2024年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 528 100.0 -157 - -29.8

事業内容

3【事業の内容】

 当社は、数学的手法に基づいて独自に開発したコンピュータアルゴリズム(注1)である「DMNA」(Digital Media New Algorithm)を用い、国際標準規格に基づいた画像・音声/音響処理を行なう①ソフトウェアIP(注2)、②ハードウェアIP、③それらをシステムとして総合的に応用したソリューションの開発、ライセンス、及び販売を行なっております。

 DMNAとは、因数分解、折り返し演算、階層化処理等の数学的手法を用いて、演算の負荷を劇的に削減する新アルゴリズムであり、その応用分野は動画像に限らず、静止画、音声、音響等あらゆるデジタルメディアに広がっております。DMNAを用いて開発された製品は、低消費電力・高画質・高音質・低遅延等の優れた特長を持っております。

 従来、電子機器の開発においては、高画質化・高音質化を実現するために高価な部品を追加したり、消費電力を抑えるために画質や音質を犠牲にする等の手段が採られていましたが、当社の製品を搭載することで、高画質(高音質)かつ消費電力を抑えた電子機器を開発すること等が可能となるため、顧客は他社と比べて優位な電子機器をコストを抑えて開発・販売することができます。

 当社の提供する製品は、MPEG-4(注3)、MPEG-2(注4)、H.263(注5)、H.264(注6)、H.265(注7)等の動画像圧縮・伸張規格、JPEG(注8)、JPEG 2000(注9)等の静止画像圧縮・伸張規格、及びAMR(注10)、AAC(注11)、MP3(注12)、AC3(注13)、G.723-1(注14)、GSM6-10(注15)、OPUS(注16)等の音声/音響圧縮・伸張規格等の国際標準規格(AC3はDolby社の規格)に準拠しており、これらの国際標準規格に準拠したマルチメディア処理機能は、携帯電話/スマートフォン、携帯情報端末、デジタルスチルカメラまたは各種デジタル表示装置等を始めとして、様々な電子機器に幅広く搭載されております。電子機器メーカーにとっては、標準規格を採用することにより、他社製品とも互換性を保った形で複雑な電子機器の設計・開発が可能となるメリットがあるため、今後もこれらの国際標準規格の採用が進むと見込んでおります。また、標準規格の動画像の圧縮/伸張技術に加えて、独自規格の動画像の圧縮/伸張技術であるDMNA-V2、DMNA-V3の開発に成功しています。これは、現時点では標準規格の中では最高圧縮率を誇るH.265と比べて、2倍以上の性能を持っており、高圧縮率が要求されているアミューズメント、動画像配信サービス分野で高評価をいただいております。さらに、SHV(注17)などの高解像・高精細技術のほか、フレームメモリー容量や帯域を大幅に圧縮できる固定長圧縮(注18)や画像を修飾する機能の要求に応えて色変換、フレーム補間、拡大、回転といった要素技術の開発も完了し、ライセンス活動を進めております。

 現時点における主要な事業には、携帯端末やデジタルスチルカメラ等における組込みシステム(注19)で動作するソフトウェアIPを提供するソフトウェアライセンス事業と、これらの電子機器に使われる大規模半導体向けにハードウェアIP(設計データ)を提供するハードウェアライセンス事業とからなるIPライセンス事業、及びこれら各種IPを総合的に応用して開発したシステム製品や各種ソリューションをファブレスメーカー(注20)として製造・販売をするソリューション事業があります。当社はこの二つの事業のほとんどを「DMNA」を用いた製品及び設計手法に基づいて展開しており、顧客メーカーは、一般ユーザーが求める高性能・高画質(高音質)化と低消費電力化を両立した上で、製造コストを抑えることができるため、競争力のある製品を提供することが可能となります。当社の製品のほとんどは、標準規格に完全に準拠し、これまでに蓄積してきた技術を用いて開発されているため、高画質(高音質)を実現しております。加えて、圧縮・伸張技術の進歩により、電子機器の高性能化は今後も促進されると考えています。

