2025年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

ライフサイエンス事業 電子材料および機能性化学品事業
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
ライフサイエンス事業 36,288 52.2 5,289 28.7 14.6
電子材料および機能性化学品事業 33,214 47.8 13,171 71.3 39.7

事業内容

3【事業の内容】

当社グループ(当社および連結子会社6社)は、「ライフサイエンス事業」および「電子材料および機能性化学品事業」の2分野に関係する事業を行っています。当社グループにおける各事業の位置付けは次のとおりです。なお、次の2部門は「第5  経理の状況  1.連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  注記事項」に掲げるセグメントの区分と同じです。

(ライフサイエンス事業)

当セグメントにおいては、(a)果実酸類、有機酸類、(b)応用開発商品の製造・販売を行っています。

(a)果実酸類、有機酸類

リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸等の果実酸類および無水マレイン酸等の有機酸を中心に製品構成しています。果実酸類は飲料、加工食品に使用する酸味料、pH調整剤、酸化防止剤等の食品分野での用途を中心に、洗剤、化粧品、表面処理剤、コンクリート用混和剤、電子機器等の工業分野での用途に至るまで幅広く使用されています。

(b)応用開発商品

果実酸等の当社グループ製品を原料として、食品分野、工業分野に幅広く用途開発する商品であり、① 麺食品の品質改良剤、② 加工食品の日持ち向上剤、③食品製造メーカーにおけるトータル・サニテーション、④ 金属加工の改善等に用いられています。

[主な関係会社]

当社(本社、東京本社、新大阪事業所、鹿島事業所、東京研究所、大阪工場)、株式会社扶桑コーポレーション、青島扶桑精製加工有限公司、青島扶桑貿易有限公司、扶桑化学(青島)有限公司、FUSO (THAILAND) CO.,LTD.、PMP Fermentation Products, Inc.

(電子材料および機能性化学品事業)

当セグメントにおいては、(a)電子材料、(b)機能性化学品の製造・販売を行っています。

(a)電子材料

研磨剤原料用途として利用されている超高純度コロイダルシリカを中心に製品構成しています。この製品は、半導体業界を中心に需要があり、微細化、高集積化される次世代半導体集積回路の製造に必要なCMP(化学的機械的平坦化)スラリーにも対応しています。

(b)機能性化学品

プラスチック、塗料の添加剤および香料、化粧品の原料としての用途に使用される樹脂添加剤や、精密化学薬品製造の技術を活かしたファインケミカルを販売しています。

[主な関係会社]

当社(東京本社、京都事業所、鹿島事業所、神戸研究所、東京研究所)、青島扶桑精製加工有限公司、扶桑化学(青島)有限公司

(事業系統図)

以上述べた事項を事業系統図によって示すと、次のとおりです。

※2024年6月1日付で株式会社扶桑コーポレーションの事業を扶桑化学工業株式会社へ移管しています。

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

①  財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、地政学リスクと政策転換が不確実性を増大させる中、地域ごとに成長に差があるものの、全体として底堅さを維持しました。米国では政策金利の引下げもあり景気は堅調でしたが、新政権の関税政策が消費や投資に下押し圧力をかけました。中国では景気刺激策が実施されたものの、供給過剰や不動産市場の停滞が景気回復の妨げとなりました。日本経済においては、賃金上昇による個人消費の拡大や訪日外国人旅行者数の増加を背景に緩やかな回復を維持しましたが、物価上昇や製造業の弱含みが課題となりました。

このような情勢の下、当社グループは成長を継続するため、中期経営計画で掲げた各種施策を着実に実行しました。具体的には、新規顧客の開拓・既存顧客との関係強化・価格改定、原料資材の安定確保などの営業・購買活動を強化しました。また、2024年4月に発足した生産本部を中心に、生産活動の強化・安定化に取り組みました。同時に、将来の生産能力拡大に向けた準備も進めており、鹿島事業所Ⅰ期工事は本稼働を開始したほか、京都事業所でも新規製造設備が稼働を開始しており、鹿島事業所のⅡ期工事も順調に進行中です。さらに、グループ内従業員の交流強化によるシナジー創出や鹿島事業所における事務所棟の新設による就業環境の改善、新製品の開発、研究開発体制の強化など、新たな施策も着実に推進しています。

