2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

各リスクが顕在化する可能性の程度や時期については、そのリスクの複雑性から明確化は難しいものの、当社グループの事業特性や発生の蓋然性等に応じて、「特に重要なリスク」と「重要なリスク」に分類しております。

また、当社グループはこれらリスクの発生可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生時の対応に努める方針でありますが、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績及び財政状態に与える影響については、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

当社は、グループ全体のリスク管理の基本方針及び管理体制を「リスク・コンプライアンス規程」において定め、その基本方針及び管理体制に基づき、代表取締役社長を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会で、企業経営や災害・事故、社会環境等、当社グループを取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスクの未然防止を図っております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(特に重要なリスク)

(1)事業環境について

① 経営環境の変化について

当社グループはITビジネスソリューション事業を展開しており、法人を主要顧客としております。また、当社グループは主力サービスとして、法人向けグループウェア「rakumo」を展開しており、勤怠管理やカレンダー、経費精算、稟議申請、社内掲示板等、顧客企業が日常的に使用する機能を幅広く提供しております。グループウェアの入れ替えには全社的な対応が必要となることも多く、容易に解約される性質の製品ではないと考えられ、ライセンスの販売額に対する月間解約率は低位(2023年度通期平均は0.57%)で推移しております。

また、サービス料金を顧客企業の使用期間及びユーザー数に応じて定期定額契約(サブスクリプション)として課金することで、継続的な収益(リカーリングレベニュー)を得ることができる「サブスクリプション型リカーリングレベニューモデル」を採用しております。

これらにより、サービスが複数年に渡り継続して利用されることで、解約数が新規契約数を上回らない限り、収益が前年度を上回るというストック型ビジネスとしての安定性がありながら、新規契約数の増加に伴う高い成長をも目指すことができるビジネスを展開しております。

しかしながら、今後の経済情勢や景気動向の変化等により、顧客企業の情報化への投資が抑制されるような場合、新規・追加受注が想定通り進まない場合又は解約率が当社の想定を上回った場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② クラウド市場の動向について

当社グループは、法人向けグループウェア「rakumo」、社内SNS型日報共有アプリ「gamba!」及びIR動画配信サービス「SmartVision IR」等を展開しており、クラウド型でのサービス提供を行っております。クラウド市場は急速な成長を続けており、当社グループは今後もこの傾向は継続するものと見込んでおり、同市場での更なる事業展開を図っていく計画であります。

しかしながら、経済情勢や景気動向の変化による企業の情報化投資の抑制や、規制の導入等予期せぬ要因によりクラウド市場の成長が鈍化するような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業及びサービス展開について

① Google社及びセールスフォース社との関係について

当社が顧客に提供しているアプリケーションは、Google社が提供するクラウドプラットフォーム及びセールスフォース社が提供するクラウドプラットフォーム上に構築されております。

また、当社は、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社とGoogle Workspaceに関する再販売代理店契約を締結しており、株式会社セールスフォース・ジャパンとの間でも当社の製品と結合したソリューションの一部として、同社グループサービスの再販を可能とする契約をそれぞれ締結しております。

現時点において両社が日本から撤退する予定はなく、また、当社としては、両社と円滑な関係を維持できていると考えていることから、今後の契約関係も安定して継続するものと考えております。

しかしながら、両社の経営戦略の変更により日本でのプラットフォームの提供が廃止・停止となった場合、プラットフォームの機能に障害が発生して当社のアプリケーションに影響が生じた場合、プラットフォームに大きな機能変更が生じた場合、プラットフォームの競争優位性が失われた場合、プラットフォーム利用料及び各サービスの引上げを要求された場合、当社が解除事由に抵触したこと等を理由に契約を解除された場合には、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② システムトラブルについて

当社グループが顧客に提供しているアプリケーションは、クラウドという特性上、インターネットを経由して行われており、インターネットに接続するための通信ネットワークやインフラストラクチャーに依存しております。当社はシステムトラブルを最大限回避すべく、企業向けクラウドプラットフォームとして信頼されているGoogle社が提供するクラウドプラットフォーム及びセールスフォース社が提供するクラウドプラットフォーム上にアプリケーションを構築しております。

しかしながら、自然災害や事故、プログラム不良、不正アクセス、その他何らかの要因により予期しえないトラブルが発生し、大規模なシステム障害が起こるような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 情報管理体制について

当社グループは、提供するサービスに関連して多数の顧客企業に関する情報や個人情報を取り扱っております。これらの情報資産の保護や漏洩リスクを回避するため、情報セキュリティ基本方針を定め、関連規程を整備・運用しております。

しかしながら、何らかの理由により重要な情報資産の漏洩、消失、不正利用等が発生した場合、当社グループの信用失墜、損害賠償請求の発生等により、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(重要なリスク)

(1)事業環境について

① 技術革新への対応について

当社グループが属するインターネット業界においては、新技術の開発や新サービス出現のスピードが早く、顧客ニーズも早期に変化する等、変化の激しい業界となっております。当社グループでは、最新の技術動向や環境変化に関する情報収集、優秀な人材の確保や教育によるノウハウの蓄積等に積極的に取り組み、技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。

しかしながら、何らかの理由で技術革新や顧客ニーズへの対応が遅れた場合や、新技術への対応のため想定を超える投資が必要となった場合、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合について