 当社は、「DMNA」に総称される独自のコンピュータアルゴリズム開発技術とそれらを実際の組込みシステムや半導体に具現化する能力を活かし、電子機器メーカーがより適切な時期に製品を市場に投入し、一般消費者がより早くこれらの高性能な商品を適切な価格で入手できるよう、ソフトウェアIP、ハードウェアIP、ソリューション製品等のさまざまな製品を顧客のニーズに合わせ柔軟に提案してまいります。また、品質を第一とする開発方針に基づいて、より高品質な商品を提供してまいります。

(ソフトウェアライセンス事業)

 当社のソフトウェアライセンス事業は、携帯端末等の組込みシステムに既に搭載されているマイクロプロセッサ及び半導体メモリ上で、上記の各種国際標準規格による各種圧縮・伸張処理を実現するソフトウェアIPをライセンス提供するものです。携帯端末等に使われるマイクロプロセッサ及び半導体メモリは、小型かつ廉価である必要があるため、パーソナルコンピュータやワークステーション等に使われている大規模かつ高価なものと異なり、小規模で処理能力に乏しいものとなります。そのため、廉価なマイクロプロセッサと小規模な半導体メモリを搭載した組込みシステム上で従来のアルゴリズムに基づくソフトウェアIPを用いて上記の高度な圧縮・伸張処理を行った場合、一般ユーザーから求められる画質(音質)や低消費電力化(電池持ち時間の長時間化)の水準を満たすのは困難でした。当社の「DMNA」に基づくソフトウェアIPは、処理速度の向上・消費電力の削減等の点で高い優位性を発揮します。これにより、機器メーカーは高価なマイクロプロセッサや大規模な半導体メモリを搭載したり、専用ハードウェア等を追加することなく、動画や音声などの各種マルチメディア機能を機器上で実現することができます。

 当社は、これらのソフトウェアIPを各種組込みシステムに最適化しており、これらの最適化したIPを、通常、機器メーカーへの複製権という形でライセンス提供しています。ライセンスを受けた機器メーカー(以下、「ライセンシー」という。)は、電子機器を製造する際に、当社のソフトウェアIPを複製して機器に組み込んで製造し、当社は、当該IPの複製数に応じて、ライセンシーより複製ロイヤルティを受け取ります。

 ライセンシーにとってソフトウェアIPは、工場等における製造を要しないため、比較的短期間に製品に搭載することが可能です。また、小規模な仕様変更等に迅速に対応することが可能なため、顧客である機器メーカーの要望を反映させやすいという特徴があります。

 当社では、これらのソフトウェアIPの信頼性向上を実現するために、ソフトウェア開発及び検証の標準化を推進しております。

(ハードウェアライセンス事業)

 当社のハードウェアライセンス事業は、電子機器に使われる大規模半導体向けに上記の各種国際標準規格による各種圧縮・伸張処理を行なうハードウェアIP(設計データ)をライセンス提供するものです。現在、多くの半導体メーカーは、特定用途向けの半導体製品を開発する際にIPと呼ばれる機能ブロックを用いて設計を行ない、開発期間の短縮及び効率化を進めています。これらのIPは、半導体メーカーがある製品を開発するために自社内で設計した資産を他の製品でも再利用するために蓄積するものと、特定用途で性能の良い機能ブロックを入手するために外部より導入するものの2通りが存在し、当社のIPは後者にあたります。当社のハードウェアIPは、「DMNA」に代表される革新的なアルゴリズムと当社の半導体設計に関する技術・経験に基づく高度な手法で開発・具現化されています。これらのハードウェアIPは、H.265、H.264、MPEG-4、MPEG-2またはJPEG等の国際標準規格に準拠している上、低消費電力、高画質、小回路規模及び低遅延等の特長があり、各種携帯端末、デジタルスチルカメラ及び据置き型のAV機器等の電子機器に搭載される半導体向けに提供しております。

