リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のものがあると考えております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社では、グループ全体に関わるリスク管理の基本方針や管理体制について「リスク管理規程」で定め、その規定に基づき、社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、グループのリスク管理を推進しています。当社の考える、会社経営に影響を及ぼす可能性がある事業等のリスクには、企業価値向上のためリスクとのバランスを図りつつリターンの最大化を図っていく「事業戦略リスク」と、企業価値の維持のためにその発生防止もしくは発生確率・損失の極小化を図るべき「損失発生リスク」があると考えています。更に前者の「事業戦略リスク」は、戦略リスク・投資リスク・市場リスクに区分し、後者の「損失発生リスク」は、法的リスク・カントリーリスク・災害リスク・信用リスクに区分してリスクマネジメントを実施しています。
「事業戦略リスク」については、リスクマネジメント委員会において、グループにおける事業の推進、新規案件等でのリスクを洗い出し、グループの経営戦略を検討する会議にて、最大のリターンが適時・適切に得られるよう具体的な対応策の審議を行なっています。「損失発生リスク」については、リスクマネジメント委員会の分科会として「リスク・クライシスマネジメント分科会」を設置し、定期的にグループの当該リスクの洗い出し、分析、発生頻度(時期)や損失規模(損害額)を想定したリスクレベル評価による定量化を行ない、その重要性・緊急性を考慮し優先順位を付けて課題・対応策の検討を行なっています。
NOKグループ リスクマネジメント体制(当連結会計年度末現在)
(1)事業戦略リスク
①戦略リスク
a.顧客の業績への依存について
当社グループでは、シール製品及び電子機器部品の製造・販売が事業の大部分を占めており、これらの分野においては国内外の主要な自動車メーカー、建機メーカー、及び電子機器メーカー等を主な得意先としております。これらの顧客企業への売上は、その顧客企業の業績や予期しない契約の変更等、当社グループにて管理できない要因により影響を受ける可能性があります。このような顧客への売上減少により当社グループの業績及び財務状況は影響を受ける可能性があります。当社グループではバランスの取れた顧客構成を志向し、当該顧客企業への売上減少のリスクが最小限となるよう努めております。
b.他企業との提携について
当社グループは、事業を展開する上で、他社と様々な提携活動を行っておりますが、提携先固有の事情による提携の解消等、当社グループで管理できない要因により業績及び財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
とりわけ、当社は1960年よりフロイデンベルグ社(以下同社)との間で、資本及び技術提携を行っており、当社グループの事業展開において、同社(グループ企業含む)は、パートナー企業として重要な位置付けを有しております。
現在同社は、投資会社であるフロイデンベルグ・エス・エーを通じて当社発行済株式の25.1%を保有する筆頭株主であり、1960年の提携以降、同社との関係は継続しております。今後においても、同社との提携関係は安定的に継続していくものと当社グループは認識しておりますが、同社との提携関係又は同社の事業戦略等に変化が生じた場合においては、当社グループの事業に対して影響を及ぼす可能性があります。
②投資リスク
a.需要動向の変化による影響について
当社グループの主要製品であるオイルシール等については、主に内燃機関(エンジン)に用いられるものでありますが、近年においては燃料電池自動車、及び電気自動車も市場投入されております。そのため当社グループでは将来の普及に備え、燃料電池自動車や電気自動車に搭載可能な新製品等に関する研究開発も進めております。しかしながら、現時点において将来、燃料電池自動車、及び電気自動車の普及が当社グループの業績及び財務状況に与える影響を見通すことは困難であります。
また、自動車、建機、電子機器製品、及び事務機のコモディティ化の流れの中で、新興国等での現地メーカーの台頭もあり、今後より一層の競争激化とそれに起因する価格下落が生じ、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③市場リスク
a.為替変動の影響について
当社グループの当期連結売上高に占める海外売上高比率は約7割であり、各地域における為替動向が、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。このため為替予約等によるリスクヘッジを行っておりますが、必ずしも為替リスクを完全に回避するものではないため、当社グループの業績及び財務状況は為替変動の影響を受ける可能性があります。
b.金利変動の影響について
当社グループは、資金需要、調達手段、及び金融情勢を勘案し資金調達をしておりますが、金融情勢の変化により調達金利が変動した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
c.株式市場の動向による影響について
国内外の株式市場の動向は、当社が保有する投資有価証券の評価額、及び当社グループの年金資産の運用状況に影響を及ぼします。株式市場が低迷した場合、投資有価証券の評価損が発生する可能性、及び年金資産が目減りし、会社負担が増大する可能性があります。
d.原材料の価格変動について
当社グループの製品の主要原材料である鋼板・合成ゴム・銅箔・樹脂フィルム・金等の価格は、需給動向等により変動しております。これら原材料価格の変動が即座に製品価格に反映されるとは限らないため、原材料価格の変動により、当社グループの業績及び財務状況は影響を受ける可能性があります。原材料価格変動の状況を鑑み、当社グループでは原材料を安定且つ継続的に供給いただける事業パートナーを国内に限らず広く世界中に求めております。
