事業内容
セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
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セグメント別売上構成
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セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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セグメント別利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | セグメント別 売上高 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
セグメント別 利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
---|---|---|---|---|---|
(単一セグメント) | 7,929 | 100.0 | 727 | 100.0 | 9.2 |
事業内容
3 【事業の内容】
当社グループは、当社、連結子会社である米国のSoracom Global, Inc.及び英国のSORACOM CORPORATION, LTD.の計3社で構成されており、IoTプラットフォーム事業(単一セグメント)を展開しております。
(1)ビジョン
現在、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)の活用が世界的に加速しております。IoTの導入によって労働力不足やサステナビリティといった様々な社会的な課題を解決することが望まれております。しかし、デバイスの多様化、データ通信の複雑化、テクノロジーの高度化は益々進んでおり、企業がIoTを導入するには、ハードウェア、ソフトウェア、通信、セキュリティ、生成AIと多くの技術要素が複雑に絡む様々な課題に対処する必要があります。
当社グループは「世界中のヒトとモノをつなげ、共鳴する社会へ」のビジョンのもと、IoT活用に必要な各種サービスをワンストップに提供する事業を展開しております。最も顧客至上主義な会社として、当社のプラットフォームサービスの利用によって、多くの企業が気軽にIoTを導入し、即時に大規模展開することが可能となる「テクノロジーの民主化」を実現し、社会をより良いものへ変革することを目指しております。
(2)事業・サービスの概要
当社グループは、顧客企業がIoTを導入・運用する際に直面する共通課題を解決するIoTプラットフォーム「SORACOM」(以下「当社プラットフォーム」という。)を提供しております。具体的には、IoTデバイスやIoT SIM、IoTに必要な通信回線、IoTサービスに求められるデータ保存や可視化アプリケーション、ネットワークサービス等をプラットフォームサービスとして提供しております。顧客企業は、当社プラットフォームを利用することで、迅速かつ効率的にIoTサービスを立ち上げることが可能になります。さらに、エコシステムパートナー企業には、プラットフォームを補完する多様なサービスの提供をいただき、共にIoTのエコシステムを発展させております。
当社はKDDI株式会社や株式会社NTTドコモなどの移動体通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)から通信回線を調達している仮想移動体通信事業者(MVNO:Mobile Virtual Network Operator)であるとともに、クラウド上にモバイル・コア(注)を独自に構築することによって、IoTに特化した通信サービスをコスト競争力のある価格で提供しております。当社プラットフォームのコスト競争力は、MNOが提供する従来型のモバイル・コアが、サーバー、交換機及びデータセンター等を主にハードウェアによって構築しているため、多額の設備投資や更新費用の負担が必要となる一方で、当社独自のモバイル・コアはサーバー、交換機、データセンター等の機能をソフトウェアによりクラウド上に構築しているため、設備投資や更新費用の負担が相対的に少なくなっていることに起因しております。
また、当社プラットフォームは全てクラウド上に展開していることから、クラウド上の他社サービスとの親和性が高いだけでなく、当社独自のプラットフォームサービスとして、データの蓄積や可視化、クラウド連携やリモートアクセス、パケットキャプチャー、閉域ネットワークなど様々なIoT向けサービスを顧客のフィードバックを基に自社で開発し、柔軟に提供することが可能であり、継続的な機能更新や追加等を含めた拡張性を備えております。
(注)モバイル・コアとは、モバイル通信の基幹システムで、端末の制御、加入者情報管理、通信経路設定等を行っております。
当社プラットフォームは、一定規模の回線契約を必要とせず1回線からIoT通信を手軽に利用することが可能であり、かつ、予め必要となる各種IoT向けサービス・機能が用意されていることから汎用的に利用可能であるため、スタートアップ企業から大企業までの様々な規模の顧客企業において、システム開発又はカスタマイズ等の初期投資を抑えつつIoTを導入することが可能となっております。今までは顧客がIoT通信を開始するためには、MNOと一定規模の回線数をまとめて契約しなければならず、初期投資も多額になる傾向だったものが、当社プラットフォームは、1回線から利用できる汎用的な通信サービスを提供しているため設備負担が少ない形でIoT通信を開始することが可能です。
