2024年5月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)事業環境に関するリスク

AI/DX関連市場について(発生可能性:低、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループはAI/DXに関するプロダクト・ソリューション事業を展開しており、デジタル技術を活用して企業のデジタル変革を支援しております。当社グループの属するAI/DXビジネスの国内市場は成長を続けており、2030年度には6兆5,195億円にも及ぶとの調査結果があります(出所:「富士キメラ総研 2023デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」)。今後国内においてAI/DX関連市場は拡大を続けるものと見込まれており、特に製造業や金融業、サービス業など幅広い産業でAI/DXの導入に向けた取り組みが進んでおります。また、国内外の競争力を維持・向上させるために、政府もデジタル変革を推進する施策を積極的に展開しております。しかしながら、市場の成長ペースが大きく鈍化した場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、市場の拡大が進んだ場合であっても、当社グループが同様のペースで順調に成長しない可能性があります。

 このようなリスクに対して、当社グループでは市場動向を日々注視しながら、適宜当社グループの経営戦略に織り込み柔軟に対応できる体制構築に努めてまいります。

 

競合について(発生可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 複数の企業がオンラインでAI/DX人材育成のサービスを提供しており、当社グループのAI/DXプロダクトでは、競合企業が存在している状況であります。また、AI/DXソリューションでは、多くのAI/DXベンダーがサービスの一つとして当該サービスを提供しております。

 当社グループとしましては、多種多様なコンテンツを保有するAI/DXプロダクトと、DX内製化を支援するAI/DXソリューションにより顧客のDX内製化を一気通貫で支援する独創的なビジネスモデルにより競争優位性を保持しておりますが、競合他社の戦略や新技術の出現に対して、当社グループが適時かつ適切に対応できなかった場合には、市場での競争力低下や、対応のための支出の増加により、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当社グループとしては、持続的な競争優位性を築くために、AI/DX人材育成の領域において顧客企業のニーズを的確に捉えたコンテンツの開発力、顧客を第一に考えたシステム開発力が重要と考えており、コンテンツやシステムの継続的な投資・改善に加えて、最新の技術トレンドを追跡し、継続的な研究開発により革新的なソリューションを創出することを目指しております。

 

技術革新について(発生可能性:低、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループが事業展開しているAI/DX関連市場では、技術革新や環境変化のスピードが非常に速く、関連事業者はその変化に対応する必要があります。当社グループにおいても、最新の技術動向等を常に把握し、技術革新や環境変化に柔軟に対応できるよう努めておりますが、当社グループが、技術変化や新たなビジネスモデルの出現による環境変化に適切に対応できない場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクに対して、当社グループは技術革新の動向を注視するとともに、環境変化に追従するための人材投資及び顧客へのサービスを迅速に提供できる組織体制等の整備に取り組んでまいります。

 

システム障害について(発生可能性:低、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社グループのサービスは、外部クラウドサーバー(Google社が提供するGoogle Cloud Platformのサービス(以下、「GCP」という))にて提供しており、GCPの安定的な稼働が当社グループの事業運営上、重要な事項となっております。また、安定的なサービスの運営を行うために、セキュリティ強化及び監視体制の構築等により、システム障害に対し備えるよう努めております。しかしながら、GCPでの障害、自然災害やサイバー攻撃、その他何らかの要因等によりシステム障害やネットワークの切断等予測不能なトラブルが発生した場合には、社会的信用失墜等により、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクに対して、当社グループは安定的なサービス運営を行うために、セキュリティ対策の強化や障害発生時の社内体制の構築を行っております。

 

 

訴訟について(発生可能性:低、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、事業活動を行う上で取引先や従業員などから訴訟などを提起されるリスクが存在します。社内ではマネジメントトレーニングを通じて管理職の能力向上と従業員とのコミュニケーションの円滑化に努めております。また、取引先との関係では、正当な目的、内容、対価の確認を稟議承認で確認することでリスクの抑制に努めております。

 しかしながら、訴訟の完全回避は困難であり、一度起こった場合には予想困難な結果や多額の費用がかかり、事業に影響する可能性があります。また、当社グループの責任が問われるような判断がなされた場合は、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

