事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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売上
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利益
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利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
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(単一セグメント) | - | - | -1,116 | - | - |
事業内容
3【事業の内容】
当社は、抗体に継ぐ次世代新薬として期待されているアプタマー(核酸医薬の一種)に特化して医薬品の研究開発を行うバイオベンチャーです。当社は、アプタマー創製に関する総合的な技術や知識、経験、ノウハウ等からなる創薬プラットフォームである当社独自の「RiboARTシステム」を活用して、革新的なアプタマー医薬の研究開発(「アプタマー創薬」)を行っております。
当社の企業理念は「Unmet Medical Needs(未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ)に応える」ことであり、その実現のための最重点経営目標を、「自社での臨床Proof of Concept※1の獲得に向けた開発」として、当事業年度においても様々な取り組みを進めてまいりました。
※1:臨床Proof of Concept(臨床POC):新薬の開発段階において、投与薬剤がヒトでの臨床試験において意図した薬効と安全性を有することが示されること。
(1)当事業年度の主要なトピックス
①umedaptanib pegol(抗FGF2アプタマー、RBM-007の国際一般名)による臨床開発の狙い
当社では、自社で創製したumedaptanib pegol(FGF2に結合し、その作用を阻害するアプタマー)を、自社での臨床開発のテーマに選び、「滲出型加齢黄斑変性(wet Age-related Macular Degeneration、wet AMD)」と「軟骨無形成症(Achondroplasia、ACH)」の治療薬としての開発を進めております。
②開発状況、及び既存治療法との比較
(i)滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)
umedaptanib pegolの複数回投与による臨床POC確認を目的とした第2相臨床試験(試験略称名:TOFU試験)を2019年12月~2021年12月にかけて米国で実施いたしました(被験者86名)。TOFU試験は、標準治療の抗VEGF治療歴のあるwet AMD患者を対象に、ⓐumedaptanib pegolの硝子体内注射の単剤投与群、ⓑ既存の抗VEGF薬であるaflibercept(商品名アイリーアⓇ)とumedaptanib pegolの硝子体内注射による併用投与群、及びaflibercept硝子体内注射の単剤投与群の3群間で、umedaptanib pegolの有効性及び安全性をafliberceptと比較評価する、無作為化二重盲検試験でした。
また、TOFU試験の進捗に基づき、長期投与に伴う本薬剤の有効性と安全性、及び瘢痕形成を含む網膜の構造異常に対する効果を評価する目的で、umedaptanib pegolを単剤で投与するオープン試験としてのTOFU試験の延長試験(試験略称名:RAMEN試験)を行いました。RAMEN試験では、TOFU試験を完了した被験者に対して、追加のumedaptanib pegolの硝子体内注射を1ヶ月間隔で計4回行いました(被験者22名)。
さらに、治療歴のないwet AMD患者でのumedaptanib pegol単独治療の有効性及び安全性を評価することを目的に、米国で医師主導治験(試験略称名:TEMPURA試験)を実施いたしました(被験者5名)。
これらの結果は、2023年11月及び12月に英国王立眼科学会誌Eyeに2報の論文として掲載されました※2,3。
その要約は以下のとおりです。
[論文要点]
・いずれの試験においても、umedaptanib pegolによる安全性に関する問題は発生しなかった。
・治療歴のないwet AMD患者においては、umedaptanib pegolの投与により、劇的な治癒例を含め、視力の網膜厚の改善が確認された(TEMPURA試験)。
・抗VEGF治療歴が長いwet AMD患者に対しては、umedaptanib pegol単剤投与、及びumedaptanib pegolとafliberceptの併用投与において、aflibercept単剤投与を上回る臨床有効性は観察されなかったものの、病気の進行抑制が確認された(TOFU試験)。
・抗VEGF治療歴が短いwet AMD患者に対しては、umedaptanib pegolの効果はafliberceptに対して非劣勢であった(TOFU試験)。
・抗VEGF薬による標準治療を受けた患者を作用機序の異なるumedaptanib pegol治療に切り替えると、若干の視力低下が確認された(RAMEN試験)。
・すべての試験を通じ、umedaptanib pegolはすでに形成された瘢痕(線維化)を除去する作用はなかったものの、瘢痕形成を抑制する効果が確認された。
[今後の開発方針]
今般、umedaptanib pegolの臨床POC獲得が確認されたと同時に、umedaptanib pegolは抗VEGF薬に先立つ処方が推奨される”first-line”治療薬となる可能性が示唆されました。現在標準治療となっている抗VEGF薬には、瘢痕化抑制作用がないため、既存療法の大きなUnmetニーズになっています。そのため、今後、umedaptanib pegolを用いた未治療のwet AMD患者に対する臨床試験において瘢痕化抑制効果を証明することができれば、既存療法との重要な差別化ポイントとなり、”first-line”の新薬の実現に近づくものと考えます。そのため、他企業との提携等を含めて検討してまいります。
※2:Pereira, DS, Akita, K, Bhisitkul, RB, Nishihata T, Ali Y, Nakamura E, Nakamura Y: Safety and tolerability of intravitreal umedaptanib pegol (anti-FGF2) for neovascular age-related macular degeneration (nAMD): a phase 1, open label study. Eye, 2024 Apr;38(6):1149-1154. DOI: 10.1038/s41433-023-02849-6. Epub 2023 Dec 1.
※3:Pereira, DS, Maturi, RK, Akita K, Mahesh V, Bhisitkul RB, Nishihata T, Sakota E, Ali Y, Nakamura E, Bezwada P, Nakamura Y: Clinical proof of concept for anti-FGF2 therapy in exudative age-related macular degeneration (nAMD): phase 2 trials in treatment-naïve and anti-VEGF pretreated patients.Eye, 2024 Apr;38(6):1140-1148. doi: 10.1038/s41433-023-02848-7.Epub 2023 Nov 30.
(ⅱ)軟骨無形成症(ACH)
・臨床試験
ACHに関するプロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成(2015年度から合計6年間)を受け、2020年7月~2021年5月にかけて、国内の1治験施設において第1相臨床試験を実施いたしました。この結果を受け、2021年度から3年間は、AMEDの希少疾患用医薬品指定前実用化支援事業として、ACHの小児患者における、身長の伸びを含む臨床的基礎データの取得と前期第2相臨床試験の被験者選定を目的とした前期第2相観察試験、及びACHの小児患者でのumedaptanib pegolの有効性と安全性を調べる前期第2相臨床試験と、これに引き続き実施する前期第2相長期投与試験の3つの治験計画を進めております。現在、東京、岡山及び関西地区の8施設において前期第2相観察試験が開始され、さらにそれに続く前期第2相臨床試験、前期第2相長期投与試験に移行しております。
・ACHの既存治療法と課題
ACHは四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、厚生労働省から難病指定を受けています。umedaptanib pegolは疾患モデルマウスを利用した実験で、体長の短縮を約50%回復する効果を示しました。さらに、軟骨細胞への分化誘導が欠損していることが知られているACH患者由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)について、umedaptanib pegol存在下で、その分化誘導が回復することも確認しました(非臨床POC獲得)。本邦ではこれまで治療薬として成長ホルモンが使用されてきましたが、その効果は十分とは言えず、骨延長術(足の骨を切断して引き離した状態で固定し、骨の形成を促す)といった非常に厳しい治療が幼い子供に施されることもあり、効果の高い新薬が待ち望まれていました。また、2022年6月に本邦でもACH治療薬としてBIOMARIN社のボックスゾゴⓇの製造販売が承認されましたが、ボックスゾゴⓇは毎日の投与が必要となっております。そのため、患者への投与間隔を1,2週間と長くとれる、当社のumedaptanib pegolへの期待は引き続き高いものと考えております。
なお、umedaptanib pegolを用いた上記動物モデル実験や、iPS細胞を用いた試験の結果については、2021年5月に、米国科学誌Science Translational Medicine電子版に論文として掲載されました※4。
※4:Kimura T, Bosakova M, Nonaka Y, Hruba E, Yasuda K, Futakawa S, Kubota T, Fafilek B, Gregor T, Abraham SP, Gomoklova R, Belaskova S, Pesl M, Csukasi F, Duran I, Fujiwara M, Kavkova M, Zikmund T, Kaiser J, Buchtova M, Krakow D, Nakamura Y, Ozono K, Krejci P. RNA aptamer restores defective bone growth in FGFR3-related skeletal dysplasia. Sci. Transl. Med., 13, eaba4226 (2021)
