2023年9月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

本書の「事業の状況」及び「経理の状況」等に関する事項のうち、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資判断あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。

当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識したうえで、リスクの回避、低減、並びに発生した場合の対応に努める方針であり、当社株式等に関する投資判断は本項及び本項以外の記載内容も併せて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日において当社グループが判断したものでありますが、以下の記載は当社グループの事業等及び株式への投資に係るリスクをすべて網羅するものではありません。また、不確実性が内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(1) 事業所の新規開設に関するリスク

当社グループでは、「医心館」の開設地域を選定するにあたり、十分な時間をかけて多角多面的なマーケットリサーチを行っております。また、当社担当者が独断で案件進行してしまうことがないよう、一般従業員から経営層まで各職位による複数人対応を原則としております。医療・介護業界に限らず、不動産開発では好立地から優先的に需要されていくため、同業他業の他社との競合により好立地に案件を確保できないとき、また自治体等の各種規制において開設できないとき、そして様々な要因、例えば工事期間中の台風や大雪といった不可抗力の事由、景況感や各種相場や需給の変化といった予測困難な事由などが発生するとき、これらは開設計画の実現性における不確定要素となっております。ここに記載した不確定要素をはじめ、何らかの事由で開設時期に遅れや事業計画に大幅な乖離を生じたとき、利益機会を逸失し、当社グループの業績及び利益計画や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(2) 人材の確保、育成及び管理に関するリスク

当社グループが事業の規模、範囲並びに内容を安定的かつ持続的に、さらには発展的に開発するためには、それに見合った人材を確保、育成する必要があります。特に、医心館事業は看護職員の配置人数(体制)に強みをおく事業であり、適切な有資格者の確保と育成は事業の根幹であると言えます。また、経営資源としてのこれら人材を効果的かつ効率的に利用するために管理することも必要となります。医心館の展開が進むほどに人材の確保は有利となっている状況にありますが、医療・介護業界での慢性的な人材不足とこれに続く求人競争激化の環境は予断を許さない状況であります。当社グループでは、(他社と同様に)求人サイトやメディアを利用しておりますが、これを漫然と利用し続けることを避け、常に効果検証しながら積極的な採用活動を行い、必要とする質量の人材が確保できないリスクの低減に努めております。しかしながら、万が一、そのリスクが生じた際には、既存事業所ではサービス提供の規模縮小、新規事業所ではオープン時期の順延などの影響を生じ、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(3) 特定人物への依存に関するリスク

当社グループの創業者であり大株主でもある代表取締役である柴原慶一は、設立以来、当社グループの事業に深く関与し、当社グループの経営戦略の構築やその実行に際して重要な役割を担っております。また、当社の発行済株式(自己株式を除く。)の総数のうち60.72%(同氏がすべての株式を保有する株式会社IDEA Capitalの保有分も含む)の株式を保有しております。

当社グループでは、特定の人物に依存しない体制を構築するべく、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏の当社グループにおける業務執行が困難になった場合、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(4) 当社株式の流動性に関するリスク

2023年9月末現在、当社株式についての、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は36.9%となっております。今後は、当社大株主や事業法人等への株式の一部売却の要請等により、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 自然災害・集団感染・事故等に関するリスク

当社グループでは、有事に備えた危機管理体制の整備に努め対策を講じておりますが、台風、地震、津波等の自然災害及び感染症や医療依存度が高い高齢者や障害者を受け入れる集合住宅ならではの食中毒等への集団感染、及び火災等の生命に関わりうる事故のリスクがあります。「医心館」では、事業所内での着火物の取扱いを原則禁止し、食事は調理済み食材(チルド食)を加温提供する等、火災の発生リスクの低減に努めております。また、利用者と従業員の健康管理を基本とし、日ごろ手洗いや手指消毒を励行、定期的に社内研修では感染(症)の予防、流行及び対応を学ばせ、マニュアルを整備し、これを適切に運用することで食中毒や集団感染の発生リスクの低減に努めています。これらのほか、地震や風水害への備えを行い、防犯環境を整える等の対応により利用者の安全管理などに細心の注意を払っております。しかしながら、想定を上回る規模の自然災害や集団感染、事故が発生し、当該事業所の稼働が長期に渡って困難になった場合には、当社グループの管理責任が問われ、当該事業所のみならず当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります

 

(6) 物価高騰に関するリスク

当社グループでは、木材、エネルギー資源、施設で使用する物品等のインフレの影響を踏まえ、2023年9月期、及び2023年10月に入居費の値上げを行っております。しかし、今後更なるインフレによって、上記の費用に加え、地代家賃や建築費用等の新規事業所の調達コストが増加し、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(7) 事業に係る法的規制に関するリスク

当社グループが行っている「医心館事業」は、老人福祉法、高齢者住まい法、健康保険法、介護保険法及び障害者総合支援法ほかに基づく医療及び介護サービスの提供が中心となっており、これら法律及び関連諸法令の規制を受けます。また、当社グループでは売上高に対するそれら保険収入割合が約9割となっており、保険収入に依存した収益構造となっております。

健康保険制度及び介護保険制度は、2年毎及び3年毎に制度全般の見直しや報酬の再設定が行われ、特に6年毎の同時改定のタイミングにおいて社会保障制度及び医療介護福祉政策の方向性が示されます。従いまして、医療保険収入と介護保険収入の割合が高い同事業では、法令、制度及び報酬の改定等があり、経営上不利な内容があった場合には、当社グループの業績や財政状況に影響を与える可能性があります。

 

(8) 事業に必要な指定等に関するリスク

当社グループが行っている「医心館事業」は、事業所単位で、都道府県知事又は政令指定都市市長から各種指定等(表2)を受けるものであります。特に訪問看護事業(医療保険売上、介護保険売上)と訪問介護事業(介護保険売上)では、これら2事業による売上高は売上全体の9割を占めることから、これら事業に係る指定等の許認可取消があった場合には、後述する事由により当社グループの業績や財政状況に重大な影響を与える可能性があります。

該当する根拠法で許認可取消事由がそれぞれ定められておりますが、主な内容は以下のとおりであります。

 

・不正請求   … 実態のないサービス提供に対する請求、実態のない加算請求

・人員基準違反 … 人員欠如による運営、無資格者によるサービス提供、実在しないスタッフによる記録

                  作成、勤務時間の虚偽

・運営基準違反 … 記録の未整備、計画未作成、重要事項や計画の説明未実施

・虚偽報告   … 自治体への届出や報告、実地指導対応における事実とは違う書類提出や答弁

 

当社グループの特定の事業所が許認可取消を受けた場合、その事業所の介護報酬等が請求できなくなり、また、その事業所では5年間は新規事業所の開設を禁止されます。さらに、取消事案が法人全体で(組織的に)関与していると判断された場合は、関係法人の新規指定・更新が拒否される場合もあります。一事業所でも許認可取消を受けた場合、法人(当社グループ)が不正又は著しく不当な行為をした者と判断され、5年間は新規指定も指定更新もできないこととなります。介護保険法等に基づく事業については、6年ごとに指定更新を受ける必要があるため、一事業所でも許認可取消を受ける事は、新規事業所開発の停止と共に、ほとんどの既存事業所が更新できずに撤退となりますので、医心館事業から撤退せざるを得なくなります。

 

表2 医心館事業で提供するサービスの名称及び根拠法等

a.訪問系サービス

 

サービス名

根拠法等

主な許認可取消事由

 

訪問看護

介護予防訪問看護

・介護保険法(厚生労働省)
指定の有効期間は6年間で、以後6年毎の更新が必要となります。
都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となります。

・健康保険法(厚生労働省)
介護保険法に基づく指定を受けた際には、健康保険法の指定があったものとみなされますので、有効期間は介護保険法に基づく指定の有効期間に準じます。
地方厚生局が事業の指定権者となります。

