リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内在しているため、将来において発生する可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)モバイルアプリ市場について
当社が事業を展開している国内モバイルアプリ市場の売上高は、2016年の126億ドルから2022年には284億ドルまでに成長しており(出典:総務省「令和5年版 情報通信白書」)、当社は今後も引き続き同市場を基盤とした事業を展開する計画であります。しかしながら、今後、経済情勢や景気動向により同市場の拡大が鈍化、縮小するような場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)競合他社の動向について
当社事業は、プログラミング不要でネイティブアプリを簡単に開発、運用できるクラウド型のアプリ運営プラットフォームを提供しております。現時点において当社事業と同様にノーコードでアプリを開発、運用できるプラットフォームを大企業向けに提供している競合他社は存在しないと考えております。しかしながら、競争環境激化により当社と同様のシステムを大企業向けに提供する競合他社が参入し、当社の優位性が失われるような場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)技術革新について
当社が事業を展開している国内モバイルアプリ市場は、技術革新が早く、当社の優位性を維持するためには、技術革新に即座に対応する必要があります。当社では、各種イベントやセミナーへの参加や社内の定期的な勉強会等を通じて、モバイルアプリ市場の技術革新の動向を把握するとともに、それに対応した新サービスの提供ができるよう努めております。しかしながら、当社が技術革新に対応できないような場合、または、当社が対応できないような技術革新が生じた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)モバイルアプリに代わるツールの普及について
当社サービスを利用する顧客の多くはモバイルアプリをユーザーへのマーケティング、もしくは情報共有のツールとして使用しております。しかしながら、将来的にモバイルアプリに代わるツールが出現、普及した場合に、当社のサービス利用が減少し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)単一セグメントであることについて
当社事業はアプリ運営プラットフォーム事業の単一セグメントであることから、市場の変化の影響を受けやすい性質があります。当社は、市場の変化に対して臨機応変に対応する方針でありますが、市場全体が縮小を続ける等、当社の対応に限度があるような場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)先行投資に伴う財務的影響について
当社が運営するアプリ運営プラットフォーム事業においては、システムの機能性・利便性の向上及び市場シェアの獲得が重要と考えておりますが、システム開発人員に係る人件費やマーケティング活動費用としての広告宣伝費などの先行投資は2022年度に一巡いたしました。
当社では、2023年12月期以降、先行投資型から売上高と利益の成長を両立するバランス型の成長戦略にシフトしております。費用対効果を見ながら先行投資を実施しつつ、その他の費用に関しては意味のある改善を実施し、収益性の向上に努める方針であります。今後も引き続き営業利益の黒字化を継続して維持するため、投資額の増加を抑制します。2024年12月期については、広告宣伝費は8億円程度、人件費は20億円程度を予定しております。費用対効果に係る測定方法として、具体的には、LTV/CAC(*1)の水準を4~6倍を目標として、先行的な投資をコントロールすることを目指しております。しかしながら、経営環境の急激な変化等のリスクの顕在化等により、これらの先行投資が想定通りの成果に繋がらなかった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(*1)LTV/CACとは、顧客1契約あたりの生涯に生み出す収益(Life Time Value)を、1契約の顧客獲得コスト(Customer Acquisition Cost)で割り戻した数値を言います。当社では((新規獲得の顧客単価×粗利率÷月次解約率)+初期制作収入単価×粗利率)/((セールス人件費+マーケティング人件費+広告宣伝費+デモアプリ制作費)/新規顧客数)により算出しており、デモアプリ制作費とは、顧客に納品する初期的なアプリ制作に係る当社従業員の人件費を指します。
(7)知的財産権について
当社が保有する知的財産権が違法に侵害されることによって、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、当社の提供するサービスが第三者の知的財産権を侵害しないように留意しており、現在まで第三者の知的財産権を侵害したとして損害賠償や使用差止めの請求を受けたことはありません。しかしながら、当社が認識せずに第三者の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できず、その第三者より当社に対する損害賠償請求訴訟等が起こされることにより賠償金の支払い等が発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)個人情報の管理について
当社が提供するYappliでは、顧客企業から委託を受けてお預かりした個人情報を取り扱います。お預かりした個人情報については、外部漏えいや不正利用等の防止のため、情報セキュリティ基本方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理・保護しております。
また、当社は個人情報保護のために、プライバシーマークを取得しており、個人情報の保護に積極的に取り組んでおります。しかしながら、悪意あるハッキングやコンピューターウィルス等により、当社が保有する個人情報が漏えい、盗用等される可能性を完全に排除することは困難であります。当社が保有する個人情報が漏えい、盗用等されることとなった場合、当社の社会的信用が失われるとともに、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9)システムや通信インフラ環境について
