2025年5月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

AxelLiner事業 AxelGlobe事業
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
AxelLiner事業 1,326 83.6 -209 - -15.7
AxelGlobe事業 260 16.4 -701 - -269.1

事業内容

3【事業の内容】

 

(1) 当社グループについて

 当社グループは当社と連結子会社1社で構成されており、当社は、持株会社として当社グループの経営管理及びそれに付帯又は関連する業務等を行っております。他方、当社グループの主要な事業はいずれも連結子会社である株式会社アクセルスペースにおいて行っております。当社グループは「Space within Your Reach~宇宙を普通の場所に~」をビジョンに掲げ、従来人々にとって遠い存在であった宇宙が、日常的にかつ当たり前のように利活用されている社会の実現を目指しております。

 当該ビジョンを達成するために、当社グループは、2008年より世界に先駆けて小型衛星の開発に取り組んでまいりました。現在は、AxelLiner事業とAxelGlobe事業の2つの事業を運営しております。AxelLiner事業は創業以来約17年にわたり蓄積してきた経験・ノウハウを基盤とし、小型衛星の開発・製造・打上げ後の運用に関して、打上げ機の手配や許認可の取得等の非技術的な手続きも含めて顧客向け小型衛星プロジェクトの開発・運用サービスを提供しております。AxelGlobe事業は当社グループが保有・運用する光学地球観測衛星コンステレーションが取得した画像データを販売、又はそれらの画像を加工・分析して情報を抽出し、ソリューションとして顧客にサービス提供しております。農業や土地管理をはじめ、環境や金融、報道等、他産業での用途にも拡大しております。

 なお、「衛星コンステレーション」とは、複数機の人工衛星を打上げ、それらを一体運用して事業等に活用する仕組みのことをいいます。

 

 事業セグメントは、上記AxelLiner事業及びAxelGlobe事業の2つとしており、これは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。

 

 なお、当社は特定上場会社等であります。特定上場会社等に該当することにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。

 

 

 

(2) 基盤となる小型衛星に関する技術

小型衛星の特徴と技術の源泉

当社グループは2008年の創業以来一貫して小型衛星事業に取り組んでおり、ベースとなる技術は、創業者である中村友哉及び永島隆の指導教員であった中須賀真一氏が教授を務める東京大学大学院工学系研究科、及び創業者である宮下直己氏の指導教員であった松永三郎氏(故人)が当時准教授を務めていた東京工業大学(現・東京科学大学)理工学研究科機械宇宙システム専攻において研究開発されていた複数の超小型衛星プロジェクトから生み出されたものです。

当時、一般に人工衛星と言えば、質量1トンを超える大型衛星が主流であり、時に5年以上にも及ぶ長い開発期間や宇宙用の部品を用いることによる高額な調達費用のため、政府系機関による開発が一般的でした。当社グループが手掛ける小型衛星は独自ノウハウにより、宇宙でも利用可能な民生部品を積極的に選定・活用したり、信頼性を損なわない範囲で各種環境試験を簡略化することによって、低コストでの設計製造、及び契約の締結から宇宙での利用開始までの期間の短縮を実現しました。

これにより民間企業が自社衛星として人工衛星を保有する可能性が切り拓かれるほか、衛星コンステレーションによる同一地点の高頻度観測や冗長性の確保といった新しい価値を提供することが可能となりました。

 

小型衛星に関する実績

創業以来、「WNISAT-1」「ほどよし1号機」「RAPIS-1」等の顧客向け人工衛星に加え、当社グループのAxelGlobe事業向け人工衛星である「GRUS」5機を含む合計11機の小型衛星を製造した実績を有しております。

株式会社アクセルスペースを設立後、大学で培ってきた技術・経験を活かし、質量約10キログラムの日本初の超小型民間気象衛星「WNISAT-1」の開発を株式会社ウェザーニューズより受託、2013年に打上げ、2024年2月まで運用を行いました。「WNISAT-1」の開発と並行する形で、2009年より内閣府総合科学技術会議による最先端研究開発支援プログラムの1テーマである「日本初の『ほどよし信頼性工学』を導入した超小型衛星による新しい宇宙開発・利用パラダイムの構築」の一環として「ほどよし1号機」の開発を主導、2014年に打上げ、2025年3月まで運用を行いました。その後「ほどよし1号機」の実績を生かし「WNISAT-1」の後続機である「WNISAT-1R」を開発し2017年に打上げ、2025年5月まで運用を行いました。2016年にはJAXAとの間で技術実証衛星である「小型実証衛星1号機(RAPIS-1)」の開発・運用に関する契約を締結し、2019年にイプシロンロケット4号機にて打上げました。なお、日本において、政府系機関の衛星開発をスタートアップ企業が受託するのは初めてのことでした。「RAPIS-1」については約1年半にわたって軌道上運用を継続し、全ての実証ミッションを成功裡に終えたのち、停波しております。

これら顧客のための人工衛星開発に加え、AxelGlobe事業に用いる地球観測衛星「GRUS-1A」を2018年に1機、2021年には「GRUS-1B, C, D, E」を4機同時に打上げることで、5機による地球観測衛星コンステレーションのサービスを日本で初めて開始しております。なお、姿勢制御に不具合の発生した「GRUS-1E」の商用運用を停止しておりましたが、本書提出日現在、商用運用復旧に向けた作業を進めております。

 

 

 

このように、多様な衛星を短期間に複数打上げ、並行して運用する経験を積んでまいりました。多様なミッションを通じて、小型衛星を構成する機器(コンポーネント)に関するサプライチェーンの確立、コストと信頼性のバランスを考慮したシステム設計、打上げ事業者や政府系機関との交渉等、プロジェクト推進に関わるあらゆる技術的・非技術的ノウハウを蓄積してまいりました。

 

当社グループの小型衛星の開発・製造・運用技術の特徴

当社グループの人工衛星の開発・製造・運用には次のような技術力があり、これらの技術力を用いた短期・低コストでの小型衛星開発を行えることが当社の強みです。また、実績が重視される衛星開発の中で、当社グループで運用している「GRUS-1」、「PYXIS」及び「GRUS-3α」を除き、上記のいずれの人工衛星プロジェクトにおいても、総合評価方式による一般競争入札及び顧客からの指名により人工衛星の開発に対して相応の対価を得ていることからも、当社グループの人工衛星開発能力の高さが評価されているものと認識しております。