自社での第2相試験の実施により臨床POCが獲得されれば、ACHに対する新規治療剤の提供に至る第一歩になるとともに、新薬候補品としてのumedaptanib pegolの価値が高まり、ライセンス収益の拡大及び将来に向けた発展に寄与するものと考えております。同時に、wet AMDのような硝子体という局所投与のみならず、アプタマー医薬品として、全身投与による疾患治療の世界初の事例となることで、今後のアプタマー医薬品の開発に大きく弾みがつくことが期待されます。なお、これまでACHの小児患者へのumedaptanib pegolの投与において安全性等の問題は発生しておりません。
(ⅲ)増殖性硝子体網膜症(PVR)
PVRの疾患内容や当社の取り組みについては、後述「umedaptanib pegol以外の臨床開発優先度の高いパイプライン」RBM-006(抗Autotaxin(オートタキシン)アプタマー、増殖性硝子体網膜症(PVR)等の網膜疾患)にて記述の通りですが、umedaptanib pegolの適応疾患拡大を目指して、日本大学とPVRの薬物療法の開発に関する共同研究も2023年2月より実施しております。
③umedaptanib pegol以外の臨床開発優先度の高い自社パイプライン
当社は、既存パイプラインを継続的、重層的に拡大し、中長期的に成長するために、特に優れた薬効が確認されているRBM-011及びRBM-006を、umedaptanib pegolに次ぐ重点開発プログラムと位置づけております。
また、アプタマーに適した疾患領域である網膜疾患に注力するため、RBM-003、RBM-010及びRBM-009に関しては、優先順位を変更し、以下にパイプラインの優先順位順に概要をまとめております。
(i)RBM-011(抗IL-21(インターロイキン21)アプタマー、肺動脈性肺高血圧症)
RBM-011が対象とする肺動脈性肺高血圧症は、難病に指定されている病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、高血圧をきたして全身への血液や酸素の供給に障害が生じ、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。プロスタグランジンI2誘導体製剤などの既存治療薬が十分な効果を発揮しない患者の予後は依然として極めて悪い状態です。これらの既存治療薬は、いずれも血管を拡張させる作用を持つものであり、血管壁の肥厚を改善する作用を持つ薬はなく、その開発が強く望まれております。
2017年度から3年間は、AMEDの難治性疾患実用化研究事業の一環として、また2020年度からの3年間は、AMEDの治験準備(ステップ1)研究として助成を受け、肺動脈性肺高血圧症の国内での専門医療機関である国立研究開発法人国立循環器病研究センター(国循)との共同研究を進めてまいりました。当該共同研究において、抗IL-21アプタマーが肺動脈性肺高血圧症動物モデルにおいて、肺動脈壁の肥厚を顕著に抑制することが明らかにされました。
また、国循との共同研究と並行して、原薬合成を完了し、PMDAと協議の上、第1相試験のための毒性試験を2023年6月に完了しております。
(ⅱ)RBM-006(抗Autotaxin(オートタキシン)アプタマー、増殖性硝子体網膜症(PVR)等の網膜疾患)
RBM-006が対象とする増殖性硝子体網膜症は、網膜剥離や糖尿病網膜症の放置、網膜剥離の手術によって併発する網膜疾患です。多種の細胞が網膜表面や網膜内、硝子体腔内で増殖膜を形成し、当該増殖膜が収縮することによって網膜に皺壁(しゅうへき)形成や牽引性網膜剥離が生じ、重篤な視力障害や失明に至ります。硝子体手術などの治療によっても重篤な視力障害や失明に至る事が多く、また現在のところ有効な医薬品は存在しません。
当社は、日本大学医学部視覚科学分野・長岡泰司教授(現 旭川医科大学教授)との共同研究において、ブタPVR モデルにおけるRBM-006の効果を検討した結果、当該アプタマーが網膜細胞の増殖を抑制すること、及び当該モデ ルにおける増殖膜の形成を抑制し網膜剥離を抑制する効果があることが明らかになり、その成果が学術誌 International Journal of Molecular SciencesにONLINE掲載されました※5。
Autotaxinは脂質メディエーターであるLPA(リゾホスファチジン酸)の合成酵素であり、緑内障等の網膜疾患や特発性肺線維症を始めとする線維化や炎症に由来する複数の疾患においてLPAやAutotaxinの亢進が見られ、新規治療薬の標的として注目されております。
本研究成果が網膜疾患に対して新たな薬物治療の道を切り開くことを期待しております。
※5:Hanazaki H, Yokota H, Yamagami S, Nakamura Y, Nagaoka T: The effect of anti-autotaxin aptamers on the development of proliferative vitreoretinopathy. Int. J. Mol. Sci. 24, 15926 (2023).
④その他のプロジェクト並びに自社創薬に付随する事業
(i)RBM-003(抗(Chymase)キマーゼアプタマー、心不全等)
心筋梗塞直後に、Chymase(キマーゼ)は肥満細胞と心筋細胞等の組織損傷部位から分泌され、アンジオテンシンⅡ等の活性化をとおして、心筋に悪影響を及ぼすことが知られております。ハムスターを用いた冠動脈結紮による心筋梗塞急性期モデルにおいて、抗キマーゼアプタマーであるRBM-003の投与は、梗塞後のキマーゼ陽性肥満細胞の集積及びキマーゼ活性を抑制し、顕著な心機能改善効果を示しました。※6さらに、RBM-003は、冠動脈結紮の前投与のみならず、後投与においても顕著な心機能改善効果を示し、冠動脈結紮を行った実験動物(ハムスター)の生存率を著しく改善いたしました。RBM-003は他のキマーゼ阻害剤と比べて非常に強い酵素阻害活性を持つことが確認されており、急性心不全に対する注射薬の開発を目指しております。
※6:Jin D, Takai S, Nonaka Y, Yamazaki S, Fujiwara M, Nakamura Y. A chymase inhibitory RNA aptamer improves cardiac function and survival after myocardial infarction. Mol. Ther. Nucl. Acids,14,41-51(2019)
(ⅱ)RBM-010(抗ADAMTS5アプタマー、変形性関節症等)
RBM-010は、当社と大正製薬株式会社との共同研究で創製されたアプタマー製品で、変形性関節症の増悪因子の一つであるADAMTS5(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs 5)の働きを抑制する作用があります。変形性関節症は、種々の原因により、膝や足の付け根、肘、肩等の関節に痛みや腫れ等の症状が生じ、その後関節の変形をきたす病気です。現在、治療法としては痛みや腫れを和らげる薬の服用や関節置換術などの手術しかなく、寛解させる薬はありません。本邦には、変形性関節症を有している人が、2,500万人以上、また、世界では、変形性関節症の患者が約2億4,000万人以上と推定されており、今後高齢化に伴いさらに増加が予測されております。
RBM-010は、関節での軟骨成分の分解を促進しているADAMTS5を抑制することにより、変形性関節症の症状進行を遅らせることが期待でき、現在、局所投与による徐放性製剤の開発を目指しております。
(ⅲ)RBM-009(抗ST2(IL-33 receptor)アプタマー、重症喘息)
RBM-009が対象とする重症喘息は、頻繁な息切れや呼吸困難によって日常生活や睡眠が妨害され、生活の質の低下を余儀なくされる疾患です。喘息の治療には、吸入ステロイドや気管支拡張薬に加え、抗体医薬品(抗IgE抗体、抗IL-5/5R抗体、抗IL-4/13R抗体)や経口ステロイド薬が使用されますが、重症喘息患者の中にはこれらの薬剤でもコントロールできない患者が一定数存在しております。
ST2の刺激分子であるIL-33は炎症カスケードの上流因子であり、様々な免疫細胞に発現するST2を刺激して炎症を惹起します。最近では免疫細胞の一つであるILC2が、コントロール不良の一つの要因であるステロイド抵抗性に寄与しており、その抵抗制メカニズムにST2が関与することが示唆されております。当社ではST2をブロックすることにより複数の機序により惹起される炎症を抑え、既存薬が良好な反応を示さない喘息も治療できる可能性があると考えております。
(ⅳ)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬アプタマーの開発
COVID-19の克服のためには、既に使用されているワクチンに加えて、治療薬の開発が不可欠であると考え、当社はCOVID-19に対するアプタマー創薬研究を継続してきましたが、ワクチンや治療薬を用いた対処法が充足しつつある状況に鑑み、現時点で治療薬開発のためにさらなるリソースを投入することはリスクを伴うと判断し、開発の優先度を変更いたしました。
当社では、AI(人工知能)を用いたアプタマー探索ツールRaptGenを活用することにより、新規の抗SARS-Cov-2アプタマーの創出に成功いたしました。生化学的な統合解析により、野生型ウイルスのスパイクタンパク質のみではなく、Omicron株を始めとする様々なバリアントや、SARS-CovやMERS-Cov等のコロナウイルスに対しても結合活性を有することが明らかになりました。
その結果をとりまとめた論文が2024年3月専門学術誌Biochemistryの電子版に掲載されました。※7
また、現在当社で進めておりますドラッグデリバリーシステム(DDS)の一環として、当アプタマーに殺傷性薬剤を統合し、スパイクタンパク質を標的とした直接あるいは間接的に無力化する技術開発が可能ではないかと考えており、今後、新たなコロナウイルス感染症によるパンデミックが生じた際には、本研究成果を生かしてより迅速な医薬品開発につなげることができると考えております。
※7:Adachi T,Nakamura S,Michishita A,Kawahara D,Yamamoto M,Hamada M,Nakamura Y:RaptGen-Assisted Generation of an RNA/DNA Hybrid Aptamer against SARS-Cov-2 Spike Protein. Biochemistry 63:906-912 (2024).
