リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)人材の確保について
当社が今後事業をさらに拡大し、成長を続けていくためには優秀な人材の確保が重要課題となっております。介護事業においては、介護士、看護師、理学療法士など専門職の確保が必須ですが、医療・介護業界での慢性的な人材不足と今後益々の介護業界へのニーズの高まりで、求人競争激化の環境は予断を許さない状況であります。このような状況の下、当社では、人材採用に関する専門部署を設置し、求人サイトやメディアを利用しておりますが、これを漫然と利用し続けることを避け、常に効果を検証しながら積極的かつ戦略的な採用活動を実施するほか、福利厚生制度の整備や柔軟な働き方を認めるなど、従業員の労働環境に配慮し、働きやすい環境づくりに取り組んでおります。
しかしながら、こうした人材の確保が計画どおりに進まなかった場合、又は育成が計画どおりに進まず、あるいは重要な人材が社外に流出した場合には、既存施設ではサービス提供の規模縮小、新規施設ではオープン時期の順延等により、競争力の低下や事業拡大の制約要因が生じ、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)コンプライアンスに関するリスク
当社は、法令遵守及び企業倫理に基づき誠実に行動することを経営上の最重要課題としております。事業に直接関係する法令のみならず、近年、SNSによるトラブルが問題になるなど、企業が求められる企業倫理は多岐にわたります。そのため、社会的責任のある企業として遵守すべき法令全般につき、当社の全役職員が法令等・倫理に基づいた行動をとるよう、コンプライアンスやリスク管理を統括する専門部署を設置するなど強化に取り組んでおります。また、内部通報制度を整備運用して内部の不正を抑止するよう努めております。しかしながら、コンプライアンス上の問題に直面した場合には、法令による処罰・訴訟の提起・社会的信頼の失墜等により、当社の業績や財務状況に影響を与える可能性があります。
(3)新規施設の開設について
当社は事業の拡大のため、新規施設の開設を推進しております。新規開設機会を逃さないよう常に情報収集に努め、必要に応じて、迅速な経営判断が下せるよう、代表取締役社長を含めた経営陣は緊密な連携をとることとしております。また、新規施設の開設にあたっては、各種調査を実施し、十分な検討時間を設けて様々な角度から事業計画及び採算性等を十分に検討した上で実施しております。
しかしながら、希望する立地に物件を確保できない場合やプロジェクトに遅延が発生した場合、また、事業計画と実績に大幅な乖離が生じた場合は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)高齢者介護における安全管理及び健康管理について
当社が介護サービスを提供しているのは、主に要介護認定を受けた介護度の高い高齢者であり、介護事故、転倒事故、食中毒、食物誤嚥事故、感染症の集団発生、また高齢者の特性に起因する事故等が発生する可能性があり、利用者の命に係わる重大な事故に発展する可能性もあります。これらにより、当社側の過失責任や管理責任が問われた場合には、損害賠償の支払い等により、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに関する顕在化の可能性は一定程度あると認識しておりますが、各種スキルアップ研修の提供や介護マニュアル、業務手順書等の整備等により社員教育を徹底しているほか、日常のサービス提供におけるヒヤリハット事例を共有することで、未然の事故防止に努めており、当該リスクの顕在化の抑制に最大限努めております。
(5)診療報酬改定及び介護報酬改定について
当社は医療保険制度及び介護保険制度のもと、訪問看護及び訪問介護を行っております。医療保険制度については2年ごと、介護保険制度については3年ごとに、制度の見直し及び診療報酬、介護報酬の改定が行われております。そのため、当社事業を推進するにあたり、定期的な制度の見直しや診療報酬、介護報酬の改定により当社にとって不利な変更がなされた場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、これまでの改定状況から勘案しても、当該改定に伴い当社の事業がただちに大きな影響を受ける可能性は低いと考えております。しかしながら、医療保険制度及び介護保険制度の目的や方針等に大きな変更があった場合や同制度が廃止された場合は、当社事業に及ぼす影響は大きく、事前に政府での検討状況等について情報収集を行い、必要な対応策を実行することとしております。
(6)法的規制について
当社は介護保険法に基づく介護サービスの提供にあたり、事業所ごとに指定業者として指定を受けており、同指定を取得するにあたり、厚生労働省令「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(1999年3月31日厚生省令第37号)及び各自治体条例介護保険法で定める基準を満たしております。
該当する根拠法で許認可取消事由がそれぞれ定められておりますが、主な内容は以下のとおりであります。
・不正請求 …実体のないサービス提供に対する請求、実体のない加算請求