 

[1] 小型衛星ミッションのために最適化した独自の設計基準と製造体制

 当社グループの創業者らは大学生時代から小型衛星開発の研究を重ね、小型衛星のミッション遂行に必要となる設計思想及び設計製造ノウハウを獲得しております。当社グループの創業後、これらの設計・製造ノウハウを、大学レベルで必要とされるミッション遂行に必要な水準から、人工衛星ビジネスをするために必要十分となる独自の水準にまで向上させております。これにより、従来の人工衛星製造の業界において常識だった多くの開発工数や試験工数を削減・簡素化したほか、宇宙空間での利用を前提としていない民生部品の積極採用も行い、開発コストを大幅に削減しつつも、事業用途に耐え得る品質を維持する開発手法の確立に成功しております。

 

[2] 自動運用システム

 当社グループが手掛けている一般的な地球周回衛星では、地上に置かれているアンテナ(地上局)と通信可能な時間帯は投入軌道によって自動で決まり、夜間・休日関係なく運用が発生します。従来行われていた人力による衛星運用では、こうした変則的な拘束時間に加え、運用ミスが許されないことによるストレスが高く、多大な人的コストがかかっておりました。当社グループでは創業以来、こうした運用にかかる手間・ミスを避けるため、人工衛星の運用の無人化・自動化を目指した運用システムを開発し、2018年に打上げた「GRUS-1A」より適用を開始しました。現在ではクラウド上の自動運用システムが人工衛星の監視・運用の大半を無人で実施し、軌道上の衛星に発生した軽微な不具合は自動復旧するなど効率的な衛星運用を実施しているほか、人工衛星に送付するコマンドは事前に設定された運用計画に基づき全てプログラムが生成するなど、運用ミスを防ぐ工夫をしております。さらに、他物体との衝突リスクが顕在化した時には自動で衝突回避運用を実行する機能の実装も進めております。人工衛星運用の自動化は当社グループの創業当時より強く掲げた目標であり、人工衛星に搭載するソフトウエアと地上側の人工衛星運用ソフトウエアの両者を内製し、それらを相互に連携させることで高度な運用自動化を実現しております。このように人工衛星の開発と運用をワンストップで提供できることは、設計・製造・運用全ての経験を有した事業者のみが実現できることであり、特に人工衛星の運用経験のない顧客を取り込めるようになる点で、強い競争力となると考えております。

 

[3] 民生部品の積極的な利用をはじめとした独自のサプライチェーン網の構築
 宇宙は地上とは異なる過酷な環境(真空、宇宙放射線、大きな温度変動等)であるため、一般には宇宙環境を想定して製造されていない民生部品をそのまま利用することはできません。当社グループは最先端の半導体などの民生部品から宇宙利用できるものを独自に選定するノウハウ・技術を有しております。これによって例えば衛星搭載のメイン計算機ボードを内製化しており、安価でありつつも小型かつ高性能な衛星の実現に貢献しております。こうしたノウハウの積み重ねにより、当社グループは、外部機器の調達と自社開発品を組み合わせた独自のサプライチェーン網を構築しております。また、長納期かつ高額な調達機器に関しても、外部メーカーと共同開発に取り組み、当社グループが宇宙利用の経験とノウハウ等を提供することで、安価で短納期な部品を開発するなど、更なる原価低減に向けた施策も進めております。一方で近年では数千機を超えるいわゆるメガコンステレーションの誕生から、小型衛星向けのコンポーネントの開発が活発となっており、徐々に安価で高性能なコンポーネントも市場に流通し始めております。当社グループは内製と外部パートナーとの共同開発、外部調達をバランスよく併用することで技術・コスト両面で競争力のある製品開発を進めております。

 

シナノケンシ株式会社と共同開発を行っている

リアクションホイール(衛星の姿勢制御装置の一つ)の原理試作品

 

 

(3) AxelLiner事業

AxelLiner事業は、顧客向け小型衛星プロジェクトの開発・製造・打上げ・運用を提供しております。

AxelLiner事業の前身となる、創業当初から取り組んできた顧客専用衛星開発では、顧客の要望に応じた小型衛星の設計から製造・運用までを提供してまいりました。その実績として、「WNISAT-1」、「ほどよし1号機」、「WNISAT-1R」、「RAPIS-1」が挙げられます。

 

現在の主要顧客は政府系機関で、2025年5月期はAxelLiner事業の売上高の99%以上を占めております。また、同時期の売上高は国内100%になります。政府系機関より委託を受け、取り組んでいるプロジェクトのうち、主なものは以下のとおりであります。

 

・光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の開発・実証(2031年度(注)までの最大10年間)

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という。)が公募した「経済安全保障重要技術育成プログラム」におけるテーマの一つであり、2023年3月に採択されました。本開発・実証プロジェクトは、株式会社Space Compass(NTT株式会社とスカパーJSAT株式会社の合弁会社)、NICT、日本電気株式会社とともに、大容量・低遅延でのデータ通信・データ処理のサービスの提供を可能にする技術の研究開発に取り組み、日本近傍で衛星光通信ネットワークシステムとしての機能・性能実証を行います。このうち、当社グループは地球低軌道光通信衛星コンステレーションを構築する小型の光通信衛星及びネットワーク統合制御システム(ネットワーク運用制御システム、衛星管制システム、衛星自律化システム)の開発を行うと共に、システム実証のための光通信ターミナル搭載の地球観測衛星や電波(RF)地上局の構築を担当します。

 

光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の実装後のイメージ図

 

 

・Beyond 5G 次世代小型衛星コンステレーション向け電波・光ハイブリッド通信技術の研究開発(2024年度まで(注))

 次世代の人工衛星の標準コンポーネントとなり得る光通信技術に関連し、2021年にNICTより委託された案件です。国立大学法人東京大学、国立大学法人東京工業大学(現・東京科学大学)、株式会社清原光学とともに、次世代小型通信衛星コンステレーション構築に向け、キーコンポーネントである光通信機、及び従来製品より高速なKa帯通信機の開発を行いました。