 

a. 財政状態

(資産の部)

当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末に比べ1,081百万円減少し、67,052百万円となりました。これは主に、商品及び製品は増加しましたが、大型設備投資の完成に伴う未収消費税の還付により、その他の流動資産が減少したためです。

固定資産は、前連結会計年度末に比べ8,843百万円増加し、74,449百万円となりました。これは主に、京都事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備増設工事の完成に伴い建物及び構築物、機械装置及び運搬具、無形固定資産が増加したほか、鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備Ⅱ期建設工事の進捗により建設仮勘定が計上されたため、建設仮勘定の減少が限定的になったためです。

以上の結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ7,761百万円増加し、141,502百万円となりました。

(負債の部)

当連結会計年度末の流動負債は、前連結会計年度末に比べ2,032百万円増加し、18,489百万円となりました。これは主に、京都事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備建設工事代金の支払に伴い設備関係未払金は減少しましたが、長期借入金の内、1年以内返済予定の金額を固定負債から流動負債へ振替したことによるものです。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ3,294百万円減少し、18,963百万円となりました。これは主に、前述の長期借入金の流動負債への振替によるものです。

以上の結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ1,262百万円減少し、37,453百万円となりました。

(純資産の部)

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ9,023百万円増加し、104,048百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上によるものです。

b. 経営成績

当連結会計年度の売上高は69,501百万円(前連結会計年度比17.9%増、10,531百万円増)となりました。営業利益は16,230百万円(同46.4%増、5,146百万円増)、経常利益は16,561百万円(同39.4%増、4,678百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11,622百万円(同39.3%増、3,279百万円増)となりました。

売上高、営業利益は、後述の各セグメントの要因により増収増益となりました。経常利益は、為替差益が減少しましたが、営業利益の増加により、増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に移転補償金が発生したため特別利益が減少し、固定資産除却損により特別損失が増加しましたが、経常利益の増加により、増益となりました。

当社グループの報告セグメントの業績は、次のとおりです。

(ライフサイエンス事業)

ライフサイエンス事業の業績は、外部顧客に対する売上高が36,287百万円(前連結会計年度比6.3%増、2,144百万円増)、営業利益は5,289百万円(同6.2%減、347百万円減)となりました。

国内市場では、食品用途の需要は引き続き堅調であり、工業用途や医薬品・日用品用途での需要が回復しました。海外市場では、欧州・東南アジア向けのリンゴ酸や米国での有機酸で需要を取り込んで増加したほか、中国を始めとするアジア地域でも堅調に推移しました。円安による在外子会社の売上高増加の効果も加わり、売上高は前連結会計年度を上回りました。営業利益は、シェアアップのための価格是正に加えて、円安による輸入価格やエネルギー価格の上昇等のコストアップ要因や、定期修繕を例年より長期間実施したことによる生産量の減少の影響もあり、前連結会計年度を下回り、増収減益となりました。

 

(電子材料および機能性化学品事業)

電子材料および機能性化学品事業全体の業績は、外部顧客に対する売上高が33,213百万円(前連結会計年度比33.8%増、8,386百万円増)、営業利益は13,171百万円(同74.8%増、5,637百万円増)となりました。

半導体市場は、在庫調整が一巡し、用途による濃淡はあるものの、AI用途を中心に需要は回復しました。半導体市場の回復により主力製品である超高純度コロイダルシリカの販売数量が増加したことに加え、コストアップ要因に対する販売価格改定や円安効果により、売上高は前連結会計年度を上回りました。営業利益は、鹿島事業所の新規製造設備の本稼働に伴う減価償却費や立ち上げに係る費用の増加によるコストアップの影響がありましたが、売上増加による影響が大きく、前連結会計年度を上回り増収増益となりました。

 

