大及び新規参入業者の増加が予想されます。従って、今後の新規参入や競争の激化に伴い、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。このため、当社グループにおきましては、経営理念に基づいたきめ細やかなサポートを提供することで競合他社との差別化を図る考えであります。
(2)従業員の確保について
当社グループが事業規模を維持・拡大していくためには、それに見合った人員の確保が必要となります。介護保険事業の拡大に伴い、全般的に有資格者に対する需要が増大している中、こうした資格を持つ人材の獲得は容易ではなく、また、人材の育成も施設の増設を中心とした事業規模の拡大に追いつかないおそれがあります。このことは、新たな施設の増設ができない等、当社グループの事業拡大に当たり影響を与える可能性があります。当社グループにおきましては、人材育成及び職員定着率の向上を重要な課題と考え、研修等に積極的に取り組んでおります。
(3)介護保険法に基づく指定等について
当社グループは、介護保険法第70条及び第79条により都道府県知事の指定を受け、デイサービス事業、施設サービス事業、在宅サービス事業を行っております。
2006年4月1日の法改正により、指定介護予防サービス(指定介護予防通所介護事業、指定介護予防訪問看護事業、指定介護予防訪問介護事業、指定介護予防特定施設入居者生活介護事業)を法第115条の二による都道府県知事の指定を受け、当該事業を行っております。居宅介護支援事業につきましては、法第115条二十一により指定介護予防支援事業者(地域包括支援センター)より一部業務の委託を受けて支援事業を行っております。認知症対応型共同生活介護事業につきましては、指定・監督権限が都道府県知事から市町村長に移行し、地域密着型サービス事業(指定認知症対応型共同生活介護事業)及び地域密着型介護予防サービス事業(指定介護予防認知症対応型共同生活介護事業)を法第78条の二及び第115条の十一により市町村長の指定を受け、当該事業を行っております。また、これらの指定に関して、介護保険法では2006年4月より6年間の有効期限が設けられており、引き続き指定事業所として事業を行う場合は、更新手続が必要になっております。
さらに有料老人ホームの開設に当たっては老人福祉法第29条により都道府県知事への届け出が必要となります。
また、介護保険法第77条及び第84条、第115条の八、十七及び二十六に指定の取消し事由として、設備基準や人員基準等の各種基準が充足できなくなった場合のほか、介護報酬の不正請求、帳簿書類等の虚偽報告、検査の忌避等が定められております。現在、当社グループには、これらの指定の取消し事由に該当する事実は発生しておりません。
万一、指定の取消し事由に該当する事実が発生した場合には、上記指定が取消されることとなり、当社グループ事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、今後も業務管理体制及び法令遵守の体制を整えていく考えであります。
(4)介護保険法による影響について
当社グループの事業は、介護保険法の適用を受けるサービスの提供を内容とし、各種介護サービス費用の約9割(収入に応じて8割及び7割)とケアプランの10割は、介護保険により給付されるため、当社グループの事業には介護保険制度の影響を受ける部分が多くあります。
介護保険法は、施行後5年を目処として法律全般に検討が加えられ、その結果に基づいて見直しが加えられることとされておりますが(同法附則第2条)、法令解釈や自治体等の実務的な取扱が必ずしも一定していない側面があるため、関係法令の改正や法解釈、実務的な取扱いの変更により、現状の当社グループ事業の円滑な運営が阻害され、または、事業内容の変更を余儀なくされる可能性があります。
また、介護報酬の基準単位もしくは一単位当たりの単価又は支給限度額は、当社グループの事業の状況に関わりなく介護保険法及びそれに基づく政省令により定められているため、その改定により事業の採算性に問題が生じる可能性もあります。さらに、不況による保険料徴収の減少や少子高齢化による負担者層の減少が予想されるなど、介護保険の財政基盤は磐石ではなく、介護保険の自己負担分が引上げられた場合などには、介護保険制度の利用が抑制される可能性があり、この場合、当社グループの業績も影響を受けるおそれがあります。
さらに、介護保険法及びそれに基づく政省令等においては、利用者の保護という観点から、事業者の利用者に対する行為について詳細に規定されており、当社グループも介護サービス事業者としてこれらの規定に従って事業を行うことが法令上求められております。当社グループは、従業員の教育や業務マニュアルの整備等により法令遵守のために必要な体制を構築してまいりましたが、万一、法令違反等により監督官庁から何等かの処分を受けることとなった場合には、施設の運営に影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、施設運営を円滑に行えるよう、介護保険法改正について社内研修を行っております。
(5)情報管理について
当社グループが提供しているサービスは業務上、極めて重要な個人情報を取り扱います。在宅介護サービスでは、利用者の家庭に上がってサービスを実施しているため、当社グループスタッフは利用者本人のみならず、その家族等を含めた様々な個人情報に接することになります。
当社グループは、顧客情報については十分な管理を行っておりますが、万一、顧客の情報が外部に流出した場合には、当社グループの信用力が低下し、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、利用者の増加に伴って管理すべき情報の電子化や高度なセキュリティシステムが必要になるなど情報管理に関するコストが増加する可能性があります。