(ⅴ)自己免疫疾患に対する治療薬の創製
多くの自己免疫疾患において自己抗体の関与が示唆されており、当社は自己抗体の産生に重要な役割を果たす生体シグナル分子を阻害するアプタマーを非臨床開発ステージのパイプラインに所有しております。
これらを活用することにより自己抗体が原因となる自己免疫疾患に対する効果的な治療薬を創製することが出来ると考えており、国立大学法人北海道大学大学院保健科学研究院とANCA関連血管炎に対する薬理作用を検討するための共同研究契約を締結いたしました。
本共同研究において、自己抗体産生やそれに伴う炎症反応を抑制することを示すことができれば、ANCA関連血管炎のUnmet Medical Needsを満たす薬剤の開発につながるとともに、他の自己免疫疾患に対する適応拡大も期待されます。
(ⅵ)AIアプタマープロジェクト:
アプタマー医薬品の汎用性をさらに活かすため、国立研究開発法人科学技術振興機構から委託されているコンピューター科学を応用した技術開発(以下、「JST委託事業」といいます。)等を継続して進めております。2018年度から開始されたJST委託事業において、当社は早稲田大学と共同し、バイオインフォマティクスを駆使したアプタマー探索技術(RaptRanker)を開発いたしました※8。さらに、2021年4月から3年間の事業として、「AIアプタマー創薬プロジェクト」がJSTに採択され、当社は早稲田大学と共同で、RNAアプタマーの創薬のプロセスを、深層学習などの人工知能技術を活用することで、創薬期間の短縮及び創薬成功確率の向上を実現させることを目指し、研究を進めております。この研究におきまして、変分オートエンコーダを応用した革新的な配列生成技術であるRaptGenを新たに開発いたしました。SELEXで得られた特定の標的に対する多数の標的結合アプタマーの配列を、RaptGenを用いて解析することにより、もともとのSELEXデータに含まれていない、前記標的に強く結合する新規のアプタマー配列の生成も可能となりました。RaptGenについては、2022年6月3日にNature Computational Scienceに掲載されております※9。また、JST委託事業では課題事後評価結果に基づき、研究機関延長及び研究費の追加によって戦略目標達成に大きく貢献する研究成果が期待できる課題に対し1年間の追加支援を実施しており、「AIアプタマー創薬プロジェクト」は、これまでAI(人工知能)を用いたアプタマー探索ツールRaptGenの開発等、革新的な成果を挙げていることから、他領域も含む課題の中から追加支援に採択されました。
さらに、2023年度から2025年度の予定で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「量子・AIハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」において、当社と産業技術総合研究所及び早稲田大学を実施予定先とする研究課題「量子・AI次世代創薬」が採択されました。本研究課題では、RNAアプタマーの最適化を題材として、量子計算技術と人工知能を組み合わせた”量子・AIハイブリッド技術”の活用により、従来技術では達成困難な医薬品創製プラットフォームの確立を目指します。
※8:Ishida R, Adachi T, Yokota A, Yoshihara H, Aoki K, Nakamura Y, Hamada M. RaptRanker: in silico RNA aptamer selection from HT-SELEX experiment based on local sequence and structure information. Nucl. Acids. Res., 48, e82 (2020)
※9:Iwano N, Adachi T, Aoki K, Nakamura Y, Hamada M. : Generative aptamer discovery using RaptGen. Nat. Comput. Sci., 2, 378–386 (2022)
(ⅶ)DDSアプタマープロジェクト:
当社では、RaptRanker及びRaptGenを含むRiboARTシステムをさらに発展させると共に、現在、RiboARTシステムを用いて、ドラッグデリバリーシステム(DDS)用のアプタマー開発に取り組んでおります。DDSとは、体内における薬剤の分布を制御することで、薬剤の効果を最大に高める一方で、薬剤の投与回数及び副作用を軽減するための、薬剤の体内動態を制御する技術です。近年の医薬品開発を取り巻く環境は著しい変化を遂げており、ブロックバスター創出のための疾患発症の標的分子の枯渇や、Unmet Medical Needsの高まりなどを理由に、多数のモダリティ(治療手段)が生まれてきております。特に核酸医薬を中心として、さまざまな生体内バリアを突破させ、標的部位(臓器、組織、細胞等)へと効率的に送り込むにはDDSが必要不可欠となります。
アプタマーは化学合成品であり、抗体、低分子化合物、及びASO、siRNA、mRNAなどの核酸医薬等に化学的に結合させることが可能です。DDSとして利用可能なアプタマーを取得するための期間は1年から2年単位と短いため、アプタマー取得後は、迅速に特許出願を行うと共に、大手製薬企業を含む様々な企業に提供することで、基礎段階より早期に収益をあげていきたいと考えております。
DDSアプタマープロジェクトの一環として、当社の所有するアプタマーの光免疫療法への応用可能性を検討するために学校法人慈恵大学との共同研究契約を2023年9月に締結いたしました。光免疫療法は、標的特異的な薬剤送達と腫瘍に限局した光照射を組み合わせることで、正常組織へのダメージを最小限に抑えた、患者負担の少ない治療法として、がん領域を中心に注目を集めております。共同研究先である学校法人慈恵大学 光永眞人講師らのグループは光免疫療法に関する高い研究実績があり、細胞試験系、動物実験系のノウハウを保有しております。
当社では、膜タンパク質を認識する複数のアプタマーを開発しており、本共同研究においてこれらアプタマーの光免疫療法への応用可能性を検討しております。
(ⅷ)製剤化技術開発
次世代型アプタマー医薬品に関する技術開発を目的として、ポリエチレングリコール(以下「PEG」といいます。)の代替技術を研究開発しております。PEGは粘性が高く、過酸化物を生成する等、科学的性質に課題があることがわかっており、この課題を解決するため、味の素株式会社との共同研究契約を2023年10月に締結いたしました。
本共同研究では、当社独自の核酸アプタマー化合物作製及び測定技術と味の素株式会社が有する抗体-薬物複合体製造技術AJICAPⓇを組み合わせ、アプタマーの体内動態制御技術の確立を目指します。
さらに、当社は、アプタマーとポリエチルオキサゾリン(以下、「PEOZ」といいます。)とのコンジュゲートが優れた体内動態を示し、PEGの代替化合物となることを見出しました。PEOZはPEGに比べて低粘性で、過酸化物等が生じず、化合物の品質管理が容易であることが知られております。またPEOZは、市販の材料から容易に合成可能であり、将来的に低コストで供給できることが期待されます。当社の検討において、アプタマーとPEOZとのコンジュゲートを作成することにより、現在汎用しているPEGを上回る血中半減期延長効果を示すことが明らかになったため、特許出願するに至りました。
⑤共同研究事業
三菱商事ライフサイエンス株式会社(旧:ビタミンC60バイオリサーチ株式会社)との共同研究開発契約に基づき、化粧品原料候補の創製・開発に関する共同研究を実施し、有望なアプタマーの創製に成功しており、先方にてアプタマー評価を継続して行っております。
(2)当社のビジネスモデルと収益計上の時期
①当社のビジネスモデル
当社の事業は、以下の自社創薬と共同研究の2事業より構成されております。創薬探索から臨床開発までをビジネスとして進めております。
(i)自社開発又は大学等研究機関との共同研究開発(自社創薬事業)
自社又は大学等研究機関と共同研究で医薬候補となるアプタマーを開発し、その成果を製薬企業にライセンス・アウトし、ライセンス対価(基本的に、契約締結時に受け取る契約一時金、開発進行に伴うマイルストーン収入、及び製品上市後の売上に応じたロイヤルティー)を得る事業です。
(ii)製薬企業との共同研究(共同研究事業)
製薬企業とのアプタマー医薬の共同研究開発を実施し、当社が分担する業務に応じて提携先から支払われる研究費を収入として得る事業です。さらに、共同研究では、一定の開発段階に達した時点で提携先の製薬企業に当社分の権利をライセンス・アウトし、相応の契約一時金やマイルストーン収入等を得てまいります。
上記二つの事業をバランスよく実施することで、以下の成果あるいは効果が期待できます。
1) 共同研究を実施することにより、自社創薬のビジネスモデルに伴うライセンス・アウトの不確実性による
収益の不安定化というリスクを低減できる
2) 共同研究先の新薬開発のノウハウ、経験を知得できる
3) 共同研究が順調に進む場合、ライセンス・アウトの実現可能性が高い
4) POCを取得した自社開発品のライセンス・アウトにより大きな収益を期待できる
5) 事業を全体として拡大できる
当社の事業の系統図は以下のとおりです。
<事業の系統図>
※:対価収入のうちライセンス・アウトの対価には、当社が製薬企業より受け取る①契約締結時の一時金、②開発の進捗に応じたマイルストーン収入、③製品発売後の売上に対するロイヤルティーがあります。
