事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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売上
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利益
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利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
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利益率 (%) |
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(単一セグメント) | - | - | -836 | - | - |
事業内容
3 【事業の内容】
当社は、有効な治療法が確立していない神経難病に対して、当社取締役CSO(Chief Scientific Officer)兼慶應義塾大学教授、再生医療リサーチセンター センター長の岡野栄之、および当社取締役CTO(Chief Technology Officer)兼同大学医学部整形外科学教室教授の中村雅也を中心とした長年の基礎研究の成果を実用化し、一刻も早く臨床の現場に有効な治療法を届けるため、慶應義塾大学医学部発のベンチャー企業として、2016年11月に、「医療イノベーションを実現し、医療分野での社会貢献を果たします」を経営理念として、医薬品および再生医療等製品の研究・開発・製造・販売を事業目的として設立いたしました。
当社事業の主要な対象としております中枢神経疾患領域につきましては、筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」*1という。)など我が国においても難病に指定される疾患が多く存在し、アルツハイマー病(*2)に代表される様々な認知症症状に対しても、有効な治療薬の開発が求められております。また、脊髄損傷(*3)や脳梗塞(*4)などの損傷疾患についても、未だ有効な治療法が確立しておりません。ALSの患者数は、世界では約33万人、国内では約1万人(出典:Clarivate Analytics データベース)と推定されており、脊髄損傷につきましては、国内の亜急性期の脊髄損傷(*5)患者数は年間約5千人(出典:総合リハビリテーション「疫学調査」2008年)、慢性期の脊髄損傷(*6)患者数は約10~20万人(出典:総合リハビリテーション「疫学調査」2008年)、脳梗塞の患者数は約130万人(出典:Clarivate Analytics データベース)とされております。
これらの対象患者に対して画期的な医療イノベーションの実現により有効かつ安全な医療成果を届けるため、当社におきましては、iPS細胞(*7)を活用したiPS創薬事業と再生医療事業のハイブリッドで慶應義塾大学医学部をはじめとする大学や研究機関等と連携して研究開発を推進すると共に、バリューチェーン(*8)を構成する各企業とも連携して事業活動を推進しております。なお、当社は医薬品等の研究・開発・製造・販売の単一セグメントであります。
(1)当社の事業領域
当社は、中枢神経疾患領域に対して、iPS細胞を活用したiPS創薬と脊髄損傷等の神経損傷部位に移植する再生医療等製品の開発を主たる事業としております。
①はじめに
長年、中枢神経領域において、「神経は再生しない」という考え方が一般的でありましたが、当社の創業科学者兼取締役CSOである岡野栄之等の研究チームが、神経幹細胞のバイオマーカー(*9)である遺伝子「musashi」を発見し、世界で初めて、ヒト脳の中にも神経幹細胞(*10)が存在することを示したことにより、中枢神経領域の再生医療の可能性を見出し、臨床での神経再生が現実的なものとなってきました。
また、2007年に京都大学山中伸弥教授の研究グループがヒトの皮膚細胞からiPS細胞の樹立に成功したことにより、(ⅰ)iPS細胞を活用した細胞移植治療/再生医療、(ⅱ)iPS細胞による病態解明・薬効評価の可能性が示されました。そこで、慶應義塾大学において岡野栄之と中村雅也の研究チームは、脊髄損傷の治療に対してiPS細胞から分化誘導(*11)した神経細胞を活用する研究を開始し、また、岡野栄之の研究チームは、ALSの患者様由来のiPS細胞から樹立した神経細胞を活用したALS治療薬の開発に着手致しました。
②当社の優位性
当社は、当社取締役CSO兼慶應義塾大学教授、再生医療リサーチセンター センター長の岡野栄之、および当社取締役CTO兼同大学医学部整形外科学教室教授の中村雅也を中心とした長年の基礎研究をもとに事業を展開しており、特に、当社の事業の対象としている中枢神経疾患領域においては、大学や研究機関等において蓄積してきた知見を活用して、研究所において各種ノウハウや技術(iPS細胞から神経細胞に適切かつ効率的に分化誘導することができる技術、創薬に適した表現型(*12)を構築するためのノウハウや技術、再生医療として神経細胞に分化誘導し移植するためのノウハウや技術など)を活用して研究開発を推進しております。