風評被害について(発生可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 ソーシャルメディアの急速な普及に伴い、インターネット上の投稿や、それを原因とするマスコミ報道などによって、風評被害が発生した場合、企業のイメージが損なわれ、社会的な信頼や事業への信用が低下する可能性があります。当社は「リスク管理・コンプライアンス規程」を設け、リスク・コンプライアンス研修を実施し、従業員のコンプライアンス意識を養成し、リスク管理やリスク発生の抑制、リスク発生時の対応を行っておりますが、それにも関わらず従業員の不正や不適切な行為の発生、否定的な風評が拡散した場合、顧客の離脱や影響が出ることも想定され、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

知的財産管理について(発生可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社グループは、特許権や商標権等の知的財産権に関して、外部の弁理士等を通じて調査する等、その権利を侵害しないように留意するとともに、必要に応じて知的財産権を登録することにより、当社グループ権利の保護にも留意するよう努めております。しかしながら、当社グループの認識していない第三者の知的財産権が既に成立している又は今後成立する可能性があり、仮に当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者により損害賠償請求、使用差止請求又はロイヤルティ支払要求等が発生する可能性があり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

のれんの減損リスクについて(発生可能性:低、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社グループは、2024年1月に株式取得を行った株式会社ファクトリアルについて、のれんを計上し、一定期間で償却を行っております。当該のれんについては将来の収益力を適切に反映しているものと判断しておりますが、事業環境の変化等により期待する成果が得られなかった場合には、当該のれんについて減損損失を計上し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

継続的な投資について(発生可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、AI/DXプロダクトの「Aidemy Business」による顧客獲得を皮切りに、AI/DXソリューションへのクロスセルを行う、プロダクトを起点にしたアプローチに強みをもつビジネスモデルを有しております。そのため、当社グループの成長においては、「Aidemy Business」における顧客基盤の強化及び「Modeloy」による伴走型支援の拡大が重要であると考えております。当社グループとしては継続的な投資により顧客基盤を拡大させる方針で、新規顧客獲得のためのマーケティング投資、新規顧客獲得及び取引継続率向上にむけたコンテンツの質・量の拡充に係る投資、「Modeloy」による伴走型支援ニーズの拡大に対応ができるよう、プロジェクトマネージャー、データサイエンティスト、エンジニア等の優秀な人材の獲得に係る採用費及び人件費への投資にも注力しております。しかしながら、これらの投資を上回る収益が創出できない場合は、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクに対して、当社グループは売上高等を経営上の重要なKPIとして設定し、その達成状況を取締役会等においてモニタリングし、必要に応じて追加の施策を実行してまいります。

 

(2)経営管理体制に関するリスク

人材の確保及び育成について(発生可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは、継続的な事業拡大のためには、優秀な人材の確保や育成が重要であると認識しており、人材の確保・育成に努めております。しかしながら、今後策定する人員採用計画に沿った人材採用が順調に進まなかった場合や、労働力市場の変化、及び経営環境等の変化による人材流出が進んだ場合には、当該影響による業務運営及び事業拡大に支障が生じる可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクに対して、当社グループはエージェントからの紹介だけではなく、スカウトツールの活用、リファラル採用の強化など様々な採用手法を活用することで人員採用計画に沿った採用を進めてまいります。また、従業員の待遇改善や福利厚生を充実させることで、労働力市場の変化や経営環境の変化による人材流出を抑制してまいります。

 

経営管理体制の確立について(発生可能性:低、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、グループ全体としての業容の拡大及び従業員の増加に合わせて内部管理体制の整備を進めており、今後も一層の充実を図るよう努めております。しかしながら適切な人的・組織的な対応ができずに、事業規模に応じた事業体制、内部管理体制の構築が追いつかない場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクに対して、当社グループは業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、更に法令・定款・社内規程等の遵守を徹底してまいります。

 

特定の人物への依存について(発生可能性:低、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社代表取締役である石川聡彦は、当社グループの創業者であるとともに、大株主であり、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしております。当社グループは、特定の人物に過度に依存しない体制を作るために、取締役会等における役員間の相互の情報共有や経営組織の強化に努めております。しかし、現状において、何らかの理由により当人が当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

