リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、下記におけるリスクの項目は、すべてのリスクを網羅したものではありません。また、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響と特定製品への依存
過去7年(2013年~2019年)ほどにわたり、インフルエンザ検査薬は、当社の売上高(通期)の約50%を維持しながら、その他の感染症検査項目とともに売上を伸ばしてきた主力製品であります。インフルエンザの流行時期は冬季であることから、第1四半期会計期間(1~3月)及び第4四半期会計期間(10~12月)に売上高及び営業利益が集中するといった季節変動、また、その年の業績が流行の開始時期や大きさに影響を受けやすいという傾向がありました。
2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大は、その後3年以上に渡り感染拡大を繰り返し、わが国においても国民の社会経済活動に大きな影響を及ぼしました。体外診断用医薬品業界におきましては、新型コロナウイルスの遺伝子検査や抗原検査の需要が急激に高まるなか、当社は、遺伝子検査として、2020年8月に「スマートジーン SARS-CoV-2」の発売を開始し、これに続き、抗原検査として、クイックチェイサー Immuno ReaderⅡ等を用いる高感度検出キット(銀増幅イムノクロマト法)、スマートQCリーダーを用いる抗原キット、さらに新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス同時検出キットの発売を開始し、これらの新型コロナウイルスに係る各種検査キットの売上高が急激に増加しました。
一方では、新型コロナウイルスに対する感染防御の効果の波及や受診控えの影響により、インフルエンザをはじめ既存の感染症の検査需要が大幅に減少するという影響を受けました。結果として、2020年以降はインフルエンザ検査薬への依存度が低下し、新型コロナウイルス検査薬への依存度が急激に高まることとなりました。
当事業年度(2023年)におきましては、新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の分類が5類へ移行され、社会経済活動の正常化はさらに加速し、これに伴い、それまで抑えられてきた様々な既存の感染症が同時多発的に流行しました。新型コロナウイルス感染症も夏場と冬場に感染拡大を繰り返すなか、インフルエンザは3年ぶりに流行入りした後も、異例の夏場の流行を経て、冬場にかけて流行の拡大が継続しました。このような状況を背景に、新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス同時検査キットの需要が急増する結果となりました。
今後につきましては、新型コロナウイルス検査薬は、今後の感染拡大の動向や医療・検査体制の変化などによって、これらの検査キットの需要や売上高が大きく左右される可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルスやインフルエンザの流行の時期や規模によって、新型コロナウイルス及びインフルエンザウイルスの各単独検査キットあるいは同時検査キットの需要が大きく変動する可能性があり、これらの状況の変化に伴い特定製品への依存度がさらに変化する可能性があります。
さらに、将来、新型コロナウイルス感染症のような大規模な感染症が新たに発生し、それに伴い政府・自治体による感染拡大防止策(緊急事態宣言等)が同様に講じられた場合、医療機関への受診控えによる外来患者数の減少や新たな感染症に対する感染防御の効果の波及などにより、既存の感染症項目の検査薬の売上高が大幅に減少する可能性があります。また、新たな感染症とそれに対する当社の対応状況(当該感染症の検査需要と当該検査薬の開発・量産状況等)によって、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(注)1.新型コロナウイルス検査薬には、「スマートジーン SARS-CoV-2」、「クイックチェイサー Auto SARS-CoV-2」、「クイックチェイサー Auto SARS-CoV-2/Flu」、富士フイルム株式会社向け機器試薬システムの試薬、「クイックチェイサー SARS-CoV-2」及び「クイックチェイサー SARS-CoV-2/Flu(Flu A,B)」が含まれております。
2.インフルエンザ検査薬には、「クイックチェイサー Flu A,B」、「クイックチェイサー Auto Flu A,B」、富士フイルム株式会社向け機器試薬システムの試薬及び「スマートジーン Flu A,B」が含まれております。
(2) 品質問題
当社は、医薬品医療機器等法及び関連法令並びに品質マネジメントシステムに基づき、万全の品質管理体制を敷いて製品の品質確保に取り組んでおります。しかしながら、万が一製品に重大な品質問題が発生した場合には、速やかに調査、回収、情報提供等の措置を取る必要があり、売上高の減少やコストの増加などにより、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 原材料の調達
当社は、様々な原材料を国内外より調達し製造活動を行っておりますが、調達にあたっては、仕入先との協力関係の維持強化、重要性及び調達リスクに応じた安全在庫の確保、一部の重要な原材料の自製化などにより調達リスクの低減に努めております。しかしながら、原材料に関する国内外の規制または原材料メーカーによる品質問題の発生、あるいは国際情勢の変化や政情不安等によって、原材料の入手が長期的に困難になることにより、製品を製造・販売することができなくなった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 製品供給の遅延または休止
当社は、製品の安定供給を目指し、複数の製造拠点(佐賀県鳥栖市及び福岡県久留米市)を有しており、風水害、地震、火災等の災害発生時のリスク分散・軽減を図っております。しかしながら、当社の製造拠点や当社の原材料等の調達先の製造施設・倉庫等において、甚大な風水害や地震等の自然災害や火災の発生あるいは技術上や規制上の問題により、操業が停止または混乱が生じた場合、製品の供給が遅延または休止し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 開発人員の強化・育成について
当社は、今後の事業拡大や市場に対し付加価値の高い製品を提供するため、新たな診断技術の創出や新分野での診断項目に対する研究開発といった活動に日々邁進しており、これに不可欠である研究開発人員を継続的に確保し、強化・育成するよう努めております。しかしながら、今後様々な市場ニーズへの対応や他社の開発技術と競合するなか、これに対応できる独創性や高度な開発技術を有する人材の確保及び強化・育成が計画通りに進まない場合、これら新たな診断技術の創出等の研究開発活動に支障が生じ、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 知的財産権
