人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数3,063名(単体) 10,668名(連結)
-
平均年齢40.1歳(単体)
-
平均勤続年数13.4年(単体)
-
平均年収6,147,597円(単体)
従業員の状況
5【従業員の状況】
(1)連結会社の状況
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2024年3月31日現在 |
|
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
|
フィルム |
2,126 |
[196] |
ライフサイエンス |
1,363 |
[84] |
環境・機能材 |
2,095 |
[156] |
機能繊維・商事 |
3,856 |
[781] |
不動産 |
55 |
[10] |
その他 |
563 |
[118] |
全社(共通) |
610 |
[127] |
合計 |
10,668 |
[1,472] |
(注)従業員数は就業人員数であり、臨時従業員数は[ ]内に年間の平均人員を外数で記載しています。
(2)提出会社の状況
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|
|
2024年3月31日現在 |
従業員数(人) |
平均年齢(歳) |
平均勤続年数(年) |
平均年間給与(円) |
|
3,063 |
[437] |
40.1 |
13.4 |
6,147,597 |
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
|
フィルム |
1,480 |
[69] |
ライフサイエンス |
726 |
[79] |
環境・機能材 |
72 |
[11] |
機能繊維・商事 |
157 |
[151] |
不動産 |
2 |
[-] |
その他 |
16 |
[-] |
全社(共通) |
610 |
[127] |
合計 |
3,063 |
[437] |
(注)1.従業員数は就業人員数であり、臨時従業員数は[ ]内に年間の平均人員を外数で記載しています。
2.平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。
3.従業員数が前事業年度末に比べ、大幅に減少していますが、その主な理由は、東洋紡エムシー㈱への出向によるものです。
(3)労働組合の状況
当社グループ各社の労働組合は、主に日本労働組合総連合会(連合)に属する全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟(UAゼンセン)に加盟しています。
なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。
(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
① 提出会社
当事業年度 |
||||
管理職に占める 女性労働者の割合(%) (注)1 |
男性労働者の 育児休業取得率(%) (注)1 |
労働者の男女の賃金の差異(%) (注)1、2 |
||
全労働者 |
うち正規雇用労働者 |
うちパート・ 有期労働者 |
||
5.5 |
97.7 (注)3 |
64.4 |
66.8 |
43.6 |
(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)(以下「女性活躍推進法」といいます)の規定に基づき算出したものです。
2.男女の賃金格差について、同一労働の賃金に差はなく、等級別人数構成の差および、製造拠点において割増賃金の支給対象となる夜勤等の女性従事者が少ないことによるものです。
3.全労働者における平均値です。雇用管理区分ごとの内訳は(総合職)88.4%、(一般職)133.3%であり、その他の雇用管理区分の社員(事業所社員、パートタイマー、契約社員およびシニア社員)における当事業年度の該当者はありません。なお一般職の数値が100を超過しているのは、配偶者の出産と本人の育児休業取得との年度が異なることによるものです。
4.出向者の計算方法は女性活躍推進法に従っており、東洋紡エムシー㈱、東洋紡STC㈱への出向者数を含んでいます。
② 連結子会社
当事業年度 |
||||||||
名称 |
管理職に占める女性労働者の割合(%) (注)1 |
男性労働者の育児休業取得率(%) (注)1 |
労働者の男女の賃金の差異(%) (注)1、2 |
|||||
全労働者 |
正社員 |
非正社員 |
|
全労働者 |
うち正規雇用 労働者 |
うちパート・有期労働者 |
||
㈱ユウホウ |
- |
- |
60 |
0 |
- |
- |
- |
|
呉羽テック㈱ |
- |
25 |
- |
- |
(注)3 |
- |
- |
- |
東洋紡エンジニアリング㈱ |
1.4 |
- |
50 |
0 |
|
- |
- |
- |
日本エクスラン工業㈱ |
- |
- |
- |
- |
|
68.6 |
82.8 |
55.7 |
御幸毛織㈱ |
2.8 |
- (注)4 |
- |
- |
|
69.4 |
66.3 |
81.7 |
東洋クロス㈱ |
1.9 |
- |
- |
- |
|
68.0 |
71.6 |
62.3 |
コスモ電子㈱ |
11.1 |
50 |
- |
- |
(注)5 |
70.0 |
69.6 |
91.6 |
(注)1.女性活躍推進法の規定に基づき算出したものです。なお、女性活躍推進法および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表をしないものについては「-」と表示しています。
2.男女の賃金格差について、同一労働の賃金に差はなく、等級別人数構成の差によるものです。
3.全労働者における平均値です。雇用管理区分ごとの内訳は(管理職)0%、(総合職)0%、(一般職)33%です。
4.雇用管理区分ごとの内訳は(総合職)100%、(契約販売員)0%、(パート)0%、(シニア社員)0%です。
5.全労働者における平均値です。雇用管理区分ごとの内訳は(正社員)0%、(契約社員)100%です。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2【サステナビリティに関する考え方及び取組】
文中の将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とはさまざまな要因により大きく異なる可能性があります。
(1)サステナビリティ戦略
