事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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売上
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利益
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利益率
最新年度
| セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 創薬支援事業 | 579 | 100.0 | -51 | - | -8.8 |
| 創薬事業 | - | - | -2,024 | - | - |
3 【事業の内容】
(1) 事業の背景
① キナーゼへの着目
がん疾患、リウマチなどの免疫・炎症疾患、アルツハイマー病などの神経変性疾患では、生体恒常性機能に異常をきたしており、生体内では異常なシグナル伝達が起こっていることが知られています。この原因と考えられている分子のひとつに、細胞内外の情報伝達をつかさどるキナーゼ(*)と呼ばれる酵素があります。このキナーゼが遺伝子変異やストレスなどによって異常な働きになった場合には、シグナル伝達機能に支障をきたし病気につながることが知られています。当社は、このキナーゼを主な創薬標的として画期的な新薬の創製を目指し研究開発を行っております。
② キナーゼ阻害薬の活躍
がん、炎症、リウマチなどの疾患では、細胞のなかに存在する特定のキナーゼが遺伝子変異やストレスなどによって異常な働きになり、それが原因となって生体恒常性機能に異常を引き起こしていることが徐々に明らかになってきました。しかしながら、キナーゼは生体内に500種類近く存在し、生命機能において大変重要な働きを担っているため、近年になるまで、キナーゼを阻害する薬の開発は副作用懸念のために進んでいませんでした。
その流れを変えたのが、2001年に米国で販売が開始されたBCR-ABLチロシンキナーゼを選択的に阻害する慢性骨髄性白血病治療薬のグリベック® (一般名:イマチニブ、製造販売元:Novartis AG)の成功です。この成功により、特定のキナーゼの働きのみを選択的に抑制する、安全で有効な分子標的薬(*)の研究が製薬企業で活発に進められるようになり、その後、様々ながんの治療薬として次々に大型のキナーゼ阻害薬(*)が誕生し、多くのがん患者に届けられています。また、免疫・炎症疾患を対象としたゼルヤンツ®(一般名:トファシチニブ、製造発売元:Pfizer Inc. )が、米国FDA(U.S. Food and Drug Administration)により承認されると、キナーゼは、がん疾患のみならず、様々な疾患の創薬標的として認知され、その研究開発が拡がりをみせました。さらに最近では、欧米の製薬企業だけでなく、わが国の製薬企業が開発した低分子のキナーゼ阻害剤が相次いで上市されるなど、今後もブロックバスターと呼ばれる大型新薬を目指した製薬企業によるキナーゼ阻害薬の開発は発展していくものと予想されます。
さらに、がん治療分野における画期的な進展として、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であるオプジーボ®(一般名:ニボルマブ、製造発売元:小野薬品工業株式会社等)に代表されるがん免疫療法に基づくバイオ医薬品の相次ぐ承認が挙げられます。一部の患者では治療により寛解する等、これまでにない成果を挙げていますが、多くの患者に効果が出るよう、こうしたがん免疫療法薬の効果をさらに高めることが重要な課題となっています。その代表的なアプローチとして、がん免疫療法薬と他の低分子医薬品との併用療法が注目されており、そのような薬剤の一つとしてキナーゼ阻害薬が成果を挙げつつあります。特に、エーザイ株式会社が開発したレンビマ®は、抗PD-1抗体であるキイトルーダ®(一般名:ペムブロリズマブ、製造販売元:Merck & Co., Inc.)との併用で高い抗腫瘍効果を示したことから、メガファーマとの大型提携に発展しています。このように、キナーゼ阻害薬は、単剤としての効果のみならず、これら併用療法において治療効果を高める薬剤としても大いに期待されます。
上記のような分子標的薬は、特定の疾患において特異的に発現している標的分子を選択的に阻害するため、効果的でかつ副作用が少ないという特徴をもっており、加えてコンパニオン診断による投薬前の事前検査を行うことで、治療効果が高いと判定された患者への投薬が可能となり、より高い安全性と治療効果をもたらし、個別化医療の実現に着実に近づくことが期待されます。2025年時点で、米国FDAにより承認されたキナーゼ阻害薬は約100剤に達しているとされており、さらに、世界中の製薬企業やバイオベンチャーにおいて、新規キナーゼ阻害薬の研究開発及び臨床試験が進められています。
(注)図中のATP(*)については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載の用語解説をご参照ください。
③ 低分子経口薬(分子標的薬)の社会的価値
細胞内にあるキナーゼという酵素をターゲットとするキナーゼ阻害薬は、従来の治療薬と比較して治療効果が高く、副作用が少ないと考えられることから、分子標的薬の重要なカテゴリーとして、世界各国の大手製薬企業や研究機関、バイオベンチャーにおいて、活発な研究開発が進められています。
現在、医薬品として認可され、上市(*)されている薬剤は、大きく分けて2種類あります。ひとつは、注射により患者に投与される抗体などの高分子(バイオ)医薬品であり、もうひとつは、当社が研究開発を行っている経口投与可能な低分子医薬品です。近年、抗体がバイオ医薬品として注目を集めておりますが、主に細胞で培養し製造されるため複雑な製造工程を有していることから、比較的薬価が高いものが多く、医療経済を圧迫する一因ともなっています。また、注射剤であることから、患者は投与を受けるために通院を要し、肉体的な負担が比較的大きい薬といえます。他方、当社が研究開発を行っているキナーゼ阻害薬等の低分子医薬品は経口投与可能であり、医師による処方により患者自身が自宅等で服用できることから身体的負担が少なく、さらに化学合成により比較的安価に製造されるため薬価を低く抑えることができ、医療経済上においても優しいものであることから、開発途上国などを含む世界中の患者に広く提供可能な薬といえます。
また、抗体は高分子薬であることから細胞膜を透過することができず、細胞外の分子のみが標的となりますが、キナーゼ阻害薬等の低分子阻害薬は細胞膜を透過することが可能なことから、細胞内の分子を標的とすることができ、抗体で治療できない疾患の治療薬の開発が可能となります。
(2) 事業内容
当社グループは、当社(カルナバイオサイエンス株式会社)及び連結子会社(CarnaBio USA, Inc.)により構成されており、「創薬事業」及び「創薬支援事業」の2つを主たる事業として展開しております。
当社グループの事業内容及び当社と子会社の当該事業における位置づけは次のとおりです。
