2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 当社グループの収益構造について

当社グループは、事業会社及び金融機関等の顧客から得る保証料を売上高として計上する一方、リスク移転先である金融機関等に支払う費用を原価として計上しており、これらの差額が当社グループの利益となっております。

① 原価の上昇について

当社グループがリスク移転先に支払う費用は、複数年にわたる保証履行実績により決定されているため、一時的に多額の保証履行が発生した場合であっても、短期的な原価の上昇要因とはなりません。一方で、リスク移転コストは1年契約の間は原則変わらないため、保証料率の低下時には利益率が短期的に悪化し、当社グループの業績に影響を及ぼすことも考えられます。また、継続的に保証履行が多発するような景気悪化時には、顧客の保証に対するニーズも高まることから、経済情勢を踏まえ、顧客からの保証料に価格転嫁しますが、価格転嫁が十分に進まない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

② リスク移転について

当社は、信用リスクを受託した債権の保証履行リスクをヘッジするために金融機関等にリスク移転を行っております。そのため、当社がリスク移転を依頼している債権について想定を超える著しい信用力低下や保証履行が生じた場合又はリスク移転先である金融機関等が債務不履行等のリスク移転を引受けることが困難となるような状況となった場合には、想定通りのリスク移転を行えない可能性があります。このような場合には、売上高の減少や原価率の上昇が生じる可能性があり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 自己による信用リスクの保有について

当社は、クレジット・リンク・ファンド1号合同会社(当社が57%を出資している連結子会社であるクレジット・リンク・ファンド1号匿名組合の営業者)、クレジット・インベストメント1号合同会社(当社が82%を出資している連結子会社であるクレジット・インベストメント1号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ1号合同会社(当社が51%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ1号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ2号合同会社(当社が55%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ2号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ4号合同会社(当社が50%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ4号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ5号合同会社(当社が60%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ5号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ6号合同会社(当社が51%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ6号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ7号合同会社(当社が51%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ7号匿名組合の営業者)及びクレジット・ギャランティ8号合同会社(当社が51%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ8号匿名組合の営業者)をリスク移転先に加える等により、一部の信用リスクを自己で保有しております。

2024年3月末現在の信用リスク受託による保証債務のうち、売掛債権保証サービスに係る保証債務は751,842,150千円であります。これに係る保証債務のうち、当社グループでリスクを保有している売掛債権保証サービスに係る保証債務は116,529,296千円であります。

これらへ流動化する信用リスク及び自家保有を行う信用リスクについては、他のリスク移転先と同様、一定の基準を設けたうえで極度に損害率が悪化しないよう対策を実施しております。しかしながら、想定を超えて保証履行が多発した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 競合等について

当社グループが行っている事業法人向け売掛債権保証サービスと類似した債権保証に係るサービスとして、大手金融機関系ファクタリング会社が提供している保証ファクタリング、損害保険会社が提供している取引信用保険等のサービスがあります。

当社グループのサービスは、金融機関等への流動化、分散機能を活用することにより、引受ける保証対象企業の範囲、保証限度額等に幅広く対応できる点から優位性を有しております。また、金融債権や請負債権など単純な売上債権以外も保証対象とする対象債権の範囲の広さからも他の金融機関が提供しているサービスと比較して、優位性を有しているものと認識しております。

ただし、大手金融機関系ファクタリング会社、損害保険会社は、知名度、信用力等の面で、当社グループと比較して優位な立場にあります。従ってこれらの金融機関と競合する場合、営業推進の上で不利な立場におかれる可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼすことも考えられます。

また、今後において他金融機関が同サービスの開発により新規参入することで競争が激化する可能性も考えられます。そのため、当社グループがより一層顧客ニーズにあった商品開発ができず、相対的に当社グループの競争力が低下し、新規契約率の低下や既存顧客が流出した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (3) 気候変動に関するリスクについて

気候変動への対応につきまして、このたび「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」が提言するフレームワークを活用した情報開示をいたしました。今後もTCFD提言に沿った気候変動関連情報の開示を進めることで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

当社は、経営に関する重要事項を審議及び検討し、協議した結果を踏まえ、社長が決定することを目的として、経営会議を原則として週1回開催しております。構成員は、社長、取締役とし、取締役会付議事項及び業務執行に関する事項について意思決定を行っております。

気候変動への対応についても、経営会議において審議・議論し、特定されたリスクや機会への対応策検討、CO₂排出量の削減等の取り組みを推進していきます。取締役会は、経営会議で審議された重要事項について報告を受け、気候変動への対応方針および実行計画等についても審議・監督を行っていきます。

