2024年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

シニア事業 不動産事業
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
シニア事業 12,075 69.8 1,284 52.3 10.6
不動産事業 5,213 30.2 1,170 47.7 22.4

事業内容

3【事業の内容】

 当社は、<暮らし>をひとつのテーマとし、「あらゆる方々の良きパートナーとして…」という思いから社名を「アズパートナーズ」と名付けました。

 「私たちアズパートナーズは、『世代を超えた暮らし提案型企業』として、あらゆる世代の方々の幸せを追求し、私たちに関わる全ての人々が幸せになることを目指します。」を私たちの使命(MISSION)に掲げて、事業を展開しております。

 当社の事業セグメントは、シニア事業(第20期売上構成比70.4%)と不動産事業(第20期売上構成比29.6%)で形成されております。

 シニア事業は、介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)の運営を主たる事業とし、さらにデイサービス(通所介護)事業及びショートステイ(短期入所生活介護)事業を展開しております。介護付きホームでは、当社とベンダーで共同開発したIoT/ICTプラットフォーム「EGAO link」による業務効率化や顧客満足度向上を強みにしております。

 また、不動産事業は、介護現場で培った運営ノウハウや長年の不動産ビジネスで蓄積した専門的知識や人脈をフル活用し、介護付きホーム等の土地建物を自社開発するシニア開発事業と、老朽化した集合住宅等の不動産の再生を行うソリューション事業を主たる事業としております。さらに、賃貸マンションや事務所等の賃貸を行う収益不動産事業を展開しております。

 なお、以下に示す区分は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項」に掲げる報告セグメントの区分と同一であります。

事業セグメント

事業名称

内容

シニア事業

介護付きホーム事業

介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)の運営

デイサービス事業

デイサービス(通所介護)の運営

ショートステイ事業

ショートステイ(短期入所生活介護)の運営

不動産事業

シニア開発事業

介護付きホーム等の不動産開発

ソリューション事業

老朽化した集合住宅等の不動産の再生

収益不動産事業

マンション等の賃貸

 

(1)当社の各事業の内容

 (シニア事業)

シニア事業は、介護付きホーム・デイサービス・ショートステイの運営を通して、要介護・要支援認定を受けている介護ニーズのある高齢者の方々に介護サービスを提供しています。

当社は、超高齢社会・生産年齢人口減少に伴う介護人材の深刻な不足という社会課題解決に貢献することを目的として、業界の常識にとらわれず、様々な挑戦をしてまいりました。その中で実現したイノベーションを経て、成長と安定を高いレベルで獲得するノウハウを積み上げてきました。

特に介護付きホームにおいては、業界内でもサービスや労働環境、人材育成における差別化を定量的に可視化することが困難であることから、ブランド力がある最大手に優位性がありましたが、その中で当社は、2017年から、当社とベンダーで共同開発したIoT/ICTプラットフォーム「EGAO link」を活用した業務効率化・生産性向上策を戦略的に取ることにより、稼働率・サービス力・採用力で大きなインパクトを出すことができました。

 

 ①介護付きホーム事業

介護付きホームとは、介護保険法に基づく「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた有料老人ホーム(介護付有料老人ホーム)等を指します。(従来「特定施設入居者生活介護」「介護付有料老人ホーム」と呼ばれていましたが、当社が中心となって事業者団体に働きかけ、一般消費者にもわかりやすい「介護付きホーム」という通称を使うようになりました。事業者団体の名称も「一般社団法人全国特定施設事業者協議会」から「一般社団法人全国介護付きホーム協会」に変更され、厚生労働省の資料においても「介護付きホーム」という通称が使われるようになりました。)

介護付きホームは、介護が必要なご入居者に対し、介護サービス計画(ケアプラン)に基づき、入浴、排せつ、食事等の介護や日常生活上のお世話、機能訓練及び療養上の世話(看護)を行うと定義されています。