・人員基準違反…人員不足での運営、無資格者によるサービス提供、実在しないスタッフによる記録作成、勤務時間の虚偽
・運営基準違反…記録の未整備、計画未作成、重要事項や計画の説明未実施
・虚偽報告 …自治体への届出や報告、実地指導対応における事実とは違う書類提出や答弁
当社は、これらの基準を遵守できなかった場合や不正請求が認められた場合には、指定の取消し等の処分を受けるおそれがあります。一事業所でも指定取消を受けた場合、法人が指定の欠格事由に該当し、指定取消から5年間は新たに指定を受けることができず、また指定の更新も受けることができなくなります。その場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社は、当社が不正な診療報酬請求を行ったとする報道を受け、当社より独立した社外の専門家を委員とする特別調査委員会を設置し、客観性のある業務実態の調査を行い、2025年2月7日、当該特別調査委員会より調査報告書を受領いたしました。当該調査の結果、当社が「PDハウス」等で受け入れている入居者は、重症度の高いパーキンソン病患者であったことから、入居者及びご家族の同意を得た上で、1日3回・複数名訪問を標準としていたところ、現場の看護師等の多くに1日3回・複数名訪問が必須との認識を与えてしまい、訪問回数及び同行者の要否という観点での個別的検討・見直しが徹底されていなかったことが判明しました。また、そのような中で、①数十秒から数分という短時間の訪問であるにもかかわらず30分を標準とする訪問看護を実施したとして診療報酬の請求を行っていた事案、及び②訪問看護サービス提供の際に同行者が不在であったにもかかわらず同行者がいたものとして診療報酬請求を行っていた事案が存在していたことも判明しました。これを受けて、当社は、2025年2月12日開催の取締役会において、当該調査報告書において指摘された原因分析及び再発防止策の提言を踏まえ、実効性のある再発防止策の策定と内部統制強化に向けた取組みを決議すると共に、経営責任を明確にすると共に今後の再発防止を徹底する観点から、関係者の処分を決議いたしました。当社は、今回の事態に至ったことを深く反省し、全役職員が一丸となり、速やかに再発防止策を実行し、信頼の回復に努めてまいりますが、今後の管轄当局からの指導その他の進捗次第では、社会的信用の低下、法的責任や費用・損失の負担、行政機関による処分等により、当社の事業、業績又は財政状況が重大な影響を受ける可能性があります。
各サービスと根拠法等、主な指定・登録取消事由
① 訪問系サービス
サービス名 |
根拠法等 |
主な許認可取消事由 |
訪問看護 介護予防訪問看護 |
・介護保険法(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。 都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となる。 ・健康保険法(厚生労働省) 介護保険法に基づく指定を受けた際には、健康保険法の指定があったとみなされるため、有効期間は介護保険法に基づく指定の有効期間に準じる。 地方厚生局が事業の指定権者となる。 |
・訪問看護 介護保険法第77条 (指定の取消し等) ・介護予防訪問看護 介護保険法第115条の9 (指定の取消し等) |
訪問介護 居宅介護支援 |
・介護保険法(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。 都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となる。なお、居宅介護支援については、2018年4月以降の指定権者は市区町村となっている。 |
・訪問介護 介護保険法第77条 (指定の取消し等) ・居宅介護支援 介護保険法第84条 (指定の取消し等) |
介護予防・日常生活支援総合事業 |
・介護保険法(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。 市町村が事業の指定権者になる。 |
介護保険法第115条の45の9 (指定権者の指定の取消し等) |
居宅介護 重度訪問介護 |
・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。 都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となる。 |
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第50条 (指定の取消し等) |
② 通所系サービス
サービス名 |
根拠法等 |
主な許認可取消事由 |
通所介護 |
・介護保険法(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。 都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となる。 |
・通所介護 介護保険法第77条 (指定の取消し等) |
地域密着型通所介護 認知症対応型通所介護 |
・介護保険法(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。 市町村が事業の指定権者となる。 |