(注) セグメントは事業の区分と同一であります。
新薬の創薬標的を同定し、その標的に有効な医薬品候補化合物を創製して、さらにその有効性・安全性を確かめ医薬品としてわが国の厚生労働省や米国FDA等の規制当局に承認申請を行い、承認を得るまでの過程を「創薬」といいます。当社グループは、この「創薬」の中でも、特にキナーゼ阻害薬を創製するための基盤となる技術、いわゆる「創薬基盤技術」をベースに、「創薬事業」及び「創薬支援事業」を展開していることが特徴です。
当社グループの事業内容の系統図は以下の通りです。
① 創薬事業
当社グループの創薬事業は、キナーゼ阻害薬等の創薬研究、前臨床試験および臨床試験を実施し、そこから得られた新薬候補化合物の知的財産権に基づく開発・商業化の権利を製薬企業等に導出(ライセンスアウト)し、その対価として収益を受領するビジネスモデルとなっています。この対価には、製薬企業等へ医薬品候補化合物を導出した時点で受領する契約一時金、その後の研究開発の進展に伴い目標を達成した時点で受領するマイルストーン収入、さらに新薬の上市後の売上に応じて受領するロイヤリティ収入があります。
a.キナーゼ阻害薬等の研究開発
当社グループは、創薬事業において、これまでにない画期的なキナーゼ阻害薬等の新薬創製に係る研究開発を行っております。研究開発テーマは、アンメット・メディカル・ニーズの高い、いまだ十分な治療方法が確立していない疾患を中心に選定しており、特にがん、免疫・炎症疾患を重点疾患領域として、画期的な新薬の創製を目指し研究開発を行っております。当社グループでは、自社単独で行う研究開発プログラムに加えて、製薬企業、大学及び公的研究機関等とも共同研究を実施しております。
当社グループの創薬事業においては、比較的早期に有効性が確認できるがん領域は最大フェーズ2試験まで自社で実施し、パイプラインの価値向上を目指す方針です。それ以外の疾患はフェーズ1試験もしくは前臨床試験まで自社で実施し、製薬企業等へ導出(ライセンスアウト)することを基本方針としています。当社グループは、自社もしくは共同研究で創出した医薬品候補化合物の知的財産権に基づく開発・商業化の権利を製薬企業等に導出(ライセンスアウト)することによって、ライセンス契約締結時における契約一時金、前臨床試験や臨床試験等の各ステージの開始/完了時、承認申請時、承認取得時等の目標達成に伴うマイルストーン収入、並びに新薬の上市後にその売上高等に対する目標達成に伴うマイルストーン収入、さらに当該売上高等に対する一定の割合をロイヤリティ収入として受け取る収益モデルを想定しております。
なお、本報告書提出日時点で、当社グループは、共同研究プログラムを含む2つの創薬プログラムを製薬企業に導出(ライセンスアウト)しております。また、3つの臨床開発段階の創薬プログラムを保有しており、そのうち2つのプログラムについてフェーズ1試験を実施中です。残り1つのプログラムについては、2023年にフェーズ1試験を完了し、現在パートナリング活動を進めております。
b.新薬の研究開発プロセスについて
<新薬の研究開発プロセス及び一般的な期間>
※ 当社グループの創薬事業は、がん領域については最大フェーズ2試験、それ以外の疾患はフェーズ1試験もしくは前臨床試験まで自社で実施する方針です。上表の点線部以降の各ステージは、導出先の製薬企業等が手がけることになります。
(a) 創薬研究
創薬研究の初期段階では、疾患に関連すると想定される遺伝子やタンパク質を標的とし、その標的が創薬の対象として妥当であるか、また有望性があるかを検討します。基礎研究段階で創薬の標的となりうることが確認されると、その標的に対するハイスループットスクリーニング(HTS)を実施し、一定の基準を満たしたヒット化合物の選出を行います。そのヒット化合物の中からさらに医薬品になる可能性のある構造を持ったリード化合物(*)の創出研究を行います。見出されたリード化合物は、試験管内での標的に対する作用や疾患モデル動物での治療効果を評価する薬理試験や毒性試験を通して、リード化合物の化学構造を最適化していきます。このとき、経口吸収性や体内での安定性などを評価する薬物動態試験も実施し、標的への作用だけでなく薬としての特性も同時に明らかにしていきます。動物を用いた試験が必要な場合には、動物愛護の観点に配慮しつつ、科学的観点に基づく適正な動物実験等を実施します。そして、前臨床試験段階に進めるべき医薬品候補化合物を決定します。
(b) 前臨床試験
医薬品の臨床試験実施に必要な前臨床試験は、薬理試験、薬物動態試験、安全性試験の3種類に大別されます。これらの試験のうち、薬機法に基づき、「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令(医薬品GLP(*)省令)」で定められている試験についてはGLP基準で実施します。前臨床試験の結果を総合的に判断し、選択した医薬品候補化合物を臨床試験に進めるべきか否かを決定します。
(c) 臨床試験(治験)
前臨床試験で薬効、安全性と薬物動態が確認された医薬品候補化合物は、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(GCP(*)省令)に従い、ヒトに投与して、まずは安全性や薬物動態を評価します。その後、疾患に対する薬剤の効果を検討していきます。
当社が手掛ける新薬に関する治験は一般的に以下のように実施されます。
フェーズ1試験では、原則として同意を得た少数の健康な被験者に治験薬を投与し、安全性や体内動態を確認します。当社は、免疫・炎症疾患などがん以外の疾患はフェーズ1試験もしくは前臨床試験まで自社で実施し、それ以前のいずれかの段階で製薬企業等へ導出することを基本方針としています。
抗がん剤の場合は、フェーズ1試験で患者に投与することで、POC(Proof of Concept)を確認できることが多く、このためフェーズ2試験では、フェーズ1試験で決定された投与量の有効性・安全性についての検討が行われます。当社は、がん領域は最大でこのフェーズ2試験まで自社で実施する方針です。
② 創薬支援事業
当社グループは、製薬企業やバイオベンチャー、大学等の各種研究機関を顧客とし、キナーゼ阻害薬の創薬研究において基盤となる技術、いわゆる「創薬基盤技術」に基づく製品及びサービスを提供することで、顧客の創薬活動を支援する創薬支援事業を展開しております。特に、創薬における研究プロセスの初期段階であるヒット化合物の抽出から前臨床試験の手前までの研究段階(新薬候補となる新規化合物の創製及び絞り込み)に焦点を当てて、キナーゼ阻害薬の研究開発における品質及び信頼性向上ならびにコスト圧縮や期間短縮などの効率化に寄与することを通じて、製薬企業等における新薬の創製に貢献するとともに、当社の自社創薬に係る研究開発資金を自ら捻出し、創薬事業に融通しています。
キナーゼ阻害薬等の新薬の研究開発を行うプロセスは、1)創薬ターゲットの同定、2)スクリーニング及びリード化合物の創出、3)リード化合物の最適化といった段階を経て、前臨床試験ならびにその後の臨床試験へと進みますが、当社グループの創薬支援事業においては、これら1)、2)、3)の段階において必須となる以下の製品及びサービスを提供しております。