当社は、この定義にとどまらず、ご入居者の「望む暮らし」・自己実現のために、ご入居者の人生歴・生活歴(ナラティブ)の深い情報収集・整理(アセスメント)を行い、生活リハビリ等の自立支援のプロセスと掛け合わせ「夢を叶えるプロジェクト」という個別アクティビティサービスを全ての介護付きホームで提供しています。

「夢を叶えるプロジェクト」は、介護付きホームに入居する以前には自立して行えていたが、その後の心身機能の低下等による理由で自分自身の力では実現が難しくなったことをまたできるようになりたい、といったご入居者のご希望を叶えることを、ただ日常生活上のサービスとして提供するのではなく介護サービス計画(ケアプラン)の目標に設定し、ご入居者とそのご家族、当社の従業員のチームが一体となって実現を目指していく個別アクティビティのことを言います。当社は、当社とベンダーで共同開発した、ご入居者のベッド上の見守り・ナースコール対応・介護サービス提供の記録をスマートフォン上で対応することができるIoT/ICTプラットフォーム「EGAO link」の導入によって創出された時間を活かして、こうしたサービスを提供しております。

介護付きホームの利用料は、家賃、管理費、水光熱費及び食費と、国が一律で定める介護保険からの介護報酬(入居者はその1~3割を負担)をお支払いいただきます。当社では、家賃の全額を毎月お支払いいただく「月払い方式」と、家賃の全額又は一部を前払いする「入居一時金方式」を設けております。

価格帯としては、当社の「月払い方式」では月額利用料30万円台が中心となっており、「入居一時金方式」として家賃全額を前払いして月額利用料を20万円以下に抑える選択肢を設けています。例えば、アズハイム大泉学園の料金プランでは、「月払い方式」の月額利用料は354,000円、「入居一時金方式」の入居一時金10,500,000円、月額利用料179,000円となっております。

このような価格帯の商品であることから、中高所得者層を顧客層としております。

 

 ②デイサービス事業

デイサービスとは、介護保険法に基づく「通所介護」の指定を受けたサービスを指し、居宅要介護者について、デイサービスセンターに通っていただき、入浴、排せつ、食事等の介護や日常生活上のお世話、機能訓練を行うことと定義されています。

他の大手事業者を含む多くのデイサービスでは、日常的に家族による介護を受けている要介護者(特に認知症の症状のある方)を日中お預かりし、家族が休息の時間を得ること(レスパイトケア)が主な目的となっています。また、近年は、要支援者・軽度要介護者に対して、身体機能の維持・向上を図ることに特化した「機能訓練デイサービス」が急速に拡大しています。

当社は、上記のサービスと差別化する戦略をとり、これらのサービスでは満たされない、軽度要介護者の社会的な孤立感を解消し、お一人おひとりの個別性に着眼し、やりたいことに取り組んでいただくデイサービスを提供しております。

デイサービスの利用料は、食費750円、おやつ代100円と、国が一律定める介護保険からの介護報酬(利用者はその1~3割を負担)をお支払いいただきます。様々な所得階層の方が利用されています。

 

 ③ショートステイ事業

ショートステイとは、介護保険法に基づく「短期入所生活介護」の指定を受けたサービスを指し、居宅要介護者について、ショートステイ事業所に短期間入所していただき、入浴、排せつ、食事等の介護や日常生活上のお世話及び機能訓練を行うことと定義されています。

多くのショートステイは、日常的に家族による介護を受けている要介護者(特に認知症の症状のある方)を短期間泊まりでお預かりし、家族が休息の時間を得ること(レスパイトケア)が主な目的となっています。

当社は、デイサービスと同様に、要介護者の社会的な孤立感を解消し、お一人おひとりの個別性に着眼し、やりたいことにも取り組んでいただくショートステイを提供しております。

