事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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売上
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利益
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利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
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(単一セグメント) | 120 | 100.0 | -826 | - | -686.5 |
事業内容
3【事業の内容】
当社は東京大学先端科学技術研究センター・システム生物医学ラボラトリー(LSBM)で開発された蛋白質発現・抗体(※1)作製技術を基盤として、診断・創薬標的に対する抗体の医療への活用を目指して設立されました。創業以来、医薬品シーズ(※2)抗体を創生することで、がん及びその他疾患の治療用医薬品の研究開発、及び関連業務を行っております。LSBMで開発された蛋白質発現技術により、従来は作製することが困難だった標的蛋白質も免疫することが可能となり、そのような標的蛋白質に対する抗体の取得がより容易になりました。これをハイブリドーマ法(動物免疫法)(※3)と組み合わせることで、親和性(※4)の高い抗体の効率的な取得を可能にしています。さらに、当社は多様性に富むファージ抗体ライブラリ(※5)と当社独自の抗体スクリーニング(※6)技術を保有しており、対象とする疾患の細胞に適用することで、創薬標的を探索するとともに、従来のハイブリドーマ法で得られるものとは異なる特徴を持つ高機能シーズ抗体を取得することを可能にしています。また、新たな抗体取得技術として、シングルBセルスクリーニング法(※7)の活用も開始しました。当社の技術は、これらの抗体技術とシーズ探索技術を融合し、医療ニーズにマッチした医薬品シーズ抗体を取得することを特長としております。また、当社は東京大学発であることを起点として、さらにそのネットワークを広げ、多くのアカデミアとの連携により「最先端の抗体技術で世界の医療に貢献する」ことを企業理念としております。
<当社の抗体取得技術>
当社は以下のアプローチにより、シーズ探索を行っております。第一は、動物に免疫して取得する一般的なハイブリドーマ法です。グリピカン3やカドヘリン3(CDH3)に対する抗体はこの手法で取得しました。第二は、動物を用いずに抗体を取得するファージディスプレイ法(※8)をがん細胞に適用することで、トランスフェリン受容体1(TfR1)に対する抗体を取得しております。第三のシングルBセルスクリーニング法では、特定の抗原に対してのみ反応する抗体を生産するB細胞を単離し、モノクローナル抗体を取得します。ハイブリドーマの作製が難しい動物種やヒトのモノクローナル抗体も取得することが可能です。
世界におけるバイオ医薬品市場の推移を見ると、年々バイオ医薬品の売上高は増加しており、2026年には約5,489億ドルに達するとも予測されています(出典:Evaluate®)。
また、2024年度の世界の医薬品の売上高上位10品目のうち、抗体医薬品(※13)は5品目を占めております(出典:日経BP社 「日経バイオテクONLINE」2025年5月19日掲載https://pharma.all.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400016/051500392/?ST=pb)。
このような事業環境の中で、当社は機能性の高い抗体を当社独自の技術で作製し治療薬として開発しているほか、抗体に放射性同位体や抗がん剤等を化学的に結合させ、がん細胞への攻撃力を高めた治療薬の研究開発も行っております。
(1)当社の事業モデル
当社の事業セグメントは、医薬品事業のみの単一セグメントでありますが、以下の各分野において製品化に向けた研究開発、ライセンス、製造方法の確立に取り組んでおります。
① 創薬
当社は、長年の経験に基づいたハイブリドーマ法、独自のスクリーニング技術を取り入れたファージディスプレイ法、及びシングルBセルスクリーニング法により、高機能抗体を取得し、必要に応じて抗体に遺伝子工学的な改変あるいは化学的な修飾を施し、抗体医薬品候補として研究開発を進めております。
創薬の収益モデルは、国内外の製薬企業に対して、当社が開発した医薬品候補を導出(特定の医薬品を開発、販売するために必要な知的財産権の使用を許可すること)することによる契約一時金収入、開発の進捗に応じて支払われるマイルストーン収入、上市(※14)後に売上高の一定割合が支払われるロイヤリティ収入等を獲得することであります。
収入の形態 |
内容 |
契約一時金収入 |
契約締結時に一時金として受け取る対価。 |
マイルストーン収入 |
製薬企業等提携先が当社と契約締結後、当社又は提携先における研究開発が進捗し、契約上規定された特定の開発目標を達成した時の対価である開発マイルストーンと、医薬品販売後に、事前に設定した年間販売額を達成した時に受け取る収益である販売マイルストーンがあります。 |
ロイヤリティ収入 |
上市後に当該製品売上高に対して契約に設定された一定割合を受け取る収入。 |
当社は、これまでに創出したがん治療用抗体のうち、肝臓がんを標的とする抗体及び固形がんを標的とする放射性同位体標識抗体を、それぞれ製薬企業である中外製薬株式会社及び富士フイルム株式会社に導出しております。このうち富士フイルム株式会社に導出した2つの抗体(PPMX-T002及びPPMX-T004)は、同社の子会社の放射性医薬品事業の他社への譲渡により、2022年3月に実施権が返還されました。現在、有効性を高めた新たな抗体医薬品としての開発をそれぞれ進めております。また、難治性血液がんを標的とした抗体(PPMX-T003)は、2014年に国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)に採択された後、開発を進め、2018年より企業主体の開発に切り替えました。その後、自社で実施した治験結果に基づいて導出活動を進めております。この抗体については、導出活動中の対象疾患とは別の疾患においても開発を進めております。
なお、当社における抗体創薬の特長は、医薬品として高い薬理効果が期待できる新規抗体を効率的に取得することです。この抗体の物質特許が事業のベースになり、その抗体を医薬品として患者さんに届けるべく非臨床試験、臨床試験及び薬事承認を得るまでいかに早く進めるかが課題となります。導出は、一般的に、特許取得後すぐに大手製薬企業に導出するケース、自社で非臨床試験を完了してから導出するケース、自社単独であるいはパートナー企業と共同で臨床試験を実施し、パイプラインの価値を高めてから製薬企業に導出するケース等があります。この導出の形態は、薬剤の特性、薬剤ごとに異なる臨床試験の計画、適応疾患及び開発費用等を勘案して決定いたします。
近年、抗体医薬品の認知度が高まる中、多数の抗体医薬品が上市され、抗体医薬品ビジネスの競争も激化しつつあります。これに伴い、非臨床段階では有利な経済条件で導出することが難しくなりつつあります。当社は、抗体医薬品を早期に患者さんに届けるため、自社でも臨床試験を実施し、製薬企業への導出を推進してまいります。