 

(注)各機関の会計年度を示します。

 

また、顧客の専用衛星の開発・運用及びAxelGlobe事業に供する小型衛星「GRUS-1」の開発・運用を通して、当社グループは設計の標準化や量産に関する技術的知見の蓄積、必要となる諸手続きや調整のほか、政府や周波数調整の国際機関、ロケット・地上局・保険事業者等の外部関係者との関係性の構築など、衛星プロジェクト遂行に必要なあらゆる経験を積んでまいりました。こうして得たノウハウをベースに、顧客が求めるミッションを実現する衛星について、設計・製造・各種手続きから運用までをワンストップサービスとして提供することを目指しております。

衛星は、大きくは通信、電源、姿勢制御等、人工衛星としての基本機能に必要な機器と衛星の主構造の総称を指すバス(衛星バス)と、その人工衛星を製造・開発する目的となるミッション機器の2つで構成されております。それまでの衛星開発では、バス部の設計は、個別の要素技術は流用していたものの、衛星バス及び自動運用システムの標準化・汎用化が十分に進んでおらず、顧客のミッションに応じたカスタマイズでの設計工程が毎回発生し、複数の衛星案件を獲得して成長する上での課題となっていました。当社グループではバス部設計の標準化・汎用化の推進により、開発の効率化、開発期間の短縮化を進めております。

2010年代後半に入り、政府が宇宙ベンチャーの支援を本格的にスタートし、今後も宇宙ビジネスは加速度的に成長することが見込まれる環境となりました。時流により、世の中の期待にタイムリーに応えていくためには、衛星開発手法を抜本的に変革しなければならないと考えるようになったことから、改めて専用衛星事業のあり方を見直したのが、AxelLiner事業です。顧客の事業デザインのサポートから軌道上運用までの衛星開発に関わる長くて複雑なプロセスをパッケージ化し、それらを容易に管理できるソフトウエアを提供することで、他に例のない革新的なサービスを作り上げることを目指しております。なお、本サービスの詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 2021年より経済産業省による「超小型衛星コンステレーション技術開発実証事業」(注)の補助事業者として、小型衛星の量産化を見据えた設計の汎用化、製造の効率化、運用の自律化・自動化についての実証を進めており、2024年3月にAxelLinerの実証衛星初号機となる「PYXIS」の打上げを行いました。「PYXIS」は当社グループが開発する汎用バスシステムの実証というだけでなく、ソニーグループ株式会社との協業により、IoT向け低消費電力広域(LPWA:Low Power Wide Area)通信規格のELTRES™(エルトレス:衛星測位システムを標準搭載し、見通し100km以上の長距離伝送性能を持つソニー独自のLPWA通信規格)に対応した衛星無線実験装置を搭載しました。なお、「PYXIS」は打上げ後、軌道投入に成功しましたが、電源供給系統の故障が発生し、通信が断絶したことから運用を終了しております。

 

(注)本事業は2021年度から2022年度まで経済産業省が実施し、2023年度から2026年度はNEDOが「宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業(超小型衛星の汎用バスの開発・実証支援)」として実施するものです。また、実施期間は各機関の会計年度を示します。

 

 

(4) AxelGlobe事業

 AxelGlobe事業は当社グループが運用する衛星にて撮影した画像データを販売及び衛星画像を使ったサービスを提供しており、現在5機の「GRUS-1」により顧客が求める世界中の地点の衛星データを高頻度かつ安価に提供ができることを最大の強みとしております。

 AxelGlobe事業を構成する小型衛星「GRUS-1」において提供する衛星画像の地上分解能(画像における1ピクセルに相当する地上の幅)は2.5mと、地上の航空機1機レベルの識別が可能であり、撮影幅は55km(直下視の場合)、撮影長は最大約1,000㎞と世界的に見ても商用衛星としては幅広い画像を一度に取得することができます。

 

 

 一般的な衛星画像としては、一眼レフカメラのように人の目で見たように写る光学画像と、電波を用いた合成開口レーダー(SAR; Synthetic Aperture Radar)画像の大きく分けて2種類がありますが、「GRUS-1」が取得する画像は光学画像となります。照射した電波の反射強度を白黒の画像として表現しているSAR画像と比較し、「GRUS-1」が取得する光学画像は普段目にしている写真と同種の画像であり、直感的に理解しやすく誰にでも使いやすいという特徴があります。光学画像には悪天候時や夜間の撮影ができないという弱点がありますが、広域を撮影できる、複数波長のデータがあるため情報量が多い、面積あたりの画像単価が低い等のSAR画像にはないメリットもあります。衛星自身が電波を発して観測を行うSAR衛星に対し、光学衛星はSAR衛星のように衛星自身が電波を照射しない、受動的な観測手法であるため消費電力が少なく、その分一つの衛星でより広い面積を撮影することが可能です。また、衛星開発コストも低く抑えられ、比較的安価に通常の写真のような扱いやすい衛星画像をユーザーへ届けられる特徴があります。実際にサービスを利用する顧客セグメントは幅広く、2025年5月期のAxelGlobe事業の売上高の約51%は民間企業であり、官民問わず幅広い事業者にサービスを提供しております。

 また、同時期の国内外売上高比率は国内約69%、国外約31%になります。販売チャネルについては、国内外50社以上の販売代理店と契約しておりますが、国内においては直販による営業活動も強化し、衛星画像にAI技術等を用いて解析した情報を付加した解析サービスや、衛星画像を用いた課題解決を行うコンサルテーションサービスも合わせて提供しております。これらのサービスを充実させていくために、様々な非宇宙産業のキープレイヤーとの協業に向けた取組みを積極的に進めております。

 

 

光学衛星とSAR衛星の比較

 

*1:衛星1機が1日あたりに撮影可能な面積

*2:国内SAR小型衛星事業者と当社製造コストの比較より

 