当社グループは、創立者である渋沢栄一が座右の銘の一つとしていた『順理則裕』を企業理念としています。2019年、改めて創業の精神に立ち戻り、時代の変化に対応しながら、社会への貢献を通じて、成長軌道を描き続ける会社となるべく、企業理念体系「TOYOBO PVVs」として再整理しました。さらにこの企業理念体系を具体的にするべく、2022年5月に長期ビジョン「サステナブル・ビジョン2030」を策定・公表しました。
「サステナブル・ビジョン2030」は、今後の事業環境の変化を想定し、企業理念体系のビジョン「素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続ける」を基軸として、当社グループの「2030年のありたい姿」と「サステナビリティ指標」およびその「アクションプラン」を示すものです。当長期ビジョンでは「サステナブル・グロースの実現」、すなわち「社会のサステナビリティに貢献するサステナブルな(成長を実現する)会社」をめざします。
① ガバナンス
当社グループは、社長執行役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、統括執行役員会議メンバー(事業本部長、コーポレート・スタッフ部門の管掌役員)が出席し、全社的なサステナビリティ活動を推進しています。同委員会は、当事業年度から年6回開催し、当社グループのマテリアリティ(重要課題)として設定した項目に関し、リスクと機会を踏まえてKPIを設定し、その進捗状況と施策の有効性を報告・確認しています。また、2024年度以降は社会動向の変化に伴うリスクと機会の検証状況についても報告する予定です。
同委員会での議論は取締役会に適宜報告します。
② 戦略
「サステナブル・ビジョン2030」では、サステナビリティ経営に向けたアプローチを「“Innovation”と3つの“P”、すなわち“People” “Planet” “Prosperity”」と整理しました。この“Innovation”は、1. 「人」と「地球」を最終的な「お客さま」と捉えたマーケティング思考、2.「素材+サイエンス」に基づき、独自の工夫やアイディアによるサイエンスベースド・イノベーション、3.多様なパートナーとのオープンイノベ―ション等を通じた価値共創、を意味します。
また、“People”は、「人」を中心とした社会課題の解決策を、“Planet”は「地球」全体を意識した社会課題の解決策を、そして当社グループが考える“Prosperity”とは、企業理念にのっとり、課題解決を通じて「ゆたか」な社会を実現し、同時に当社グループの企業価値も向上させることを意味します。その実現に向けて、当社グループが事業等を通じて解決に貢献する5つの社会課題――「People」に関する「従業員のウェルビーイングとサプライチェーンの人権」「健康な生活&ヘルスケア」「スマートコミュニティ&快適な空間」、「Planet」に関する「脱炭素社会&循環型社会」「良質な水域・大気・土地&生物多様性」――を設定し、これらの解決にチャレンジします。
③ リスク管理
当社グループでは、サステナビリティ委員会において、社会動向の変化を踏まえ、マテリアリティ各項目のリスクと機会について変動の有無を検証し、活動に反映しています。
当社グループは、社長執行役員を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、統括執行役員会議メンバー(事業本部長、コーポレート・スタッフ部門の管掌役員)が出席し、全社的なリスクマネジメント活動を推進しています。本委員会は、当事業年度において2回開催しました。本委員会では、グループ全体のリスク管理方針を策定するとともに、リスクマネジメント活動(特定・分析・評価・対応)を統括し、実効的かつ持続的な組織・仕組みの構築と運用を目指すことにより、リスク管理体制の強化に努めています。当社グループに重大な影響を与えるリスクを中心に、当該リスクの主たる担当部門を選定し、その回避・低減策を策定しています。各部門が中心となって対応し、本委員会でその活動状況を確認しています。
なお、リスクマネジメント活動の起点として、全社的なリスクに関するアセスメントを実施、各種リスクシナリオをベースとして影響度(※)と発生可能性(※)の2軸で評価した結果に基づき、重視すべき全社重大リスクを抽出しています。なお当該リスクについては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
(※)影響度と発生可能性の詳細
影響度:「影響範囲」、「業務停止期間」、「人的被害」、「レピュテーション」、「財務」に関して「大規模の被害に相当」、「中規模の被害に相当」、「小規模の被害に相当」の3段階で評価
発生可能性:「頻繁に発生」、「度々発生」、「稀に発生」の3段階で評価
④ 指標と目標
マテリアリティの取組みの進捗管理を確実なものとするため、マテリアリティごとに担当役員を決定し、KPI(目標)を設定しています。事業活動によるマイナスの影響を最小化しつつ、プラスの影響を最大化する取組みを整理していきます。なお、この進捗はサステナビリティ委員会で管理し、指標・目標は年1回見直ししています。
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取組み)
当社グループでは、気候変動が当社グループやステークホルダーにもたらす影響の大きさを認識するとともに、「脱炭素社会&循環型社会」の実現を重要なサステナビリティ目標としています。2020年1月に、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、同提言にのっとった取組みと開示を進めています。
2022年5月、脱炭素社会・経済に向けた移行計画(「カーボンニュートラルへのロードマップ」)を含む「サステナブル・ビジョン2030」を公表しました。パリ協定が求める水準と整合させ、事業活動における温室効果ガス(GHG)排出量(以下、Scope1,2)を2030年度までに2013年度比で46%(2020年度比で27%)以上削減することを目標とし、科学的根拠に基づいた目標として、SBT(Science Based Targets)認定を取得しています。さらに、2050年度までにネットゼロにすることをめざしています。また、東洋紡グループのバリューチェーン全体のGHG排出量を上回る削減貢献量創出の実現を、2050年度の目標としています。
■カーボンニュートラルへのロードマップ
① ガバナンス
気候変動関連課題の最高責任者である社長執行役員(取締役社長)を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、気候変動関連課題の解決に向けた上位方針や目標設定について審議しています。取締役会はその報告を定期的に受け、上位方針や目標などの重要事項を承認し、活動の進捗を監督しています。