当社は、上記の自社創薬事業に付随する事業として、アプタマー創薬をより効率的に行う為のプラットフォーム技術開発も並行して行っております。
②事業活動に伴う収益計上の時期
当社のビジネスモデルにおいて、自社創薬及び共同研究とも収益を計上できるのは、ライセンス契約や共同研究契約の締結後です。以下の図は、その場合の収益計上のタイミングを示しています。
<自社創薬及び共同研究における一般的な収益計上のタイミング>
注:上記の図は、一般的なケースとして当社が想定している事業収益計上のタイミングを表すものです。
個別の契約により受取回数等が異なる場合があります。
(3)事業戦略
当社は、アプタマー創薬に関する当社の競争優位性や強みを梃子として、以下の基本ポリシーのもとで、研究開発を推進しております。
① 自社創薬におけるパイプラインの一層の拡充と進展を図り、研究成果をいち早く知財化して競争優位性を維持、強化しライセンス・アウトを目指す。
② 共同研究を積極的に展開し、早期の収益確保及びライセンス・アウトを目指す。
③ アプタマー医薬品としての特性を最大限に生かしうる開発品や疾患については、過大な経済的負担を避けつつ、付加価値を高める観点から臨床POC取得のための臨床試験を実施し、収益の最大化を図る。
④ アプタマー創薬における当社の「RiboARTシステム」の更なる向上、発展を図るべく、次のアプタマーの創製
にチャレンジする。
1) アゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)
2) 細胞内への取り込み可能な(DDS作用を有する)アプタマー
3) 細胞膜複数回貫通型のタンパク質(GPCR受容体等)と結合するアプタマー
4) 次世代シークエンサーとコンピューター科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発
5) 脳関門通過技術の開発と神経疾患治療への応用
⑤ 大学や研究機関との緊密な連携を図り、大学や研究機関での基礎研究成果を医薬品開発に応用するトランスレーショナル・リサーチを推進することにより、アカデミアにおける研究成果をいち早くアプタマー創薬に活かす。
(4)医薬品市場におけるアプタマー医薬
①アプタマー医薬を含む核酸医薬の市場
医薬品は、その素材から、1)低分子、2)ワクチン、3)生物製剤、4)核酸、5)細胞、6)遺伝子に分類されますが、この中で最も新しく、技術革新が進展しているのが、生物製剤の中の抗体医薬と、核酸を成分とする核酸医薬、並びに細胞を利用する再生医療や遺伝子治療です。
そのような中、アプタマーを含む核酸医薬は、作用メカニズム及び投与方法が類似していることから、現在巨大な市場を形成している抗体医薬に続く次世代の医薬品として注目されており、2023年の核酸医薬の全世界の市場規模は124億8,673万USDと予想されており、抗体医薬の全世界の市場規模は1,279億9,000万USD(2022年推定)に比べてまだまだ小さな額ですが、抗体医薬との比較優位性から2029年には、155億3,836万USD規模に成長すると想定されています。
②世界におけるアプタマー医薬品の臨床開発動向
MacugenⓇは世界初のwet AMD治療薬として承認されましたが、その後VEGFを標的とする抗体や可溶性のデコイ(おとり)受容体を利用した、さらに有効な医薬品(LucentisⓇ、EyleaⓇ、AvastinⓇ等)が開発され、現在、MacugenⓇはほとんど使用されなくなりました。2004年のMacugenⓇの成功は、アプタマー医薬の開発を鼓舞する意味も大きく、その後、複数のアプタマー医薬候補品が臨床試験に進みました。その中でも注目された二つのアプタマー(REG1、FovistaⓇ)の治験が最終の第3相試験で成功せず、アプタマー創薬に関してネガティブな印象を残し、その後、アプタマー医薬品の開発は世界的に停滞しているようにもみえました。しかし、ようやく最近、補体C5に対するアプタマー(ARC1905: IZERVAYTM)が萎縮型加齢黄斑変性(dry AMD)に有効であることが、第3相試験で証明され、2023年8月米国FDAは製造を承認しました。IZERVAYTMを開発したIVERIC Bio社は、アステラス製薬に総額約8,000億円で買収されております。
現在、当社のumedaptanib pegolを含めて9種類のアプタマーが臨床試験の過程にあり、アプタマー医薬品開発の機運が再び盛り上がっております。これらの動向において、MacugenⓇやIZERVAYTM、そしてumedaptanib pegolがいずれも網膜疾患に対して奏功したことから、アプタマーは網膜疾患にフィットするモダリティ(治療手段)であることが示唆されました※10(下表参照)。
※10:中村義一.アプタマー:加齢黄斑変性への適応. Clinical Neuroscience Vol. 41 (No.5) 630-634 (2023)
アプタマー臨床開発パイプライン
:網膜疾患を対象とするアプタマー
核酸医薬には、アプタマーの他に、アンチセンス、デコイ、siRNA、microRNA、mRNAなどの種類があり、現在の開発の主流はアンチセンスですが、依然として幾つかの課題(化学修飾、DDS及び製造と品質管理)が指摘されています。
今後、核酸医薬の中軸を担うのは、化学修飾が容易で、通常、抗体と同様に細胞外で機能するため、DDS技術が不要なアプタマー医薬であり、そのアプタマー医薬の中でも、当社のumedaptanib pegolプログラムが世界の最先端に位置していると当社は考えております。アプタマーは、標的となるタンパク質分子への結合という点で似たような作用を持つ抗体医薬と比較して、その結合活性が非常に高いことや、様々な化学修飾によって活性や体内動態等を改善するという優位点があります。なお、抗体医薬との比較は、次の項を参照下さい。
③アプタマー医薬と抗体医薬の比較
アプタマー医薬は分子標的薬として、抗体を成分とする抗体医薬と、作用メカニズム及び投与方法が類似しています。従って、アプタマー医薬の最大の競合品は抗体医薬になります。アプタマー医薬市場の成否は、抗体医薬との比較のなかで、その違いを明確にし、どう差別化するかにかかっています。抗体医薬は、マウス等で作製した抗体をヒトで異物として排除されにくいように加工した後、これを産生する特殊な細胞を大量に培養し、精製して医薬品原料にします。その起源が生物試料であることから生物製剤に分類されます。これに対し、アプタマー医薬はその成分であるRNAを化学合成して製造することから合成医薬品に分類されます。
以下は抗体医薬と比較したアプタマー医薬の特徴ですが、アプタマー医薬は、科学技術の進歩とともにその長所が認識され、抗体に続く次世代の新薬の核として開発が進むものと当社は期待しております。
<アプタマー医薬と抗体医薬の比較> (当社作成)
項目 |
アプタマー医薬 |
抗体医薬 |
標的タンパク質に対する結合力 |
抗体の1,000倍は可能 |
強い |
創薬ターゲットの種類 |
極めて多様 |
抗原タンパクに限定 |
製造方法 |
化学合成法 |
細胞培養法 |
コスト(製造コスト低減の容易さ) |
比較的高価 (製造コスト低減の可能性あり) |
比較的高価 (製造コストの低減は難しい) |
抗原性/免疫排除 |
起きにくい |
起きる |
製剤の可逆性・安定性 |
高い |
低い |
体内動態(長時間作用) |
苦手、限界あり |
良い |
中和 |
可能(アンチセンスの利用) |
不可能 |
短期作用性 |
得意 |
困難 |
加工・化学修飾 |
容易 |
困難 |
(5)知財戦略
創薬プラットフォーム系バイオベンチャーである当社にとって、開発する製品が特許により保護されていることが、自社開発のみならず他社とのライセンスや共同研究を実現する上で不可欠です。
当社の知財戦略は、開発する製品に関するものと、開発技術に関するものとに峻別し、以下のような異なる対応をしております。
①自社創薬品目及び共同研究品目に対する知財戦略
RNAを成分とするアプタマーは配列の違いによって、同一標的分子(疾患関連タンパク質)についても、既存特許に対して抵触しない複数の物質特許が成立する可能性があります。よってプロジェクトごとの開発品を含む物質特許の取得を前提としています。
当社は標的分子との結合力が強くかつ当該標的分子の生理作用に対する阻害活性の高いアプタマーだけでなく、その周辺の化合物もカバーする特許権の成立を目指します。具体的には、無数にある核酸配列の中から結合力及び阻害活性の高いアプタマーに共通する構造や配列を探索し、その共通構造・共通配列を特許化することで、広い権利を押さえることを基本戦略としています。さらに非臨床試験・臨床試験の経過により得られるデータに基づき、製剤特許や用途特許の出願を実施し、実質的な特許期間を延ばす戦略を採っています。
一方共同研究品目については、まずは提携先との共同出願となるのが通例ですが、ライセンス・アウトに伴い、開発や事業化についての独占的実施権を提携先に付与しても、当該特許に対する自社権利は維持する(共有とする)方針を基本といたします。
なお特許出願国については、日米欧を中心として、中国、韓国、インド等の医薬品市場の規模が大きく、又は将来の市場拡大が見込まれる国や地域をカバーすることを方針としております。
②「RiboARTシステム」に対する知財戦略