 「GRUS-1」では人間の目でも視認可能な可視光線に加え、人間の目には見えない近赤外線(波長帯:770nm-900nm)や植物のクロロフィルが良く反応すると言われるレッドエッジ(波長帯:705nm-745nm)のデータを取得することができ、可視光だけでは判別が難しい作物の生育状況の把握や森林の健康状態の確認といった用途への応用が可能です。これらのデータをAxelGlobe専用のウェブプラットフォームを通じて提供しております。

2021年3月に打上げられた「GRUS-1B, C, D, E」のフライトモデル4機

(当社グループのクリーンルームで撮影)

 

 AxelGlobe事業で提供するサービスの詳細は以下のとおりであります。

 

事業の特徴

[1]顧客要望に合わせた高い衛星利用効率

 当社グループが提供する衛星画像は基本的に顧客の要望があった場所を撮影するタスキングを基本としており、事前にあらゆる箇所を撮影し、アーカイブとして提供するビジネスモデルと比較して死蔵されるデータを少なくすることが可能です。

 

[2]一度に広範囲にわたる撮影

撮影幅55㎞(直下視の場合)、撮影長最大約1,000kmの広範囲を一度に撮影することが可能です。長距離にわたる海岸線や、広域の農地や森林のモニタリングにも適しております。

 

[3]高頻度での撮影

 同一地点を2~3日に1回撮影が可能です。顧客のニーズにより、月1回、月3回、月6回の撮影リクエストを受け付けております(タスキング画像販売)。特定のエリアを定期的にモニタリングすることができるため、時間による変化をタイムリーに把握し、適切な事業判断に活用できます。

 

サービスラインナップ

[1]AxelGlobe タスキング(タスキング画像販売)

 顧客が指定する期間・エリアを1回だけ撮影することが可能なサービスです。世界中のどこでも撮影可能な人工衛星の特徴を生かし、指定した期間内で1箇所又は複数箇所の撮影を依頼、撮像後のデータを入手することができます。また予め設定された比率を超える雲が検出された場合は無償にて再撮影を行います。これらの依頼・データのダウンロードはAxelGlobeのウェブプラットフォームへのアクセスにより実行できるほか、APIを利用し、他社ITサービスとの連携も可能です。

 

[2]AxelGlobe モニタリング(モニタリングサービス)

 小型衛星コンステレーションを保有することから実現できたモニタリングサービスです。顧客が指定するエリアについて、顧客が指定した期間、低頻度(月1回)~高頻度(月6回程度)の中で顧客が希望する頻度を選び、契約プランに応じて衛星画像を撮影、販売するサービスです。AxelGlobe タスキングと同じく、契約からデータのダウンロードまでAxelGlobeのプラットフォーム及びAPIを通じてアクセス可能です。

 

[3]AxelGlobe エマージェンシー(緊急撮影サービス)

 災害の発生直後など、一刻を争う情報の取得ニーズに対応するサービスです。衛星コンステレーションによる高頻度観測により世界中どこでも、そして非常に広域にわたる影響について迅速に事態の確認が可能です。システム構成上最短で撮影3時間前まで撮影リクエストの受付を行い、撮影後の優先的なデータのダウンリンク(衛星から地上に向けて電波を送信すること)を行います。2024年1月1日に発生し、石川県で最大震度7を記録した「令和6年能登半島地震」においても、国際災害チャーターへのデータ提供を行いました。

 

[4]AxelGlobe アーカイブ(アーカイブ画像販売)

 過去に撮影した当社グループの衛星画像の中から、顧客のリクエストに応じて画像を販売するサービスです。画像の撮影タイミングを問わないことから、より安価に衛星データを活用することが可能です。

 

[5]AxelGlobe モザイク(モザイク画像生成)

 広域の画像を撮影した場合、あるいはこれらの画像を組み合わせた広域地図を作ろうとした場合、どうしても雲の映り込みが生じます。AxelGlobe モザイクは同地点を複数回撮影し、それぞれの画像のうち、雲が写っていない箇所を組み合わせ、地図などの作成に必要な雲の写っていない衛星画像(モザイク画像)をオンデマンドで提供するサービスです。数千km2から数百万km2の範囲をカバーしており、関心ある分野・地域ごとに柔軟にモザイク画像の生成をご依頼いただけます。複数の画像を組み合わせておりますが、それぞれの画像間の境界をシームレスに補正し、また色味の補正なども行うことで、視覚的な分析に適した画像を作成します。

 

[6]撮影サブスクリプションサービス(シャッター権販売)

 顧客が撮影場所を自由に決めることのできるサービスです。本サービス以外では撮影画像は購入を前提としておりますが、本サービスの場合、サムネイルを確認して必要な画像のみダウンロードすることができる(要追加費用)ため、費用を抑えながら関心地点の撮影ができます。また、撮影画像については一定期間、他の顧客には公開されないようにすることが可能です。

 

[7]解析・コンサルテーションサービス

 撮影した衛星画像に特定の画像処理を加えて、高付加価値の画像を提供するサービスです。特に、植物の育成状況を分析する植生分析に強みがあります。単に衛星画像を提供するだけではなく、衛星画像の活用についてのコンサルテーションも個別に行っております。当社グループの衛星画像データに、他のデータを掛け合わせることで新たなビジネスの創造や、研究開発に利用されております。

 

サービス利用事例

 AxelGlobeが提供するサービスを活用できる主な産業・用途として、農業、インフラモニタリング、環境、報道、安全保障、宇宙状況把握、マッピングが挙げられます。衛星は世界中のあらゆる地域を撮影できるため、これらの産業・用途に対してサービスをグローバルに提供していくことが可能です。具体的には、次に示すように活用されております。

 

[1]農業

 衛星画像はただ目で見るだけでなく、得られている波長データごとの演算・分析を行うことにより作物の生育状況を解析することができます(当社グループの「GRUS-1」による衛星画像は赤、緑、青、近赤外、レッドエッジ、パンクロマティックと呼ばれる6つの波長帯域によるデータを取得しております)。生育の状況を「GRUS-1」などの衛星画像から確認、分析を行うことで、収穫適期の把握や水・肥料の管理が効率的にできるようになります。また、森林の育成状況に関する情報が樹種判断等の管理にも利用されております。その他季節ごとの植生の状況について分析することで、耕作放棄地を発見することや、農作物の経済指標作成等、多様な用途での活用が可能です。