 当事業の収入形態は、「イニシャルライセンス」と「ロイヤルティ」からなります。通常、半導体メーカーが外部からIPを導入する際は、半導体の設計・開発に当該IPを使用することをIPメーカーが半導体メーカーに許諾する「イニシャルライセンス」契約と、当該IPの複製物を使って半導体製品が量産された際に、その複製数量に応じてIPメーカーに複製料を支払う「ロイヤルティ」契約が締結されます。当社の「イニシャルライセンス」収入は権利許諾時に計上されますが、半導体製品の量産開始には設計開始より約6ヶ月~12ヶ月程度の期間を要するため、「ロイヤルティ」収入は相応の期間を経て計上されることとなります。さらに「ロイヤルティ」収入は、量産の遅延・中止や製造数量の変動等、将来の不確実性に基づく部分を内包するため、契約締結時点で確実な収入を裏付けるものではありません。

 ハードウェアIPは、ソフトウェアIPに比して高速・高性能な処理を実現できる反面、上述のように設計から量産まで相応の期間を要するため、一連のビジネスが長期化する傾向がありますが、大規模な画像の高速処理を必要とするデジタルスチルカメラやデジタルテレビ等においては、ソフトウェア処理ではなく、専用ハードウェアによる処理が適しているため、当社のハードウェアIPもこれらの半導体を開発する顧客メーカーへの提供が中心となります。

 なお、ハードウェアIPビジネスにおける売上回収期間の短期化と顧客層の拡大のため、ハードウェアによる処理が必要なものの製造数量が多くはない製品を扱う顧客メーカー向けに、ハードウェアIPのFPGA(注21)対応も進めております。

 当社では、信頼性向上及び使いやすさを実現するために、顧客である商品機器開発メーカーとの情報交換も積極的に進めております。

 

(ソリューション事業)

 当社のソリューション事業は、ソフトウェアIP、ハードウェアIPを活用し、ファブレスメーカーとして単機能LSIやソリューションの開発・製造・販売を行うものです。

 従来のソフトウェアライセンス事業、ハードウェアライセンス事業では、高い性能が必要なものの生産数量は多くは見込まれない顧客や試作・評価の段階での顧客のニーズに合わせることが困難でしたが、単機能LSIにより、これらのニーズについても対応できるようにいたしました。

 加えて、単機能LSIやシステム製品は、無形物であるIPではなく、有形物の製品であるため、顧客との相対取引ではなく既存の流通ルートで販売することが可能となり、より幅広く、より多くの顧客に販売できる可能性が高まりました。また販売活動を推進するための、パンフレット、カタログ、説明書を充実させるとともに、機能評価を容易にするためのデモ活動などを行っております。なお、単機能LSIにつきましては、顧客におけるチップ回りの設計を簡素化しより使い勝手をよくするため、CPUと外部インターフェースを搭載したボード化製品の開発も完了しています。さらに、当社の開発したソフトウェアIPやハードウェアIPを総合的に応用したソリューションとしましては、各種伝送装置の開発が完了しており、特に当社の独自圧縮伸張規格であるDMNA-V2を用いた画像伝送装置は、低遅延性に優れた製品となっております。

 

<用語説明>

(注1)アルゴリズム(演算の手順を指示する規則や算法。)

(注2)IP(Intellectual Propertyの略。主として半導体の設計に用いる再利用可能な機能ブロックや設計データをいう。)

(注3)MPEG-4(映像データの圧縮方式の一つで、MPEG規格の一部。携帯電話や電話回線などの通信速度の低い回線を通じて、高圧縮率の映像の配信を目的とした規格で、動画と音声合わせて64kbps程度のデータ転送速度で再生できることを目指している。)

(注4)MPEG-2(映像データの圧縮方式の一つで、MPEG規格の一部。再生時に動画と音声合わせて4~15Mbps程度のデータ転送速度が必要。DVD-VideoやATSCなどの日本の地上デジタルテレビなどで利用されている。)

