2024年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

(単一セグメント)
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 18,901 100.0 2,245 100.0 11.9

事業内容

3【事業の内容】

 当社は、鶏卵の生産・販売(鶏卵事業)を主たる業務としております。

 当社の最大の特徴は、多くは生産から流通会社(取引先)への販売まで、自社内で一貫して行っている点であり、流通会社と直接取引することによって消費者サイドのニーズを素早く生産に反映させることができます。

 また、サルモネラ菌による食中毒、鳥インフルエンザ等近年食の安全を脅かす様々な問題が発生する中、当社は、北海道内(以下道内)においては初生雛(孵化したばかりの鶏の雛)から自社にて育成、野生動物の侵入を防ぐウインドレスの鶏舎構造、サルモネラワクチンの接種、植物性飼料の使用、FSSC22000の認証を取得したGP工場(GP工場:Grading & Packing 選別・包装の略)など、食の安全を作り出す様々な取組みを常に実行し安全対策を進めてまいりました。

 鶏卵販売は、多くのスーパーで取扱われるとともに、ホテル、レストラン、パン・ケーキなどの業務用にも幅広く利用されております。また、2023年2月時点での北海道の採卵鶏飼養羽数約526万羽(農林水産省の畜産統計)に対して、道内における当社の飼養羽数は2023年3月末時点で約250万羽となっており、高いシェアを占めております。

 当社の事業内容の詳細は次のとおりであります。

 なお、当社は鶏卵事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

鶏卵事業

 鶏卵事業については、生産業務を行う生産部、製造業務を行う製造部、販売業務を行う営業部の部門毎に事業の内容を説明いたします。

① 生産業務(生産部)

 道内においては、独自の強健な清浄雛を育てるために雛専用の育成農場を早くから北海道安平町早来に設置、雛を鶏舎単位で入れ替えるオールイン・オールアウトという方法で飼育しております。道内における雛は、他社から購入した大雛(120日令前後の鶏)ではない自社育成の雛です。サルモネラ食中毒に備え、全ての雛にサルモネラワクチンを接種しております。育成農場で育成した強健な雛は札幌、登別、北見、十勝、千歳の道内自社成鶏5農場に送られ産卵をはじめます。道内の鶏舎は、窓のないウインドレス鶏舎で鳥獣の侵入を防ぎサルモネラ等の危険を効果的に防備しております。また、ウインドレス鶏舎は舎内換気、温度管理、給餌、採卵、鶏糞処理を全自動で管理し、快適な飼養環境を維持することによって、1年中安定した環境の中で安全で清浄な卵を産むとともにコストダウンにも大きく寄与しております。

 道内の成鶏5農場では同一の飼料、HACCP(注)手法も取り入れた同一の飼養管理がなされており、どの農場も同一品質の鶏卵を生産しております。

 なお、技術部では専任の獣医、スタッフが衛生飼料、栄養学、獣医学等の観点から様々な研究を行っており、飼料は安全性を考慮して動物性蛋白質を一切含まないオリジナル植物性飼料が主流になっております。

 道外においては岩手県に盛岡、はまなすの2農場、宮城県に吉目木農場の現在3農場を保有しております。道内とは異なり、雛は大雛を外部から購入しております。尚、2020年より吉目木農場にて平飼い卵の生産を、また2022年からは同農場でエビアリー卵(多段式平飼い卵)の生産を開始しましたが、ここで使用している雛は外部購入ではなく、当社育成農場で育成したものです。

(注) HACCP --- Hazard Analysis Critical Control Point

食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生する恐れのある微生物汚染等の危害をあらかじめ分析(Hazard Analysis)し、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという重要管理点(Critical Control Point)を定め、これを連続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生管理の手法です。

 

② 製造業務(製造部)

 道内の成鶏5農場で生産された卵はすべてFSSC22000(注)の認証を取得した5GP工場で製品化されます。道内の5GP工場は2000年~2011年にかけて、統一された設計思想に基づき、従来のGP工場を廃止し新築された工場で、同一品質の製品を製造できることが大きな特徴となっております。

 GP工場は多くの農場鶏舎とバーコンベアで連結されており、その日に生産されたほぼ全ての卵をその日の内に製品化しております。GP工場は、HACCPに準拠した手法を取り入れた最新鋭の工場で品質検査も全自動で行われております。2005年6月よりトレーサビリティ(卵の生産農場、製造工場の追跡が可能)の手法も導入し、卵殻に直接賞味期限とトレーサビリティ番号(ユビキタスコード)を印字し、一旦製造したパックの日付改ざんは不可能です。