当社事業は通信ネットワークやサーバー等のネットワーク機器の作動環境に依存しております。当社が構築しているコンピュータ・システムは、適切なセキュリティや保護手段を講じておりますが、自然災害や不正アクセス等によって通信ネットワークの切断やネットワーク機器の障害が発生した場合、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)Apple Inc.及びGoogle LLCの動向について
当社サービスにおいて主に提供されるモバイルアプリは、Apple Inc.及びGoogle LLCのプラットフォーム運営事業者の仕様に従い、アプリ提供の申請、承認を受けることが重要な前提条件であります。これらのプラットフォーム運営事業者の動向や著しい仕様変更によっては、当社の事業展開や事業運営に影響を与え、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11)内部管理体制の強化について
当社は、現在の事業規模に応じた内部管理体制を整備・運用しており、今後は事業規模の拡大に合わせ、内部管理体制も強化させていく方針であります。しかしながら、事業規模の拡大及び人員の増加に合わせ、適時に内部管理体制の強化ができなかった場合、適切な事業運営が行えず、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12)人材の獲得及び育成について
当社が今後成長を続けるためには、各方面で優秀な人材を配置することが必要不可欠であります。そのため、既存の人材の育成はもちろんのこと、優秀な人材の獲得にも努めております。しかしながら、人材の育成・獲得が円滑に進まない場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13)法令について
当社は、電気通信事業法等、企業活動に関わる各種法令の規制を受けております。現在のところ、当社事業に対する各種法規制の強化等が行われるという認識はありませんが、今後国内において新たにプライバシー関連法規の制定やインターネット関連事業者を規制する新たな法律等による法的規制の整備・強化がなされた場合、当社の業務が一部制約を受け、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14)訴訟について
当社では、コンプライアンスの徹底と社会的信用の向上を図ることを目的にコンプライアンス規程を整備し従業員へ周知することで、法令違反などの発生リスクの低減に努めており、本書提出日現在において訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、事業を展開する中で、当社が提供するサービスの不備や取引先、第三者との間での予期せぬトラブルの発生等により何かしらの問題が生じた場合には、これらに起因した損害賠償の請求、訴訟の提起がなされる可能性があります。その場合、当該訴訟に対する防御の為に費用と時間を要する可能性がある他、当社の社会的信用が毀損され、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(15)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、役員及び従業員に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しており、事業年度末現在における付与数は4,952個であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は、5.08%となります。これらの新株予約権が行使された場合、当社株式が発行され、既存株主が保有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
(16)配当政策について
当社は、株主に対する利益還元については経営の重要課題の一つと位置付けておりますが、当社は現時点において配当を実施しておりません。今後におきましては、経営成績、財政状態、事業計画の達成状況等を勘案しながら、株主への利益配当を検討していく方針であります。しかしながら、当社の事業が計画通り推移しない場合など、配当を実施できない可能性があります。
(17)資金使途について
当社のSaaS型アプリ運営プラットフォーム事業においては、上場後の現在においても、システムの機能性・利便性の向上及び市場シェアの獲得が重要と考えております。そのため、上場時に調達した資金の使途につきましては、システム開発や事業拡大に伴う人件費及びマーケティング費用へ積極的に投資していきたいと考えております。
しかしながら、インターネット関連市場は変化が激しく、その変化に柔軟に対応するため、上記計画以外の使途に使用する可能性があります。また、上記計画通りに資金を使用したとしても当初想定していた事業規模の拡大が進まない可能性があります。なお、将来にわたっては、資金調達の使途の前提となっている事業計画・方向性が見直される可能性があります。
(18)為替変動によるリスク
当社は国内で事業を展開しているため、為替の影響は比較的少なく抑えられていると見ておりますが、当社の既存顧客及びターゲット顧客層の中には、円安の影響により事業の運営が厳しくなっている企業が含まれるため、解約また新規顧客獲得に悪影響が出る可能性がございます。また、当社の費用についてですが、社内で使用している一部のツールは為替の影響を受ける為、為替相場が円安になった場合、当社の費用が増加する可能性がございます。
配当政策
3【配当政策】
当社は、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先し、創業以来配当を実施しておりません。しかしながら、株主に対する利益還元については経営の重要課題の一つと位置付けておりますので、将来的には、経営成績、財政状態、事業計画の達成状況等を勘案しながら、株主への利益配当を検討していく方針でありますが、配当の実施の可能性及びその実現時期等については、本書提出日現在において未定であります。なお、内部留保資金については、長期的かつ安定した成長発展のための事業展開・設備投資・研究開発等に活用していく予定であります。
また、剰余金の配当を行う場合、年1回の期末配当を基本としております。当社は会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当等を行うことができる旨を定款に定めている他、中間配当を取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。