(注5)H.263(映像圧縮符号化方式の標準の一つで、H.261を改良・発展させたもの。アナログ電話網など低ビットレートの回線でもテレビ電話やテレビ会議が利用できることを目指した圧縮方式である。)

(注6)H.264(「MPEG-4 Part 10 AVC」。MPEG-4の新しいビデオ圧縮規格。MPEG-2と比較して約半分のビットレートで、同等の画質が達成できる。)

(注7)H.265(H.264の後継フォーマット。HEVCとも呼ばれる。MPEG-2比で約4倍、H.264比でも約2倍の圧縮性能を持つとされており、今後10年間の中核的な圧縮伸張規格になると見込まれている。)

(注8)JPEG(静止画像データの圧縮方式の一つ。方式によりばらつきはあるが、圧縮率はおおむね1/10~1/20程度。写真などの自然画の圧縮には効果的でデジカメ等に使われている。)

(注9)JPEG 2000(画像圧縮方式の一つで、JPEGを発展させた仕様。従来のJPEGよりも高圧縮、高品質な画像圧縮が行なえるのが特徴。)

(注10)AMR(携帯電話で利用される音声の符号化方式の一つ。回線の種類や状況に応じて転送レートを柔軟に変更することができる。)

(注11)AAC(映像圧縮規格MPEG-2またはMPEG-4で使われる音声/音響圧縮方式。MPEG-1に採用された音声/音響圧縮方式であるMP3よりも1.4倍ほど圧縮効率が高く、音質はほぼ同じである。)

(注12)MP3(映像データ圧縮方式のMPEG-1、MPEG-2で利用される音声/音響圧縮方式の一つ。オーディオCD並の音質を保ったままデータ量を約1/11に圧縮することができる。)

(注13)AC3(Dolby Laboratories社が開発した音声のデジタル符号化技術。)

(注14)G.723-1(音声圧縮符号化方式の一つで、テレビ電話用の音声伝送等に利用される。)

(注15)GSM6-10(音声圧縮符号化方式の一つで、ヨーロッパや北米で携帯電話向け等に利用されている。)

(注16)OPUS(IETF(インターネット技術特別調査委員会) によって開発され、主にインターネット上でのインタラクティブな用途に合わせて作られた非可逆音声圧縮フォーマット。IETFで標準化されたオープンフォーマット。)

(注17)SHV(Super Hi-Visionの略。映像の水平画素数が7680を8K、同じく3840を4Kと呼ぶ。なお、SHVはNHKによる提唱呼称で、国際電気通信連合(ITU)勧告ではUltra High Definition Televisionと呼ぶ。)

(注18)固定長圧縮(データの法則性を利用した圧縮法の一つ。色々な記号を一定のビット数で符号化する方法をいう。記号ごとにビット長が異なる可変長圧縮と比べ、レート制御が不要、圧縮データのままの加工ができるなどのメリットがある。)

(注19)組込みシステム(産業機器や家電機器のように、特定の機能を実現するためのコンピュータシステム。機能を実現するために必要なソフトウェア等が全て組み込まれた状態で出荷・販売される。)

(注20)ファブレスメーカー(自社で製造施設・設備を保有せず、製造工程のみをアウトソースするメーカー。)

(注21)FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。製造後に購入者や設計者が構成を設定・変更できるLSI。)

 事業の系統図は次のとおりであります。

 

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度(2023年4月1日~2024年3月31日)における我が国経済は、インバウンド需要等を通じて飲食・旅行業界などの内需関連や大企業を中心に輸出関連企業の景況も回復傾向が続きました。しかしながら、円安の影響も大きく受けた各種輸入物価の上昇が消費者物価の上昇に波及してくる一方、実質賃金はマイナスのまま推移するなど、企業と家計の景況感に大きな開きを見せたまま推移しました。一方、目を海外に転じると、米国では個人消費を中心に内需が堅調ながら欧州では中心となるドイツが低調な推移となっており、中国では不動産市場の低迷や個人消費の落ち込みなどにより景況感の悪化が進むなど予断を許さないほか、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻が収束の兆しを見せず、さらにはイスラエルとハマスの軍事衝突勃発による中東情勢の悪化もあり、各種エネルギー価格、食料価格などは高止まる一方、各国中央銀行により行われてきた金利引き上げの影響で景気失速が懸念されるなど、先行き大きな不安を残しながら推移しました。

