事業内容
セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
-
セグメント別売上構成
-
セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
-
セグメント別利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | セグメント別 売上高 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
セグメント別 利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
---|---|---|---|---|---|
(単一セグメント) | 4,216 | 100.0 | -36 | 100.0 | -0.8 |
事業内容
3【事業の内容】
(1) 事業概要
当社は、国内在住の女性に対して、スタイリストが一人一人の顧客の好みに合わせた洋服を選定(パーソナルスタイリング)し個宅に向けて配送しレンタルするサービス「airCloset」を主として提供しています。
「airCloset」は非対面で顧客にパーソナルスタイリングを提供する事業として2015年2月にリリース致しました。当サービスは洋服を循環的に活用するシェアリングエコノミーの要素や継続課金制のサブスクリプション型のビジネスモデルを採用していることが特徴です。「airCloset」はメーカー、ブランド等のアパレル事業者と顧客とを引き合わせるプラットフォームとしての機能を有しており、かつ、レンタル中の洋服で気に入ったものについては購入することも可能な機能を備えています。洋服を着ることに関わる移動や選択・メンテナンスや購入(所有)までさまざまな機能を統合したFaaS形式(※1)サービスです。「airCloset」リリース以降も継続的にPDCAサイクル(※2)を回すことで、機能改善及び新規機能の追加を行ってまいりました。代表的な機能改善及び新規機能追加の例としては、顧客が好みのスタイリストを指名できる「スタイリスト指名オプション」機能の追加や、レギュラープランの2倍の量の洋服をレンタルできる「ダブルレンタルオプション」、洋服と合わせたアクセサリーをレンタルできる「アクセサリーオプション」の追加などが挙げられます。
当社の事業構造は洋服を仕入れ、パーソナルスタイリングによって付加価値を高めて提供することでレンタル利用料および販売売上(買取料)にて収益化を目指すビジネスと言い換えることもできます。
また、当社では生活家電や寝具など比較的高額なライフスタイル商材を試して購入する「airCloset Mall」などの事業を提供してきました。今後も、当社の事業を推進することにより、アパレル業界、日本の経済社会に対する貢献をしたいと考えております。
なお、当社はパーソナルスタイリング事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
※1 FaaSとは、Fashion as a Serviceの略称であり、洋服の所有・利用に関わる様々な機能(選択・比較・コーディネート・購入・試着など)をサービス提供側が用意し、利用者がそのニーズに応じて利用していくサービス提供基盤のことを指します。
※2 PDCAサイクルとはPlan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメントの品質を高めようとする活動のことを指します。
■ airClosetの事業構造
※ 無料会員とはメールアドレスによる登録で、取り扱いアイテムの閲覧やエコセールへの参加などが可能な会員属性のことを指します。
(2) サービス概要
① ファッションレンタルサービス「airCloset」について
「airCloset」は国内居住の女性をターゲットに、一人一人の顧客の好みに合わせてスタイリストが選定した洋服をレンタルするサービスとして2015年2月より提供開始しております。洋服のスタイリングを含む顧客とスタイリストのコミュニケーションは非対面のオンラインで行われることが特徴です。レギュラープランでは、月額定額制で、1度に3着の洋服をコーディネートし、顧客の指定する住所に郵送します。顧客は受け取った洋服を職場や女子会・ママ会といった日常シーンで着用し、楽しむことが可能です。着用を終えた洋服は専用の返送方法にて当社委託先の倉庫に返却し、返却を確認できた時点でまた次の洋服を当該顧客に配送するというサイクルを繰り返します。返却された洋服のクリーニング・メンテナンスは利用料金の範囲内で当社委託先の協力会社にて行うため、顧客に不要な手間をかけさせない点にも工夫があります。また、レンタルされた洋服は顧客の手元での着用時または返却後に在庫として存在する場合には、購入することもできるため、レンタル衣類の試着サービスとしてだけでなく、洋服の新たな購入方法としても利用されています。
