2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    248名(単体) 8,365名(連結)
  • 平均年齢
    43.7歳(単体)
  • 平均勤続年数
    12.3年(単体)
  • 平均年収
    9,306,344円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

総合エンジニアリング事業

6,332

(1,870)

機能材製造事業

1,128

(308)

その他の事業

469

(65)

全社(共通)

436

(113)

合計

8,365

(2,356)

 

(注)1.従業員数は、就業従業員数を記載しております。

2.「従業員数」欄の( )内は、外数で平均臨時雇用者数(派遣受入者数等)を記載しております。

3.全社(共通)として記載されている従業員数は、持株会社である当社及び当社グループより委託される人事、財務、情報技術、法務等に係る業務及び管理を行う日揮コーポレートソリューションズ株式会社の従業員数であります。

 

(2) 提出会社の状況

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

248

(60)

43.7

12.3

9,306,344

 

(注)1.従業員数は、就業従業員数であり執行役員(副社長執行役員を除く)(10名)を含み、関係会社等へ

の出向者(29名)を含んでおりません。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.「従業員数」欄の( )内は、外数で平均臨時雇用者数(派遣受入者数等)を記載しております。

4.提出会社の従業員は、全て全社(共通)に属しております。

 

(3) 労働組合の状況

労働組合は結成されておりません。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

当事業年度

 

管理職に占める

女性労働者の割合

(%)

(注)2、3、4

男性労働者の

育児休業取得率

(%)

(注)5、6

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)2、7

全労働者

正規雇用労働者

パート・

有期労働者

(注)8、9

当社

4.1

77

59.2

60.3

36.6

日揮コーポレートソリューションズ㈱

16.7

55.2

59.5

13.7

日揮グローバル㈱

1.9

62

66.8

67.5

28.8

日揮㈱

1.4

46

63.4

63.6

47.3

青森日揮プランテック㈱

67.8

75.5

44.7

日揮触媒化成㈱

2.7

72

78.5

85.3

61.0

日本ファインセラミックス㈱

100

74.2

82.0

123.8

JFCマテリアルズ㈱

100

81.0

103.0

-

日揮ビジネスサービス㈱

57.1

58.1

65.7

39.4

日本エヌ・ユー・エス㈱

15.6

100

73.1

78.6

48.9

 

 

(注)1.提出会社及び主要な国内連結子会社を対象としております。

2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

3.2025年3月31日時点の数値であります。

4.一部の連結子会社については、管理職の女性労働者はおりません。

5.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

6.一部の連結子会社については、育児休業等を取得した男性労働者はおりません。

7.職群及び等級の男女構成比の差によるものであります。

8.相対的に勤務時間が短い、業務範囲が限定的等の理由により平均賃金が低い嘱託及びパートタイム労働者に女性が多いことによります。

9.一部の連結子会社については、該当する男性労働者がいないため、記載しておりません。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(1)基本方針」に記載の「JGC's Purpose and Values」に基づき、サステナビリティに関する取組みを通じて企業価値の持続的な向上を図るために、「サステナビリティ基本方針」を定め、環境、社会、ガバナンス、品質、安全、健康の分野での活動において、サステナビリティを積極的に追求しております。なお、2024年1月には、国連グローバル・コンパクトへ署名し、同イニシアチブが定める人権・労働・環境・腐敗防止4分野10原則を遵守・実践していくことを宣言しております。

当社グループでは、「サステナビリティ基本方針」を踏まえ、GRIガイドライン、ISO26000、SDGsなどの国際ガイドラインの内容や世界のマクロトレンドの分析を踏まえ、社会的課題の抽出を行いました。そのうえで、社会・ステークホルダーにとっての重要度と当社にとっての重要度を総合的に評価し、当該社会的課題から優先的に取り組むべき6つの重要課題(以下、「マテリアリティ」という。)を以下のとおり特定しております。当社グループでは、下記(2)にて後述する項目が、これらの社会課題におけるマテリアリティと関連する当社グループにとっての重要なサステナビリティ項目と考え、対応しております。

 