③iPS創薬事業
当社は、iPS創薬の研究開発の手法として、病気の患者様由来のiPS細胞から分化誘導した神経細胞を用いた表現型スクリーニングによる化合物・薬剤候補分子の効率的なin vitro(*13)スクリーニングを実施しております。具体的には、患者様から提供を受けた細胞を用いて疾患の特異的な情報を有するiPS細胞を樹立したうえで、神経細胞に分化誘導し、既存の数多くある化合物ライブラリー(*14)の中から、当該iPS細胞から分化誘導した神経細胞に対する各表現型に関して、その量、機能的な活性、反応を定性的または定量的に測定をすることで、薬剤の候補となる可能性のあるヒット化合物(*15)を選別しております。また、併せて、疾患の特異的な情報を有するiPS細胞から分化誘導した神経細胞を用いた疾患のメカニズムの解析や薬剤のターゲットとなりうる物質や遺伝子の解析等を共同研究先である慶應義塾大学医学部と共に進めております。
iPS創薬の手法は、従来の創薬開発プロセスと異なり、前臨床の段階で動物の疾患モデルでの評価を介さず、かつ直接的にヒトの病態を反映した細胞を活用することにより、ヒトでの予見性が高い創薬手法となることから、従来の創薬開発プロセスより短期間で行うことが可能であり、当社では、アンメットメディカルニーズ領域(*16)の疾患に対して効率的かつ合理的に創薬を進めてまいります。
また、さらに、当社のiPS創薬事業は、他の疾患のために開発された既存の医薬品・化合物の中から、新しい効果を発見して新しい医薬品の開発を行う方法であるドラッグリポジショニングという創薬手法を活用することにより、新たに化合物を開発することがなく、特に既に上市された医薬品を用いる場合には、既にヒトに対して一定の安全性が確認されていることから、創薬の研究開発に係る費用や時間について、これまでの新薬開発に必要な期間を3~12年、費用を50~60%程度削減できる可能性がございます(出典:株式会社三菱総合研究所 2020.6 ドラッグリポジショニングによる創薬力の復活)。
当社は、中枢神経疾患領域を重点ターゲットとして、未だ有効な治療法のない患者様に一刻も早く有効な治療法を届けるため、ALSを始めとした難治性の希少疾患に対する開発パイプラインの研究開発を推進しておりますが、各神経疾患が示す病態については一部共通した作用やメカニズムがあると考えていることから、「Rare to Common戦略」(患者数が少ない難治性の疾患の創薬開発から、患者数の多い一般的な疾患の創薬開発を目指す戦略)を推進してまいります。
④再生医療事業
当社は、神経損傷疾患である脊髄損傷に対して、自身の細胞から樹立するiPS細胞と比較して、汎用性や市場性が高いと考えております他家iPS細胞(*17)から分化誘導した神経前駆細胞(*18)を移植することで損傷部位の治療を行う再生医療の研究開発を推進しております。
脊髄損傷は、スポーツでの怪我や交通事故により脊髄に損傷が及ぶケース、加齢によって骨が弱くなり転倒して損傷するケース、頸椎の形状が変化し頚髄に負荷がかかり損傷するケースなどがあり、脊髄が損傷した場合、脊髄が脳からの指令や情報を脳幹を通じて体の各部に伝達する役割を果たすことができなくなり、身体の運動機能や感覚機能が完全に停止または一部停止する、麻痺の症状が発生することがあります。
当社は、まず、慶應義塾大学医学部との共同研究において、損傷による炎症が低下し、かつ、損傷部位が完全に空洞化する前の移植した神経前駆細胞が生着しやすいと考えられる亜急性期の脊髄損傷についての研究開発を優先して進めております。当事業年度末現在、慶應義塾大学医学部において「亜急性期脊髄損傷に対するiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療」の医師主導臨床研究が実施されており、当該臨床研究後に、当社において企業治験を行う予定であります。そのための準備として、最適なiPS細胞の選定や分化誘導法の確立、脊髄損傷モデルマウス(*19)の評価、臨床に向けた大量培養方法の検討、各種品質管理項目の検討などを進めており、実用化に向けた取り組みを推進しております。
また、当社では損傷後一定の期間が経過し損傷部位が完全に空洞化して、その空洞化した部分が移植した神経の伸長を阻害する可能性がある慢性期の脊髄損傷についても未だ有効な治療法がないことから研究開発を進めており、将来的には亜急性期の脊髄損傷に関する研究開発と並行して、亜急性期の脊髄損傷と比較して患者数の多い慢性期の脊髄損傷についての企業治験の検討も進めてまいります。さらに、慢性期脳梗塞、慢性期脳出血、慢性期外傷性中枢神経損傷につきましても、共同研究を進めている独立行政法人国立病院機構大阪医療センターと連携し、前臨床の研究を進める予定にしております。
