リスク
3【事業等のリスク】
当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があるリスク要因として考えられる主な事項には、以下のものがあります。必ずしも、そのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しています。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えています。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1) 需要動向について
企業のDXニーズや労働生産人口の減少に伴う企業や個人の生産性向上に対する社会の期待により、当社グループが提供するサービスへの需要が日ごとに高まっているものと認識しております。また、業務の効率性を高めるためのコラボレーションツールとして、当社の提供するプロジェクト管理ツール「Backlog」、ビジュアルコラボレーションツール「Cacoo」、及び組織の情報セキュリティ・ガバナンスを高めるツール「Nulab Pass」が非常に有効であると考えております。
加えて、我が国において新型コロナウイルス感染症の流行によりリモートワークが浸透する中、ビデオコミュニケーションツールや、チャットツールの導入企業が急速に増加していますが、生産性や効率性向上のためのプロジェクト管理ツールをはじめとするグループウエアの普及のペースは比較的緩やかなものであり、当社グループが提供するサービスの潜在的な需要は大きなものであると考えております。
しかしながら、将来、経済情勢や景気動向の悪化等により、企業のITシステム投資等への低迷が生じた場合には、市場の拡大が当社グループの想定を下回る可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 競合について
当社グループが事業を展開するコラボレーションツール市場は、競合企業が複数存在しており、今後SaaS等のクラウド市場の普及に伴い、規模の大小を問わず競合企業が新規に参入する可能性があります。
当社グループは、サービス開発力の強化や継続的なサービス改善活動により競争力の維持に努めておりますが、競合企業や新規参入企業との競争激化により、当社グループが想定している事業展開が図れない場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 技術革新への対応について
当社グループが属するインターネット業界においては、新技術の開発や新サービス出現のスピードが早く、顧客ニーズも早期に変化する等、変化の激しい業界となっております。当社グループでは、最新の技術動向や環境変化に関する情報収集、優秀な人材の確保や教育によるノウハウの蓄積等に積極的に取り組み、技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。
しかしながら、何らかの理由で技術革新や顧客ニーズへの対応が遅れた場合や、新技術への対応のため想定を超える投資が必要となった場合、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) システム障害について
当社グループが提供するサービスは、その基盤をインターネット通信網に依存しております。このため、大規模な自然災害やテロ、戦争その他予期せぬ原因によりインターネット通信網が使用できない状態が生じた場合は、当社グループのサービス提供の継続が困難となります。また、想定を超えるアクセス増加その他予期せぬ事象によるサーバーダウンや当社グループが提供するサービスの予期せぬ不具合の発生等により、サービス提供が停止する可能性があります。このような事態を避けるため、システムやサーバーの冗長化や稼働状況の監視、品質管理体制の強化等の対策を講じておりますが、将来においてこれらのような事態が発生した場合には、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 特定の事業サービスへの依存について
当社グループのサービスは、安全性、安定性、拡張性及び価格等を総合的に勘案し、Amazon Web Services, Inc.が提供しているクラウドコンピューティングサービス「AWS」(Amazon Web Services)を基盤として運営されています。
AWSのデータセンターの処理能力が、当社グループの求める処理能力を満たさない場合、AWSに障害が生じた場合には、当社グループが提供するサービスへのアクセスが中断又は遅延する等、顧客からの信用が損なわれ、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、Amazon Web Services, Inc.による経営戦略の変更、又は、価格改定等が行われた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 為替の変動について
当社グループはAWSをはじめとする海外事業者が提供するサービス利用料等の支払いを外貨建てで行っており、為替リスクヘッジとして為替予約を実施しております。しかしながら、想定以上に為替相場が円安傾向となった場合は、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 海外展開について
当社グループは、海外に子会社を有しており、海外における商習慣や事業環境の差異等を含め、各国の法規制や貿易政策への対応、為替制限や為替変動、電力・通信を中心とするインフラ障害、各種法律又は税制の不利な変更、移転価格税制による課税、各国特有の政治・社会情勢の変化等のカントリーリスクや訴訟リスク等、国内における事業展開以上に高いリスクが存在しております。それらリスクが顕在化した場合や、国内と比較して市場の開拓や収益化が想定通り進まない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) ソフトウエアの減損について
当社グループでは、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた支出をソフトウエア(ソフトウエア仮勘定含む)として資産計上しております。このソフトウエアについて、重大な将来計画、使用状況等の変更やサービスの陳腐化等により、収益獲得又は費用削減効果が大幅に損なわれ、ソフトウエアの減損が必要となる場合、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 特定の当社グループサービスへの依存について
当社グループの売上高のうち、当連結会計年度において、主力サービスであるBacklogの売上高は3,438,002千円であり、売上高全体の93.8%を占めております。このため、Backlogの売上高が著しく減少した場合、当社グループの事業及び業績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。当社としては、Backlogを外部環境の変化に左右されず安定的な収益獲得が継続できるようその競争力の維持・強化に努めるとともに、他のサービスの売上拡大を図り、Backlogへの依存度を逓減させる方針であります。
(10) 解約について
当社グループが提供するサービスの多くは年間契約となっており、代金については前受にて一括で受領しております。そのため、何らかの要因により多数の顧客より解約の申し出がなされた場合、事故等により多数の顧客に対してサービス提供が不可能となった場合、将来計上される売上が無くなり、一括前受している代金の返金が生じる可能性があります。このような状況となった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 人材の確保や育成について
当社グループが継続して事業拡大を進めていくためには、優秀な人材の確保、育成及び定着が不可欠であると認識しております。そのため、継続的な人材採用や育成に加え、定着率向上に向けた各種施策を行っております。