・訪問看護
介護保険法第77条
(指定の取消し等)

 

・介護予防訪問看護
介護保険法第115条の9
(指定の取消し等)

 

訪問介護

居宅介護支援

・介護保険法(厚生労働省)
指定の有効期間は6年間で、以後6年毎の更新が必要となります。
都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となります。なお、居宅介護支援については、2018年4月以降の指定権者は市区町村になっております。

・訪問介護
介護保険法第77条
(指定の取消し等)

 

・居宅介護支援
介護保険法第84条
(指定の取消し等)

 

介護予防・日常生活支援総合事業

・介護保険法(厚生労働省)
指定の有効期間は6年間で、以後6年毎の更新が必要となります。
市区町村が事業の指定権者になります。

介護保険法第115条の45の9

(指定事業者の指定の取消し等)

 

居宅介護

重度訪問介護

・障害者総合支援法(厚生労働省)
指定の有効期間は6年間で、以後6年毎の更新が必要となります。
都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者になります。

障害者総合支援法第50条

(指定の取消し等)

 

 

b.施設系サービス

 

サービス名

根拠法等

主な許認可取消事由

 

住宅型有料老人ホーム

老人福祉法(厚生労働省)

届出制であり、届出後の有効期間の設定はありません。

都道府県、政令指定都市及び中核市が届出先となります。

老人福祉法第29条14項

(届出等)

※事業の制限又は停止に関する定めあり

 

サービス付き高齢者向け住宅

高齢者住まい法(国土交通省)

登録制であり登録の有効期間は5年間で、以降5年毎に更新が必要となります。

都道府県、政令指定都市及び中核市が登録先となります。

高齢者住まい法第26条

(登録の取消し)

 

 

なお、新規に事業所を開設する際には、開設予定地の自治体との事前相談や事前協議において、当社グループが行う事業を十分に説明し、自治体からの事業所及び人的に係る基準等の指導があれば、これに対応した上で開設準備を開始しております。また、事業所の開設後も法律、規則や基準等並びに指導を遵守し事業を運営しております。

開設前、開設後ともに細心の注意を払って準備・運営しており、有価証券報告書提出日現在において、各事業所における指定等の取消しや営業停止は発生しておりませんが、今後、何らかの原因によりこれらの指定等が取り消された場合や営業停止となった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 情報管理に関するリスク

当社グループが行っている「医心館事業」では、多数の利用者の情報を取り扱っており、特に病歴や治療状況など一層厳重に管理することが要求される情報を含んでいることに特徴があります。また、当社グループの管理部門では様々な経営情報等の内部情報を保有しております。当社グループでは、情報管理に係る従業員教育を行うほか、従業員(退職者を含む。)に対して機密保持の宣誓書の提出を求め、またそれら情報を取り扱うエリアを区分し、サーバ及びディスクへのアクセス制限等を実施することにより情報漏えいリスクの低減に努めております。しかしながら、万が一、情報漏えいが発生した際には、当社グループの社会的信頼が失墜し、あるいは損害賠償支払い、体制整備及びシステム改修に係るコストが発生することにより、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(10) 長期賃貸借契約に関するリスク

当社グループが行っている「医心館事業」では、事業所として「医心館」の開設に供する土地又は建物もしくはその両方を各所有者から借り受けております。賃貸借により投資リスクは抑制されるものの、一定期間は撤退の制約が課せられ、これに反した場合は中途解約による違約金等の支払いが生じます。有料老人ホームの開設に係る自治体からの指導等もあり、20~30年間の長期賃貸借契約を締結することが一般的であります。また、土地及び建物の所有者である法人又は個人が破綻等の状況に陥り、継続的な使用や差入保証金の回収が困難となることがあります。当社グループでは、契約において条件設定するとともに、事業所の開設後も所有者とのコミュニケーションを密に状況変化の兆しを初期の段階で捉えること等により、リスクの低減に努めております。前述の状況となった際には、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(11) 固定資産(土地・建物及び構築物・リース資産)の減損等に関するリスク