なお、各開発品の詳細については、後述「(3)当社の開発品」をご参照ください。
② 抗体研究支援
当社は、これまでにがん等を対象とした抗体医薬品や研究用試薬の創出を通じて培ってきた技術や経験を活かして、抗体に関連した研究支援(受託)を実施しております。特にアカデミアや製薬企業に対する抗体研究支援は、当社の創薬活動におけるネットワークを広げる等のシナジー効果があります。
a.抗体作製
動物細胞を利用した組換え蛋白質の生産系を利用して、薬効を確認する試験に使用することが可能な抗体の作製を行います。一般にマウスなどを対象とした動物試験で使用する抗体の必要量は数十mg程度ですが、一般の試薬会社では100㎍単位で販売されるのに対し、組換え蛋白質として抗体の生産を委託会社に依頼した場合、数g単位のような過剰量であることも多く費用が高額になりがちです。それに対し、当社は生産量にフレキシブルに対応することが可能です。
b.配列解析
抗体産生細胞(ハイブリドーマ、一般に一種類の抗体を産生する)から、抗体の遺伝子配列(※15)を決定します。抗体の遺伝子配列は様々な標的との結合が可能となるように多様な組み合わせの配列を生成するという特有の特殊性を持つため、通常の配列決定法では一意に遺伝子配列を決めることが困難ですが、当社は独自に設計した遺伝子増幅用配列を用いることで、その抗体配列情報を解析することが可能です。そして、この解析を行うことでこの結果をもとにした特許出願を行ったり、前述した組換え蛋白質として抗体作製に用いたりすることが可能となります。
c.その他の研究受託
抗体は物理的な安定性や薬理的な効果など様々な観点での試験が行われ、その用途に応じて、最適な抗体が選択される必要があります。当社ではこれまでに培った抗体解析・評価ノウハウをもとに、ある標的に対して得られる多数の抗体群の中から、診断・治療に適した抗体を選別・提供するような研究受託を行います。また前述した抗体作製技術によって作製した抗体などを利用して薬効試験を代行・コンサルティングするなど、当社の抗体開発経験をもとにした各種サービスを提供することで、アカデミアの研究を支援いたします。
③ 抗体・試薬販売
当社では、がんや生活習慣病等、各種疾患のバイオマーカー(※16)となる核内受容体抗体を全48種類取り揃えており、世界の研究者に向けて研究用試薬として販売しております。また、核内受容体抗体以外のその他の研究用試薬として、PTX3 ELISAキット(※17)、抗体薬物複合体(ADC)研究用の抗体試薬等も販売しております。
a.核内受容体抗体 核内受容体とは細胞内でホルモンなどと結合することで遺伝子の発現調節を行う蛋白質で、ヒトでは48種類存在します。核内受容体は生命維持の根幹に関わる遺伝子調節機能を担っており、創薬標的としても注目されている蛋白質群です。当社は、この核内受容体に対する抗体を全種類開発し、研究用抗体として世界の研究者に販売提供しております。 |
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b.その他の研究用試薬 PTX3 ELISAキットは、血管炎症の程度を反映する指標と考えられている血液中のPTX3を高感度に測定できる研究用測定キットです。炎症の程度を鋭敏に捉えるPTX3の特徴を活かし、血管炎症を伴う各種疾患の重症化を予測するためのPTX3迅速計測キットの開発も別途進めております。また、ADC研究用抗体としては、ADCの血中薬物濃度測定等に用いることができる抗DM-1抗体、抗MMAE抗体、抗Exatecan抗体を販売し、ADCの研究開発に携わる研究者に提供しております。 |
<事業系統図>
(2)当社の技術
治療用抗体を取得するために、当社では①標的探索、②抗体探索、③抗体工学、④機能性蛋白質発現技術の各技術を保有しております。
① 標的探索
a.トランスクリプトーム(※20)解析
抗体医薬品の新薬開発において最も重要なことの1つが、その疾患の治療標的となる細胞表面に存在する蛋白質が何であるかを効率的に絞り込んでいくことです。当社では、油谷浩幸教授(LSBM)が構築したLSBMトランスクリプトームデータベースから得られた情報に基づき、治療標的となり得る有用な蛋白質を発掘し、がんの診断・治療に役立つ抗体を作製し、抗体医薬品候補として研究開発を行っております。
b.リバーストランスクリプトーム(※21)解析
疾患に関連した細胞(例えばがん細胞)の表面には、正常な細胞とは異なり、その疾患に特有の構造を持つ蛋白質が往々にして存在します。これらの蛋白質は抗体の標的分子となるため、当社は、その疾患に特異的な蛋白質の構造を正確にとらえた抗体を多数取得し、ライブラリ化しております。このようにして得られた抗体ライブラリには、診断や治療に有用な抗体が多数含まれていることが期待され、ここから様々な治療効果を示す抗体を選別し、その抗体が標的としている蛋白質の調査を進めていきます。このようにして得られた有用な抗体群は、治療薬候補の抗体として研究開発が進められます。
② 抗体探索
抗体を取得する方法として、当社ではファージディスプレイ法、ハイブリドーマ法及びシングルBセルスクリーニング法を実施しております。また、ファージディスプレイ法によって取得した抗体を効率的にスクリーニングする技術として、当社独自の手法であるICOS法(Isolation of antigen/antibody Complexes through Organic Solvent method)を開発し、活用しております。
a.ファージディスプレイ法
動物を用いない抗体取得方法として、以下の2つの抗体ライブラリから特定の標的分子と結合する抗体配列を選別します。当社は、保有する抗体ライブラリと独自のスクリーニング技術を組み合わせることで、薬剤となりうる抗体を取得しています。優れた抗体は、狙った標的分子のみに強く結合する性質を持ち、これを特異性(※22)、高親和性と呼びます。またその性質により、標的分子の機能を制御する場合は機能性抗体と呼ばれ、抗体医薬品においては重要な性能となります。
(a)ヒト抗体ライブラリ
当社は多種類のヒト抗体配列を揃えたヒトナイーブ抗体ライブラリ(※23)を保有しています。抗体は、それぞれ2本のH鎖(重鎖:分子量が大きい)とL鎖(軽鎖:分子量が小さい)によって構成されています。抗体の抗原認識に対する寄与度は、L鎖よりもH鎖の方がより大きいことが知られています。そこで、当社は保有するヒト抗体ライブラリのH鎖の多様性を増やして、多彩な抗原を認識できる抗体の存在比率を大幅に高めることにより、標的分子に対して多数の抗体群を取得することを可能としました。これにより、標的抗原に対して親和性の高い抗体を取得する可能性を向上させております。また、標的抗原に対して多数のエピトープ(※24)を認識する抗体群を取得することで、機能性抗体を取得する確率も高めております。
ナイーブレパートリーと呼ばれる、体内の抗体の中でも特に未熟な抗体は、一般的に、免疫寛容(※25)を受けておらず、さまざまな標的に対する反応性を持っています。当社ではそのような素材からライブラリに格納する抗体集団を構築する手法により、様々な標的分子に対して最適な抗体を作出することを可能にしております。
(b)VHH抗体ライブラリ
VHH抗体(Variable domain of Heavy chain of Heavy chain ※26)とは、ラクダ科の動物(ラクダ、ラマ、アルパカなど)の血液に含まれる重鎖のみから構成される特殊な抗体の抗原結合部分の分子を指します。VHH抗体は、ヒトの抗体と比べて分子量が小さく、熱に強いという特性があり、用途に応じて複数のVHHを繋げたり、新しい機能をもたせたりと加工しやすい抗体として近年注目を集めています。このため、医薬品だけでなく、研究用試薬や工業製品等の分野において幅広い用途への活用が期待されます。
