事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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売上
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利益
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利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
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(単一セグメント) | 6,468 | 100.0 | 260 | 100.0 | 4.0 |
事業内容
3 【事業の内容】
当社はクラウドネイティブ(※1)なエンタープライズシステム(※2)構築に強みを持つ、クラウドインテグレータです。エンタープライズシステムの最大の特徴はデータの永続性が求められることにあり、具体的には信頼性・可用性・保守性・保全性・機密性といった要件の充足が求められます。クラウドインテグレータとはクラウドに特化して情報システムの設計・構築・運用等の全工程を一貫して請け負う事業を意味します。
また、クラウドインテグレーションを起点に、マネージドサービスやSaaS(※3)のサービス展開も進めており、クラウドインテグレータにとらわれない、更なる事業展開を企図しております。
<これまでの実績>
当社は、パブリッククラウド(※4)のMicrosoft Azureが日本で本格的にサービスを開始する以前の2008年に設立し、2010年に同サービスが日本で正式に開始すると同時に、エンタープライズシステムのクラウド化の事例を複数手掛けてきました。
主要なパブリッククラウドのうち、当社は主としてMicrosoft Azureを取り扱っております。日本国内で正式にリリースされる以前から同サービスの技術検証に着手し、正式リリースから今日に至るまで導入実績を積み重ねてきました。
Microsoft 米国本社からもその実績を高く評価され、2015年にはMicrosoft Azureの販社資格である Cloud Solution Provider (CSP) Program の設立時に、国内第1号として認定を受けました(制度設立の2015年7月で、世界で26社のうちの1社)。また、2017年にはその一年に各国で最も成果を残したパートナーに贈られるアワード Country Partner of the Year を受賞しました。そして、2021年にはクラウドネイティブな開発手法によって最も高い価値をもたらしたパートナーとして、世界100カ国・4,400社のパートナーの中から、Microsoft Partner of the Year Awardを Cloud Native App Development カテゴリーで受賞しました。日本企業としては初の同賞受賞となりました。2024年にはMicrosoft Japan Partner of the Year 2024 で「Government アワード」および「Healthcare and Life Sciences アワード」をダブル受賞しました。
また、その他のパブリッククラウドとして、一部Amazon Web Services(以下、AWS)を取り扱っており、AWS Solution Provider ProgramにおいてAWSアドバンストティbashoアサービスパートナーに認定されております。さらには当社社員が「2024 Japan AWS All Certifications Engineers」および「2024 Japan AWS Jr. Champions」をダブル受賞しました。
<当社が提供するサービスの変遷>
創業当時、まだクラウドに対する市場の認知度や信用度が低かった時代から、当社は顧客企業のデジタルマーケティングやWeb制作を支援しつつ、クラウドならではの可用性・拡張性が活かせる高負荷なWebサイトをパブリッククラウド上に構築するなど、導入実績及び技術的な知見を積み上げてまいりました。
こうした知見をもとに、より負荷が高い動画配信やソーシャルゲーム配信の基盤に事業を拡大し、2013年ごろからは大手飲料メーカーのコマーシャル動画配信基盤や、大手ゲーム会社のモバイル端末向けゲームタイトルなど、大規模コンテンツ配信案件にパブリッククラウドの適用範囲を拡大していきました。
その後、AIチャットボット構築やビッグデータ分析基盤等の案件に取組んでまいりました。こうしたサービスの活用については、複数の書籍執筆も行っております。
近年では、金融機関・政府・自治体のエンタープライズシステムの構築・運用の経験や地域通貨ソリューション、高負荷なアクセスへの対応が特に要求されるメタバースといった分野に進出し、さらなる成長を目指しております。