当社グループでは、TCFD 提言にて例示されている気候変動がもたらすリスク・機会を元に、シナリオ分析を実施しました。

シナリオ分析においては、2℃以下シナリオを含む複数の温度帯のシナリオを選択、設定していく必要があるため、移行面で影響が顕在化する1.5 ℃シナリオと物理面での影響が顕在化する4℃シナリオの2つのシナリオを選択しました。


当社のリスク管理体制は、経営管理部を主管部署とし、取締役及び経営幹部間において各種リスクを共有し、各部署に対して社長よりリスク管理について周知徹底を図っております。

気候変動に関するリスクについては、気候変動によって受ける影響を把握し評価するため、シナリオの分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しました。特定したリスク・機会は経営管理部を中心とする推進体制のもと経営会議において審議・議論し、リスク管理の状況や重大なリスクの判断に関しては、取締役会への報告・提言を行ってまいります。

当社におけるGHG排出量については、当社ウェブサイトを参照ください。

また、当社では、Scope2のGHG排出量について、2030年度に実質ゼロの目標を設定しました。GHG排出量の削減にあたっては、社内の省エネ、節電を心掛けるとともに、化石燃料を用いない再生可能エネルギー等を活用した脱炭素社会の実現を目指していきます。

 

 (4) 災害等が発生する可能性について

東京本社において大規模な震災や火山の噴火あるいはテロ攻撃等の災害が発生し、本社機能が実質的に停止に陥った場合、当社グループの財政状態、経営成績に重要な影響を与える可能性があります。対策として、災害対応能力向上のために体制整備を図るとともに初動対応訓練を実施することで災害リスクの軽減を図るように努めております。

 

(5) 情報管理について

当社グループは、保証サービス事業を通じて顧客の機密情報並びに企業情報、信用情報を入手する場合があります。当社グループはこれら情報の機密を保持し、セキュリティを確保するために最新のセキュリティソフトの更新や、担当別、役職別の管理システムへのアクセス制限など必要な措置を講じております。しかし、かかる措置にもかかわらずこれら情報が漏洩した場合には、当社グループの社会的信用に影響を与え、業績悪化を招く可能性があります。

 

 (6) 紛争が発生する可能性について

当社グループの展開する保証サービスは、保証対象先の倒産等に伴う債務の支払いリスクを複数の金融機関等に分散し、移転しております。その際、リスク移転先とリスク移転契約を締結しており、取引上のトラブルの未然防止に努めておりますが、契約書等の不備などにより、取引関係の内容、条件等に疑義が生じたり、これをもとに紛争が生じる可能性があります。

 

(7) 法的規制について

当社グループの業務内容である売上債権の保証は、「保険業法」上の「保険保証業務」に該当しないため、同法の規制を受けていないものと判断しております。また、「債権管理回収業に関する特別措置法」上の「債権管理回収業」及び「金融商品取引法」上の「金融商品取引業」にも該当せず、同法の規制対象となっておりません。このように、当社グループの業務は、いわゆる業法上の法的規制の対象となっていないため、当社グループはこれらの法令に基づく関係監督庁への届出、許認可の取得等を行っておりません。

ただし、今後、当社業務について新たな法的規制の制定、外部環境の変化等に伴う現行法の解釈の変化、又は他社が提供している業務に係る規制緩和等が生じた場合には、当社グループのビジネスモデルの変更、競合の激化等により、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、期末配当のほか、毎年9月30日を基準日として、中間配当ができる旨を定款で定めております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。

配当回数につきましては、期末日を基準日とした年一回の配当を行うことを基本方針としております。

当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要な課題の一つと位置付け、業績推移・財務状況・今後の事業展開等を総合的に勘案しながら、配当性向50%以上を目標として配当を実施し、企業価値の向上に応じて配当総額を持続的に高めてまいります。また、内部留保金につきましては、新規事業の開始や、今後の海外展開等、効果的に投資してまいります。

当事業年度の剰余金の配当につきましては、業績の動向及び配当性向等を総合的に勘案した結果、引き続き内部留保を拡充いたしますが、同時に企業業績向上に伴う利益配分を目的として、前事業年度の1株当たり34.0円から増配し、1株当たり35.0円の期末配当を2024年6月28日開催の定時株主総会にお諮りする予定であります。

当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額
(千円)

1株当たり配当額
(円)

2024年6月28日

定時株主総会決議(予定)

1,669,088

35.0