なお、2014年の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「薬機法」という。)の改正に伴い、再生医療等製品の治験プロセスについては、通常の医薬品の治験プロセスと比較して、早期承認のための制度が追加されており、早期承認の審査の中で、一定数の限られた症例による治験において、安全性の確認と有効性の推定について認められた場合、条件期限付き承認を受けることが可能となり、販売後に更なる安全性と有効性の検証を経て、最終的に承認または失効するプロセスが導入されました。
当社におきましては、再生医療事業の各開発パイプラインについて、薬機法に従い、大学や研究機関と連携して、企業治験のための研究開発を推進してまいります。
*厚生労働省 薬事法等の一部を改正する法律の概要(平成25年法律第84号)を参考に当社作成
(2)当社のビジネスモデル
当社の主なビジネスモデルは、大学や研究機関等が保有する基礎研究の成果や特許等の知的財産権の独占的な実施許諾権等に基づいた開発パイプライン、または、当社自らが基礎研究を進めた成果に基づいた開発パイプラインについて、製薬会社等のパートナーと、基礎/探索研究から企業治験の各段階において、共同研究開発や将来の製造販売等の権利の一部または全部を譲渡するライセンス契約を締結して収入を受領するものであります。
まず、大学や研究機関等が保有する知的財産権等を活用して共同研究契約を締結する場合は、当社が情報や技術、研究成果等を受け取る一方で、当社から共同研究費用を支払うことになります。
次に、製薬会社等のパートナーと共同研究開発を進める場合においては、当社からは当該パートナー企業に対して、情報や技術、研究成果等を提供する一方で、当社は当該パートナー企業から共同研究開発契約を締結した段階で契約一時金を受領します。共同研究開発契約締結後は、共同研究開発契約を行った対象の開発パイプラインにおいて設定する個別の各目標の達成状況に応じて共同研究達成マイルストン収入を受領します。
そして、ライセンス契約においては、当社からは当該パートナー企業に対して、情報や技術、研究成果等を提供する一方で、当社は当該パートナー企業からライセンス契約を締結した段階で契約一時金を受領します。ライセンス契約締結後は、当社はライセンス契約を行った対象の開発パイプラインにおいて設定する個別の各目標の達成状況に応じてライセンス達成マイルストン収入を受領します。さらに、ライセンス契約の対象の開発パイプラインの上市後は、当社は販売の一部からライセンスの販売ロイヤリティ収入を受領すると共に、販売の達成金額に応じて販売達成マイルストン収入を受領します。
(当社の一般的な収入形態)
(事業系統図)
(3)当社の開発パイプライン
当事業年度末現在における開発パイプラインの進捗状況は以下のとおりとなっております。
iPS創薬事業における開発パイプラインにおきまして、まず、ALSに関する開発パイプラインであるKP2011について、慶應義塾大学により、iPS創薬の手法でALS患者様の細胞から作製したiPS細胞から分化誘導した神経細胞に対して、約1,200の化合物の中から表現型スクリーニングによって見出したパーキンソン病治療の既存薬であるロピニロール塩酸塩をALS患者様に投与する医師主導治験(*20)(ALS患者様を対象としたロピニロール塩酸塩徐放錠内服投与による第Ⅰ/Ⅱa相試験)を以下の概要で実施いたしました。
慶應義塾大学による医師主導治験(第Ⅰ/Ⅱa相試験)では、全患者様が、最大の量(16mg)を内服することができ、かつ、有害事象のほとんどが軽度なものであり、有害事象による内服の中止がなかったことから、ALS患者様に対するロピニロール塩酸塩の安全性と忍容性が確認できました。
また、有効性についても、ロピニロール塩酸塩の実薬群とプラセボ群に分けてそれぞれ投与した期間において、実薬群がプラセボ群と比較してALS患者様の総合機能評価や日常活動量の低下を抑制して、統計的に一定の有効性があることが示唆されました。
さらに、死亡または一定の病気の進行までの期間を生存期間として検討した結果、生存期間の中央値は、ロピニロール塩酸塩群(実薬群)50.3週、プラセボ群22.4週で、計1年の試験期間中に、プラセボ群と比較してロピニロール塩酸塩群において、病気の進行を27.9週間(約7ヶ月)遅らせる可能性が示されました。
加えて、ロピニロール塩酸塩群では、最初の6ヶ月の間に、複数の筋肉における筋力低下や活動量の低下が有意に抑制されることがわかりました。
上記の通り、慶應義塾大学において行われましたALS患者様を対象としたロピニロール塩酸塩徐放錠内服投与による第Ⅰ/Ⅱa相試験について、ALSに対してロピニロール塩酸塩の一定の安全性、忍容性および有効性が確認されました。なお、この結果につきましては、論文(「Cell Stem Cell」(Morimoto et al., 2023, Cell Stem Cell 30, 766–780 June 1, 2023))により公表されております。