 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループでは、代表取締役会長を委員長とするサステナビリティ委員会(事務局:当社戦略企画オフィス経営企画ユニット)を設け、年3回の定例開催に加え、適時の臨時開催を通じて、気候変動や人的資本を含むサステナビリティ分野に関する方針や行動計画の策定、推進、評価及び改善に係る審議を行うとともに、取締役会への年1回の定期報告に加え、内容に応じた適時の附議・報告を行うこととしております。

また、当委員会策定の方針や行動計画の実施を推進するため、当委員会の委員である当社グループ各社社長の指名により、各社にサステナビリティ推進委員を置き、推進委員間の連絡・調整・意見交換を目的に、サステナビリティ推進連絡会議を設置しております。

リスク管理については、機会も含め、サステナビリティ委員会にて審議の対象とする他、代表取締役副社長執行役員が委員長を務める原則年2回開催のグループリスク管理委員会において、サステナビリティに関するリスクを含むグループのリスク全体の把握・整理、リスク管理システムの維持・構築、改善の提案・審議を行っております。これら委員会の詳細については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治体制の概要」に記載しております。

なお、サステナビリティ項目への対応と役員報酬の関連については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等」に記載のとおり、ESGへの取組みを含む長期経営ビジョン及び中期経営計画実現のために果たすべき職責等を踏まえ、業績連動報酬額決定に必要な個人評価を総合的に行っております。

 


 

(2)重要なサステナビリティ項目

当社グループでは、上記のガバナンス及びリスク管理体制の下、以下の4項目(①気候変動への対応、②人的資本への取組み、③人権対応及び④労働安全衛生)を当社グループにとっての重要なサステナビリティ項目として対応しております。なお、4項目のうち、②人的資本への取組み及び④労働安全衛生に関するガバナンス及びリスク管理については、事業内容によって適切な対応が異なり、各社において既存の体制が整っていることから、一義的には各社又は事業セグメント毎による対応を基本とし、当社として上記体制の下、主にそのモニタリングを行っております。また、機能材製造事業については、当社機能材製造事業オフィス機能材製造事業ユニット(2025年4月1日付で当社戦略企画オフィス経営企画ユニットより独立し新設)が総合窓口となり、上記体制の下、当社へ適時適切に報告が行われる仕組みを整備しております。

また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 気候変動への対応

持続可能な社会の実現に向けて、気候変動への対応は世界的な課題となっております。当社グループは、気候変動への対応は、当社が優先的に取り組むべき社会的な重要課題としてのマテリアリティである「環境調和型社会」への対応であるとともに、「エネルギーアクセス」及び「生活の質の向上」にも貢献するものと考えております。また、気候変動への対応については、当社は、CDP報告をはじめとして、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のガイドラインを踏まえた開示を行っております。

当社グループの気候変動対応の責任者は代表取締役会長兼社長であり、上記サステナビリティ委員会の主宰等を通じ、気候関連のリスクと機会を評価・管理するとともに、当社グループの経営戦略や経営目標に反映させる責任を負っております。具体的には、サステナビリティ委員会のもとに「GHG算定分科会」(旧「CDP回答分科会」)及び「CO2削減分科会」(旧「CO2削減計画策定分科会」)の2つの分科会を設け、当社グループの温室効果ガス(以下、「GHG」という。)排出の現状及びCO2削減に関する対応状況についての報告を受けるとともに、気候変動に関するリスクに対する低減と未然の防止に係る審議を行っております。

なお、当社グループでは、国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook 2020年版のデータをベースとし、STEPS(物理シナリオ)及びSDS(移行シナリオ)に準拠する複数のシナリオ等を前提に2040年をターゲットとして行った分析を通じて気候変動に関するリスク及び機会の影響を評価し、重要度の高いものを以下のとおり認識しております。

 

<気候変動に関する主なリスク>

新たな規制リスク

グローバルなカーボンプライシングの導入は資機材コストや燃料の高騰につながり、将来、事業コストに影響を及ぼす可能性がある。

また、炭素税の導入、各国の炭素排出目標の強化などは、オイル&ガス分野におけるプラント需要の減少によって受注機会が減少するリスクになり得ると認識している。

技術リスク

電気・燃料電池自動車の普及によるガソリン需要の減少や脱炭素素材の普及、また、高性能蓄電池の普及によって再生可能エネルギーへのシフトが進むことは、オイル&ガス関連プラント需要の減少につながる可能性がある。