また、一般的なMVNOから安価な通信サービスを利用した場合、当社プラットフォームのようなIoT向けサービスをワンストップで提供していないことが多いため、顧客はIoTの導入を一気通貫で進めることができないことがあります。一方で、当社プラットフォームにおいてはデータの蓄積や可視化、クラウド連携やリモートアクセス、パケットキャプチャー、閉域ネットワークなど様々なIoT向けサービスを利用できるため、顧客はIoTの導入を一気通貫で進めることができます。さらには、顧客がIoTを始める上で必要なシステムを新しく自社開発することなく、当社のプラットフォームサービスを利用するだけでIoTを導入することが可能です。
加えて、当社プラットフォームを利用したIoT導入を支援するパートナープログラムを構築しており、顧客企業がIoT活用を進める上での課題を解決するエコシステムを形成しております。エコシステムのパートナー企業は当社プラットフォームを活用して、付加価値の高いソリューションやシステムインテグレーションをIoTを導入する顧客企業に提供することが可能となっております。これらエコシステムのパートナー企業数の増加が当社プラットフォームを補完するサービスの充実につながり、IoTのエコシステムを発展させております。日本では、2015年9月以降、パートナープログラムを洗練させており、その効果もあり2024年3月現在220社を超えるエコシステムパートナー企業(注)が登録されております。
(注)エコシステムパートナー企業は、認定資格者数や販売実績などの一定の基準を満たし、当社プラットフォーム活用の実績を持つと認定されたパートナーをいいます。
上記の事業サービスを展開することにより、当社プラットフォームを活用して、スマートメータリング、シェアリングモビリティ、スマートファクトリー、クラウド通訳機、子供やシニアの見守り端末、遠隔医療、遠隔監視といった、顧客企業の業務効率化や省力化の推進や、社会課題を解決するための数多くのIoTサービスが創出されております。
当社プラットフォームは、顧客企業自らがインターネット検索、Web広告、オンラインイベントやディベロッパーコミュニティの口コミや評判を通じて当社プラットフォーム及びサービスに興味を持ち、Web上にて通信SIMの購入及びサービス利用契約を行い、サービス利用を開始することが可能なセルフサービスモデル型の事業展開を構築しております。また、当社プラットフォームの利用を小規模から開始した顧客に対しては、IoT分野に精通する当社営業人員やエコシステムのパートナー企業が顧客のIoT利用の拡大をサポートしており、顧客のIoT利用が大きく拡大すると、IoTの成功事例として他の顧客に波及(ネットワーク効果)し、新たな顧客による当社プラットフォームの利用につながるという好循環が生まれているものと認識しております。なお、顧客獲得戦略は後述「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に詳細を記載しております。
このような顧客獲得戦略によって、2024年3月において国内外の課金アカウント数(注)は8,000個を超えて拡大しており、スタートアップ企業から大企業、米国/欧州企業まで多くの顧客が当社プラットフォームを利用するに至っております。
最近では、AI技術の社会実装に強みを持つ株式会社松尾研究所(所在地:東京都文京区、代表取締役 川上登福)とともに、ChatGPTに代表されるGenerative AI(生成AI、以下、GenAI)とLLM(大規模言語モデル)のIoT分野での活用を研究・推進するチーム「IoT x GenAI Lab」を設立しました。IoT分野におけるGenAI、LLMを用いた技術検証やプロトタイピング、新たなプロダクトの開発をおこなうとともに、ユーザー企業向けのプロジェクト支援を視野に入れ活動し、将来の事業・サービスの拡大を図っています。
(注)課金アカウント数は、1ヶ月の間にリカーリング収益が発生した口座数をいいます。同一の顧客企業等が部署や業務別に複数の口座を有する場合が含まれております。
当社グループが獲得する収益は、「リカーリング収益(プラットフォーム利用料)」、「商品販売」及び「その他」により構成されており、各サービス等の概要は以下のとおりであります。
[リカーリング収益 (プラットフォーム利用料)]
① 通信サービス(コネクティビティ)
IoT向けの通信接続を提供するサービスであり、「SORACOM Air」の名称にて以下の通信規格に対応したサービスを提供しております。当該サービスにおいては、通信サービスにかかる従量課金による継続収入を受領しており、リカーリング収益の主要な収益源となっております。
・セルラー通信
当社グループの主たる通信サービスであり、携帯電話向け周波数帯である2G/3G/LTE/5Gに対応したデータ通信SIM「IoT SIM」による通信サービスを提供しております。当該通信サービスは、国内向け回線及びグローバル回線に区分され、世界180の国と地域における利用をカバーしております。
・LPWA通信