NDVI処理/NDRE処理(注)の画像

 

 (注) NDVI処理/NDRE処理…植物が一定の光の波長帯域を反射又は吸収する特性を活かして、特定の波長帯域の反射率の差を指標として観測し、植物の生育状況を衛星画像上で可視化する処理。近赤外線帯域(「GRUS-1」では770nm-900nm)の波長を活用したものをNDVI(Normalized Difference Vegetation Index)、レッドエッジ帯域(「GRUS-1」では705nm-745nm)の波長を活用したものをNDRE(Normalized Difference Red Edge Index)といいます。

農地状況分析・生育状況把握

 

[2]インフラモニタリング

 広範囲を一度に撮影可能であり、かつ定期的に撮影できる衛星画像は、対象地域の工事進捗や異常を容易に確認することを可能にします。また、容易に現地に行くことのできない遠隔地も撮影対象とすることができるため、長距離にわたるパイプラインや外洋に浮かぶプラント、メガソーラーなど、大規模なインフラのモニタリングや工事進捗の把握の効率化に活用可能で

 

工事進捗のモニタリング(工事ライフサイクル)

 

[3]環境

 人が立ち入りにくい地帯の広範囲かつ日々の変化迅速な環境モニタリングや、森林の伐採などの変化、河川における堆積物の変化による流域のモニタリングなどを自動検出することができるため、業務効率化に活用可能です。このほか、地上からの実測データなども組み合わせつつ、森林域における樹種ごとの地上部バイオマスの推定などを行い、森林の管理精度の向上や生物多様性保護への貢献にもつなげることができると考えております。

 

複数の時点間の堆積物の定量化による流域モニタリング

 

[4]報道

 報道で衛星画像が活用される場面は近年増加しております。画像そのものではなくシャッター権を販売することで、世界中どこでも関心のある地域を自由に決め、都度指定して撮影することが可能です。また必要な画像のみ追加費用で購入できるようにすることで、従来と比較して、費用を抑えた形で衛星データを活用することができます。

 近年はSNSが発達し、また、生成AIの発展等により誰でも画像を容易に作成できるようになったため、偽の画像を使ったフェイク情報の拡散リスクが叫ばれております。このような中、衛星画像はファクトを示すデータとしての価値が高まると見込んでおります。

 

[5]安全保障

 人工衛星は世界中を領空の制約に縛られることなく観測することができるため、地上から立ち入ることができない場所でも、何が起きているかを一定程度知ることができます。こうした情報は、安全保障の観点において極めて重要な役割を果たします。

 

 

「GRUS⁻1」にて撮影したシンガポールの港湾エリア。AIを用いて貨物船を自動的に検出(画像右)

 

[6]宇宙状況把握(SSA:Space Situational Awareness)

 軌道上に打上げられる衛星の数が近年急速に増加しており、スペースデブリ(宇宙ゴミ)への関心も高まっております。軌道上物体の衝突によってスペースデブリが急増するのを防ぐため、宇宙交通整理(STM:Space Traffic Management)についての議論も始まっておりますが、こうした議論を進めるにあたり、軌道上の状況を正確に把握することは欠かせません。地上からの望遠鏡やレーダーでの監視に加え、軌道上の衛星から他の物体を直接観測するニーズが出てきております。

 次の画像はオーストラリアのHIGH EARTH ORBIT ROBOTICS PTY LTD(HEO Robotics社)の要請により2024年2月に「GRUS⁻1」が撮影した、軌道上を漂う日本のH-IIAロケット2段目の画像になります。ロケットの1段目や補助ブースター、フェアリング(衛星を保護するカバー)等は海に落下しますが、2段目は衛星を切り離して役割を終えた後も、このように数年から数十年間、軌道上に残存し続けます。

 

軌道上を漂うH-IIAロケット2段目(HEO Robotics社の要請により「GRUS-1」が撮影)

 

[7]マッピング

 衛星による広範囲な観測は、道路・建物、土地、湾岸線などの把握や、地図の作成・更新や都市開発に活用が可能です。

 異なる時期に撮影された衛星画像とAIによる画像分析から、変化量の大きなポイントを抽出し、広範囲なエリアの中から、更新などの対応が必要なポイントを効率的に特定することができます。

 また、複数回撮影した同一地点の画像を用いて、雲のない衛星画像データ(モザイク画像)の組成と提供を実現しております。

 

AxelGlobe モザイクによる雲なし画像の生成例。

「GRUS-1」にて撮影した複数の衛星画像(左)から雲なし画像を合成する。

 

[事業系統図]

 当社グループの事業系統図は以下のとおりであります。

 当社は連結子会社である株式会社アクセルスペースに対して経営管理業務等を提供し、その対価を同社より受領しております。

 

 株式会社アクセルスペースにおいては、AxelLiner事業の顧客は現在政府系機関が多く占めており、それらの顧客に対して小型衛星の製造、開発等のサービスを提供しております。AxelGlobe事業の顧客は国内外、官民それぞれ存在し、それらの顧客に対し衛星データの提供や、衛星データを活用した解析・コンサルティングサービスを提供しております。商流としては株式会社アクセルスペースが直接顧客に対してサービスを提供する場合と代理店を経由する場合があります。

 

 また、株式会社アクセルスペースは衛星開発に際し、必要な部材や機器のベンダー調達と内製化したコンポーネントの組み合わせで開発を行なっております。衛星の打上げに関しては、打上げ事業者から打上げ枠を購入し、事業に必要なデータ管理については、データセンター事業者のサービスを利用しております。

また、衛星と地上との通信を行うため、地上局等の通信事業者と契約し、通信サービスを利用しております。

 

 