法的リスク

気候変動対策に関する情報開示等の法的義務が拡大することが想定され、報告等の義務負担が増加し、また、当該義務違反があった場合、罰則及び建設に係る許認可が失効するなどのリスクがある。

市場リスク

オイル&ガス関連プラント需要の減少によって、受注機会が減少する可能性がある。

また、金融・資本市場の化石燃料関連ビジネスに対する忌避がプロジェクトの成立に影響を及ぼすリスクもある。

レピュテーションリスク

低炭素化、再生可能エネルギー、水素関連など気候変動対策に貢献する技術力を有する企業としての評価の維持・向上を怠った場合には、受注機会、資金調達、人財確保などの諸側面で悪影響が生じるリスクがある。

緊急性の物理的リスク

豪雨や暴風雨、台風、洪水など、地球温暖化に起因するとされる極端な気象現象が増加することによって、資機材・当社グループの施設への物理的被害、従業員に対する人的な被害に加え、資機材調達の遅延も含め事業に影響を与えるリスクがある。

慢性の物理的リスク

上昇する平均気温により、温帯・熱帯地域での建設現場の労働生産性の低下による工期延長が一般化し、プロジェクトコストが嵩むため顧客の投資判断に影響する可能性がある。

また、労働安全リスクの増加による対策費用及び災害補償費用の増加も懸念される。加えて、沿岸地域での海面上昇が発生した場合、港湾が使えなくなることによる輸送コストの上昇リスクがある。

 

 

 

<気候変動に関する主な機会>

製品・サービス

国内外で複数の実績を有するCCS(CO2の回収・貯留)及び他社と共同で開発を進めているCCUS(CO2の回収・有効利用・貯留)の技術をオイル&ガス分野に応用することにより、同分野のプラント需要を喚起し、受注機会の増加につながることが期待できる。

太陽光発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギー発電設備について、当社グループは多数の実績を有しており、脱炭素化に向かう国際社会の流れのなかで受注機会の増加が期待できる。

脱炭素社会に向けてCO2を排出しない水素、アンモニア、小型モジュール原子炉(SMR)などの分野について、当社グループは技術開発含め、様々な取組みを進めてきており、今後受注機会の増加が期待できる。

当社グループが開発を進めている、廃プラスチックケミカルリサイクル、廃繊維リサイクル、持続可能な航空燃料(SAF)などの技術に関して、世界的な資源循環ニーズの高まりに伴う需要の拡大が期待できる。

 

 

上記のリスク・機会の評価を踏まえ、長期経営ビジョン「2040年ビジョン」においては、エネルギートランジション、資源循環及び高機能材のうち下記を注力分野と位置付け、中期経営計画「BSP2025」に基づいて着実にビジネスを推進しております。

当連結会計年度においては、「低・脱炭素オイル&ガス」に関連する取組みとして、ADNOC(アブダビ国営石油会社)向け大型低炭素LNGプラント建設プロジェクトを受注しました。本プロジェクトでは、原料である天然ガスを圧縮するコンプレッサーの駆動に、従来のガスタービンを使用するのではなく、クリーン電力を使用する電動モーターによる「E-Drive」を採用することで、プラント操業時のCO2排出低減に最大限配慮した低炭素LNGプラントとなる予定です。

また、当社の連結子会社であるPT. JGC INDONESIAを契約主体に、BP Berau, Ltd.向けタングーEGR/CCUSプロジェクトにおける陸上設備の設計、調達、建設及び据付プロジェクトを受注しました。本プロジェクトでは、天然ガスの生産に伴い排出されるCO2を回収し、ガス田に再圧入・貯留することで、CO2の排出削減と同時に天然ガスの生産効率向上・増産を図ります。

