リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 当社グループは、当連結会計年度において、営業損失165百万円、経常損失187百万円、親会社株主に帰属する当 期純損失243百万円を計上致しました。これにより5期連続して営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上することとなりました。取引金融機関からは、業績の安定化が図れるまでは新たな融資の検討は困難であるという見解を提示されております。
以上により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。当社グループでは、これらの状況を解消するため、以下の対応策を実施してまいります。
ア.収益力の向上
既存顧客の設備更新需要の喚起を行い、また、新製品の提案活動による顧客基盤の拡充を図ります。
具体的には、新型コロナウイルス感染症により制限されていた対面での営業活動を積極的に行い顧客との関係の再構築を図っていきます。また、新製品Xscend®は現在のSDI/IP運用しているユーザーに対して今後のFull IP化及び高帯域化への対応を可能とする製品であるため、積極的に潜在的な顧客への紹介も行い、顧客基盤を拡充してまいります。
イ.販売費及び一般管理費の削減
販売費及び一般管理費の見直しを継続的に行い徹底的なコスト削減を実施します。
具体的には、社内リソースの配分を見直すことによって人件費の削減を図り、また、最適な輸送方法、タイミングの選択、輸送業者の見直しを行うことにより輸送費の削減を図ります。加えて、リモートワーク推進による最適なオフィススペースを定義し、賃借料の削減の検討をいたします。実施時期につきましては、役員報酬の削減等、既に実施されている施策もあり、今後も、削減可能なものから可及的速やかに実施してまいります。
ウ.研究開発費効率化
内製化による外注費の削減、外注先の再検討を行い研究開発の効率化を進めます。
具体的には、開発部門でのリソース配分の見直しによって、従来外注していた業務を内製化し費用の削減を図ります。また、外注先の再検討によって、外注費の単価の低減と効率化を進めます。実施時期につきましては、従来外注していた業務の内製化等、既に実施されている施策もあり、今後も、削減可能なものから可及的速やかに実施してまいります。
エ.資本政策等
現時点で実行可能な手段は第17回新株予約権の発行による資金調達方法に限定されておりますので、業績の改善を図りながら、新たな資金調達の手段を検討してまいりますが、様々な要因に影響されるため、実施可能性やその時期、金額等を予測することは困難です。
上記施策の確実な実施により、当社グループの経営基盤を強化してまいりますが、半導体市場の正常化の時期、地政学的リスクの影響が解消される時期は、未だ不透明であることから、今後の売上高や営業キャッシュ・フローに及ぼす影響の程度や期間については不確実性があります。また、資金調達も含め、これらの対応策は実施途上であり、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。
なお、連結財務諸表は継続企業を前提として作成しており、継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を連結財務諸表に反映しておりません。
(2) 特定顧客への高い依存度について
現在、当社グループの売上高は、特定の顧客への依存度が高いレベルで推移しています。既存の大口顧客からの要望に応え続けることで、その顧客との継続的な取引拡大につなげることは重要であり、そのために社内リソースを既存の大口顧客の案件に重点的に配分することは合理的です。その結果として、全体の売上増加につながっているという実績はありますが、その一方で過度の依存はリスクを高めます。その顧客の設備投資方針や投資計画が変更されたり、購買方針が変更されたり、顧客の競争力が失われたりした場合は、当社グループの売上高が大幅に減少する可能性があります。
(3) 安定収益源の確保について
当社グループが提供する機器およびシステムは、通信や放送のインフラを構成するものです。その設備は、一度導入されると、次回の更新まで大きな需要は発生しません。その更新頻度は、通信事業者の場合で4~5年に1回、放送事業者の場合は8~10年に1回です。従って、ひとつのユーザーから大きな受注を獲得した場合、同じユーザーから継続して同じ機器やシステムに対して大きな受注が発生することは期待できません。安定的な業績を達成するためには、常に新規の設備導入および更新需要の発生するユーザーを継続的に確保する必要があります。