 このような中、当社の主要顧客業界である電子機器関連業界は、事業の再編を進めつつも、新製品の開発にあたっては、競争力の源泉である優れたアルゴリズムを用いた映像・画像・音声の圧縮伸張技術を追求し続けております。

 具体的には、携帯型端末においては、より高画質、大画面の方向に向かっていることから、映像・画像の圧縮伸張コア技術であるビデオコーデックにおける優れたアルゴリズムを市場が求めております。また、スマート家電においても、高画質化に加え高音質化が求められており、低消費電力と合わせてそれらを実現するオーディオ/音声コーデックが期待されてきております。さらに、動画像の配信・伝送分野や各種遠隔操作システムにおいても、低ビット・レートでも高画質、高音質、低遅延を実現する圧縮伸張技術が必要不可欠のものとなっております。

 このような状況下、DMNAアルゴリズムを用いて高画質、高音質、低遅延はもちろん、地球環境にやさしい省エネルギーなグリーン製品群を提供している当社は、国際標準規格に基づく圧縮伸張技術の機能強化ならびに受注活動を行うとともに、独自規格のオリジナル・コーデックや圧縮してもデータが劣化しないロスレス技術、ソリューション製品としての各種低遅延伝送装置、映像鮮明化装置などをさらに国内外の市場に投入すべく営業努力を重ねております。

 当事業年度の第4四半期におきましては、ライセンス事業ではソフトウェア部門で量産ライセンス4件、ハードウェア部門で量産ライセンスを1件獲得したほか、ソリューション事業では、低遅延伝送装置/システムが国内外放送局のほか鉄道施設向け等に採用され、また、映像鮮明化装置1件、開発業務3件等の獲得に成功しております。

 一方、費用・損益面では、売上高の伸び悩みにより販管費などのコストを賄うことができず、損失を計上することとなりました。

 なお、当社の売上高は、主要顧客の決算期末(主として9月と3月)に集中する傾向がある一方、販管費等のコストは、各四半期とも大幅な変動はない、という特徴を有しております。

 この結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当事業年度末の資産合計は、前事業年度末より111百万円減少し、2,187百万円となりました。

 当事業年度末の負債合計は、前事業年度末より22百万円増加し、116百万円となりました。

 当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末より134百万円減少し、2,070百万円となりました。

 

b.経営成績

 当事業年度の売上高は527百万円(前期比11.9%減)となり、経常損失141百万円(前期は経常損失43百万円)、当期純損失144百万円(前期は当期純損失46百万円)となりました。

 

 部門別の業績につきましては、次のとおりです。

(ソフトウェアライセンス事業)

 営業活動におきましては、単体IPでのライセンス営業から複数IPをモジュール化してのライセンス営業に力をいれました。

 主要な案件としましては、次のとおりです。

 《評価ライセンス》

  ・映像鮮明化ソフトウェアIP:車載機器向け

  ・ハンズフリーソフトウェア:VRゴーグル向け

 《量産ライセンス》

  ・ノイズサプレッサ他音声関連ソフトウェア:デジタルカメラ向け

  ・メディアプレーヤソフトウェア:車載機器向け

  ・MPEG-2 エンコーダ/デコーダ:通信機器向け

  ・ハンズフリーソフトウェア:VRゴーグル向け

 以上の結果、当事業年度の売上高は108百万円となりました。

 

 

(ハードウェアライセンス事業)