「RiboARTシステム」のコアとなる技術(アプタマーの取得、短鎖化や化学修飾等の最適化)の中には、特許化が可能な技術も含まれていると当社は考えておりますが、特許化は技術公開という代償を伴い、当社の特許化された技術を使用して他社がアプタマーを取得したとしても、それが当社の特許技術を使用したことを立証することは困難です。
従って、当社では、原則としてアプタマー医薬品候補物については、物質特許を取得する方針でありますが、「RiboARTシステム」を構築する技術自体は、特許化による競争優位性が確保されるものを除きノウハウあるいは営業秘密として秘匿し、優位性の確保に努めます。なお、当社はノウハウあるいは営業秘密が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。
③主要な特許の状況
当社が保有者となる、当社の研究開発に関する主要な特許の状況は以下のとおりであります。
<自社創薬品目に関する特許>
対象パイプライン |
発明の名称 |
国際出願番号 (国内特許番号) |
保有者 |
登録状況 |
RBM-003 |
キマーゼに対するアプタマー及びその使用 |
PCT/JP2018/044132 (特許第7264487号) |
当社 |
欧中韓等に移行済、日米で特許・維持 |
RBM-004 |
NGFに対するアプタマー及びその使用 |
PCT/JP2012/75252
|
当社・藤本製薬株式会社 |
米国のみ維持 |
RBM-006 |
オートタキシンに結合しオートタキシンの生理活性を阻害するアプタマー及びその利用 |
PCT/JP2015/062561 (特許第6586669号) |
当社 |
日本のみ特許を維持 |
オートタキシンアプタマーを含む増殖性硝子体網膜症の予防用医薬組成物 |
PCT/JP2024/000339 |
当社・日本大学 |
2024年1月11日 国際出願 |
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RBM-007 |
FGF2に対するアプタマー及びその使用 |
PCT/JP2015/058992 (特許第6634554号) |
当社 |
日本・米国・欧州各国・中国・オーストラリア・香港・イスラエル・メキシコ・シンガポール・カナダ・インド・韓国にて特許・維持 |
アプタマー製剤 |
PCT/JP2019/025766 (特許第7340264号) |
当社 |
日本・シンガポールで特許・維持、台湾で特許査定、米欧中韓等に移行済 |
|
網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤 |
PCT/JP2021/004215 |
当社 |
日米欧中韓に移行済 |
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RBM-010 |
ADAMTS5に対するアプタマー及びその使用 |
PCT/JP2018/041746
|
当社 |
日欧中韓等に移行済み、米国・シンガポールにて特許・維持、イスラエルで特許査定 |
RBM-011 |
IL-21に対するアプタマー及びその使用 |
PCT/JP2021/023023 |
当社 |
日米欧中韓等に移行済 |
<ライセンス・アウト品目に関する主要な特許>
対象パイプライン |
発明の名称 |
国際出願番号 (国内特許番号) |
保有者 |
登録状況 |
RBM-004 |
NGFに対するアプタマー及びその使用 |
PCT/JP2012/75252 |
当社・藤本製薬株式会社 |
米国のみ維持 |
RBM-007 |
FGF2に対するアプタマー及びその使用 |
PCT/JP2015/058992 (特許第6634554号) |
当社 |
日本・米国・欧州各国・中国・オーストラリア・香港・イスラエル・メキシコ・シンガポール・カナダ・インド・韓国にて特許・維持 |
アプタマー製剤 |
PCT/JP2019/025766 (特許第7340264号) |
当社 |
日本・シンガポールで特許・維持、台湾で特許査定、米欧中韓等に移行済 |
|
網膜下高反射病巣または網膜下高反射病巣を伴う網膜疾患の治療剤 |
PCT/JP2021/004215 |
当社 |
日米欧中韓に移行済 |
<その他プロジェクトに関する主要な特許>
対象パイプライン |
発明の名称 |
国際出願番号 (国内特許番号) |
保有者 |
登録状況 |
RBM-101 |
免疫グロブリンGに結合する核酸とその利用法 |
PCT/JP2006/313811 (特許第4910195号) |
当社 |
日本、米国にて特許維持 |
<その他>
対象パイプライン |
発明の名称 |
国際出願番号 (国内特許番号) |
保有者 |
登録状況 |
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アプタマー及びポリエチルオキサゾリンのコンジュゲート |
2024-012285 |
当社 |
2024年1月30日出願 |
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アデノ随伴ウイルスセロタイプ9に対するアプタマー及びその利用 |
2024-040542 |
当社・東京大学 |
2024年3月14日出願 |
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TGFβ1に対するアプタマー及びその使用 |
PCT/JP2020/026755 |
当社 |
日米で係属中 |
(6)創薬体制
①アカデミアでの研究成果の取り込みと連携及び共同研究
当社は、発足の経緯から、東京大学医科学研究所で培ってきたRNA科学やアプタマーに関する成果を実用化するため、トランスレーショナル・リサーチを継続的に実施してきました。
東京大学との共同研究は現在も継続し、同医科学研究所内に「RNA医科学」社会連携研究部門を設置して、同研究所内の動物試験施設や、その他の高度試験装置を使用できる恵まれた環境を維持してきました。これにより技術、信頼性の観点から、高レベルの研究体制を整備しております。
当社は、東京大学以外にも、国立循環器病研究センター、チェコ共和国のMasaryk大学、日本大学、早稲田大学、慈恵大学、北海道大学などのアカデミアとも共同研究を実施し、疾患に関連するタンパク質の学術的な裏付けを得ると同時に、各種動物試験の実施、新規アプタマー技術の開発や分析等における連携を図っております。
②的確な研究開発マネジメント
当社では、新薬開発ステージに応じた試験研究の内容、当該試験結果のクライテリアの設定、知的財産戦略等について、新薬開発のノウハウを熟知したスタッフによる定期的なレビューなどの研究開発マネジメントを実施しております。
③人的ネットワーク
アプタマーを含む核酸医薬の研究開発は日進月歩の状況にあり、世界的に競争が加速しています。当社は核酸科学やアプタマーに関する研究者・研究機関との世界的規模の人的ネットワークを通じて、最新の研究動向の把握や国内外の臨床医とのネットワーク構築にも努めております。
④アプタマー創製のスペシャリスト
当社では、社員の約三分の二が、化学、分子生物学、細胞生物学、工学、薬学、医学等の分野での専門家(研究員)であり、研究員の約半数は博士号の保持者です。これらの研究員は、アプタマー医薬に特化した研究開発に従事しており、この分野では強力な布陣を敷いております。
さらに、大手製薬企業で研究開発、臨床開発や知財・ライセンス事業の経験を長く積んだ社員も擁しており、臨床開発やライセンスに連なる基礎・探索研究の方向づけや知財戦略を展開しております。
(7)ESG(環境/社会/企業統治)に関する取り組み
昨今の資本市場では、長期持続的な企業の成長を評価する上で不可欠な観点として、ESG(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)といった非財務情報への関心が高まっています。当社は、ESGに関して次のような方針で取り組んでまいります。
①E(環境)
当社は、医薬品事業に携わる企業として研究資源の管理、並びに分別廃棄を徹底した厳格な廃棄物管理に注力いたします。また、IT整備によるペーパーレス等の省資源や社外で実施されているリサイクル活動にも積極的に参加するなどの取り組みも合わせて推進してまいります。
②S(社会)
当社は、難病や未だに薬のない病気(Unmet Medical Needs)に対する新薬を開発して、世界の医療と人々の健康に貢献するというミッション実現に向けた事業活動を展開しているため、「Social」は事業活動そのものと考えています。希少疾患である軟骨無形成症治療薬の開発はその一例です。
また、企業として働きやすい環境づくりやダイバーシティを尊重するとともに、学会参加や論文発表を通してイノベーション創出にも貢献したいと考えております。
③G(企業統治)
・コーポレート・ガバナンスの強化
当社は、アプタマー創薬企業としてアプタマーを素材とする新薬を次々と創製し、継続的な成長と企業価値の最大化を図り、医薬品開発を通して社会に貢献できる企業を目指しており、コーポレート・ガバナンス体制の強化により経営の健全性や透明性の向上を継続的に図っていくことは、最も重要な課題の一つであると認識し、取り組んでまいります。
また、研修やe-learningを積極的に受講する事を通して法令や社内規程を遵守するコンプライアンスを重視するとともに、個別面談や説明会を通して様々なステークホルダーとのコミュニケーションも図ってまいります。
(8)参考資料(技術紹介)
