2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    6,252名(単体) 19,765名(連結)
  • 平均年齢
    46.0歳(単体)
  • 平均勤続年数
    20.3年(単体)
  • 平均年収
    11,142,879円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

医薬品事業

19,765

合計

19,765

 (注)従業員数は就業人員数であり、当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含めております。

 

(2) 提出会社の状況

 

 

 

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

6,252

46.0

20.3

11,142,879

 

セグメントの名称

従業員数(人)

医薬品事業

6,252

合計

6,252

 (注)1.従業員数は就業人員数であり、当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含めております。

2.平均年間給与は、基準外賃金及び賞与を含めております。

 

(3) 労働組合の状況

 当社グループには第一三共労働組合等が組織されており、2025年3月31日現在の労働組合の組合員数合計は8,076名であります。

 労使関係について特に記載すべき事項はありません。

 

(4) 管理職に占める女性従業員の割合、男性従業員の育児休業取得率及び従業員の男女の賃金の差異

① 提出会社の状況

当連結会計年度

管理職に占める

女性従業員の割合(%)

(注)1

男性従業員の

育児休業取得率(%)

(注)2

従業員の男女の賃金の差異(%)

(注)3、4

全従業員

うち正規雇用従業員

うち非正規雇用

従業員

14.3

96.3

79.7

78.4

84.6

 (注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき算出しております。なお、管理職とは、管轄組織の責任者として業績や人材の管理を行うマネジメント職を指しております。また、出向者は出向先の従業員として集計しております。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出しております。また、出向者は出向先の従業員として集計しております。

3.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき算出しております。男性の平均賃金(基本給・賞与・諸手当含む)に対する女性の平均賃金の割合を示し、出向者は出向元の従業員として集計しております。

4.男女平均年間賃金の差異は、人事制度上の問題ではなく従業員の年齢構成や世帯状況などによる背景が影響しております。具体的には、次のとおりであります。

・男女の年齢構成の違い:高年齢層ほど男性従業員比率が高く、その結果上位等級に占める男性比率が高くなる傾向にあること。

・男女の諸手当受給状況の違い:女性従業員の各種諸手当(住宅手当・こども手当など)の受給割合が概ね低い(世帯主・家族扶養などの条件に適合しない)こと。

今後の人事諸施策において、更なる是正に向け取り組んで参ります。

 

② 連結子会社の状況

当連結会計年度

名称

管理職に占める女性従業員の

割合(%)

(注)1

男性従業員の

育児休業

取得率(%)

(注)2

従業員の男女の賃金の差異(%)

(注)3、4

全従業員

うち正規雇用

従業員

うち非正規雇用従業員

第一三共ヘルスケア㈱

10.6

62.5

71.5

73.1

86.8

第一三共プロファーマ㈱

12.8

100.0

76.4

75.9

81.2

第一三共ケミカルファーマ㈱

5.6

100.0

71.2

69.7

85.7

第一三共バイオテック㈱

19.2

77.8

79.7

79.3

80.6

第一三共ビジネスアソシエ㈱

8.0

100.0

78.6

75.7

84.2

 (注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき算出しております。なお、管理職とは、管轄組織の責任者として業績や人材の管理を行うマネジメント職を指しております。また、出向者は出向先の従業員として集計しております。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出しております。また、出向者は出向先の従業員として集計しております。

3.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき算出しております。男性の平均賃金(基本給・賞与・諸手当含む)に対する女性の平均賃金の割合を示し、出向者は出向元の従業員として集計しております。

4.男女平均年間賃金の差異は、人事制度上の問題ではなく従業員の年齢構成や世帯状況などによる背景が影響しております。具体的には、次のとおりであります。

・男女の年齢構成の違い:高年齢層ほど男性従業員比率が高く、その結果上位等級に占める男性比率が高くなる傾向にあること。

・男女の諸手当受給状況の違い:女性従業員の各種諸手当(住宅手当・こども手当など)の受給割合が概ね低い(世帯主・家族扶養などの条件に適合しない)こと。

今後の人事諸施策において、更なる是正に向け取り組んで参ります。

 

③ 連結会社の状況

 海外グループ会社も含めたグローバル全体における管理職に占める女性従業員の割合は37.4%であります。なお、グローバル全体における男性従業員の育児休業取得率及び従業員の男女の賃金の差異については、集計を実施していないため、記載を省略しております。

 