ショートステイの利用料は、1日2,000円から3,000円の滞在費、食費(朝450円、昼750円、夜850円)と、国が一律定める介護保険からの介護報酬(利用者はその1~3割を負担)をお支払いいただきます。様々な所得階層の方が利用されています。

 

 (不動産事業)

不動産事業は、介護付きホーム等を自社開発するシニア開発事業、老朽化した集合住宅等の不動産の再生を行うソリューション事業や、賃貸マンションや事務所等の保有を行う収益不動産事業を展開しております。

 

①シニア開発事業

これまで介護付きホーム等を運営するシニア事業は、土地オーナーの相続税対策や有効活用を求める開発用地情報を得て、土地オーナーが建物を建て、当社が賃借する形で展開しておりました。

一方、2022年に開設した介護付きホーム「アズハイム三鷹」は、当社が老朽化不動産等の土地を仕入れ、当社負担で建物を建てる自社開発により、介護付きホームの開設に至っております。こうした自社開発の介護付きホームは、高齢化の更なる進展による需要が拡大する中、当社のこれまでの経験・実績に基づく立地・建物仕様と当社のこれまでの運営実績を前提とした物件として、不動産事業者、投資家(ヘルスケアリート)等への売却が可能となっており、当社として「シニア開発事業」として位置付けて推進しております。2024年3月期は2025年3月期に開設予定である「アズハイム習志野」「アズハイム葛飾白鳥」の着工を開始しております。(シニア開発事業の中で当社で介護付きホーム(アズハイム)を運営することを「自社運営」と呼びます。)

さらに、当社が土地を仕入れ、他社が運営する介護付きホーム等を開発したりアレンジしたりした上で、不動産事業者、投資家等に売却する「他社事業サポート」型のシニア開発事業も開始しています。

 このように、当社のシニア開発と不動産事業それぞれのノウハウ、経験を活かしたシニア開発事業を推進してまいります。

 

②ソリューション事業

大震災が危惧される首都圏、特に東京23区内において耐震性能に劣る老朽化不動産の再開発を中心としたソリューション事業を展開しております。土地及び建物の老朽化不動産を取得後、既存入居者の移転交渉を進め、建物解体後は、主に不動産業者、エンドユーザー等に土地を売却しています。建物を建てず土地で売却することで、マーケットの急落等の価格変動リスクや、建築コスト上昇リスクを回避し、安定的な運営を図っています。アズハイム三鷹の例のように、老朽化不動産の再開発からシニア開発事業につながるケースもあります。

 

③収益不動産事業

土地及び賃貸マンションや事務所等の収益不動産を取得し、テナント・賃借人等へ賃貸する収益不動産事業も、物件情報を厳選しながら高い利回りが期待できる物件を中心に取り組んでおります。

 

今後の不動産事業については、これまで通りシニア開発事業、ソリューション事業、収益不動産事業の3本柱で事業を行っていく方針であり、長期的に当社の強みを発揮できるシニア開発事業(土地仕入から施設売却まで行う)を段階的に増やしていきたいと考えております。ソリューション事業については、今後の不動産市況を鑑み判断していく予定です。収益不動産事業については、これまで通り収益性・資産性が高い物件に厳選して取得検討を行っていきたいと考えております。

 

 