自分の好みやサイズを登録するだけでプロのスタイリストが選定した洋服が届き、その洋服を日常生活で楽しみ、利用後はそのまま返却するだけでまた次の洋服が届く。手軽にたくさんの「洋服との新しい出会い」を得られることをサービスの中心的な価値としています。
「airCloset」の顧客の年齢層は20代から50代女性と幅広く、特に30代後半から40代が中心となっています(2024年6月時点)。中でも働く女性が92.8%(2024年6月時点)、子供を持つ女性が55.8%(2022年4月時点)を占める等、仕事や育児に時間が割かれており、自身の洋服選びの時間に悩む女性が賢くファッションを楽しむために利用しているケースが多く見られます。顧客の年収については400~600万円の層が約37%と多くみられます(2021年10月時点)。また、2022年4月実施の顧客アンケートでは、時間的制約や手段的制約によって買い物に行きたくてもいけない(71.6%)、洋服のコーディネートや着こなしに迷ったことがある(92.0%)などの顧客層の悩みが抽出されており、これらの課題を解決するためのサービスとしても活用されています。
当サービスの主な収益構造は、「airCloset」サービスの提供による顧客から得られる月額の会費収入です。会費収入は主に10,800円/月のレギュラープラン、7,800円/月のライトプランと13,800円/月のライトプラスプランそれぞれのプランに利用登録をした会員を通じて得られるものであり、サブスクリプション型で提供しています。これらに加えてレギュラープランの2倍の洋服レンタル機会を得られるダブルレンタルオプション(9,680円/月)や洋服だけでなくアクセサリーをレンタル対象に追加できるアクセサリーオプション(1,100円/回)、好みのスタイリストを直接指名できるスタイリスト指名オプション(550円/回)、コーディネートに用いる洋服のブランドを指定できるブランドセレクトオプションなどのアップセル・クロスセル(※)によるさらなる収益機会の獲得を見込むことが出来ます。なお、レギュラープランは返却する都度、何度でも次の洋服がレンタルできるプラン、ライトプランは月に1度、3着1セットの洋服をレンタルできるプラン、ライトプラスプランはXS~3Lの洋服が月に1度、5着1セットでレンタルできるプランとして提供しています。また、個人ではなく法人単位のレンタルサービスも提供しております。
また、月額の会費収入とは別に、レンタル中の商品を現状有姿で買い取る際に得られる販売収入、レンタル提供が終了したアイテムを販売する「エコセール」、各顧客への洋服の配送の際に行う企業広告のサンプリングや梱包資材へのデザイン広告等を請け負う広告収入などがあります。
※ アップセルとは、当社が現在提供している商品やサービスに加えて、質及び金額ともにより上位の商品やサービスを提供し、利用者が現在利用する商品やサービスに代わり上位の商品やサービスを購入することをいいます。一方で、クロスセルとは、利用者が現在利用している商品やサービスに追加して、別の商品やサービスを購入することをいいます。
■ 「airCloset」の料金体系
「airCloset」がパーソナルスタイリングにより提供する顧客体験(UX:User Experience)には、先に試して気に入った洋服だけを購入する価値やデザインの新旧やブランドネームによることなく自身にとって「似合う」洋服を購入する価値、また洋服を購入するだけでなくレンタルサービスそのものを楽しむ価値の3つの新しい価値が含まれます。具体的には、月額会員の半数は「airCloset」を通じて洋服を購入した経験があり、その販売率は期間中の配送着数に対して約6%となっています(2024年6月期実績)。また、ブランドやデザインの型式は顧客評価や販売率に関わらず、顧客自身が現状有姿の商品そのものの品質を好んだ際に購入されています。別のアンケートでは、普段購入していないブランドの洋服を「airCloset」を通じて体験した、という顧客が約90%いることも分かっています(2021年2月時点調査)。さらに、利用期間が6か月を超えるロイヤル会員が全会員数の60%を占めており(2024年6月末時点)、洋服の購入後も継続して当社サービスを利用していることも分かっています。サービスを利用するたびに体験価値が重ねられるため、月額会員の退会率は登録当初から約3か月を境に緩やかになっていきます。
■ 会員獲得について