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループ(当社及び連結会社)は、企業行動憲章に基づき、事業と一体となってサステナビリティ課題へ取り組むとともに、持続的な成長に向けた重要課題(マテリアリティ)を特定し、ESG経営を推進しております。当社グループを取り巻く環境変化や社会要請・期待を踏まえ、毎年、マテリアリティの改善を図るとともに、環境・安全衛生やコンプライアンス等の課題に特化した各委員会を通じてグループ全体での取組を推進しております。

 なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

① ガバナンス

 当社グループでは、CEOの指示に基づき、Head of Global Corporate Strategyが、サステナビリティ課題のうち、人権、Environment, Health and Safety(以下 EHS)、サステナビリティ情報開示、社会貢献に関するグローバル推進体制を構築・運営し、各組織・各地域における施策を全社戦略に統合させております。これらの課題に特化した、Head of Global Corporate Strategyを委員長とするサステナビリティコミッティ(原則年2回以上開催)を設置し、経営会議の諮問機関として、全社戦略・方針について審議するとともに、年度・半期毎の計画・実績をモニタリングしております。サステナビリティコミッティにおいて審議・報告された全社戦略・方針、ならびに重要課題(マテリアリティ)は、経営会議において審議・報告されます。

 なお、サステナビリティ課題のうち、当社グループ全体の企業倫理・コンプライアンス推進活動については、グローバル エシックス&コンプライアンス コミッティ(原則年1回以上開催)において審議・報告のうえ、取締役会に報告されます。

 サステナビリティコミッティは、2024年度は1月と3月に開催され、EHSでは2025年度の計画やネットゼロ移行計画の策定状況、サステナビリティ情報開示ではSSBJ(注1)・CSRD(注2)新基準への対応計画、人権では人権アセスメント結果について議論し、その後EHS及びサステナビリティ情報開示について経営会議へ報告いたしました。

 (注)1.サステナビリティ基準委員会(Sustainability Standards Board of Japan)

    2.企業サステナビリティ報告指令(Corporate Sustainability Reporting Directive)

 

② 戦略

 当社グループでは、当社グループの中長期的な企業価値に影響を及ぼす重要度と、当社グループのさまざまなステークホルダーを含む社会からの期待の両面から、中長期的取り組み課題を抽出し、取締役会メンバーによる複数回の議論を経て、2020年3月、持続的な成長に向けて取り組むべきマテリアリティを特定いたしました。そして、第5期中期経営計画と連動したマテリアリティ毎の長期目標、取り組み指標「KPI」を設定し、2021年4月に公表しております。

 

③ リスク管理

 第一三共グループでは、組織の目的・目標の達成を阻害する可能性を有し、かつ事前に想定し得る要因をリスクとして特定し、企業活動に潜在するリスクへの適切な対応(保有、低減、回避、移転)を行うとともに、リスクが顕在化した際の人・社会・企業への損失を最小限に留めるべく、リスクマネジメントを推進しております。このリスクマネジメントには、気候変動、人権、環境、サプライチェーンなどのサステナビリティに関連するリスクも包括的に含まれております。

 

 リスクマネジメントの推進体制は、後記「3 事業等のリスク (1)リスクマネジメント」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

 各マテリアリティの長期目標、実現に向けた課題、KPI指標、2025年度の目標値、2024年度実績はコーポレートウェブサイトに示しております。

《コーポレートウェブサイト 関連ページ》

株主・投資家の皆さま- IRライブラリ- 第一三共株式会社 (daiichisankyo.co.jp)

(2025年7月公表予定)

 毎年、KPI目標への取組の情報開示を通じ、ステークホルダーとの建設的な対話から得られた意見や考察、またESG評価結果等から、新たな課題を抽出し、取締役会・経営会議での議論・承認を経て、マテリアリティの特定・進化・KPI設定を行っております。

《コーポレートウェブサイト 関連ページ》

マテリアリティとSDGsへの貢献 - 第一三共株式会社 (daiichisankyo.co.jp)

 

(2)人的資本への取組

 当社グループは、「人」を最重要な「資産」であると位置づけております。パーパスの実現に向け、最重要資本である人的資本の拡充を推進し、持続的な価値創造の原動力としております。

 

① ガバナンス

 経営と一体となった人材マネジメントを運営・推進するため、CHRO(Chief Human Resource Officer)をトップとするグローバルでの人事組織体制を構築・運用しております。経営会議にCHROが参画し、経営・ビジネス上の進捗や課題を直接的に把握した上で、グローバルでの戦略・施策立案を行っております。また、四半期ごとにGHRLTM(Global Human Resource Leadership Team Meeting)を実施し、戦略・施策の遂行状況をモニタリングしております。