当社グループが行っている「医心館事業」では、医療・介護サービスの提供という事業の性格上、利用者の行き先確保、医療機関や行政機関との関係性維持の観点から、事業の収益性に不利を生じても即時撤退が困難で、低採算での運営を続けなければならない可能性があります。ゆえに、固定資産の減損会計の適用に伴う損失処理が発生しないよう、各事業所の収益管理を徹底し、不採算事業所があれば積極的に対策を講じております。当連結会計年度末及び当事業年度末においては、それぞれ当社グループ及び当社において減損の兆候はないと判断しておりますが、万が一、不採算事業所の増加や閉鎖が集中した場合、多額の減損損失が発生し、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(12) M&Aに関するリスク

当社グループでは、同業他業の他社に対するM&A(子会社化や事業譲受等)を実施することにより、当社グループの事業を補完強化することが可能であると考えております。その実施にあたっては、対象企業や対象事業の状況及び財務、税務、法務、業務ほか各種デューデリジェンスを行うなど、意思決定に必要な情報を十分な時間をかけて収集、分析、精査及び検討することで、可能な限りリスクの低減に努めております。しかしながら、M&Aではこの実施後に当社グループが事前には認識し得なかった事項が判明、また問題が明らかになった場合や、何らかの理由で取得した企業や事業の経営や展開が計画どおりに進まない場合には、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(13) コンプライアンスに関するリスク

当社グループでは、「医心館事業」を営むうえで、利用者や家族ほか、近隣住民、地域の医療機関、在宅医療の主治医や薬剤師、ケアマネジャー、各種取引先など当該事業に関わる方々からの信用や評判が大きな影響力を有することから、法令遵守及び倫理に基づき誠実に行動することを経営上の最重要課題のひとつとして位置付けております。事業の実施に直接関係する法令等ほか、社会的責任のある企業のひとつとして遵守すべき法令等の全般につき当社グループのすべての役職員が法令等や倫理から逸脱しないよう、日ごろコンプライアンスに係る意識と行動の徹底を図っております。なお、内部での不正を抑止するため、当社グループでは内部通報制度を整備、運用しております。

また、昨今、他社において従業員のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での倫理観を欠く不適切な発信行為が企業の社会的信用の失墜、訴訟の提起、監督官庁等からの処分を引き起こす例が少なからずあります。当社グループでは、このことに鑑み、入社時及びその後の定期的な社内教育研修等で従業員に対する意識の向上を求めております。

万が一、コンプライアンス上の問題に直面した場合には、法令による処罰・訴訟の提起・社会的信頼の喪失等により、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(14) その他のリスク

上記のほか、外部からの犯罪行為、事務手続きの不備などにより直接的又は間接的もしくはその両方のコストが発生し、適正な事業所運営や事業展開に支障を生ずること、行政処分等により営業停止となること、加えて当社グループの社会的信頼が失墜する等のリスクがあります。これらの場合、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、株主に対する利益配分を重要な経営課題として捉え、医心館事業及びその周辺領域への事業展開と経営基盤の強化を図るための内部留保資金を確保しつつ、安定的な株主配当を基本とし、市場環境、規制動向、財務健全性等を総合的に勘案し、年1回の期末配当を行うことを基本方針としております。
 当社は、会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議によって定めることができる旨を定款に定めておりますが、期末配当は原則として株主総会の決議によることとしております。また、期末配当の基準日は毎事業年度末日、中間配当の基準日は毎年3月31日とし、このほか基準日を定めて剰余金の配当をすることができる旨を定款に定めております。

これらの方針に基づき、当事業年度の期末配当につきましては、1株当たり3円としております。

なお、中長期的には株主総利回りを重視し、成長ステージの変化に関わらず安定した利回り提供を企図しております。

 

当事業年度に係る剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年12月22日

定時株主総会決議

294

3.00