②  キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益および減価償却費の発生により取得した資金を有形固定資産の取得、法人税等の支払、配当金の支払等に充てた結果、前連結会計年度末に比べ246百万円減少し、29,237百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果取得した資金は、22,701百万円(前連結会計年度は7,061百万円の取得)となりました。これは主に、法人税等の支払に対して、税金等調整前当期純利益による収入および減価償却費の発生による収入があったためです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、20,538百万円(前連結会計年度は18,576百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が発生したためです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、2,409百万円(前連結会計年度は17,663百万円の取得)となりました。これは主に、配当金の支払によるものです。

③  生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

前年同期比

ライフサイエンス

25,977,739千円

0.6%

電子材料および機能性化学品

34,945,695

21.6

合計

60,923,434

11.7

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

 

b.受注実績

当社グループは、見込み生産を行っているため、受注高および受注残高を把握していません。

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

前年同期比

ライフサイエンス

36,287,718千円

6.3%

電子材料および機能性化学品

33,213,808

33.8

合計

69,501,527

17.9

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.最近2連結会計年度の主要な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

FUJIFILM Electronic Materials Taiwan Co.,Ltd.

8,994,254

12.9

3.前連結会計年度のFUJIFILM Electronic Materials Taiwan Co.,Ltd.に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

①   重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。

当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額および収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断および仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断および仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っています。しかしながら、これらの見積り、判断および仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。

なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計方針等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。

 

②  連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は以下のとおりです。

a. 経営成績等の状況

 

経営成績の分析

(ライフサイエンス事業)

 主要製商品群、新規製商品群ごとにテーマを定め、取り組みを進めました。

1.重点製品

1-1.リンゴ酸類

 国内においては、輸入品の動向を注視し適正価格での販売維持、液体品の拡販に努めました。その結果、食品向けは堅調に推移し、工業用途(メッキ・洗浄剤等)で販売数量が25%増加しました。また、2025年2月からは価格改定を実施しました。海外においては、アジア市場でのシェア維持、需要回復による数量増、戦略的価格対応による欧米での物量奪回、新規販売国での販売網の強化および営業展開に取り組みました。その結果、販売価格は円換算後で10%、ドル建てでは15%低下しましたが、海外市場でのシェアを回復し、ドイツ、スペイン、アメリカ、マレーシア、タイで販売が拡大しました。

 

1-2.クエン酸類

 国内においては、市況価格の動向に迅速に対応してシェアの拡大に努めるとともに、価格改定により失った顧客への営業を強化して、大手飲料、大口洗剤メーカー向け販売数量回復を目指しました。その結果、販売価格は10%低下しましたが、販売数量は7%増加し、シェアを回復しました。大手飲料向けでは入札不調もあり厳しい状況は継続しましたが、大口洗剤メーカー向けでは販売数量が20%増加し、シェアが回復しました。

 クエン酸の調達手段を増加させるため、タイのクエン酸メーカーとの関係を強化し、重点的に販売を強化しました。その結果、新規採用が増加しました。また、主に半導体洗浄用途で使用される高純度クエン酸の内製化、販売強化を進めました。製造設備は鹿島事業所内に2024年10月に完成し、早期事業化のための対応を行っています。

 

1-3.グルコン酸類

 国内においては、工業用途でのシェア拡大、価格スプレッドの確保に努めました。その結果、価格是正により販売価格は20%上昇しましたが、大型公共工事の減少により販売数量は10%減少して、売上高は減少しました。売上原価は仕入価格の上昇に加え、円安の影響もあり30%コストアップとなり、利益率は低下しました。

 海外においては、米国子会社PMP Fermentation Products, Inc.の拡大した生産能力を活かすため、柔軟に価格対応を行い販売数量の回復を目指しました。その結果、利益は横ばいでしたが、販売数量は35%、シェアは10%それぞれ増加し、大幅に回復しました。

1-4.フマル酸・マレイン酸・ビタミンC類

(フマル酸・マレイン酸)

 大手顧客のシェア維持に努めるとともに、需要が縮小傾向にある製紙、塗料、住設業界での大口顧客をターゲットにして販売数量の増加を目指しました。その結果、製紙、塗料、住設業界の需要は低調に推移しましたが、入浴剤等の大口顧客でのシェアは確保しました。価格面では原料価格に連動した販売価格上昇に加え、スプレッドの改善を実施し、利益率の改善に努めました。