省電力及び長距離伝送を特徴とし、IoT用途での利用に適したLPWA(Low Power Wide Area)通信を用いたサービスであり、Sigfox、LoRaWAN及びLTE-Mの各ネットワークを利用した通信サービスを提供しております。
・その他通信
上記の他に、Skylo Technologie, Inc. と協業し、衛星通信を提供しております。また、Wi-Fi、有線通信、衛星通信など通信経路に限らず、ネットワーク上のデータを暗号化して通信を行い当社グループのIoTプラットフォーム機能を利用できる「SORACOM Arc」も提供しております。
② ネットワークサービス
IoTシステム運用のためには、安全性の確保、通信方向の制御、取得したデータの利用等、通信サービス(コネクティビティ)の利用だけでは解決できない様々な課題が生じます。これらの課題を解決するために、VPN接続や物理専用線によりIoTデバイスから各種クラウドや顧客データセンターまでをセキュアに接続するサービス、当社通信サービスによりつながるIoTデバイスに必要時に遠隔から安全にアクセスできるサービス等を提供しており、ネットワークサービス上の顧客のデータ利用に応じた従量課金による継続収入を受領しております。
③ アプリケーションサービス
IoTデバイスから送信されるセンサーデータ等を時系列で保存する機能、データを可視化するダッシュボードの作成/共有サービス、各種クラウドやAI/機械学習などのサービスへのデータ転送サービス、IoT デバイスの管理等IoTデータ活用やIoTデバイス活用における課題を解決する機能を提供するサービスを提供しており、顧客のデータ利用に応じた従量課金による継続収入を受領しております。
④ その他(KDDI向けプラットフォーム提供)
主要株主であるKDDI株式会社との業務提携契約に基づく協業の一環として、同社が構築する「IoT世界基盤」(グローバルIoTアクセス)の基礎となる通信ネットワークについて、当社プラットフォームを提供しております。
[商品販売]
通信サービス提供時の回線契約に伴い主に販売される通信用IoT SIMに加えて、通信モジュール、USBドングル、カメラ・GPS・ センサー等のIoTデバイス等の商品を仕入販売しております。また、特定大口顧客向けにはスマートメーター等の商品を販売しております。
[その他]
① プロフェッショナルサービス
当社グループのIoTプロフェッショナルコンサルタントが、顧客企業のIoT導入プロジェクトにかかる技術要素や課題の整理、実行計画立案の支援等、顧客プロジェクトに参画・サポートを行うコンサルティングサービスを提供しております。また、企業のIoTプロジェクトに関するシステム開発の考え方や、システム構成、具体的なサービス提供について実装するワークショップも提供しております。
② 業務受託
主要株主であるKDDI株式会社との業務提携契約に基づく協業の一環として、技術開発支援等の業務を受託しており、個々の受託案件毎に業務受託収入を受領しております。
「商品販売」や「その他」の売上については顧客がIoT事業を始めるときだけでなく、IoT事業の拡大に伴って継続的に増加する売上であるため、「商品販売」や「その他」の売上をインクリメンタル収益と呼称しており、インクリメンタル収益の増加に伴って、リカーリング収益も増加していく関係にあります。一般的なIoTプロジェクトは、顧客企業がSIMやデバイスを購入し、PoC(概念検証)を実施した後、商用サービスを開始するにつれ規模が拡大していきます。規模の拡大とともに、インクリメンタル収益は増加するとともに、リカーリング収益の割合が高まっていく傾向があります。
(3)事業の特徴
[技術的な優位性]
① パブリック・クラウド上に構築した独自のモバイル・コアについて
従来型のモバイル・コアは交換器やサーバー等をハードウェアで構築していたため設備投資負担が大きいところ、当社グループはパブリック・クラウド上にソフトウェアベースで独自のモバイル・コアを構築しているため、コスト競争力と高い拡張性を実現しております。このモバイル・コアに関連する特許も70以上有しており、当社プラットフォームの技術的優位性の源泉となっております。
② 継続的な機能更新及びサービス拡張について
当社グループは創業以降、プロダクト開発を積極的に進めており、多くの顧客企業がIoTに取り組む際に直面する共通課題を解決できるサービスを通信(コネクティビティ)、デバイス、アプリケーションの多岐に渡り提供しております。必要な機能が、レゴのブロックのようにモジュールとして揃っているため、顧客企業は、必要な要素を活用することで、すぐに新しいサービスを創り出すことができます。
また、顧客企業からのフィードバックに基づいた継続的な機能更新及びサービス拡張を実施しており、2024年3月時点で404の機能を顧客に提供しております。近年は平均2週間の開発サイクルにて継続的に新機能をリリースしており、当社プラットフォームのアップデートを通じて、顧客は先端技術の導入や利便性が向上されたサービスの利用が可能となっております。例えば2023年には、生成AIのテクノロジーを活用した機能として、IoTデータ保存のサービス「SORACOM Harvest Data」 に蓄積された時系列データを AI 分析を開始し、その異常値や傾向などを自然言語で受け取ることができる「SORACOM Harvest Data Intelligence」を提供開始しております。また、2023年に株式会社松尾研究所とIoT分野におけるLLM(大規模言語モデル)の 活用を研究・推進する「IoT x GenAI Lab」も設立し、IoT x 生成AIの最先端に取り組んでおります。