(2)当社のシニア事業の事業所所在地と事業拠点数

介護サービスの事業拠点数は、2024年3月31日現在において、介護付きホーム27事業所、デイサービス16事業所、ショートステイ4事業所となります。

当社では、主に首都圏エリアにおいて介護サービスのドミナント戦略をとっております。ドミナント展開によるメリットとして、主にご入居者・ご利用者の確保及び人材の確保・育成が挙げられます。介護付きホームの入居希望の場合、当社の複数のホームでの入居検討が可能となります。また、デイサービスやショートステイの利用者が介護付きホームに入居されることもあります。介護人材の確保の観点からは、地域に当社の事業が知られていることが従業員の採用に有利に働きます。また、新たな事業所を開設する場合や従業員のキャリアアップのためにも、近隣の事業所から人事異動を行うことが容易となります。さらに、中長期的に人口や世帯数が安定している地域が需給面でも望ましいと考えております。こうした観点から、当社としては首都圏エリア(人口が密集する国道16号線の内側が中心とし、交通利便性でスタッフやご入居者のご家族にも配慮)に事業所を展開しております。今後も各事業年度において介護付きホーム及びデイサービスを2~4事業所程度開設し、うち1~2事業所は自社で不動産を取得する自社開発とする方針であります。具体的には2025年3月期において介護付きホーム2事業所(うち1事業所はデイサービスの併設含む)の開設を予定しております。

 

事業所所在地

介護付き

ホーム

デイ

サービス

ショート

ステイ

小計

東京都

新宿区

 

 

21

文京区

 

 

江東区

 

 

品川区

 

 

大田区

 

 

杉並区

 

 

板橋区

 

練馬区

江戸川区

 

 

三鷹市

 

府中市

 

 

町田市

 

狛江市

 

 

神奈川県

横浜市

 

10

川崎市

 

 

相模原市

 

埼玉県

さいたま市

11

川越市

 

越谷市

 

 

三郷市

 

 

 

 

 

事業所所在地

介護付き

ホーム

デイ

サービス

ショート

ステイ

小計

千葉県

千葉市

 

 

市川市

 

 

松戸市

 

 

茨城県

水戸市

 

 

合計

27

16

47

47

 

 

 以上をまとめた当社の事業内容を示す事業系統図は次のとおりであります。

 

 

 

 

[用語解説]

 

用語

解説

EGAO link

EGAO linkとは、パラマウントベッド株式会社・アイホン株式会社・株式会社ケアコネクトジャパン・住友電設株式会社と共同開発した、IoT/ICTプラットフォームであり、当社が運営する全ての介護付きホームに設置しています。EGAO linkは、ご入居者のベッド上の見守り・ナースコール対応・介護サービス提供の記録をスマートフォン上で対応することができるものです。

要介護

介護保険法に定義された、身体上又は精神上の障害があるために日常生活における基本的な動作の全部又は一部について常時介護を要する状態をいいます。

要支援

介護保険法に定義された、身体上若しくは精神上の障害があるために日常生活における基本的な動作の全部又は一部について常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、又は身体上若しくは精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態をいいます。

要介護・要支援認定

介護保険の給付を受けるため、要介護者又は要支援者に該当すること及びその該当する要介護・要支援状態区分について、市町村が行う認定のことをいいます。

特定施設

特定施設とは、厚生労働省が定めた介護保険法の基準(人員基準・設置基準・運営基準)を満たすものとして都道府県や市区町村に届け出て、特定施設入居者生活介護の事業指定を受けた有料老人ホーム等のことをいいます。

特定施設入居者生活介護

(介護付きホーム)

特定施設入居者生活介護とは、特定施設に入居している要介護者を対象として行われる、日常生活上の世話、機能訓練、療養上の世話のことであり、介護保険の対象となります。

特定施設入居者生活介護の指定を受けた事業所の通称を「介護付きホーム」といいます。

なお、介護付きホームは、他の有料老人ホームとは異なり、介護報酬が固定額であるため、事業者側から見ると安定的な収益が見込みやすい事業です。さらに、介護付きホームは、自治体による指定が必要なため、運営実績のない事業者には高い参入障壁となります。

一般社団法人

全国介護付きホーム協会

一般社団法人全国介護付きホーム協会とは、介護付きホームを運営する事業者を会員とする、行政との折衝、セミナーや研修の開催、情報提供及び地域活動を行う団体です。

2013年には当社代表取締役社長 兼 CEOの植村健志が理事に就任し(当時の名称は一般社団法人全国特定施設事業者協議会)、2015年からは副代表理事を務めております。

通所介護

(デイサービス)