2023年4月には、クラウドサービスとして提供されるAIの研究開発のノウハウを生かし、生成AI(Azure OpenAI Service)を活用したエンタープライズAGIプラットフォーム「GaiXer」の提供を開始しました。
<事業間の関係性>
当社は①プロジェクト型サービス(新規システム開発や既存システムのクラウド移行)によってクラウドネイティブなシステムを構築し、クラウドサービスのライセンスの②リセール、③マネージドサービス(保守・運用)を提供しております。さらに、④SaaSでの事業も展開しました。
各事業の詳細は下記のとおりであります。
① プロジェクト型サービス
プロジェクト型サービスでは、顧客の要件・要望に基づくシステムを新たに開発したり、既存のシステムをクラウドに移行したりするサービスを行っております。
ウォーターフォール(※5)に代表される旧態依然としたソフトウエア開発プロセスでは、設計者が顧客に相談する形で、ソフトウエアの仕様が調整されていました。この相談の中で顧客の要求により定義された技術仕様は、開発フェーズで開発者が矛盾に気づいたとしても、さかのぼって訂正・修正することは許されませんでした。この前工程にさかのぼって仕様を見直せない開発手法が、開発者から見て合理性のない設計と技術仕様を生み、その矛盾を成立させるための不必要な調整は余分なコストと開発遅延の原因となっていました。
また、開発の上流工程で要件定義を担当する会社と開発の下流工程を担当する会社が別な法人である場合、両社の間に主従関係が生まれ、下流工程の開発者が上流工程で作成されたドキュメントの矛盾に対する指摘を行えないまま開発が進み、ビジネス的には価値の低いソフトウエアが作られてきました。
ウォーターフォール型で開発を進めていた時代の、オンプレミスのシステム基盤は高額で、導入期間も数ヶ月以上の時間を要したため、インフラ機器選定の失敗による損失を回避するため、前工程の要件定義に多大な時間とコストがかけられていました。
これに対してクラウドのシステム基盤は、必要なリソースを従量制で調達でき、不要になったインフラは利用を停止することで即座に廃棄することができます。このクラウドによるシステム基盤調達の柔軟性により、プロジェクト初期段階から実際にシステムが稼働する本番環境に近いインフラ上で、高速に開発を繰り返しながらシステム利用者のユーザーニーズを満たす「アジャイル開発」を実現することができるようになりました。
当社のプロジェクト型サービスでは「新規システム開発」「クラウド移行(マイグレーション)」の案件にかかわらず、プロジェクト初期段階から柔軟なシステム基盤の調達と構築を実現しております。この柔軟性のあるシステム基盤を前提に、設計・開発から運用までを一気通貫で提供するクラウドネイティブな開発手法により、期間やコストの増大リスクを低減しております。
旧来型の開発手法(ウォーターフォール)における課題
システムに求められる品質・スピードが高まるDX時代においては、仕様の検討・決定に大きな費用と時間を要する旧来型の開発手法(ウォーターフォール)では、要求水準に達する前に予算上限・納期の限界を迎えるという課題があります。
FIXERにおける開発手法の特徴
クラウドの強みであるスクラップ&ビルドの容易さを武器に「まず作ってみる」コードファースト(※6)な開発手法を採用しております。フロントローディング型(※7)のプロジェクト進行により、後工程での多大な手戻りを抑制しつつ当初予算内で開発を完結していきます。
当社はクラウドネイティブな開発手法を前提に、顧客との直接契約による「プライム案件」の獲得に注力しております。プロジェクト型サービスには、以下のような事例があります。
・株式会社北國銀行「北國クラウドバンキング」をMicrosoft Azure上で新規構築し、正式稼働後は当社のマネージドサービスで運用を継続しております。
・厚生労働省「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)(※8)」の新規システム開発においては、クラウドネイティブな手法の採用により、着手から約3週間で初回納品を実現できました。また、全国の利用者のためのヘルプデスクを開設し、運用サポートを実施しました。
・国立がん研究センター「全国がん登録」のクラウド移行においては、Microsoft Cloud Adoption Framework for Azure(CAF)(※9) に基づく戦略の立案により、クラウド移行(マイグレーション)を実施しました。
② リセール
リセールでは、パブリッククラウドベンダー(主にMicrosoft・一部AWS)や、各種ソフトウエアサービスを提供しているベンダーから、クラウドやソフトウエアライセンスを仕入れ、顧客に販売しております。
当社が主要なリセール商材として扱っているMicrosoft Azureに関しては、Microsoftとの契約に基づいて定められた価格にて仕入及び販売を行っております。
なお、リセールは単純な仕入れ・販売を行うだけでは、MicrosoftやAmazonによって日々バージョンアップされるサービスを顧客が取り込めない機会損失の原因になりかねないため、最新の技術情報とともに顧客サポートの品質を高め、付加価値の向上に努めてまいります。