当社におきましては、慶應義塾大学による医師主導治験での成果を踏まえて、2023年3月にアルフレッサ ファーマ株式会社と日本国内における開発権・製造販売権の実施許諾の契約を締結いたしました。本契約により、アルフレッサ ファーマ株式会社が、日本国内におけるロピニロール塩酸塩を活用したALS治療薬の開発・製造販売する権利に基づき、企業治験を進めてまいります。また、当社は本契約の対価として、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストン収入、および販売に応じたロイヤリティ収入を受領いたします。
今後におきましては、2020年代後半での上市に向けて、主に導出先であるアルフレッサ ファーマ株式会社が独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)等の各関係機関と協議を進めながら、第Ⅲ相試験(多数の患者様に対する安全性および有効性の検証を行う試験)の実施に向けた準備を推進してまいります。
また、上記アルフレッサ ファーマ株式会社との提携と並行して、慶應義塾大学との共同研究において、ロピニロール塩酸塩が新規メカニズムに基づいてALS治療効果を示す新規薬剤であることを明確にする研究開発の取り組みを行っております。
なお、同開発パイプラインにつきましては、北米、欧州、インド、中国への海外展開も視野に入れており、製薬会社等のパートナーとのライセンス契約締結に向けた事業開発を推進してまいります。
次に、前頭側頭型認知症の開発パイプラインにおいては、化合物のスクリーニングを完了し、詳細な解析を実施しております。一定の作用メカニズムが確認できた段階で、PMDAに対する事前面談等を行い、その後の開発を実施してまいります。
さらに、ハンチントン病の開発パイプラインにおいてもスクリーニングを実施しており、より高次の評価系を用いて化合物の選定を進めており、同開発パイプラインにおきましても最終化合物を選定し、一定の作用メカニズムが確認できた段階でPMDA事前面談を行う予定であります。
その他、神経フェリチン症の開発パイプライン、那須・ハコラ病の開発パイプラインについても研究を進めており、引き続き、iPS創薬事業における各開発パイプラインの研究開発を推進してまいります。
今後におきましても、iPS創薬の各開発パイプラインについて、研究開発の進捗に応じて、一定の段階でパートナーと共同研究契約またはライセンス契約を締結すべく取り組んでまいります。
再生医療事業における開発パイプラインにおきましては、亜急性期の脊髄損傷について、慶應義塾大学が「亜急性期脊髄損傷に対するiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療」の臨床研究を以下の概要で実施しております。
慶應義塾大学では、2021年12月に本臨床研究において、世界で初めてiPS細胞から作製した神経前駆細胞を亜急性期の脊髄損傷の患者様に移植いたしました(慶應義塾大学 2022年1月 「亜急性期脊髄損傷に対するiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療」の臨床研究について)。
その後、第三者機関である独立データモニタリング委員会(*24)において、2022年3月に、本第1症例目の移植後3か月目までのデータをもとに治療開始後の安全性について評価を行い、第1症例目の患者様に対しての移植について安全性に問題はないという当委員会の判定により、本臨床研究における第2症例目以降の移植が継続されております。
当社におきましては、今後の慶應義塾大学主体で実施しております本臨床研究の結果を受けて、同大学と連携して、当社主導による亜急性期の企業治験を円滑に進めるため、最適なiPS細胞の選定や分化誘導法の確立、脊髄損傷モデルマウスの評価、臨床に向けた大量培養方法の検討、臨床用iPS細胞の製品製造における委託先の選定、各種品質管理項目の検討等を推進すると共に、グローバルに再生医療等製品として販売を実施するために、製薬会社等のパートナーとの提携を進めてまいります。
また、慢性期の脊髄損傷および慢性期脳梗塞等の開発パイプラインについても研究開発の進捗に応じて、企業治験に向けた準備を進めると共に、一定の段階でパートナーと共同研究契約またはライセンス契約を締結すべく取り組んでまいります。
(用語解説)
業績
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産は2,348,139千円となり、前事業年度末と比較して960,829千円減少いたしました。主な要因は、その他が34,782千円増加したものの、現金及び預金が998,210千円減少したことによるものであります。
固定資産は4,934千円となり、前事業年度末から増減がありませんでした。
この結果、総資産は2,353,073千円となり、前事業年度末と比較して960,829千円減少いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は63,460千円となり、前事業年度末と比較して115,019千円減少いたしました。主な要因は、未払費用が18,449千円増加したものの、未払法人税等が68,428千円減少、その他が59,714千円減少および未払金が7,271千円減少したことによるものであります。