 

(ビタミンC類)

 医薬品用途向けに増産および外注による供給体制の強化に取り組み、メインユーザー向けには着実に需要を取り込み、販売増を目指しました。また、医薬品用途の水平展開を図るとともに、飲料用途等の一般用途の提案を促進しました。その結果、供給体制は、当社で増産を推進するとともに、OEMで補完する体制を構築し、販売面では需要が増加する医薬品用途や飲料向けで販売数量が大幅に増加しました。

2.次世代製品

2-1.FFAビジネス※

 コート果実酸、米飯向け製剤、酸化防止製剤、褐変防止製剤等の新製品販売拡大、粉末酢酸、易溶化フマル酸、グルテンフリー食品向け製剤等の新製品の上市、ストレスフリー製剤ビジネスの拡大を目指しました。また、大阪工場のFFA設備をフル活用して、利益の最大化を目指しました。その結果、新製品群は後述の通り、新製品の上市、新規採用が増加しました。大阪工場のFFA設備も稼働率が向上しています。

 

※食品添加物製剤(Formulation of Food Additives)、食品素材・食品添加物製剤(Formulation of Food Materials and Food Additives)、機能性食品素材・食品添加物(Functional Food Material and Food Additive)、機能性果実酸(Functional Fruits Acid)の商品群をFFAと総称しています。

 

2-2.コート果実酸・応用製剤

 FFA製品へ分類されるコート果実酸や日持ち向上剤、酸化・褐変防止剤、マスキング剤、ストレスフリー製剤等の応用製剤の開発拡販に注力しました。コート果実酸は、目標への進捗は低い状況ではありますが、製品ラインナップを拡充し、採用も徐々に増加しています。日持ち向上剤のランチフレッシュRも目標に達していませんが、国内で採用が進み、海外でも販売が増加しています。酸化・褐変防止剤では、変色防止剤のキプカロンFR-T、酸化防止剤のオキシナジーは着実に採用が増加しています。ストレスフリー製剤も採用が進み、用途も芝、イネ以外への用途拡大を図っています。

 

 ライフサイエンス事業の経営成績は、外部顧客に対する売上高は、前連結会計年度に比べ2,144百万円増加し36,287百万円となりました。営業利益は、前連結会計年度に比べ347百万円減少し、5,289百万円となりました。

 売上高は、クエン酸類の国内販売価格の低下や製紙、塗料用途向け製品の需要が低調で推移しましたが、リンゴ酸の海外市場のシェア回復による増加、医薬品用途のビタミンCの増加、国内工業用途の需要一部回復、米国子会社PMP Fermentation Products, Inc.の米国グルコン酸市場のシェア回復、円安の効果による輸出、海外子会社の円換算増加も合わせて、前連結会計年度比で増加しました。

 営業利益は、シェア回復による販売数量増加、高収益のビタミンC類の販売増加によるプラス効果はあるものの、円安による仕入価格の高騰、シェア回復のための価格是正、鹿島事業所の定期修繕を例年より長期間実施したことによる生産量の減少の影響もあり、前連結会計年度比で減少し、増収減益となりました。

 引き続き、既存製商品では特に海外市場での販売力の強化、拡大を図り、シェアの維持、拡大に努めるとともに、新商品の開発、拡販を進め、業績の拡大を目指します。

 

(電子材料および機能性化学品事業)

 「1-1.販売 成長を続ける半導体市場への対応」「1-2.生産・技術増産/安定生産/設備技術/品質」、「1-3.製品開発」「2.機能材料セグメント」、「3.外部環境変化への対応」の各テーマに取り組みました。

1-1.販売 成長を続ける半導体市場への対応

 半導体市場は、2023年に一時的な調整局面を迎えたことにより遅れが生じたものの、長期的には成長が継続し、毎年10%程度の成長が見込まれています。需要の拡大に応えることができる販売体制、生産能力、技術開発体制の拡充に取り組みました。各顧客に対して長期の需要予測を確認し、顧客・製品別の製造ライン戦略を確定するとともに、コスト上昇要因毎に丁寧な価格改定を実施しました。