①アプタマー医薬について
核酸であるRNAは、生物の体内では、DNA上の遺伝情報の配列のコピーとして、タンパク質の合成の鋳型として使用されます。しかしRNAは、そうした遺伝情報のコピーとしての役割だけではなく、「様々な立体構造を形成する」という重要な特性を有しています(RNAの造形力)。この造形力を利用して、病気の要因となるタンパク質に結合してその働きを阻害あるいは調節できるRNA分子(アプタマー)を創製し、医薬品として開発したものが「アプタマー医薬」です。標的にフィットするという意味のラテン語の「aptus」が由来となり「アプタマー」と呼ばれております。 アプタマー医薬は核酸を成分とすることから核酸医薬の一種になります。しかし、細胞内に入らなければ効果を発揮しない他の核酸医薬とは異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。 |
<形状捕捉図>
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②「RiboARTシステム」
当社の「RiboARTシステム」は、RNAの生化学的性質の把握、特に潜在的なRNAの造形力の掘り起こし、アプタマーの構想・デザイン、アプタマーの創製から医薬候補アプタマーの仕上げまでをカバーする当社独自のアプタマー創薬の技術プラットフォームです。「RiboARTシステム」は広汎な分野に応用可能な技術であるため、特定の疾患や領域に特化されないアプタマーの創製を行っております。
「RiboARTシステム」においてコアとなる技術は、1)目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するポテンシーの高いアプタマーを取得する技術(SELEX法運用技術)と、2)取得したアプタマーを臨床開発品として最適化する技術です。このコア技術が、意図した薬効を示すポテンシーのアプタマーを取得・創製するうえで大きな効果を発揮します。
本システムでは、取得したアプタマーを新薬候補品となり得るように、加工プロセスによって、標的への結合力を103~104倍に増強するとともに、この技術を標準化しており、これが当社の技術的な強みと認識しております。
当社は、他の会社に先んじてSELEX法を利用した研究を開始したことによる現在の技術的優位性に安住することなく、5年先、10年先の技術動向を見据え、新たなSELEX法や、抗体で難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬を運搬するためのDDSに利用可能なアプタマー等の実現を目指しております。
<RiboARTシステムの概念図>
選抜: |
目標とする標的タンパク質に結合するアプタマーをSELEX法により選抜 |
分析: |
選抜したアプタマーの標的タンパク質への結合特性を分析 |
加工: |
アプタマーを工業的、経済的に利用できるよう短鎖化したり、品質や薬効向上のために化学修飾を実施 |
試験: |
細胞試験や動物試験によりアプタマーの薬理効果を評価 |
評価: |
動物を用いてアプタマーの毒性を評価 |
<SELEX法のイメージ>
③当社の新薬開発プロセス
新薬の研究開発は、下記の図に示すように、製品の上市までに、10数年の長い年月と数百億円もの多額の資金を要します。
この新薬の研究開発は、通常、臨床試験前の段階と臨床試験に二分され、さらに臨床試験前の段階は、大きく以下に分けられます。
1)新薬候補と考えられる化合物を考案、創製し、その中から様々な手法を用いて適切な化合物をスクリーニングする基礎・探索研究の段階
2)選定された化合物について、臨床試験に進むために必須の試験を行う非臨床試験の段階
当社では、新薬開発プロセスの中の(1)基礎・探索研究、及び(2)非臨床試験の段階において、「RiboARTシステム」を運用しアプタマー医薬の開発を行っています。標的タンパク質の種類や特性、適応疾患などによって差は生じるものの、「RiboARTシステム」の活用により、従来なら5~8年かかる基礎・探索研究及び非臨床試験の期間(1年前後のGLP試験の期間を含む)の内、標的タンパク質の決定からGLP試験を開始するための予備毒性試験ステージまでを、約3~4年で実施可能(当社実績)であると考えております。
<新薬開発プロセス>
(9)参考資料(用語解説) アルファベット、50音順
DDS |
薬剤の副作用の原因のひとつに、薬剤が標的臓器以外に作用することがあげられます。DDS(Drug Delivery System)とは、この問題を解決するために、薬剤が標的臓器に、適切な濃度で到達、作用できるように、剤形を工夫したシステムをいいます。
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GLP試験 |
GLP(Good Laboratory Practice)とは、医薬品の安全性に関する非臨床試験(急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性、その他の毒性試験)の実施に関する試験の質を担保する基準のことをいいます。この基準は「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」で定められています。なお、日本のGLPと同様な規制は欧米等でも実施されています。このGLPに準拠して行う試験をGLP試験といいます。
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POC
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POC(Proof of Concept)とは、新薬の開発段階において、ある化合物がヒトでの臨床試験(通常は少数の患者を対象としたPhase 2a試験)において意図した薬効と安全性の基準をクリアすることをいいます。
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RNA |
遺伝情報は生命の設計図ですが、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)という4種類の塩基の配列として、DNA(デオキシリボ核酸)という(2重螺旋構造の)核酸の中にコードされています。 ヒトならば30億塩基の配列がヒトを作り上げる全情報です。この塩基の並びはタンパク質のアミノ酸の配列を指定して、生命活動を司る様々なタンパク質を産生します。その時、DNAの配列情報は、一旦、アデニン(A)チミン(T)の代わりのウラシル(U)グアニン(G)シトシン(C)の塩基配列に置き換えて、RNA(リボ核酸)という核酸にコピーされ(この過程を「転写」といいます)、その遺伝情報のコピーを使ってタンパク質を合成します(この過程を「翻訳」といいます)。 そのため、分子生物学の黎明期から、RNAは単なる遺伝情報のコピーに過ぎないという思い込みが、世界的にも支配的でした。しかし、10数年前から、この考えは誤りであることが様々な研究によって明らかになってきました。特に立体構造を作って働く機能性RNAの生体内での役割が注目を集めています。
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RNAの造形力 |
当社は、アプタマーとIgGとの結合体の結晶構造をX線解析法によって明らかにしてNucleic Acids Res誌に発表いたしました(2010年、図参照)。 その結果、既存のアプタマーではRNAのリン酸の負電荷と、標的タンパク質の正電荷のアミノ酸領域とが電気的な相互作用によって結合するものしか知られていませんでしたが(図の右の事例)、IgGアプタマーはこれまでの常識を覆して、アプタマーが標的にフィットするしなやかな形状を作って、電気的な相互作用を使わずに、水素結合やファンデルワールス力のような多様な結合を利用して強く標的に結合することが明らかにされました。 つまり、RNAには、これまで予想もされなかった「しなやかな造形力」が備わっていることの証しです。このような基礎的な研究は、応用という点からも重要です。特に、医薬品の標的となるタンパク質は、必ずしもRNAと結合しやすい正電荷のアミノ酸が表面に多いとは限らないため、これらの基礎研究の成果は、非常に多くのタンパク質がRNAアプタマーの創薬ターゲットとなりうるということを示唆するものです。 また標的タンパクの捕捉方法について抗体医薬と比較した場合、アプタマーの特徴は、標的とするタンパク質の形状にフィットする立体構造を形成してその活性を調節する「形状捕捉」にあります。抗体医薬がタンパク質を構成する多数のアミノ酸の中から6~10個のアミノ酸の配列(エピトープと呼ばれる)を認識して標的タンパク質に結合するのに対して、アプタマーの標的タンパク質を捉える方法は大きく異なるといえます。
<アプタマーとIgG結合体の結晶構造>
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化学修飾 |
品質や薬効向上のために、化合物の一部の分子や原子を他の分子や原子に置換したり、新たな分子や原子を結合させることをいいます。
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核酸医薬 |