特に、ラクダ科の中でもヒトコブラクダはアルパカやラマと比べてVHHの割合が高いという特長を有しており、当社はこうした優れた特性を持つヒトコブラクダの抗体配列を多種類揃えたナイーブ抗体ライブラリを保有しております。
(c)抗体スクリーニング技術 抗体医薬品の標的分子となる蛋白質は、細胞膜上に発現しますが、その蛋白質は折り畳まれて複雑な立体構造を作り出しています。抗体は抗原認識の際に標的分子の持つ立体的な構造に大きく影響されますので、スクリーニングの際には細胞を用いることが効果的です。 しかしながら生きた細胞をそのままスクリーニングに使うと、標的に特異的でない多数の抗体も含まれてしまうという問題が生じます。そのため、通常は精製された抗原がスクリーニングに使われますが、当該手法では、精製の過程で蛋白質の立体構造が失われてしまうため、標的蛋白質に対する最適な抗体を取得することは困難でした。これを解決した方法が、当社が独自に開発したICOS法です。ICOS法は有機溶剤を利用して、細胞が有機層に入る過程で、非特異的に吸着した抗体を細胞表面から除去する手法です。これにより、細胞上に存在する蛋白質の立体構造を反映した、親和性の高い抗体のみを効率的に取得することが可能となりました。 また細胞膜上の蛋白質に限らず、通常免疫法では取得が困難な標的に対しても最適なスクリーニング技術を開発しており、蛋白質はもちろん、低分子等様々な標的に対する抗体を取得することができます。 |
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b.ハイブリドーマ法 抗体作製技術の一つで、当社の抗体作製技術の出発点となっている基本的な重要技術です。蛋白質等の標的分子をマウス等の動物に免疫することで、抗体を産生する細胞(ハイブリドーマ)を作出する、古典的ですが信頼性の高い手法です。現在市販されている抗体医薬品の多くがこの手法で作られています。 抗体医薬品の主な標的である膜蛋白質の多くは、ヒト以外の動物でも同じ形で存在することが知られています。この様な標的の場合、通常の免疫方法では免疫が自分自身を攻撃するのを防ぐ機構を持つために、ヒトを形作るのと同じ構造を持つ蛋白質に対する機能性抗体の取得は難しいことが知られています(この現象を免疫寛容といいます)。しかし当社では、東京大学との多くの共同研究を通じて得た最先端の知識と、アジュバント(※27)と呼ばれる免疫増強剤の使用・投与方法の工夫といったノウハウを組み合わせることで、高い結合力で的確に標的に結合する抗体を効率的に取得しています。 |
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c.シングルBセルスクリーニング法
シングルBセルスクリーニング法は、特定の抗原に対して反応する抗体を生産するB細胞を単離し、モノクローナル抗体を取得する方法です。
この方法は極めてまれな抗体産生細胞を高精度かつ高効率で特定することができるため、高い特異性と親和性を持つ抗体が取得できます。また、得られた多数のB細胞から抗体遺伝子を取得することで効率よく多様な抗体を得ることが可能です。得られた抗体遺伝子を使って抗体産生細胞を作ることができるため、ハイブリドーマの作製が難しい動物種のモノクローナル抗体でも生産することが可能です。
③ 抗体工学 a.抗体配列解析 抗体配列を100%正確に解析することは、後述する抗体デザインを行う上で極めて重要な操作となります。 抗体産生細胞が生産する抗体のアミノ酸の並びを解読するためには、細胞から抗体の遺伝子を取り出し、その遺伝子配列を決定する必要があります。しかし抗体の遺伝子配列は、様々な標的との結合が可能となるように、多様な組み合わせの配列を生成するという特有の性質を持つため、通常の配列決定法では一意に遺伝子配列を決めることは困難です。そこで当社では独自に設計した遺伝子増幅用配列(プライマー(※28))を用いて、その抗体配列情報を解析しています。即ち、抗体産生細胞から抗体に翻訳される遺伝子領域を取り出し、その部分を独自に設計したプライマーを用いて増幅することで遺伝子配列を解析します。これにより当社では非常に多様な抗体の配列情報を正確に決定します。 |
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b.抗体医薬品設計 動物を免疫することによって得られた抗体は、そのままではヒトへの投与時に免疫原性などの問題が生じる可能性があるため、安全性を高める目的で、抗体のヒト化を実施します。一方、ヒト抗体ライブラリを使ってファージディスプレイ法で得られた抗体はヒト抗体ですので、ヒト化の工程は不要です。 こうしたヒト化抗体またはヒト抗体を、そのままの形で薬として利用する場合もありますが、必要に応じて放射性同位元素(RI)や強力な抗がん剤を抗体と連結したり、複数の抗体を結合させたBispecific抗体を作製したりすることで、がん細胞など標的への攻撃効果をさらに高めることができます。このように、ヒト抗体ライブラリや動物免疫により取得した抗体を様々に加工・設計することで、抗体を高度に進化させ、最新の治療手法に応用します。 |
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④ 機能性蛋白質発現技術(BV:Budded Virus)
高い結合力で的確に目標と結合する抗体を作製するには、標的となる蛋白質の細胞上での構造と機能を維持した状態で作製することが極めて重要です。当社はこの課題を克服する手段の一つとして、LSBMにて浜窪隆雄教授を中心に開発したBV(Budded Virus)技術を活用しています。この技術を用いると、標的蛋白質が構造と機能を保ったまま生産されるように遺伝子組換えを施したウイルスを昆虫細胞に感染させ、そこから放出されるウイルスを免疫源として直接利用することが可能です。これにより従来は作製することが困難だった標的蛋白質も免疫することが可能となり、これまで作製困難だった標的に対する抗体の取得が、さらに容易になりました。
(3)当社の開発品
当社の開発パイプラインの進捗状況は以下のとおりです。
(注1)PV:真性多血症
(注2)ANKL:アグレッシブNK細胞白血病
① PPMX-T002
PPMX-T002は、導出先の富士フイルム株式会社の事業方針の変更により、2022年3月に実施権が返還され、新たな医薬品候補として開発を進めております。
a.特徴
がん細胞で多数発現しているCDH3を標的とする抗体に、イットリウム90(90Y)という放射性同位体(RI)を標識した抗がん剤候補です。がん細胞上の標的に抗体が集積し、90Yが放射線を照射してがん細胞を殺傷する仕組みです。
PPMX-T002は、放射性同位体を標識した抗体(Armed抗体(※29))を用いた抗がん剤で、通常の抗体医薬品とは異なる作用メカニズムを持ちます。一般的な抗体医薬品は、抗体ががん細胞表面に発現する特定の蛋白質に結合し、生体が持つ免疫機能を誘引することで標的細胞を攻撃しますが、免疫機能が低下した患者さんに対しては効果が弱くなります。一方PPMX-T002は、遺伝子改変した抗体に放射性同位体を標識したもので、抗原抗体反応によってがん細胞に集積させ、放射線で直接 |
