リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社は、「リスク管理規程」に基づくリスクマネジメント・コンプライアンス委員会の機能で、リスク管理の全社推進とリスク管理に必要な情報の共有化を図っております。体制・枠組みに関しては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要 ト リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」をご参照ください。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)シニア事業について
① 介護保険制度による影響
当社のシニア事業の介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)事業、デイサービス事業及びショートステイ事業は、介護保険法に基づき、指定居宅サービス事業者等の指定を受けて運営を行っており、同法に基づく介護報酬が売上高の大部分を占めます。こうしたことから、当社のシニア事業は、介護保険法の影響を強く受けることにより、次のようなリスクがあります。
a.介護保険事業者に対する指導・指定取消し等の処分(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の事業の中心となる介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)事業は、介護保険法に定める居宅サービスのうち「特定施設入居者生活介護」に関して、都道府県知事等より「指定居宅サービス事業者」の指定を受け、介護報酬の給付を受けております。「指定居宅サービス事業者」の指定を受けるには、「指定居宅サービス等の事業の人員、設置及び運営に関する基準」(介護保険法に基づく厚生労働省令)を満たしている必要があり、その基準に達しないことで、監督官庁より行政処分を受けた場合には、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、デイサービス事業及びショートステイ事業においても、介護保険法に定める居宅サービスのうち「通所介護」及び「短期入所生活介護」において、都道府県知事等により「指定居宅サービス事業者」の指定を受けることが必要であり、各指定基準に達しないことで監督官庁より行政処分を受けた場合には、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
特に、介護保険法に基づき介護保険事業所の指定が取り消された場合に、その原因となった不正行為に法人の組織的関与が確認された場合には、「連座制」が適用され、当該事業者は当該サービス類型の事業所の新規指定や指定更新を受けることができなくなることとされています。
当社の介護付きホーム事業、デイサービス事業及びショートステイ事業は現在それらの基準をすべて満たしており、シニア事業部本社部門により人員、設備及び運営に関する基準や介護報酬のルールの遵守が徹底されています。さらに、内部監査室による内部監査により、それらの遵守状況を監査しております。
しかし、今後万が一、上記基準が満たせなくなった場合には、定められた介護報酬よりも減額される又は指定の一部効力を停止される等の可能性があります。そうした期間が長期間にわたる場合には、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。さらに「連座制」が適用された場合には、当該サービス類型の事業所の新規指定及び指定更新を受けることができず、収益計画に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
当社のシニア事業の各事業所が受けている指定は以下のとおりです。
許認可等の名称 |
所轄官庁等 |
許認可等の内容 |
有効期限 |
主な許認可取消事由 |
有料老人ホームの届出 |
厚生労働省 |
老人福祉法第29条第1項に基づく届出 |
なし |
老人福祉法第29条第16項(事業の制限・停止命令) |
特定施設入居者生活介護事業者の指定 |
厚生労働省 |
介護保険法第70条第1項に基づく居宅サービス事業者としての指定 |
6年間 (以後6年毎の更新) |
介護保険法第77条第1項(指定取消等) |
地域密着型特定施設入居者生活介護事業者の指定 |
厚生労働省 |
介護保険法第78条の2第1項に基づく地域密着型サービス事業者としての指定 |
6年間 (以後6年毎の更新) |
介護保険法第78条の10第1項(指定取消等) |
許認可等の名称 |
所轄官庁等 |
許認可等の内容 |
有効期限 |
主な許認可取消事由 |
通所介護事業者の指定 |
厚生労働省 |
介護保険法第70条第1項に基づく居宅サービス事業者としての指定 |
6年間 (以後6年毎の更新) |
介護保険法第77条第1項(指定取消等) |
短期入所生活介護事業者の指定 |
厚生労働省 |
介護保険法第70条第1項に基づく居宅サービス事業者としての指定 |
6年間 (以後6年毎の更新) |
介護保険法第77条第1項(指定取消等) |
※主な許認可取消事由の具体的事例
① 介護保険法令に基づく人員基準を満たすことができなくなったとき。
② 介護保険法令に基づく設備及び運営に関する基準に従って適正な事業運営をすることができなくなったとき。