・地域密着型通所介護 ・認知症対応型通所介護 介護保険法第78条の10 (指定の取消し等) |
③ 入所系サービス
サービス名 |
根拠法等 |
主な許認可取消事由 |
認知症対応型共同生活介護 (グループホーム) |
・介護保険法(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。 市町村が事業の指定権者となる。 |
・認知症対応型共同生活介護 介護保険法第78条の10 (指定の取消し等) |
住宅型有料老人ホーム |
・老人福祉法(厚生労働省) 届出制であり、届出後の有効期間の設定はない。都道府県、政令指定都市及び中核市が届出先となる。 |
老人福祉法第29条第14項 (届出等)※事業の制限又は停止に関する定めあり。 |
サービス付き高齢者向け住宅 |
・高齢者住まい法(国土交通省) 登録制であり登録の有効期間は5年で、以降5年ごとに更 新が必要。 都道府県、政令指定都市及び中核市が登録先となる。 |
高齢者住まい法第26条 (登録の取消し) |
(7)感染症について
当社事業所では、換気・手洗い・手指消毒の励行等をはじめ、フェイスシールド、N95マスク、ガウンテクニックの正しい着用方法の研修を行う等、日常的に感染対策に取り組んでおります。しかしながら、新型インフルエンザやコロナウイルス等の感染症が想定を大きく上回る規模で発生及び流行し、当該地域の事業所の稼働が長期にわたり困難になった場合には、事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)虐待等の防止への取組とリスクについて
当社は、老人福祉法及び介護保険法に規定する「養介護施設」又は「養介護事業」に該当し、これらの養介護施設又は養介護事業で働く当社の職員は、高齢者虐待防止法に定める「養介護施設従事者等」に該当します。高齢者虐待防止法では、養介護施設従事者等による身体的虐待、介護・世話の放棄・放任等の高齢者虐待の防止に関する取り組みを求められており、当社は役職員を対象とした研修やマニュアルの整備等により、いかなる虐待も防止するように努めております。しかしながら、虐待や不適切な身体拘束が発生した場合には、法令による処罰・訴訟の提起・社会的信頼の失墜等により、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(9)大規模な自然災害について
当社が保有する施設が所在する地域において大規模な地震、風水害等の自然災害、事故、火災等によって人的・物的被害を受けた場合、当該地域の事業所の稼働が長期にわたり困難になった場合には、事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当該リスクの発生時期等は予測することができませんが、常に当該リスクが顕在化する可能性はあると認識しております。そのため、当社では各種保険制度への加入はもちろんのこと、避難訓練、災害時の連絡手段の確立、飲食物の備蓄等を行うなど、自然災害等の発生による被害を最小限に抑えるための対策を実施しております。
(10)内部管理体制のリスク
当社では、企業価値の持続的な増大を図るにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要であると認識しております。その認識のもと、内部管理体制の一層の充実を図るべく、内部通報制度の運用や内部監査の実施、情報セキュリティ体制の構築等により、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでおりますが、急速な事業拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、上記(6)に記載のとおり、当社において本来請求すべきではない診療報酬を請求していた事案等の存在が判明したことを受けて、2025年2月12日、過年度の決算を訂正し、2022年3月期から2024年3月期の有価証券報告書及び2023年3月期の第1四半期から2024年3月期の第3四半期までの四半期報告書について、訂正報告書を提出すると共に、第18期及び第19期の内部統制報告書について、各期末時点において内部統制に開示すべき重要な不備が存在していたことを理由として、訂正報告書を提出しました。あわせて、当社は、2025年2月12日開催の取締役会において、実効性のある再発防止策の策定と内部統制強化に向けた取組みを決議しており、今後、当該再発防止策を着実に実行すると共に、適正な内部統制の整備及び運用の更なる強化に取り組み、内部管理体制の強化とコーポレート・ガバナンスの一層の充実を図ることが重要であると考え、再発防止に努めてまいります。
(11)特定人物への依存について
当社の代表取締役社長である苗代亮達は当社の創業者であり、設立以来、最高経営責任者として経営方針や経営戦略等、当社の事業活動全般において重要な役割を果たしております。特定の人物に依存しない体制の構築を目指しておりますが、現在においても同氏の影響力は大きなものとなっております。そのため、同氏が退任、その他の理由により当社の経営から退くような事態が発生した場合は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12)競合他社の出現について