「airCloset」には月額会員のほか、メールアドレスを登録し当社からサービス関連情報を受け取ることのできる無料会員という会員属性が存在します。無料会員はレンタルサービスの利用はできませんが、当社の実施するセール等の機会に洋服を購入することが可能です。無料会員は月額会員への転換の見込みのある顧客として事業成長の先行指標となっております。継続的なマーケティング活動を通じて認知度の向上に取り組んでおり、特に、春・秋にサービスへのニーズが高まることから、重点的にマーケティング活動を実施しております。この結果、2024年6月末時点では月額会員3万7千人と月額会員数は順調に成長し、無料会員130万人が登録されています。
■ 無料会員数・月額会員数の推移
当社の事業は、顧客との洋服の好みのやり取りを通じた長期的な利用を促進する観点から、サービス品質の維持向上が強く求められます。言い換えると、サブスクリプション型事業の特徴として、会費収入基盤の安定的拡大を実現するとともに、契約期間中のオプション追加や商品購入などLTV(※1)を高める仕組みを具備していることが当事業の成功要因と考えられます。この点において、顧客の選好や購入に関する価格弾力性をデータから分析し活用するなど、AIを用いたパーソナライズの開発・促進も重要となります。2024年6月期においては、安定して発生するairCloset事業の月額会費および販売による売上が約82%を占めており、当社の事業収入の中心が安定的な顧客基盤によってもたらされていることを示しています。
※1 LTV(Life Time Value)とは、顧客が生涯を通じて企業にもたらす価値のことをいいます。
② メーカー公認月額制レンタルモール「airCloset Mall」について
当社は、2020年4月に、生活家電等のライフスタイル商材を取り扱うメーカーにサブスクリプション型のレンタル型販売ビジネスの基盤を提供するサービスとして「airCloset Mall」をリリース致しました。本サービスは当社と各メーカーがプラットフォーム利用契約を直接締結し、顧客へ契約に基づく商品をレンタルし、試用したうえで購入を促す販売チャネルを提供します。メーカーは商品の納品から最短1週間でサブスクリプションのレンタル型販売ビジネスを始めることができ、顧客は目当ての商品を自宅で試用してから購入を検討することが出来るメリットがあります。また本サービスは「airCloset」で蓄積したフルフィルメント(※)ノウハウを応用した物流プラットフォームとしてメーカーと顧客の間で機能しています。収益構造はメーカーから個別契約にて定めた金額を受領するプラットフォーム利用料と顧客から受領するレンタル売り上げの一部及び購入に結びついた場合の販売売上の一部(レベニューシェア)によって構成されます。
なお、商品によっては直接仕入を行い、顧客へのサービスを提供しております。その場合の収益構造は、顧客から受領するレンタル売り上げ及び購入に結びついた場合の販売売上によって構成されます。
※ フルフィルメントとは、通信販売やECにおいて、受注から配送までの業務(受注、梱包、在庫管理、発送、受け渡し、代金回収まで)の一連のプロセス全体のことを指す用語として用いております。
(3) 当社の特徴
① 専用オペレーションの強み
当社は、クリーニング技術の改善や個品単位でのレンタルアイテムの保管管理に関する独自のフルフィルメントノウハウを蓄積しており、ファッションレンタルに関わる物流機能について様々な強みを有しています。例えばレンタルアイテムの個品管理や、協力会社との連携による専用のクリーニング手法・メンテナンス方法を継続的に開発・導入・検証しております。月額会員一人当たり限界利益(以下、「一人当たり限界利益」)はオペレーション業務の改善の結果、以下のとおり順調に推移しております。また、一人当たり限界利益はサブスクリプションビジネスの健全性、持続的な収益性の動向を把握するための重要指標と捉えております。
■ 一人当たり限界利益の推移
|
売上高 (千円) |
変動費 (千円) |
限界利益 (千円) |
平均会員数 (※1)(人) |
一人当たり限界利益(※2)(円) |
2020年6月期 |
2,173,100 |
1,290,396 |
882,704 |
17,742 |
49,753 |
2021年6月期 |
2,887,057 |
1,402,986 |
1,484,071 |
24,762 |
59,934 |
2022年6月期 |
3,390,339 |
1,506,028 |
1,884,311 |
29,837 |
63,154 |
2023年6月期 |
3,740,043 |
1,723,887 |
2,016,155 |
31,701 |
63,600 |
2024年6月期 |
4,216,157 |
1,821,679 |
2,394,477 |
35,257 |
67,914 |
※1 各期間における日次の会員数を平均することで算出
※2 一人当たり限界利益:売上高より、売上原価及び販売費及び一般管理費に含まれる変動費(オペレーションコスト、スタイリングコストなど)を控除(ただし、レンタル用資産償却費控除前)した金額を限界利益とし、平均会員数で除すことで算出