(2)損失発生リスク
「損失発生リスク」については、会社経営に重大な影響を及ぼす可能性のある危機の種類、及びそれを発生させる原因に基づき下記の通り区分を行なっております。
<会社経営に重大な影響を及ぼす可能性がある危機・リスク区分>
危機の種類 |
原因 |
リスク区分 |
操業停止 |
火災・爆発 |
・災害リスク ・信用リスク ・カントリーリスク |
自然災害(地震・水害・火山噴火等) |
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病気(新型コロナウイルス、新型インフルエンザ、SARS等) |
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材料供給停止 |
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サイバー攻撃 |
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不法な業務妨害 |
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ライフライン途絶 |
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法令違反等の発生 |
司法(犯罪・利益供与等) |
・法的リスク ・信用リスク |
税務(税法違反等) |
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会社法・金融商品取引法(株主代表訴訟等) |
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環境(汚染等) |
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労働法(労基法違反・セクハラ等) |
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従業員の死亡、重大な障害の発生、又はその恐れがある場合 |
労働災害 |
・災害リスク ・カントリーリスク |
交通事故 |
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自然災害(地震・水害・火山噴火等) |
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火災・爆発 |
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海外での戦争・暴動・テロ・誘拐等 |
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訴訟 |
・法的リスク |
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その他会社経営に重大な影響を及ぼす事項 |
重要な機密情報の紛失・漏洩 |
・信用リスク |
重大な品質問題 |
・信用リスク |
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その他 |
・各種リスク |
各本社機能部門(業務統括部門)は、想定される各リスクの評価について、予防対策を行なう前の素のリスクのことを「固有リスク」として、発生頻度を1年あたりの平均発生回数をもとに4段階で評点化し、それに損失規模を1回あたりの損害金額(直接の経済的損失額)をもとに5段階で評点化したものを乗じて算出しています。また、予防対策(ソフト面・ハード面)、保険・その他のヘッジについて有効性の評価(4段階にて評点化)を行ない、「固有リスク」からそれを除したものを対策後の「残余リスク」※1として定量評価を実施しています。この「固有リスク」と「残余リスク」の評点を踏まえ重要性・緊急性を考慮し、抑え込みたいリスク項目に優先順位付けを行ない、重要なリスクについては各部門にてリスク管理項目に掲げて対策を実施しています。また、定期的に各リスク項目の評価を行ない、管理項目および対策内容の見直しを実施し、継続的にリスク管理を行なっております。
(注)※1:残余リスク = 固有リスク(発生頻度×損失規模)- 対策の有効性
各区分における重要なリスクが現実化し損失が発生する可能性、ならびに現在実施している予防対策・リスクヘッジは以下の通りです。
①法的リスク
a.法的規制等の影響について
当社グループは、事業を展開する各国において様々な法規制の適用を受けております。法令に準じた社内規程やマニュアルの整備、各種教育によるコンプライアンス意識の醸成・周知徹底、外部専門家との連携体制の構築を図っておりますが、将来においてこれらの法規制が改正・強化された場合、新たな規制を遵守するために発生する追加コストの負担は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
b.訴訟その他の法的手続にかかわるリスクについて
当社グループが、各国で事業を遂行する上で、グループ内部統制の体制の整備、外部専門家との連携体制の構築、各種保険への加入等によるリスクヘッジを行なっておりますが、訴訟や規制当局による措置その他の法的手続の当事者となる可能性があります。これらの法的手続の結果、当社グループに対して金銭的な賦課や事業遂行に関する制約が課された場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
c.知的財産権侵害の影響について