当社が、全国展開を図っている主力の「PDハウス」は、一般的な介護施設では提供できないパーキンソン病を患った方への専門的なリハビリサービスの提供を他社との差別化要因の一つとしております。
当該事業の遂行に必要な特許等は存在しないため、当社のビジネスモデルを模倣し、同様のサービス提供する競合他社が現れる可能性があります。現在、当社では、大学、研究機関との共同研究を実施し、新たなサービスの開発に努めておりますが、競合他社の新規参入等による競合環境が激化した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13)情報管理について
当社は、事業を行う上で入手した顧客に関する様々な個人情報を保有しております。
情報管理については、従業員との情報管理に関する誓約書の締結、社内規程の整備及び社員教育の徹底等、管理体制の強化に努めることで内部からの情報流出を抑止しており、インターネットセキュリティの強化及び事業所の防犯対策等の実施により外部者の不正な情報取得を防ぐなど、可能な限りの対策を取ることとしており、情報漏えいリスクの顕在化については、限りなく低いと考えております。しかしながら、これらの情報が外部に漏えいした場合、当社に対する信用失墜や損害賠償請求等によって当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14)信用・評判について
介護事業においては利用者、そのご家族及び関係者の方々からの信頼の下、サービスを提供しております。施設での不適切な運営や不正請求、職員の不祥事等により、当社及び当社が提供するサービスについて信用を失った場合、または評価が低下した場合は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対して当社は、経営理念、ミッション及び行動指針を定め、役職員に周知徹底しているほか、利用者の方が気持ちよく施設を利用できるよう様々な研修プログラムを役職員に対し提供し、高品質なサービス提供を通じて、利用者様等からの信頼の獲得に日々励んでおります。
(15)減損会計について
当社は、キャッシュ・フローを生み出す最小単位として、主に施設を基本単位としてグルーピングしております。介護施設の新規開設後の実績が計画どおりであるかを経営会議においてモニタリングし、減損に関するリスクの低減に努めております。しかしながら、外部環境の著しい変化等により、施設収益が悪化し、施設における営業活動から生ずる損益が継続してマイナスとなった場合には、固定資産について減損損失を計上することとなり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(16)訴訟等の可能性について
当社は、サービスの提供にあたって法令遵守の徹底及び顧客や取引先とのトラブル回避に努めており、現時点において業績及び財政状態に影響を及ぼす訴訟が提起されている事実はありませんが、今後予期せぬ事象の発生により、訴訟その他の請求が発生した場合、これらの訴訟等の内容及び結果によっては、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクについては、現時点で顕在化のリスク及び影響を予測することはできませんが、研修等を通じて役職員のコンプライアンス意識を高めるほか、顧客及び取引先等と日頃から良好な関係の構築に努めることが、当該リスク顕在化の抑制につながると考えております。
(17)地域との関係について
介護・医療サービスの提供という事業性から、事業の収益性に課題が生じた場合においても、撤退時の利用者の行き先確保、賃貸借契約上の制約、医療機関や行政機関との関係性の維持等から即時撤退を行うことが困難な場合があり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(18)長期賃貸借契約について
当社が運営する施設の中には、長期賃貸借契約に基づいているものがあり、一定期間は事業撤退の制約が課せられます。これに反した場合は中途解約による違約金等の支払いが生じる可能性があります。
また、契約期間満了後において契約更新が難しい場合がありますが、その場合は計画的に新たな移転先を決めることとしており、当該リスクが顕在化する可能性は限りなく低いと考えております。
(19)有利子負債に関するリスク
当社では、新規開設にかかる設備資金の一部を金融機関からの借入で調達しており、また、ファイナンス・リース取引におけるリース債務の計上により、当事業年度末の有利子負債残高は22,489百万円、有利子負債自己資本比率は261.8%となっております。
今後は、現行の金利水準が変動した場合、当社の業績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
(20)宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入りについて