 

② 戦略・施策

 経営戦略と連動した人材戦略の実行に向け、人的資本を「Power of individual:成長し続ける個人の強み」「Power in numbers:強化領域への継続的人材供給」「Power of synergy:人や組織のシナジーを創出する環境・仕組み」の3つの要素から捉え、各要素をモニタリングしながら、施策の効果検証や人的資本配分・拡充のさらなる高度化に取り組んでおります。また、人材戦略の意思決定におけるグローバル共通の上位概念・指針として「ピープルフィロソフィー」を制定しております。

 

(注)S&T:サイエンス&テクノロジー

   DX:デジタルトランスフォーメーション

   I&D:インクルージョン&ダイバーシティー

 

Power of individual × Power in numbers

経営戦略の実現に向け、競争優位の源泉であるサイエンス&テクノロジー(S&T)の強化を軸に、グローバル全体で人材獲得を強化しております(2024年度は主として日本で267名、米国で609名、欧州で329名のキャリア人材獲得)。主な研究機能がある日本では、新卒採用における博士人材獲得にも継続的に取り組んでおります(2022年度18名、2023年度21名、2024年度31名)。また、事業環境の変化に伴うスキルニーズの変化に的確に対応すべく、国内では、バイオ、グローバルビジネス並びにDXを強化領域とし、独自の育成プログラムと組み合わせて当該領域への人員再配置を実行しております。さらに、グローバル共通のラーニングプラットフォームとしてLinkedInラーニングツールを導入し、当社グループのパーパス・ミッションや、グローバルで協働するために必要な行動・スキルに関するコンテンツを展開しております。グローバルでの協業を牽引・推進し、各国間の人材シナジーを創出するべく、海外グループ会社への出向プログラムも充実させており、2024年度末時点で、国内から米国へ140名、欧州へ58名、アジア中南米へ26名の社員が出向しております。海外グループ会社から国内にも21名の社員が出向しており、双方向での人材交流並びにグローバル人材の育成につなげております。

加えて、当社グループの持続的成長に極めて重要となるグローバル経営マネジメント・リーダーシップの育成を目的に、2024年度にDS Academyを創設し、2025年5月までに日本・ドイツ・米国の各拠点にて3回のパイロットセッションを実施いたしました。国内では、2024年度に自律的なキャリア形成を目的に、英語力向上意識醸成プログラム並びに各種DXスキル育成プログラムを企画実行し、それぞれ2,036名並びに1,239名の社員が受講いたしました。並行して、より実践的な英語でのコミュニケーションリテラシー向上を目的に、グローバルスキル研修を企画実行し、340名の社員が受講を完了いたしました。

 

Power of synergy

・One DS Cultureの浸透

当社グループでは、社員一人ひとりがグローバルな視野をもって考え、行動し、より広く患者さんや社会へ貢献するための基盤となる企業文化「One DS Culture」の醸成に取り組んでおります。その実現に向けて、社員の行動の指針・原則として3つのCore Values、社員が実践すべき行動様式として3つのCore Behaviorsを策定しております。毎年度、各組織からカルチャーアンバサダーを任命し、Core Values/Core Behaviorsの実践を通じたCulture浸透を加速しております。この浸透度合いを確認・検証する目的で、グローバル全体でエンゲージメントサーベイ(One DS Voice)を実施し、当社グループの強みや課題を特定のうえ、改善策を実行しております。なお、2024年度におけるエンゲージメントサーベイ回答率は87%、15項目においてスコアの上昇がみられました(総合値は76、対グローバルベンチマーク(製薬企業を含むグローバル企業約1,000社)+2)。また、グローバル全体でOne DS Cultureを醸成し、当社グループのパーパス・ミッションを共に実現するため、COO・CHROが国内外の各拠点を訪問し、社員とのダイレクトなコミュニケーションを行いました(2023年度から2024年まで計21社、約17,500名の社員を対象に実施)。

 