 

1-2.生産・技術増産/安定生産/設備技術/品質

 生産能力の拡充として、2023年度に完成した鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備の顧客認定を進め、2024年度末からはフル稼働を開始しました。2024年度に完成した京都事業所の超高純度コロイダルシリカ新設備は、早期の顧客認定を目指し、顧客、製品別に戦略を作成し対応を行っています。2025年度に完成予定の鹿島事業所の超高純度コロイダルシリカ製造設備の工事も計画通り順調に進捗しています。

 安定生産への対応としては、計画的に設備修繕を進めるとともに、市場動向に合わせた生産計画を立案し実行しました。その結果、修繕計画を予定通り行うことで安定生産に寄与し、需要増に対応して、当初計画より10%の増産を達成しました。また、鹿島事業所、京都事業所の新設備においても安定稼働への対応の準備を進めました。

 品質対応としては、粗大粒子数低減プロセスの確立等、最先端半導体製造プロセスの品質要求への対応に取り組み、粗大粒子数低減グレードを開発し、顧客評価へ進みました。

 設備技術対応としては、設備の省エネルギー化、環境対応、省力化、自動化を検討し、構想を立案し、実施に向けた精査を進めました。

 

1-3.製品開発

 生産効率が高く、顧客ニーズを満たす高付加価値の製品群として高濃度コロイダルシリカの開発を進めました。その結果、高濃度・高生産性品目の製品ラインナップを拡充させ従来比1.5倍の効率化を達成しました。複数グレードで顧客への提案を開始し、評価が進展しています。

 最先端CMP向けコロイダルシリカの開発においては、継続的に取り組みを進めました。Beyond2nm世代の技術課題克服に向け顧客と綿密に連携し、顧客要望を踏まえた製品開発を実施し、次世代向け要求事項に対応した製品のサンプルワークを開始しました。

 SiC等の新素材向け砥粒に対応した新コンセプト粒子の開発においては、コンセプト設計段階から製品開発段階へと進展し、砥粒の性能検証を実施しています。

 

2.機能材料セグメント

 シリカ機能性材料の用途、素材毎に開発を進めました。

 トナー外添剤用途の製品であるナノパウダーは、新規顧客の開拓を行い、新たな顧客で採用に向けた評価が継続しています。低誘電材用途の製品では、中空サブミクロンシリカの開発を行い、採用に向けた顧客評価が継続し、量産化に向けた設備投資の検討を行っています。その他にも化粧品、医療、バイオ等の新規用途開発にも取り組み、化粧品用途では顧客の評価が開始されました。

 中長期的な市場開拓テーマとしては、多孔質シリカ・シリカナノシート・コアシェルシリカ等の新技術の市場探索を展示会等を通じて実施しています。

 

3.外部環境変化への対応

 半導体市場が回復する中、日本経済は、円安、労働市場の逼迫によりインフレが継続しています。このような環境下で、各部門で課題に取り組みました。

 物流・購買の課題としては、半導体市場の回復による出荷量、生産量が増加し、それに対応した生産能力増強に伴い調達量が大幅に増加し、購買価格、エネルギー価格はインフレに伴い高値が継続しています。また、米中対立等によるサプライチェーンリスクも懸念されます。主要原料である金属ケイ素は、調達リスク低減を目指し、調達ルートの分散の検討、品質の確認等に取り組みました。その他の原料、資材においてもサプライヤーとの連携により安定調達に努めるとともに、使用量の削減、複数購買を進めサプライチェーンリスクの低減に努めました。増加する販売数量への対応としては、出荷拠点を拡充し、出荷能力の増強を図りました。

 BCP対応としては、京都事業所、鹿島事業所の新設備が立ち上がり、2拠点、3工場の供給体制が確立、増強されました。鹿島事業所の新設備の顧客認定も進み、量産ステージへ移行しています。前述の購買対応等を含めBCPの体制強化を進めています。