※3 2020年6月期の変動費には倉庫移転費用58,624千円が含まれております。
※4 限界利益(売上高より、売上原価及び販売費及び一般管理費に含まれる変動費(オペレーションコスト、スタイリングコストなど)を控除(ただし、レンタル用資産償却費控除前)した金額)/ 売上高により算出される限界利益率は2024年6月期において56.8%となります。
■ 1配送当たりオペレーションコスト(※ CPO)の推移
|
CPO (円) |
2020年6月期 |
2,789 |
2021年6月期 |
2,516 |
2022年6月期 |
2,458 |
2023年6月期 |
2,475 |
2024年6月期 |
2,464 |
※ 移転費用を除く物流費用の総額を配送数で除すことで算出
またオペレーションの全体像については以下の通りです。
■ 独自の循環型プラットフォーム
創業時から社内に物流専門チームを設置し、協力会社と共に専用物流倉庫/専用クリーニング工場による独自システムや独自オペレーションを構築しております。返却を受けたレンタル品のメンテナンスから再出荷までのプロセスを循環型の物流基盤(プラットフォーム)と捉えており、当社物流の強みとしています。具体例としては、返却を受け付けた洋服を最短では1日で再貸出し可能にするよう、オペレーション品質を高めています。また、配送手段についてもヤマト運輸株式会社、佐川急便株式会社、日本郵便株式会社等の配送事業者の活用や、三菱商事株式会社が提供するSmariの導入など顧客の利便性を高めるために様々な工夫を行っています。こうした一連の機能を「AC-PORT」と呼称し、ファッションレンタル事業の収益化に貢献するよう、改善運用を繰り返しています(下図「AC-PORTの改善履歴」の『フェーズ4』)。具体的には、洗濯可能なRFIDタグ(※)を活用し、個品管理が可能な独自のWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)、におい除去等の精度を高めたクリーニング手法、洋服の循環を高効率で実現する庫内オペレーション等が特徴です。特に、WMSについては完全自社開発により構築し、外部ベンダーに依存しない開発・改修・運用体制を備えています。さらに、RFIDを活用した独自の物流システムに関する特許を取得しており(特許第7105347号)、その独自性及び新規性を認められています。また、本システムは将来的な事業展開に備え、ファッションレンタルサービスに関するオペレーションを機能単位で外販可能な設計となっており、将来的には他社へのプラットフォーム展開も可能となっております。さらに今後においては、現在は別拠点にて運営している倉庫・クリーニング・メンテナンスの機能を同一拠点に配置した、倉庫一体型の物流体制の構築を目指します。当該物流体制の構築の実現に向けて、2025年6月期中に倉庫の拡張移転を予定しております。
※ RFID(Radio Frequency Identifier)とは、ID情報を埋め込んだRFタグ(電磁波を用いて、内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする情報媒体)から、電磁界や電波を用いた近距離の無線通信によって情報をやりとりするもの、および技術全般を指します。
■ AC-PORTの改善履歴
② パーソナルスタイリング
当社は、今日の消費社会について、トレンドを頼りに設計される大量生産・大量消費の消費文化から、個々人の多種多様なライフスタイルや好みを重視する消費文化への変化が生じており、ファッションの分野では特に、今後パーソナルなサービスが一層求められていくことになると考えています。当社と雇用契約を締結するスタイリスト及び業務委託契約を締結するスタイリストは合計300名を超えています(2024年6月末時点)。また、スタイリングはオンラインで連携するクラウドソーシングの仕組みで提供されており、前述の消費文化の変容に伴い増加するニーズを満たすことが出来るよう効率的なリソースの確保に努めています。なお、スタイリストは過去のスタイリングデータとお客様の評価データを掛け合わせることにより自身の提供するスタイリングの品質を自発的に高められる仕組みを取っています。
③ サブスクリプションモデルによる収益の安定性及びエンゲージメントの高いユーザー基盤
