2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

当社グループの事業運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。中には当社グループとして必ずしも重要なリスクとは考えていない事項も含まれておりますが、投資判断上、もしくは当社グループの事業活動を十分に理解する上で重要と考えられる事項については、投資家や株主に対する積極的な情報開示の観点からリスク要因として挙げております。

当社グループはこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の事項及び本項以外の記載もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。また、これらは投資判断のためのリスクを全て網羅したものではなく、更にこれら以外にも様々なリスクを伴っていることにご留意いただく必要があると考えます。

また、当社グループは、医薬品等の開発を行っていますが、医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、各パイプラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社グループへの投資はこれに該当します。

なお、文中の将来に関する記載は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)機能性ペプチド事業に関するリスク

① 機能性ペプチドの実用化リスク

機能性ペプチドは、医薬品、化粧品及び食品等の幅広い事業分野で実用化されております。

例えば、生体内のペプチドには、体内の器官の働きを調整するための情報伝達を担うホルモン等(インスリン、グルカゴン、カルシトニン等が含まれます)があり、タンパク質のように生体内で機能を担っております。これらのホルモン由来の機能性ペプチドは、がんや糖尿病領域の医薬品として発売されております。また、タンパク質の分解過程で生じるペプチドが機能を持っていることもあり、血圧降下ペプチド等の特定保健用食品等の食品分野やスキンケア又はヘアケア商品等の化粧品分野で利用されています。

当社グループにおいても、機能性ペプチドを医薬品及び化粧品分野等に応用して実用化を図っていく方針ですが、商品開発の過程では、市場性、差別化ポイント及び採算性等の様々な観点から検討を重ねる必要があり、商品化が延期もしくは中止された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 当社グループのプラットフォーム技術に関するリスク

当社グループの強みは、機能性ペプチドの一種である抗体誘導ペプチドを創生するプラットフォーム技術「STEP UP」を保有していることであります。

当社グループは、プラットフォーム技術に基づき、大阪大学との共同研究等によって、抗体誘導ペプチドを創出する研究開発を行っております。そして、これらの抗体誘導ペプチドの研究開発を推進するとともに、事業会社との提携契約を締結し、収益を獲得することを目指しております。

当社グループは、今後も、プラットフォーム技術の改良に努めていく方針ですが、当社グループ以外の研究機関が優位性を持つ技術を開発するなど、当社グループのプラットフォーム技術が競争力を失う場合には、抗体誘導ペプチドの実用化や事業会社との提携が困難となり、当社グループの事業戦略、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 医薬品業界及び研究開発に関するリスク

機能性ペプチドの応用分野の中でも、現時点での事業計画に対して影響が大きい医薬品分野については、発売(上市)に至るまでのリスクが高い事業分野であります。従いまして、下記に医薬品事業特有のリスクを記載いたします。

 

(A)医薬品研究開発の不確実性

医薬品の研究開発には多額の資金と長期にわたる期間を要しますが、臨床試験で有用な効果を確認できないことや、競合品の開発進展や上市及びその他の理由により研究開発が予定どおりに進行せず、開発の延長や中止の判断を行うことや追加資金が必要になることは稀ではありません。医薬品は、安価な後発品発売を回避できる特許権存続期間等の独占的期間内に投資回収を行う必要があることから、開発が延長された場合には投資を回収できなくなるリスクもあります。また、世界の主要国において医薬品を製造及び販売するためには、各国の薬事関連法規等の法的規制の下、各国別に厳格な審査を受ける必要があり、この審査に耐えうる有効性、安全性及び品質等に関する十分なデータが得られない場合には、予定していた時期に上市ができず延期になる、又は上市を断念する可能性があります。