 2030年を見据えた中長期の需要予測に基づき、次期投資計画の検討を行い、さらなる成長を目指します。

 

 電子材料および機能性化学品事業の経営成績は、外部顧客に対する売上高は前連結会計年度に比べ8,386百万円増加し、33,213百万円となりました。営業利益は前連結会計年度に比べ5,637百万円増加し、13,171百万円となりました。

 半導体市場は、PC・スマートフォン向け等の需要は低調に推移しましたが、AI半導体向けの需要が好調で超高純度コロイダルシリカの販売数量は大幅に増加しました。円安の効果やコストアップに伴う価格改定の効果も合わせて、売上高は前連結会計年度比で増加しました。

 営業利益は、鹿島事業所、京都事業所の新設備稼働に伴う減価償却費の増加、製造ライン増加に伴う固定費の増加、資材価格の上昇等のコストアップ要因はありましたが、円安を含む売上高の増加の効果に加え、新規設備を含む製造稼働率上昇による増産効果、生産効率化によるコストダウン効果により、前連結会計年度比で増加し、増収増益となりました。

 半導体の需要は、中長期的に成長が続くことが予測されています。最先端半導体への技術対応、需要の増加に対応した製販体制を構築する必要があります。引き続き、最先端分野へ対応した製品開発、供給能力の強化等、課題への対応を継続し、業績の拡大を目指します。

 

(売上高)

前述のとおり、前連結会計年度に比べライフサイエンス事業、電子材料および機能性化学品事業ともに増加したため、10,531百万円増加し、69,501百万円となりました。

 

(営業利益)

前述のとおり、前連結会計年度に比べライフサイエンス事業では減少しましたが、電子材料および機能性化学品事業の増加が大きく、5,146百万円増加し、16,230百万円となりました。

 

(経常利益)

当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度に比べ475百万円減少し、477百万円となりました。これは主に、受取利息は増加しましたが、為替差益が前連結会計年度に比べ595百万円減少したためです。営業外費用は、前連結会計年度に比べ7百万円減少し、145百万円となりました。これは主に、長期借入金にかかる支払利息が増加しましたが、投資事業組合運用損が減少したためです。

経常利益は、上記要因はあったものの、営業利益の増加により、前連結会計年度に比べ4,678百万円増加し、16,561百万円となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の特別利益は、前連結会計年度に比べ95百万円減少し、97百万円となりました。これは主に、固定資産売却益が増加しましたが、前連結会計年度に計上された移転補償金の収入の影響がなくなったためです。特別損失は、前連結会計年度に比べ322百万円増加し、391百万円となりました。これは主に、固定資産除却損が増加したためです。法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額は、税金等調整前当期純利益の増加により法人税等合計で前連結会計年度に比べ981百万円増加し、4,644百万円となりました。

特別損益は減少しましたが、経常利益の増加により、税金等調整前当期純利益は増加しました。法人税等は増加しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べて3,279百万円増加し、11,622百万円となりました。

 

財政状態の分析

財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」に記載のとおりです。

キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

b. 資本の財源および資金の流動性についての分析

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、棚卸資産の購入費用、製造経費、販売費及び一般管理費等の営業費用です。運転資金の財源は、自己資金および金融機関からの短期借入等を基本としています。当連結会計年度は、新たな短期借入は行っておらず、当連結会計年度末に短期借入金の残高はありません。

投資を目的とした資金需要のうち主なものは、設備投資、事業買収等によるものです。投資資金の財源は主に、自己資金および金融機関からの長期借入等によります。当連結会計年度において新たな長期借入は行っていません。当連結会計年度末の長期借入金の残高は、2025年度完成予定の鹿島事業所超高純度コロイダルシリカ製造設備の投資資金200億円に対し、2023年度に銀行より長期借入で調達した200億円です。当連結会計年度に実施した設備投資に係る資金の財源は、前述の長期借入金と自己資金を充当しています。