情報セキュリティ体制について(発生可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは、業務において顧客の機密情報やユーザーの個人情報等を取り扱っております。当社グループでは、代表取締役を筆頭に、情報セキュリティ管理体制を構築しております。また、2020年12月にはプライバシーマーク(JISQ15001)を取得し、個人情報管理体制の強化に努めております。しかしながら、万一、個人情報への不正アクセス等により情報漏洩が起きた場合、受講者及び取引先の信頼が失墜し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(4)その他のリスク

新株予約権の新たな発行による株式価値の希薄化について(発生可能性:高、顕在化する可能性のある時期:5年以内、影響度:小)

 当社グループは、当社グループの役員並びに従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。今後も役員並びに従業員に対するインセンティブとして、新株予約権を付与する可能性があり、それにより株式が新たに発行された場合、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、2024年5月末における新株予約権による潜在株式数は439,525株であり、当社発行済株式総数3,978,000株の11.0%に相当しております。

 

資金使途について(発生可能性:低、顕在化する可能性のある時期:3年以内、影響度:小)

 上場時に実施した公募増資による調達資金の使途については、「Aidemy Business」及び「Modeloy」における人材の採用、育成等に係る人件費やマーケティング等の運転資金、コンテンツ開発投資に充当する予定であります。しかしながら、変化する経営環境に柔軟に対応するため、現時点での計画以外の使途にも充当される可能性があります。また、当初の計画に沿って資金を使用した場合においても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性もあります。

 このようなリスクに対して、当社グループを取り巻く外部環境や経営環境の変化については適時その動向を注視するとともに、公募増資による資金調達の使途が変更になった場合には、適時適切に開示を行います。

 

税務上の繰越欠損金について(発生可能性:高、顕在化する可能性のある時期:3年以内、影響度:小)

 当社グループには、税務上の繰越欠損金が存在しております。これは法人税負担の軽減効果があり、今後も当該欠損金の繰越期間の使用制限範囲内においては納税額の減少により、キャッシュ・フロー改善に貢献することになりますが、当社グループの業績が順調に推移するなどして繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税等が計上されることとなるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

M&A、資本提携等について(発生可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループでは今後の事業拡大へのために、M&Aによる企業買収や資本提携等も積極的に推進してまいります。それらを実施する場合には、対象となる企業の財務内容や事業についてのデューデリジェンスを行い、事前にリスクを把握するとともに、収益性や投資回収の可能性について慎重な検討を行ってまいります。

 しかしながら、経済環境の変化等の理由から、当社グループがM&Aや資本提携等を行った企業の経営、事業、資産等に対して十分なコントロールを行えない可能性があります。結果として当社グループが期待した通りのシナジーが得られず、想定通りの投資効果を上げられない場合には、当社グループが既に行った投資額を十分に回収できないリスクが存在し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

当社設立からの経過年数(発生可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は2014年6月に設立されており、設立後の経過期間は10年程度と社歴の浅い企業となります。当社グループは現在急速な成長過程にあると認識しており、今後も積極的な成長投資が必要となるため、その投資のタイミングや成果によっては一時的に損益が悪化する可能性があります。当社グループはIR・広報活動などを通じて経営状態を積極的に開示していく方針でありますが、過年度の経営成績は期間業績比較を行うための十分な分析材料とはならず、過年度の業績のみでは今後の業績等を判断する情報としては不十分である可能性があります。

配当政策

3【配当政策】

 当社グループは、株主への利益還元を重要な課題として認識しており、事業基盤の整備状況や事業展開の状況、業績や財政状態等を総合的に勘案しながら、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としております。しかしながら、現在成長過程にありますので、更なる成長に向けた組織体制の整備や事業の拡大、サービスの充実やシステム環境の整備等への投資に有効活用することが、株主に対する利益貢献につながると考えております。

 上記の理由から、創業以来配当を実施しておりません。当面は、内部留保の充実を図り、更なる成長に向けた事業の拡充等への財源として有効活用する方針であります。

 将来的には、財政状態及び経営成績を勘案しながら配当を実施していく方針でありますが、現時点において配当の実施時期等については未定であります。なお、剰余金の配当を行う場合、年1回の期末配当を基本としており、配当の決定機関は取締役会であります。また、当社は取締役会の決議により、毎年11月30日を基準日として、中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。