「airCloset」はサブスクリプションモデルでのサービス展開を実施しており、強固な顧客基盤を強みとしています。非連続に消費・購買が行われる小売業と異なり、顧客との継続的な関係を前提とするため、業績の急激な変動が生じません。また、損益に与える変数が多数ありながらも事業構造がシンプルかつ明確になっていることがその特徴です。このため、売上高の成長とコストの安定化を達成することで、事業の将来像を予想しやすいビジネスであると考えております。月額会員のなかには5年を超える長期利用を継続している顧客も存在します。また、顧客がスタイリストにスタイリングの感想を伝えることで、次回のスタイリングが一層その顧客に適したものに調整されていく仕組みをもっていることから、当社と顧客との間のコミュニケーション頻度が非常に高いことも特徴としています。月額会員制度による安定的な収益性に加え、多くの顧客接点からサービス改善策を質量ともに打ち出し続けられる点が当社のビジネスモデルの強みであると考えています。また、月次の新規獲得顧客数のうち15%強は退会会員からの再登録となっており、顧客との信頼関係を高く維持しております(2024年6月期)。
④ AI・データ活用
パーソナルスタイリングサービスの量及び品質を担保しその精度を高めるため、スタイリストの「スキルのシェア」とデータサイエンティストによる「AI/データ活用」を徹底しております。顧客からは従来のECサービスで取得できる購買データのみならず、着用後の感想(体験データ)を収集することが出来、これを社内で解析・応用することで新しい顧客体験につながるアクションを取り続けることが可能になります。業務の中で収集できる様々なデータを指標化することで、スタイリング精度の向上や、顧客とスタイリストのマッチング、在庫数の最適化、物流効率の最適化、仕入れ価格の最適化など、サービス品質の向上に向けたPDCAサイクルに活用しています。例えば、体験データについては120万件/年以上、スタイリングデータも40万件/年以上、サービスを運営しながら収集しております。
⑤ マーケティング手法
「自分の好み・自分に似合う」商品を求めているパーソナライズ市場の潜在顧客のニーズに対し、様々なマーケティング手法で対応し、効率的な顧客獲得を行っております。本市場に対する顧客開拓力は当社の成長の源泉となっております。WEBマーケティング、特にSNS広告や検索広告で幅広く潜在顧客へ訴求を行っており、2024年6月期においても、各種広告において最適化を図るなど改善も重ねております。各種手段での訴求後は、当社のこれまでのスタイリングノウハウを独自に集約した「パーソナルスタイリング診断」のコンテンツを配置しており、2022年6月末での累計診断件数は200万件超に上ります。このように顧客獲得手法を洗練し、顧客獲得コストをコントロールすることで、顧客獲得の効率化と事業成長を実現しております。
⑥ 効率的な在庫管理
当社はサブスクリプションモデルを採用しているため、貸出着数の増加によって事業拡大を図る従来型の貸衣装事業とは異なる在庫管理の考え方を持っています。具体的には保有在庫の最適化に関しては一着当たり回転率ではなく、月額会員一人当たり仕入高(以下、「一人当たり仕入高」)と顧客満足度をKPIとして管理しています。顧客満足度を下げずに一人当たり仕入高を効率化していくためのモニタリング、仕入計画策定、在庫運用等を実施しています。一人当たり仕入高の推移は下図の通りです。なお、これにより各洋服が使われる期間も長期化が図られ、利用実態に応じて見直しを行うレンタル用資産の耐用年数にも影響を与えるものとなります。
一方で、顧客満足度も継続的にモニタリングし、一人当たり仕入高を高い水準とすることも選択肢の一つと考えておりますので、二つの指標の関連性に留意しながらモニタリングしていきます。
■ 一人当たり仕入高(※1)の推移
※1 各年度におけるレンタル用資産増加額を年間平均月額会員数で除すことで算出
※2 利用毎にお客様から取得する4段階評価のレーティングにおける年間平均値
[事業系統図]
※ 洋服のレンタルと返却は当社が契約しているファッションレンタル倉庫と顧客の間で繰り返されます。レンタルした洋服のうち、顧客が購入の意思を示したものについては購入代金を支払うことにより顧客の手元に取り置くことができます。
業績
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産は1,910,263千円となり、前事業年度末に比べ4,637千円増加しました。これは主に、年間を通じての月額会員数の増加に伴う売掛金の増加27,955千円によるものであります。固定資産は800,224千円となり、前事業年度末に比べ201,628千円増加しました。これは主に、年間を通じての月額会員数の増加に応じて、必要在庫数が増加したことに伴いレンタル用資産が138,681千円増加したことに加え、新倉庫の契約により敷金が68,960千円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は2,710,487千円となり、前事業年度末に比ベ206,266千円増加しました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は1,213,546千円となり、前事業年度末に比ベ254,137千円増加しました。これは主に、短期借入金の増加192,366千円によるものであります。固定負債は986,781千円となり、前事業年度末に比ベ115千円減少しました。