1970年代以降、ヒトの遺伝子の研究が進展し、核酸が医薬品になるかもしれないという期待は1980年代に生まれました。しかし、当時は核酸、特にRNAを医薬に応用するための基礎的な技術が整備されておらず、しかもRNAという核酸の特性や立体構造等の学術的な理解も浅かったために、長期にわたる膨大な資金や人材の投入とは裏腹に核酸医薬の開発は実を結びませんでした。 しかし、その苦い教訓の中でも、RNAの加工技術の開発という地味な仕事がアカデミアや少数のベンチャー企業で継続されました。その結果、1998年に世界初となるアンチセンス医薬(VitraveneⓇ[一般名 ホミビルセン],エイズ患者のサイトメガロウイルス性網膜炎用の局所投与剤)が承認され、その後、2004年にアプタマー医薬であるマクジェンⓇ、2013年に2番目となるアンチセンス医薬(KynamroⓇ[一般名 ミポメルセン])が家族性高脂血症薬として承認されました。2016年にはデュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象としたEXONDYS51TM[一般名 エテプリルセン]、脊椎性筋萎縮症を対象としたスピンラザⓇ[一般名 ヌシネルセン]が相次いで承認され、さらに、2018年には家族性トランスサイレチン (TTR) アミロイドーシスを対象とした世界初となるsiRNA医薬(オンパットロⓇ [一般名 パチシラン])が承認され、アンチセンスやsiRNAを用いた核酸医薬品の開発が活発に進められています。 現在、研究開発中の核酸医薬には下記の表に示すものがあり、その中で主要な核酸医薬品の作用機序について下記の図に示しています。
<主要な核酸医薬品の作用機序>
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抗体、抗体医薬 |
抗体とは、体内で特定の異物(抗原)に結合してその物質を体内から排除するように働くタンパク質をいいます。この排除システムを抗原抗体反応といい、我々の体内に自然に備わっている防御システムです。 抗体医薬とはこの仕組を医薬品として応用するもので、具体的には、疾患の原因となっているサイトカインなどのタンパク質を抗原として認識する抗体を産生する細胞(主に動物の)を造り出し、その後、この細胞を培養して該当する抗体を取り出し、精製加工します。但し、ヒト以外の動物、例えばマウスの細胞が産生する抗体(マウス抗体)をそのままヒトに使用できない場合があるため、動物からとれた抗体をヒト型に組み替える技術が発達しています。 現在、臨床開発されている抗体医薬の多くは、このヒト化抗体、若しくはヒト抗体です。さらに、複数の抗原を狙ったものや持続時間の長期化のためにPEGと結合させたコンジュゲート抗体なども開発の俎上にのっています。 なお、抗体類似の構造を持ち作用・機能面においても抗体と類似するFc融合タンパク質は、広い意味で抗体医薬の一種に含むこともあります。 この抗体医薬は、難治疾患に対する確かな効果と安全性、高薬価、さらに技術開発があいまって市場が急伸しており、近年、世界的な開発競争が激化しています。
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最適化 |
医薬品の開発過程において、in vitro# 試験等によって薬効のある化合物が得られたとしても、より効果が優れ、安全性の高い化合物を得るための様々な工夫がなされます。このプロセスは最適化と呼ばれます。アプタマー医薬に関しては、長大な核酸配列の中から効果や安全性に関係のない部分をカットする短鎖化、核酸分解酵素の作用を阻止するための化学修飾、腎臓からの早期の排出を抑えるための化合物(ポリエチレングルコールなど)との結合などがその例です。 #「in vitro」は「試験管内で」を意味する技術用語
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スクリーニング |
新薬の開発過程において、多数の化合物の中から目的とする化合物(薬効を示し安全性が高いもの)を選び出す作業のことです。
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トランスレーショナ ル・リサーチ |
大学や研究機関による基礎的な医学・薬学研究の成果を疾患の治療や新薬の開発に応用するための研究をいいます。 生命科学やバイオテクノロジーの飛躍的な発展に伴い、世界的に大学での研究成果を早期に実現化に向ける動きが加速しています。薬の場合、例えば新薬の候補となる物質が大学の研究室で発見されたとしても、それをヒトでの臨床試験に繋げるには化合物の最適化(より効果があり、安全性の高いモノに改良すること)、様々な動物実験、各種試験用のサンプルの製造等、多くの課題、ハードルがあります。この基礎から臨床試験に至る一連の橋渡しのための研究がトランスレーショナル・リサーチです。 |
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ノウハウ、営業秘密 |
ノウハウ(Know-How)とは「単独で又は結合して、工業目的に役立つある種の技術を完成し、又はそれを実際に応用するために必要な秘密の技術的知識と経験、又はそれらの集積」(国際商業会議所の定義)をいい、営業秘密とは①秘密に管理されていること、②有用な情報であること、③公然と知られていないこと、の3要件を満たす技術上、営業上の情報(不正競争防止法第2条第6項の定義に基づく)のことです。
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非臨床試験 |
臨床試験開始前に行われる試験を非臨床試験と言い、例えば予備毒性試験やGLP試験が含まれます。
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分子標的薬 |
生体内で疾患に関連する遺伝子やそれが係わるタンパク質等(サイトカイン、成長因子等)を標的としてその活動を阻害したり活性化することを狙った医薬品をいいます。抗体医薬もアプタマー医薬も分子標的薬の一種といえます。
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マイルストーン収入 |
医薬品の開発は、非臨床試験→第1相臨床試験(Phase 1)→第2相臨床試験a(Phase 2a)→第2相臨床試験b(Phase 2b)→第3相臨床試験(Phase 3)→申請→承認→発売というステップを踏んで進行します。 開発途上の医薬品のライセンスにおいては、この開発の節目を「マイルストーン」といい、それに到達したとき、あるいはその段階に入るときにライセンスの対価の一部がライセンサーに対し支払われる取引が普及しています。これによる収入を、「マイルストーン収入」といい、開発ステージが進むにつれて、商品化への確率が高まるため、マイルストーンの収入が増加するのが一般的です。
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予備毒性試験
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GLP試験に入る前に、的確なGLP試験を実施するためのデータ入手を目的として行う試験です。本試験で薬剤の毒性の概略を把握し、GLP試験での投与用量の設定根拠の情報を得ることができます。
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ライセンス・アウト |
特許や開発中の製品に関する権利を他の会社に供与したり、譲渡したりすることを意味し、「導出」ともいいます。供与する権利の内容としては特許の実施権や使用権、さらにかかる特許によって保護されている製品の開発、及び製造・販売する権利などがあります。
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臨床試験 |
新薬についての製造販売承認を取得するには、ヒトでの有効性及び安全性を確認する臨床試験が不可欠です。この場合、通常、以下の3段階があります。第一段階は、少数の健常人を対象として、動物実験等により安全性の確認を終えた化合物について、その安全性や体内での動態等を確認する試験であり、第1相臨床試験(Phase 1試験)と呼ばれています。 第一段階をクリアすると、次の段階は少数の患者(被験者)を対象として、薬効と安全性を確認する第2相臨床試験(Phase 2試験)に入ります。この試験のステージは、通常、2ステップがとられ、最初のステップは、少数の被験者について主に薬効を確認する段階です。この試験はPhase 2a試験と呼ばれます。さらに被験者数を増やし、有効性と安全性のバランスを取るために最適な用量を確認するための複数の用量を設定して行うPhase 2b試験があります。 最後の段階は、多くの被験者を対象として行う第3相臨床試験(Phase 3試験)です。 なお、臨床試験は、承認取得の前だけでなく、承認の取得後も当局から承認の条件として実施が求められる場合があります。この時の試験は市販後臨床試験と呼ばれています。
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業績
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
(イ)資産の部