当社グループは、特許権その他の知的財産権の取得により自社の保有技術を保護すると共に、第三者の知的財産権に対する侵害の予防にも注意を払っております。しかし、国情の相違等から当社グループの知的財産権の保護が十分に得られず販売減少や訴訟費用が発生した場合や、当社グループの製品が意図せず他社の知的財産権を侵害したために販売中止や賠償金支払が必要となった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
d.環境規制が及ぼす影響について
当社グループは、各拠点における環境関連法令を遵守し、かつ顧客からの環境に関わる要請に対応するために必要な処置を講じておりますが、将来において法令や顧客要請が強化される、環境責任が発生する、事業活動が制約を受ける等の可能性があります。その対応の費用が多額となる場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
②カントリーリスク
a.政治経済情勢について
当社グループは、日本、北米、欧州、中国、その他アジア諸国等において事業を展開しております。そのため、当社グループが製品を製造・販売している国や地域の政治情勢や経済状況の変動により、当社グループの業績及び財務状況は影響を受ける可能性があります。
③災害リスク
a.自然災害等について
当社グループは、地震・台風・洪水・火山の噴火等の自然災害や火災等の事故の発生により、当社グループの生産活動や物流活動に支障をきたす事態に備えて、生産拠点の分散化や安全対策を行い事業継続のためにリスクの最小化に努めており、また各種保険の加入等によりリスクヘッジを行っております。しかしながら、これらの事態の発生を完全に防止または軽減することができない可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
b.感染症等について
当社グループは、感染症等のパンデミックによる生産活動や物流活動に支障をきたす事態に備えて、生産拠点の分散化や安全対策を行い事業継続のためにリスクの最小化に努めております。
その中でも、2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大以降、対応マニュアルの策定、在宅勤務や時差出勤等の実施、リモートワークツール等の活用により業務を継続できる環境を確保する等、各種対策を講じて新型コロナウイルス感染症の影響の極小化を図っています。国での感染症法上の扱いが見直される等、徐々に収束に向かう兆候は見られますが、今後の状況により再び感染拡大または長期化した場合は、当社グループを取 巻く経済環境または事業環境が悪化することにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④信用リスク
a.情報流出の影響について
当社グループは、事業を遂行する上で、技術情報や個人情報等の機密情報を有しております。これらの情報の外部流出防止のため社内体制・手続を構築しておりますが、予期せぬ事態により情報が外部に流出した場合、社会的信用の低下や賠償金支払等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
b.サイバー攻撃等の影響について
当社グループは、悪意のあるサイバー攻撃等による、操業停止、重要データの喪失、情報漏洩に対して、外部機関等を活用した調査・予防措置を実施しておりますが、未知の方法のサイバー攻撃により操業に影響を及ぼす可能性があります。
c.製品の品質問題が及ぼす影響について
当社グループは、各生産拠点において世界的に認められた品質管理基準に従って製品を製造しておりますが、予測できない原因による製品の品質不具合の発生を皆無にすることは困難であります。万が一大規模なリコールや製造物賠償責任につながるような製品の不具合が発生した場合、多大な対応コストや社会的信用の低下により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、各リスクに対する上記の予防対策にもかかわらず、顕在化された「損失発生リスク」が会社経営に重大な影響を及ぼす緊急事態が発生した場合は、直ちに緊急対策本部を設置しグループ全体で迅速に対応を行うことにより、可能な限り事業継続を図り、顧客等のステークホルダーへの影響を最小化することに努めています。
また、当社グループの事業の継続に障害となる事象(災害リスク)が発生した場合に、事業継続を確実にすると共に事業継続活動を継続的、かつ効果的に推進するための「事業継続マネジメントシステム」を構築し、その推進機関である「NOKグループBCM委員会」を設置して、事業継続計画(BCP)の立案、及び事業継続マネジメント(BCM)活動を推進しております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、配当額の決定について、基本的には中長期的な業績に対応して一定水準の安定した配当を続けていくことが大切だと考えております。他方、将来の事業展開や財務体質強化のために、相当額の内部留保の確保についても総合的に勘案したうえで決定しております。また、現3か年 中期経営計画においては、株主資本配当率(DOE)を2.5%以上とする方針であります。
当事業年度の配当につきましては、上記利益配当金の基本方針と当期純利益の水準を併せて総合的に勘案した結果、年間配当額は1株当たり87円50銭(中間配当金37円50銭、期末配当金50円)としました。当事業年度のDOEは3.5%となります。
当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨を定款に定めており、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。これらの剰余金配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年11月8日 |
6,489 |
37.5 |
取締役会決議 |
||
2024年6月26日 |
8,381 |
50.0 |
定時株主総会決議 |