③ マネージドサービス
当社では一般的な保守・運用サービスに加え、クラウド環境で発生する課題解決まで対応するマネージドサービスをcloud.configのブランドで展開しております。現在は、Microsoft Azureを中心とするパブリッククラウドサービスの設計・構築、24時間365日の運用(監視・障害一次対応)サービスを提供しております。
顧客企業はMicrosoft Cloud Adoption Framework for Azure(CAF)に基づく、Azure Expert MSP監査をクリアした当社マネージドサービスを利用することでクラウド基盤における典型的な失敗を回避し、車輪の再発明(パブリッククラウドのサービスやOSS(※10)として既に提供されているものや既に構築済みのシステムを、もう一度構築してしまうこと)による無駄なコストを抑止することができます。
当社マネージドサービスは、顧客の業種・業態ごとに求められる運用要件を都度サービスとして取り入れ、進化してまいりました。サービス開始当初はWebサイト基盤(Webサイトが稼働する環境)からサービスを開始しましたが、コマーシャル動画配信やソーシャルゲームに求められる大量トランザクション(※11)を処理する可用性・拡張性、金融機関や行政機関に求められるセキュリティといった運用要件を強化してまいりました。
このようにクラウドの特性にあわせて進化した当社のマネージドサービスをご利用いただくことで、顧客企業はパブリッククラウドをより効果的・効率的に活用できます。
なお、マネージドサービスはエンタープライズシステムの保守・運用を行う「ストック型」の契約モデルのビジネスであるため、システムのライフサイクルの間、売上を維持・継続することが期待できます。当社の専門性を活かしたサポートにご満足をいただき、他システムにもご採用いただくことにより、顧客内売上が拡大していきます。
今後は、インフラ構築・監視・運用の効率性をさらに高めるための自動化、障害によるダウンタイムをさらに短縮するためのAIによる予兆監視等の先端技術の導入を推進してまいります。
④ SaaS
プロジェクト型サービスで開発したシステムや、マネージドサービスの保守・運用で把握した顧客ニーズの高い機能をプラットフォーム化し、SaaS型のサービスとして提供しております。
現在は、SaaS事業の中では生成AI「GaiXer」を全面に押し出し、セキュアな環境において検索エンジンとの連携による最新情報による回答の生成、学習セット機能を通じた業務改善の提案を行っております。
その他として、電話やSMSを発信する自動架電サービス、メタバース基盤をSaaS型で提供しております。
<事業系統図>
当社の事業系統図は以下のとおりです。
[用語解説]
※1 クラウドネイティブ:クラウド化の恩恵を最大限に享受するためのアーキテクチャやシステム開発手法であり、オンプレミスでは不可能な短いサイクルで実装・テストを繰り返し、システムを設計・構築・保守・運用していくための技術を指します。クラウドサービスが登場した当初は、自社サーバーを使用して構築されたシステムを、クラウド上に移設する方式が選択されることがほとんどでした。クラウドが市場に普及・浸透し、はじめからクラウドを利用する想定で設計されたシステムが登場しはじめたことで、従来のシステムやサービスとの区別をするために「クラウドネイティブ」という言葉が用いられるようになりました。
※2 エンタープライズシステム:顧客管理・販売管理・在庫管理・営業支援・経理処理等の企業の基幹システムのことを指します。
※3 SaaS:Software as a Serviceの略。ソフトウエアを利用者(クライアント)側に導入するのではなく、提供者(サーバー)側で稼働しているソフトウエアを、インターネット等のネットワーク経由で、利用者が利用するサービスを指します。
※4 パブリッククラウド:広く一般のユーザーや企業向けにクラウド・コンピューティング・サービス環境をインターネット経由で提供するサービスのことを指します。対義語として、社内など特定の利用者のみがアクセス可能な専有クラウド環境のことを「プライベートクラウド」を指します。代表的なパブリッククラウドサービスの種類に「SaaS」「IaaS」「PaaS」があります。「SaaS」は用語解説の※3をご確認ください。「IaaS」はInfrastructure as a Serviceの略で、仮想サーバーやストレージなどの「インフラ」をインターネット経由で提供します。「PaaS」はPlatform as a Serviceの略で、アプリケーションの開発・実行環境などの「プラットフォーム」をインターネット経由で提供します。
※5 ウォーターフォール:上流工程から下流工程に進行するプロジェクトでは、水の流れの逆流が起きないのと同様に、前工程に戻らないことを前提とした開発手法を指します。
※6 コードファースト:データベース項目の設計前に、コーディング(プログラミング)によって項目を定義する手法を指します。