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がん細胞を攻撃することができます。このため、患者さんの免疫機能の状態に関わらず、高い効果が期待できます。また、PPMX-T002は、固形がんの細胞表面に多数発現しているCDH3を標的とし、肺がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん等の細胞に高い集積性を有する抗体を用いています。
b.開発状況
富士フイルム株式会社による米国における進行性固形がん患者さんでの第Ⅰ相試験において、PPMX-T002の抗体が、投与された患者さんのがん組織に集積すること及び安全性が確認された用量で一部症例において腫瘍の縮小が確認されました。ステージ4の患者さんを対象にした臨床試験で、15例中11例でSD(病勢安定)又はCR(完全寛解)という好成績が得られています。また、CRの症例では投与後、次第に腫瘍が小さくなり26か月後には卵巣がんが消失した症例がありました。
その後、当社では抗腫瘍効果をさらに高める目的でRIを90Yからアクチニウム225(225Ac)へ変更し、動物実験で効果を検証しました。これをもとに放射性医薬品開発会社を中心に導出を目指しております。
(出典 Subbiah et al. (2017) AACR Annual Meeting, Chicago, USA DOI: 10.1158/1538-7445.AM2017-CT097)
当社は、同社から米国における第Ⅰ相試験の治験データを含むすべての成果物を譲り受け、さらに有効性の高い放射性同位体標識抗体として開発を進めております。
c.対象疾患
CDH3陽性難治性固形がん(卵巣がん、胆道がん、頭頸部扁平上皮がん)
d.ライセンスの状況
2011年1月に、当社及び富士フイルムRIファーマ株式会社(現 富士フイルム富山化学株式会社)のPPMX-T002に関する権利(「研究・開発」及び「製造・販売」等)を富士フイルム株式会社に実施許諾する契約を締結しましたが、同社の子会社である富士フイルム富山化学株式会社の放射性医薬品事業の他社への譲渡に伴い、2022年3月に当該契約を解除しました。当該事業の承継先であるPDRファーマ株式会社と協議した結果、当社が今後の開発及び導出活動を主導することが決定しました。
② PPMX-T003
a.特徴
PPMX-T003は、ファージディスプレイ法により取得された抗体で、トランスフェリン受容体1(TfR1)を標的とします。TfR1は、鉄と結合したトランスフェリンを細胞内に取り込むために、細胞膜上に発現しています。細胞の生存には細胞内への鉄の取り込みが必須ですが、中でも赤血球になる前の細胞である赤芽球と、増殖が盛んな全てのがん細胞は極めて多くの鉄を必要とするため、TfR1が高発現していることが広く知られています。このため、鉄の取り込みを阻害することで細胞内の鉄を枯渇させ、がん細胞を死滅させるという試みが、古くから行われてきました。これまでに数多の研究者が抗TfR1抗体の研究開発に取り組んできましたが、臨床で使用可能な抗体はいまだ見出されておりません。こうした中、当社は、独自のスクリーニング技術であるICOS法を取り入れたファージディスプレイ法により、極めて高い鉄取り込み阻害能を示す完全ヒト抗体を取得しました。現在、幅広い血液疾患を対象とした治療薬の開発を計画しており、まずは真性多血症(PV:Polycythemia Vera)に対する治療薬開発を目指して、第Ⅰ相試験を国内で実施し、2024年6月に終了しました。
下の中央図は、PPMX-T003が、ブロッキング抗体としてTfR1からの鉄結合蛋白質の取り込みを阻害する様子を表しています。右のグラフは、TfR1に対する結合阻害率を評価した競合アッセイデータです。横軸は濃度で左に行くほど結合が強く(低濃度で阻害する)、下に行くほど結合阻害率が高いことを示します。体内にあるトランスフェリンと比較して、PPMX-T003は、100倍以上結合が強いこと、また、完全に結合阻害していることがわかります。A24は従来の抗体で、結合力も弱く阻害率が半分にも到達していません。
<がん細胞の鉄の取込みを阻害すると細胞死・増殖抑制するイメージ図、及びPPMX-T003の結合活性を従来の抗体と比較したデータ>
PPMX-T003は、TfR1に結合することでがん細胞への鉄の取り込みを阻害し、強力な抗腫瘍効果を示しています。これにより、化学療法剤で生じるような患者さんの大幅なQOL(※30)低下を伴わない治療効果が期待されます。
また、東海大学(2024年4月1日からは大阪大学)との共同研究においては、PPMX-T003の優れた鉄取り込み阻害能が、アグレッシブNK細胞白血病(ANKL)という超希少疾患にも有効である可能性が示されました。患者由来腫瘍細胞を移植したマウスモデルによるPPMX-T003の投与実験で、極めて高いがん細胞増殖抑制効果及び生存期間の延長が確認され、2022年3月には、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択され、3ヵ年の支援を受けてきました。本事業を受けて開始された医師主導第I/Ⅱ相試験(以下「本治験」)は、当事業年度内に終了する計画でしたが、超希少疾患のため予定どおりに被験者登録が進まず、治験調整医師の判断により、治験期間が1年延長されました。
なお、本治験は2025年2月に再び本事業に採択されております。今後の被験者登録を加速するため、本報告書提出日現在、治験実施施設を7か所から9か所に増やしております。
このほか、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫等の血液がん及び固形がんに対する治療薬としての作用機序を明確化するため、名古屋大学等と共同で創薬研究を推進しております。
以下のデータ(表)は様々な血液がん細胞に対する増殖抑制効果のデータです。一番下の正常細胞(臍帯由来細胞)に対して、最下段以外の全てが種々のがん細胞で、そのEC50(細胞増殖を50%抑制するために必要な薬剤濃度)は2桁以上少なく、がん細胞が正常細胞に比較してPPMX-T003に敏感で、強く増殖抑制されることが示されています。
<正常細胞に対してがん細胞に強く作用するPPMX-T003の細胞増殖抑制の比較データ(表)>
(注) 細胞株とは、がん組織から採取し、安定的に増殖・培養できるようにした実験用細胞のこと
以下のデータは担癌マウスを用いた動物実験データです。急性骨髄性白血病(AML)や悪性リンパ腫で薬剤の用量依存的にがん細胞の増殖が抑制されていることが示されています。いずれも横軸は日数、縦軸は腫瘍の大きさで、矢印は薬剤の投与を表しています。二つのグラフはいずれも、薬剤無し(Control)で日数と共に急速に腫瘍体積が大きくなっています。これに対してPPMX-T003を投与すると、投与量が増えるとともに腫瘍体積の増大が抑制されています。特に30日目以降は、その後薬剤の投与が行われていないのに腫瘍体積は増えていません。つまり、PPMX-T003は用量依存的に腫瘍体積の増加を抑制し、投与量が多い場合はがんを消失していることが確認できました。
(出典 Zhang et al.(2017) AACR Annual Meeting, Chicago, USA DOI: 10.1158/1538-7445.AM2017-5586)
b.開発状況