 2016年12月には輪厚液卵工場を新設し、翌年1月より液卵・温泉卵の製造を本格稼働しております。将来の加工品分野拡大へのファーストステップを踏み出しております。

 東北においては現在3GP工場(岩手2GP、宮城1GP)が稼働しており当社の盛岡支店、仙台支店に鶏卵製品を供給する役割を担っております。これらの3GP工場の内、はまなすGP(岩手)は2017年4月に、多賀城GP(宮城)は2020年6月にFSSC22000の認証を取得しております。

 

(注) FSSC22000 --- Food Safety System Certification(食品安全認証財団)

FSSC22000は、食品安全の基本である前提条件プログラム(PRP)をより具体的にするため、食品安全マネジメントシステムISO22000のPRPに関する要求事項を産業分野ごとに規定しており、フードディフェンス(Food defense=食品防御)が含まれた国際規格です。

 

③ 販売業務(営業部)

 道内5つのGP工場で製造された鶏卵製品は問屋を通さず取引先に直接販売(道内直売率96%)をしており、道内取引先にGP工場から均一な品質の安全な卵を迅速にお届けしております。

 当社の鶏卵の特徴は「PG卵モーニング」、「サラダ気分」、「雛の巣」などの自社ブランドのほか、安心安全の当社の品質が評価され各取引先別にプライベートブランドもOEM提供しており、消費者が求める価値(栄養素等)を付与し高価格設定が可能な特殊卵の販売比率が高いという点があげられます。

 また、従来東北地区での販売は問屋売りが主流でしたが、現在は当社盛岡支店・仙台支店におきまして直接地場取引先への販売を拡大しており、直接販売の比率を高めております。

 さらに2022年秋からはアニマルウェルフェアへの取り組みの一環として宮城県吉目木農場にてエビアリー鶏舎(多段式平飼い)で生産を開始した平飼い卵を関東、東海、東北、北海道エリアにて販売開始しております。

 また、2021年3月より香港市場向けに当社道産卵の輸出を開始いたしました。今後輸出数量の拡大を通じ、当社ブランドの香港市場での定着を図って参ります。

 

 事業の系統図は、次のとおりであります。

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

(資産合計)

 当事業年度末における資産合計は、前事業年度末に比べて915百万円増加し17,764百万円となりました。

 流動資産は、前事業年度末に比べて581百万円増加し6,344百万円となりました。これは、主として現金及び預金が1,371百万円増加した一方で、未収入金が839百万円減少したこと等によるものです。

 固定資産は、前事業年度末に比べて334百万円増加し11,419百万円となりました。これは、主として建物が117百万円、機械及び装置が226百万円、投資有価証券が109百万円それぞれ増加した一方で、建設仮勘定が177百万円減少したこと等によるものです。

 なお、当事業年度において実施いたしました設備投資の総額は1,240百万円であります。これらの資金は自己資金でまかなっております。

 

(負債合計)

 当事業年度末における負債合計は、前事業年度末に比べて655百万円減少し5,446百万円となりました。

 流動負債は、前事業年度末に比べて339百万円減少し3,649百万円となりました。これは、主として買掛金が73百万円増加した一方で、1年内返済予定の長期借入金が227百万円、未払法人税等が213百万円それぞれ減少したこと等によるものです。

 固定負債は、前事業年度末に比べて316百万円減少し1,796百万円となりました。これは主として長期借入金が302百万円減少したこと等によるものです。

 

(純資産合計)

 当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べて1,571百万円増加し12,318百万円となりました。これは、剰余金の配当を169百万円計上したものの、当期純利益を1,656百万円計上し、その他有価証券の評価差額金が84百万円増加したことによるものです。

 

b.経営成績

 鶏卵業界におきましては、一昨年秋より全国に広がった鳥インフルエンザにより1,700万羽近い採卵鶏が殺処分され、全国で「卵ショック」と言われる極端な卵不足が起こりました。鶏卵相場はこの影響を受け、昨年秋までは比較的高水準で推移していましたが、採卵鶏の再導入が進んだ秋以降は下落局面に入り、当事業年度平均鶏卵相場は、北海道Mサイズが1キロ295円66銭と前年比15円46銭高、東京Mサイズは1キロ276円49銭と前年比25円75銭高となりました。

 当社は下落する鶏卵相場、昨年4月の当社千歳農場における鳥インフルエンザ発生による生産減、円安を背景に高止まりする飼料価格に対応するため、差別化卵の拡販に注力してきました。この結果、当事業年度の業績は、売上高は18,901百万円(前年同期比6.0%増)、営業利益は2,245百万円(前年同期比70.2%増)、経常利益は2,316百万円(前年同期比67.4%増)、当期純利益は1,656百万円(前年同期比122.2%増)となりました。