このように、当社グループの研究開発パイプラインに含まれる機能性ペプチドが上市して安定的な収益が得られるまでには、上記に記載した様々な研究開発リスクが存在します。当社グループは科学技術顧問や医学アドバイザー等からの助言や規制当局との相談制度を通じて、研究開発リスクの顕在化の防止を目指しています。しかしながら、当社の医薬品候補物質は、今後上市に至るまでに数年以上の期間を要するうえ、臨床試験において期待する効果・安全性が示される必要等があり、現時点で上市後の安定的なロイヤリティー収益が確定しているわけではありません。 

当社グループといたしましては、研究開発の早期段階から事業会社との提携により収益を獲得していく方針でありますが、製薬会社等に導出した医薬品候補物質が上市に至る前に開発が延長や中止に至った場合には、その後受け取る計画の収益は影響を受け、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(B)副作用発現、製造物責任

医薬品には、臨床試験段階から更には上市以降において、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。当社グループは、自社で臨床試験を実施する場合には、こうした事態に備えて、製造物責任を含めた各種賠償責任に対応するための適切な保険に加入する予定ですが、最終的に当社グループが負担する賠償額の全てに相当する保険金が支払われる保証はありません。また、当社グループに対する損害賠償の請求が認められなかったとしても、製造物責任請求等がなされたこと自体によるネガティブ・イメージにより、当社グループ及び当社グループの製品に対する信頼に悪影響が生じる可能性があります。この結果、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、化粧品分野についても同様のリスクがあります。

 

(C)競合

医薬品の研究開発は、国内外の製薬会社やバイオベンチャー企業により激しい競争環境の下で行われております。他社競合品の開発進展や上市に伴い、上市後の販売価格や販売シェアへの影響により提携製薬会社からのロイヤリティー収入が減少するリスクや、提携製薬会社が事業性の観点から当社グループとの契約を終了するリスクがあり、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(D)医療費抑制策

世界の医薬品市場の主要国においては、医療費抑制策が強化されております。また、日本国内においても、政府は増加の続く医療費を抑制するため、定期的に薬価引き下げを実施するほか、後発医薬品の使用促進策の導入を進めております。今後の医療費抑制策の動向が当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業遂行上のリスク

① 特定の提携契約への依存及び収益の不確実性

当社グループは、下記の提携契約を締結しており、これらの提携契約による収益を中心とした事業計画を策定しております。

 

・2015年10月に、塩野義製薬株式会社との間で機能性ペプチドSR-0379の全世界における独占的研究開発・商業化権を供与するライセンス契約を締結

・2018年3月に、大日本住友製薬株式会社(現住友ファーマ株式会社)との間で抗体誘導ペプチドFPP003の北米における独占的開発・商業化権を供与するライセンス契約に関するオプション契約を締結

・2024年3月に、塩野義製薬株式会社との間で抗体誘導ペプチドFPP004Xの全世界における独占的研究開発・商業化権を供与するライセンス契約に関するオプション契約を締結

 

しかしながら、このような提携契約は、契約条項違反が一定期間内に是正されない場合など契約に規定された何らかの要因により、契約期間満了前に終了する可能性があります。現時点では契約が終了となる状況は発生しておりませんが、本契約が終了した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

また、機能性ペプチドSR-0379、抗体誘導ペプチドFPP003及び抗体誘導ペプチドFPP004Xが上市する前の収益として、開発マイルストーン収益を見込んでおりますが、この発生時期は開発の進捗に依存した不確実性を伴うものであり、開発が遅延した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

今後も、事業会社との新規提携契約により、上記の3つの提携契約への依存度を低減していく方針でありますが、新規提携契約を獲得できる保証はありません。

 

② 小規模組織及び少数の事業推進者への依存

当社グループは、本書提出日現在、取締役5名、監査役3名及び従業員15名(従業員兼務役員2名含む)の小規模組織であり、現在の内部管理体制はこのような組織規模に応じたものとなっております。従業員の成長こそが当社グループの成長を支える要素であり、当社グループは人材の育成を積極的に推進すると共に、今後、業容拡大に応じて社内外ネットワークを活用し、確かな技術・能力・成長意欲のある人材採用を行い、内部管理体制の充実を図る方針であります。