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

① 財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における資産につきましては、前連結会計年度末に比べ2,169,851千円増加し、9,523,131千円(前期比29.5%増)となりました。これは主に2027年5月期に打上げを予定している中分解能衛星「GRUS-3」の開発・製造のための部材の納品や発注に伴う前払などにより原材料及び貯蔵品が721,332千円、前渡金が1,580,100千円増加し、また本社オフィスの賃貸契約の締結により敷金及び保証金が89,223千円増加した一方で、契約資産が238,466千円減少したことによるものであります。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債につきましては、前連結会計年度末に比べ4,118,534千円増加し、6,495,187千円(前期比173.3%増)となりました。これは主に2024年9月26日に締結した株式会社みずほ銀行との借入契約や2025年3月26日に締結した株式会社三井住友銀行との借入契約の実行により長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が4,621,695千円増加した一方で、前受金が259,678千円、プロジェクト損失引当金が299,669千円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ1,948,683千円減少し、3,027,944千円(前期比39.2%減)となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純損失により利益剰余金が1,950,803千円減少したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

 当社グループは「Space within Your Reach~宇宙を普通の場所に~」をビジョンに掲げ、従来人々にとっ

て遠い存在であった宇宙が、日常的にかつ当たり前のように利活用されている社会の実現を目指しています。

 当該ビジョンを達成するために、当社グループは、顧客ニーズに応じた小型衛星の開発・製造・各種手配か

ら運用までをワンストップで提供するAxelLiner事業、及び独自の地球観測衛星コンステレーションから得られるデータを用いて各種サービスを提供するAxelGlobe事業の2事業を運営しております。

 当社グループが属する民間宇宙利用の分野では、「最後のフロンティア」として次なる成長産業としての期

待が強く、欧米を含めた世界各国での宇宙スタートアップの設立、政府が率先して主導のプログラムの組成及

びユーザーとしての宇宙利用の拡大など、民間企業や民間投資を巻き込んだ宇宙開発・利用活動が活発化して

います。当社グループの事業展開する宇宙業界では、 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)に設

置され、10年で1兆円という大規模な支援を行う「宇宙戦略基金」の第1期技術開発テーマが採択されており

ます。加えて、防衛省の令和7年度予算において「衛星コンステレーション」の構築に2,832億円が公表され

るなど、わが国において宇宙産業を成長産業とするための政府の取組みも具体化しております。

 このような状況下において、当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べて523,840千円減少

し、1,586,835千円(前期比24.8%減)となり、売上原価は前連結会計年度に比べて900,957千円減少し、

1,479,071千円(前期比37.9%減)となりました。これにより、営業損失は、2,495,052千円(前期は

2,538,094千円の営業損失)となりました。

 また、補助金収入735,948千円の計上等により、経常損失は1,824,228千円(前期は2,509,711千円の経常

損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は1,950,803千円(前期は3,174,278千円の親会社株主に帰属する

当期純損失)となりました。

 各セグメントの経営成績は以下のとおりであります。

(a)AxelLiner事業

 当セグメントにおきましては、政府系機関からの委託試験研究の進捗が貢献し、売上高は1,326,339千円(前期比22.8%減)、売上原価は1,206,090千円(前期比33.4%減)となり、また、NEDOからの「超小型衛星の汎用バスの開発・実証支援」の補助事業につき、補助金収入735,948千円の計上がありました。一方、原価改善、固定費削減等に取り組みましたが、セグメント損失は208,598千円(前期は1,233,831千円のセグメント損失)となりました。

(b)AxelGlobe事業

 当セグメントにおきましては、主に既存顧客からの受注や経済産業省からの委託試験研究の進捗により、売

上高は260,496千円(前期比33.5%減)、売上原価は272,980千円(前期比52.1%減)となりました。一方、営業活動にともなう販売費及び一般管理費や2027年5月期に打上げを予定している中分解能衛星「GRUS-3」の開発のための研究開発費の計上によりセグメント損失は701,058千円(前期は614,153千円のセグメント損失)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ135,550千円減少し、当連結会計年度末には4,106,833千円(前期比3.2%減)となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、減少した資金は、4,329,150千円(前期は2,579,367千円の支出)となりました。これは主に、増加要因として売上債権及び契約資産の減少額262,647千円があった一方で、減少要因として税金等調整前当期純損失1,947,017千円を計上したことや、原材料及び貯蔵品の増加額721,332千円及び前渡金の増加額1,580,100千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、減少した資金は188,109千円(前期は980,814千円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出88,789千円及び敷金及び保証金の差入による支出90,623千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、得られた資金は4,391,841千円(前期は6,434,453千円の収入)となりました。これは主に2024年9月26日に締結した株式会社みずほ銀行との借入契約や2025年3月26日に締結した株式会社三井住友銀行との借入契約の実行により長期借入れによる収入が4,561,695千円であったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

計上区分

セグメントの名称

当連結会計年度

(自2024年6月1日

至2025年5月31日)

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

売上高

AxelLiner事業

4,020,632

76.4

9,528,839

136.8

売上高

AxelGlobe事業

272,166

52.3

133,545

108.0

補助金

AxelLiner事業

1,783,678

66.1

 

合計

4,292,798

74.2

11,446,062

116.9

 (注)1.当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これはAxelLiner事業の受注高及び受注残高については、当連結会計年度にNEDOによる「光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の開発・実証」等の政府系機関からの大型委託研究の契約更新があったことによるものです。一方、AxelGlobe事業の受注高及び受注残高については、前連結会計年度において、経済産業省からの委託試験研究である「多種衛星のオンデマンドタスキング及びデータ生産・配信技術の研究開発」に係る2年度分の受注があったことによるものです。

2.受注高は、当連結会計年度内に締結された契約金額をいいます。売上高の受注残高は、当連結会計年度末までの全期間における受注高の合計額のうち、当連結会計年度末までに収益に未計上のものをいいます。今後、案件が進捗するに当たり契約条件の変更、又は定められた技術要件を満たさない等の事由により、上記の受注残高の一部が収益に計上されない可能性があります。

3.補助金の受注残高については、第4期連結会計年度において当社を選定企業として選定する旨の選定結果通知書をNEDOから受けた、「宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業(超小型衛星の汎用バスの開発・実証支援)」に係る金額のうち、当連結会計年度末までに補助金収入に未計上のものをいいます。今後、案件の進捗や実証内容により受注残高の一部が補助金収入として計上されない可能性があります。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自2024年6月1日