一度販売した装置やシステムに係る継続的な保守料収入は、安定収益源のひとつになると考え、その拡大を図っていますが、現状では売上全体に占める割合はまだ限定的です。そのため、当社グループの売上は新規の機器およびシステム販売に依存する部分が大きく、当社グループが常に新たな需要を継続的に獲得できない場合は、当社グループの売上は減少する可能性があります。
(4) 競争環境の変化について
当社グループは放送用ネットワークインフラにおけるIP伝送分野において技術的な優位性を持っており、同分野における世界の主要顧客からの採用実績でも他社を上回っていると考えています。
近年、放送用ネットワークインフラでIP伝送関連のニーズが高まり、市場が拡大する中で、IP伝送分野への参入企業が増加しています。また、映像をIPを利用して伝送する規格が世界的に標準化されたことにより、参入障壁も低くなっています。このように激しさを増す競争環境において、当社グループが技術面その他において優位性を失うことがあれば、当社グループの業績に影響を受ける場合があります。
(5) 市場の需要動向の変動について
当社グループは、主に放送事業者、通信会社を顧客としていますが、近年のインターネット経由のコンテンツ配信事業者の新規参入により、顧客の事業環境が大きく変化しており、当社グループの製品・サービス等の販売が影響を受ける可能性があります。
また、顧客が、事業を展開する各国における法令、行政当局による指導、その他の規制を受ける場合があり、当社グループの製品・サービス等の販売が影響を受ける可能性があります。
さらに、映像伝送にかかわる新たな規格が次々に定められており、当社グループの製品がそれぞれの規格に適合できない場合は、当社グループの製品・サービス等の販売が影響を受ける可能性があります。
(6) 特定製品シリーズへの高い依存度について
当社グループの売上は、IP伝送装置MD8000シリーズへの依存度が高い状況が続いています。MD8000シリーズは、放送用映像のIP伝送装置として、様々な環境に適応した高機能な製品で、世界中の先進的ユーザーへの納入実績も多く、現時点において性能面では他社製品に対して優位性を保っていますが、さまざまな企業が放送用映像のIP伝送事業に参入しており、その優位性は徐々に薄れてきております。
そのため当社グループは、MD8000シリーズの後継機種として開発を進めてきた新機種「Xscend®」の販売を開始致しました。しかし、他社の革新的な技術開発や新製品投入等の事象が発生した場合には、当社グループの売上高が影響を受ける可能性があります。
(7) 生産体制について
当社グループの製品の生産についてはすべてを外部に委託するファブレス型のビジネスモデルを採用しています。複数の生産委託先に製品の生産を委託することにより、外部環境の変化への機敏な対応を可能とし、多額の資金が必要となる生産設備投資に制約されることなく事業を進めています。生産委託先は1社だけではなく、3社以上を基本としています。また、生産委託先への定期的な工場監査を実施しております。
しかし、複数の生産委託先を適切に確保できなかった場合や、安定的な部材調達が困難になった場合、生産委託先において、経営悪化、品質問題、火災事故等が発生することで、製品の生産に支障をきたした場合は、充分な製品生産能力を確保することができなくなり、業績等が影響を受ける可能性があります。
(8) 開発技術について
当社グループは、潜在的な市場ニーズや顧客ニーズを探り、付加価値の高い製品を開発し、適切な時期に市場に提供していくことが責務であると考えています。しかし、当社グループが取り扱う製品分野では、急速な技術革新が進んでいます。その性質から、製品の開発と市場への投入プロセスは不確実なものであり、以下をはじめとした様々なリスクが含まれており、これらの要因が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
① 急激な技術の進歩、規格・標準の変化により、当社が開発する製品が市場が求める通信方式や放送方式等
に適合できない可能性があること。
② 新製品または新技術の市場投入の遅れにより、当社製品が陳腐化する可能性があること。
③ 新製品・新技術を開発したとしても、市場から支持されるとは限らず、これらの製品の販売が成功する保
証がないこと。
④ 新製品・新技術の開発に必要な資金と資源を今後も継続して十分に確保できる保証がないこと。
(9) 特許について
当社グループは研究開発を主体としたファブレス企業であり、知的財産権の保護を図ることは重要な問題と認識し、特許事務所との連携を強化することにより、当社グループの技術・製品を保護するための特許等の出願・登録を積極的に行うと同時に、他社権利の調査を徹底的に行うことにより他社の権利侵害の防止に努めています。