2023年度は、サステナビリティ委員会を6回開催し、その結果を受け、取締役会において定期報告のほか臨時報告を行いました。この結果、取締役会で次の内容を決議し、GHG排出量削減取組みを加速しています。
・サステナビリティ委員会傘下の委員会体制を見直し、新たに「気候変動・生物多様性委員会」を設置
・経済産業省が設立した「GXリーグ」に正式参画し、GXリーグにおける自主的な排出量取引制度(GX-ETS)に向けた自主目標を承認し公表
また、GHG排出量削減の実効性を高めるために、削減状況と連動した役員報酬(インセンティブ)について検討を開始し、2025年度の報酬からの導入をめざしています。
■体制図
② 戦略
(イ)概要
当社グループは、「サステナブル・ビジョン2030」の中で「脱炭素社会&循環型社会」の実現を重要なサステナビリティ目標の一つとしています。また、TCFD提言に沿い、パリ協定に基づく気候変動シナリオを前提とした将来リスクと事業機会を分析・整理しました。それらリスクと機会の影響と財務インパクトを特定した上で、対応策および指標・目標を設定し、経営戦略の強靭性(レジリエンス)向上を図ります。
(ロ)シナリオ分析
温暖化対策の進展によってさまざまなシナリオが考えられる中、以下「シナリオ分析の概要」シナリオを典型的なものとして参照しました。
今世紀末までの世界の平均気温の上昇が1.5℃に抑えられるシナリオと、4℃まで上昇するシナリオのそれぞれについて、2050年までの事業への影響と、当社グループの新たな機会を検討しました。
なお、前事業年度まで2℃未満シナリオを参照していた部分については、世界的潮流にのっとり、当事業年度より1.5℃シナリオを参照し、検討しました。その結果、2℃未満シナリオとの差異は認められませんでした。
■シナリオ分析の概要
設定シナリオ |
1.5℃シナリオ |
4℃シナリオ |
社会像 |
今世紀末までの平均気温の上昇を1.5℃に抑える努力を追求し、持続可能な社会の発展をかなえるため、大胆な政策や技術革新が進められる。脱炭素社会への移行に伴う社会変化が、事業に影響を及ぼす可能性が高い社会になる。 〈事例〉 ●炭素税の導入・炭素価格の上昇 ●自動車の電動化シフト、再生可能エネルギーの拡大 |
パリ協定に即して定められた約束草案等の各国政策が実施されるも、今世紀末までの平均気温が成り行きで最大4℃まで上昇する。温度上昇等の気候の変化が、事業に影響を及ぼす可能性が高い社会になる。 〈事例〉 ●大雨による洪水被害の増大 |
参照シナリオ |
●「NZE」(IEA WEO2023) ●「APS」(IEA WEO2023) ●「SDS」(IEA WEO2021/ETP2020) ●「SSP1-1.9」(IPCC AR6) ●「RCP2.6」(IPCC AR5) ●「Global Ambition scenario」(OECD Global Plastics Outlook) |
●「SSP5-8.5」(IPCC AR6) ●「RCP8.5」(IPCC AR5) ●「STEPS」(IEA WEO2023/ETP2020) |
リスクと機会の傾向 |
移行面(規制強化などの社会変化)でのリスクおよび機会が顕在化しやすい |
物理面(気象の変化など)でのリスクおよび機会が顕在化しやすい |
(ハ)シナリオ下のリスクと機会の洗い出し
1.5℃シナリオと4℃シナリオを踏まえ、気候変動に特化した当社グループのリスク・機会の抽出を行いました。抽出されたリスク・機会の項目を集約し、社会の変化という観点でまとめ直した上で、それぞれの対策案を検討しています(下表:「シナリオ別のリスク/機会とその対策」)。「サステナブル・ビジョン2030」を踏まえ、影響度と発生可能性の2軸による評価の結果、特に重要であると認識したリスクと機会は後述の通りです。また、分析の対象とした期間は、「短期」を3年程度、「中期」を2030年まで、「長期」を2050年までとしています。
当社グループでは、原材料調達を含むサプライチェーン全体でのGHG排出量の削減を、リスク低減と機会創出の両面で捉えています。具体的には、Scope1,2の計画的な削減により、将来の炭素価格負担を軽減するとともに、お客さまからの脱炭素化要求に確実に応えられるように備えます。
また、原材料をリサイクル材やバイオマス由来素材へシフトすることにより、石油由来資源への依存度を下げ、将来の事業リスクを低減するとともに、事業機会の獲得・拡大につなげていきます。
さらに、水資源の希少化による様々な高度水処理の需要の高まりに対し、低エネルギーで淡水の造水が可能な海水淡水化用膜や、水資源のリサイクルを促進する高効率濃縮用膜の開発・販売により、事業拡大につなげていきます。
また、従来技術からの置き換えによるGHGの削減貢献製品の事業拡大を見込んでいます。当社グループの代表的製品として、活性炭素繊維(Kフィルター)を用いたVOC回収装置があります。EV関連の生産工場等で発生する揮発性有機化合物(VOC)(※)の除去を省エネルギーで行い、さらに有機溶剤の回収・再利用を可能とすることでGHGの削減と環境負荷低減の両面に寄与します。
(※)Volatile Organic Compounds
■シナリオ別のリスク/機会とその対策
社会の変化およびその影響 |
リスク/機会項目 |
当社グループの対策 |
||
区分 |
期間 |
内容 |
||
脱炭素社会への移行に伴う影響 (広範囲に及ぶ政策・法規制・技術・市場の変化等) |
移行・ リスク |
短期 |
炭素価格の導入 |
・GHG排出量削減計画の推進 (省エネルギー、生産効率向上、燃料転換、再生可能エネルギー導入他) ・インターナルカーボンプライシング制度の活用 |
中期~ 長期 |
原燃料価格の上昇 (炭素価格の転嫁等) |
・非石油由来資源へのシフト ・サプライヤーへの働き掛け・連携(低炭素原料開発等) ・原材料調達手段の多様化(複数購買・現地調達を拡大) |
||
省エネルギー化推進・高効率設備導入等に伴うコスト増加 |
・生産プロセスの革新・超高効率化の追求 ・GX経済移行債やトランジションファイナンス等の活用 ・バリューチェーン全体における生産の高効率化 (関係会社との統合・連携強化、M&A等) |
|||
製品製造時の低炭素/脱炭素化要求への対応に伴うコスト増加 |
・再生可能エネルギーの導入・調達拡大 ・生産プロセスの高効率化、省エネルギー化推進 ・製品価格への転嫁 |
|||
石油由来資源の削減や代替化する要請の高まり |
・原材料のリサイクル材やバイオマス由来素材へのシフト加速 ・石油由来資源に依存する汎用素材事業の見直し |