さらに、2023年9月発行のグリーンボンド対象のグリーンプロジェクトについて、当社が47%の持分比率により出資する「合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY」の国内初となる国産SAF大規模製造プラントが竣工した(国内外エアラインへのSAF供給は2025年4月より開始)他、日本ファインセラミックス株式会社がパワー半導体向け高熱伝導窒化ケイ素基盤の増産に向けた新工場の建設、また当社がバイオものづくり事業の確立に向けた「統合型バイオファウンドリ®」の研究基盤となる研究棟の建設を進めております。

※統合型バイオファウンドリは、株式会社バッカス・バイオイノベーションの登録商標です。


 

加えて、リスク及び機会に関する最重要指標であるGHG排出量に関し、中期経営計画「BSP2025」において、下表のとおり、GHG排出量(Scope1+2)について「2050年ネットゼロ」を宣言するとともに、2030年度までの売上高当たり排出量の2020年度比30%削減を目指すこととしております。

実績については、前連結会計年度である2023年度(2023年4月~2024年3月)のScope1+2のGHG排出量は133,695トンCO2であり、2022年度比では総合エンジニアリング事業において増加したものの、機能材製造事業での削減により、全体では微減となりました。目標とする売上高当たりの排出量(原単位ベース排出量)については、基準年度(2020年度)から47%の削減となりました。また、2023年度のScope3排出量(カテゴリー11及び関連性がないと認識したカテゴリーは除く) は1,497,309トンCO2であり、2022年度比で遂行中の大型EPCプロジェクトの工事進捗率が高くなったため、特にカテゴリー1における排出量が増加しました。

なお、 Scope1+2の排出量実績はいずれも、当社グループ内の主要な排出源と排出量を特定し、削減策を講じることを目的として算出したものであり、主要な排出主体である当社、日揮コーポレートソリューションズ株式会社、日揮グローバル株式会社、日揮株式会社、日揮触媒化成株式会社、日本ファインセラミックス株式会社及び日本エヌ・ユー・エス株式会社による各社独自の算定に基づく排出量の合算です。これら排出量実績については、グループ統一の算定枠組みの整備や連結会社への展開を含む網羅性の改善など、その信頼性の向上に引き続き取り組むとともに、報告対象年度の会計年度との一致についても取り組んでまいります。

また、本排出量実績算出の前提やScope3カテゴリー別排出量の内訳などの詳細については、国際的な気候変動関連の情報開示の枠組みであるCDP2024への当社からの報告(当社ウェブサイト サステナビリティ>環境への取り組み>気候変動への取り組みに掲載)をご参照ください。

 


 

② 人的資本への取組み

「人権の尊重・働きがい」をマテリアリティと認識し、人的資本を重要な経営基盤と位置付ける当社グループにおいて、人的資本への取組みは経営戦略と連動する重要テーマです。取締役会の指名を受け、当社グループの戦略的な人事施策の策定と実装を牽引するCHRO (Chief Human Resource Officer) のイニシアチブのもと、前連結会計年度に当社グループの中核である総合エンジニアリング事業を担う、或いはこれに関連する当社、日揮グローバル株式会社、日揮株式会社及び日揮コーポレートソリューションズ株式会社(以下、「エンジニアリング関連4社」という。)を対象として、当社グループの長期経営ビジョン「2040年ビジョン」をはじめとする経営戦略や事業戦略実現のために必要な人財要件や人財数を特定するための人財ポートフォリオと、人財ポートフォリオ実現のための新たな人事戦略である「人財グランドデザイン2030」を策定し、当連結会計年度はこれを推進しました。

 


 

なお、当社では「人財グランドデザイン2030」をはじめとする経営戦略と連動した人事戦略について、エンジニアリング関連4社社長及びCHROほかを委員とするグループHRM委員会(エンジニアリング関連4社における人財関連の審議機関)にて審議し、同委員会のもとに設置したHRO会議及び各社HROが、各社の事業戦略と連動した人事戦略を推進する体制を取っております。

