2025年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 7,442 100.0 1,421 100.0 19.1

事業内容

3【事業の内容】

当社グループ(当社及び当社の子会社及び関連会社)は、当連結会計年度末現在、当社と連結子会社2社及び持分法適用関連会社1社で構成されており、「デジタルトラスト事業」を主たる業務としております。

デジタルトラストとは、さまざまなモノがインターネットに繋がりあらゆるプロセスがデジタル化される社会において、「ヒト」「モノ」「コト」の正当性・完全性・真正性などを証明しデジタル社会の信頼を支えるサービスです。

2024年10月より、DX進展に伴い顧客のトータルニーズへの提案力を強化し、さらなる事業成長を目指すため従来の「Linux/OSS」と「IoT」を統合し「プラットフォーム」にサービス区分を変更しております。

また、2025年4月より、事業セグメントの名称を「トラストサービス事業」から、より広範なデジタル社会での信頼の基盤を意味する「デジタルトラスト事業」に変更しております。この変更はセグメント名称の変更であり、セグメント情報に与える影響はありません。

トラストサービスという名称は、近年、PKI(公開鍵基盤)を用いたサービスを指す用語として認識されるようになってきているため、「プラットフォームサービス」を含む当社グループの事業全体を表現する名称(事業セグメントの名称)に見直しました。これに伴い、2025年4月より、従来の「認証・セキュリティ」から「トラスト」にサービス区分の名称を変更しております。
 「3事業の内容」においては、変更後の事業セグメント、サービス区分の名称を用いております。

 

「デジタルトラスト事業」を構成する主要なサービスの内容は、下記のとおりであります。

セグメント

サービス区分

主なサービスの内容

報告

セグメント

デジタルトラスト事業

トラスト
(旧 認証・

セキュリティ)

公開鍵基盤(PKI)技術(*1)によって以下を実現

●EV SSL/TLS証明書(*2)(*3)により、Webサイトの運営組織が実在することを証明

●デバイス証明書管理サービスにより、信頼できるデバイスであることを証明

●本人確認サービス、電子署名(*4)用証明書、リモート署名サービスにより、本人が実在し同一であることや電子文書が改ざんされていないこと、署名が真正に成立していることを証明

プラットフォーム

(旧 Linux/OSS

及び旧 IoT)

(*5)(*6)(*8)

ベンダーフリーでオープンスタンダードな技術と長期サポートにより以下を実現

●LinuxOSに代表されるオープンソースを活用したエンタープライズ向けサービスでは、OS(*7)からシステム監視、システムバックアップ等の製品を提供し、ITインフラが正しく動作することを支援

組込みLinuxと電子認証の技術を融合し以下を実現

●IoT機器の脆弱性の低減や脅威への対策、更新ソフトウエアを安全に配信できる仕組みなど、IoT機器のライフサイクルを通して、安心・安全に利用できる仕組みを提供

●組込み向けのOSS技術についても、システムが安定して正しく動作することを支援

それぞれのサービスには3つの取引形態があります。

・ライセンス

主に自社の製品(Linux/OSS製品など)を提供

・プロフェッショナルサービス

製品のカスタマイズや導入支援、セキュリティコンサルティングなどを提供

・リカーリングサービス(契約が更新されることで継続した収益が見込まれるもの)

電子認証サービスや自社製品のサポートサービスなどを提供

 

<デジタルトラスト事業の特長>

(1) トラストサービス(旧 認証・セキュリティサービス)

①パブリック証明書サービス

当社グループは、電子認証局(*9)を国内に持つ電子認証事業者として、SSL/TLS証明書「SureServer」を提供しております。当社グループが提供する「SureServer」は、SSL/TLS証明書として3種の認証レベルが存在するうち、EV証明書とOV証明書を提供しております。EV証明書は、審査レベルが最も高く、ドメインの所有組織確認と対象組織の実在性審査を実施するEV証明書で、ブラウザ上で安全なWebサイトであることを視覚的に確認可能にします。