③ 要介護者の人格尊重義務、法令遵守義務及び忠実職務遂行義務に違反したと認められるとき。
④ 介護保険費用の請求に関し不正があったとき。
⑤ 報告又は帳簿書類の提出若しくは提示命令に対する違反、又は虚偽報告をしたとき。
b.介護保険制度の改正について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
2000年4月1日に施行された介護保険法は、3年毎に各都道府県・各市町村において介護保険事業計画の見直しが行われるほか、近年は3年毎に介護保険制度全般に関して検討が加えられ、その結果に基づき必要な介護保険法の改正等が行われています。
各サービスの給付単価を決定する介護報酬についても、3年毎に居宅サービスに要する平均的な費用の額を勘案して検証され改定が行われるほか、消費税財源等に基づく介護職員の処遇改善のための臨時改定が行われています。
また、昨今の人件費や物価の高騰等の状況に対し、介護報酬は価格転嫁が難しい公定価格であることから利益を圧迫する要因となり得ます。
当社は、介護保険制度改正・介護報酬改定の動きに対し、一般社団法人全国介護付きホーム協会の活動を通じて事業者の実情や意見を厚生労働省等に伝え、不利な改正がなされないよう働きかけるほか、最新情報を入手して早めの対策を講じることで利益計画に対する影響を軽減しております。
なお、2024年4月の介護報酬改定では、人件費の高騰等を踏まえ、介護職員の処遇改善分+0.98%、その他の改定率+0.61%の合計+1.59%の改定が実現しております。
また、介護付きホームは介護報酬以外の家賃、管理費等の利用料を徴収することができる、介護報酬の依存度が低いサービスです。当社は、実際に家賃、管理費等の値上げも実施し、収益を維持しております。
しかしながら、今後、介護保険制度の改正により介護保険の給付範囲が制限されたり、介護報酬改定により給付単価が引下げられる等、介護事業者に不利な改正がなされた場合や想定以上の人件費や物価の高騰等が生じた場合には、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
今後のさらなる高齢化に伴い介護サービスへのニーズの高まりが推測され、同業他社の事業拡大や異業種からの新規参入のスピードが加速されるものと考えられ、競合激化により、当社介護付きホームの入居率の低下につながることも懸念されます。
また、2006年4月1日の介護保険法改正より続いている介護付きホーム(特定施設入居者生活介護)の総量規制が緩和された場合、当社においては介護付きホームの新規開設が進めやすくなる利点がある反面、競合が激化し当社介護付きホームの入居率の低下につながることも懸念されます。
当社は、地域の介護付きホームの需給や地方自治体の介護保険事業計画を見据えながら出店するほか、「EGAO link」により創出された時間を活かした個別ケア等のサービスの充実や機動的な営業戦略により高い稼働率を維持しております。
しかしながら、当社が事業展開している地域において当社の想定以上に介護付きホームの新規開設が増加した場合には、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 特定事業への依存に関するリスク(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の事業領域は介護業界のなかでも、介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)及びデイサービス(通所介護)に集中しております。介護業界は高齢化に伴う市場ニーズの増大により、今後もさらなる需要拡大が見込まれておりますが、国の財政及び介護保険財政を踏まえた介護保険法改正等の様々な外部の影響を受けることとなります。
当社は、介護付きホーム及びデイサービスは運営の自由度が高く、制度改正等の外部影響があっても、対応策を講じやすい制度であると考えております。
しかしながら、介護保険法の改正や介護報酬改定等によって、当社の想定以上の事業戦略からの転換を強いられた場合には、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
④ 従業員の確保について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)や「通所介護」の指定を受けたデイサービスには、人員に関する基準(配置基準・資格要件)が定められております。また、少子高齢化の進展による生産年齢人口の減少により、労働力不足が懸念されています。
当社では、事業規模の拡大に伴い、人材の確保・育成に向けて、業務負担軽減のためのIT機器の積極的導入、新卒採用の重点化とともに、キャリアパスの明確化や活躍に見合う処遇改善などの人事制度の見直し、教育研修制度の充実などの取組みを行っております。
しかしながら、このような施策の効果が充分に得られず、従業員の採用、定着や配置が進まない場合、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 新規介護付きホームの開設について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は事業拡大にあたり、今後も計画的な介護付きホームの新規開設を進めていく所存ですが、2006年4月1日の介護保険法改正に伴って施設開設に対する総量規制が行われていることから、介護付きホームの新規開設に当たっては、各都道府県・各市町村の事業計画に従った公募に対して、応募し選定を受ける必要があります。