当社は、2024年7月に東京証券取引所プライム市場に市場区分を変更しているところ、2025年2月12日付の「過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度の決算短信等の訂正に関するお知らせ」のとおり、過年度の決算を訂正したことにより、東京証券取引所プライム市場への市場区分の変更審査における形式基準(利益の額)及び実質基準(コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性の観点等)を充足しない事案であったことが認められました。結果として、市場区分の変更申請に係る宣誓書において宣誓した事項に違反し、市場区分の変更に係る基準に適合していなかったとして、2025年4月30日付で株式会社東京証券取引所より宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入りの通知を受けました。
2026年4月30日までの猶予期間内に東京証券取引所プライム市場の新規上場基準に準じた基準に適合するかどうかの審査申請を行った場合、当該基準に適合したときは、当社株式の上場が継続されることとなりますが、当該基準に適合しないときは、上場廃止となります。なお、猶予期間内に同取引所スタンダード市場又は同取引所グロース市場への市場区分の変更申請を行った場合、当該市場区分の変更の承認を受けたときは、上記にかかわらず、変更後の市場区分において、当社株式の上場が継続されることとなります。
(21)継続企業の前提に関する重要事象等
当社は、2025年2月7日付「特別調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ」のとおり、本調査の結果、短時間訪問事案及び同行者不在訪問事案が存在していたことが判明しました。本件の対象となる部分について過年度の決算を訂正し、再発防止策の実行による運営体制の見直しを行った結果、収益性は一時的に大幅に低下したことから、当事業年度において当期純損失925百万円を計上いたしました。
また、当事業年度末の借入金のうち、2023年3月14日締結のコミットメント期限付タームローン契約(当事業年度末現在の借入金残高392百万円)及び2023年9月15日締結のコミットメント期限付タームローン契約(当事業年度末現在の借入金残高649百万円)に付されている財務制限条項に抵触しております。
これらの事象又は状況は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に該当しております。
しかしながら、当社は事業モデルを根底から見直し、安定した利益構造を確立するため、以下の具体的な対応策を実施しております。
①人員配置の適正化に伴うコスト削減
再発防止策の重点施策として、全施設で訪問看護計画の見直しを実施いたします。特に、夜間帯に入眠が常態化しているケースについては計画を変更し、各入居者に対して必要なサービスが適切に提供できるよう再策定いたします。全施設で一斉に訪問看護計画の見直しを実施した結果、各施設において余剰人員が発生し、一時的に売上原価(労務費率)が上昇いたしました。そのため、ドミナント施設への異動や人員調整を行い、各施設の適正な人員配置を図ることで収益面の改善を目指します。
②新規施設の開設による収益への貢献
2026年3月期においては、未開設エリア(滋賀県、岡山県、静岡県、栃木県、岐阜県)を含む全国13か所に新たな「PDハウス」を開設いたします。新規開設時にかかる初期費用の負担が増加するため、開設初年度における収益性は一時的に悪化することとなりますが、早期に投資を回収し、利益を生み出す基盤を築くことで、翌期以降の収益性に大きく貢献します。
また、財務制限条項に抵触している当該契約につきましては、取引先金融機関より期限の利益喪失の権利行使を行わないことについて書面による承諾を得ております。取引先金融機関とは緊密に情報を共有し、協議可能な関係の維持に努めており、継続的な支援についても表明いただいております。
なお、資金面につきましては、2025年3月21日付「債権の流動化に関するお知らせ」のとおり、キャッシュ・フローの改善及び財務安全性の向上を目的として債権流動化の契約を締結し、当面の事業資金を確保しております。
以上により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を重要な経営上の施策の一つとして認識しており、利益配分につきましては、成長投資のための内部留保を勘案しつつ、安定的かつ継続的な配当を実施していくことを基本方針としております。
剰余金の配当を行う場合は、期末配当(3月31日基準日)及び中間配当(9月30日基準日)の年2回を基本的な方針としており、このほか基準日を定めて剰余金を配当することができる旨、会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議により行うことができる旨を定款に定めております。
内部留保資金につきましては、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図り、事業拡大のための投資に活用する方針であります。
当事業年度の剰余金の配当につきましては、当期純損失925百万円を計上していることを勘案し、無配といたしました。