※7 フロントローディング型:後工程での仕様変更・調整によるコスト増大のリスクを低減するために、プロジェクト初期段階で完成イメージを提示して、品質を向上させる手法を指します。
※8 HER-SYS:厚生労働省の新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システムを指します。
※9 Microsoft Cloud Adoption Framework for Azure(CAF):Microsoft がクラウド化プロジェクトの成功事例を分析し、失敗を回避するための標準プロセスとして作成したフレームワーク。
※10 OSS :Open Source Softwareの略。利用者の目的を問わず、ソースコードを使用、調査、再利用、修正、拡
張、再配布が可能であるソフトウエアの総称です。
※11 トランザクション:コンピュータシステムにおける、永続的なデータに対する不可分な一連の処理のことを指します。
業績
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当事業年度における我が国経済は新型コロナウイルス感染症による各種制限からの緩和が一巡し、社会経済活動の正常化が進むとともに、景気の緩やかな回復傾向の兆しが見られました。一方で、世界的な資源価格の高騰をはじめとした物価の上昇に加え、継続的な金融引締めが行われる等、海外景気の下振れリスクが意識されており、景気の先行きは楽観ができない状況です。
当社が属する国内の情報サービス産業においては、労働人口の減少傾向や業務効率化ニーズを背景に、デジタル化の推進ニーズは旺盛です。特にアナログな事務作業のデジタル化効率化、オンプレミスで運用されているレガシーシステムのクラウド化へのニーズは非常に強く、クラウドサービス事業者への期待は持続しています。
このような環境下、当社はクラウドネイティブカンパニーとして、「日本のエンタープライズシステムにグローバル品質のクラウドパワーを」をミッションに掲げ、世界一クラウドネイティブなシステム開発力と、保守・運用を請け負うマネージドサービスの提供を通じて、日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速に取り組んでまいりました。
具体的には、プロジェクト型サービスで開発したシステムを、Microsoft Azureを中心としたパブリッククラウド上で保守・運用を請け負うマネージドサービスと、パブリッククラウドの販売を行うリセール、顧客ニーズの高い機能をプラットフォーム化した高付加価値のSaaSとして提供してまいりました。
プロジェクト型サービスでは大型案件の規模縮小により前期比1,063百万円(36.8%)の減少、リセールではHER-SYS関連の大型契約終了などの影響で前期比1,272百万円(26.7%)の減少、SaaSでは新型コロナウイルス感染症の健康観察に使用されていた自動架電の大幅な利用減少により前期比1,729百万円(96.8%)の減少、マネージドサービスではエンハンス開発(既存システムの追加開発や改修)が減少した影響で前期比518百万円(32.3%)の減少となりました。また、新サービスとして市場に投入したエンタープライズ向け生成AIプラットフォーム「GaiXer」の提供を本格的に開始する等、更なる成長に向けた事業構造の変革に着手しました。さらに今後の成長を支える人材の獲得や認知度向上を目的とした効果的な広告宣伝活動にも取り組み、前期末比57名増加し326名と大幅な増員となり、次の成長に備えるための人材の確保をいたしました。
以上の結果、売上高6,468百万円(前期比41.5%減)、売上総利益2,102百万円(前期比48.0%減)、営業利益260百万円(前期比87.6%減)、経常利益266百万円(前期比87.2%減)、当期純利益156百万円(前期比88.7%減)となりました。
なお、当社の事業はクラウドサービス事業の単一セグメントのため、セグメントごとの記載はしておりません。
② 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産は5,854百万円となり、前事業年度末に比べ471百万円減少しました。これは主に、未収還付法人税等が270百万円増加した一方で、現金及び預金が679百万円、売掛金及び契約資産が129百万円減少したことによるものであります。固定資産は735百万円となり、前事業年度末に比べ79百万円減少しました。これは主に、繰延税金資産が41百万円、建物(純額)が16百万円、敷金が10百万円減少したことによるものであります。この結果、総資産は6,590百万円となり、前事業年度末に比べ550百万円減少しました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は703百万円となり、前事業年度末に比べ701百万円減少しました。これは主に、買掛金が266百万円、未払法人税等が215百万円、未払金が97百万円、未払費用が69百万円減少したことによるものであります。