固定負債は31,299千円であり、前事業年度末と比較して645千円増加いたしました。これは資産除去債務が645千円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は94,760千円となり、前事業年度末と比較して114,373千円減少いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は2,258,312千円となり、前事業年度末と比較して846,455千円減少いたしました。これは当期純損失を846,455千円計上したことによります。
なお、5月31日付で欠損填補を目的とした無償減資を行ったことにより、資本金を754,087千円減少し、その内752,656千円を利益剰余金に振り替えておりますが、純資産内での振り替えである為、純資産合計に対する影響はございません。
この結果、自己資本比率は96.0%(前事業年度末は93.7%)となりました。
② 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の行動制限撤廃等によるインバウンド需要の拡大や好調な企業業績を背景に、給与水準引き上げ等による雇用・所得環境の改善も進む等、国内の景気は緩やかな回復基調となりました。一方、長期化するロシア・ウクライナ、中東地域および中国・台湾における地政学リスクの顕在化、アメリカの今後の政策動向を含む世界情勢の変化、不安定な為替相場、資源・原材料価格の高騰や物価の上昇、世界的な金融引き締めの影響による景気減速リスクの高まり並びに中国経済の減速懸念が重なる中、2024年1月に能登半島地震が発生する等、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
当社は慶應義塾大学医学部発ベンチャー企業として、iPS細胞を活用した創薬事業、iPS細胞を活用した再生医療事業の研究・開発とその収益化を進めておりますが、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律」が2024年6月14日に公布され、法整備が着々と進む中、当社以外にもiPS創薬候補の発見やiPS細胞を用いた臓器等の作製技術や大量培養技術、細胞培養施設拡張についての公表がある等、iPS創薬事業並びに再生医療事業の技術的進歩と実用化への期待が高まっている状況にあります。
このような状況の中、当社では短期的な視点だけではなく、中長期的な視点も意識して事業を推進しております。
iPS創薬事業では、6つの開発パイプラインの研究を行っており、その内のALSに関する開発パイプラインにおいては、一刻も早く患者様に治療薬を届けるために、アルフレッサ ファーマ株式会社と共に検証的治験(第Ⅲ相試験)に向けて準備を進めております。
ALS以外の開発パイプラインについても、2024年2月2日に特許出願した「ハンチントン病治療剤及び治療用組成物(特願2024-012936)」を含め複数の特許出願を実施しているだけではなく、Society for Neuroscience (SfN)2024(開催地:米国イリノイ州シカゴ、開催期間:2024年10月5日(土)~2024年10月9日(水))において、FTD(前頭側頭型認知症(開発コード:KP2021))およびHD(ハンチントン病(開発コード:KP2032))に関する研究成果の発表を行う等、研究・開発計画に沿って進めております。
再生医療事業では、5つの開発パイプラインの研究を行っており、その内の亜急性期脊髄損傷に関する開発パイプラインにおいては、2024年3月25日に学校法人慶應義塾と「神経突起伸長促進用キット及びその使用(特許出願中)」に係る発明の再実施権付き独占実施権の許諾に関する特許実施許諾契約を締結いたしました。本契約は、当社が2021年3月28日に同法人と締結した「脊髄損傷治療用ニューロスフェア誘導剤及びその使用(特開2021-084882)」に関する実施許諾契約の後継特許であり、引き続き同法人と連携し、研究開発を推進してまいります。
その他の開発パイプラインについても、再生医療の実現に向け、自社独自の研究開発は勿論のこと、学校法人北里研究所および独立行政法人国立病院機構大阪医療センターとの共同研究も2年目に入る等、鋭意進めております。
このような状況の中、当事業年度におきましては、研究開発費を451,642千円(前年同期は255,417千円)計上した結果、営業損失は836,346千円(前年同期は366,057千円の営業利益)、経常損失は836,243千円(前年同期は344,184千円の経常利益)、当期純損失は846,455千円(前年同期は260,330千円の当期純利益)となりました。