至2025年5月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

AxelLiner事業(千円)

1,326,339

77.2

AxelGlobe事業(千円)

260,496

66.5

合計(千円)

1,586,835

75.2

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは主に、AxelLiner事業において一定期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する方法を適用している政府系機関からの委託試験研究について、プロジェクトに係る原価計上額が減少したことに伴い、履行義務の充足に係る進捗度が低下したことによるものです。またAxelGlobe事業において、顧客数は増加している一方で、一部の既存顧客における一時的な納品量の減少があったことによるものです。

3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自2023年6月1日

至2024年5月31日)

当連結会計年度

(自2024年6月1日

至2025年5月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

1,239,099

58.7

1,147,285

72.3

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)

277,301

13.1

173,923

11.0

 (注)販売実績の総販売実績に対する割合が、100分の10未満の相手先については記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 当社グループの連結財務諸表作成のための会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りのうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(一定期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する方法の適用)

 当社グループでは、一部の売上について、一定期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する方法を適用しております。当該売上高は、原価総額の見積りに対する発生原価の割合(原価比例法)により算出した進捗率に収益総額を乗じて算出しておりますが、原価総額の見積りについては、契約変更や見積りの前提条件の変動によって影響を受ける可能性があり、原価総額の見積りが実際と異なった場合、翌連結会計年度以降の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(固定資産の減損)

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産グループについて、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損損失の認識の要否判定に用いられる割引前将来キャッシュ・フローの見積りは、事業計画を基礎としており、顧客との契約に基づく売上の計上時期及び計上金額に係る仮定が含まれております。将来予測は不確実性を伴い、割引前将来キャッシュ・フローの見積りに対して、実際に発生したキャッシュ・フローが見積りを大きく下回った場合、固定資産の減損損失が発生する可能性があります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べて523,840千円(24.8%)減少し、1,586,835千円となりました。これは主に、AxelLiner事業において一定期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する方法を適用している政府系機関からの委託試験研究について、プロジェクトに係る原価計上額が減少したことに伴い、履行義務の充足に係る進捗度が低下したことによるものです。

 AxelGlobe事業において、顧客数は増加している一方で、一部の既存顧客に対する納品時期が翌期以降になったことや、一時的な納品量の減少等に伴い売上高は減少いたしました。

 

(売上原価、売上総利益)

 当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べて900,957千円(37.9%)減少し、1,479,071千円となりました。これは主に、AxelLiner事業において政府系機関からの委託試験研究に係る原価計上額が減少したこと及びAxelGlobe事業において減価償却費の計上がなくなった影響によるものです。

 

(販売費及び一般管理費、営業損失)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べて334,075千円(14.7%)増加し、2,602,816千円となりました。これは主に、AxelLiner事業の小型衛星の量産化を見据えた設計の汎用化、製造の効率化、運用の自律化・自動化についての実証である「超小型衛星の汎用バスの開発・実証支援」及びAxelGlobe事業の2027年5月期に打上げを予定している中分解能衛星「GRUS-3」等の研究開発費等によるものであります。

 その結果、営業損失は2,495,052千円(前期は2,538,094千円の営業損失)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常損失)

 当連結会計年度の営業外収益は、844,322千円となりました。これは主に、NEDOからの「超小型衛星の汎用バスの開発・実証支援」に関する補助金収入によるものであります。

 営業外費用は、173,499千円となりました。これは主に、支払利息100,490千円及び資金調達費用60,000千円を計上したことによるものであります。

 その結果、経常損失は1,824,228千円(前期は2,509,711千円の経常損失)となりました。

 

(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純損失)

 特別利益は、計上しておりません。また、特別損失は、減損損失122,788千円を計上しております。

 その結果、税金等調整前当期純損失は1,947,017千円(前期は3,159,680千円の税金等調整前当期純損失)となりました。

 

(法人税等、親会社株主に帰属する当期純損失)

 当連結会計年度における法人税等は、3,785千円となりました。

 その結果、親会社株主に帰属する当期純損失は1,950,803千円(前期は3,174,278千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

 なお、セグメントごとの経営成績については「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループのキャッシュ・フローの分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループにおける主な資金需要としては、AxelLiner事業の運転資金及びAxelGlobe事業のインフラ設備である自社衛星「GRUS-3」及び高分解能衛星の開発・製造費用であります。これらの資金需要につきましては、自己資金を基本としつつ、必要に応じて株式発行による資金調達や金融機関からの借入等の最適な方法による資金調達にて対応する方針であります。

 資金の流動性については、「3 事業等のリスク(22)資金調達リスクについて」及び「(24)財務制限条項について」に記載のとおりであります。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

⑤ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。

 

 以下に、各期における重要な経営指標の分析を記載します。

a.売上高、総収入(売上高と補助金収入の合算額)

 売上高は、前連結会計年度に比べて523,840千円(24.8%)減少し、1,586,835千円となりました。これは主に、AxelLiner事業において、一定期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する方法を適用している政府系機関からの委託試験研究について、プロジェクトに係る原価計上額が減少したことに伴い、履行義務の充足に係る進捗度が低下したことによるものです。

 また、AxelGlobe事業においても、顧客数は増加している一方で、一部の既存顧客における一時的な納品量の減少に伴い売上高は減少いたしました。

 総収入は、前連結会計年度に比べて158,517千円(7.3%)増加し、2,322,783千円となりました。これは売上高は減少した一方で、「超小型衛星の汎用バスの開発・実証支援」に係る補助金の計上があったことによるものです。

 

b.衛星打上げ機数(AxelLiner事業)

 当連結会計年度において、打上げた衛星はありません。

 

c.衛星運用機数(AxelGlobe事業)

 「GRUS-1A~E」の5機体制による運用を継続しておりましたが、現在は姿勢制御に不具合が発生したGRUS‐1Eの商用運用を停止しており、4機体制でコンステレーションを運用しております。なお、当社ウェブサイトで公表しているとおり、GRUS-1Eについては復旧作業を進めた結果、2025年3月31日時点で画像データの取得が可能な状態に復旧しており、本書提出日現在、商用運用の再開に向けた準備を進めております。