固定負債は10百万円となり、前事業年度末に比べ7百万円減少しました。これは主に、長期借入金が7百万円減少したことによるものであります。この結果、負債合計は713百万円となり、前事業年度末に比べ708百万円減少しました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は5,877百万円となり、前事業年度末に比べ158百万円増加しました。これは主に、当期純利益の計上により利益剰余金が156百万円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ679百万円減少し、4,154百万円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の営業活動の結果、支出した資金は626百万円(前事業年度は539百万円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益が268百万円、売上債権の減少額が129百万円あった一方で、法人税等の支払額が541百万円、仕入債務の減少額が266百万円あったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の投資活動の結果、支出した資金は34百万円(前事業年度は415百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が46百万円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の財務活動の結果、支出した資金は18百万円(前事業年度は1,024百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出が20百万円あったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当社の事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b 受注実績
当事業年度における受注実績は次のとおりであります。なお、当社はクラウドサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(注) 受注残高は請負契約についてのみ記載しております。また、従量課金等の要因により売上高が変動する契約については受注残高に含めておりません。
c 販売実績
当事業年度における販売実績は次のとおりであります。なお、当社はクラウドサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(注) 1.最近2事業年度の主な相手先の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2.厚生労働省は、前事業年度において新型コロナウイルスの感染者が減少し、当事業年度で契約が終了したため金額が減少しております。公益社団法人国民健康保険中央会は、システム開発業務の大部分が終了したことにより金額が減少しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りに関しては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる可能性があります。
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要な当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響は次のとおりであります。
(繰延税金資産)
当社は、繰延税金資産について、将来の事業計画に基づく課税所得の金額に基づき算出しております。繰延税金資産の金額は、今後の事業年度における課税所得が見積りと異なった場合や、見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産を減額し、税金費用を計上する可能性があります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 経営成績の分析
(売上高)
売上高は、前事業年度に比べ4,581百万円減少して6,468百万円(前期比41.5%減)となりました。
これは主に、2020年8月期より開発・運用を請け負ってきた厚生労働省の新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)において、新型コロナウイルス感染症の5類相当への移行に伴い、健康観察業務を支援する自動架電サービス(SaaS)の利用が減少し、厚生労働省向け売上高が3,607百万円減少したことによるものであります。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は、前事業年度に比べ2,637百万円減少して4,365百万円(同37.7%減)となりました。これは主に、売上高の減少に伴い、また、原価低減に努めたことにより各種ソフトウエアライセンスの利用に係る費用や業務委託費が減少したことによるものであります。