また、当社グループの事業活動は、当社の創業者であり代表取締役社長である三好稔美を始めとする現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者に依存するところがあります。

研究開発については、当社グループの強みであるプラットフォーム技術「STEP UP」は、少数の当社グループの研究者が保有する技術ノウハウを含んでおります。

当社グループは、当該技術ノウハウの確保及び発展の見地から、常に優秀な人材の確保と育成に努めておりますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、当社グループの事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 特定の技術シーズへの依存

当社グループの研究開発活動は、大阪大学大学院医学系研究科の技術シーズに基づくものが中心であります。当社グループは、現在、機能性ペプチドの一種である抗体誘導ペプチドの創生に向けて大阪大学と共同研究を実施しており、更に他大学との共同研究も実施しております。今後も、大学等の研究機関との間で共同研究等により連携を拡大していく方針であります。しかしながら、今後、何らかの要因により、大阪大学又は他大学等との連携ができなくなった場合には、当社グループの研究開発戦略に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 知的財産権

当社グループでは研究開発をはじめとする事業展開において様々な知的財産権を使用しており、これらは当社グループ所有の権利であるか、あるいは適法に使用許諾を受けた権利であるものと認識しております。FPP003、FPP004X及びFPP005の開発は、「5 経営上の重要な契約等 (1)技術導入」に記載した大阪大学からのライセンス契約を前提としておりますが、これらのライセンス契約が解除された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります(ただし、契約が解除されるのは、当社グループの債務不履行が発生し、その状態が改善されない場合などに限定されます)。

一方、当社グループが保有している現在出願中の特許は全て成立する保証はなく、また、特許権が成立した場合でも、当社グループの研究開発を超える優れた研究開発により、当社グループの特許に含まれる技術が淘汰される可能性は常に存在しております。当社グループの特許権の権利範囲に含まれない優れた技術が開発された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループでは他社の特許権の侵害リスクを未然に防止するための特許調査を実施しており、これまでに、当社グループの開発パイプラインに関する特許権等の知的財産権について第三者との間で訴訟が発生した事実はありません。しかし、当社グループのような研究開発型企業にとって知的財産権侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

主な特許

 

対象

発明の名称

所有者

出願番号

登録状況

SR-0379

血管新生誘導活性及び抗菌活性を有するポリペプチド及びそれを含有する創傷治療剤

当社

PCT/JP2010/58838

日本、米国及び欧州の主要国において特許権が成立しております。

FPP003

疾患の要因となる生体内タンパク質を標的とするコンジュゲートワクチン

当社
大阪大学

PCT/JP2017/012187

日本、米国及び欧州の主要国において特許権が成立しております。

FPP003

FPP004X

FPP005

抗老化作用を有するペプチドおよびその利用

大阪大学

(注)

PCT/JP2014/058786

日本、米国及び欧州の主要国において特許権が成立しております。

FPP003

FPP004X

FPP005

新規ペプチドおよびその用途

大阪大学

(注)

PCT/JP2015/077139

日本、米国及び欧州の主要国において特許権が成立しております。

 

(注)当社の連結子会社株式会社ファンペップヘルスケアは、大阪大学より独占的通常実施権の許諾を受けております。対象のライセンス契約は、「5 経営上の重要な契約等 (1)技術導入」に記載しております。

 

(3)業績等に関するリスク

① 社歴の浅さ

当社は、2013年10月に設立された社歴の浅い企業であります。当社グループは、医薬品業界において豊富な経験を有する経営陣及び各部門責任者により運営されているものの、企業としては未経験のトラブルが発生する可能性は否定できず、その場合の組織としての対応能力については、一定のリスクがあります。

 

② 収益が大きく変動する傾向

当社グループの事業収益は、事業会社との新規提携契約の契約一時金、研究開発進捗に伴う開発マイルストーン等への依存度が高いため、当面の業績は不安定に推移することが見込まれます。この傾向は、当社グループの開発品が上市され安定的な収益基盤が確立するまで続く見込みであります。