 

c. 経営成績に重要な影響を与える要因

「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

d. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当連結会計年度における当社の最重要指標である「償却前営業利益」(営業利益に減価償却実施額を加えた金額)は、前連結会計年度に比べ6,295百万円増加し、24,539百万円となりました。減価償却費は、前連結会計年度に比べライフサイエンス事業で減少しましたが、電子材料および機能性化学品事業で増加し、全体で増加しました。これは電子材料および機能性化学品事業の鹿島事業所、京都事業所の新規製造設備の本稼働によるものです。営業利益は、前述のとおりライフサイエンス事業で減少しましたが、電子材料および機能性化学品事業で減価償却費の増加額以上に増加したため、全体で償却前営業利益が前連結会計年度比で増加しました。

総資産回転率は0.51回で、前連結会計年度に比べ向上しました。設備投資に伴う固定資産の増加により総資産が増加したものの、売上高の増加が上回ったためです。

ROE(自己資本利益率)は11.7%で、前連結会計年度に比べて向上しました(前連結会計年度は9.1%)。分母である純資産は利益の計上により増加しましたが、分子である親会社株主に帰属する当期純利益が増加したためです。今後も新規製造設備の本稼働に伴い、減価償却費の増加によるコストアップが想定されていますが、収益性の向上により、継続的にROE(自己資本利益率)の10%以上の達成を目指します。

自己資本比率は73.5%で前連結会計年度より向上し、引き続き水準以上の安全性は確保できています。利益の増加により純資産が増加し、自己資本比率は向上しました。今後も、増加が見込まれる需要に対応するため、継続的な設備投資や研究開発投資が成長の源泉であり、投資を継続するためにも、一定水準以上の純資産の厚みが必要であると考えています。今後も、最適な資本のバランスの維持を意識しつつ、資本コストを意識した最適な資金調達の検討を行います。投資計画、還元政策を考慮し、効率性、収益性のより一層の向上を目指します。

セグメント情報

(セグメント情報等)

【セグメント情報】

1.報告セグメントの概要

当社の報告セグメントは、当社の構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が経営資源の配分の決定および業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものです。

当社は、製商品・サービス別に事業部を置き、それぞれの事業部で、取扱い製商品・サービスについて国内および海外の包括的な戦略を立案し、事業活動を展開しています。

したがって、当社は、事業部を基礎とした製商品・サービス別のセグメントから構成されており、「ライフサイエンス事業」および「電子材料および機能性化学品事業」の2つを報告セグメントとしています。

「ライフサイエンス事業」は、リンゴ酸、クエン酸、その他果実酸、食添製剤、グルコン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の製造・販売を行っています。「電子材料および機能性化学品事業」は、超高純度コロイダルシリカ等の製造・販売および樹脂添加剤、ファインケミカル等の販売を行っています。

2.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額の算定方法

報告されている事業セグメントの会計処理の方法は、連結財務諸表と同一です。

報告セグメントの利益は、営業利益ベースの数値です。

セグメント間の内部収益および振替高は市場実勢価格に基づいています。

3.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報

 前連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)

 

 

 

 

(単位:千円)

 

報告セグメント

調整額

(注)1

連結財務諸表

計上額

(注)2

 

ライフサイエンス事業

電子材料および機能性化学品事業

売上高

 

 

 

 

 

外部顧客への売上高

34,142,983

24,827,289

58,970,273

58,970,273

セグメント間の内部売上高又は振替高

34,142,983

24,827,289

58,970,273

58,970,273

セグメント利益

5,637,071

7,533,188

13,170,260

△2,086,311

11,083,948

セグメント資産

38,713,183

63,186,364

101,899,548

31,840,634

133,740,183

その他の項目

 

 

 

 

 