当社グループが事業を展開する法人向けグループウェア市場は、競合企業が複数存在しており、今後クラウド市場の普及に伴い、規模の大小を問わず競合企業の新規参入が予測されます。これら競合他社の中には、当社グループに比べ大きな資本力や技術力、販売力等の経営資源及び顧客基盤等を保有している企業が含まれます。

当社グループは、製品開発力の強化や継続的な製品改修・サービス品質の向上等により、競争力の維持に努めておりますが、競合企業や新規参入企業との競争激化により、当社グループが想定している事業展開が図れない場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ ITオフショア開発サービス

当社グループでは、他社企業からの開発依頼にお応えするため、連結子会社であるRAKUMO COMPANY LIMITED(ベトナム)を拠点として、ITオフショア開発サービスを提供しております。

メインに実施している「ラボ型」のシステム開発では、顧客ごとに特定のエンジニアを確保し、専属のチームを組成の上、一定期間継続的に開発業務を行っております。チームメンバーが固定されていることにより、企業独自の開発要件やノウハウ等の蓄積も可能となり、人材確保や人件費面以外においてもコスト削減メリットが生じます。

しかしながら、今後の経済情勢や景気動向の変化等により、顧客企業の情報化への投資が抑制されるような場合、新規・追加受注が想定通り進まない場合、または解約等が発生する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ ソフトウエアの減損について

当社グループでは、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた開発費用をソフトウエア(ソフトウエア仮勘定含む)として資産計上しております。このソフトウエアについて、クライアントニーズへの適切な対応を実施することにより減損を発生させないよう努める方針ですが、重大な将来計画、使用状況等の変更やサービスの陳腐化等により、収益獲得又は費用削減効果が大幅に損なわれ、ソフトウエアの減損が必要となる場合、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ のれん及び顧客関連資産(以下「のれん等」という。)の減損リスクについて

当社は、2022年6月に株式会社gambaの全株式を取得、2023年7月に株式会社アイヴィジョンの全株式を取得し、のれん等を連結貸借対照表に計上しております。当該のれん等については、各社における将来の収益力を適切に反映しているものと判断しておりますが、今後の事業環境の変化等により、将来の収益性が低下した場合には、当該のれん等について減損損失を計上する必要が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業及びサービス展開について

① 人材の確保や育成について

当社グループが継続して事業拡大を進めていくためには、優秀な人材の確保、育成及び定着が不可欠であると認識しております。そのため、継続的な人材採用や育成に加え、定着率向上に向けた各種施策を行っております。

しかしながら、優秀な人材が必要な時期に十分に確保・育成できなかった場合や人材流出が進んだ場合等には、経常的な業務運営及び事業拡大等に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 組織規模について

当社グループの連結従業員数は96名(2023年12月31日現在)であり、小規模な組織であると認識しております。現時点においては、当社グループの規模に対して適切な人員体制が構築出来ているものと考えておりますが、今後の事業拡大に応じて、人員増強、内部管理体制の充実を図っていく必要があると考えております。

しかしながら、事業の拡大に応じた人員増強が順調に進まなかった場合や内部管理体制の充実がなされなかった場合には、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)その他

① 為替リスクについて

当社グループの在外子会社の財務諸表は現地通貨にて作成されるため、連結財務諸表作成時に円換算されることとなります。為替相場の変動による円換算時の為替レートの変動が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、クラウドインフラ利用料や一部仕入において、直接的または間接的に、外貨建てでの取引を行っております。オペレーションコストの継続的な見直しや、円建てでの取引契約への移行を進めることで為替リスクの低減を図っておりますが、当初想定した為替レートと実勢レートに著しい乖離が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 株式価値の希薄化について

当社は、2023年5月に第三者割当により、第8回新株予約権及び第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行を行っております。第8回新株予約権及び第1回無担保転換社債型新株予約権付社債がすべて行使又は転換された場合、1,432,700株(議決権の数は14,327個)の新株式が発行されることにより、2023年12月31日の当社の発行済株式総数5,773,200株(議決権の数は57,697個)に対して24.82%(議決権の総数に対する割合は24.83%)の希薄化率となることから、株式市場での需給バランスに変動が発生し、株価へ影響を及ぼす可能性があります。

しかしながら、当社といたしましては、本資金調達により、既存事業の成長や事業拡大を実現することが、経営の安定及び当社の企業価値の向上につながることになり、中長期的な観点から見れば、既存株主の株式価値向上につながるものであることから、株式価値の希薄化の規模は合理的であると判断しております。

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、株主への利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しておりますが、当社は現在、成長過程にあると考えており、事業の効率化と事業拡大のための投資等に内部留保資金を充当し、なお一層の業容拡大を目指すことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。

そのため、今後の事業展開及び財務基盤強化のために必要な内部留保の確保を優先し、当面は無配を予定しておりますが、今後の経営成績及び財政状態を勘案しながら、利益配当についても検討してまいります。なお、配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定であります。

なお当社は、「取締役会の決議により、毎年6月30日を基準日として中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。剰余金の配当を行う場合、配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

内部留保資金の使途につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、中長期的な事業拡大のための成長投資やM&A等の戦略的投資、財務体質強化のための財源として、有効に活用していく方針であります。