 

②デバイス証明書管理サービス

当社グループが提供しているデバイス証明書管理サービス「サイバートラスト デバイスID」は、デバイス証明書を使い、あらかじめシステム担当者が許可したPCやスマートフォンなどのデバイスだけを社内ネットワークにアクセスできるようにするサービスです。

昨今のワークスタイル変革に伴って、スマートデバイスやクラウドを利用するテレワークが一般化し、いつでもどこからでも情報資産にアクセスでき業務を遂行できる環境が必須の要件になっています。同時に、リモートアクセス環境の安全を担保して業務データの情報流出を防ぎ不正アクセスから守るためのセキュリティ対策は、企業のシステム担当者にとっての重要な課題になっています。当社グループでは、「ユーザー認証」に「デバイス認証」を加えることで、強固な多要素認証環境を作り上げ、また、システム担当者が遠隔から管理、運用できるサービスにより、管理の負担や人的コストの削減を可能にします。

 

③電子認証サービス

当社グループは、電子取引の信頼性を高めるための電子署名、eシール(*10)、タイムスタンプ(*11)などを含む包括的な電子認証サービスを提供しております。

当社グループは、世の中の大きな流れであるデジタルトランスフォーメーションの中でもビジネスプロセスのデジタル化において特に重要となる本人確認のデジタル完結、契約の電子化を含む電子文書の真正性確保を実現するための「iTrust」を提供します。

「iTrust」は、犯収法(*12)などで求められる本人確認をデジタル完結する「iTrust本人確認サービス」、電子契約(*13)などでの電子署名で用いる「iTrust電子署名用証明書」、契約や書面の電子化で求められる真正性を保証する「iTrustリモート署名サービス」から構成されております。

サービス

内容

iTrust本人確認サービス

主務大臣認定を取得し、犯収法に対応したオンラインでの本人確認や現況確認を実現するクラウドサービスです。

iTrust電子署名用証明書

WebTrust監査に合格した書面の電子化や電子契約のための信頼性の高い電子署名用証明書です。

iTrustリモート署名サービス

書面の電子化や電子契約で求められる長期にわたる真正性を保証する長期署名に対応したクラウドサービスです。日本情報経済社会推進協会の審査に合格し、JIPDECトラステッド・サービスに登録されております。

 

(2) プラットフォームサービス(旧 Linux/OSSサービス)

①サーバー向けOS

当社グループは、Linux OS「MIRACLE LINUX」を、企業向けLinuxサーバー用途に加え、産業用コンピューター(*14)、各種アプライアンス製品(*15)など特定業務用機器への組込み用途で提供しております。Linux OS「MIRACLE LINUX」というソフトウエアの提供に加え、国内のエンジニアによる10年にわたる長期サポートも提供しており、基幹サーバーに求められる安定運用や、特定業務用機器への組込みに必須となる柔軟なカスタマイズまで対応しております。

またCentOSというLinux OSはRHEL(*16)の代表的なクローンで、Linuxの普及とともにRHELクローンとしての安定した実績から日本国内でも多数の企業が利用しておりますが、2024年6月のコミュニティサポート終了により利用者は他のOSに移行するか、当社など事業者が提供する延長サポートを当面利用しないと安全な運用ができない状況になっております。

当社は、米国Cloud Linux Software, Inc.(旧CloudLinux社)と提携しCentOS7の延長サポートやCentOSからの次期移行先OS候補として有力視される国際標準OSのAlmaLinuxのサポートサービス等を提供しております。

また当社はAlmaLinuxについてCentOSからの移行先OSとしての展開に加えて、国際安全基準・法規制のもとミッションクリティカルな環境での長期間の運用が求められる重要インフラ分野向けに高品質長期サポート、セキュリティ対応、無停止でのOS更新機能などを国内ワンストップで提供する高付加価値有償サービスとしてハードウェア、仮想化環境のベンダーと連携し展開を進めております。