通所介護は、当該デイサービスに通う利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の社会的孤立感の解消及び、心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体及び精神的負担の軽減を図るサービスをいいます。

デイサービスでは利用者の自宅から施設までの送迎も行います。

通所介護サービスや当該サービスの指定を受けた事業所の通称を「デイサービス」といいます。

短期入所生活介護

(ショートステイ)

短期入所生活介護は、当該施設に宿泊している要支援・要介護認定を受けた利用者に対して、利用者がその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活が営むことができるよう、利用者が短期間入所し、当該施設において入浴・排せつ・食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うサービスをいいます。

短期入所生活介護サービスや当該サービスの指定を受けた事業所の通称を「ショートステイ」といいます。

ドミナント戦略

特定の地域において集中的に事業所を展開する経営戦略を意味します。

 

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末の総資産は、15,952,381千円となり、前事業年度末と比べ1,207,639千円の増加となりました。これは主に、現金及び預金の増加1,691,499千円、売掛金の増加219,799千円、販売用不動産の増加515,236千円の一方で、仕掛販売用不動産の減少775,803千円、有形固定資産の減少663,698千円によるものであります。

この結果、当事業年度末における資産合計は15,952,381千円となり、前事業年度末と比べ1,207,639千円の増加となりました。

(負債)

 当事業年度末の負債合計は、13,572,355千円となり、前事業年度末と比べ692,551千円の増加となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金の増加1,251,214千円、契約負債の増加664,403千円の一方で、短期借入金の減少1,573,072千円によるものであります。

この結果、当事業年度末の負債合計は、13,572,355千円となり、前事業年度末と比べ692,551千円の増加となりました。

(純資産)

 当事業年度末の純資産合計は、2,380,026千円となり、前事業年度末と比べ515,087千円の増加となりました。これは、期末配当金の支払いによる利益剰余金の減少48,480千円、当期純利益の計上による利益剰余金の増加563,567千円によるものであります。

 この結果、自己資本比率は14.9%(前事業年度は12.6%)となりました。

 

②経営成績の状況

当事業年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の行動制限の緩和と経済活動の正常化が進んだことにより、雇用・所得環境が改善する下で緩やかな回復が続くことが期待されております。一方で、国際情勢は不安定さを増し、エネルギー価格や原材料価格の高止まりや為替の円安基調等の影響による消費者物価の高騰もあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。

介護業界におきましては、高齢化の進行、特に高齢者単独世帯や認知症高齢者の増加に伴い、引き続き都市部を中心に介護サービスのニーズは拡大する一方、生産年齢人口の減少により、人材確保が厳しさを増しており、業界全体の課題となっています。このような状況の中で、国は、令和5年度補正予算による介護職員処遇改善支援補助金の創設や令和6年度介護報酬改定における介護付きホーム等のプラス改定により、事業者を支援しています。

不動産業界におきましては、顧客ニーズの多様化、低金利環境等の下支えにより、分譲住宅は堅調な販売動向となりました。また、賃貸オフィスについても、集約や縮小の動きによる空室率上昇傾向に歯止めがかかりつつある状況です。

当社は、「世代を超えた暮らし提案型企業」を使命として、超高齢社会、生産年齢人口の減少などの社会環境の中で、あらゆる方々の「暮らし」の課題解決、幸せの追求に取り組んでまいりました。中核となるシニア事業においては、ご入居者・ご利用者の「望む暮らし」の実現に取り組んでおります。

介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)では、当社とベンダーで共同開発したIoT/ICTプラットフォームである「EGAO link®」の活用促進により、業務の効率化を図るとともに、創出された時間でご入居者お一人おひとりの個別ケアを追求してまいりました。また、自立支援に向けたエビデンス・ベースド・ケアの理解を深め、実践を積み重ねてまいりました。デイサービス・ショートステイにおきましては、「想いが叶うデイサービス」「想いが叶うショートステイ」のサービスコンセプトのもとに、個別のニーズに即したサービスを展開していくことで高い稼働率を保っています。