 営業活動におきましては、4K技術、ロスレス技術、H.265、スムージング技術を中心にライセンス営業活動、海外案件獲得活動を展開しました。

 主要な案件としましては、次のとおりです。

 《評価ライセンス》

  ・JPEG XS エンコーダ/デコーダ for FPGA for 4K:TVディスプレイ向け

 《量産ライセンス》

  ・デムラ技術:有機ELディスプレイ向け

 以上の結果、当事業年度の売上高は233百万円となりました。

 

(ソリューション事業)

 営業活動におきましては、当社の既存技術と開発力をベースに顧客のカスタム案件の獲得およびオリジナル・コーデックを用いて低遅延・高画質を両立させた小型版画像伝送システムや放送局向け低遅延送り返しシステム、映像鮮明化装置の販売活動を中心に展開しました。

 主要な案件としましては、次のとおりです。

  ・低遅延伝送装置関連の追加受注:米国放送局でのリモート・スタジオ用

  ・低遅延伝送装置:国内CATV局向け

  ・FPGA搭載基板の追加受注:業務用プリンタ向け

  ・Wi-Fi SyncViewer:株主総会向け

  ・低遅延伝送装置:防衛装備品向け

  ・低遅延伝送装置:防災プロジェクト向け

  ・低遅延伝送装置:5G技術実証実験向け

  ・Wi-Fi SyncViewer:教育機関向け

  ・映像鮮明化装置:防災プロジェクト向け

  ・低遅延伝送装置:遠隔操作実験向け

  ・映像鮮明化装置:防衛装備向け

  ・映像鮮明化装置:遠隔操作装置向け

  ・低遅延伝送装置:検査装置向け

  ・映像鮮明化装置:車外周辺監視システム向け

 《受託業務》

  ・メディアプレーヤ改変業務:次期MPU向け

  ・音声アルゴリズム実証業務

  ・HEVCドライバ開発業務

  ・MPEG-2マルチモジュールカスタマイズ業務

  ・画像圧縮伸張処理システム拡張検討業務

  ・音声アルゴリズム関連業務

  ・MPEG-2マルチモジュール追加業務

  ・IP変換ソフトウェア実装業務

  ・デジタルテレビソリューション

  ・映像伝送システム開発業務

 以上の結果、当事業年度の売上高は185百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税引前当期純損失を141百万円計上したことや、売上債権が134百万円増加したことなどにより、前事業年度末に比べ265百万円減少し、当事業年度末には845百万円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は272百万円(前年同期は70百万円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純損失を141百万円計上したことや、売上債権が134百万円増加したことなどによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は1百万円(前年同期は3百万円の使用)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において、財務活動による資金の増減はありません(前年同期も増減なし)。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当事業年度の生産実績について、当社は単一セグメントとしているため、部門別に示すと、次のとおりであります。

部門の名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

ソリューション事業(千円)

34,015

80.4

合計(千円)

34,015

80.4

 (注)金額は製造原価によっております。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績について、当社は単一セグメントとしているため、部門別に示すと、次のとおりであります。

 部門の名称

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

ソフトウェアライセンス事業(千円)

116,466

93.9

9,045

813.0

ハードウェアライセンス事業(千円)

258,746

80.2

36,368

323.4

ソリューション事業(千円)

152,645

82.7

44,702

57.6

合計(千円)

527,858

83.6

90,115

100.1

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績について、当社は単一セグメントとしているため、部門別に示すと、次のとおりであります。

部門の名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

ソフトウェアライセンス事業(千円)

108,534

87.2

ハードウェアライセンス事業(千円)

233,621

72.6

ソリューション事業(千円)

185,615

121.3

合計(千円)

527,770

88.1

 (注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Novatek Microelectronics Corp.