なお、各OSSの分野ではコミュニティ(*17)と呼ばれる、世界中に散在している利用者、開発者、企業などからなる組織によって、メンバー間でソースコードを共有し、共同開発や関連情報の発信、勉強会開催などを非営利目的で運営しております。当社グループが主に参加しているLinuxなどのOSSは、大手企業が積極的にコミュニティ活動に参加し、相互に協力しております。また、OSSはソースコードが広く公開されているため、いかなる企業・団体や個人も当社グループと類似の開発を行うことが可能である点がOSSの特徴であります。当社グループは、企業としてカーネル(*18)レベルの技術に精通したエンジニアによりOSSをパッケージ化してライセンス提供すること、迅速なサポートサービスを提供すること、さらに、製品導入時に導入支援及びカスタマイズなどが必要なお客様とは密にコミュニケーションをとりながらコンサルティングサービスを提供すること、これらが当社グループの優位性につながっております。

 

②エッジ(IoT・組込み機器)向けOS

IoTなどの組込み機器向けのLinux OS「EMLinux」を提供しております。かつて組込みOSの主流であったリアルタイムOS(RTOS)(*19)と比較して組込みLinuxの不利な点とされていた、リアルタイム性、起動の高速化、省リソース(*20)などの課題をLinuxのチューニングによって解決し、また、IoT・組込み機器の開発において今や必ず対策しなければならないデバイスレベルからのセキュリティソリューションも備えています。

IoT機器の耐用年数は15年に及ぶものもあり、PCなどに比べて長期のサポートが必要となりますが、個々のメーカーが長期サポートを提供するには莫大なコストがかかるため、関連する企業が協力して、OSSコミュニティが中心となり、CIP(Civil Infrastructure Platform)(*21)などで長期サポートの実現に取り組み、ユーザーが安心安全に利用できるよう支援しております。

当社グループは、カーネルレベルの技術に精通した技術力を持つエンジニアを擁し、CIPなどのコミュニティと共同歩調をとることで、IoT・組込み機器には必須の長期サポートを実現します。組込みLinux OS「EMLinux」によって、お客様が組込みアプリケーションの開発に注力し、開発期間を短縮し開発コストを削減すると共にIoT機器の出荷後も長期にわたって安心・安全に使い続けることを可能にします。

③セキュアIoTプラットフォーム

当社グループは、公開鍵基盤(PKI)と多角的な認証によるIoT機器や利用者の真正性の確保と、暗号化による機密性の保持、電子署名による改ざん防止・安全性確保等の機能を備え、OSやソフトウエアをセキュアに更新する仕組みを一括して提供するシステム基盤を提供しております。「セキュアIoTプラットフォーム」は、半導体設計時から廃棄処分工程まで、ライフサイクルを通じてIoT機器のセキュリティ状態を一気通貫で管理できます。

 

 

「セキュアIoTプラットフォーム」の特長は、以下のとおりであります。

特長

内容

製品ライフサイクルのあらゆる段階でトラストチェーンを担保

 

 IoT機器を特定する識別情報が埋め込まれたセキュアエレメントと、国際基準の電子認証局から発行される電子証明書を組み合わせることで多段階の認証を行い、製造時から廃棄まで製品の一貫してトラストチェーンを維持しデータの改ざんやなりすましを防ぎます。

 信頼の基点(Root of Trust)(*22)となるセキュアエレメントは、SIOTPと連携した ICチップベンダーが製造する耐タンパー性に優れたハードウェアセキュアエレメントを利用でき、物理的な攻撃を受けてもトラストチェーンを破られることなく運用が可能です。

リモートアップデート(OTA)など IoT機器の運用に必要なサービスを提供

 

①認証情報の保護・管理

 機器の本物性を担保する認証情報(トラストアンカー)をICチップの製造時から書き込み、電子証明書を用いた個体識別を行うことで、クラウドサービスとの安全なアクセスを担保します。