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究成果最適展開支援プログラムの採択後、2018年にサルを用いた非臨床毒性試験(GLP毒性試験)を完了し、2015年に終了した予備試験と同様の結果を得ております。また、本非臨床毒性試験完了をもって研究成果最適展開支援プログラムは終了し、2018年より企業主体の開発に切り替えました。その後、自社で実施した治験結果に基づいて導出活動を進めております。この抗体については、導出活動中の対象疾患とは別の疾患においても、新たな医薬品候補となる可能性が認められ開発を進めております。
PPMX-T003は種々の血液がんで治療効果が期待されますが、最初に真性多血症治療薬の開発に取り組んでいます。真性多血症(PV)は赤血球が通常より多い疾患で血栓生成が問題です。現在の治療法は、瀉血(しゃけつ)又は抗がん剤等の薬物療法です。瀉血は体内の鉄分が不足するため、貧血や脱力感、うつ病、手足むずむず病等の精神症状を伴い、QOLが悪いという課題があります。また、抗がん剤等の既存の薬物療法は骨髄抑制や2次がん発症リスク等の問題があります。これに対して、PPMX-T003は、既存の治療法で問題となる副作用の大幅な低減が期待されます。
以下に真性多血症の標準的治療法と課題について図に示します。
<真性多血症と治療>
以下のデータは、順天堂大学における真性多血症の患者さんの瀉血検体を用いた内因性赤芽球コロニーの増殖試験の結果です。PPMX-T003を加えた細胞培養の実験で、赤芽球コロニーの形成が阻害されていることがわかります。これは、PPMX-T003の真性多血症治療薬としての可能性が、ヒトの検体を用いて検証された、重要な事例です。
(出典:第81回日本血液学会学術集会「抗TfR1抗体による真性多血症内因性赤芽球コロニーの形成阻害」)
2019年11月より健常人を対象とした第Ⅰ相試験を開始しました。
2021年3月に治験総括報告書が完成した健常人の第Ⅰ相試験では、日本人健康成人男性へのPPMX-T003の投与量0.25mg/kgまでの単回持続静脈内投与において、安全性が確認されたと考えております。
次に、PVを対象疾患と定めて第I相試験を国内で実施し、2024年6月に終了しました。
なお、この第I相試験の結果につきましては、2024年12月に行われた第66回全米血液学会(ASH)年次総会で、被験者都合により中止となった1例を除く5例において12週間の瀉血不要期間が達成されたことや、全6例においてヘマトクリット、ヘモグロビン等の赤血球パラメータで薬効が示唆されたことを報告しました。
また、「a.特徴」に記載のとおり、ANKLという超稀少疾患の治療薬となる可能性も示され、2023年4月より医師主導第I/Ⅱ相試験が実施されております。2023年9月には、最初の2名の患者さんに投与が行われました。稀少疾患であるため、被験者への投与が滞りなく行われるよう、全国7か所の基幹病院での治験実施体制を整備してまいりました。その後、被験者の登録が滞ったため、さらに2か所の基幹病院を追加しております。ANKLの有効な治療薬の開発に向けて、今後も治験を推進してまいります。
さらに、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫等の血液がん及び固形がんの治療薬としての作用機構を明確化するため、名古屋大学等と共同で臨床効果に関する創薬研究を推進しております。
c.対象疾患
血液がん
d.ライセンスの状況
本書提出日現在、グローバルでのライセンス活動を進めております。
③ PPMX-T004
PPMX-T004は、導出先である富士フイルム株式会社の事業方針の変更により、2022年3月に実施権が返還されており、新たな医薬品候補として開発を進めております。
a.特徴
PPMX-T004は、PPMX-T002と同じく、がん細胞表面に存在するカドヘリン3(CDH3)を標的としています。CDH3は、細胞間接着蛋白質として機能すると考えられています。PPMX-T004は、遺伝子改変した抗体に薬物を結合した抗体薬物複合体(ADC)(※31)で、結合した薬物によって、本抗体と結合したがん細胞を殺傷することができるため、患者さんの免疫機能の状態に関わらず、高い効果が期待できます。PPMX-T004では、固形がんの細胞表面に多く発現しているCDH3を標的とし、がん細胞に対し高い内在性を有する抗体を用いています。
b.開発状況
当社において、新たな医薬品候補として開発を進めております。より有効性の高い薬剤と、薬剤と抗体とを結合させるためのリンカー(※32)の最適な組み合わせを見出し、マウスによる実験でも高い抗腫瘍効果を認めました。これを受けて、現在は予備毒性試験を進めております。
c.対象疾患
CDH3を発現する固形がん
d.ライセンスの状況
2015年9月に、PPMX-T004に関する権利(「研究・開発」及び「製造・販売」等)を富士フイルム株式会社に実施許諾する契約を締結しましたが、富士フイルム株式会社の事業方針の変更により、2022年3月に当該契約を解除しました。より高い有効性が期待される薬剤やリンカーに変更した新たな医薬品候補として開発を進めており、本書提出日現在、導出先は決まっておりません。
④ その他
当社は患者組織を利用することで取得した疾患特異的な標的候補を多数保有しております。これら標的群に対する抗体取得を順次進めており、Naked抗体(※33)、Armed抗体等、多様なプラットフォームを用いた自社開発プログラムを推進中です。
<用語集>
|
用語 |
説明 |
※1 |
抗体 |
抗原(免疫反応を引き起こす物質)の構造に応じて1対1の関係で特異的に結合する蛋白質。この特異的な結合力を利用して、がんや感染症、疾患を診断・治療する医薬品(分子標的薬)に応用されます。 |
※2 |
シーズ |
医薬品の候補となる物質。 |
※3 |
ハイブリドーマ法 |
抗体を産生する細胞と不死化細胞を融合して、1種類の抗体を多量に産生する技術。免疫方法や細胞の調整といった手法が確立され、ファージディスプレイ法と比較して安価で簡便であることから、広く一般的に行われています。親和性の高い抗体が取得可能ですが、取得した抗体がヒト以外の動物由来のものであるため、医薬品として使用するためには抗体をヒト化する必要があります。また、ファージディスプレイ法と比較して複雑な構造の標的分子に対する抗体の作成が困難です。 |
※4 |
親和性 |
ある物質が特定の物質と選択的に結合しようとする性質、傾向。 |
※5 |
ファージ |
細菌に感染するウイルスの総称。ファージに様々な遺伝子を組み込むことで細菌に人為的に特定の蛋白質を作らせることができます。 |
|
抗体ライブラリ |
ある特定の手段あるいは目的をもって構成された抗体あるいは抗体遺伝子の集合。 |
※6 |
スクリーニング |
様々な指標で目的とする物質を選択する操作。 |
※7 |
シングルBセルスクリーニング法 |
特定の抗原に対してのみ反応する抗体を生産するB細胞を単離し、モノクローナル抗体を取得する方法。 |
※8 |
ファージディスプレイ法 |
細菌に感染するウイルスであるファージに抗体分子を表出する技術。標的分子と反応させることで、特異的に結合する抗体クローンを見つけ出すことができます。ハイブリドーマ法と比較してヒト抗体ライブラリから直接ヒト抗体を取得できる利点がある一方、コストが高く、抗体ライブラリ作製に熟練が必要であることに加え、一般的には親和性の高い抗体の取得が困難です。 |
※9 |
マウス抗体 |
マウスに免疫して得られた抗体。 |
※10 |
キメラ抗体 |