・インクルージョン&ダイバーシティー

当社グループでは、国籍・人種・性別・年齢などの属性面に加え、考え方・価値観・ライフスタイルなども異なる多様な社員が共存し、そのすべての社員が自分らしく、最大限に実力を発揮することが、グローバルでの事業拡大やイノベーション創出に繋がると考えております。Core Behaviorsの1つに「Be Inclusive & Embrace Diversity」を定めるとともに、2022年3月の国際女性デーには「Global I&D Statement」を策定し、社内外に当社のI&Dに対する姿勢や考え方を明示いたしました。

国内においても、「2025年度末までに女性管理職15%以上」という数値目標を設定し、各組織長との対話会や、全社アンケートの実施・分析などを通じた各種施策を実行し、2025年4月に1年前倒しで目標を達成いたしました。これらの活動が評価され、Forbes JAPAN主催の「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2024」を受賞、また経済産業省と東京証券取引所が選定する「令和6年度Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」にも選定されました。

社内の女性活躍推進の活動として、2016年度に、女性マネジメント職によるネットワーキング活動(Shining Women’s Advancement Network; SWAN)を開始し、経営陣がオーナーとなって、経営陣とSWANメンバーとの交流や、女性マネジメント職同士の経験や悩みの共有機会などを作るなど、次世代女性リーダー育成支援にもつなげております。さらに、Healthcare Businesswomen’s Association(HBA)に海外グループ会社とともに加盟し、より広い視野でグローバルでのI&D連携を加速するとともに、グローバル全体で活躍した女性社員を称え、表彰する機会としてもこのHBAを活用しております。

 

LGBTQ+の社員にとっても働きがいのある職場環境の醸成を目的に、国内では支援制度の導入や外部相談窓口の設置などを行っております。また、LGBTQ+当事者のための匿名コミュニティとして「レインボーチャット」を開設し、価値観が近い社員同士が気兼ねなく悩みを相談し合える環境を提供しております。さらに、海外グループ会社では、グローバルリーダーからのビデオメッセージ発信や、各種セミナーの実施などを通じて、すべての社員の帰属意識(Belonging)向上につなげております。これらの活動が評価され、LGBTQ+などのセクシュアルマイノリティに関する取組の評価指標「PRIDE 指標 2024」において、4年連続で最高位の「ゴールド」を受賞いたしました。

 

仕事とライフイベントとの両立支援においては、男女ともに育児参加できる職場環境の整備と風土醸成を目指しており、より高い水準で取組を実施している証として、2019年にプラチナくるみんの認定を取得いたしました。また、男性育休取得率100%を目標に掲げ、上司との面談機会、プレママ・プレパパセミナーや育休復職者フォーラムの開催、事業所内保育所の設置、ベビーシッターサービスの利用補助など、多様な支援を行っております。介護支援においても、介護によって離職することなく、安心して働き続けられる環境づくりを進めております。介護のための休業制度に加え、毎年、介護セミナーならびに個別相談会を開催し、介護に対するリテラシーの向上に努めております。これらの施策は、後述するワークライフバランス推進にも寄与しております。

(ご参考)

・インクルージョン&ダイバーシティーに関する当社ホームページ

 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/inclusion-diversity/
・令和6年度「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」に選定
 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/performance-reports/news/detail/index_7242.html

        

 

・健康経営・ワークライフバランス推進

(i)社員の健康と安全

「健康宣言・安全宣言」を社内外に発信するとともに、必要な投資を積極的に行い、社員の健康・安全の保持・増進に取り組んでおります。

 

<健康宣言・安全宣言>  「当社グループの企業理念及びビジョンの実現に向けて会社と従業員が共に成長を遂げるためには、従業員の心と体の健康・安全が不可欠であり、当社グループは、全ての従業員が安全に就業し、健康を保持・増進するための環境づくりに積極的に取り組むことをここに宣言します。」

 

社員の健康と安全については、経営会議にてグローバル全体での健康・労働安全に関する方針・目標・施策を定めて推進しております。国内グループ会社においては、最高健康経営責任者である社長をトップとした健康経営推進体制にて、会社と労働組合で合意した安全衛生管理の中期方針に基づいた安全衛生施策を推進しております。具体的には、経営課題に対応した施策と期待成果を「健康・労働安全戦略マップ」として策定し、「社員一人ひとりの生産性向上」と「安全で快適な職場形成」の2つを解決すべき経営課題と定めて、国内での重点領域を生活習慣病・がん・メンタルヘルス・運動機能の4領域として、安全衛生施策を推進しております。各施策の効果については、高ストレス者率や喫煙率などの評価指標を設定し、評価に基づきさらなる改善を図っております。これまでの積極的かつ継続的な活動が評価され、経済産業省が実施する「健康経営度調査」において、5年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」の認定を受けております(第一三共単体としては8年連続)。