a.キナーゼタンパク質
b.アッセイ開発
c.プロファイリング・スクリーニングサービス
d.セルベースアッセイサービス
e.その他関連サービス
製薬企業や創薬ベンチャー企業が他社との創薬競争を勝ち抜くためには、他社に先んじて新薬を開発し、医薬品として規制当局の承認を経て上市する必要があります。創薬のスピード向上を図るためには、外部リソースの積極的な活用が重要であり、製薬企業等は、キナーゼに関する専門的技術を基盤とするアッセイ系構築、プロファイリング・スクリーニング、X線結晶構造解析(*)並びにセルベースアッセイ等のアウトソースを引き続き活用すると考えられます。また、創薬研究の担い手が創薬ベンチャー企業を中心とする状況のなかで、十分な社内リソースを保有しない企業も多く、これらサービスへの需要は引き続き高いと見込まれます。
当社は創薬基盤技術を駆使し、引き続き、顧客ニーズに合致した付加価値の高い製品・サービスの開発・提供を進め、売上拡大を図ってまいります。
<創薬研究プロセス及び当社グループ創薬支援事業の事業領域>
a.キナーゼタンパク質
当社グループは、2024年12月末時点で、変異体を含め750種類以上のキナーゼタンパク質を主に製薬企業等に販売しております。また、表面プラズモン共鳴 (SPR)やバイオレイヤー干渉法 (BLI)といった物質間の相互作用を評価する系(解析機器)で利用可能なビオチン化キナーゼタンパク質(*)についても200種類以上販売しており、品揃えを拡大中です。少量(5㎍)から大量(mgレベル)まで幅広く供給できる体制を整え、また、既存の品ぞろえにないキナーゼタンパク質についても、顧客の要望に応じて、特注でキナーゼタンパク質の製造・販売を行うなど、顧客ニーズに合致した高品質のキナーゼタンパク質を製造・販売し、売上の拡大を図っております。
b.アッセイ開発・アッセイキット
当社グループは、遺伝子クローニングの技術、活性のある/ないキナーゼを発現し抽出する技術、基質(*)探索及びアッセイ系構築に関する各種の知見ならびに技術を蓄積しています。2003年にヒトゲノムが解読され、これによって簡単にヒトの遺伝子を取得できるようになりましたが、高い活性を有するキナーゼを取得するには、組み換え(リコンビナント)タンパク質の構造、発現細胞の選択及びその培養方法、キナーゼの高純度精製技術などのノウハウが必要です。キナーゼの活性を測るために必要な基質についても、当社が保有する基質ライブラリーを用い、個々のキナーゼに対応する基質を探索したデータが蓄積されています。
これらの知見により、アッセイプラットフォーム(*)(TR-FRET法(*)、IMAP®(*)等)それぞれに対応したアッセイキットを開発し、当社で製造したキナーゼタンパク質、それに適合した基質、アッセイバッファー(希釈液)及びプロトコル(手順書)を一式にしたキナーゼ活性測定キットとして販売をおこなっております。その他のキナーゼについても顧客より要望があれば、カスタムでアッセイ系の開発を行うサービスを提供しています。
c-1.プロファイリングサービス
リード化合物の最適化段階では、副作用の少ない新規医薬品候補化合物を創製するため、毒性試験等を実施しつつ、標的とする特定のキナーゼのみを選択的に阻害し、阻害すべきでないキナーゼは阻害しない化合物を見つけ出すことが重要となります。そのため、化合物が多数のキナーゼに対して示す阻害作用を、網羅的かつ迅速に見極める測定方法として、プロファイリングが最適な手法と考えられます。
当社グループは、2025年12月末時点で300を超えるキナーゼ製品についてプロファイリングが可能です。また、そのうち相当数のキナーゼ製品については、より生体内に近いATP(*)濃度である1mMでのプロファイリングが可能です。これらの技術を活用し、顧客からお預かりした化合物について、キナーゼに対する阻害率の測定、50%阻害濃度(IC50値)の測定を行い、その結果を報告するサービスを提供しております。これにより、顧客である製薬企業等は、特定のキナーゼのみを阻害する選択性の高い化合物を見いだすことが可能となります。また、顧客がプロファイリングを発注するにあたり、キナーゼの選定に迷う場合に備え、QuickScout®パネル(MAPキナーゼカスケードのキナーゼ31種類をあらかじめ選択したプロファイリングパネルなど、複数種類のプロファイリングパネル)も用意しております。当社グループのサービスを利用することで、顧客は化合物の網羅的なプロファイリングが可能となり、新薬開発に向けた時間とコストを削減することが可能となります。
さらに、強い阻害効果を示すキナーゼ阻害剤(*)の中には、キナーゼへの結合が遅いもの(slow binder)もあることが知られています。このような化合物を評価する際、アッセイ時のキナーゼ反応の前に化合物と対象キナーゼとのプレインキュベーション(事前にキナーゼと化合物を反応させること)を実施することにより、本来の化合物の阻害活性を算出することが可能となります。顧客からの要望に基づき、Mobility Shift Assay法(*)で室温でのキナーゼ活性の安定性が確認されたキナーゼ製品について、本サービスを提供しています。通常の測定では適正な評価が難しいslow binderの評価に有益なサービスです。
当社グループは、プロファイリング及び後述のスクリーニングを行うために、Revvity, Inc.(米国、以下「レビティ社」という)のアッセイ機器(LabChip® EZ Reader)を使用し、自動化を図ることにより効率的なアッセイを行ってまいりましたが、レビティ社は2024年末でLabChip® EZ Readerのサポートを終了しました。そのため、当社はSCIEX社のBioPhase 8800を代替機として選定し、Mobility Shift Assay法の新しいプロトコルと測定システムの開発に成功し、2024年5月に、BioPhase 8800を用いた新規プロファイリングサービスを開始しました。これにより、当社は信頼性の高いMobility Shift Assay Systemを使用したキナーゼのアッセイサービスを提供できる唯一の企業となり、既存顧客へ従来と同様のサービス提供を継続するとともに、新規顧客への当該サービスの訴求に注力しております。加えて、顧客層の拡大を目指し、顧客ニーズの高いアッセイプラットフォームを用いたプロファイリングサービスの開発にも着手しています。
c-2.スクリーニングサービス
スクリーニングとは、顧客からお預かりした化合物について、当社が構築したアッセイ系を用い、特定のキナーゼに対する阻害活性の有無などの特定の性質を、一度に多数の化合物について評価し、その結果を報告するサービスです。特に、数十万化合物の中からヒット化合物を探索する過程で用いられる大規模アッセイ(ハイスループットスクリーニング(HTS))を効率的に実施するためには、試薬を混ぜるだけで反応が検出できるホモジニアスなアッセイ系構築のノウハウが必要です。