② 多様な通信規格への対応及びクラウドとの高い親和性
当社プラットフォームは通信サービスにおいて、セルラー回線(3G~5G)及びSigfox等のLPWA回線による通信規格に対応しているほか、仮想SIMを発行することによりWi-Fiや有線Ethernetのインターネット回線などで接続するデバイスを提供しております。また、多様な通信規格による接続を可能とし、それら通信によって収集されたデータを当社プラットフォーム上で、一元的かつ容易に管理可能な設計としております(「Connectivity Agnostic」と称しております)。
また、当社プラットフォームはパブリック・クラウド上で構築されていることから、同じくパブリック・クラウド上に構築された顧客システムとの互換性が非常に高いことに加えて、データセンターなどのプライベート・クラウドも含め、他のクラウドサービスとの連携も容易に実行可能となっております(「Cloud Agnostic」と称しております)。
当社グループは、上記の「Connectivity Agnostic」及び「Cloud Agnostic」を、当社プラットフォームの機能柔軟性における特徴として顧客に訴求しており、一定の評価を受けているものと認識しております。
[グローバル・カバレッジ]
当社グループの現在の売上高においては、国内向けサービスが過半を占めておりますが、当社グループは、国内向けに加えて、海外地域向けサービスも展開しております。
当社グループは、SIM内のソフトウェアを自社開発することで回線プロファイルの拡張を可能としており、顧客ニーズに合わせてカスタマイズできるSIM/eSIMを提供しております。海外における接続回線は、欧州、米国、アジアの複数のキャリアとの契約により当該キャリアがローミング接続する各地域の通信キャリア回線を含めた調達を実現しており、当社プラットフォームは2024年3月時点において180の国と地域で、392のキャリア(注)を使用することが可能な通信カバレッジ体制を構築しております。
また、契約の切り替え無しに複数のキャリアを使用できることも特徴のひとつであり、例えば、米国においては、全土にIoTシステムを配置しようとした場合に一つのキャリアが提供する通信ではIoTシステムをカバーできないという顧客側の課題がありますが、当社プラットフォームにおいては複数のキャリアを使用可能とすることでこれを解消しており、同国における競争優位性を確立していると考えております。
(注)キャリアは、当社プラットフォームが接続可能な移動体通信事業者をいいます。
[強固なセキュリティ]
IoTプラットフォームを提供するにあたり、当社は2017年に情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO/IEC 27001:2013の認証を取得しているほか、AWS Foundational Technical Review等の外部機関によるシステム脆弱性診断を実施し指摘事項に対応することで、強固なセキュリティを構築しております。社内においてもISMS取得に際して情報セキュリティに関する各種規程を整備し運用したほか、四半期に一度システムに係る内部監査を実施することで、継続的にセキュリティを確認しております。
このようにセキュリティの管理運営に関して充実を図ることで、当社グループのIoTプラットフォームサービスを顧客が安心かつ安全に利用することが可能になっているものと考えております。
[顧客ストックの蓄積と事業拡大]
当社グループのサービスにおいては、IoT領域における特性として一度導入されたサービスが継続利用される傾向が強く、サービス開始以降、順調に顧客数は拡大しております。また、当社グループの事業においては、導入時におけるIoTデバイスの販売、各種セットアップ料等の初期費用にかかるインクリメンタル収益に加えて、データ通信量等のサービス利用に応じた継続課金にかかるリカーリング収益を獲得する構造であることから、比較的安定したビジネスモデルが構築されていると考えております。
当該ビジネスモデルにおいては、データ通信を実現する契約回線数(注1)と課金アカウント数(注2)の増加が重要となりますが、当社グループと顧客企業との取引においては、サービス導入時は小規模で開始されるものの、顧客企業におけるサービス導入範囲の拡大や、顧客企業が提供するIoTビジネスの拡大等に伴い、契約回線数並びにデータ通信量が拡大するケースが多く、新規顧客獲得に加えて、既存顧客との取引拡大が事業成長に大きく貢献する構造となっていると認識しております。
(注)1.契約回線数は、セルラー回線及びLPWA回線の数をいいます。
2.課金アカウント数は、1ヶ月の間にリカーリング収益が発生したアカウント数をいいます。
当社グループの事業系統図は以下のとおりであります。
用語解説
本項「3 事業の内容」において使用しております用語の定義について以下に記します。
業績