遺伝子工学的手法によりマウス抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域を連結したもの。 |
※11 |
ヒト化抗体 |
遺伝子工学を用いてマウスで作成した抗体の抗原結合部位をヒト由来の抗体分子に移植して作製された抗体分子で、配列的にキメラ抗体より、ヒト抗体に近いものです。 |
※12 |
完全ヒト抗体 |
蛋白質配列が全てヒト遺伝子に由来する抗体。他の生物種由来の配列を含まないため、より安全性が高いと考えられています。 |
※13 |
抗体医薬品 |
抗体の様々な機能を利用した医薬品。抗体はその構造の同一性から、製造技術の確立が進み、バイオ医薬品としての開発が盛んに行われています。 |
※14 |
上市 |
医薬品として承認され、実際に市販されること。 |
※15 |
抗体の遺伝子配列 |
抗体は蛋白質の一種であり、そのアミノ酸配列を決定するDNA(デオキシリボ核酸)の塩基の並びのこと。 |
※16 |
バイオマーカー |
生体内の生物学的変化を定量的に把握するため、血中蛋白質量等の生体情報を数値化・定量化した指標。疾患の有無や進行度合いの指標になります。 |
|
用語 |
説明 |
※17 |
PTX3 |
Pentraxin3の略。体内の炎症により産生される炎症性蛋白質の一つ。 |
|
ELISA |
Enzyme-Linked Immunosorbent Assay(酵素免疫測定法)の略。試料溶液中に含まれる目的物(一般的には蛋白質)を、これに特異的に結合する抗体で捕捉し、酵素反応に基づく発光、発色をシグナルとして検出することで目的物の濃度を計測する方法。 |
※18 |
CRO |
Contract Research Organization(医薬品開発業務受託機関)の略。製薬企業、医療機関、行政機関等の依頼により、医薬品、医療機器、食品(特定保健用健康食品)、化粧品等の臨床開発及び臨床試験(治験)に関わる業務を、受託、又は労働者派遣等で支援する機関のこと。 |
※19 |
CMO |
Contract Manufacturing Organization(医薬品製造受託機関)の略。製薬企業から医薬品(治験薬・市販薬を含む)の製造を受託します。 |
※20 |
トランスクリプトーム |
特定の状況下において細胞中に存在するmRNAの総体。 mRNA:Messenger RNA(伝令RNA)の略。蛋白質に翻訳される遺伝子情報を持つRNA(遺伝子の情報を伝える物質)のこと。 |
※21 |
リバーストランスクリプトーム |
特定の状況下での発現産物の総体から発現産物を同定するトランスクリプトームから逆の過程を経ることから想起した造語。 |
※22 |
特異性 |
抗体が特定の抗原にのみ結合して他とは結合しない性質。 |
※23 |
ヒトナイーブ抗体ライブラリ |
人のリンパ球由来抗体遺伝子をもとに構築された抗体配列の集合体。ナイーブとはいまだ特性の抗原に対して刺激を受けていない状態。刺激をうけると特定の抗原に対して特異性と親和性を向上させていきます。 |
※24 |
エピトープ |
抗体が標的とする物質の結合領域。 |
※25 |
免疫寛容 |
体の中で作られる抗体が自分の細胞を攻撃しないように自己抗原に対する抗体をあらかじめ排除する機構。抗体が作られる初期の段階で選別が行われます。 |
※26 |
VHH抗体 |
ラクダ科動物が持つ特殊な抗体分子(重鎖抗体)の可変領域(Variable domain of Heavy chain of Heavy chain antibody)の略称。 |
※27 |
アジュバント |
抗原と一緒に投与して、その効果を高めるために使用する物質。 |
※28 |
プライマー |
遺伝子を増幅する際の起点として使用されるDNA断片。 |
※29 |
Armed抗体 |
放射性同位体や細胞傷害剤等を連結した抗体。連結した物質の種類により、例えばがん細胞への攻撃力を高めるなどが期待できます。 |
※30 |
QOL |
Quality of Lifeの略。日本語では「生活の質」「生命の質」と訳されます。患者さんが、人間らしく満足行く生活が送れているのかという尺度として捉えられます。 |
※31 |
ADC |
Antibody Drug Conjugate(抗体薬物複合体)の略。強力な細胞傷害活性を持つ薬物が連結されている抗体。ADCは標的を介して細胞内部に取り込まれ、連結している薬物の効果で細胞を殺傷します。 |
※32 |
リンカー |
ADCの構成物の一つで、抗体と薬物とを結合するものです。薬物をいつ、どのように切断するかの制御も行います。 |
※33 |
Naked抗体 |
何の修飾も施していない抗体。 |
業績
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要、及び経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当事業年度における世界経済は緩やかな回復を示したものの、中国経済の先行き懸念、ウクライナや中東の情勢等から、不透明な状況が継続しました。国内経済は、一部に足踏みが残るものの緩やかに回復しましたが、物価上昇や米国の今後の政策動向、中東地域をめぐる情勢等の影響に注意が必要な状況が続きました。
当社が属する医薬品業界におきましては、がんや認知症等、世界的に患者数が増えている疾患の治療法の確立が継続的な重要課題になっております。当社におきましては、創薬領域を中心に、積極的な事業展開を図りました。
各領域における成果は次のとおりです。
a.創薬
当社の効率的な抗体取得プラットフォームを活用し、主にがん領域で抗体開発を進めております。カドヘリン3(CDH3)を標的とするPPMX-T002及びPPMX-T004、トランスフェリン受容体1(TfR1)を標的とするPPMX-T003という3つの抗体の開発を進めているほか、これらに続く候補抗体の評価・検討を進めております。
当事業年度には、PPMX-T002及びPPMX-T003の導出を目指しておりましたが、達成できませんでした。できる限り早期の導出に向けて活動を継続いたします。
次世代の創薬につきましては、効率的な抗体取得技術の整備を進めており、当事業年度には当社ファージライブラリを改良したPPMX抗体ライブラリ2の作製に成功いたしました。これを用いて当社のデータベースを整備し、当社が独自に開発を進めているAI創薬により、取得が難しい高難度抗原に対する抗体取得を進めてまいります。
当社のパイプラインの開発状況は次のとおりです。
(a)PPMX-T002
PPMX-T002は、がん細胞で多数発現しているCDH3を標的とする抗体に、イットリウム90(90Y)という放射性同位体(RI)を標識した抗がん剤候補です。がん細胞上の標的に抗体が集積し、90Yが放射線を照射してがん細胞を殺傷する仕組みです。導出先の富士フイルム株式会社(以下「富士フイルム社」)の事業方針の変更により、2022年3月に実施権が返還され、新たな医薬品候補として開発を進めております。富士フイルム社の子会社が米国で行った第I相試験においては、本抗体が標的のがん細胞へ集積することが確認されております。当社は、抗腫瘍効果をさらに高める目的でRIを90Yからアクチニウム225(225Ac)へ変更し、動物実験で効果を検証しました。これをもとに放射性医薬品開発会社を中心に導出を目指しております。
(b)PPMX-T003