当社グループは、上記c-1.に記載の通り、2025年12月末時点で、300を超えるキナーゼ製品のアッセイ系を構築しており、これらアッセイ系を用いて顧客からお預かりした化合物の中から、特定のキナーゼに対して阻害活性を示すものを選び出すためのスクリーニングサービスを提供しております。また、当社のアッセイ系は環境への負荷を考慮して、洗浄・分離の工程を必要とせず且つ放射性同位体を使わないアッセイ系を複数のアッセイプラットフォーム(*)(Mobility shift assay法、TR-FRET法(*)、IMAP®(*)等)で構築し、スクリーニングを実施しております。
d.セルベースアッセイサービス
上記のプロファイリング・スクリーニングサービスは、バイオテクノロジー技術を駆使して、細胞内から抽出したキナーゼという酵素の活性(リン酸化)について、キナーゼ阻害薬がどのくらい阻害するかしないかを試験管の中で確認するためのものでありますが、セルベースアッセイサービスは、細胞レベルでのアッセイであり、細胞内に存在するキナーゼが、キナーゼ阻害薬によりどれくらい阻害される/されないか等を確認する評価系です。より実際の生体内の環境に近いレベルで薬剤の効果を確認することができます。
当社グループは、2024年12月末現在で、下記の自社提供ならびに協力会社の販売代理店となり、下表のセルベースアッセイサービスを提供しております。
これらのセルベースアッセイサービスは、キナーゼ阻害薬の研究が深化するにともない需要が高まり、より安価に、より迅速に、細胞レベルにおいてリン酸化シグナルの状態を解析することを望む顧客において、広く利用されております。
e.その他関連サービス
当社グループは2016年8月にSARomics Biostructures AB(スウェーデン、サロミクス社)と販売代理店契約を締結し、サロミクス社が提供するX線結晶構造解析サービス並びに結晶化グレードタンパク質の販売等を行い、当社グループを通じ顧客に提供しております。
③ 同一の創薬基盤技術で顧客の創薬研究の支援と自社の創薬研究を行うことについて
当社グループの創薬支援事業は、当社の創薬研究により見出されたキナーゼ阻害薬の創製に係るさまざまな技術、知見、ノウハウの集大成である「創薬基盤技術」を駆使して事業を行っています。この「創薬基盤技術」は、世界最大クラスのキナーゼコレクション、数万種類のキナーゼフォーカス化合物ライブラリー、高品質な各種アッセイプラットフォーム及びキナーゼプロファイリングパネル等、キナーゼに係る創薬技術により構成されており、長年の創薬研究において培われた当社の重要な財産であります。
この「創薬基盤技術」を当社の創薬研究のみならず、世界の製薬企業、バイオベンチャー及び研究機関に対して提供することにより、画期的な新薬をより早く世に送り届ける一翼を担いたいとの思いから、新薬の創製を自ら行なう創薬事業と同時に他社をサポートする創薬支援事業を行っています。同時に、創薬支援事業で獲得した資金を創薬事業に融通することにより、創薬事業における創薬研究のスピード化を図ることもその目的としております。
しかしながら、一つの会社の中に自社の知的財産を創造する機能と、他社の知的財産の創造を支援する機能が共存していることは、顧客に対して顧客情報の秘匿性の確保についての懸念を与えかねません。
当社グループは、創薬支援事業が創薬事業と顧客に関する情報を共有することを禁止しております。また、プロファイリング・スクリーニングサービスの委託契約において、顧客からの委託を受けて行ったプロファイリング・スクリーニングの結果を用いた顧客の研究成果について、全て顧客に帰属する旨の契約を締結するとともに、顧客データへのアクセス権を厳密に設定、管理し、それらへのアクセスログをすべて記録する等、社内において全ての顧客情報の秘匿性に万全を期しており、情報セキュリティ及び管理体制の向上にも常に取り組んでいます。
(注) *を付している専門用語については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に用語解説を設け、説明しております。
業績状況
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
当社は、創薬事業においてはアンメット・メディカル・ニーズの高い未だ有効な治療方法が確立されていない疾患を中心に、特にがん、免疫・炎症疾患を重点領域として画期的な新薬の開発を目指して研究開発に取り組み、また、創薬支援事業においては新たなキナーゼ阻害薬創製のための製品・サービスを製薬企業等へ提供するため営業活動に取り組んでおります。
当連結会計年度のセグメント別の事業活動は以下のとおりです。
①創薬事業
創薬事業においては、がん領域でベストインクラスの可能性を有する次世代非共有結合型BTK阻害剤docirbrutinib(AS-1763)に注力し、現在、患者を対象とした臨床試験を米国で実施しています。docirbrutinibは、現在までの非臨床試験の結果及び臨床試験の途中結果において、ブロックバスター(年間売上1,000億円以上の医薬品)となるポテンシャルを十分に有していると考えており、着実に臨床試験を進めることによりパイプラインの価値を高め、大型のライセンス契約に繋げてまいりたいと考えております。また、ファーストインクラスを目指して、CDC7阻害剤monzosertib(AS-0141)の開発も進めており、患者を対象とした臨床試験を日本で実施しています。
docirbrutinibについては、現時点で、ライセンス契約締結後にパートナー(ライセンス先)によるフェーズ2試験の実施を想定しており、2026年中の契約締結を目指しています。monzosertibについては、最大でフェーズ2試験まで自社で実施し、有効性を確認したのちに導出する方針ですが、並行して、製薬企業等とのパートナリング活動も積極的に行う方針です。
免疫・炎症疾患領域では、当社が創出した、もう1つの非共有結合型BTK阻害剤sofnobrutinib(AS-0871)の開発を進め、健康成人を対象としたフェーズ1試験が2023年第4四半期に完了しました。sofnobrutinibについては、フェーズ2試験以降をライセンス契約の締結若しくは共同開発先との提携により実施することを目指しており、現在、パートナリング活動を実施中です。
さらに、当社は、米国ギリアド・サイエンシズ社(以下「ギリアド社」)に、当社が創出した新規脂質キナーゼDGKα阻害剤の創薬プログラムを導出しており、住友ファーマ株式会社(以下「住友ファーマ」)とは、精神神経疾患を標的とした創薬プログラムの共同研究を行っています。
臨床開発段階のパイプライン
導出済みパイプライン
※本パイプラインの状況につきましては、後述の「ギリアド社に導出した創薬プログラム(DGKα阻害剤)」をご参照下さい。
*受領済の契約一時金及びマイルストーンは受領時の為替レート、マイルストーン総額は150円/ドルで換算。
各パイプラインの概況は以下のとおりです。
BTK阻害剤 docirbrutinib (AS-1763、対象疾患:慢性リンパ性白血病(CLL)などの血液がん)
docirbrutinib(AS-1763)は、慢性リンパ性白血病(CLL)を含む成熟B細胞腫瘍(血液がんの一種)の治療を目的として開発中の経口投与可能なBTK阻害剤です。