|||
移行・ 機会 |
中期 |
低炭素/脱炭素型素材や製品の需要増加 |
・原材料のリサイクル材やバイオマス由来素材へのシフト加速 ・微生物(酵母)を活用したバイオ事業の生産プロセス革新(バイオものづくり) ・原材料(リサイクル材やバイオマス由来素材)の調達課題(材料の逼迫)への対応 ・低炭素/脱炭素型素材での製品開発・商品企画の推進 ・革新的な低炭素/脱炭素型素材の開発加速 ・低炭素/脱炭素型製品の生産/品質管理体制の強化 |
|
GHG排出削減貢献につながる製品の需要拡大 |
・削減貢献視点でのお客様を含めたサプライチェーンでの連携 ・従来技術からの置き換えによる削減貢献に寄与する製品開発・商品企画(※)の加速 (※)省エネルギー型の海水淡水化膜、溶剤の燃焼処理を回避し再利用を可能にするVOC回収装置、廃液処理由来のGHG排出の低減に寄与する水現像フレキソ版、GHG多排出工程である塗装を代替する塗装代替フィルム等 |
|||
再生可能エネルギー・蓄電池関連市場の拡大 |
・再生可能エネルギー/蓄電池関連事業(※)の製品開発・商品企画の強化 ・東洋紡と三菱商事による合弁会社「東洋紡エムシー株式会社」の立ち上げによるメガトレンドの先取りや海外展開、ソリューション提供力の強化 (※)浸透圧発電用膜、浮体式洋上風力用スーパー繊維・フィルム、リチウムイオン二次電池(LIB)工場用VOC回収装置、水素発生装置関連素材等 |
社会の変化およびその影響 |
リスク/機会項目 |
当社グループの対策 |
||
区分 |
期間 |
内容 |
||
気候変動の進行に伴う影響 (資産に対する直接的な損傷や、サプライチェーンの寸断による間接的な影響、技術・市場の変化等) |
物理的・ リスク |
短期~ 中期 |
自然災害による原材料の供給停止 |
・在庫水準見直し、複数購買の拡大 ・物流ルートの多様化 |
水害(洪水・高潮等)による設備損壊、操業停止 |
・生産設備/動力設備等の高耐久化や高台移設/かさ上げ ・生産拠点の分散・移転 ・BCP訓練実施 |
|||
物理的・機会 |
中期 |
土木工事の需要増加 |
・減災/復旧工事用製品(※)の拡充 (※)防砂シート、コンクリート剥離防止シート、軟弱路床改善素材等 |
|
水不足や干ばつによる海水淡水化の需要増加
淡水希少化による産業排水の無排水(ZLD)化(※)の需要増加
(※)Zero Liquid Discharge |
・海水淡水化用膜(RO/FO膜等)(※)の販売拡大 ・RO/FO膜等の省エネルギー/高耐久性化開発 ・高効率濃縮用膜(BC膜)(※)のシステム開発 ・RO/FO/BC膜等の生産/品質管理体制の強化 ・三菱商事の海外ネットワークを生かした「東洋紡エムシー株式会社」による販売力の強化 (※)Reverse Osmosis, Forward Osmosis,Brine Concentration |
|||
長期 |
気温上昇に伴う感染症対策(予防・治療)の需要増加 |
・食品パッケージ関連製品の需要拡大 ・感染症関連製品・技術の研究開発促進 |
(ニ)特に重要であると認識したリスクと機会
<重要リスク1:水害(洪水・高潮等)による建物・設備への被害リスク>
当社グループの主力工場である、敦賀・岩国・犬山工場はいずれも河川や沿岸付近にあり、かつ低地にあることから水害リスクを有しています。気候変動が進行する場合、海面上昇や降雨パターンの変化により、水害リスクはさらに高まると想定しています。2030年代における水害による資産減少額(建物および装置等の被害額)を簿価より試算した結果、当該3工場の合計金額は最大で約600億円となりました。なお、当該3工場の水害による資産減少額は、当該3工場の建物や装置等の簿価に国土交通省が公表している水害による被害率(※)を乗じて、概算しています。
(※)国土交通省『治水経済調査マニュアル(案)』(令和2年4月)
(リスクを低減するための施策)
当社グループは、工場における水害リスクを気候関連の重要リスクと捉え、生産設備や動力設備等の高台移設/かさ上げ等の水害対策の強化を順次実施しています。
(シナリオ分析に使用した主なパラメータ)
・東アジアにおける海面上昇幅 (「RCP8.5」,IPCC AR5)
<重要リスク2:炭素価格の導入>
2030年度のScope1,2は、2020年度(実績90万トン-CO2)を基準とした成り行き(BAU)(※)シナリオにおいて、売上拡大に伴い約130万トン-CO2に増加します。BAUシナリオにおいて2030年度の炭素価格単価を1.5万円/トン-CO2と想定した場合の年間コストは約200億円となります。
(※)Business As Usualの略。ここでは特段のGHG排出削減対策を行わなかった場合を指します。
(リスクを低減するための施策とその費用)
当社グループは、Scope1,2の増加を気候関連の重要リスクと捉え、2030年度までの脱炭素社会・経済に向けた移行計画(「カーボンニュートラルへのロードマップ」)を含む「サステナブル・ビジョン2030」を2022年度に公表しました。このロードマップでは、エネルギー削減・省エネルギー化(生産効率向上含む)、燃料転換等、再生可能エネルギー導入を含むエネルギーの最適化等により2030年度のScope1,2を65.5万トン-CO2以下に低減することを目標としています。この場合の炭素価格による年間コストは、約100億円となり、BAUシナリオと比較し、約100億円のコスト削減効果があります。
このカーボンニュートラルへのロードマップに沿った2025年までの環境関連の累積投資額は、「2025中計」の安全・防災・環境投資額に含まれる計画です。なお、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)2025中期経営計画 ③2025中計後半の課題(2025年度以降を見据えたアクション)」に記載のとおり、資本効率を重視した経営を進めるべく同投資額を330億円から180億円に絞り込み、優先順位を付けて進めていきます。
(シナリオ分析に使用した主なパラメータ)
・炭素価格(Net Zero Emissions by 2050 Scenario, IEA WEO 2023)
<重要リスク3:石油由来資源の削減や代替化する要請の高まり>および
<重要機会1:低炭素/脱炭素型素材や製品の需要増加>
当社グループの主力事業であるフィルム事業はグループ全体の売上高の4割以上を占めます。また、現状のフィルム事業の売上高のうち、約90%が石油由来資源に依存したものです。今後の脱炭素に向けた社会変化(移行)の中で、お客さまを含む社会から石油由来資源の使用量削減や代替化の要請が高まることが予想され、気候関連の重要リスクとして認識しています。また、同時に低炭素/脱炭素型素材や製品の需要は増加し、事業機会が存在すると認識しています。