PPMX-T003は、当社のファージライブラリの中から、ICOS法という独自のスクリーニング技術を活用して取得したユニークな完全ヒト抗体です。標的は、細胞内への鉄の取り込みに関与し、増殖が盛んながん細胞に極めて多く発現するTfR1です。本抗体がTfR1に結合すると、がん細胞内では鉄の取り込みが阻害され、それによってがん細胞は増殖が抑制され抗腫瘍効果が得られます。PPMX-T003は、その増殖抑制効果から様々ながんに対する治療効果が期待できると考えられ、鋭意研究開発を進めております。
TfR1は、がん細胞のほかに、赤芽球細胞(赤血球になる前の細胞)にも極めて多く発現しています。このため、まずは赤血球が異常に増える疾患である真性多血症(PV)を対象疾患と定めて第I相試験を国内で実施し、2024年6月に終了しました。
なお、この第I相試験の結果につきましては、2024年12月に行われた第66回全米血液学会(ASH)年次総会で、被験者都合により中止となった1例を除く5例において12週間の瀉血不要期間が達成されたことや、全6例においてヘマトクリット、ヘモグロビン等の赤血球パラメータで薬効が示唆されたことを報告しました。
本抗体はまた、アグレッシブNK細胞白血病(ANKL)という超希少疾患に対する有効な治療薬となる可能性も見出されており、2022年3月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」(以下「本事業」)に採択され、3ヵ年の支援を受けてきました。本事業を受けて開始された医師主導第I/Ⅱ相試験(以下「本治験」)は、当事業年度内に終了する計画でしたが、超希少疾患のため予定どおりに被験者登録が進まず、治験調整医師の判断により、治験期間が1年延長されました。
なお、本治験は2025年2月に再び本事業に採択されております。今後の被験者登録を加速するため、本報告書提出日現在、治験実施施設を7か所から9か所に増やしております。
このほか、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫等の血液がん及び固形がんに対する治療薬としての作用機序を明確化するため、名古屋大学等と共同で創薬研究を推進しております。
当社は、PPMX-T003の価値最大化に向けて研究開発を進めると共に、早期の導出に向けて活動を継続いたします。
(c)PPMX-T004
PPMX-T004は、CDH3を標的とする抗体に薬物を結合した抗体薬物複合体(ADC)です。ADCは、抗体に結合した薬物を細胞内に取り込ませることで、対象のがん細胞を特異的に殺傷することができるため、患者さん自身の免疫機能の状態に関わらず高い臨床効果が期待できます。
当社はPPMX-T004の抗体に結合させる最新の薬物及びリンカー等の最適な組み合わせを見出し、マウスによる実験でも高い抗腫瘍効果を認めました。これを受けて、現在は予備毒性試験を進めております。薬効と毒性のバランスの最適化は2026年3月期以降となる見込みです。
なお、当社は2024年10月にUBE株式会社とADCに関する共同研究契約を締結し、PPMX-T004のみならず、様々ながん抗原に対するADCの探索研究を進めております。
b.抗体研究支援
抗体研究支援の売上高は、規模の大きい案件の受注や案件数の増加、また、創薬企業ならではの知見を活かしたサービスの提供等により、24,351千円(前事業年度比17.4%増)となり、5期連続で増加しました。なお、新たな抗体研究支援サービスとして、VHH抗体ライブラリを用いた抗体スクリーニング・作製サービスの提供を、2025年5月に開始しております。
c.抗体・試薬販売
抗体・試薬販売の売上高は96,024千円(前事業年度比20.5%増)となり、順調に進捗しました。2024年11月には、ADCの研究開発に活用するための抗MMAE抗体を発売しました。さらに、別のADC研究開発用抗体として抗Exatecan抗体を、疾患研究用抗体として抗GPR87抗体を、それぞれ2025年4月に発売しております。
また、湧永製薬株式会社と共同で開発しているPTX3迅速計測キットについては、2024年12月末時点で、心血管疾患の一種(非公開)を対象とした体外診断用医薬品としての臨床性能試験が完了し、現在製造販売承認へ向けた準備を進めております。PTX3は、血管炎だけでなく、種々の炎症によっても血中濃度が上がることが知られており、今後多様な炎症性疾患の予後を予測する体外診断用医薬品としての研究開発を進めてまいります。
以上の結果、当事業年度の売上高は120,375千円(前事業年度比19.9%増)となりました。損益につきましては、主にPPMX-T004の開発が計画より遅れていることにより、研究開発費が594,547千円となり、計画よりも減少した結果、営業損失は826,430千円(前事業年度は営業損失894,729千円)となり、損失額が前事業年度に比べ68,299千円減少しました。経常損失は受取利息1,951千円や業務受託料等1,776千円による営業外収益3,727千円の計上、並びに新株予約権の行使による株式の発行に伴う租税公課3,271千円や為替差損2,887千円、及び新株発行費用等966千円による営業外費用7,126千円の計上により、829,829千円(前事業年度は経常損失879,380千円)となり、損失額は前事業年度に比べ49,551千円減少しました。また、当社が保有する固定資産につきまして「固定資産の減損に係る会計基準」に基づく減損損失として72,510千円を特別損失に計上したこと等により、当期純損失は904,800千円(前事業年度は当期純損失1,104,460千円)と前事業年度に比べ199,660千円減少しました。
なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
財政状態については、次のとおりであります。
(資産)
当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べ125,027千円増加し、1,818,837千円となりました。主に、新株予約権の行使による株式の発行等により現金及び預金が126,501千円増加したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債は、前事業年度末に比べ90,965千円増加し、386,431千円となりました。主に、AMEDの「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」への採択により交付された助成金である長期預り金が95,077千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ34,061千円増加し、1,432,406千円となりました。主に、新株予約権の行使による株式の発行等により資本金と資本準備金がそれぞれ466,889千円増加した一方、当期純損失904,800千円の計上により利益剰余金が減少したことによるものであります。
経営成績については、次のとおりであります。
(売上高)
当事業年度の売上高は、120,375千円(前事業年度100,402千円、前事業年度比19.9%増)で、抗体研究支援、抗体試薬販売の売上はそれぞれ前事業年度比17.4%、20.5%増となりました。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は、16,324千円(前事業年度12,717千円、前事業年度比28.4%増)となりました。