「人財グランドデザイン2030」では、以下の図に示すとおり、2030年時点で目指す組織像を「統合力で未来を切り拓きやり遂げるプロ集団」として定め、その姿を実現するためには、M(Management System):「タレントマネジメントシステムの構築」、O(Onboarding):「多様な人財の採用と即戦力化」、D(Development):「自律成長を促す人財開発・職場環境整備」、E(Engagement):「会社と個人の共通目的発見と理解促進」、L(Life & Work):「社員の物心両面の充足」の5つ(MODEL)を達成することが必要と考え、当連結会計年度より、そのための具体的な施策を策定し、順次推進しております。なお、これらエンジニアリング関連4社の人事施策については、人財ポートフォリオに基づく従業員の属性データや採用人数の推移、組織診断サーベイの結果等を定期的にモニタリングし、必要に応じて施策の検討や見直しを行うこととしております。

また、当連結会計年度末時点では、かかる人事戦略はエンジニアリング関連4社を対象としておりますが、各社の状況を考慮しながら、順次、他の当社グループ会社にも拡大していく予定です。

 

 


 

エンジニアリング関連4社の人財育成については、「人財グランドデザイン2030」で定めた目指す組織像「統合力で未来を切り拓きやり遂げるプロ集団」を実現するため、「自ら変化を起こし続ける人財」を継続的に輩出することを人財育成方針として掲げております。具体的には、以下のとおり「人財グランドデザイン2030」におけるD(Development)に関して、若手社員を対象とする戦略的なOJT制度や、階層別研修をはじめとした各種Off-JT研修及び自己啓発を促進する制度等を設けて推進しているほか、O(Onboarding)やE(Engagement)等に係る各種施策に取り組み、本方針を推進しております。

・ 若手社員の早期戦力化に向け、OJT制度を基軸としたキャリアディベロップメントプラン(CDP)、指導員制度、現場派遣制度等、実践を通じた成長支援制度を実施しております。

・ キャリア採用者に向けては、入社後の定着と活躍を支援する「オンボーディングプログラム」を導入し、入社時オンボーディング研修やネットワーキングプログラムに加え、定期的なサーベイを通じてフォローアップを行うなど、サポート体制を強化しております。

・ 全部長を対象に当連結会計年度より「部長Upgrade Program」を実施しており、人財育成を担う部門マネジメントのさらなる能力向上を通じて、人財育成の強化を図っております。

・ 自己啓発支援としては、自律的に学び合う風土醸成とネットワーク構築に資する「日揮テクノカレッジ」を展開し、社内のチーフエンジニアやプロジェクトマネージャーなどの講師から技術を教わることに加え、社外の有識者を招き、日常業務では習得しにくい幅広い分野の知見を得る機会や、社員同士が学び合う場を提供しております。その他、技術力及び遂行力向上を目的とした自社e-Learning「JGC University」や、幅広いビジネススキルの習得を支援する通信教育を導入し、社員が主体的に学べる環境を整備しております。

そのうえで、すべての従業員が最大限に能力を発揮し、組織としてパフォーマンスを発揮できる風土を醸成するため、組織開発に係る各種施策にも注力しております。具体的には、ダイバーシティマネジメント研修、異文化コミュニケーション講座等、Inclusion & Diversityや多様性・相互理解を深める研修を実施しております。また、エンジニアリング関連4社では、部署や世代を跨ぐコミュニケーションの促進を目的に、前連結会計年度よりネットワーキングプログラムを導入し、キャリア採用者や新卒採用者などを中心にセッションを定期的に開催することで、社内のネットワークの構築につなげております。その他、人と組織に関する当社主催のイベント「People Day」を当連結会計年度から開催しており、役員から社員まで幅広く参加し、当社グループの一体感の醸成につなげております。