当社は各都道府県・各市町村の動向やニーズを適宜把握しておりますが、計画のとおりに選定を受けることができなかった場合、当社の事業計画遂行に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 有料老人ホームにおける土地・建物に関する契約について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社が運営する介護付きホームは、土地及び建物の賃貸借契約において20年以上の契約期間を定めております。
原則としてその期間は解約ができないことから、当社にとっては安定かつ継続的に土地及び建物を賃借し運営でき、地域社会との信頼関係を築き稼働率の維持を図ることにより、当初の事業計画を進捗させることができます。
しかしながら、想定以上の競合の参入等により入居率の低下等に伴い入居者との利用料金の見直しが必要になった場合、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす場合があります。
⑦ 差入保証金について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は介護付きホームの新規開設における賃借時に保証金を差し入れております。差入保証金の残高は2024年3月31日現在904,592千円となっており、総資産に占める比率は5.7%であります。
当社は、新規開設の際の与信管理を徹底していますが、賃借先のその後の財政状態の悪化等によって、差入保証金の全部又は一部が回収できなくなった場合には、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ リース会計基準の改正について(発生可能性:高、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の介護付きホーム等のシニア事業所の多くは、土地及び建物を賃借して運営しております。それらの賃貸借契約の内容について、オペレーティング・リース取引として判断していることから、貸借対照表上、オフバランスとして処理をしております。
しかしながら、リース会計基準等の変更によりオペレーティング・リース取引の対象資産・負債を貸借対照表上、オンバランス処理することが検討されており、本基準の変更により、対象資産・負債が貸借対照表に計上されるとともに、当社の自己資本比率が現状より低下する可能性があります。
なお、2024年3月31日現在の該当の賃貸借契約に係る未経過リース料の総額は37,176,361千円であります。
⑨ 自然災害について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社は、本書提出日現在、首都圏において事業を展開しておりますが、これらの地域において予測不能な地震、風水害等の自然災害が発生し、介護付きホームやデイサービスセンターに影響が生じ業務を停止せざるを得ない状況や、建物や設備が損傷しその修復に多大な費用が必要となった場合、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、事業所ごとに「BCP指針(事業継続計画)」を策定し、災害発生時にはお客様及びスタッフの生命や生活を保護及び維持するための業務を優先して、その他の業務は縮小又は休止し、継続的にサービス提供できる体制を構築すること等を定めております。また、当該指針に基づき各事業所ごとに、定期的な教育・訓練を行っております。
⑩ シニア事業における事故対策・安全衛生管理について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の事業は高齢者を対象としているため、ご入居者が介護付きホームで生活をし、ご利用者がデイサービスセンターを利用する中で、転倒事故、入浴中の事故、誤薬事故等の危険性があると考えております。また、感染症の拡大や食中毒が発生する可能性もあります。
当社は、本社及び事業所が一体となって実践的な教育研修を行うほか、事故発生時の再発防止策を徹底することにより介助中の事故を防止する対策を講じています。また、手洗い、消毒剤等での手指消毒の徹底やご入居者の健康状態の悪化の随時把握による感染症の拡大の予防、食事提供の外注先である厨房委託業者への衛生管理の徹底など、安全・健康管理に取り組んでおります。
しかしながら、万が一介助中の重大な事故や感染症の拡大、食中毒等が発生した場合には、当社の信用が低下するとともに、訴訟等で損害賠償請求を受けるおそれがあり、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 虐待防止への取組みとリスク(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
高齢者虐待防止法では、養介護施設従事者等による身体的虐待、介護・世話の放棄・放任等の高齢者虐待の防止に関する取組みを求められており、当社は役職員を対象とした研修やマニュアルの整備等により、いかなる虐待も防止するように努めております。