 

(ご参考)第一三共グループの「健康経営推進体制」、「健康・労働安全戦略マップ」、「評価指数」等については、以下を参照

 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/employee_health/

 

(ご参考)「健康経営優良法人ホワイト500」に認定

 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/performance-reports/news/detail/index_7234.html

           

 

(ⅱ)ワークライフバランスの推進

国内グループでは、仕事と生活の好循環を生み出すための「ワークライフサイクル(WLC)」というコンセプトを提唱しております。このWLCの実現に向け、時間や場所に縛られない柔軟な働き方の推進(多様な労働時間制度・テレワーク制度など)や仕事とライフ(育児・介護・治療など)の両立支援、キャリア形成支援(キャリア支援休職・副業など)に加え、カフェテリアプランによる社員個々人のニーズに応じた両立支援(育児・介護・医療・自己研鑽など)や各種セミナーの実施などに取り組んでおります。また、当社グループのグローバル化の進展に伴い、国・地域を跨いだコミュニケーションや会議の機会が増えていることを踏まえ、グローバルでの働き方に関する課題解決を図る「Global Work Style」プロジェクトを2021年度に開始いたしました。グローバル会議に参加する際の指針となる「Global Meeting Guideline」や国・地域を跨る共通施策「Global Meeting Measures」を、それぞれCEOメッセージとともにグローバル展開しております。組織独自で設定・運用している「No meeting day」や「De-stressor week」の推進支援も行っております。

 

(ご参考)ワークライフバランスに関する当社ホームページ

 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/worklife-cycle/

 

・グローバル共通の人事基盤構築

パーパス実現に向けたグローバル全体での連携強化・シナジー創出を目的に、グローバル共通の人事制度(評価、等級、報酬制度)並びに人事情報システムの構築・導入を進めております。2024年度より日本・米国・欧州にて先行して評価制度を導入いたしました。国内で実施した評価制度に関するサーベイでは、制度に対する肯定的回答比率が81%であり、導入初年度において制度が適切に理解・運用されていることを確認いたしました。2025年度以降も段階的に等級・報酬制度及び人事情報システムをグローバルで導入し人事基盤を整備していきます。また、日本国内において、第一三共グループ共通の報酬ポリシーに基づき、中長期的な企業価値向上に対する動機付けとインセンティブ付与等を主たる目的として、一部幹部社員を対象に自社株式を用いたLTI(長期インセンティブ)制度を導入いたしました。

 

③ リスク管理

 当社グループが事業活動を推進し事業目標を達成する上では、各職務に必要な高度な専門性と高い業務遂行能力を持った人材を採用・育成・確保する必要がありますが、採用市場の競争激化などにより、これらの人材を十分に確保できない場合には、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

その対応策として、事業目標を達成する上で必要となる人材の要件を明確に定義し、計画的な採用活動を強化するとともに、社内教育プログラムを始めとする多様なアプローチを活用して人材の育成・確保を図っております。また、先述の通り、グローバルでの人材活用を最大化するため、グローバル共通の人事制度並びに人事情報システムの構築・導入を進めております。さらに、「One DS Culture」の醸成やInclusion & Diversity (I&D)を推進しながら、グローバル共通のエンゲージメントサーベイによる分析・改善施策を実施しております。

 

④ 指標及び目標

 先述の「事業基盤マテリアリティ」の「競争力の優位性を生み出す多様な人材の活躍推進」として、以下のKPIを設定し、経営会議や取締役会にてモニタリングしております。

 

女性上級幹部社員※比率

※部所長或いはそれと同等以上の役職にある女性社員

2025年度目標:30%

企業風土・職場環境に関するエンゲージメントサーベイ肯定的回答率

2025年度目標:80%以上もしくは2021年度比10%向上

育成・成長機会に関するエンゲージメントサーベイを通じた肯定的回答率

2025年度目標:80%以上もしくは2021年度比10%向上

社員一人あたりの教育投資額

実績値の公表

 

(ご参考)ESGデータ(2025年9月公表予定)

 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/performance-reports/esg-data/

 

 

(3) 気候変動への取組(TCFD(注)に基づく開示)

