2024年6月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

パッケージ事業 システムインテグレーション事業
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
パッケージ事業 800 57.5 389 74.1 48.7
システムインテグレーション事業 592 42.5 136 25.9 23.0

事業内容

3【事業の内容】

 当社は、「世界が認めるシステム構築の仕組を世に広め、社会の発展に貢献する」という理念のもと、ドイツのERPベンダーであるSAP社の日本法人のシステムコンサルタントであった2名を中心に起業し、現在は、主にクラウドERP(注1)の開発および販売を行うパッケージ事業と、主に顧客が構築するシステムの受託開発やIT人材の派遣を行うシステムインテグレーション事業を行っております。当社の技術者は、どちらの事業のプロジェクトにも対応可能であり、両事業の繁忙に応じて適宜配置を変更する体制を取っております。

 なお、当社は単体で事業を行っており、企業集団は形成しておりません。また、当社の報告セグメントは、パッケージ事業とシステムインテグレーション事業です。

 

(注1)クラウドERP

ERP(Enterprise Resource Planning)は、経営資源の有効活用の観点から企業全体を統合的に管理し、経営の効率化をはかるための手法・概念のことです。また、これを実現するための統合型基幹業務パッケージを指します。

クラウドERPは、クラウド技術を用いて提供されるERP、またはその提供サービスのことです。

 

(1)パッケージ事業

 パッケージ事業は、企業の基幹業務システムを当社で開発し、エンドユーザーに直接(一部システムインテグレーター(注2)を介して)販売する事業であり、これを主にクラウドコンピューティング技術を用いて事業展開しております。また、当事業の売上高は、基幹業務システムの導入時に受領する対価(フロー型売上)と、導入企業が当社サービスを継続利用することで生じる対価(ストック型売上)で構成されております。現在、企業の情報システムの戦略策定や方針検討を行う現場で「クラウドファースト」という言葉が使われていますが、これは、ITを活用する際にはクラウドの使用を第一候補とする考え方が定着しつつあると考えており、このことは、ITを活用するにあたり、“所有”から“使用”にシフトすることを意味する大きなパラダイム・シフトになっていると考えております。当社はこのITを取り巻く環境の変化に対応し、2010年5月より自社ERPのクラウド提供を開始し、それまでのクライアント・サーバー型の提供からクラウド提供にシフトしてまいりました。

 

 

パッケージ事業の主要サービス・製品およびその概要

サービス・製品の名称

サービス・製品の内容・用途

契約形態

MA-EYES(Vシリーズ)

システム開発・派遣・インターネット・

コンサル業向けERP

SaaS版or一括導入版

MA-EYES(Aシリーズ)

広告業向けERP

SaaS版or一括導入版

GLOBAL EYES

海外拠点統合管理システム(業種問わず)

SaaS版

J-Fusionソリューション

基幹システムの開発・提供(業種問わず)

スクラッチ開発

 

 各契約形態における特徴は以下のとおりであります。

SaaS(サース、Software as a Service)版:

・顧客が必要とするグループウェア(注3)や在庫管理などの機能のみを提供する形態

・提供方法:ネット経由

・稼働時期:受注から稼働までは3営業日から3ヶ月程度

 

一括導入版:

・顧客要望に基づき、標準パッケージをベースに機能拡張・カスタマイズを行った上で提供する形態

・提供方法:プライベートクラウド(注4)(ホスティング型)、プライベートクラウド(オンプレミス型)

・稼働時期:受注から稼働までは3ヶ月から18ヶ月程度

 

スクラッチ開発:

・顧客要望に基づき、一からシステムを開発・構築する形態

・提供方法:プライベートクラウド(ホスティング型)、プライベートクラウド(オンプレミス型)

・稼働時期:受注から稼働までは6ヶ月から18ヶ月程度

 

(注2)システムインテグレーター

システムインテグレーション(System Integration)を行う事業者のことです。

システムインテグレーションとは、企業の情報システムの企画、設計、開発、構築、導入、保守、運用などを一貫して請け負うサービスのことです。これらの工程のうちのいくつかを請負う場合もあります。

 

(注3)グループウェア

複数の人が効率よく作業するためのネットワーク環境を利用したソフトウェアのことです。

電子メール、電子掲示板、スケジュール管理、文書を共有するファイル管理、プロジェクト管理などの機能を持つものが一般的です。

 

(注4)プライベートクラウド

クラウドの技術を用いて一つの企業や企業グループのためだけにコンピューティング環境を提供するサービスのことです。IT資産をクラウドベンダーが所有し、それを特定のユーザー企業が利用する「ホスティング型」や、ユーザー企業がIT資産を所有する「オンプレミス型」等に分類されます。

 

 当事業における個別の製品およびサービスの詳細は以下のとおりです。

① MA-EYES(エムエーアイズ)