しかしながら、虐待や不適切な身体拘束が発生した場合には、法令による処罰、訴訟の提起、社会的信頼の失墜等により、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑫ 個人情報の保護について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の事業を運営するにあたり、ご入居者、ご利用者、そのご家族等の重要な個人情報を取り扱っております。システム上の情報管理については、漏洩防止のため、ファイアーウォールによる外部ネットワークからのアクセス遮断、ウィルス対策ソフトによる保護を実施しております。また、パソコンの端末には、起動時のパスワード管理を実施しており、第三者が容易に起動させることができない設定となっております。またスマートフォン等についても、モバイルデバイスマネジメントによる統合管理を行っています。紛失等があった際もシステム管理者が遠隔にて機器の操作を行えるよう対応しています。また、書類の管理については鍵付きのキャビネットでの保管を徹底しております。
以上の対策を厳重に講じておりますが、万が一システム等から情報が流出し、当社の信用が低下した場合、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑬ 風評等の影響について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の事業は、ご入居者、ご利用者やそのご家族のみならず、地域住民や居宅介護支援事業所等の取引先など様々な方々からの信頼のもとに成り立っています。従業員には経営理念やコンプライアンスを浸透させ、安定的かつ質の高いサービスを提供するよう指導、教育を行っております。
しかしながら、ご入居者・ご利用者の尊厳を損なう事件や従業員の不祥事等により、社内、社外を問わず当社に対して不利益な情報や風評が流れた場合、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑭ 新型コロナウイルス感染症について(発生可能性:高、発生時期:現在、影響度:中)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、営業活動の自粛や利用控え等により稼働が低調に推移した場合、想定どおりの収益が確保できず、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社ではスタッフの感染症予防に加え、ご入居者、ご利用者、ご家族等に対しましても、ワクチン接種、検温等の健康管理や事業所来訪時の手洗い、手指消毒等の徹底により、ご入居者・ご利用者の健康維持、事業所内での集団感染の予防に努めています。
しかし、万が一事業所内で集団感染が発生した場合には、当社の信用が低下するとともに、介護付きホームの新規入居受入れの停止やデイサービスセンターの営業停止等により稼働率が低下し、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(2)不動産事業について
① 経済状況等の影響について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社が属する不動産業界は、景気動向、金利動向、地価動向、建設価格動向及び税制等の経済状況の影響を受けやすく、また土地相場の下落や金融機関の融資動向の変化により、需要動向が悪化した場合、購入者が住宅用地の購入を控えることにより、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、定期的に景気動向・不動産市況等の状況について各種経済指標等の動向を確認するとともに、金融機関や同業他社等から情報を収集することで、エリア・規模・物件特性等に応じたマーケット観を醸成し、臨機応変な計画の修正等の対応を行い、リスクの低減に努めております。物件取得に関しては、立地や価格に関して、売却想定価格等の出口を意識しつつ、より厳選した物件の取得を図ることでリスク低減に努めております。
② 法的規制について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の不動産事業は、宅地建物取引業法、建築基準法、都市計画法、借地借家法等、各種法令のほか各自治体が制定した条例等による規制を受けております。これらの法的規制や条例等が新たに制定又は改定された場合には、新たな負担が発生し、当社の業績や事業展開に影響を与える必要があります。
当社では、各種業界団体への加盟等により、必要な情報を的確に収集するとともに、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会を通じて、各種法令遵守体制の整備などを行っております。
③ 収益計上基準及び業績変動について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、物件をエンドユーザーや不動産会社に引渡しをした時点にて収益を認識しております。そのため、事業年度及び四半期ごとに業績を認識した場合、物件の引渡し時期に伴い、期ずれなどの業績偏重が生じる可能性があります。また、各物件のプロジェクトの進捗状況、販売計画の変更、その他不測の事態の発生による引渡し遅延があった場合には、計画していた時期に収益が認識できず、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、取締役会等において各プロジェクトの進捗を確認することにより、期ずれなど業績に影響が及ぼさないよう確認しております。仮に不測の事態が発生する場合には、代替物件の販売計画を前倒す等の対応策を講じます。