 当社グループでは、地球温暖化や異常気象などの気候変動を、人々の生活やビジネスに影響する重要な課題と認識しております。このため、様々な環境問題に対して責任ある企業活動を遂行するために、第一三共グループ企業行動憲章及び第一三共グループEHSポリシーに基づき、環境経営を推進しております。 また、2019年5月にTCFD提言への賛同を表明し、2020年にはガバナンスやシナリオ分析結果など、TCFDの開示枠組みに沿った情報開示を行いました。さらに2021年10月に改訂されたTCFD提言に対応した情報開示を進めると共に、グローバルな課題である気候変動に積極的に応えていくため、気候変動に関するガバナンスや事業戦略の更なる強化を目指します。

(注)Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース

 

① ガバナンス

 企業の持続可能な発展を目指し、環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する戦略や方針を策定し、実施するため、Head of Global Corporate Strategy を委員長とし、各ユニット/コーポレート機能長などを委員として構成する「サステナビリティコミッティ」を設置しております。

 サステナビリティコミッティでは、サステナビリティ課題のうち、人権、EHS、サステナビリティ情報開示、社会貢献について戦略や方針を議論しております。EHSについては年2回EHSマネジメントに関する方針や目標設定、活動の審議・報告を実施しております。そのうえで経営会議にて審議・報告され、重要事項は取締役会に報告されます。

 2024年度はネットゼロ移行計画策定及びScope3削減に向けたビジネスパートナーエンゲージメントの推進などについて、サステナビリティコミッティで審議・報告いたしました。

 

② 戦略

 地球への環境負荷が増大する中、持続可能な社会が実現されなければ、企業活動を行っていくことはできません。特に、生命関連製品である医薬品は、気象災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や医薬品供給能力の低下は大きな事業リスクであり、社会リスクでもあります。したがって、当社事業の環境負荷低減・脱炭素化を推し進めていくと同時に、ビジネスパートナーとの協働によりサプライチェーン全体の脱炭素化も推進し、カーボンニュートラルの達成と物理的影響を緩和することが重要であると考えております。

 一方で、CO2排出量は事業からの直接排出量(Scope1、Scope2)は少なく、サプライチェーンからの排出量(Scope3)が多いことが特徴です。このような認識に基づき、気候変動に伴う当社ビジネスへの影響を把握し、当社のレジリエンス(強靭性)を明確にするため、シナリオ分析を実施いたしました。

 

(ⅰ)シナリオ分析の方法

 シナリオ分析においては、2021年度に部門横断のタスクチームを立ち上げ、関係部門に対し、シナリオ分析の概要及びIEA(国際エネルギー機関)・IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表するネットゼロシナリオなどに関する勉強会を実施し、2030年以降の事業リスク及び機会について検討を行いました。IEA・IPCCのシナリオを用い、「移行」及び「物理」双方について、バリューチェーン全体のリスク・機会を洗い出し、洗い出されたリスク・機会については、2022年度のEHS経営委員会(現・サステナビリティコミッティ)で審議・承認されました。具体的には「調達」「直接操業」「製品・サービス需要」の観点からリスク・機会を洗い出し、6つに分類いたしました。IEA・IPCCの脱炭素化シナリオ(1.5℃)と、脱炭素化が達成されないシナリオ(4℃)を選択したのは、移行リスク・物理的リスクの両方において、その極端なケースを想定し、予め備えることが重要であると判断したためです。それぞれについて、「発生頻度」「事業影響・財務影響」「投資家の関心有無」の観点から2030年と2050年までを対象に総合的なリスク・機会の評価を実施し、事業への潜在的影響及びレジリエンスを整理いたしました。

 

(ⅱ)シナリオ分析の結果と第一三共のレジリエンス

1.5℃シナリオ(移行が進んだ世界)