 なお、当社は鶏卵事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

 ②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前事業年度末に比べて1,371百万円増加し、3,900百万円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、3,376百万円の収入(前事業年度は2,519百万円の収入)となりました。これは主として、税引前当期純利益2,384百万円、減価償却費1,036百万円、補助金の受取額493百万円等による資金の増加が、法人税等の支払額894百万円等による減少を上回ったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、1,282百万円の支出(前事業年度は1,820百万円の支出)となりました。これは主として有形固定資産の取得1,235百万円等による資金の減少等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、722百万円の支出(前事業年度は19百万円の支出)となりました。これは主として長期借入金の返済で529百万円、配当金の支払169百万円等による資金の減少によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社の事業は鶏卵事業の単一セグメントであり、当事業年度における生産実績は区分別に記載しております。

区分別

当事業年度(百万円)

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

鶏 卵

14,100

1.3

鶏糞肥料

101

△20.3

レンダリング

178

△30.3

食 品

117

15.0

合計

14,498

0.7

 (注)1.金額は製造原価によっております。

2.当事業年度において、鶏卵の生産実績の内容に著しい変動がありました。これは、昨年4月に当社千歳農場で高病原性鳥インフルエンザが確認され、生産量が減少した一方で、ウクライナ侵攻に端を発した世界的な原料価格高騰や円安進行等に伴う、国内飼料価格、エネルギーコスト、物流費の高騰等によるものです。

 

b.商品仕入実績

 当社の事業は鶏卵事業の単一セグメントであり、当事業年度における商品仕入実績は区分別に記載しております。

区分別

当事業年度(百万円)

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

鶏 卵

130

△15.5

食 品

359

130.1

その他

0

△9.5

合計

490

57.5

 (注)金額は仕入価格によっております。

 

c.受注実績

 当社は、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

d.販売実績

 当社の事業は鶏卵事業の単一セグメントであり、当事業年度における販売実績は区分別に記載しております。

区分別

当事業年度(百万円)

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

鶏 卵

18,243

4.8

鶏糞肥料

23

150.5

レンダリング

68

△21.0

食 品

564

80.4

その他

0

△36.2

合計

18,901

6.0

 (注)1.総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。

2.当事業年度において、鶏卵の販売実績の内容に著しい変動がありました。これは、昨年4月に当社千歳農場で高病原性鳥インフルエンザが確認され、販売量が減少した一方で、国内の鳥インフルエンザ感染拡大により1,700万羽近い採卵鶏が殺処分されたこと等により鶏卵相場が上昇したこと等によるものです。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社の当事業年度の財政状態及び経営成績は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下の通りです。

 当社千歳農場における鳥インフルエンザ発生の影響を受け鶏卵販売重量は前年同期比11.4%の減少、鶏卵相場はMサイズ平均の前年同期比北海道相場で5.5%、東京相場で10.3%上昇しました。その結果、売上高は前年同期比6.0%の増加の18,901百万円となりました。

 売上高総利益率は20.8%と前年同期比3.3ポイント改善しました。営業利益については、主に卵価相場の上昇により前年同期比926百万円増加の2,245百万円となりました。また、当期純利益は1,656百万円となりました。

 当社が経営管理上重視している道内市場占有率、販売重量、農場における飼料要求率、製造部門における稼働率等の管理指標は鳥インフルエンザ発生による影響を受けた千歳農場、千歳GP工場を除けばほぼ計画通りとなりました。また千歳農場、GP工場についても採卵鶏の再導入が進み、農場成績、工場稼働率等は感染前の水準に戻っております。これらの点から当社の収益構造を支える基礎的な体力は維持されていると判断しております。

 今後については経営戦略に掲げた事業領域の拡大、付加価値卵の拡販、農場成績向上に加え、課題として掲げた販売単価の改定や物流の合理化によるコスト削減等を確実に実行し、当社収益構造の改善を達成してまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当事業年度キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 資金需要動向については以下の通りです。

 当社の事業活動における運転資金需要の主なものは飼料費、初生雛費、大雛費、各事業についての一般管理費等があります。設備資金需要としては、鶏舎の建替え、GP工場の機械更新、情報処理投資等があります。

 資金調達及び流動性確保に関する認識は以下の通りです。

 当社の事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入による資金調達を行っております。尚、当社のD/Eレシオは0.14と極めて低く、当面の資金調達余力に問題はないと認識しております。

 新型コロナウイルス感染症による当事業年度のキャッシュ・フローへの影響につきましては、「3 事業等のリスク (1)事業環境に関するリスク ⑤新型コロナウイルスの影響について」に記載の通りであります。また、鳥インフルエンザ感染による影響につきましては、「3 事業等のリスク (2)事業活動に関するリスク ③鳥インフルエンザ発生による殺処分、移動制限等」に記載の通りであります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積もりに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。