④ 在庫リスクについて(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、開発用地の仕入及び自社開発による介護付きホーム等の企画・販売を中長期的な経済展望に基づき実施し、物件の早期売却を図っております。しかしながら、急激な景気の悪化、金利の上昇及び不動産関連税制の影響により、販売が計画どおりに進まなかった場合には、介護付きホーム等の開発の遅延や土地在庫の滞留が発生し、資金収支の悪化を招く可能性があります。また、当社は「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号 2006年7月5日)を適用しておりますが、時価が取得原価を下回った販売用不動産、仕掛販売用不動産の評価損が計上された場合、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(3)その他のリスクについて
① 法令遵守・コンプライアンス体制、内部管理体制に関するリスク(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の法令遵守・コンプライアンス体制については、事業に直接関係する法令のみならず、近年、SNSによるトラブルが問題になるなど、企業が求められる企業倫理は多岐にわたります。そのため、社会的責任のある企業として遵守すべき法令全般につき、当社の全役職員が法令等・倫理に基づいた行動をとるよう、コンプライアンス研修の継続的な取組みを実施しており、日常的にコンプライアンス意識と行動の徹底を図っております。また、内部通報制度を整備運用して内部の不正を抑止するよう努めております。しかしながら、コンプライアンス上の問題に直面した場合には、法令による処罰・訴訟の提起・社会的信頼の失墜等により、当社の業績や財務状況に影響を与える可能性があります。
また、当社の内部管理体制については、企業価値の持続的な増大を図るにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要であると認識しております。その認識のもと、内部管理体制の一層の充実を図るべく、内部通報制度の運用や内部監査の実施、情報セキュリティ体制の構築等により、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでおりますが、急速な事業拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 資金調達について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、物件の取得及び建築工事等の事業資金を自己資金だけでなく、金融機関からの借入金によって調達しております。このため、市場金利が上昇する局面や、介護業界若しくは不動産業界又は当社のリスクプレミアムが上昇した場合には、支払利息等が増加し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、事業資金を調達する際には、特定の金融機関に依存することなく、個別の物件毎に金融機関に融資を打診しており、現時点では安定的に調達ができております。しかしながら、当社の財政状態が著しく悪化する等により当社の信用力が低下し、安定的な融資が受けられないなど、資金調達に制約を受けた場合は、物件の取得や建築工事等の発注に支障をきたし、当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 資金使途について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社は東京証券取引所スタンダード市場への上場に伴う公募増資資金に関しまして、新規事業所の開発を含む設備投資、運転資金及び借入金の返済に充当する予定でおります。しかしながら、新規事業の発足や経営環境の変化により、投資効果が期待のとおりの成果を上げられない場合や、より投資効果が見込める使途等が生じた場合には、現時点の資金使途計画以外の使途に充当する可能性があり、そうした場合は当社の財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
④ 利益還元について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題と認識しており、企業体質の強化と将来の事業展開のために内部留保を確保しつつ、安定的かつ継続的に業績の成長に見合った成果を配当することを基本方針としております。今後も、事業計画に沿った利益を計上することを前提として財務体質の強化を図り、財政状態及び経営成績を勘案しながら、配当を実施してまいります。しかしながら、当社の業績が計画どおり進展しない場合等、当社の業績が悪化した場合には、継続的に配当を実施できない可能性があります。