当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べて1,036百万円減少し、3,547百万円となりました。これは、現金及び預金が725百万円、有価証券が200百万円、前渡金94百万円がそれぞれ減少したこと等によるものです。なお、当事業年度末において保有している有価証券は、第16回新株予約権等により調達した資金の一部において、研究開発への充当時期まで、一定以上の格付けが付された金融商品で元本が毀損するリスクを抑えて運用することを目的としたものです。
(ロ)負債の部
当事業年度末における負債は、前事業年度末に比べて43百万円減少し、155百万円となりました。これは、未払法人税等が31百万円、未払金が25百万円それぞれ減少したこと等によるものです。
(ハ)純資産の部
当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べて992百万円減少し、3,391百万円となりました。これは、第17回新株予約権の行使に伴い、資本金及び資本準備金につきそれぞれ13百万円増加した一方で、当期純損失1,024百万円を計上したことにより、利益剰余金につき同額減少したことによるものです。
なお、2023年6月27日開催の第20回定時株主総会の決議に基づき、2023年8月1日付で資本金672百万円、資本準備金980百万円をそれぞれその他資本剰余金へ振り替え、当該その他資本剰余金1,653百万円を繰越利益剰余金に振り替え欠損補填を行いましたが、これによる純資産合計に変動はありません。
以上の結果、自己資本比率は、前事業年度末から0.2ポイント減少し、95.5%となっております。
②経営成績
事業収益については当事業年度において計上はありません(前事業年度の事業収益は65百万円)。当事業年度において、事業費用として研究開発費764百万円、販売費及び一般管理費351百万円を計上し、営業損失は1,116百万円(前事業年度の営業損失は1,786百万円)となりました。
また、営業外収益として、AMEDの支援事業による助成金収入100百万円、JST委託事業による助成金収入23百万円、保有する外貨の評価替えによる為替差益10百万円等を計上した一方で、営業外費用として、第17回新株予約権の発行及び行使に伴う株式交付費3百万円を計上したことにより、経常損失は982百万円(前事業年度の経常損失は1,649百万円)となりました。
また、固定資産の減損損失40百万円を計上したことにより、税引前当期純損失は1,023百万円(前事業年度の税引前当期純損失は1,651百万円)となり、法人税、住民税及び事業税1百万円の計上により、当期純損失は1,024百万円(前事業年度の当期純損失は1,653百万円)となりました。
なお、当社は創薬事業及びこれに付随する事業を行う単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比較し725百万円減少し、2,099百万円となりました。
なお、上記資金以外に有価証券(満期保有目的の債券)を1,300百万円保有しており、比較的流動性の高い資産を当事業年度末においては3,399百万円保有しております。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は932百万円(前事業年度は1,708百万円の支出)となりました。主な資金減少要因は、umedaptanib pegolを用いたACHの臨床試験を中心とした研究開発を行ったこと等に伴う税引前当期純損失1,023百万円、前渡金の減少額94百万円、未払金の減少額53百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は177百万円(前事業年度は276百万円の収入)となりました。資金増加要因は、有価証券の満期到来による払い戻し200百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は27百万円(前事業年度は1,333百万円の収入)となりました。資金増加要因は、第17回新株予約権が行使されたことに伴う株式の発行代金入金27百万円によるものです。
④生産・受注及び販売の実績
当社の事業は、創薬事業及びこれに付随する事業を行う単一セグメントであります。
(イ)生産実績
該当事項はありません。
(ロ)受注実績
該当事項はありません。
(ハ)販売実績
当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
事業の名称 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
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販売高(千円) |
前年同期比(%) |
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創薬事業 |
- |
△100.0 |
合計 |
- |
△100.0 |
(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 |
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
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販売高 (千円) |
割合 (%) |
販売高 (千円) |
割合 (%) |
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国立研究開発法人国立循環器病 研究センター |
62,636 |
94.9 |
- |
- |
2.当事業年度において事業収益はございませんでした。
⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この財務諸表の作成に当たりましては、会計方針の決定とその継続的な適用、並びに資産及び負債、収益及び費用の会計上の見積りを必要としております。この見積りに関しましては、過去の実績や適切と判断する仮定に基づき合理的に算出しておりますが、実際の結果はこれらの見積りと相違する可能性があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは固定資産の減損損失であり、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (損益計算書関係)※5固定資産の減損損失」に記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の当事業年度における最重点経営目標は、「自社での臨床Proof of Conceptの獲得に向けた開発」であり、その実現に向けた取り組みを進めてまいりました。
その具体的な進捗は、「第1企業の概況 3 事業の内容 (1)当事業年度の主要なトピックス」に記載の通りであります。
(3)資本の財源及び資金の流動性
(イ)運転資金
当社は、医薬品の研究開発を事業としており、製薬企業との共同研究や開発品の製薬企業へのライセンス・アウトにより収益を得ることを事業の中核としております。
当社の事業を遂行するための、運転資金需要のうち主なものは、当社が創製するアプタマー医薬の研究開発を推進するための研究開発費であります。なお、過年度における研究開発費の推移については下記に示すとおりであり、自社での臨床試験を実施するために、2017年3月期よりumedaptanib pegolによる臨床試験のための原薬製造を開始して以降、臨床開発を行うための資金需要が高まっております。
当社では、臨床試験プログラム目標「VISION 2025」に掲げるパイプラインの臨床開発、新規技術開発、核酸医薬を特定の標的部位へと効率的に送り込むドラッグデリバリーシステムの開発等を遂行するための資金需要が生じております。
研究開発費の推移
回次 |
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第17期 |
第18期 |
第19期 |
第20期 |
第21期 |
決算年月 |
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2020年3月 |
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
研究開発費 |
(千円) |
673,605 |
957,605 |
1,482,132 |
1,491,239 |
764,327 |
(ロ)財務政策
当社は中期事業目標として、①探索から臨床ステージへの脱皮、②次世代アプタマー・テクノロジーの開発、③社会に対する企業価値の創出を掲げております。そのため、①RBM-007のwet AMD及びACHを対象とした臨床開発費用(臨床開発のための薬剤合成費用を含む)、②RBM-003の心不全を対象とした非臨床試験費用、③RBM-010の変形性関節症を対象とした非臨床試験費用、④新規技術開発費用(製剤化技術開発・導入他)、⑤RBM-011(肺動脈性肺高血圧症に対するアプタマー医薬)の研究開発費用、⑥ドラッグデリバリーシステム用アプタマーを中心とした探索研究費用等に充当する計画で過年度及び当事業年度において新株予約権を発行し資金調達を実施しており、当事業年度末の現金及び預金は2,099,743千円、有価証券1,300,000千円となっております。
(ハ)株主還元
当社の株主還元に関する方針は、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。