この結果、負債合計は2,200,327千円となり、前事業年度末に比べ254,021千円増加しました。
(純資産)
当事業年度末における純資産は510,159千円となり、前事業年度末に比べ47,755千円減少しました。これは主に、当期純損失計上による利益剰余金の減少53,195千円によるものであります。
この結果、自己資本比率は18.6%となりました。
② 経営成績の状況
当社は、「“ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ」をビジョンに掲げ、人々のライフスタイルが豊かになるサービスの提供を行っております。パーソナルスタイリングの要素を強みとした主軸の月額制ファッションレンタルサービス「airCloset」に加え、家具・家電を購入前にレンタルできるメーカー様公認の月額制レンタルモール「airCloset Mall」を展開しております。これらのサービス展開においてはモノの出荷だけではなく、返却、メンテナンスといったオペレーションが重要となるため、当社はこれまで循環型の物流プラットフォームの改善、磨きこみを継続してまいりました。
2023年10月には当該物流プラットフォームを活用した都度課金型の新しい取り組みである「Disney FASHION CLOSET」をスタートしており、まずは認知拡大に努めています。
また、循環型物流プラットフォームを、自社利用だけでなく、他の企業様にご活用頂く取り組みも推進しており、現在2件の受注が決まっております。今後も企業様向けの取り組みについても推進してまいります。
上記に加えて、当社はサステナビリティの観点から転換が求められるファッション業界において、サーキュラーエコノミーを実現する企業としても事業推進を行っております。2022年には自社サービス内における衣服の廃棄ゼロを実現しています。また、アパレル販売員向け衣服シェアリングの取り組みの本格始動や、レンタル提供を終了した洋服を販売するサステナブルな販売会「エコセール」を企業連携企画に拡大するなどの動きを行っております。
当事業年度においては、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行等による人流の増加、経済活動の正常化が進む一方、世界における情勢不安、資源価格の高騰や為替変動による物価の上昇など、景気の先行きについては不透明な状況が続いています。
このような状況の中、当社サービスにおいては、6ヶ月を超えて継続してサービスを利用しているロイヤル会員数の堅調な推移、長期契約コースの拡充等による継続率の改善等により、安定した会員数の伸びを実現しております。また、2024年6月期は、全体としての成長を継続しつつも、中長期成長に向けた会員獲得効率の改善を注力事項と定め、コンバージョンレートの改善などを行ってまいりました。これらによって収益性の改善も順調に進み、主力のairCloset事業の営業利益の黒字化を実現いたしました。
これらの結果、当事業年度の業績は、売上高4,216,157千円(前年度比12.7%増)、調整後EBITDA(営業利益+レンタル用資産償却費+減価償却費+レンタル用資産売却等に伴う原価振替額)762,927千円(前年度比94.6%増)、営業損失35,627千円(前年度は188,024千円の営業損失)、経常損失52,663千円(前年度は229,282千円の経常損失)、当期純損失53,195千円(前年度は354,191千円の当期純損失)となりました。
なお、当社の事業セグメントはパーソナルスタイリング事業のみの単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は1,454,526千円となり、前事業年度末に比べ202,728千円増加しました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は802,950千円(前年度は479,381千円の獲得)となりました。これは主に、減少要因として、税引前当期純損失52,663千円(前年度は353,659千円の税引前当期純損失)等があった一方で、増加要因として、減価償却費572,502千円(前年度は413,649千円の減価償却費)、レンタル用資産売却等に伴う原価振替額226,052千円(前年度は166,377千円のレンタル用資産売却等に伴う原価振替額)等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は778,282千円(前年度は907,935千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出911,586千円(前年度は877,885千円の支出)等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は178,060千円(前年度は540,753千円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入200,000千円等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.商品仕入実績
