2025年6月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 18,628 100.0 8,265 100.0 44.4

事業内容

3【事業の内容】

 当社は感染症臨床検査用の抗原検査キットメーカーとして、創業以来30年以上の長きにわたり、さまざまな分析技術を応用した体外診断用医薬品等を製造し、国内を中心として海外にも販売しております。高品質な製品と顧客サービスを提供する企業として、医薬品卸売販売業者を通じてエンドユーザーとして病院及び開業医のみならず、WHO等の国際機関、研究機関やバイオベンチャー企業等にも製品を提供し、事業活動を行っております。

 当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 当社主力製品は、イムノクロマト法※を利用することで、特別な装置を必要とせず患者のそばで迅速な診断を可能な抗原検査キットであります。他の検査手法としては例えばPCR検査が挙げられますが、PCR検査は検出する対象が核酸であるため、イムノクロマト法を利用した抗原検査キットの検出対象であるウイルスタンパク質とは性質が異なり、また検査の特性・目的も異なります。判定時間・手技の簡易さ・検査コスト等の観点から、当社は感染症検査のマーケットのニーズには、イムノクロマト法を利用した製品がより適していると考えております。

 

※ イムノクロマト法:この方法を利用した代表的な検査薬としては、薬局等で広く販売されている妊娠診断薬が挙げられます。この検査法のおおまかな原理は、以下のとおりになります。①テストプレートの試料滴下部に検体を滴下すると、検体はテストストリップへ浸透します。検体中の標的抗原は、コロイド等に標識された標識抗体との反応が始まります。この標識抗体は、標的抗原に対して特異的に結合する抗体を使用しております。②標的抗原と標識抗体を含む溶液はメンブレン内を毛細管現象により展開しながら、さらに標的抗原と標識抗体との反応が進みます。③標識抗体と反応した標的抗原の複合体は、メンブレン上に固定化された抗体(判定ライン)と標的抗原が反応し標識抗体と標的抗原の複合体が捕捉されます。この結果、判定ライン上に標識物が集積しラインとして目視判定が可能となります。④標的抗原と反応しなかった標識抗体は、標識抗体認識抗体(コントロールライン)と反応し、標識物が集積しラインとして目視判定が可能となり、検査が正常に機能したことを示します。陽性であれば2本のライン、陰性であれば1本のラインが出現、出現したラインを目視で確認するだけの簡便な検査法であります。

 

<イムノクロマト法の原理>

 

※ 各部の名称:テストストリップは標識抗体を含むパット部から吸収パッドまですべての部材を含むものを指しております。①検体滴下部では、滴下した標的抗原と抗体が結合する反応が起こります。メンブレンは図中のとおり、検体と標識抗体が展開される部位を指します。また、図の下段で示しているとおり、図①~④の一連の反応が起こるテストストリップはプラスチック製のカバーで覆われますが、これらを総合してテストプレートと呼びます。

 

 当社の製品の特長としては、以下の事項が挙げられます。

検体抽出液の共通使用

検体抽出液(鼻咽頭ぬぐい液)はイムノエース®SARS-CoV-2 Ⅲ・SARS-CoV-2/Flu・Flu・アデノ・hMPV・RSV Neo・Flu/RSVで共通使用が可能

 

 

 

検体抽出液の共通化の大きなメリットは、1回の検体採取、1回の抽出操作で、複数項目を検査できる点にあります。新型コロナウイルスやインフルエンザ等の感染症の診断においては鼻咽頭ぬぐい検体が使用されますが、検体採取において鼻咽頭部(鼻腔の最奥)までスワブを挿入する必要があり、軽微ながらも痛みを伴うことがあります。検体採取を一度で完了させることができることは、被検者と医療従事者双方において検体採取における負担が軽減され、また業務効率の観点からも有益であると考えております。

ブラックライン

独自開発のナノテクノロジー「白金-金コロイド」採用により判定ライン・コントロールラインを視認性の高いブラックラインで表示

 

 

他社イムノクロマト法製品においては、標識物が金コロイド粒子又はカラーラテックスが主流となっておりますが、当社は独自の白金―金コロイド粒子を用いております。当社技術の白金―金コロイド粒子を用いると判定ラインは黒色となりますが、金コロイド粒子では赤紫色、カラーラテックスでは主に赤色と青色となります。従来技術の色調と比較し、当該技術を用いた黒色のラインは背景となるメンブレンの白色とのコントラスト差が大きくなるため、判定ラインの視認性が高くなると考えております。

 

 ユーザーからは、当社製品の使用感として、①独自のブラックラインを用いた判定ラインの見易さ(視認性)、②診断の正確性(感度・特異度)、③キットに同梱されている綿棒(コパン社製)の使いやすさと患者に対する侵襲性の低さ、④高感度を保ったうえでの判定時間の短さ、が主に評価され、これらの理由から当社製品を選択頂いているケースが多いものと認識しております。

 

 

 当社の主な製品は、以下のとおりであります。

製品名

一般的名称

製品の特長

イムノエース®Flu

インフルエンザウイルス抗原検査キット

・判定時間※は5分(陽性は3分から判定が可能)

・判定ラインはブラックライン

・ナイロン軸で植毛タイプの滅菌済み鼻腔用スワブを採用

・検体抽出液(鼻咽頭ぬぐい液)はイムノエース®SARS-CoV-2 Ⅲ・アデノ・hMPV・RSV Neoと共通使用が可能

イムノエース®SARS-CoV-2 Ⅲ

新型コロナウイルス抗原検査キット

・判定時間は10分(陽性は10分より前でも判定部[T]及び[C]の両方にラインが認められた場合には判定可能)