しかしながら、優秀な人材が必要な時期に十分に確保・育成できなかった場合や人材流出が進んだ場合等には、経常的な業務運営及び事業拡大等に支障が生じ、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 情報管理体制について
当社グループが提供するサービスの新規導入時には、顧客から機密情報及び個人情報に該当する情報を入手することがあります。そのため、当社グループでは、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得し、各種情報の管理体制を整備しております。また、個人情報の取り扱いについては、個人情報保護法等の国内法令のみならず、EU諸国における「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)」をはじめとする海外における法規制等が適用される可能性があります。当社では法律事務所等の外部専門家との連携を通じて必要な海外法令の動向等に関する情報を収集し、外部専門家の助言を踏まえた適切な対策を講じております。さらに、外部専門業者による脆弱性診断の受診や、情報管理に関する社内規則等の整備、情報セキュリティ研修の実施等の対策を講じております。しかしながら、このような対策にもかかわらず、何らかの理由により顧客から入手した機密情報及び個人情報等の重要な資産を紛失若しくは漏洩した場合、損害賠償及び訴訟費用の発生や当社の社会的信用の失墜等により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 特定人物への依存について
当社の創業者であり、代表取締役である橋本正徳及び取締役の田端辰輔は、当社設立以来、経営方針や戦略の立案・実行、システム開発を推進し、リーダーシップをもって牽引してまいりました。当社グループの事業規模が拡大するとともに、権限委譲を進め、当該取締役2名に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、当該取締役2名が当社グループの事業へ関与できない状況が発生した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 内部管理体制について
当社グループの継続的な成長には、倫理観を共有し、適切なコーポレート・ガバナンスを整備し、内部管理体制を整えることが重要であると認識しております。しかしながら、当社グループの事業成長に比べて内部管理体制の構築が間に合わない場合、適切な経営管理が行えず、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 知的財産権の侵害について
当社グループは、既存サービスの改善改良及び新規機能等の開発を継続しております。このような中、当社グループが開発した知的財産については、必要に応じて適時に知的財産権の登録等を行い、当社グループの財産の保全を図っております。また、当社グループのサービスが他社の保有する知的財産権を侵害しないよう、開発段階において採用したビジネスモデルや技術等については、必要に応じて適切な調査を実施しております。
しかしながら、当社の事業領域において第三者が有する知的財産権を完全に把握することは困難であり、当社グループが認識していない知的財産権が国内又は海外において既に成立している可能性、あるいは今後新たに成立する可能性があります。このような場合において、ロイヤリティ支払いや損害賠償請求、事業の全部又は一部の差止により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 訴訟等について
当社グループは、法令等遵守体制の強化を通じて訴訟等が提起されることを防止するべく努めております。しかしながら、将来の法規制等の改正等に適時適切に対応できないことや各種契約等の解釈の齟齬が生じたこと等を原因とする訴訟が提起された場合、内容及び結果によっては当社グループの事業、業績並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
(17) 投融資について
当社グループは、現在において投資を行っている事実はありません。しかしながら、今後の事業拡大のために、国内外を問わず出資、子会社設立、合弁事業の展開、アライアンス、M&A等の投融資を実施する場合があります。投資判断においては、投資先候補企業の事業内容を吟味し、当社グループとの事業シナジーが得られること、投資先候補企業の事業計画、当社グループの財務状況や投資先候補企業への影響力等を考慮し、投資先候補企業の評価額が適切な水準であることを慎重に確認し、投資判断を行う予定です。ただし、投資先企業の事業が計画通りに進捗しない場合や投融資額を回収できなかった場合、減損の対象となる事象が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(18) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、当社役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日の前月末現在におけるこれらの新株予約権による潜在株式数は491,712株であり、発行済株式総数6,480,743株の7.59%に相当しております。
(19) 配当政策について
当社グループは設立以降、配当実績がありません。成長投資を優先し、必要な内部留保を確保するための施策であります。ただし、将来においては、成長投資のための内部留保の確保と株主への利益還元のバランスを考慮し、最大限の株主利益を実現するための配当政策を実施することを基本方針としております。
(20) 法的規制について
当社グループは、国内及び国外において基本的な企業活動に関わる法的規制に加え、クラウドサービスにおけるセキュリティ、個人情報及びプライバシー保護、知的財産権保護等の法的規制を受けております。これら当社グループに適用ある法的規制の整備・強化がなされることにより、当社グループ業務に制約が生じ、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(21) 業績に関するリスクについて
当社グループは、今後も顧客基盤拡大のためのマーケティング費用やサービス向上等のための人件費を将来にわたって計上する予定としておりますが、想定していた効果を上げられない場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(22) 過年度の経営成績及び税務上の繰越欠損金について
当社グループは、過年度において、親会社株主に帰属する当期純損失を計上していたため、当連結会計年度末において税務上の繰越欠損金が存在しております。一般的には、繰越欠損金を課税所得から控除することにより、税額を減額することができます。しかし、今後の税制改正の内容によっては、納税額を減額できない可能性があります。また、繰越欠損金が解消された場合、通常の税率に基づく法人税等が発生し、当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主各位に対する利益還元である配当と、将来の事業展開や財務基盤強化のための内部留保とのバランスを保ちながら、安定的かつ継続的な配当を実施することを基本方針としております。
しかしながら、成長過程にある当社では、内部留保資金を、事業拡大と事業の効率化のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。そこで、当社は、当面は事業拡大のため、内部留保による財務体質の強化への再投資を優先する方針です。株主への利益還元についても重要な経営課題として捉え、財政状態及び経営成績を勘案しつつ配当の実施を検討して参ります。
なお、当社は、剰余金の配当を行う場合、期末配当において年に1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としておりますが、会社法第454条第5項の規定により、取締役会の決議によって毎年9月30日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。