現在までの臨床試験の途中結果及び非臨床試験の結果は、docirbrutinib(AS-1763)の高い安全性と幅広い薬剤耐性変異型BTKに対する効果を示唆しており、既存のBTK阻害薬に対して不耐(副作用により投与継続が困難な状態)の患者及び薬剤耐性の発生により既存のBTK阻害薬が効かなくなった患者の新たな治療の選択肢となることが期待されます。また、既存のBTK阻害薬市場は2024年時点で約120億ドル*(約1.8兆円、為替レート150円換算)に達しており、非常に大きな市場を形成していることから、docirbrutinib(AS-1763)は、3次治療での早期承認で、ブロックバスター(年間売上1,000億円以上の医薬品)となるポテンシャルを十分に有していると考えており、さらに2次治療、1次治療での承認の可能性も有していると考えております。着実に臨床試験を進めることによりパイプラインの価値を高め、大型のライセンス契約に繋げてまいりたいと考えております。
*Source: Clarivate
<docirbrutinib(AS-1763)臨床試験の流れ>
docirbrutinib(AS-1763)の臨床試験は、ヒトでの安全性、薬物動態等の検討を早期に行うため、まず健康成人を対象としたフェーズ1試験をオランダにおいて実施しました。その後、フェーズ1試験の結果を基にして、米国において患者を対象としたフェーズ1b試験を計画し、2023年8月に投与を開始、現在実施中です。本剤については、現時点で、ライセンス契約締結後にパートナー(ライセンス先)によるフェーズ2試験の実施を想定しており、2026年中の契約締結を目指しています。
<フェーズ1b試験の状況>
本剤のフェーズ1b試験は、2ライン以上の全身治療歴を有する慢性リンパ性白血病(CLL)・小リンパ球性リンパ腫(SLL)及びB細胞性非ホジキンリンパ腫(B-cell NHL)の患者を対象としており、用量漸増パートと用量拡大パートから構成されています。用量漸増パートについては、2023年8月に投与を開始し、2024年12月に全ての患者登録を完了しました。
用量拡大パートは、当初、用量漸増パートで計画していた最大用量(600mg BID*)の評価を行い、最大耐用量を確定した後に開始する予定でしたが、用量漸増パートの途中経過において、docirbrutinib(AS-1763)の高い安全性と忍容性、並びに治療効果の期待できる十分な血中薬物濃度と高い全奏効率を確認することができたことから、治験責任医師の合意のもと、6用量目(600mg BID*)の開始を待たずに、用量拡大パートへ移行することを決定し、2024年10月に投与を開始しました。用量拡大パートは、CLL・SLL患者を対象としたコホート1、B-cell NHL患者を対象としたコホート2、及びpirtobrutinib投与歴のある患者を対象としたコホート3の3つのコホートで構成されており、用量漸増パートの結果に基づき、コホート1及びコホート2については3用量(300、400、500mg BID*)、コホート3については2用量(400、500mg BID*)を選択しています。コホート1及びコホート2について、最初の用量(低用量 300mg BID*)への患者エントリーが完了しており、2026年2月時点で、次用量(中用量 400mg BID*)への患者組み入れが進行中です。コホート3については、最初の用量(中用量 400mg BID*)への患者組み入れが進んでいます。
また、治験実施施設は13施設に拡大しており、患者エントリーの加速が期待されます。
*BID : 1日2回
<学会発表:ASH2025>
2025年12月開催の第67回アメリカ血液学会年次総会(American Society of Hematology Annual Meeting & Exposition)において、フェーズ1b試験の途中結果並びに新たな非臨床研究に関する発表が行われました。
治験データに関する発表は、治験主導医師であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンター白血病科教授Nitin Jain医師により行われ、docirbrutinib(AS-1763)が、良好な安全性の結果とともに、複数の前治療歴を有する慢性リンパ性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)及びワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症(WM)患者において有望かつ持続的な奏功を示したことが報告されました。
非臨床研究に関する発表では、MDアンダーソンがんセンター・トランスレーショナル・モレキュラー・パソロジー科教授のVarsha Gandhi 博士との共同研究成果として、docirbrutinib(AS-1763)が、薬剤耐性変異型BTKを導入したがん細胞株に対して細胞レベルで有効であること、ベネトクラクスと併用することで、薬剤耐性変異型BTKを導入したがん細胞株や患者由来のCLL細胞に対してより効果的に細胞死が誘導されることなどを報告いたしました。
BTK阻害剤 sofnobrutinib (AS-0871、対象疾患:免疫・炎症疾患)
sofnobrutinib(AS-0871)は、BTKキナーゼを阻害してB細胞、マクロファージ、マスト細胞などの免疫細胞の活性化を抑制することにより、免疫・炎症疾患の治療を目指す経口剤として開発を進めています。
本剤については、オランダにおいて、健康成人を対象としたフェーズ1試験を実施しました。本フェーズ1試験は、2021年中に完了したSAD試験及び2021年12月から開始した反復投与用量漸増(MAD)試験の2つの試験として実施し、2023年11月にMAD試験の臨床試験報告書が最終化されました。フェーズ1試験の結果から、sofnobrutinib(AS-0871)の安全性、忍容性、並びに良好な薬物動態プロファイルと薬力学作用が確認され、フェーズ2への移行が支持されました。
さらに、sofnobrutinib(AS-0871)の重要な標的疾患の一つとして、慢性突発性蕁麻疹(CSU)を想定しております。CSUは全世界の約1%が罹患していると考えられており、その市場規模は2023年で約22億ドル(約3,300億円、為替レート150円換算)とされています。さらに2032年には約54億ドル(約8,100億円、為替レート150円換算)に達すると予想されています*。既存のBTK阻害剤の多くは、催奇形性が認められるため妊娠可能な女性への使用が制限されていますが、sofnobrutinib(AS-0871)は、胚・胎児発生毒性試験において、催奇形性が認められなかったことから、皮膚疾患治療薬として多くの患者の治療の選択肢となることが期待されます。
sofnobrutinib(AS-0871)については、フェーズ2試験以降の開発をライセンス契約の締結若しくは共同開発先との提携により実施することを目指しており、フェーズ1試験及び追加した非臨床試験の結果を受けて、製薬企業等とのパートナリング活動を実施中です。
* https://www.credenceresearch.com/report/chronic-spontaneous-urticaria-market