②IoT機器の一元管理

 IoT管理サービス「Device Management Console」でWeb UIの管理画面から、IoT機器の状態(接続状況・FWバージョン等)を一元管理できます。システムへの機器の登録や更新・停止・再登録が設定可能です。

③ソフトウェアアップデート

長期間運用するIoT機器では、出荷後に脆弱性が顕在化します。アップデートは、脆弱性を狙う攻撃に対処するのに必要な手段です。セキュアIoTプラットフォームのリモートアップデート機能(OTA)は、IoT機器の製造から出荷後まで不正なマルウェアの混入を防ぎ、安全なアップデートを提供します。

④LINEOWarp!!

当社グループ会社のリネオソリューションズ社によりIoT機器向けの高速起動製品を提供しております。組込み機器では自動車やスマート家電製品などバッテリーを使用している製品や、業務用コピー機など省エネの観点で待機電力の極小化を求められる製品が多く、電源投入時、あるいは待機状態からシステムが正常起動するまでの起動時間の短縮が課題になっています。「LINEOWarp!!」により、LinuxやAndroid OSで構成されているシステムを最短、1秒から数秒の高速での起動を実現します。コンシューマ機器や車載機器、産業機器などすでに、100種を超える製品での採用実績があります。

 

(*1)公開鍵基盤(PKI)技術

Public Key Infrastructureの略で、公開鍵と秘密鍵の2つの鍵を使用したデータ暗号化技術、及び電子証明書と組み合せて、認証や電子署名を行う技術の総称。

(*2)SSL/TLS証明書

Webサーバーを運営する組織の実在性を証明するもので、フィッシング詐欺等の対策となる証明書。また、通信の暗号化により盗聴や改ざんを防ぐ効果もあり、インターネットの利用者が安心してWebを利用できるようになる。“SSLサーバー証明書”や“サーバー証明書”とも呼ばれる。

(*3)EV証明書

EVとはExtended Validationの略称で、最も信頼性の高いSSL/TLS証明書。厳格な審査により、組織の実在性が確認される。

(*4)電子署名

電磁的に記録された情報について、作成者の意思に基づいて作成されたこと、その内容が改ざんされていないことを証明する仕組み。書面へのサインや押印に相当する電子的措置。

(*5)Linux

無償でソースコードが公開され、誰もが利用・複製・改変・再配できるオペレーティングシステム。必要な機能を選択して再構築できることから、サーバーや組込みシステムとして電化製品などの幅広い用途に利用されている。

(*6)OSS(オープンソースソフトウエア)

ソフトウエアの設計図にあたるソースコードが無償で公開されており、誰でも使用及び改良や再配布ができるソフトウエア。

(*7)OS

オペレーティングシステムの略称。コンピューターのシステム全体を管理し、種々のアプリケーションソフトに共通する利用環境を提供する基本的なプログラム。

(*8)IoT

Internet of Thingsの頭文字で、「モノのインターネット」とも呼ばれる。日常で利用されているさまざまな機器(モノ)がネットワーク上で相互接続し、それらの機器に搭載された内蔵センサーからデータを収集し、そのデータがさまざまなサービスに活用されること。

(*9)電子認証局

規程に基づいて電子証明書の発行や失効などを行う第三者機関。登録局(審査を実施)と発行局(発行や失効などを実施)により構成される。

(*10)eシール

電子データや文書の起源とその完全性を証明する仕組み。eシールは、法人が発行した文書を認証できる他、ソフトウエアコードなどの法人のデジタル資産の認証にも利用できる。

 

(*11)タイムスタンプ

ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する仕組み。

(*12)犯収法

犯罪収益移転防止法(正式名称:「犯罪による収益の移転防止に関する法律」)。犯罪によって得られた不当な収益を洗浄する行為を防止するための法律。金融機関などの取引時に顧客が本人と一致しているかを確認する方法などを定めている。