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産合計は10,094,150千円となり、前連結会計年度末に比べ5,019,561千円増加いたしました。これは主に新規上場に伴う公募増資等により現金及び預金が4,164,741千円増加したこと、デバイスや業務受託案件の納品があったことによる売掛金の増加848,317千円によります。固定資産合計は、802,654千円となり、前連結会計年度末に比べ213,959千円増加いたしました。これは主にソフトウェアなどの無形固定資産の増加95,631千円、繰延税金資産を新たに計上したことによる投資その他の資産の増加116,280千円によるものであります。
この結果、当連結会計年度末における資産合計は10,917,376千円となり、前連結会計年度末に比べ5,254,091千円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債合計は2,461,748千円となり、前連結会計年度末に比べ812,498千円増加いたしました。これは主にデバイス仕入により買掛金が382,831千円増加するとともに、将来の一部デバイスの交換に伴う作業費用に備えるため製品保証引当金を320,149千円計上した一方、リカーリング収益の前受額を売上認識したことにより契約負債が162,796千円減少したことによるものであります。固定負債合計は、51,185千円となり、前連結会計年度末に比べ759千円減少いたしました。
この結果、当連結会計年度末における負債合計は、2,512,934千円となり、前連結会計年度末に比べ811,739千円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は8,404,441千円となり、前連結会計年度末に比べ4,442,351千円増加いたしました。これは上場に伴う公募増資等による資本金の増加1,904,762千円及び資本剰余金の増加1,904,762千円、親会社株主に帰属する当期純利益485,565千円の計上による利益剰余金の増加によるものであります。
この結果、自己資本比率は75.5%(前連結会計年度末は67.5%)となりました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業の業績が回復傾向にありながらも、消費者物価の上昇がみられ内需は横ばいの状況にありました。一方、米国においては、雇用情勢が回復し、個人所得についても堅調に伸びました。欧州においては、企業景況感に改善がみられるものの賃金上昇率が高いなど不確実性を内在しています。
このような状況の下、ITサービス分野において、IoT技術は、日本の少子高齢化や人口減少に伴う社会課題の解決に貢献することが期待されています。さらに、政府や民間によるICT (情報通信技術) の推進が加速する中、今後もIoTはますます重要な役割を担っていくと予測され、当社が果たすべき役割はますます高まるものと認識しております。また、生成AIを活用する動きが各処でみられ、当社グループにおいても生成AIを活用したサービスの機能強化や研究を継続しております。
当連結会計年度の業績については、課金アカウント数(注1)やARPA(注2)が伸びたことにより、リカーリング収益(プラットフォーム利用料)による継続収入が5,382,778千円と、前期と比べ1,057,116千円(24.4%)の増加と好調に推移し、サービス開始から8年で課金アカウント数は8,000を上回り、ARPAは前期比16.9%増加の688千円となりました。また、商品販売とその他の売上からなるインクリメンタル収益についても、業務受託案件の増加もあり2,545,999千円と前年と比べ572,259千円(29.0%)増加いたしました。
当社グループは日本発のグローバルプラットフォーマーを目指しており、海外売上高の比率は、前期比2.2ポイント増加の36.4%となりました。
また、販売費及び一般管理費については、人員採用を継続的に行ったほか、当社が主催するIoTカンファレンスの開催をオフラインで実施したことや上場関連の広告宣伝費等の計上、外形標準課税の適用による租税公課の増加があったものの、売上が堅調に推移したことから販管費率は50.3%から47.5%となりました。さらに営業外費用として、円安の影響による為替差損58,645千円、上場関連費用23,949千円を計上いたしましたが、売上の伸びがこれら一時的費用を吸収する形となりました。この結果、当連結会計年度における売上高は7,928,778千円と前期と比べ1,629,375千円(25.9%)の増収、営業利益は727,336千円と前期と比べ625,959千円(617.5%)の増益、経常利益は638,408千円と前期と比べ525,608千円(466.0%)の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は485,565千円と前期と比べ414,691千円(585.1%)の増益となっております。
なお、当社はIoTプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント情報は記載しておりません。
(注1)課金アカウント数は、1ヶ月の間にリカーリング収益が発生した口座数をいいます。同一の顧客企業等が部署や業務別に複数の口座を有する場合が含まれております。