CDC7阻害剤 monzosertib (AS-0141、対象疾患:固形がん・急性骨髄性白血病(AML)などの血液がん)
monzosertib(AS-0141)は、CDC7キナーゼを阻害して細胞の増殖を抑制し悪性腫瘍の治療を目指す経口剤として開発を進めています。現在、固形がん、並びに急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia, AML)などの血液がんを対象としたフェーズ1試験を実施中です。
がん領域の本剤については、最大でフェーズ2試験まで実施して有効性を確認したのちに導出する方針ですが、並行して、製薬企業等とのパートナリング活動も積極的に行う方針です。
また、本剤に関して想定される市場規模については、血液がんに関して、急性骨髄性白血病(AML)治療薬の市場規模が2023年には約38億ドル(約5,700億円、為替レート150円換算)と見込まれており、今後も継続的な拡大が予測されています*。固形がんに関しては、現在、フェーズ1試験のデータを詳細に解析している段階であり、今後、開発方針が決まれば、monzosertib(AS-0141)の市場規模についてお知らせいたします。
* https://www.bccresearch.com/market-research/pharmaceuticals/acute-myeloid-leukemia-market.html
<monzosertib(AS-0141)臨床試験の全体像>
<フェーズ1試験>
(固形がん)
本剤については、日本国内において、切除不能進行・再発又は遠隔転移を伴う固形がん患者を対象としたフェーズ1試験を、2021年6月に開始しました。本試験は用量漸増パート及び用量拡大パートの2段階で構成されています。用量漸増パートは、当初、1日2回、5日間連日経口投与、2日間休薬する投与スケジュールで実施し、80mg BID*までの用量において、安全性、忍容性が確認されました。その後、薬効を最大化するために、投与スケジュールを、2日間の休薬をしない連日投与に変更し、引き続き用量漸増パートを実施しました。2025年1月に、最大耐用量及び用量拡大パートで使用する用量を決定し、2025年4月に用量漸増パートの投与を完了しました。用量拡大パートについては、2025年2月に投与を開始し、2025年中に計画していた患者数の登録を完了し、最後の患者が治験を終了しました。現在、本パートで得られたデータの解析を進めております。
* BID : 1日2回
(血液がん)
成功確度を高めるため、非臨床試験の結果から有効性が期待される血液がん患者の登録も可能となるようにプロトコールを変更し、2024年8月にこれらの患者を対象とした用量漸増パートを開始しました。本パートでは、低用量群から固形がんで決定された用量拡大パートの用量群まで患者をエントリーし、高い安全性と忍容性を確認し、現在までに最後の患者が治験を終了しました。今後、本パートで得られたデータの解析を進めてまいります。
<非臨床研究>
また、非臨床研究において、monzosertib(AS-0141)と急性骨髄性白血病(AML)治療薬であるDNAメチル基転移酵素(DNMT)阻害薬及びB細胞リンパ腫因子-2(BCL-2)阻害薬との3剤併用により優れた抗腫瘍効果が得られることが確認されました。この成果は、2025年4月に開催されたアメリカ癌学会年次総会(American Association for Cancer Research Annual Meeting)において発表されています。
<フェーズ1b試験(医師主導治験)>
フェーズ1試験及び非臨床試験の知見を踏まえ、日本国内で実施している血液がんを対象としたフェーズ1試験(単剤)においては、用量拡大パートへの移行は行わず、急性骨髄性白血病(AML)の治療薬としてより効果が期待される3剤併用のフェーズ1b試験(医師主導治験)を計画しています。本フェーズ1b試験は、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、白血病科のDr. Abhishek Maitiを責任医師とする医師主導治験(IIT)として実施することを目指しており、現在、Clinical Trial Agreement(CTA)の締結並びに試験開始に向けた準備を進めています。
ギリアド社に導出した創薬プログラム(DGKα阻害剤)
2019年6月に、米国のギリアド社と、当社が創製したDGKα阻害剤の創薬プログラムの開発・商業化にかかる全世界における独占的な権利を供与するライセンス契約を締結しています。本契約の対象には、本創薬プログラムから創出されるすべての化合物が含まれます。
本ライセンス契約に基づき、ギリアド社は本創薬プログラムからGS-9911を見出し、2023年12月に固形がん患者を対象としたフェーズ1試験を開始しましたが、2025年8月に、ギリアド社におけるポートフォリオの優先付けに基づく決定により、当該フェーズ1試験への新規患者登録が中止されました。
一方で、本ライセンス契約は、引き続き有効に存続しており、本プロジェクトチームが同プログラムの研究開発を引き続き主導しているとの連絡を受けております。
なお、本ライセンス契約においては、契約一時金20百万ドルのほか、開発状況や上市などの進捗に応じて最大で450百万ドル(約675億円、1ドル150円で換算)のマイルストーン・ペイメント、さらに、本プログラムにより開発された医薬品の上市後の売上高に応じたロイヤリティを受け取ることが定められています。
これまでに当社は、ギリアド社から契約一時金及び2回のマイルストーン・ペイメントを受領しており、合計で35百万ドル(約40億円)を受領しております。
住友ファーマとの共同研究プログラム
2018年3月に住友ファーマと共同研究契約を締結しており、精神神経疾患領域における新規キナーゼ阻害剤の創出を目指して共同研究を実施しています。本契約の共同研究期間は2025年3月27日まででしたが(2021年12月に延長)、当該研究期間において新薬候補化合物が見出されたことから、当該化合物のさらなる評価を行うため、共同研究期間を2027年3月27日までさらに延長し、共同研究を継続することで両社が合意いたしました(2025年3月)。
本共同研究により見出されたキナーゼ阻害剤のうち住友ファーマが事業化を進めると判断したもの(以下「本剤」)について、住友ファーマが臨床開発および販売を全世界で独占的に実施する権利を有します(がんを除く全疾患)。また、本契約に基づき、住友ファーマは当社に対して契約一時金および研究マイルストーンとして最大8千万円を支払うこととなっており、このうち契約一時金(50百万円)を2018年12月期第2四半期に受領しています。今後、住友ファーマが本剤の臨床開発・販売への移行を決定した場合、住友ファーマは当社に対して、開発段階、販売額目標達成に応じた開発・販売マイルストーンとして総額で最大約106億円を支払う可能性があります。さらに、販売後、住友ファーマは本剤の販売額に応じた一定のロイヤリティを当社に支払います。