以上の結果、売上総利益は前事業年度に比べ1,944百万円減少して2,102百万円(同48.0%減)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ94百万円減少して、1,841百万円(同4.9%減)となりました。これは主に、採用費が50百万円、支払報酬が73百万円減少したことによるものであります。
以上の結果、営業利益は前事業年度に比べ1,850百万円減少して260百万円(同87.6%減)となりました。
(営業外損益、経常利益)
営業外収益は6百万円(同711.6%増)となりました。これは主に、補助金収入が計上されたことによる影響であります。また、営業外費用は、0百万円(同97.0%減)となりました。これは主に、支払利息や雑損失によるものであります。
以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ1,822百万円減少して266百万円(同87.2%減)となりました。
(特別損益、当期純利益)
特別利益は2百万円増加し、特別損失はありませんでした。また、法人税等は、前事業年度に比べて594百万円減少して112百万円(同84.1%減)となりました。
以上の結果、当期純利益は前事業年度に比べ1,225百万円減少し156百万円(同88.7%減)となりました。
b 財政状態の分析
財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ②財政状態の状況」をご参照ください。
c キャッシュ・フロー状況の分析
キャッシュ・フロー状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業展開や外部環境、事業運営等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社は常に業界動向や外部環境を注視しつつ、優秀な人材を確保し市場ニーズに適合したサービスを展開していくことにより、これらのリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の運転資金需要の主なものは、事業の拡大に伴う人件費、Microsoft Azureの利用に対する手数料及び当社のサービスを向上させるためのシステム維持費等の営業費用であります。現時点で予定されている重要な資本的支出はありません。事業上必要な資金は手許資金、金融機関からの借入及び新株発行等により資金調達していく方針でありますが、資金使途及び需要額に応じて柔軟に検討を行う予定であります。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について
当社を取り巻く現在の環境は、DXニーズの加速やニューノーマルに対応する新しい需要が創出される状況など、クラウド市場が拡大する方向にあると認識しております。当社の企業理念は、「Technology to FIX your challenges. あなたのチャレンジをテクノロジーで成就する」でありますが、今後も顧客企業や外部環境の変化を適切にとらえ、クラウドのメリットを最大限に活かした新サービスの提供と、ストック型ビジネスの拡大を軸に事業の成長を図ってまいりたいと考えております。その実現に向け、当社の高い技術力を活かした短期間・低コストの開発体制を更に強化する方針であります。今後、当社が更なる事業拡大を図るために、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した様々な課題に対して、弛まぬ努力をもって対処していく方針であります。
⑥ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、収益獲得の効率性の向上を実現するための1人当たり売上高、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するための契約社数、最新技術を積極的に取り込む風土と行動力を競争力の源泉とするための社員平均年齢を重要な経営指標と位置づけております。
1人当たり売上高については、当事業年度において22百万円となりました。今後ソフトウエア開発及び保守・運用において自動化の推進により増加させていく方針であります。
契約社数については、当事業年度内において135社となっておりますが、今後プロジェクト型サービスの案件増加を通じて、ストック型のリセールとマネージドサービスの顧客を継続的に増加させる他、SaaSの利用顧客拡大にも取組み、顧客数の拡大を目指してまいります。
社員平均年齢については、当事業年度末で27.7歳となっており、社員数が増加する今後においても、新卒採用を重視した開発人員強化に取組み、平均年齢20代を維持し続けることを目標としております。