(リスクを低減する/機会を実現するための施策とその費用)
当社グループは、「サステナブル・ビジョン2030」において、石油由来資源の使用量低減につながる技術や取組み(※)をグリーン化と定義し、2030年度にフィルム製品の60%でグリーン化を実現することを目標に設定し、2023年度においてその比率は13%となりました。石油由来資源の使用量を減らすフィルム製品は、低炭素/脱炭素型製品でもあり、フィルム製品のグリーン化を推進することで、リスクの低減と共に、事業機会の獲得・拡大を図ります。フィルム事業の2030年度の目標売上高である約2,200億円のうち、約1,300億円が、当機会の獲得・拡大によるものです。
このフィルム製品のグリーン化を実現するための当期の費用は、グリーン化フィルムに関する研究開発投資額であり、フィルムセグメントの研究開発費である41億円に含まれます。
(※)バイオマス原料を用いたフィルムの開発、薄型軽量素材のフィルム開発(高強度化)、使用後のフィルムのリサイクルを容易にするための環境配慮設計(モノマテリアル化)、リサイクル原料を使用したフィルム開発およびリサイクル化自体の技術開発
<重要機会2:水資源の希少化による様々な高度水処理の需要の高まり>
気候変動の進行により、全世界で水不足や干ばつの発生リスクが高まると認識しています。今後、多くの地域で工業用水だけでなく生活用水の確保にも課題が生じ、淡水や淡水のリサイクル需要がますます高まると予測しています。
当社グループは、1970年代に紡糸技術を活用して開発されたRO膜により海水淡水化事業に乗り出しました。RO膜はその素材特性により、塩素殺菌に優れた耐久性があります。特に閉鎖性海域などの微生物が増殖しやすい海水での海水淡水化に強みがあり、中東湾岸諸国での安定的な淡水の供給に貢献しています。
また、この技術を応用して、高効率に溶液を濃縮するBC膜を開発・販売しています。工場排水の排水処理・リサイクルや無排水(ZLD)化、電池リサイクル工場での有価物(リチウムなど)回収などで売上拡大を見込んでいます。
(機会を実現するための施策とその費用)
当社グループは、「サステナブル・ビジョン2030」において、2030年度に、膜による海水淡水化で1,000万人分の水道水相当量を造水する目標を設定し、2023年度時点で、その造水量は520万人分となりました。今後も、三菱商事との合弁会社「東洋紡エムシー株式会社」の立ち上げによるソリューション提供力の強化により、社会課題の解決を通じた事業機会の獲得・拡大を図ります。
これらの目標の実現、事業機会獲得のための当期の費用は、水処理膜に関する研究開発投資額であり、環境・機能材セグメントの研究開発費である49億円に含まれます。
<重要機会3:温室効果ガス排出削減貢献につながる製品の需要拡大>
当社グループでは、従来技術からの置き換えによるGHGの削減貢献に寄与する製品・設備・ソリューションを数多く有しています。
EV関連、半導体、製薬、印刷等の工場で発生する揮発性有機化合物(VOC)を省エネルギーで除去し、有機溶剤の回収・再利用を可能とする装置(VOC回収装置)もその一つです。当社グループでは、1970年代からVOCの吸着材である活性炭素繊維(Kフィルター)と、それを用いたVOC回収装置を開発・販売しています。最新型のVOC回収装置では、加熱した窒素等を用いてVOCを脱着する方式を採用し、さらに窒素の循環使用を可能にしました。この装置は、非常にコンパクトで運転エネルギーが少なく、不純物の少ない高品質の有機溶剤が回収でき、従来技術である燃焼方式と比較し、GHG削減効果が高いことが評価されています。
また、Kフィルターは、塩化メチレンなど、低沸点のVOCも回収できる優位性があります。この特徴を活かし、塩化メチレンが多く発生するEV用リチウム電池のセパレータ製造工程での採用が世界中で広がっています。
将来的には、次世代電池である全固体電池や半導体等の生産工場での用途展開を進めます。また、脱炭素社会実現の観点から、可燃性VOCの焼却方式からの置き換え需要も高まると予測しており、GHGの削減貢献に寄与するソリューションを積極的に展開していきます。
(機会を実現するための施策とその費用)
2023年度は、東洋紡と三菱商事による機能素材分野における合弁会社「東洋紡エムシー株式会社」の事業を開始しました。三菱商事の持つ海外拠点やエンドユーザーとの接点を活かし、メガトレンドの先取りや海外展開、ソリューション提供力強化を行います。
当社グループは、「サステナブル・ビジョン2030」において、リチウムイオン電池セパレータ向けのVOC回収装置による、2030年度の処理風量目標を70億Nm3/年としました。2023年度時点で、その処理風量は、60億Nm3/年となり、今後も、社会課題の解決を通じた事業機会の獲得・拡大を図ります。
この目標を実現するための当期の費用は、VOC回収装置に関する研究開発投資額であり、環境・機能材セグメントの研究開発費である49億円に含まれます。
③ リスク管理
当社グループは、グループ全体の気候変動課題を含むリスクを一元的に管理する「リスクマネジメント委員会」を2021年度に設置しました。本委員会では、リスクマネジメント活動(特定・分析・評価・対応)を統括するほか、グループ全体のリスク管理に関する方針を策定し、PDCAサイクルを回すことにより、実効的かつ持続的な組織・仕組みの構築と運用および、リスク管理体制の強化に努めています。
「(1)サステナビリティ戦略 ③リスク管理」に記載した、全社的なリスクに関するアセスメントの結果を踏まえ、気候変動により激甚化する水害(洪水・高潮等)リスクを含む自然災害リスク等を、当社グループの重要なリスクとして管理しています。
④ 指標と目標
当社グループは、気候変動に対する目標を設定し、それぞれの施策を進めています。Scope1,2とScope3に対する目標はパリ協定が求める水準としており、2022年12月にSBTイニシアチブにより科学的根拠に基づいた目標(Science Based Targets)として認定されました。売上高が前期比3.6%増加する中、2023年度のScope1,2は82万トン-CO2(※)となりました(前期実績89万トン-CO2、前期比約8%削減)。2023年10月に岩国事業所の自家発電所をリニューアルし、燃料を石炭からLNG等に変換したことなどによりScope1の大幅な削減につながりました。
(※)2023年度のScope1,2排出量に含まれる国内の都市ガス燃焼起源CO₂排出量については、環境省の「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」(令和5年12月12日更新・令和6年1月16日一部修正)を使用して算出しています。