環境の変化

リスク・機会

当社グループへの潜在的影響

影響度

(注)1

当社グループのレジリエンス

事業リスク

(注)2

脱炭素関連の政策・法規制強化

炭素税導入

2030年時点の炭素税が130$/t-CO2に上昇した場合の影響は限定的。

財務的インパクトは限定的であり、1.5℃目標に引き上げた気候変動対策を推進することでさらに軽微なものにしていく。

再エネ導入に伴う炭素税負担回避

将来的な炭素税導入・上昇の対策として、再エネ調達による排出量削減が重要。

再生可能エネルギーを積極的に活用することにより、2030年時点の年間の炭素税負担を回避。

国内外事業所の電力は、2030年度までに100%再生可能エネルギー由来に転換する。

機会

再エネ設備導入コスト増

エネルギー源は電気・ガスが中心。地域によっては既に再エネ電力を調達。

既存の電力をすべて再エネにした場合の影響は限定的。

再エネ・省エネ設備の追加費用は低下傾向であり、対策の推進によりコスト削減に繋げる。

低/機会

エネルギーコスト等増加

エネルギー事業会社の脱炭素対策が実施されるが、対策自体の導入・運用コストが増加すると将来的なエネルギー調達コスト増を予想。

化石燃料由来のエネルギーコストの上昇が予想されるが、現時点では影響は限定的。

調達コストへの価格転嫁

ビジネスパートナーが自らの炭素税負担を価格転嫁することで調達コストが上昇する可能性があり、供給網全体での排出量削減が重要。

ビジネスパートナーとの協働により、Scope3の削減を進め、炭素税負担の回避に繋げることで調達コストの上昇を抑える。

低/機会

企業評価に対する脱炭素への取組の影響増大

企業価値の増大

脱炭素への取組がESG投資家から評価され、株価上昇など企業価値向上。

脱炭素社会に向けた取り組み、TCFD提言への積極的な対応、株主・投資家の期待に応える情報開示を行うことで評価向上に繋げる。

機会

 

 

4℃シナリオ(物理的影響が大きくなる世界)

環境の変化

リスク・機会

当社グループへの潜在的影響

影響度

当社グループのレジリエンス

事業リスク

気象災害(大雨・洪水・台風)の発生頻度増、規模拡大

サプライチェーン寸断

安定供給に支障をきたすリスクの高まり。

生産・出荷不能により、工場停止や売上減などのリスク。

在庫管理を強化し、災害時でも安定供給に努める

複数社からの購買を実施、複数社から購買できていない原料については今後検討していく。

自社拠点の一時操業停止

重要な研究・製造拠点が浸水した場合。

製造拠点の一部は河川に近くとも浸水の可能性は低いが、交通寸断などにより一時操業停止。

事業継続計画(BCP)の観点から拠点の水災リスク評価を実施し、強靭化を進めている。

緊急事態訓練における洪水対応・減災対策を強化し、水災マニュアルの整備・実証を担保してレジリエンスを高める。

異常気象(浸水)による不良在庫化

物流拠点などの浸水に伴い、操業停止に加えて製品在庫も被害を受ける可能性。

気温上昇

気候変動に伴う疾患増加等

悪性黒色腫、循環器、呼吸器疾患、各種熱帯病などに対する関連医薬品の需要拡大と社会からの要請・期待の高まり。

疾病構造の変化に伴う既存製品の需要減少の可能性。

需要拡大に応える生産ラインの確保、在庫管理強化に努める。

疾病構造の変化やパンデミックも含め、アンメットメディカルニーズ・社会要請の高い疾患に対する研究開発を外部リソースとの連携も合わせ検討する。

中/機会

空調設備のコスト増

本社、研究開発、製造拠点ともに屋内作業が基本であり、気温上昇に伴い空調コスト増が予想されるが影響は限定的。

軽微

コスト増は吸収可能な範囲であり、財務影響は軽微であるが、引き続きエネルギー効率改善に努める。

保険料/BCPコストの増加

気温上昇に伴う風水害の激甚化により、現在でも火災保険料が上昇傾向にある。ただし、将来的な保険料の上昇見通しは限定的。

軽微

日本では4℃上昇時、洪水発生頻度が4倍上昇すると予想されているが、その結果、保険料が数倍に上昇したとしても財務影響は軽微である。

 

 

環境の変化

リスク・機会

当社グループへの潜在的影響

影響度

当社グループのレジリエンス

事業リスク

水不足

自社拠点の一時操業停止

最も取水リスクの高い工場である中国とブラジルでの操業停止の可能性。

その他地域で想定を超える短期的な渇水の可能性。

雨水タンク設置・リサイクル水活用などの渇水対策を推進する。

長期に渡り渇水となった場合、薬事規制の動向をみつつ、他拠点活用・製造委託などの緊急時供給対応を検討する。

生物多様性の喪失

天然化合物由来製品の生産性低下

生物多様性の喪失により原料が入手できず生産が止まった場合の損失を予想。

数年分の原料在庫は確保されており、リスクが顕在化する前に迅速な対応を実施する。

(注)1.影響度は、軽微(1億円未満)、小(1億円~50億円)、中(50億円~100億円)、大(100億円~300億円)を基準に評価

2.事業リスクは影響度と発生頻度を考慮し総合的に評価

 