なお、当社は、医薬品等の研究・開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の減少983,719千円、投資活動による資金の減少14,490千円により、前事業年度末と比較して998,210千円減少し、2,268,198千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動による資金の減少は、983,719千円(前事業年度は454,425千円の増加)となりました。主な要因は、税引前当期純損失844,104千円、その他の流動資産の増加額42,492千円、その他の流動負債の減少額67,154千円および法人税等の支払額41,940千円による資金の減少要因があった為になります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動による資金の減少は、14,490千円(前事業年度は11,099千円の減少)となりました。これは有形固定資産の取得による支出14,490千円があった為になります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による資金の増減はありませんでした(前事業年度は1,486,235千円の増加)。
④ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、記載を省略しております。
b 受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、記載を省略しております。
c 販売実績
販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は、医薬品等の研究・開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
(注)主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
なお、当事業年度のアルフレッサ ファーマ株式会社に対する販売実績はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要とされております。経営者は、これらの見積を行うにあたり、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。しかしながら実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表を作成するにあたって採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
当事業年度の売上高は計上しておりません(前年同期は1,000,000千円)。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は計上しておりません(前年同期は90,000千円)。この結果、売上総利益の計上もございませんでした(前年同期は910,000千円)。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、836,346千円(前年同期は543,942千円)となり、292,403千円増加しております。
主な要因は、研究開発強化により、研究開発費が、451,642千円(前年同期は255,417千円)と前事業年度と比較して196,224千円増加した為であり、この結果、営業損失は、836,346千円(前年同期は366,057千円の営業利益)となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常損失)
当事業年度において、営業外収益は1,261千円、営業外費用は1,158千円発生しました。
この結果、経常損失は、836,243千円(前年同期は344,184千円の経常利益)となりました。
(特別損失、当期純損失)
当事業年度において、減損損失による特別損失が7,861千円発生しました。また、法人税、住民税及び事業税を2,350千円計上した結果、当期純損失は846,455千円(前年同期は260,330千円の当期純利益)となりました。
なお、財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に、キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の資金需要の主なものは、研究開発費および事業運営費等であり、研究開発費には、継続的な候補物質の探索や候補物質の製品化に向けた開発費用、研究人員にかかる人件費、研究設備費用、共同研究費用並びに外部委託費用等が含まれます。
当社は、これらの資金需要を手元資金で賄う方針としておりますが、必要に応じて株式市場からの資金獲得や補助金の獲得等を行うことにより、安定的な財源の確保を図ってまいります。
また、手元資金に関しましては、流動性の高い現預金で保有することとし、流動性リスクを管理しております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。