この結果、当事業年度の売上総利益は、104,051千円(前事業年度87,685千円、前事業年度比18.7%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、930,481千円(前事業年度982,415千円、前事業年度比5.3%減)となりました。
うち研究開発費は594,547千円(前事業年度616,004千円、前事業年度比3.5%減)となりました。
この結果、営業損失は826,430千円(前事業年度は営業損失894,729千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当事業年度の営業外収益は、3,727千円(前事業年度は21,111千円、前事業年度比82.3%減)となりました。主なものは、受取利息1,951千円や業務受託料等1,776千円であります。
当事業年度の営業外費用は、7,126千円(前事業年度は5,762千円、前事業年度比23.7%増)となりました。主なものは、新株予約権の行使による株式の発行に伴う租税公課3,271千円や為替差損2,887千円であります。
この結果、経常損失は、829,829千円(前事業年度は経常損失879,380千円)となりました。
(特別利益、特別損失、当期純損失)
当事業年度の特別損失は、72,510千円(前事業年度は223,290千円、前事業年度比67.5%減)となりました。当社の事業の特性上、現段階では、将来の収入の不確実性が高いことから、医薬品事業に係る資産の回収可能額をゼロとし、帳簿価額と備忘価額との差額72,510千円を特別損失に計上しました。
これらの結果を受け、当事業年度の当期純損失は、904,800千円(前事業年度は当期純損失1,104,460千円)となりました。
(パイプライン)
パイプラインの状況については、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3)当社の開発品」をご参照ください。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ126,501千円増加し、1,667,921千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、719,485千円の支出となりました。主に、AMEDからの助成金である長期預り金等によるキャッシュ・フローの増加があった一方、税引前当期純損失902,340千円の計上等による減少があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、75,157千円の支出となりました。研究開発用の有形固定資産の取得による支出75,157千円による減少があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、923,381千円の収入となりました。主に新株予約権の行使による株式の発行による収入932,269千円等によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b.受注実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当社は医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載はしておりません。当事業年度における販売実績は次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(千円) |
前事業年度比(%) |
医薬品事業 |
120,375 |
119.9 |
合計 |
120,375 |
119.9 |
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
R&D Systems, Inc. |
27,812 |
27.7 |
40,324 |
33.5 |
Pierce Biotechnology, Inc. |
27,433 |
27.3 |
28,490 |
23.7 |
フナコシ株式会社(※) |
15,703 |
15.6 |
- |
- |
Abcam plc(※) |
10,403 |
10.4 |
- |
- |
(※)当事業年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が10%未満であるため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。また、財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。
特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
(固定資産の減損処理)
当社は、固定資産のうち営業活動から生ずる損益が継続してマイナスになっている資産について、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
(繰延税金資産)
繰延税金資産の回収可能性の判断については、将来の課税所得を合理的に見積り、将来の税金負担を軽減する効果を有すると考えられる範囲内で繰延税金資産を計上することになります。当社は、税務上の欠損金が継続しており、繰延税金資産の回収可能性を合理的に見積もることは困難と判断し、繰延税金資産を計上していません。
② 財政状態及び経営成績の分析
財政状態及び経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
③ キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
「3 事業等のリスク」に記載したとおり、外部環境、事業内容、組織体制等の様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に業界の動向を注視しつつ、優秀な人材の確保と適切な教育を実施するとともに、内部管理体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の主な資金需要は、PPMX-T003の開発及び創薬研究に係る研究開発費、並びに事業運営費等であります。これらの費用は、当期は自己資金で賄い、その残金は、すべて銀行預金とし、資金の流動性を確保しております。キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
⑥ 経営者の問題意識と課題について
当社は、「最先端の抗体技術で世界の医療に貢献する」ことを企業理念としております。この企業理念実現のために、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の課題に対して取り組んでまいります。
⑦ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおり、ROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)といった数値的な目標となる経営指標は用いておりませんが、経営指標として、将来の売上に繋がるパイプラインの開発の進捗、パイプラインの拡充及び売上高を重要な目標と考え、事業活動を推進しております。なお、パイプラインの開発の進捗については、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3)当社の開発品」に記載しております。