⑤ 特定個人の大株主との関係について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社の代表取締役社長 兼 CEOである植村健志は、当社の大株主であり、資産管理会社である株式会社ブレスの所有株式数を含めると、当事業年度末で発行済株式総数の59.1%の議決権を所有しております。同氏は、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求すると共に、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。また、当社と致しましても、同氏は安定株主であると認識しておりますが、将来的に何らかの事情により、大株主である同氏の株式が減少した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は取締役会、経営会議等による役員や幹部社員間の情報共有のみならず、これまでの経営方針・事業戦略の実績の蓄積、業務の標準化・マニュアル化等、当社の代表取締役社長 兼 CEOである植村健志に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかし、当社の代表取締役社長 兼 CEOである植村健志は、当社の創業者として経営方針や事業戦略を牽引する重要な役割を担っており、当社の業務を継続することが困難になった場合には、当社の業績や将来の成長性に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社は、当社の役員、従業員に対するインセンティブを目的として、ストック・オプションによる新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が行使された場合、既存株主が有する株式の価値及び議決権割合が一定程度希薄化する可能性があります。また、今後も優秀な人材確保のために同様のインセンティブプランを継続して実施する可能性がありますが、優秀な人材確保は企業価値、株主価値の向上に寄与するものと見込まれ、本インセンティブプランの実施による希薄化の影響以上に株主の利益にも資するものと判断しており、また、希薄化規模は合理的であると考えております。さらに、新株予約権の行使により取得した株式が市場で売却された場合は、需給バランスに変動を生じ、適正な株価形成に影響を及ぼす可能性があります。なお、当事業年度末において、これらの新株予約権による潜在株式数は74,500株であり、発行済株式総数3,030,000株の2.5%に相当しております。
⑦ 固定資産の減損に係るリスク(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」を適用しております。介護事業所等の新規開設時や不動産事業の収益事業における固定資産の取得時において、社内の開設基準に基づいた評価プロセスを経て意思決定を行うとともに、開設後においてもその実績が計画どおりであるかをモニタリングし、減損に関するリスクの低減に努めております。しかし今後、資産の利用状況及び資産から得られるキャッシュ・フローの状況等の悪化が継続し、減損処理が必要となった場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 有利子負債への依存度について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社は介護付きホームの新設に伴う設備投資資金及び不動産事業に係る投資資金を主として金融機関からの借入により調達しております。総資産に対する有利子負債残高の割合(有利子負債依存度)は次表のとおりであります。
このような状況の中、金融情勢の変化などにより計画どおりに資金調達ができず、計画的な介護付きホームの開設及び不動産事業に係る新規投資が困難となる場合や市場金利の上昇により資金調達コストが増加した場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
|
前事業年度 |
当事業年度 |
有利子負債残高(千円) |
6,487,016 |
5,656,458 |
総資産残高(千円) |
14,744,742 |
15,952,381 |
有利子負債依存度(%) |
44.0 |
35.5 |
(注)1.有利子負債残高は借入金、社債及びリース債務の合計であります。
2.有利子負債依存度は、有利子負債残高を総資産残高で除した数値を記載しております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題と認識しており、企業体質の強化と将来の事業展開のために内部留保を確保しつつ、安定的かつ継続的に業績の成長に見合った成果を配当することを基本方針としております。
当社は、期末配当の年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。
内部留保資金につきましては、当社の中長期経営計画に従って、経営基盤の強化、事業拡大のための設備投資及び人材の確保・育成等に充当していく予定です。
上記方針に基づき、剰余金の処分につきましては、当事業年度業績並びに今後の事業展開を勘案し、当社普通株式1株につき金38.00円といたしました。
当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (千円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年6月28日 |
115,140 |
38.00 |
定時株主総会決議 |
なお、当社は、会社法第454条第5項の規定に基づき「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。
配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。