さらに、当社グループでは、長期経営ビジョン「2040年ビジョン」のもと、事業環境の変化に合わせ、ビジネス領域、ビジネスモデル及び組織のトランスフォーメーションを進めており、当社グループで働く従業員が、今後益々多様化していくことを想定しております。社内環境整備方針は、すなわち「Inclusion & Diversity基本方針」(https://www.jgc.com/jp/about/policies.html)であり、多様化する従業員一人ひとりが、能力と活力を最大限に発揮して自分らしく活き活きと働くことができるよう、「日揮グループに集うすべての人に敬意をもって接し、国籍・人種・年齢・障がい・ジェンダー・宗教などを問わず、異なる意見・経験を尊重」すること、「多様な人財一人ひとりの能力と活力を最大限に引き出す風土を大切にし、それを可能にする制度を拡充」すること等を掲げております。具体的には、「人財グランドデザイン2030」におけるD(Development)やL(Life & Work)等に係る取組みを中心に、かかる社内環境整備方針を推進しております。当連結会計年度においては、エンジニアリング関連4社の人事部門と、サステナビリティ委員会のもとに設置されているインクルージョン&ダイバーシティ分科会が連携し、エンジニアリング関連4社を対象にInclusion & Diversityへの理解促進を目的に国際女性デーイベントへの参加やワークショップを実施しました。また、総合エンジニアリング事業における建設現場駐在の魅力度を高める施策として、海外駐在においては駐在サイクルや一時帰国休暇サイクルを短縮、国内駐在においては、全従業員が月2回帰省できるようにするなど、より働きやすい環境を整えております。こうした社内環境整備が進むことで多様な働き方が受容されるようになると考えており、その状況を測る指標の1つに男性労働者の育児休業取得率を用いております。その実績は「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載のとおりです。従来から従業員が意見や希望を言いやすい風土が根付いており、男性従業員の育児休業取得については、今後も一人一人のライフステージや希望を尊重してまいります。また、人財の多様性の観点から、女性管理職者数については、エンジニアリング関連4社に所属する従業員を対象に、2025年度末時点の女性管理監督者数を2020年(30名)の2倍に増やすことを目標として掲げております。その実績は、当連結会計年度末時点で53名となっており、今後も積極的に女性の管理職への登用を図ってまいります。

※当社は「労働基準法」(昭和22年法律第49号)の「管理監督者」の定義に従った目標設定をしており、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載の「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の「管理職」の定義とは異なります。

 

機能材製造事業における人財育成や社内環境整備については、エンジニアリング関連4社と事業内容が異なっている等の観点から、当社グループが現在の持株会社体制に移行する以前には同一会社であったエンジニアリング関連4社とは異なる、両機能材製造事業会社固有の人事制度体系・制度での運用を継続しております。触媒・ファインケミカル製品の開発・製造を行う日揮触媒化成株式会社では、同社が目指す「技術立社」の実現に向けて、社内教育プログラム「モノづくり大学」や「育成計画」を設け、若手・中堅人財の育成に注力しております。ファインセラミックス製品の開発・製造を行う日本ファインセラミックス株式会社では、今後の生産能力の拡大に向けて、階層別のOff-JT研修や工場でのTPM(Total Productive Management)活動の推進によるOJTなどによる育成施策の強化に加え、工場で勤務する従業員の働きやすさを重視した休暇制度等の人事制度の見直しに取り組んでおります。

 

 

③ 人権対応

人権対応は、当社が優先的に取り組むべきと考える社会課題(マテリアリティ)である「人権の尊重・働きがい」と直接結び付くとともに、当社グループ、特に中核事業である総合エンジニアリング事業には当社グループ内外を含め数多くの「人」が関わっており、当社グループの事業は「人」で成り立っていることから、人権尊重は当社ビジネスの基盤であり、人権尊重の取組みは当社グループの事業活動の根幹に関連する重要なテーマと認識しております。当社グループは、このような人権尊重に対する考えのもと、「国際人権章典」、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」等の国際的に認められた人権原則に基づき、当社グループの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権を尊重できるよう取組みを進めております。

従来、当社グループの人権対応は、当社ガバナンス統括オフィスコンプライアンスユニットが中心となり、当社グループ各社の役職員に対して「日揮グループ行動規範」及び「日揮グループ人権基本方針」の周知徹底を以って人権尊重の意識向上を図ってまいりましたが、2024年9月、当社取締役会にて新たに「日揮グループ人権規程」を制定し、代表取締役社長の監督のもと、コンプライアンスユニットが当社グループ各社と協力のうえ、当社グループ全体の人権対応を推進する組織体制を明記しました。