不動産事業につきましては、シニア事業運営の強みを活かし介護付きホーム等の超高齢社会に求められる価値ある不動産を開発する(シニア開発)のほか、安心・安全な街づくりに貢献すべく老朽化した共同住宅等を価値ある不動産に再生する事業を継続しております。

 

 当事業年度のセグメントごとの活動状況は以下のとおりです。

a.シニア事業

当事業年度は、2023年6月に介護付きホーム「アズハイム品川(99室)」を、2023年7月に介護付きホーム「アズハイム大田中央(71室)」を、2023年12月に介護付きホーム「アズハイム神宮の杜(72室)」を新たに開設いたしました。

当事業年度末における介護付きホームの事業所数は、東京都12事業所、埼玉県6事業所、神奈川県6事業所、千葉県3事業所の合計27事業所となっております。

当事業年度末におけるデイサービスセンターの事業所数は、東京都7事業所、神奈川県3事業所、埼玉県4事業所、千葉県1事業所、茨城県1事業所の合計16事業所、ショートステイの事業所数は、東京都2事業所、神奈川県1事業所、埼玉県1事業所の合計4事業所となっております。

また、介護付きホームにおける期中平均稼働率につきましては、開設2年超の既存22事業所では94.5%となり、全体27事業所で85.7%となりました。デイサービスの期中平均稼働率は83.0%、ショートステイの期中平均稼働率は105.6%となっております。

 以上の結果、当事業年度のシニア事業売上高は12,074,561千円(前期比11.8%増)、セグメント利益1,284,136千円(前期比2.8%増)となりました(セグメント間の内部取引を含む)。

 

b.不動産事業

シニア開発事業及びソリューション事業においては、土地建物販売(西蒲田PJ、上鷺宮PJ、高田馬場PJ、浮間PJ、赤羽西PJ、清水PJ、千石PJ、中央町PJ、上連雀PJ、石神井台PJ、西池袋PJ)、その他合計売上高4,836,506千円となっております。

 また、収益不動産事業につきましては王子、三橋、水戸、東尾久、木場、東日本橋、新柏、AH三鷹(内部取引)にて、受取賃貸料376,856千円を計上しております(セグメント間の内部取引を含む)。

 以上の結果、当事業年度の不動産事業売上高は5,213,363千円(前期比146.9%増)、セグメント利益1,170,085千円(前期比198.6%増)となりました(セグメント間の内部取引を含む)。

 

 以上の結果、当事業年度の当社全体の経営成績は売上高17,150,524千円(前期比34.2%増)、営業利益805,502千円(前期比300.6%増)、経常利益865,872千円(前期比254.2%増)、当期純利益563,567千円(前期比145.3%増)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ1,118,008千円増加し、2,897,892千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、3,432,729千円の収入(前事業年度は745,177千円の支出)となりました。これは主に、棚卸資産の販売に伴う棚卸資産の減少額が2,006,045千円(前事業年度は1,687,408千円の増加)となったことや、税引前当期純利益が863,590千円と前期比523,379千円の増加となったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、1,430,468千円の支出(前事業年度は707,644千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の売却による収入が、前事業年度は427,667千円ありましたが、当事業年度はなかったこと、及び、シニア事業における新規ホーム開設等のための土地取得及び建物建設等に伴う有形固定資産の取得による支出が前事業年度の1,106,936千円に対して、当事業年度は1,225,612千円であったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、884,252千円の支出(前事業年度は1,306,590千円の収入)となりました。これは主に、ソリューション事業における物件を仕入れる際の金融機関からの借入れ等の短期借入金の返済が、前事業年度は1,448,360千円でありましたが、当事業年度は3,310,172千円であったこと、及び、シニア開発事業等における長期借入金の返済が、前事業年度は616,632千円でありましたが、当事業年度は1,440,098千円であったことによるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