 MA-EYESはパッケージ事業の主力製品・サービスであり、サービス業、特に労働集約型・プロジェクト型の業種に特化したクラウドERPで、管理会計モジュールを中核として、グループウェア、販売管理、購買管理、経費管理、勤怠管理、財務会計、在庫管理、入金管理、支払管理等の機能を有した基幹業務システムとして、対象業種に応じてVシリーズ、Aシリーズの2系統を提供しております。

 顧客毎に行う機能拡張・カスタマイズにつきましても、「セミオーダー」の手法で行っております。セミオーダーは、システムの基盤部分や骨組みを用意しておき、顧客毎に機能の異なる部分について、スクラッチ開発同様に顧客要望に沿った形で開発するといったやり方です。顧客固有の機能については要望どおりに開発するため、画面上の項目追加や帳票形式の変更など顧客要望を基本的に全て実現することが可能となります。さらに、開発工数を短くでき、開発費用を抑えられることもメリットとなっていると考えております。

 このセミオーダーの手法を用いることで、これまでのERP導入における課題の一つであった「ERPに合わせて業務プロセスの変更を余儀なくされること」を解決できるようになったと考えております。また、ERPの需要はあるものの、予算の制約によって導入が難しかった従業員数100人以上、1,000人未満の規模の企業や、業務プロセスがビジネスモデルの根幹であるために業務プロセスの変更が難しいサービス業において、ERPの導入のハードルが下がりました。

 

② GLOBAL EYES

 海外拠点を管理する機能を提供するパッケージであります。従来の海外拠点管理では各業務領域毎に存在している「会計データ連携、連結会計支援」、「購買管理」、「在庫管理」、「グローバル情報共有」のそれぞれのシステムを一つのシステムとして一括で提供しております。

 

③ J-Fusionソリューション

 自社開発した基幹業務システムの開発・稼動環境ソフトウェアである「J-Fusion」を用いて、企業向けにシステムの受託開発を行うソリューションです。具体的には、ECサイトの決済サービス提供企業向けに、カード会社や加盟店等との間の取引の管理を行うシステムの構築等を行っております。

 業種や機能範囲は問わず、各企業のニーズにあった形で要件を定義し、システム開発を行っております。特にECサイトの決済サービス提供企業に複数の導入実績があります。

 

(2)システムインテグレーション事業

 システムインテグレーション事業は、ITサービス提供企業の外部向けWebサービス提供システム(個人向けスポーツ関連情報提供サイト等)の構築や、システムインテグレーターが受託した企業向け社内システム構築などの開発案件に参画し、基本的に顧客企業先に常駐して顧客システムの開発を行う事業です。参画する案件については、開発言語がJavaの開発案件に特化することで、CやPHPなど複数存在するプログラミング言語の中からJavaに絞ること、および、開発・保守・テスト・運用といった複数ある工程の中から開発に絞ることで技術的な差別化を図っております。

 これまでの顧客との継続的な取引関係により、受注の波は小さく安定した事業であり、会社の安定運営の基盤となっております。

 また、当社では自社開発のオープンソース(注5)「ExCella」を一般に公開し、そのサポートサービスについても提供しております。「ExCella」は、業務システムとエクセルをつなげるためのライブラリ・API群(注6)です。「ExCella」を使用することで、基幹業務システムのデータベースのデータをエクセル形式で直接出力することや、エクセルデータの基幹業務システムへの直接取込が実現できます。

 他のシステム開発会社との関係におきましては、最終ユーザーとは直接契約せず、システムインテグレーター経由で受託開発を請け負うことや、システムインテグレーターに社員の人材派遣を行うことがございます。また、請け負った開発をビジネスパートナーに委託することがあります。

 

(注5)オープンソース

プログラミング言語で書かれたコンピュータプログラムであるソースコードを一般に広く公開し、誰でも自由に扱ってよいとする考え方です。また、そのような考え方に基づいて公開されたソフトウェアのことです。

 

(注6)ライブラリ・API群

ライブラリは、汎用性の高い複数のプログラムを再利用可能な形にして一まとまりにしたもののことです。APIは、プログラミングの際に使用できる規約や命令、関数等の集合の事を指します。

 

[事業系統図]

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 業績等の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりです。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に関する各種行動制限の緩和によりインバウンド需要や個人消費中心に経済活動に持ち直しの動きが見られましたが、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、資源価格の高騰、円安進行や国内の物価上昇などが続き、先行きが極めて不透明な状況で推移しました。

 当社が属する市場及び顧客においては、企業のシステム投資ニーズは安定しており、エンジニアの需要も高水準を維持しているものの、今後の状況は予断を許さないものと認識しております。

 このような環境のもとで、当社は、主力製品であるクラウドERP「MA-EYES」について、需要動向を捉えた新機能の開発や、新規顧客獲得に向けた営業努力を重ねてまいりました。

 この結果、当事業年度の業績は、売上高13億92百万円(前年同期比0.9%増)、営業利益1億52百万円(同13.8%減)、経常利益1億52百万円(同13.8%減)、当期純利益は前本社ビル退去に伴う補償金収入があったことから1億36百万円(同0.2%増)となりました。