(注2)Average Revenue Per Accountの略称。1アカウントあたりの平均売上金額を示す指標を意味します。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)については、前連結会計年度末より4,164,741千円増加し、7,697,244千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フロー状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は456,241千円(前連結会計年度は222,685千円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益を638,408千円計上したほか、デバイス仕入に伴う仕入債務の増加額370,193千円及び将来の一部デバイスの交換に伴う作業費用に備えるための製品保証引当金の増加額320,149千円があった一方で、デバイスや業務受託案件の納品があったことに伴う売上債権の増加814,662千円及びリカーリング収益の前受額を売上認識したことによる契約負債の減少229,850千円があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、支出した資金は170,572千円(前連結会計年度は2,007,150千円の収入)となりました。これは主にソフトウェアの開発に伴う無形固定資産の取得による支出154,725千円によるものであります。なお、前期はKDDIグループが運営するキャッシュ・マネジメント・システムによる資金の貸付を解消したことによる貸付金の回収による収入2,140,659千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、増加した資金は3,791,479千円(前連結会計年度は29,883千円の収入)となりました。これは主に新規上場に伴う公募増資等に伴う新株の発行による収入3,803,692千円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは受注生産形態をとる事業を行っていないため、生産規模及び受注規模を金額及び数量で示す記載をしておりません。
a. 生産実績
当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
b. 受注実績
当社グループが提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
c. 販売実績
当社グループは、IoTプラットフォーム事業を単一セグメントとして展開しておりますが、第11期連結会計年度における品目別販売実績を示すと、次のとおりであります。
(注) 1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。
この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。また、連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、当社の実態等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性を判断した上で、回収可能性がないと見積られる金額を評価性引当額として控除しております。繰延税金資産の回収可能性を判断する際には、将来の課税所得に基づき、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得の発生額は、取締役会によって承認された来年度予算を基礎としており、顧客との交渉状況を踏まえた新規受注の獲得見込み等を主要な仮定として見積っております。
ただし、当該見積りには不確実性を伴い、これに関する経営者による判断が繰延税金資産の計上額に影響を及ぼす可能性があります。
(製品保証引当金)
当社グループは、顧客に販売した一部デバイスについて、将来発生する交換に伴う作業費用に備えるため、その発生見込み額を製品保証引当金として計上しております。
将来発生するデバイスの交換に伴う作業費用は、対象となるデバイスの数量、デバイス1個当たりの交換対応費用等の予測に基づき合理的に見込まれる金額を算定しております。この見積りには不確実性が含まれており、前提条件の変化等により、実際の発生額と異なる場合があり、引当金の追加計上もしくは戻入が必要となる可能性があります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの第11期における売上高は、リカーリング収益とインクリメンタル収益とが共に堅調に推移した結果、前期比25.9%の増収となりました。特に、KDDI株式会社の新規事業開発に向けた取組みが加速し、業務受託(インクリメンタル収益)に関する売上が好調に推移しました。販管費については、IoTカンファレンスのオフライン開催や上場関連の広告宣伝費、外形標準課税の適用による租税公課の計上により、596,408千円増加しましたが、増収が寄与し、営業利益は625,959千円の増益となりました。
営業外収益としては、第11期においては、急激に円安が進み、為替差損を58,645千円計上しております。
また、第10期においては、子会社の清算に伴い関係会社清算益を52,831千円計上しておりますが、当社グループの再編が完了し、第11期においては、このような特別損益は計上しておりません。