(*13)電子契約

従来、紙で行っていた契約書の締結や管理をインターネット上で行うシステム。電子署名やタイムスタンプを付与した電子ファイルを利用して合意成立の証拠とする。

(*14)産業用コンピューター

産業業務用途に特化した性能を持つPC製品。設備の制御装置や製造現場、さまざまな産業機器への組込みなどの長時間の安定稼働を前提としたシビアな用途向けに設計されている。一般向けのパソコンと異なる特長として「耐環境性」「長期安定供給」などが求められる。

(*15)アプライアンス製品

特定の機能や用途に特化して最適化して設計・開発された専用機器。サーバー機器本体に、特定の目的に必要なソフトウエアをあらかじめインストールして、容易に導入や管理ができるよう工夫した製品。

(*16)RHEL

Red Hat Enterprise Linuxの略称、レッドハット社によって開発、販売されている業務向けのLinuxディストリビューションのこと。

(*17)コミュニティ

オープンソースソフトウエア(OSS)の開発や改善、情報交換などを主な目的として、利用者、開発者、愛好者らによって構成され非営利目的で運営される団体。世界中に散在するメンバー間でソースコードを共有し、共同開発や関連情報の発信、勉強会の開催などを行っている。

(*18)カーネル

階層型に設計されているOSの核となる部分のプログラム。ソフトウエアとハードウエアがやり取りするための基本的な機能を処理し、コンピューターを動作させるための基幹となるサービスを提供する。

(*19)リアルタイムOS(RTOS)

一般的な汎用OSと違い、リアルタイム性を重視した、組込みシステムで多く用いられるOS。

(*20)省リソース

組込みシステムにおいて、プロセッサーの処理能力やメモリ容量などの計算リソースに対して、処理能力の低いプロセッサーを使うことや使用するメモリ量を少なくすることなどが求められること。

(*21)CIP(Civil Infrastructure Platform)

社会インフラシステム向けに、プラットフォームとしてLinuxやオープンソースの実装を進めていくことを目指すプロジェクト。The Linux Foundationが運営する。

(*22)RoT(Root of Trust : 信頼の基点)

ハードウエアやソフトウエアに関するセキュリティにおいて、信頼性を実現する根幹となる部分。

 

 

[事業系統図]

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①財政状態の状況

                       (単位:百万円)

 

2024年3月期

2025年3月期

総資産

8,417

9,577

純資産

6,032

6,578

自己資本比率

71.6%

68.7%

 

(資産)

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末より1,160百万円増加して9,577百万円となりました。

 流動資産は、前連結会計年度末より914百万円増加して7,096百万円となりました。これは主として売上の入金などにより現金及び預金が669百万円増加したことによります。

 固定資産は、前連結会計年度末より245百万円増加して2,481百万円となりました。これは主として「日本サイバーセキュリティファンド1号投資事業有限責任組合」への出資などにより投資有価証券が110百万円、ソフトウエアが331百万円増加し、ソフトウエア仮勘定が256百万円減少したことによります。

 

(負債)

 当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末より614百万円増加して2,999百万円となりました。

 流動負債は、前連結会計年度末より574百万円増加して2,415百万円となりました。これは主として契約負債が229百万円、賞与引当金が80百万円、未払法人税等が74百万円増加したことによります。

 固定負債は、前連結会計年度末より39百万円増加して583百万円となりました。これは主として本社移転に伴い資産除去債務とリース債務が流動負債となり減少し、原状回復義務として計上している資産除去債務の一部について、新たな情報の入手に伴い増加したことによります。これにより資産除去債務が95百万円増加し、リース債務が65百万円減少しております。

 

(純資産)

 当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末より545百万円増加して6,578百万円となりました。

 これは主として親会社株主に帰属する当期純利益の969百万円の計上及び配当金の支払いによる減少141百万円により、利益剰余金が827百万円増加したことによります。さらに、新株予約権の権利行使に伴う新株発行により、資本金および資本剰余金がそれぞれ15百万円増加したほか、自己株式の取得により、自己株式が311百万円増加したことによります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の71.6%から68.7%となりました。