 

③ 資金繰り

抗体誘導ペプチドを含む機能性ペプチドの研究開発には多額の資金を要します。当社グループは、事業会社との提携による研究開発資金の調達や、必要に応じて適切な時期に資本市場等からの資金調達を実施し、財務基盤の強化を図る方針ですが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合は、当社グループの研究開発の進捗に対して重大な影響が生じる可能性があります。また、研究開発の進捗状況によっては、それぞれの機能性ペプチド等の研究開発資金が当初の予定金額を上回る可能性や他のプロジェクト等に充当される可能性もあります。

 

④ 調達資金使途

2020年12月の株式上場にて公募増資等により調達した資金は、機能性ペプチドSR-0379及び抗体誘導ペプチドの研究開発費等に充当する計画であります。また、2024年3月の第三者割当増資により調達した資金は、抗体誘導ペプチドFPP004Xの開発費に充当する計画であります。ただし、特に医薬品分野における研究開発活動の成果が収益に結びつくには相応の期間を要する一方で、研究開発投資から期待した成果が得られる保証はなく、その結果、調達した資金が期待される利益に結びつかない可能性があります。また、研究開発の進捗状況によっては、それぞれの機能性ペプチド等の研究開発資金が当初の予定金額を上回る可能性や他のプロジェクト等に充当される可能性もあります。

 

⑤ 新株式発行による資金調達

当社グループは、増資等により新株式発行を伴う資金調達を実施する可能性があります。その場合には、当社の発行済株式総数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 新株予約権の権利行使

当社グループは、ストック・オプション制度を採用しております。本制度は、当社取締役、監査役、従業員及び社外協力者に対して、業績向上に対する意欲や士気を高め、また優秀な人材を確保する観点で有効であると当社グループは認識しております。また、今後も優秀な人材の確保のため、同様のインセンティブ・プランを継続する可能性があります。

本書提出日の前月末現在における当社の発行済株式総数は24,236,500株であり、ストック・オプションが行使された場合は、新たに1,340,000株の新株式が発行され、当社の1株当たりの株式価値は希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。今後発行される新株予約権が行使された場合にも、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。

 

⑦ 配当政策

当社は、設立以来、配当を実施しておりません。また、当面は研究開発活動の継続的な実施に備えた資金の確保を優先する方針であります。

しかしながら、株主への利益還元については、当社の重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しつつ、配当による利益還元の実施を検討したいと考えておりますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

(4)その他

① 自然災害

当社グループは、事業活動の中心となる設備や人員が大阪と東京の2箇所に集中しております。また、研究開発活動の主要な部分を国内外の製造・研究開発委託機関にアウトソーシングしております。

したがって、これらの地域において地震等の大規模な災害が発生した場合には、設備等の損壊、研究開発の遅延、事業活動の停滞によって、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

2019年12月以降、日本を含む世界各地で新型コロナウイルス感染症の患者発生報告は続いており、世界保健機関(WHO)も2020年3月に当該感染症をパンデミック(世界的大流行)と宣言しております。

この影響により、当社グループの様々な事業活動が制約を受け、研究開発が遅延するなどの可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

配当政策

3【配当政策】

剰余金の配当については、期末配当並びに業績に応じて中間配当を行うことを基本方針としておりますが、当社の現時点での事業ステージは、研究開発における先行投資の段階にあるため、当社は設立以来、株主に対する利益配当を実施しておりません。また、今後も多額の先行投資を行う研究開発活動を計画的に実施していくため、当面は配当を実施せず、研究開発活動の継続に備えた資金の確保を優先する方針であります。しかしながら、株主への利益還元については重要な経営課題と認識しており、経営成績及び財政状態を勘案しつつ、利益配当も検討する所存であります。

なお、剰余金の配当を行う場合、期末配当の決定機関は株主総会となっております。また、当社は会社法に規定する中間配当を取締役会決議によって行うことができる旨を定款に定めております。