カテゴリ |
指標 |
目標 |
主な施策 |
2023年度 実績 |
|
GHG |
GHG排出量 |
Scope1,2 |
2030年度: 27%削減(SBT) (基準年度:2020年度) ※2013年度比:46%削減に相当 |
・エネルギー削減・省エネルギー化、生産効率向上、燃料転換、再生可能エネルギー導入等 |
2020年度比 9%削減 (82万トン-CO₂) |
2050年度:ネットゼロ |
・カーボンフリー燃料導入、再生可能エネルギー調達、生産プロセス革新等 |
(注1) |
|||
Scope3 (カテゴリ1と11) |
2030年度: 12.5%削減(SBT) (基準年度:2020年度) |
・カテゴリ1(※): 原材料のリサイクル材やバイオマス由来素材へのシフト加速 (※)購入した原材料・サービスに関連する活動(製造など)に伴う排出 ・カテゴリ11(※): VOC回収装置の省エネルギー化等 (※)販売した製品の使用に伴う排出 |
2020年度比 107%増加 (480万トン-CO₂)
(注2) |
||
気候関連の機会 |
フィルム製品のグリーン化比率 (移行リスクの低減も兼ねる指標として設定) |
2030年度:60%以上 |
・マテリアル/ケミカルリサイクルの推進、バイオマス原料の開発と採用増、フィルムの減容化等 |
13% |
|
膜による海水淡水化 |
2030年度: 1,000万人分の水道水相当量 |
・海水淡水化膜(RO/FO膜等)の販売拡大 ・RO/FO膜等の省エネルギー化/高耐久性化開発 ・RO/FO膜等の生産/品質管理体制の強化 ・合弁会社「東洋紡エムシー株式会社」による営業体制の強化 |
520万人分 |
||
リチウムイオン電池セパレータ向け VOC回収装置の処理風量(※)
(※)これまでに販売し稼働している装置による処理風量 |
2030年度:70億Nm3/年 |
・お客様のGHG削減貢献視点での営業活動の強化(お客様との連携) ・合弁会社「東洋紡エムシー株式会社」による営業体制の強化 ・EV用リチウム電池のセパレータ製造工程以外の分野への販売強化 |
60億Nm3/年 |
カテゴリ |
主な施策、2023年度実績 |
環境関連投資 |
・計画:2022-25年度累計180億円(安全・防災・環境投資額の合計) ・施策:自家発電設備の低炭素化、再生可能エネルギー設備の導入等 ・2023年度実績:岩国事業所の自家火力発電所の低炭素化、犬山工場・宇都宮工場・総合研究所の太陽光発電設備の導入 |
インターナルカーボンプライシング |
・2022年度に制度導入し、当期も運用中 社内炭素価格設定 10,000円/トン-CO2 ・CO2排出量の増減を伴う設備投資、開発設備への投資判断の拡大 |
報酬 |
GHG排出量削減の状況と連動した役員報酬(インセンティブ)について2025年度の報酬からの導入をめざし検討を開始 |
(注)1.2050年度までにネットゼロにすることをめざしています。なお、2023年度の再生可能エネルギーによる発電量は896MWhです。
2.2022年度実績です。
2023年度の実績については、2024年8月頃に当社ウェブサイトの統合報告書にて公表予定です。
(https://www.toyobo.co.jp/sustainability/report/)
(3)人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
当社グループは、「現場が主役」の考え方のもと、“人材マネジメント方針”に基づき、経営方針・事業戦略の実現に向けた人事・労務施策を展開し、企業価値の向上をめざしています。
人材マネジメントに関する実行責任者は、人事部門を統括する役員(常務執行役員)が選任されています。当社では、人事部門が主体となって、各事業所やグループ会社の人事部門責任者と定期的に情報交換・議論の場を設け、人材マネジメント関連の施策立案・実行につなげています。
① 人材マネジメント方針
企業理念体系「TOYOBO PVVs」を根本とした経営方針・事業戦略を実現するためには、「人」こそが最も重要で大切な経営資本であり、「人」=従業員が誇りとやりがいを持ち活躍する“人材マネジメント”の仕組み構築が必要不可欠です。
具体的には、「TOYOBO PVVs」を体現するという“かえない”ものを柱にしつつ、経営方針や事業戦略の変化に応じて能力や専門性を“かえ続ける”人材活躍サイクルを実現します。同時に従業員が安心して働ける環境の土台を構築していきます。
これらの実現が、従業員の幸せと当社グループの持続的成長につながると確信しています。
② 人材の育成に関する課題と戦略
(イ)”かえない“もの をめざす人材育成
<めざす人材・育成方針>
企業理念体系である「TOYOBO PVVs」を体現できる人材として、「Values:大切にすること」で示す「変化を恐れず、変化を楽しみ、変化をつくる」ことができ、そして、「TOYOBO Spirit:挑戦・信頼・協働」を実践できる人材の育成と組織開発をしていきます。
<課題>
企業理念体系は、2019年に策定されて以降、当社グループ内に理解が浸透しつつありますが、行動として実践できる人材育成と組織開発を継続していくことが必要です。
<戦略>
「TOYOBO PVVs」を体現する人材・組織を創出し続けるために、新卒新入社員研修、キャリア入社者研修、グループ会社管理者研修、管理職昇格者研修など各種研修の機会に「TOYOBO PVVs」に関する講義と対話を通じ、引き続き浸透を図っています。また、人事考課における行動評価に「TOYOBO Spirit」を含めることで、従業員の行動の変容と定着を促進しています。
〇指標:従業員一人当たりの教育投資額(教育時間)
(ロ)“かえ続ける”もの をめざす人材育成
<めざす人材・育成方針>
経営方針や事業戦略の変化に応じて能力や専門性を高める施策を充実させていきます。
次世代経営人材として、自ら率先して「変化をつくる」人材を育成していくとともに、当社グループが地球全体で事業活動を進めていくための人材を育成していきます。
<課題>
当社グループでは、各部門・各事業所・工場独自の教育体系を持ち、技術伝承・知識習得を図っていましたが、一部は重複や不足する内容がありました。
<戦略>
■全社共通教育
当社グループにとって必要な共通知識を階層別・職種別・目的別に定め、全社の教育体系のもと、運営しています。
■技術者教育
技術者育成を担う技術総括部が中心となり、各事業所で実施されている研修体系を検証し、各部門に共通する技術を学ぶ技術者教育体系を整備し、モノづくり人材育成を進めています。
■専門技術・知識