 

②経営成績の状況

 

 

売上高

(百万円)

営業利益

及び営業利益率

(百万円、%)

経常利益

(百万円)

親会社株主に帰属する

当期純利益

(百万円)

1株当たり

当期純利益金額

(円)

2025年3月期

7,442

1,421 (19.1)

1,448

969

119.26

2024年3月期

6,466

1,112 (17.2)

1,121

518

64.26

増減率(%)

15.1

27.8

29.2

86.9

85.6

 

 当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)におけるわが国経済は、一部に足踏みが残るものの、雇用・所得環境の改善や、各種政策の効果もあり、国内経済は緩やかに回復しております。しかしながら、米国の政策動向や国内物価上昇を背景とした経済・物価動向に対する懸念から先行き不透明な状況が継続しております。

 一方で、当社を取り巻く経営環境は、デジタル技術の進歩、電子化に伴う法制度の改正などDX推進の流れが加速しております。また、各国でセキュリティの国際安全基準の整備や、経済安全保障の動きが進んでおり、国内の重要インフラやグローバルに事業を展開する製造業などを中心に経済安全保障に関わる基準・法規制対応の必要性も顕在化しております。

 

 このような環境の中、認証・セキュリティサービスにおいては、DX市場の拡大によるセキュリティニーズを捉え、(1)電子認証サービス「iTrust」では金融機関向けeKYCサービスや電子契約サービスを展開する各パートナー、(2)デバイス証明書管理サービス「デバイスID」では企業向けのクラウド認証サービスを展開する各パートナーとの取引増加により伸長しました。

 プラットフォームサービスにおいては、2024年6月コミュニティサポート終了に伴うCentOS7延長サポートならびに提携先のCloud Linux Software, Inc.(旧CloudLinux社)の商材が大きく伸長しました。EMLinuxにおいては、法規制、業界でのサイバーセキュリティガイドライン対応で脆弱性管理、長期サポートが求められている機器での採用が拡大しました。また、リネオソリューションズ㈱の受託開発案件獲得が堅調に推移し伸長しました。

 以上の結果、売上高は7,442百万円(前期比15.1%増)、人員増加に伴う人件費の増加等により費用全体は増加傾向にありますが、売上高が堅調に推移したことによる結果、営業利益1,421百万円(同27.8%増)、持分法による投資利益等の営業外収益、投資事業組合運用損等による営業外費用により経常利益1,448百万円(同29.2%増)、本社移転費用及び税効果会計の影響により親会社株主に帰属する当期純利益969百万円(同86.9%増)となりました。

 なお、当社グループはトラストサービス事業の単一セグメントのため、セグメント情報の記載を省略しております。

 

 

<主なサービス内容>

・認証・セキュリティサービス

 SSL/TLSサーバー証明書「SureServer」、「デバイスID」等のクライアント証明書、「iTrust」、ウェブセキュリティサービス及び脆弱性診断サービス

・プラットフォームサービス

「MIRACLE LINUX」、CentOS、「AlmaLinux」などLinuxOS、「MIRACLE Vul Hammer」、「MIRACLE ZBX」及び「EMLinux」のサポートサービス等、連結子会社のリネオソリューションズ㈱は、組込み/IoT向け受託開発及び「LINEOWarp!!」

 

<取引形態>

・ライセンス

 主に自社の製品(Linux/OSS製品など)を提供

・プロフェッショナルサービス

 製品のカスタマイズや導入支援、セキュリティコンサルティングなどを提供

・リカーリングサービス(契約が更新されることで継続した収益が見込まれるもの)

 電子認証サービスや自社製品のサポートサービスなどを提供

 

    なお、各サービスにおける取引形態別の売上高は下表のとおりであります。        (単位:百万円)

サービス

取引形態

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率

(%)