減価償却費 (注)3

1,615,633

5,336,626

6,952,260

207,903

7,160,164

有形固定資産及び無形固定資産の増加額   (注)4

2,433,317

11,575,196

14,008,514

290,896

14,299,410

(注)1.  ・セグメント利益の調整額は、提出会社の総務部門・経理部門等、一般管理部門に係る費用△2,086,311千円です。

・セグメント資産の調整額は、提出会社における余資運用資金(現金及び預金等)、長期投資資金(投資有価証券等)および管理部門に係る資産31,840,634千円です。

・減価償却費の調整額は、提出会社の総務部門・経理部門等、一般管理部門に係る減価償却費207,903千円です。

・有形固定資産及び無形固定資産の増加額の調整額は、提出会社の総務部門・経理部門等、一般管理部門が取得した有形固定資産及び無形固定資産290,896千円です。

2.セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益と調整を行っています。

3.減価償却費には、長期前払費用に係る償却額が含まれています。

4.有形固定資産及び無形固定資産の増加額には、長期前払費用の増加額が含まれています。

 

 当連結会計年度(自  2024年4月1日  至  2025年3月31日)

 

 

 

 

(単位:千円)

 

報告セグメント

調整額

(注)1

連結財務諸表

計上額

(注)2

 

ライフサイエンス事業

電子材料および機能性化学品事業

売上高

 

 

 

 

 

外部顧客への売上高

36,287,718

33,213,808

69,501,527

69,501,527

セグメント間の内部売上高又は振替高

36,287,718

33,213,808

69,501,527

69,501,527

セグメント利益

5,289,489

13,171,128

18,460,617

△2,230,108

16,230,508

セグメント資産

38,548,447

72,607,780

111,156,228

30,345,843

141,502,071

その他の項目

 

 

 

 

 

減価償却費 (注)3

1,569,928

6,521,788

8,091,716

217,601

8,309,318

有形固定資産及び無形固定資産の増加額   (注)4

1,371,341

14,567,022

15,938,363

1,557,257

17,495,621

(注)1.  ・セグメント利益の調整額は、提出会社の総務部門・経理部門等、一般管理部門に係る費用△2,230,108千円です。

・セグメント資産の調整額は、提出会社における余資運用資金(現金及び預金等)、長期投資資金(投資有価証券等)および管理部門に係る資産30,345,843千円です。

・減価償却費の調整額は、提出会社の総務部門・経理部門等、一般管理部門に係る減価償却費217,601千円です。

・有形固定資産及び無形固定資産の増加額の調整額は、提出会社の総務部門・経理部門等、一般管理部門が取得した有形固定資産及び無形固定資産1,557,257千円です。

2.セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益と調整を行っています。

3.減価償却費には、長期前払費用に係る償却額が含まれています。

4.有形固定資産及び無形固定資産の増加額には、長期前払費用の増加額が含まれています。

【関連情報】

前連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)

1.製品及びサービスごとの情報

セグメント情報に同様の情報を開示しているため、記載を省略しています。

2.地域ごとの情報

(1)売上高

(単位:千円)

日本

ヨーロッパ

北米

アジア

その他

合計

 

 

 

内、米国

 

内、台湾

 

 

31,272,454

546,833

9,991,506

9,556,449

17,038,051

7,734,464

121,427

58,970,273

 

(2)有形固定資産

(単位:千円)

日本

北米

アジア

合計

55,311,878

2,815,812

898,937

59,026,627

 

 

3.主要な顧客ごとの情報

該当事項はありません。

 

当連結会計年度(自  2024年4月1日  至  2025年3月31日)

1.製品及びサービスごとの情報

セグメント情報に同様の情報を開示しているため、記載を省略しています。

2.地域ごとの情報

(1)売上高

(単位:千円)

日本

ヨーロッパ

北米

アジア

その他

合計

 

 

 

内、米国

 

内、台湾

 

 

34,310,877

730,110

10,809,271

10,345,296

23,544,057

11,948,340

107,210

69,501,527

 

(2)有形固定資産

(単位:千円)

日本

北米

アジア

合計

63,230,355

2,862,201

890,027

66,982,585

 

3.主要な顧客ごとの情報

(単位:千円)

顧客の名称または氏名

売上高

関連するセグメント名

FUJIFILM Electronic Materials Taiwan Co., Ltd.

8,994,254

電子材料および機能性化学品事業

 

【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】

該当事項はありません。

 

【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】

該当事項はありません。

 

【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】

該当事項はありません。