当社の製品は、特許及び実用新案等により一定期間保護されています。当社は、知的財産権を厳しく管理し、第三者からの侵害あるいは第三者の知的財産権を侵害するおそれについても、常に監視を行っております。しかしながら、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が失われる可能性があります。また、当社の製品が意図せず他社の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償を請求される可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 研究開発
体外診断用医薬品は、所轄官庁の定めた企業としての責任体制、製品の有効性、安全性、生産方法・管理体制に関する厳格な審査により許認可を得てはじめて上市可能となります。このため、研究開発が計画通りに進行しない、許認可取得に時間を要する、あるいは治験段階において新製品が期待通りの性能を示さない等の事由により、開発期間の延長や開発の中止を余儀なくされることがあります。これらにより、多額の追加投資が必要となった場合や、それまでに投下した研究開発投資の回収見込みがなくなった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 競合他社との競争
当社は、市場ニーズを先取りした新製品開発及び性能改善を行っておりますが、体外診断用医薬品業界は技術開発及び性能の向上において常に競合他社と競争状態にあります。技術競争の結果、競合他社が当社より先に新製品や性能改善品を上市した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 市場環境の変化
病院・開業医分野では、医療制度改革や診療報酬の改定が行われるなか、治療に即した検査への淘汰が進んでおり、価格競争は激化しております。また、OTC・その他分野でも薬局・薬店業界の再編や新規参入など市場環境は日々変化しております。そのため、市場環境の変化への対応が遅れた場合、病院・開業医分野では、主要製品の需要減少、販売価格の低下、OTC・その他分野では、既存シェアの変化などにより、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)法的規制等
当社は、体外診断用医薬品の製造販売を行うために「体外診断用医薬品製造販売業許可」及び「体外診断用医薬品製造業登録」、また、医療機器の製造販売を行うために「医療機器製造販売業許可」及び「医療機器製造業登録」が必要であり、そのために医薬品医療機器等法及び関連法令をはじめ、様々な法規制の適用を受けております。
当社は、以下の主要な許認可を含めこれらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法令の遵守に努めており、現状においては当該許認可が取り消しとなる事由は発生しておりませんが、今後、これらの関係法規が改廃または新たな法的規制が設けられた際に、仮にこれらの法規制を遵守できなかった場合、事業活動を制限されることはもとより、社会的信用の低下を招き、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法規制を遵守するためのコストが発生し、利益率の低下につながる可能性があります。
(11)訴訟の提起
当社は、事業活動を継続していく過程において、製造物責任(PL)関連、労務関連、知的財産関連、商取引関連、その他に関する訴訟が提起される可能性があります。これらの訴訟の結果によっては、損害賠償を請求される等、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)ITセキュリティ及び情報管理
当社は、各種の情報システム・IT機器を利用して業務を遂行しており、また、業務の遂行を通じて、開発・営業その他経営に関する機密情報や従業員の個人情報等を保有しております。これらの情報システム及び情報の保護等に関しては、情報システム運用管理規程や情報セキュリティポリシー等の制定及びその遵守・周知徹底により、業務の円滑化、適切な運用、セキュリティの強化等に努めております。しかしながら、サイバー攻撃等によるシステム障害、コンピューターウイルスの感染及びその他災害等が発生した場合、業務が阻害され、機会損失の発生等追加的なコストが発生し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、それら外部要因を含めた不測の事態により情報の流出や漏えいが発生した場合には、社会的信用を大きく失うこととなり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)創業者への依存について
当社の創業者は、代表取締役会長兼社長である唐川文成であります。同氏は、当社設立以来の最高経営責任者であり、経営方針や経営戦略の決定、営業や研究開発などの事業運営において重要な役割を果たしております。当社では、全ての部署に担当取締役を配置し、さらに各部門長には執行役員もしくは部長を配置しております。各々が参加する定期的な会議体にて、意見等の吸い上げや情報共有などを積極的に進めており、また、適宜権限の委譲も行うことで、同氏に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、何らかの理由により同氏が業務執行を継続することが困難になった場合には、当社の業績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の重要課題の一つと考えております。下表のとおり、2024年2月9日の取締役会の決議におきまして、株主の皆様への利益還元の姿勢をより明確に、かつ充実させるために、配当の基本的な方針として、目標とする配当性向を30%から50%に変更するとともに、剰余金の配当を期末配当の年1回から中間配当及び期末配当の年2回に変更することといたしました。変更後の方針につきましては、2024年12月期(次期)より適用いたします。詳細につきましては、同日公表いたしました「配当方針の変更に関するお知らせ」をご参照ください。
当期の剰余金の配当につきましては、前期に続き、例年に比べ大幅な増配が見込まれ、業績推移や変動リスク等を総合的に勘案した結果、株主の皆様への利益還元の機会を増やすことが可能と判断したことから、中間配当を実施しており、また、株主の皆様の日ごろのご支援にお応えするため、さらに特別配当を加えております。
当期の期末配当につきましては、上記方針に基づき、1株当たり140円(普通配当80円、特別配当60円)と決定いたしました。これにより、中間配当60円(普通配当40円、特別配当20円)と合わせ、年間配当金200円(普通配当120円、特別配当80円)、配当性向50.5%となります。
内部留保金の使途につきましては、今後の研究開発及び製造体制の強化などへ有効に投資してまいりたいと考えております。
(注)基準日が第47期事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。