認証・セキュリティ

サービス

ライセンス

158

125

△33

△21.1

プロフェッショナルサービス

598

686

88

14.7

リカーリングサービス

3,186

3,328

141

4.4

小計

3,943

4,139

196

5.0

プラットフォーム

サービス

ライセンス

405

514

109

27.0

プロフェッショナルサービス

1,075

1,188

113

10.6

リカーリングサービス

1,042

1,598

556

53.3

小計

2,523

3,302

779

30.9

売上合計

6,466

7,442

975

15.1

全社

ライセンス

564

640

75

13.5

プロフェッショナルサービス

1,673

1,875

201

12.1

リカーリングサービス

4,229

4,926

697

16.5

 

 

なお、当社グループは、単一セグメントであるトラストサービス事業の主要なサービスとして、認証・セキュリティサービス、Linux/OSSサービス、IoTサービスの3つをサービス区分としておりましたが、DX進展に伴い顧客のトータルニーズへの提案力を強化し、さらなる事業成長を目指すため2024年10月よりサービス区分を見直し、Linux/OSSサービスとIoTサービスを「プラットフォームサービス」に統合しました。なお、認証・セキュリティサービスに変更はございません。

2025年3月期を連続的に同一視点で事業に関するご理解を頂くため変更前のサービス区分を前提とした当連結会計年度の説明を以下に併記いたします。

 

<主なサービス内容>

・認証・セキュリティサービス

SSL/TLSサーバー証明書「SureServer」、デバイス証明書管理サービス「デバイスID」等のクライアント証明書、電子的本人確認や電子署名などの電子認証サービス「iTrust」、ウェブセキュリティサービス、脆弱性診断サービスなどを提供しております。

・Linux/OSSサービス

「MIRACLE LINUX」、CentOS、「AlmaLinux」など企業向けLinuxOSのサポートサービスや統合システム監視ソリューション「MIRACLE ZBX」、バックアップソフトやカーネル技術を活かしたLinuxソリューションなど、オープンソースソフトウエアに関わるサービスを提供しております。

・IoTサービス

組込みLinuxと電子認証の技術を融合し、機器の開発、製造段階から脆弱性の低減や脅威への対策を考慮して長期の運用とセキュリティを実装する仕組みや、更新ソフトウエアが安全に配信される仕組みなど、IoTデバイスの安全・安心な利用を実現するための開発支援サービスとして、長期利用可能なIoT・組込み用LinuxOS「EMLinux」、認証基盤「Secure IoT Platform」などを提供しております。連結子会社のリネオソリューションズ㈱はLinuxを中心とした組込み/IoT向け受託開発、及び高速起動製品「LINEOWarp!!」、開発環境サービスなどの販売を行っております。

 

   なお、各サービスにおける取引形態別の売上高は下表のとおりであります。              (単位:百万円)

サービス

取引形態

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率

(%)

認証・セキュリティ

サービス

ライセンス

158

125

△33

△21.1

プロフェッショナルサービス

598

686

88

14.7

リカーリングサービス

3,186

3,328

141

4.4

小計

3,943

4,139

196

5.0

Linux/OSSサービス

ライセンス

294

466

172

58.6

プロフェッショナルサービス

157

109

△48

△31.0

リカーリングサービス

942

1,383

440

46.8

小計

1,394

1,959

564

40.5

IoTサービス

ライセンス

111

47

△63

△56.9

プロフェッショナルサービス

917

1,079

162

17.7

リカーリングサービス

100

215

115

115.1

小計

1,128

1,343

214

19.0

売上合計

6,466

7,442

975

15.1

全社

ライセンス

564

640

75

13.5

プロフェッショナルサービス

1,673

1,875

201

12.1

リカーリングサービス

4,229

4,926

697

16.5

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末より690百万円増加して5,560百万円となりました。

 当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります

 

(単位:百万円)

 

2025年3月期

(参考)