以上の結果、臨床試験費用を中心に研究開発へ積極的に投資したことにより、当連結会計年度の同事業の研究開発費は1,766百万円(前連結会計年度比0.2%増)となりました。また、創薬事業の売上計上はなく(前連結会計年度は売上の計上はなし)、営業損失は2,024百万円(前連結会計年度は2,041百万円の営業損失)となりました。
②創薬支援事業
創薬支援事業では、キナーゼに関する深い専門知識を生かした技術営業を中心に、品質の高い製品・サービスの訴求や既存顧客に対するきめ細やかなフォローを継続しています。また、新規顧客の発掘、獲得に注力しており、特に多くのメガファーマ、バイオベンチャーが集積している米国において、新規顧客へのリーチを重点的に進めています。さらに、当社製品・サービスの認知度向上および高品質であることの訴求を目的として、Webサイトや各種デジタルプラットフォームを活用した情報発信や、学会への積極的な参加などの広報活動に取り組んでおります。
収益の主力であるタンパク質販売に関しては、顧客の利便性向上を目的として、タンパク質を用いた実験(アッセイ)に不可欠な試薬(アッセイバッファー、基質)の販売を開始するとともに、当社ホームページ上に、実験系の立ち上げをサポートする情報をまとめた「キナーゼアッセイサポートポータル」を9月下旬に公開しました。同ポータルは、日本語、英語に加え、著しく拡大した中国市場への訴求のため、中国語においても公開しており、今後さらに情報の拡充を図る予定です。これらの試薬及び情報を活用することで、顧客は限られたリソースの中でも、当社タンパク質製品を用いて、簡便かつ効率的に、かつ迅速に信頼性の高い実験系を構築することが可能となり、当社製品のさらなる利用促進が期待されます。また、顧客のニーズに細やかに対応するため、ビオチン化タンパク質及び変異体タンパク質の品揃えの強化に取り組んでおります。
プロファイリングサービスにおいては、当社は、信頼性の高いMobility Shift Assay System を使用した試験を受託・実施できる唯一の企業として、現在、安定的にサービスを提供しています。さらに、顧客層の拡大を目指し、顧客ニーズの高いアッセイプラットフォームを使用したプロファイリングサービスの開発に着手しています。また、近年では、プロファイリングデータを創薬プロセス上必要とするAI創薬企業からの受注が売上に貢献しており、当社では引き続き新たな受注獲得を目指しています。2025年末には新規案件を獲得しており、2026年の売上に寄与する見込みです。
また、タンパク質販売、プロファイリングサービスともに、顧客の多様なニーズに精度高く対応した特注製品の開発や特注試験の受注を積極的に行っています。特注タンパク質の開発からアッセイまで一貫したサービスの提供も行っており、キナーゼにおける高度な技術力を生かした高付加価値のサービスを提供しています。
当連結会計年度において、国内では主要客向けの大型特注タンパクの受注が寄与し、タンパク質販売は好調に推移しました。一方で、大口顧客の研究フェーズがプロファイリングの利用頻度が低い段階にあることなどの影響により、プロファイリング・サービスの需要は低調に推移しました。
米国においては、タンパク質販売はバイオベンチャーからの受注獲得により前年並みを維持し、プロファイリングサービスはAI創薬企業からの受注が引き続き好調で増収となりました。一方、NanoBRETTMサービスの需要が低迷したため、米国全体では減収となりました。
欧州では、大口顧客の研究の進展に伴い、キナーゼタンパク質を使用しないフェーズに移行したため、引き続き低調に推移しました。
その他の地域においては、主要顧客である中国CRO向けのタンパク質販売が好調に推移し、増収となりました。
以上の結果、当連結会計年度における創薬支援事業の売上高は579百万円(前連結会計年度比9.0%減)、営業損失は50百万円(前連結会計年度は34百万円の営業損失)となりました。売上高の内訳は、国内売上が169百万円(前連結会計年度比14.9%減)、北米地域は259百万円(前連結会計年度比6.2%減)、欧州地域は47百万円(前連結会計年度比22.2%減)、その他地域は102百万円(前連結会計年度比3.3%増)です。
これら創薬事業及び創薬支援事業の活動の結果、2025年12月期の連結売上高は579百万円(前連結会計年度比9.0%減)となりました。地域別の売上は、連結ベースで国内売上高が169百万円(前連結会計年度比14.9%減)、海外売上高は409百万円(前連結会計年度比6.3%減)となりました。損益面につきましては、営業損失が2,074百万円(前連結会計年度は2,076百万円の営業損失)、経常損失は2,144百万円(前連結会計年度は2,080百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は2,171百万円(前連結会計年度は2,178百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
第20期、第21期、第22期及び第23期のセグメントごとの売上、研究開発費及び営業損益は、以下の通りです。
(単位:千円)
(2) 財政状態の状況
当社グループの連結の財政状態の概要につきましては、以下のとおりであります。
当連結会計年度末における総資産は1,229,648千円となり、前連結会計年度末と比べて1,542,466千円の減少となりました。その内訳は、現金及び預金の減少1,591,695千円等であります。
負債は920,430千円となり、前連結会計年度末と比べて623,670千円の増加となりました。その内訳は、転換社債型新株予約権付社債の増加681,250千円等であります。
純資産は309,217千円となり、前連結会計年度末と比べて2,166,137千円の減少となりました。その内訳は、親会社株主に帰属する当期純損失2,171,470千円の計上等であります。
また、自己資本比率は25.1%(前連結会計年度89.3%)となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末と比べて1,591,695千円減少し、516,789千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により減少した資金は2,159,363千円(前連結会計年度は1,374,806千円の減少)となりました。これは主に税金等調整前当期純損失2,169,619千円の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少した資金は25,009千円(前連結会計年度は13,060千円の減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出9,280千円、投資有価証券の取得による支出15,743千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により増加した資金は604,711千円(前連結会計年度は567,441千円の増加)となりました。これは主に転換社債型新株予約権付社債の発行による収入632,821千円によるものであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、キナーゼ阻害薬等を創製するための研究開発ならびにその基盤となる技術である「創薬基盤技術」を強化するための研究開発へ積極的に先行投資し、将来の飛躍的な成長を目指しております。そのための研究開発に係る費用は、創薬支援事業が生み出すキャッシュ・フロー及び創薬事業における導出契約やマイルストーン達成に基づく収入、ならびに資本市場等から調達した資金等により充当しております。