また、コンプライアンスユニットは、サステナビリティ委員会のもとに設置されるグループ会社横断の人権対応分科会の事務局も兼務しており、定期的に分科会を開催し人権対応について協議を行っております。当連結会計年度は分科会を3回開催し、コンプライアンスユニットが取り組む人権対応の進捗や今後の対応方針を共有した他、分科会メンバーである建設部門や調達部門の担当者との間でサプライヤー調査について意見確認を行いました。

 


 

前連結会計年度まで、当社グループは国連のビジネスと人権に関する指導原則などの国際スタンダードを踏まえて政府が定める「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に基づき、人権リスクマップをもとに特定・評価した人権課題に対してリスク低減措置を検討・実施し、その効果を検証して情報開示を行うという人権デューデリジェンスプロセスの構築に取り組んでまいりました。当連結会計年度は、引き続き国内外のEPC事業に対する人権リスク低減措置の検討・実施に取り組み、国内向け発注契約への人権条項の追加、当社グループ行動規範のeラーニング研修の対象会社の拡充を行いました。また、より人権リスクが高いとみなされる海外におけるEPC事業に対しては、当社グループ外ベンダー及びサブコントラクターなどのサプライヤーにおけるプロジェクト現場での労働者の強制労働(外国人・移民労働)や労働安全衛生を人権課題として特定・評価しました。2025年度は、これらの課題に対するリスク低減措置として、ベンダー及びサブコントラクターへの質問票の送付や建設現場での調査を人権リスクが高いとみなされる地域から優先的に実施する予定です。さらに、機能材製造事業会社においても人権デューデリジェンスの取組みを開始すべく、当連結会計年度から当該事業における人権リスクマップを作成し、引き続き当社グループ全体に人権デューデリジェンスのプロセスを展開してまいります。

 


 

④ 労働安全衛生

労働安全衛生の追及は、当社が優先的に取り組むべき社会的な重要課題としてのマテリアリティである「人権の尊重・働きがい」、そして「ガバナンス、リスク対応」にも関連する重要なサステナビリティ項目と考えております。当社グループでは、Health(衛生)、Safety(安全)、Security(セキュリティ)、Environment(環境) (以下、「HSSE」という。)を常に追求すべき企業価値と捉え、当社グループのみならず、協力会社を含む、国内外事業所や建設現場などで働くすべての人を対象に、「すべての人が、健康で安心して働き、家族のもとへ無事帰る」というグループ共通のHSSE基本理念を制定し、当社グループを挙げてHSSEのパフォーマンス向上に取り組んでおります。

本理念に基づき、当社グループでは、従来より主要な事業会社において各々の事業内容・特性に即した安全衛生方針を掲げ、下表のとおり安全衛生委員会又はHSSE委員会を設置し、労働安全衛生管理体制を構築・運用しており、HSSEに係る重要テーマを識別・評価の上、対処するとともに、安全衛生上のリスクを低減する活動を展開しております。

 


 

総合エンジニアリング事業では、日揮グローバル株式会社、日揮株式会社ともに各々HSSE委員会を月次で開催し、潜在的危険や実際の事故実績に基づく予防策や対応策の検討に加えて、グッドプラクティスの共有等を行っております。また、建設現場においても、建設工事に従事する多数の作業員を動員する協力会社とともに、各建設現場独自の委員会を設置して、協力会社を交えて労働安全衛生のパフォーマンス向上に取り組んでおります。なお、重大災害があった場合は、当該建設現場に加えて、各社のHSSE委員会及び労働安全衛生管理部門が迅速に対処するとともに、当社関連部門に対して緊急連絡し、必要に応じて当社が支援する体制を取っております。

労働安全衛生のパフォーマンス向上については、安全衛生意識の向上を含む組織の安全文化の醸成と安全衛生知識・技術の向上という2つの側面から取り組んでおります。安全文化の醸成においては、当社代表取締役会長兼社長主催の当社グループ全体のHSSE大会など各種イベントの開催のほか、総合エンジニアリング事業では建設現場における協力会社の作業員全員を含めた安全文化の醸成活動を実施しております。また、知識・技術の向上においては、新入社員や初めて建設現場に赴任する従業員への安全衛生環境教育、国内外の建設現場に対する労働安全衛生監査などを実施しております。