2024年3月期

営業活動によるキャッシュ・フロー

1,993

1,221

投資活動によるキャッシュ・フロー

△870

△571

財務活動によるキャッシュ・フロー

△429

△126

現金及び現金同等物の期末残高

5,560

4,870

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、得られた資金は1,993百万円となりました。主として、税金等調整前当期純利益が1,422百万円あったことに加え、減価償却費が571百万円発生し、法人税等の支払額が353百万円生じたことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は870百万円となりました。主として、自社開発ソフトウエアなどの無形固定資産の取得による支出419百万円、有形固定資産の取得による支出260百万円、「日本サイバーセキュリティファンド1号投資事業有限責任組合」への投資有価証券取得による支出100百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、使用した資金は429百万円となりました。主として、自己株式取得による支出311百万円、配当金支払による支出141百万円によるものです。

 

 

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループの生産は、完成後ただちに顧客に引き渡しており、生産実績は販売実績とほぼ一致しているため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

トラストサービス事業

7,701

118.3

1,373

123.0

合計

7,701

118.3

1,373

123.0

(注)当社グループはトラストサービス事業の単一セグメントのため、セグメント情報の記載を省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

トラストサービス事業(百万円)

7,442

115.1

合計(百万円)

7,442

115.1

(注)1.当社グループはトラストサービス事業の単一セグメントのため、セグメント情報の記載を省略しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がいないため記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グルプの経営成績等の状況に関する認識及び分析検討内容は以下のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の分析

前述の「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態の状況」に記載のとおりであります。

b.経営成績の分析

前述の「(1)経営成績等の状況の概要②経営成績の状況」に記載のとおりであります。

c.キャッシュ・フローの分析

前述の「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

③資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの主な資金需要となる、運転資金及び設備投資資金につきましては、金利コスト等を勘案しながら、自己資金又は増資により資金調達することを基本としております。

なお、当社は短期的な支払いに支障が生じないよう流動比率を150%以上に保つことを目標としており、当連結会計年度末において流動比率が293.8%とその水準を上回っていることから資金の流動性に問題はないと認識しております。

 

④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、「売上高」、「営業利益及び営業利益率」、EBITDA、リカーリング売上及びリカーリング売上比率を重要指標としております。

当連結会計年度における売上高は前期比で15.1%増加し7,442百万円となりました。

営業利益については前期比で27.8%増加し1,421百万円となっております。また営業利益率については19.1%となっており、前連結会計年度より1.9ポイント増加しております。この原因としては、リカーリング売上が伸長したためとなります。なお、リカーリング売上については前期比で16.5%増加し4,926百万円、リカーリング売上比率については前期比で0.8ポイント増加しております。

EBITDAについては、営業利益の増加に加え、リカーリングサービスの継続的成長に必要な設備投資により償却費が増加したため、前期比で16.1%増加し1,993百万円となっております。

 

⑤経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

⑥経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。

 

セグメント情報

(セグメント情報等)

【セグメント情報】

当社グループは、トラストサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。

 

 

【関連情報】

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

1.製品及びサービスごとの情報

連結財務諸表「注記事項(収益認識関係)1.顧客との契約から生じる収益を分解した情報」に記載しているため、注記を省略しております。

 

 

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

本邦の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

(2)有形固定資産

本邦に所在している有形固定資産の金額が連結貸借対照表の有形固定資産の金額の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

3.主要な顧客ごとの情報

外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める特定の外部顧客がないため、記載を省略しております。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

1.製品及びサービスごとの情報

連結財務諸表「注記事項(収益認識関係)1.顧客との契約から生じる収益を分解した情報」に記載しているため、注記を省略しております。

 

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

本邦の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

(2)有形固定資産

本邦に所在している有形固定資産の金額が連結貸借対照表の有形固定資産の金額の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

 

3.主要な顧客ごとの情報

外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める特定の外部顧客がないため、記載を省略しております。

 

【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

当社グループは、トラストサービス事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

該当事項はありません。

 

【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

当社グループは、トラストサービス事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

当社グループは、トラストサービス事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。

 

【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】

該当事項はありません。