該当事項はありません。

 

b.受注実績

該当事項はありません。

 

c.販売実績

当事業年度の販売実績は以下のとおりです。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

シニア事業

12,074,561

111.8

不動産事業

5,075,963

255.7

合計

17,150,524

134.2

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

東京都国民健康保険団体連合会

1,793,946

14.0

神奈川県国民健康保険団体連合会

1,283,185

10.0

 

 

相手先

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

東京都国民健康保険団体連合会

2,177,306

12.7

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、当事業年度末における資産・負債及び当事業年度における収益・費用の報告数値並びに開示に影響を与える見積り及び仮定の設定を行っております。

 

 当該見積り及び仮定の設定に際しては、過去の実績や状況に応じて、合理的と思われる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性により、実際の結果はこれら見積りと異なる場合があります。

 詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 a.経営成績の分析

当事業年度の経営成績につきましては、売上高17,150,524千円(前年度比34.2%増)、営業利益805,502千円(前期比300.6%増)、経常利益865,872千円(前期比254.2%増)、当期純利益563,567千円(前期比145.3%増)となりました。

セグメントごとの経営成績等に関する分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載しております。

 

 b.財政状態の分析

「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載しております。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

 b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社における資金需要の主なものは、介護施設等の新規開設に伴う設備投資資金及び運転資金であります。運転資金としては、介護施設等の運転資金や納税資金等であります。資金需要につきましては、主として内部留保資金及び営業活動によるキャッシュ・フロー、また金融機関からの借入金も併せて対応してまいります。

 

④経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に含めて記載しております。

 

⑤経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析について

 当社は、事業を展開する各地域において、介護サービスを必要としている多くの方々にお客様それぞれのニーズに合わせて介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス及びショートステイをご利用いただくという点から、また、売上・収益に直結する指標でもあることから、稼働率を重要指標としております。

 なお、介護付きホームの稼働率は稼働室数÷総居室数、デイサービスの稼働率はのべ利用者数÷(総定員数×稼働日数)、ショートステイの稼働率はのべ稼働室数÷(総居室数×日数)であります。

前事業年度、当事業年度における稼働率の推移は次のとおりであります。

また、新規開設直後の介護付きホームの稼働率は低く、1年半から2年程度かけて稼働率95%達成を目指すことから、全事業所と開設2年以上の事業所とを分けて稼働率を算出しております。なお、デイサービス及びショートステイについては対象期間内に開設2年に満たない事業所が存在しないことから、開設2年以上の区分は省略しております。

介護付きホームについて、開設2年以上の事業所の稼働率は安定して稼働率94%を超えております。エリア別に見ると、競合との競争が激化している練馬区・杉並区等において稼働率の低下が見られ、当事業年度においては開設2年以上の事業所においても稼働率が90%を下回る事業所もあります。

 

介護付きホーム

 

前事業年度

(自2022年4月1日

至2023年3月31日)

当事業年度

(自2023年4月1日

至2024年3月31日)

期末総居室数(室)

1,613

1,855

期中平均稼働率(%)

90.3

85.7

開設2年以上の事業所の期末総居室数(室)

1,421

1,421

開設2年以上の事業所の期中平均稼働率(%)

94.3

94.5

 

デイサービス

 

前事業年度

(自2022年4月1日

至2023年3月31日)

当事業年度

(自2023年4月1日

至2024年3月31日)

定員数(人)

782

782

期中平均稼働率(%)

76.1

83.0

 

ショートステイ

 

前事業年度

(自2022年4月1日

至2023年3月31日)

当事業年度

(自2023年4月1日

至2024年3月31日)

定員数(人)

87

87

期中平均稼働率(%)

99.5

105.6

 

 また、全社的にはシニア事業と不動産事業を両輪として安定的に堅実に成長していくことが重要であると考えていることから、全社的な経営指標としては、営業利益としており、当事業年度における営業利益は805,502千円となりました。