当社グループでは今後も内部統制の整備及び適正な運用を行う考えであります。
(6)高齢者等に対する事業であることについて
当社グループの事業は、要介護認定を受けた高齢者等に対するものであることから、サービス提供中の転倒事故や感染症の集団発生等、施設内並びに在宅介護サービス提供中の安全衛生管理には細心の注意を払い、従業員の教育指導はもとより運営ノウハウが蓄積された業務マニュアルの遵守を徹底するなど、万全を期しております。しかしながら、万一、事故等が発生した場合には、当社グループの信用力が低下し、連鎖的に利用を控える方が増えるおそれがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)自然災害や感染症の流行について
地震、台風、大雨、大雪等の自然災害が発生しやむなく業務を停止せざるを得なくなる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、インフルエンザ等の感染症が流行した場合には、利用者が当社グループ施設の利用を控えることが想定されるため、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループでは、自然災害時に安否確認を迅速に行う体制、避難所として施設を開放することで、利用者だけで無く、地域住民と密接な関係を構築するように努力しております。また感染症に関する情報を早期に発信し、自宅での予防対策までフォローするようにしております。
(8)風評等の影響について
介護サービス事業は、利用者及びその介護に関わる方々の信頼関係や評判が当社グループの事業運営に大きな影響を与えると認識しております。社員には、当社グループの経営理念を浸透させ、利用者の信頼を得られる質の高いサービスを提供するよう日頃から指導・教育をしておりますが、何らかの理由により当社グループに対するネガティブな情報や風評が流れた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このため入社時のオリエンテーションや新人研修を綿密に計画し実施することで、ネガティブな情報や風評に左右されない社員を育て、経営理念に基づく施設運営を行っております。
(9)金利変動リスクについて
新規施設の開設には多額の投資が必要であり、当社グループの事業計画を達成する上で新規施設開設のための資金調達が不可欠となります。当社グループは従来、新規施設開設資金を銀行からの借入金により調達してまいりましたので、有利子負債の残高が2024年3月期末現在15,218百万円となっており、総資産に占める有利子負債残高の比率は2024年3月期末74.9%と借入金依存度が高い水準にあります。
なお、当社グループの売上高に対する支払利息の比率は、2024年3月期において1.8%となっております。今後は資本市場からの調達等、資金調達手段の多様化のための施策を講じてまいりますが、他の手段により必要な資金が調達できない場合には、引き続き銀行等からの借入により対応することとなり、それにより借入金が増加することが想定されます。この場合、今後金利が0.1%上昇した場合でも経営成績には10百万円程の影響があり、当社グループの利益を圧迫する可能性があります。このため、各施設は利益率向上に注力し、自己資本を高めて借入依存度を低下させる対策をとっております。
(10)固定資産の減損に関するリスク
当社グループは、複数の事業所を運営しており、当該事業所に係る建物・土地などの固定資産を保有しております。事業所の収益性の悪化により、固定資産の簿価を割引前将来キャッシュ・フローで回収できない場合には、当該固定資産について減損処理を行うことになります。今後も減損損失を計上する可能性があるため、各事業所においてそれぞれの特色を出し、地域でも選ばれる事業所作りを行い、収益性を高めていく考えであります。なお、当連結会計年度においては減損損失を246百万円計上しております。
(11)環境・気候変動について
当社グループは、気候変動に係るリスク及び収益機会を巡る課題への取り組みが重要であると考えております。今後は、更なる環境負荷低減を目指し、脱炭素社会実現への責務を果たすべく運営する老人ホームやデイサービスでの省電力設備導入等により温室効果ガスの排出量削減等の環境課題に取り組み、持続可能な社会の実現を目指してまいります。しかしながら、これらの対応が遅れた場合や適切に行われなかった場合、当社グループの企業イメージに対する社会的な信用低下を招き、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、中長期的な企業価値の向上及び経営基盤強化のため、事業拡大による成長のための投資資金及び内部留保の充実と利益配分とのバランスを念頭に、株主への安定継続した配当に加え業績の伸長に応じた配当を実施すべきものと考えております。
当社は期末配当として年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。
これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
当事業年度の配当につきましては、上記方針に基づき1株当たり4円の配当を実施することを決定しました。
内部留保資金につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、コスト競争力を高めるとともに新規事業への展開を図るために、有効に投資してまいりたいと考えております。
また、当社は「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年6月20日 |
45 |
4 |
定時株主総会決議 |