当社グループはこれまでに技術・製品に関して、第三者の知的財産権の侵害は存在していないと認識しています。しかし、当社グループの技術・製品に関連する知的財産権が第三者に成立した場合または当社グループの認識していない技術・製品に関する知的財産権が既に存在した場合においては、知的財産権の侵害を理由とする訴訟やクレームを提起されないとは限らず、このような事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(10) 部品調達について
当社製品の製造には、特定の半導体やその他の電子部品の使用が重要になる場合が多くあります。その半導体メーカーや電子部品メーカーの意向により、特定の半導体または電子部品の入手が困難になり当社製品の製造に支障をきたしたり、納期が長期化することで顧客の要望に応えられなくなったりする可能性があります。
(11) 製品について
当社グループは、社内で確立した厳しい品質管理基準に従って製品を製造しております。しかしながら、製品の欠陥による製造物賠償責任をはじめとした顧客からの賠償請求が発生する可能性があります。製造物賠償責任については保険に加入しておりますが、この保険で賠償請求額を担保できない可能性があります。賠償責任を負うような製品の欠陥が生じた場合、多額のコストや当社グループの信用低下が当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(12) 為替の変動について
当社グループでは、海外での事業活動の割合が高くなっています。これに伴って、USドルやオーストラリアドル、ユーロ等の外貨建て取引が発生しております。このため、外貨建て決済の際に為替変動の影響を受ける可能性があります。当社グループはこれらのリスクに対して、為替マリーや為替予約等の対策を行っておりますが、これらにより為替リスクを完全に回避できる保証はなく、為替変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの製品は日本国内で製造されており、製造原価の多くは日本円で構成されております。そのため、海外市場における競争力は、日本円の為替変動の影響を受けます。
(13) 人材の確保・育成について
当社グループは、人材戦略を事業における最重要課題のひとつとして捉えています。特に、製品開発や海外展開の軸となる十分な知識、技術、語学力とノウハウを有する人材の確保・育成が不可欠であるという認識に立っています。
当社グループは、優秀な人材を確保するため、また現在在籍している人材が退職又は転職するなどのケースを最小限に抑えるため、必要な人事体系の構築及び教育体制の充実に努めています。
しかしながら、将来優秀な技術者が退職したり、優秀な人材を確保できなかったりした場合、当社グループの業務に支障が生じる可能性があります。
(14) 海外展開について
当社グループは市場機会を拡げるため、積極的に海外展開を進めています。しかしながら、こうした海外市場への事業展開には、以下のようないくつかのリスクが内在しています。
① 予測しない法律・規制の変更
② 人材の採用と確保の難しさ
③ テロ、戦争等の地政学的リスク
④ 国・地域におけるその他の経済的、社会的及び政治的リスク
(15) ロシア連邦によるウクライナ侵攻によるリスクについて
2022年2月24日に発生したロシア連邦によるウクライナ侵攻より、当社のロシア連邦及び近隣諸国における潜在的な収益機会を失うリスクがあります。加えて、ウクライナはネオン、アルゴン、クリプトンやキセノンなど半導体製造に必要なガス(希ガス)の産出国です。とりわけネオンについては世界需要の約7割を供給しています。ネオンは半導体の露光工程に必要なガスで、現在不足している半導体のほとんどが製造工程でネオンを使っているため、現在の半導体供給のひっ迫状況がさらに悪化する懸念があります。半導体を安定的に確保するべく、情報の共有を含め、安定的な供給に向けて供給元との協議を継続しておりますが、侵攻状況については世界的な問題でもあり、更なる悪化が生じた場合に完全に対応することが困難となる可能性もあります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主様への利益還元につきましては、重要な経営課題として認識しております。
当連結会計年度は、赤字決算となったことから、無配とさせていただきました。
将来的には、各事業年度の経営成績を勘案しながら株主への利益還元を検討していく方針です。
当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としています。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会です。当社は、「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる」旨を定款に定めています。