 事業活動に対する直接的な移行リスクは限定的であると認識しておりますが、サプライチェーンについては、今後、炭素税や移行対策などのコスト上昇がリスクとして考えられます。また、物理的リスクについては、気象災害などの激甚化による安定供給に懸念があります。このような分析結果に基づき、移行リスクについてはこれまでの省エネ対策の推進に加え、再生可能エネルギーの活用や脱炭素技術の導入、ビジネスパートナーとの協働による炭素税などの負担回避を通じたコスト低減を機会として創出して参ります。また、物理的リスクについては、水害対策を含めたBCPの深化、サプライチェーンの安定性を高める予防策の実施、多様性の確保、支援策の確保、代替策の確保等の対策を実施することで、当社グループにおける毀損を回避し、持続的な企業価値向上を目指していきます。 シナリオ分析で評価・特定された重要なリスク対策については、サステナビリティコミッティ及び経営会議においてグループ全体の進捗管理を行って参ります。

 

③ リスク管理

 気候変動や水に関するリスクなど、事業活動の変更を余儀なくされる可能性のあるリスクを把握し、当社グループのリスクマネジメントシステムの一環としてリスク対応策を実施しております。サステナビリティコミッティは、気候変動による影響が当社ビジネスにどのようなリスクと機会をもたらすのか、その財務的なインパクトを評価・管理し、レジリエンスを高める重要な役割を果たしており、重大リスクの懸念がある場合は経営会議に報告、さらに取締役会に報告し、総合的リスク管理に統合されます。加えて、長期的なカーボンニュートラルへの移行を目指し、中期及び短期での目標・実施計画を審議・決定しております。

<リスク>

1.5℃シナリオ

IEA SDS(WEO2021), IEA NZE 2050

炭素税導入、再エネ設備導入コスト増、不十分な開示によるレピュテーショナルリスク発生

4℃シナリオ

IPCC RCP8.5

サプライチェーン寸断、自社拠点の一時操業停止、気温上昇に伴う空調コスト増、取水リスクによる操業困難化、天然化合物由来製品の生産性低下

 

 

<機会>

1.5℃シナリオ

SBT(注)達成に向けた各種施策によるコスト削減や負担回避・投資家からの評価向上

4℃シナリオ

気候変動に伴い増加する疾患への貢献

(注)Science Based Target:パリ協定の水準に整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のこと

 

④ 指標及び目標

 バリューチェーンごとに事業への潜在的影響及び気候関連のリスク・機会を評価・管理するため、第5期中期経営計画におけるKPI及び環境に関する目標を定めております。第5期中期経営計画の進捗を踏まえ、2021年度に気候変動に関わるKPIの見直しを行った結果、Scope1及びScope2については1.5℃の世界に対応した目標水準へ引き上げを行うとともに、2022年度には、Scope3についてもサプライヤーエンゲージメント目標として、サプライヤーに要請するCO2排出量削減目標の設定を「1.5℃水準」へと更新し、2023年6月に、SBTイニシアチブより「1.5℃目標」の認証を取得いたしました。

 

CO2排出量(Scope1+Scope2)

2025年目標:2015年度比42%減、2030年目標:2015年度比63%減

CO2排出量(Scope3、Cat.1)

2025年目標:2020年度比売上高原単位15%減

ビジネスパートナー・エンゲージメント(Scope3、Cat.1)

2025年目標:ビジネスパートナーの70%以上が1.5℃水準の目標を設定

再生可能電力利用率

2025年目標:60%以上、2030年目標:100%

 

CO2排出量                                         単位:t-CO

 

2022年度

2023年度(注)1

2024年度(注)2

Scope1

86,006

85,245

90,086

Scope2

23,729

23,994

24,887

(注)1.2023年度の算出値は第三者保証を受けた数値に更新

   2.2024年度の算出値は暫定(第三者保証を2025年8月取得・9月公表予定)

 

算定方法

Scope1:日本の二酸化炭素及びエネルギーの換算係数は、地球温暖化対策の推進に関する法律の数値を使用。日本以外の国々については、排出源地域の当局等の基準あるいはGHGプロトコルに基づく。

Scope2:電力購入の契約に基づく排出係数を用いて算定(マーケット基準)

 

(ご参考)ESGデータ(2025年9月公表予定)

 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/performance-reports/esg-data/