 

セグメント情報

(セグメント情報等)

【セグメント情報】

1.報告セグメントの概要

(1)報告セグメントの決定方法

 当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が、経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものであります。

 当社グループは、本社に製品・サービス別の事業本部を置き、各事業本部は、取り扱う製品・サービスについて、国内及び海外の包括的な戦略を立案し、事業活動を展開しております。

 従って、当社グループは各本部の事業内容を基礎とした製品・サービス別セグメントから構成されており、AxelLiner事業及びAxelGlobe事業の2つを報告セグメントとしております。

 

(2)各報告セグメントに属する製品及びサービスの種類

 AxelLiner事業は小型衛星の開発・製造・運用サービスを提供するとともに、政府系機関より宇宙開発に係る委託試験研究サービスを受託しております。

 AxelGlobe事業は、当社グループが保有する小型衛星から取得した地球表面の画像データ及び画像データの解析サービス、解析結果に基づくソリューションサービスを提供しております。

 

2.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額の算定方法

 報告されている事業セグメントの会計処理の方法は、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」における記載と同一であり、報告セグメントの利益又は損失は、経常損失ベースの数値であります。

 

3.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報

前連結会計年度(自2023年6月1日 至2024年5月31日)

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

報告セグメント

調整額

(注)

1.2.3

連結財務諸表
計上額(注)4

 

AxelLiner事業

AxelGlobe事業

売上高

 

 

 

 

 

外部顧客への売上高

1,719,164

391,511

2,110,676

2,110,676

1,719,164

391,511

2,110,676

2,110,676

セグメント損失(△)

△1,233,831

△614,153

△1,847,984

△661,727

△2,509,711

セグメント資産

1,301,863

715,448

2,017,311

5,335,969

7,353,280

その他の項目

 

 

 

 

 

減価償却費

26,367

312,538

338,906

17,067

355,973

減損損失

178,552

441,382

619,934

29,882

649,817

有形固定資産及び
無形固定資産の増加額

160,007

160,007

22,875

182,882

 (注)1.セグメント損失の調整額△661,727千円は、各報告セグメントに配分していない全社費用であります。全社費用は、主に報告セグメントに帰属しない全社共通の管理費用であります。

2.セグメント資産の調整額5,335,969千円は、各報告セグメントに配分していない全社資産であります。全社資産は主に当社グループの余資運転資金(現金・預金)等であります。

3.その他の項目の調整額のうち、各報告セグメントに配分していない減価償却費は、17,067千円であります。当該減価償却費は管理用固定資産に係るものであります。

4.セグメント損失は、連結財務諸表の経常損失と調整を行っております。

 

 

当連結会計年度(自2024年6月1日 至2025年5月31日)

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

報告セグメント

調整額

(注)

1.2.3

連結財務諸表
計上額(注)4

 

AxelLiner事業

AxelGlobe事業

売上高

 

 

 

 

 

外部顧客への売上高

1,326,339

260,496

1,586,835

1,586,835

1,326,339

260,496

1,586,835

1,586,835

セグメント損失(△)

△208,598

△701,058

△909,657

△914,571

△1,824,228

セグメント資産

2,262,268

1,807,281

4,069,549

5,453,581

9,523,131

その他の項目

 

 

 

 

 

減価償却費

減損損失

83,658

21,707

105,366

17,422

122,788

有形固定資産及び
無形固定資産の増加額

83,658

21,707

105,366

17,422

122,788

 (注)1.セグメント損失の調整額△914,571千円は、各報告セグメントに配分していない全社費用、資金調達費用及び支払利息等であります。全社費用は、主に報告セグメントに帰属しない全社共通の管理費用であります。

2.セグメント資産の調整額5,453,581千円は、各報告セグメントに配分していない全社資産であります。全社資産は主に当社グループの余資運転資金(現金・預金)等であります。

3.その他の項目の調整額のうち、各報告セグメントに配分していない減損損失、有形固定資産及び無形固定資産の増加額は、17,422千円であります。当該その他の項目の調整額は管理用固定資産に係るものであります。

4.セグメント損失は、連結財務諸表の経常損失と調整を行っております。

 

【関連情報】

前連結会計年度(自2023年6月1日 至2024年5月31日)

1.製品及びサービスごとの情報

 セグメント情報に同様の情報を開示しているため、記載を省略しております。

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

(単位:千円)

 

日本

オーストラリア

その他

合計

1,981,162

120,917

8,596

2,110,676

 (注) 売上高は顧客の所在地を基礎とし、国又は地域に分類しております。

 

(2)有形固定資産

 本邦以外に所在している有形固定資産がないため、記載を省略しております。

 

3.主要な顧客ごとの情報

(単位:千円)

 

顧客の名称又は氏名

売上高

関連するセグメント名

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

1,239,099

AxelLiner事業

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)

277,301

AxelLiner事業

 

当連結会計年度(自2024年6月1日 至2025年5月31日)

1.製品及びサービスごとの情報

 セグメント情報に同様の情報を開示しているため、記載を省略しております。

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

(単位:千円)

 

日本

オーストラリア

その他

合計

1,505,046

76,728

5,060

1,586,835

 (注) 売上高は顧客の所在地を基礎とし、国又は地域に分類しております。

 

(2)有形固定資産

 本邦以外に所在している有形固定資産がないため、記載を省略しております。

 

3.主要な顧客ごとの情報

(単位:千円)

 

顧客の名称又は氏名

売上高

関連するセグメント名

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

1,147,285

AxelLiner事業

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)

173,923

AxelLiner事業

 

【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】

前連結会計年度(自2023年6月1日 至2024年5月31日)

 

 

 

 

(単位:千円)

 

AxelLiner事業

AxelGlobe事業

全社・消去

合計

減損損失

178,552

441,382

29,882

649,817

 

当連結会計年度(自2024年6月1日 至2025年5月31日)

 

 

 

 

(単位:千円)

 

AxelLiner事業

AxelGlobe事業

全社・消去

合計

減損損失

83,658

21,707

17,422

122,788

 

【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】

 該当事項はありません。

 

【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】

 該当事項はありません。