当事業年度の商品仕入実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。なお、当社は、パーソナルスタイリング事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
セグメントの名称 |
品目 |
当事業年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
||
パーソナルスタイリング事業 |
商品 |
48,544 |
87.55 |
合計 |
48,544 |
87.55 |
b.受注実績
当社は、受注生産を行っておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。
c.販売実績
当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は、パーソナルスタイリング事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
パーソナルスタイリング事業 |
4,216,157 |
112.7 |
合計 |
4,216,157 |
112.7 |
(注)販売実績が、総販売実績の10%を占める相手先が存在しないため、相手先別販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合の記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当事業年度の財政状態及び経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」にも記載しておりますが、売上高4,216,157千円(前年度比12.7%増)となりました。
これは主に、月額会員数の増加によるものであります。
売上原価は2,217,633千円(同11.9%増)となりました。これは主に、売上高増加に伴うものであります。
販売費及び一般管理費は2,034,151千円(同4.5%増)となりました。これは主に、事業規模拡大に伴う広告宣伝費の増加等によるものであります。
なお、販売費の売上高に占める割合は31.3%(前年度は33.7%)、一般管理費の同割合は17.0%(前年度は18.3%)となっております。
結果、営業損失は35,627千円(前年度は188,024千円の営業損失)となりました。
営業外収益は、2,054千円(同56.1%減)となりました。これは主に、前年度に補助金収入を計上していたこと等によるものであります。
営業外費用は、19,090千円(同58.4%減)となりました。これは主に、前年度に上場関連費用を計上していたこと等によります。
これらの結果、当期純損失53,195千円(前年度は354,191千円の当期純損失)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
今後は「airCloset」の拡大に加え、更なる成長の為に、事業領域(年齢層・取扱商品)の拡大、「airCloset Mall」の拡大を予定しております。
これらに必要な資金については自己資金により充当する事が基本方針でありますが、必要に応じて金融機関からの借入金や、新株発行による資金調達資金により充当することとしております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりましては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、過去の実績等を勘案して合理的な見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。会計上の見積りのうち重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事 業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 目標とする経営指標」に記載の通り、月額会員数、一人当たり限界利益を重要な経営指標と位置づけ、各経営課題に取り組んでおります。各指標の推移については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」をご参照ください。