部門で異なる専門技術・知識は、各部門で教育しています。さらには、必要な資格の取得を昇格要件と連携することで、それぞれの部門・等級に求められる能力や専門性を確保し、高めています。
■次世代経営人材育成
選抜した人材に対して、経営幹部育成のための社内外の研修を計画しています。当社グループでは、次世代経営人材の育成施策を討議する「人材会議」を運用しています。主にマネジメントポストの後継者を討議する「全社人材会議」と、主に業務専門性の高いポジションの後継者討議をする「部門人材会議」の二つの会議を連携させることで、人材の発掘と育成を実践し、より効果を高めていきます。
■グローバル人材育成
当社では、国内従業員を対象に、海外グループ会社で行う「短期海外業務研修」を実施しています。若手、中堅の従業員にとってグローバルビジネス参画への強い動機付けとなり、キャリアアップの大きな機会ともなっています。また、海外グループ会社の現地幹部候補を対象として、日本で教育を受ける「ナショナルスタッフ研修」を実施しています。いずれも新型コロナウイルス感染症の影響で中断していましたが、短期海外業務研修は2022年度下期から、ナショナルスタッフ研修は2023年度から再開しています。
■能力開発支援
2022年7月からスタートした新人事制度では、個人の能力向上につなげるために、等級毎の期待能力を明示し、年1回実施する人事考課時に行うキャリア開発シートの作成と上司との面談を通じ、将来のキャリアや能力開発を考える機会を設けています。そのうえで、自身のキャリアの強みや弱みに基づいて、自己啓発として自身が必要な知識・スキルを学ぶことができるよう、公開研修やe-learning等のメニューを整え、自律的な学び・能力開発を支援しています。
〇指標:海外基幹人材の日本での研修受講者数、従業員一人当たりの教育投資額(教育時間)
③ 社内環境に関する課題と戦略
<めざす社内環境・整備方針>
安全・安心な職場環境を構築したうえで、従業員が「成長」「誇り」「やりがい」(=「働きがい」)を感じることができる職場を実現していくことが、従業員の幸せと当社グループの持続的成長につながると考えています。
・安全・安心な職場の構築
従業員の心身の健康保持・増進を進め、多様な人材それぞれが働きやすい職場環境や各種制度を備えた当社グループをめざしています。
・ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
東洋紡グループダイバーシティ推進方針を定め、Diversity(多様性:ダイバーシティ)、Equity (エクイティ:公平性)、Inclusion (インクルージョン:一体性)という3つの要素を柱としたダイバーシティを推進します。
・新人事制度の定着
「働きがい」を感じることができる新人事制度を定着させて、人材活躍のサイクルが機能することが、人的資本の最大化につながり、当社グループの経営方針・事業戦略の実現に貢献すると考えています。
<課題>
当社は、従来からダイバーシティ推進に取り組んできましたが、2021年4月、管理職に占める女性比率と男性の育児休業取得率の向上をめざして目標を定め、施策を展開しています。
業務集中による長時間労働が常態化した場合は、過重労働による健康障害が発生するリスクがあります。
<戦略>
■ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
当社グループでは、働き方・キャリア・性別・国籍・人種・信条の異なる人たちの中にあって、互いを認め合い、協力して目標に向けた努力をすることが、個人と組織の成長につながると理解しています。異なる意見、多様な人材の存在価値を認め合い、高い目標へと力を合わせて努力することを大切にしています。
女性の活躍推進のため、人事・労務総括部にダイバーシティ推進グループを設置し、2015年から女性の活躍推進活動に取り組んでいます。上司向けセミナー、女性リーダー育成セミナー、各事業所での進捗報告に関する説明会などを継続して実施し、従業員の意識改革を図っています。女性管理職(課長職以上)比率の数値目標を設定し、当該目標の達成に向け、新卒採用の女性比率を40%とする取組みを推進しています。また、社外のイニシアチブへも積極的に参画し、活動しています。こうした活動を通じ、当社(東洋紡㈱)は、女性活躍推進に関する「えるぼし(2段階目)」認定を2021年12月に取得しています。
また、育児支援として総合研究所内(滋賀県大津市)に企業内保育園「おーきっずⓇ」を開設しています。育児休業からの早期復帰、計画的な復帰を可能にするだけでなく、安心して出産できる環境の整備にもつながっています。
障がい者雇用率の向上については、労働環境の問題点の洗い出しを行い、整備につなげています。具体的な整備事案として、敦賀事業所、犬山工場の事務所をバリアフリー化し、その他の事業所についても順次バリアフリーを意識した建物改良、積極的な障がい者の採用を進めています。
ジェンダーマイノリティを含め多様な人材が働きやすい職場づくりを推進するため、全従業員向けのLGBTQ+相談窓口を設置しました。窓口を安心して利用できるよう、相談者の氏名などのプライバシーを守ること、相談・通報により相談者に不利益が生じないことを保証し、匿名での相談も受け付けています。
〇指標:管理職に占める女性比率
■健康経営
当社グループは、従業員の健康に配慮した働きやすい職場づくりを行うため、従業員の心身の健康保持・増進に向けて取り組んでいます。健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」に着手し、従業員の健康保持・増進、生産性の向上などを通じて組織の活性化や業績向上に寄与する取組みを推進しています。健康管理最高責任者(CHO)である人事部門を統括する役員(常務執行役員)のもと、労務部、産業医・看護職、健康保険組合が連携する推進体制を構築し、「TOYOBO健康経営宣言」における以下の重点施策に取り組んでいます。
・従業員の健康意識向上(啓発・教育)への取組み
・従業員の生活習慣改善(運動・食事・禁煙支援など)への取組み
・メンタルヘルス対策の強化(高ストレス従業員・職場への改善対応など)への取組み
当社では、2022年度以降、受動喫煙やニコチン依存について解説する禁煙セミナーやオンライン禁煙外来の案内、女性特有の健康課題に対する理解促進を目的としたセミナーを開催するなど、従業員に対する啓発活動を強化しています。健康診断は、生活習慣病やがんなど、法定項目以上に充実した検査を実施しています。がん検診については、健康保険組合と協働で希望者(本人・被扶養者)に実施し、家族も含めた疾病の早期発見・早期治療に努めています。必要な場合には診療所での検査・治療、専門医療機関への紹介も行っており、健康に関する相談体制・環境整備を行い、従業員の健康保持・増進を支援しています。