創薬事業からの収益は、導出契約の成否、導出先製薬企業等における開発の進捗、導出活動の進捗及び当社の研究開発の進捗等により影響を受け安定的ではなく、現時点においては、2本のパイプラインの臨床試験を実施中のため、研究開発費への先行投資が多額になっております。また、創薬支援事業の黒字を継続し安定的に推移してまいりましたが、前連結会計年度より業績が悪化いたしました。
しかしながら、当社グループは、中長期的な経営方針に基づき、積極的に創薬事業に先行投資を行い、研究開発を推し進めることで、当社の企業価値を高めていく方針です。そのための資金を獲得するために、創薬支援事業からの収益力を高めるとともに、当社にとって最適な資金調達方法を検討し、研究開発資金の確保に努めてまいります。
(5) 生産、受注及び販売の状況
1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. 金額は、販売価格によっております。
2. 創薬事業については、生産を行っていないため記載しておりません。
2) 商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. 金額は、仕入価格によっております。
2. 創薬事業については、商品仕入を行っていないため記載しておりません。
3) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
4) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(6) 経営方針・経営戦略または経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略 ③目標とする経営指標」に記載のとおり、創薬支援事業については、安定的に収益を獲得する基盤事業として、継続的な事業成長と収益基盤の拡大を図るため、売上高、営業利益率の改善を重要な経営指標としております。
当連結会計年度においては、タンパク質販売は前年並みで推移したものの、前年に米国及び欧州の大口顧客において研究テーマやプロジェクトが進展したことに伴い需要が減少し、一昨年と比較すると低迷いたしました。また、プロファイリングサービスおよびセルベースアッセイサービスも低迷したことから、その結果、前年に引き続き、創薬支援事業において、営業損失を計上いたしました。
(7) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成において、損益または資産の状況に影響を与える見積りの判断は、一定の会計基準の範囲内において過去の実績やその時点での入手可能な情報に基づき合理的に行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。なお、当社グループの連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
(注) *を付している専門用語については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に用語解説を設け、説明しております。
セグメント情報
(セグメント情報等)
【セグメント情報】
1 報告セグメントの概要
当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものであります。
当社グループでは、創薬基盤技術をベースに「創薬支援事業」及び「創薬事業」を展開しており、この2つの事業を報告セグメントとしております。
「創薬支援事業」では、キナーゼタンパク質の販売、アッセイ開発、プロファイリング・スクリーニングサービス等を行っております。「創薬事業」では、キナーゼ阻害薬等の研究開発を行っております。
2 報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額の算定方法
報告されている事業セグメントの会計処理の方法は、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」における記載と概ね一致しております。
報告セグメントの利益又は損失は、営業損益ベースの数値であります。
3 報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報
前連結会計年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)
(注) 1. セグメント資産の調整額1,914,837千円は、各報告セグメントに配分していない全社資産であります。その主なものは、提出会社の余資運用資産(現金及び預金)等であります。
2. セグメント損失の金額は、連結損益計算書の営業損失と一致しており差額はありません。
当連結会計年度(自 2025年1月1日 至 2025年12月31日)
(注) 1. セグメント資産の調整額528,313千円は、各報告セグメントに配分していない全社資産であります。その主なものは、提出会社の余資運用資産(現金及び預金)等であります。
2. セグメント損失の金額は、連結損益計算書の営業損失と一致しており差額はありません。
【関連情報】
前連結会計年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)
1 製品及びサービスごとの情報
2 地域ごとの情報
(1) 売上高
(注) 売上高は顧客の所在地を基礎とし、国又は地域に分類しております。
(2) 有形固定資産
連結貸借対照表の有形固定資産の金額がないため、記載を省略しております。
3 主要な顧客ごとの情報
当連結会計年度(自 2025年1月1日 至 2025年12月31日)
1 製品及びサービスごとの情報
2 地域ごとの情報
(1) 売上高
(注) 売上高は顧客の所在地を基礎とし、国又は地域に分類しております。
(2) 有形固定資産
連結貸借対照表の有形固定資産の金額がないため、記載を省略しております。
3 主要な顧客ごとの情報
【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】
前連結会計年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)
当連結会計年度(自 2025年1月1日 至 2025年12月31日)
【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】
該当事項はありません。
【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】
該当事項はありません。