97,764

18.5

株式会社ニコン

161,846

27.0

80,219

15.2

富士フイルム株式会社

58,632

11.1

 (注)前事業年度及び当事業年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満の場合は、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

 当社においては、安定的な事業活動の遂行と積極的な研究開発活動のための資金を確保することが重要課題と認識しており、健全な財政状態を維持するよう取り組んでおります。

 当事業年度末の資産合計は、前事業年度より111百万円減少し、2,187百万円となりました。流動資産は、売上債権が134百万円増加した一方で、現金及び預金が265百万円減少したことなどにより、前事業年度末より128百万円減少し、1,329百万円となりました。固定資産は、投資有価証券が19百万円増加したことなどにより前事業年度末より16百万円増加し、857百万円となっております。

 当事業年度末の負債合計は、前事業年度末より22百万円増加し、116百万円となりました。流動負債は、前受収益が17百万円増加したことなどにより、前事業年度末より18百万円増加し、110百万円となりました。固定負債は、前事業年度末より4百万円増加し、6百万円となっております。

 純資産につきましては、当期純損失を144百万円計上したことなどにより、当事業年度末における純資産合計は2,070百万円となり、前事業年度末より134百万円減少しております。

 全体として、流動資産の比率が高く、有利子負債がないことなどから自己資本比率も94.7%と高い水準を維持しており、財政状態としては健全な状態を維持しております。

 

b.経営成績

 当事業年度の売上高につきましては、ソフトウェアライセンス事業が108百万円、ハードウェアライセンス事業が233百万円、ソリューション事業が185百万円となり、合計の売上高は527百万円と前事業年度より11.9%の減少となりました。

 なお、売上総利益は491百万円と前事業年度より67百万円減少し、売上総利益率は93.2%となっております。

 費用・損益面につきましては、販売費及び一般管理費が648百万円と前事業年度より36百万円の増加となり、売上高の低迷により販売費などのコストを賄うことができず、営業損失を157百万円(前事業年度は営業損失53百万円)、経常損失を141百万円(前事業年度は経常損失43百万円)、当期純損失を144百万円(前事業年度は当期純損失46百万円)、それぞれ計上する結果となりました。

 今後につきましては、品質を第一とする開発方針を徹底するとともに、開発日程の管理並びに営業活動の進捗管理を強化していくことにより、売上見込み案件の増大と受注確度向上を図り、また、ソリューション事業を本格的に推進することで、売上高の増加を図って参ります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当事業年度におけるキャッシュ・フローは、税引前当期純損失を141百万円計上したことや売上債権が134百万円増加したことなどにより前事業年度末に比べ265百万円の減少となりました。

 資本の財源及び資金の流動性については、当社は、当事業年度末において現金及び預金を946百万円有しており、また、長短借入金等の有利子負債はなく、自己資本比率は94.7%と極めて高い水準にあります。IPの開発を主業務とし、また、ファブレスメーカーである当社の資金需要は、運転資金需要が主なものであり、それにはすべて自己資金で対応可能となっております。

 

③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当事業年度は、ソリューション事業は、デジカメ・車載機器向け開発案件の増加等で前事業年度比20%を超える増収となりましたがその水準は低く、また、ライセンス事業は、ハードウェア部門、ソフトウェア部門ともに前事業年度比大幅減少となったことから、売上高は同11%減と低迷し、販管費等のコストを賄うことができず、損失の計上を余儀なくされました。

 今後とも、品質を第一とする開発方針を徹底するとともに、開発日程の管理ならびに営業活動の進捗管理を強化していくことにより、売上見込み案件の増大と受注確度向上を図り、また、ソリューション事業を積極的に推進することで、売上高の増加ならびに利益の確保を図ってまいります。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりまして、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 当事業年度の財務諸表においては、賞与引当金が見積りに基づき計上されており、従業員の賞与の支給に備えるため、支給見込額のうち当期に負担すべき額を計上しております。この見積りの仮定として、期末日後の当社の財政状態等に著しい変動がないことなどを前提としておりますが、期末日後に財政状態等の著しい変動などが生ずることによって実際の支給額が著しく増減した場合には、賞与引当金残高の過不足が生ずる可能性があります。なお、この過不足は翌事業年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあるものではないと考えております。