また、年1回、管理職向けにメンタルヘルスの研修を実施し、啓発・教育に取り組んでいます。全従業員を対象とするストレスチェックの結果を基に、高ストレス従業員への個別対応を行うとともに、集団分析結果を各職場の管理職向けにフィードバックするなどの対応に取り組んでいます。
グローバル展開の加速に伴って海外赴任者が年々増加しています。海外赴任者には赴任前に人間ドック受診・予防接種の義務付け、現地での医療体制支援および渡航先情報の提供などの支援を行っています。
当社(東洋紡㈱)は、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人認定制度」において、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)ホワイト500」に2年連続で認定されました。引き続き「ホワイト500」の認定取得継続をめざします。今後も従業員の健康保持・増進に積極的に取り組むなど、健康経営をより一層強化・推進することで、企業価値のさらなる向上をめざします。
〇指標:健康経営ホワイト500認定
■多彩な人材が働きやすい職場環境と制度の整備
従業員が意識を変えて効率的に働き、仕事と私生活の充実を図ることができるよう、「働き方改革」に取り組むとともに、育児・介護、フレックスタイム、テレワークなどの制度を整備しています。当社は、法定基準を上回る内容の「育児短時間勤務」「介護休職」などの制度を導入している他、5日間の「育児休職」制度を設けています。子どもが生まれた男性従業員に個別に制度の案内を行い、上司からも取得を勧めることで、男性の育児休業取得を促しています。「男性の育児休業取得は当たり前」となるよう、引き続き奨励していきます。こうした活動を通じ、当社(東洋紡㈱)は、高い水準で子育て支援に取り組む企業として、「プラチナくるみん」認定を2023年6月に初めて取得しました。
また、60歳で定年退職した従業員で、本人が希望し、通常勤務が可能と認められた者を再雇用するシニア社員制度を導入し、雇用を推進しています。再雇用されたシニア社員は、若手の育成や技術伝承の担い手として活躍しています。
〇指標:男性の育児休業取得率、年休取得率
■超過重労働による健康障害撲滅
当社では、健康障害の要因となり得る長時間労働の常態化を防ぐため、各事業所において労使で一定のラインを設定し、長時間労働につながる動きをチェックし、過度な労働時間の削減を進めています。また、各事業所で労使が協力し「定時にカエルデー」を設定して定時帰宅を促し、自分や家族のために時間を使うよう働きかけています。なお、3ヶ月連続で一定の基準を超えた場合、経営層に、状況および対応策を報告することとしています。
〇指標:年間法定時間外労働削減(2024年度以降は、長時間労働による健康障害防止に重点化を図るため、「過重労働者比率」に変更)
■新人事制度の定着
2022年7月から運用がスタートした新人事制度においては、従業員全員が「成長」「誇り」「やりがい」を感じることができるように、「能力向上を促進・支援」「職責に応じた処遇と評価」「マネジメント力の強化」「多様な専門人材の活躍推進」という四つの方針を掲げて実行しています。
■エンゲージメントサーベイ
上記各種戦略・施策への取組みの結果が、最終的に社員エンゲージメントの向上につながるものと考えています。2021年度から、全役員・全従業員を対象とする「組織風土・働きがい調査」を開始しました。同調査によって定期的に従業員エンゲージメントの状況を把握し、従業員が誇りとやりがいを持って主体的に業務に取り組める環境を整えていきます。
〇指標:エンゲージメントサーベイに基づく従業員の「働き方肯定度」の肯定的回答率
※本稿において「当社グループ」と記載していない箇所は、特段の注記がない箇所を除き、東洋紡㈱および、主要な子会社である東洋紡エムシー㈱、東洋紡STC㈱における記載です。各国の法規制・慣習を含む地域の特性および事業形態・事業規模、それらを背景とした人事制度も異なることから連結会社ベースでの記載が困難であり、東洋紡㈱と同一の人事制度を適用している主要な子会社を対象に施策を展開しています。
④ 指標と目標
上記方針に関する指標の内容および、当該指標による目標と当期の実績は以下のとおりです。
戦略項目 |
指標(KPI) |
目標 |
2022年度実績 |
2023年度実績 |
人材育成 |
海外基幹人材の日本での研修受講者数(注2) |
15人/年 (注1) |
コロナ禍のため 開催中止 |
7名 |
従業員一人当たりの教育投資額(教育時間) |
50千円/年 (21時間) (注1) |
50千円/年 (17.97時間) |
50千円/年 (18.22時間) |
|
社内環境整備 (土台の構築) |
管理職に占める 女性比率 |
5.0%以上 (注1) |
4.7% |
5.5% |
年休取得率 |
75%以上 (注1) |
80.2% |
83.2% |
|
年間法定時間外労働削減(360時間超の人数/対象者数)(注3) |
2.0%以下 (2019年度比 20%削減) (注1) |
4.2% |
4.3% |
|
過重労働者比率 (3ヶ月連続で一定の基準を超えた人数/対象者数)(注3) |
2025年度実績 対前年度(2024年度)比率改善 |
※2024年度より運用 |
||
男性の育児休業取得率 |
取得率80%以上、 平均取得日数14日 以上(2020年度比 20%増加)(注1) |
取得率104.3% 平均取得日数14.8日 |
取得率 97.7 % 平均取得日数19.3日 |
|
健康経営ホワイト500 認定 |
取得・維持 (注1) |
健康経営優良法人2023(大規模法人部門)ホワイト500 認定 |
健康経営優良法人2024(大規模法人部門)ホワイト500 認定 |
|
エンゲージメントサーベイに基づく従業員の「働き方肯定度」の肯定的回答率 ①「日常業務のやりにくさがない」 ②「一人一人の多様な意見や考え方を尊重」 |
肯定的回答率の 向上 |
① 38% ② 50% |
2022年度以降 隔年実施のため、未実施 |
(注)1.2025年度目標です。
2.「海外基幹人材の日本での研修受講者数」を除き、東洋紡㈱および、主要な子会社である東洋紡エムシー㈱、東洋紡STC㈱における目標と実績です。各国の法規制・慣習を含む地域の特性および事業形態・事業規模、それらを背景とした人事制度も異なることから連結会社ベースでの記載が困難であり、東洋紡㈱と同一の人事制度を適用している主要な子会社を対象として各種指標と目標を設定し、施策を展開しています。
3.「年間法定時間外労働削減」については、2024年度以降は長時間労働による健康障害防止に重点化を図るため、指標を「過重労働者比率」に変更します。