 

 セグメント毎の経営成績は、次のとおりであります。

(パッケージ事業)

 主力製品であるクラウドERP「MA-EYES」について、前期に受注した案件の稼働に伴い保守料が増加しましたが、SaaS版の複数の新規案件の初期導入部分について、収益認識に関する会計基準等の適用により会計上の売上・利益を繰り延べることとなったことなどから、売上高は8億円(前年同期比0.0%減)、セグメント利益は3億89百万円(同1.4%増)となりました。

 

(システムインテグレーション事業)

 堅調なIT需要を背景に安定的に推移し、また、一部エンジニアをパッケージ事業から本事業へシフトさせたこともあり、売上高は5億92百万円(前年同期比2.2%増)、セグメント利益は1億36百万円(同2.1%増)となりました。

 

 財政状態は、次のとおりであります。

 当事業年度末の総資産は22億28百万円となり、前事業年度末に比べ2億5百万円増加いたしました。これは主に、当期純利益の計上に伴う現金及び預金の増加によるものであります。

 当事業年度末の負債合計は5億83百万円となり、前事業年度末に比べ87百万円増加いたしました。これは主に、パッケージ事業の新規受注および保守やSaaS版利用料に係る契約負債の増加によるものであります。

 当事業年度末の純資産合計は16億45百万円となり、前事業年度末に比べ1億18百万円増加いたしました。これは主に、当期純利益の計上に伴う繰越利益剰余金の増加によるものであります。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、税引前当期純利益が1億89百万円(前年同期比7.0%増)となったこと等により、前事業年度末に比べ1億83百万円増加し、当事業年度末には18億55百万円となりました。

 

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は2億40百万円(同49.9%増)となりました。これは主に、税引前当期純利益の計上によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は39百万円(同6.2%減)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は18百万円(前年同期比56.8%減)となりました。これは主に、配当金の支払額によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社のサービス提供の実績は、販売実績とほぼ一致しておりますので、生産実績に関しては販売実績の項をご参照ください。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

パッケージ事業

760,178

89.1

311,708

88.7

システムインテグレーション事業

607,663

105.7

132,114

113.8

合計

1,367,841

95.7

443,822

94.9

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

金額(千円)

前年同期比(%)

パッケージ事業

799,852

100.0

システムインテグレーション事業

591,668

102.2

合計

1,391,519

100.9

  (注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりでありま

     す。

相手先

前事業年度

(自 2022年7月1日

至 2023年6月30日)

当事業年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社インターネットイニシアティブ

-

-

146,062

10.5

  (注)前事業年度の主な相手先別の販売実績及びその総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合

     が10%以上の相手先がいないため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載のとおりであります。この財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があると考えております。

 

②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討の内容

 当社は、セグメント情報に記載した報告セグメントのうち、クラウドによる自社ERP提供を中心とするパッケージ事業を「重点事業」と位置付け、リソースを投入して拡大成長を図る方針としております。主に顧客企業先に常駐して開発を行うシステムインテグレーション事業につきましては、常駐型ビジネスで安定的な利益を計上しつつ、Humalanceや人材紹介事業等により拡大成長を図る方針としております。

 当事業年度のパッケージ事業の売上高および利益につきましては、新規案件の受注状況はほぼ前期並みであったものの、複数のSaaS版の初期導入部分について、収益認識に関する会計基準等の適用により会計上の売上・利益を繰り延べることとなったことから、初期導入部分の売上・利益は減少しました。一方で、利益率の高い保守や追加開発に関する売上が増加したことから事業としての売上高はほぼ横ばいになり、利益は微増になったものと認識しております。

 当事業年度のシステムインテグレーション事業の売上高および利益につきましては、一部エンジニアをパッケージ事業から本事業にシフトさせたことから、売上・利益とも増加したものと認識しております。

 

③経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、経営指標として、重要なリソースである社員技術者を効率的に配置し、売上・利益の極大化を目指す観点から“技術者稼働率”を重視しております。(技術者稼働率=稼働技術者数/総技術者数)

 当事業年度の技術者稼働率は69.3%であり、前年度比で横ばいとなりました。これは、主に、パッケージの受注状況が前期比ほぼ横ばいであったこと、及び、社員エンジニア数の増加を受け、技術者稼働率維持のためにシステムインテグレーション事業へのアサインを増加させたことによるものであると認識しております。

 

④資本の財源及び資金の流動性

 当事業年度末の純資産合計は16億45百万円となり、前事業年度末に比べ1億18百万円増加いたしました。これは主に、当期純利益の計上に伴う繰越利益剰余金の増加によるものであります。

 当事業年度末の現金及び預金の残高は、前事業年度末に比べ1億83百万円増加し、19億15百万円となりました。当事業年度末において有利子負債の残高はなく、当面の事業活動に必要となる資金の流動性は確保できているものと認識しております。また、近い将来において、重要な資本的支出の予定はありません。