また、海外のEPC事業を遂行する日揮グローバル株式会社及び国内のEPC事業を遂行する日揮株式会社の各HSSE委員会は、国内外の建設現場において、国際的に比較可能な休業災害度数率(LTIR)、記録災害度数率(TRIR)をはじめとする労働安全衛生に関するパフォーマンスを測定する複数の指標(KPI)及び目標を定め、モニタリングすることで、継続的な労働安全衛生の管理の徹底と向上に努めております。総合エンジニアリング事業においては、HSSE基本理念に基づき上記の取組みを継続的に推進してきた結果、国内外の建設現場での休業災害度数率(LTIR)をはじめとする安全成績は、各々の業界平均と比較してそれぞれ優れた結果を維持しております。なお、この労働安全衛生関連の指標の集計や管理については、今後日揮グローバル株式会社傘下の海外グループ会社が主体となって遂行するプロジェクトにもモニタリングを拡大していく予定です。

 

<日揮グローバル株式会社及び日揮株式会社の建設工事における労働安全衛生に係る指標>

(注)国際的な比較等の観点から、本データの集計期間は毎年1月から12月までの合計としております。

 

単位

2023年

2024年

工事総労働時間数

千時間

43,061

69,782

死亡災害件数

*1休業災害度数率(LTIR)

 

0.023

0.034

*2記録災害度数率(TRIR)

 

0.43

0.23

 

 

なお、工事総労働時間数の大部分は、建設工事を請け負い、直接工事に従事する協力会社となっております。

*1休業災害度数率(LTIR)及び*2記録災害度数率(TRIR)は、米国労働安全衛生局(OSHA)の労働災害の発生状況を図る指標であり、以下のとおりです。

休業災害度数率 = 休業災害件数×20万時間÷工事総労働時間数

記録災害度数率 = (死亡災害件数+就労制限件数+専門治療件数)×20万時間÷工事総労働時間数

 

2024年は、日揮グローバル株式会社の海外建設現場において、各EPCプロジェクトのトップマネジメントが中心となってHSSE活動をけん引し、2023年よりも工事総労働時間数が増加したにもかかわらず、休業災害度数率(LTIR)及び記録災害度数率(TRIR)が改善され、いずれも目標値を達成しました。この結果を踏まえ、日揮グローバル株式会社のHSSE委員会では、2025年は目標値をさらに高め、デジタル化を含めたさらなる改善活動に取り組んでおります。一方、日揮株式会社の国内建設現場においては、新設プラント建設現場における事故災害防止対策により、休業災害度数率(LTIR)及び記録災害度数率(TRIR)は目標値を達成したものの、国内メンテナンス工事において、協力会社作業員の死亡災害を含む複数の傷害者を伴う事故が発生しました。メンテナンス工事は、顧客の既設プラント内で工事を請け負う性質上、顧客の理解及び協力も不可欠であることから、本事案に関する包括的な再発防止対策については、顧客と協力会社を含めて協議を継続しております。

 

機能材製造事業については、当社グループ共通のHSSE基本理念を基軸としつつ、主要な事業会社である日揮触媒化成株式会社と日本ファインセラミックス株式会社の各社において、それぞれ独自の労働安全衛生管理体制を設けております。日揮触媒化成株式会社では、主要な事業所である北九州事業所と新潟事業所がそれぞれ安全衛生委員会を月次で開催し、労働安全衛生に関する年間計画の策定や労働災害発生状況のモニタリング、産業医による職場巡視報告等を実施しているほか、従業員の安全衛生意識の向上の観点から同社独自の安全・衛生大会の実施や「指差し呼称」運動の展開など、各種施策に取り組んでおります。また、日本ファインセラミックス株式会社においては、「労働災害ゼロ」を目指すことを大方針とし、本社にて月次で開催する安全衛生委員会において、各事業部より安全成績や工場現場のパトロール状況の報告等を受ける管理体制をとっております。