財政状態においては、当社の第11期末におけるリース債務を含む有利子負債の残高は25,173千円、現金及び預金の残高は、2024年3月26日付で東京証券取引所グロース市場に株式上場し、公募増資を行ったことにより増加し、7,697,244千円となっております。当社の事業を推進していくうえで十分な流動性を確保しており、今後は、これら資本を原資に、収益力とのバランスをみながら、マーケティング活動や優秀な人材の確保に投資を行い、国内売上の安定的な成長と海外売上の拡大を図ってまいります。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社は、事業を推進していくうえで十分な流動性を確保しております。当社の運転資金需要のうち主なものは、従業員の給料手当のほか、販売費及び一般管理費の広告宣伝費であります。当社は、事業運営上必要な資金を安定的に確保するために、必要な資金については自己資金により賄いますが、短期的な運転資金が必要となる場合には、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等でバランスよく調達していく方針です。なお、これらの資金調達方法の優先順位については、調達時期における資金需要の額、用途、市場環境、調達コスト等を勘案し、最適な方法を選択する方針であります。
④ 経営成績に重要な要因を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。また、今後の経営成績に影響を与える課題については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
⑥ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、経営成績を評価するために売上高、売上高総利益率及び営業利益率に加えて、リカーリング収益、課金アカウント数及びリカーリング収益のARPAを重要な経営指標と考えております。
売上高の伸びは事業全体が安定的に成長している指標となっており、コストとのバランスが異常でないことを売上高総利益率及び営業利益率をモニタリングすることで測っております。売上高については、前期比25.9%の伸びであり、営業利益率については、前連結会計年度において人材投資により一時的に低下しましたが、投資成果により売上高が伸長し、当連結会計年度においては、上場に係る一時的な費用や外形標準課税の適用による租税公課を計上したものの、営業利益率は9.2%(前期は1.6%)と改善しております。
また、売上高の内訳としては、インクリメンタル収益だけではなく、プラットフォーム利用の拡大を示すリカーリング収益の増加を経営上の目標としております。リカーリング収益は、前期比24.4%と安定的に成長し、規模拡大に伴うコストメリットも貢献して、売上高総利益率も当連結会計年度においては56.7%と良好な水準となっております。
さらに、ARPAの上昇は、既存顧客がプラットフォームの利用範囲を拡大していることを示すため、課金アカウント数の増加と併せて重要な指標として管理しております。課金アカウント数及びリカーリング収益のARPAは、それぞれ前期比6.2%及び16.9%とともに増加し、顧客数の増加のみならず既存顧客の事業へのIoTの浸透が進んでいるものと評価しております。
加えて、グローバル回線の利用が増加した結果、海外子会社の国又は地域における売上高である海外売上高は2023年3月期は2,153,764千円(海外売上高比率34.2%)、2024年3月期は2,887,912千円(海外売上高比率36.4%)と増加しております。なお、海外売上高には、国内顧客向けグローバル回線にかかる売上高が含まれております。
売上高及び売上総利益の伸長の背景については「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。
(単位:千円)
セグメント情報
(セグメント情報等)
【セグメント情報】
当社グループは、IoTプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。
【関連情報】
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
1 製品及びサービスごとの情報
2 地域ごとの情報
(1) 売上高
(注) 売上高は当社及び子会社の国又は地域における売上高であります。なお、英国の売上高には、国内顧客向けグローバル回線にかかる売上高が含まれております。
(2) 有形固定資産
3 主要な顧客ごとの情報
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
1 製品及びサービスごとの情報
2 地域ごとの情報
(1) 売上高
(注) 売上高は当社及び子会社の国又は地域における売上高であります。なお、英国の売上高には、国内顧客向けグローバル回線にかかる売上高が含まれております。
(2) 有形固定資産
3 主要な顧客ごとの情報
【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】
該当事項はありません。
【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】
該当事項はありません。
【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】
該当事項はありません。