・判定ラインはブラックライン

・ナイロン軸で植毛タイプの滅菌済み鼻腔用スワブを採用

・検体抽出液(鼻咽頭ぬぐい液)はイムノエース®Flu・アデノ・hMPV・RSV Neo・Flu/RSVと共通使用が可能

イムノエース®SARS-CoV-2 Saliva

新型コロナウイルス抗原検査キット

・唾液を検体とした抗原定性検査キット

・判定時間は20分(陽性は20分より前でも判定部[T]及び[C]の両方にラインが認められた場合には判定可能)

・判定ラインはブラックライン

・スワブによる侵襲がなく、くしゃみによる飛沫発生もない

イムノエース®SARS-CoV-2/Flu

新型コロナウイルス抗原検査キット

インフルエンザウイルス抗原検査キット

・SARS-CoV-2とFluを同時に検査

・判定時間は15分(陽性は15分より前でも判定部[T]又は[A]又は[B]及び[C]の両方にラインが認められた場合には判定可能)

・判定ラインはブラックライン

・ナイロン軸で植毛タイプの滅菌済み鼻腔用スワブを採用

・検体抽出液(鼻咽頭ぬぐい液)はイムノエース® アデノ・hMPV・RSV Neoと共通使用が可能

イムノエース® アデノ

アデノウイルス抗原検査キット

・判定時間は5分(陽性は3分から判定が可能)

・判定ラインはブラックライン

・ナイロン軸で植毛タイプの滅菌済み咽頭・角結膜用スワブを採用

・検体抽出液(鼻咽頭ぬぐい液)はイムノエース®SARS-CoV-2 Ⅲ・SARS-CoV-2/Flu・Flu・hMPV・RSV Neo・Flu/RSVと共通使用が可能

イムノエース®Strep A Neo

A群β溶血連鎖球菌抗原検査キット

・判定時間は5分

・判定ラインはブラックライン

・ナイロン軸で植毛タイプの滅菌済み咽頭・角結膜用スワブを採用

イムノエース®hMPV

ヒトメタニューモウイルス抗原検査キット

・判定時間は5分(陽性は3分から判定が可能)

・判定ラインはブラックライン

・ナイロン軸で植毛タイプの滅菌済み鼻腔用スワブを採用

・検体抽出液は(鼻咽頭ぬぐい液)はイムノエース®SARS-CoV-2 Ⅲ・SARS-CoV-2/Flu・Flu・アデノ・RSV Neo・Flu/RSVと共通使用が可能

イムノエース® マイコプラズマ

マイコプラズマ抗原検査キット

・判定時間は15分(陽性は5分から判定が可能)

・判定ラインはブラックライン

・ナイロン軸で植毛タイプの滅菌済み咽頭・角結膜用スワブを採用

・取り違い防止のため、アルミシールにMycoと印字し、紫に着色した検体抽出液容器(本体及びノズル)を採用

イムノエース®RSV Neo

RSウイルス抗原検査キット

・判定時間は5分(陽性は3分から判定が可能)

・判定ラインはブラックライン

・ナイロン軸で植毛タイプの滅菌済み鼻腔用スワブを採用

・検体抽出液(鼻咽頭ぬぐい液)はイムノエース®SARS-CoV-2 Ⅲ・SARS-CoV-2/Flu・Flu・アデノ・hMPVと共通使用が可能

イムノエース® ノロ

ノロウイルス抗原検査キット

・判定時間は10~15分

・判定ラインはブラックライン

・滅菌済みスポンジスワブを採用

・検体抽出液容器の取り違い防止(検体抽出液容器・ノズルを淡橙に着色)を採用

・スワブ輸送用チューブを付属

※ 判定時間:各キットで定められた陽性・陰性判定を実施する時間のこと。通常、抗原検査キットにおいては陰性であることを確認(判定)することで本検査を終了しております。キットによっては判定時間まで待つことなく陽性判定を行うことができ、このような場合は判定時間に関わらず陽性判定できます。

 

 

[事業系統図]

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における資産合計は前事業年度末に比べ7,253,968千円増加し、36,515,294千円となりました。

 流動資産は、前事業年度末と比べ1,439,108千円減少し、15,476,605千円となりました。これは主に、仕掛品が669,663千円増加、売掛金が2,459,087千円減少したこと等によるものであります。

 固定資産は、前事業年度末と比べ8,693,077千円増加し、21,038,688千円となりました。これは主に、新工場建設に伴う有形固定資産が4,373,985千円増加、無形固定資産が115,896千円増加、投資有価証券の取得により投資その他の資産が4,203,195千円増加したことによるものであります。

(負債)

 当事業年度末における負債合計は前事業年度末に比べ3,503,058千円増加し、19,097,624千円となりました。

 流動負債は、前事業年度末と比べ944,568千円減少し、9,529,874千円となりました。これは主に、未払法人税等が863,985千円減少、未払消費税等が285,693千円減少、1年内返済予定の長期借入金が382,919千円増加したこと等によるものであります。固定負債は、前事業年度末と比べ4,447,626千円増加し、9,567,749千円となりました。これは主に、新工場建設に伴う資金調達により長期借入金が4,502,081千円増加したこと等によるものであります。

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は前事業年度末に比べ3,750,910千円増加し、17,417,670千円となりました。

 これは主に、配当金の支払いにより2,785,709千円減少したものの、当期純利益により利益剰余金が6,315,407千円増加したこと等によるものであります。

 

② 経営成績の状況

 当事業年度(2024年7月1日~2025年6月30日)においても、世界経済は引き続き不安定な状況が続きました。特に、ウクライナ情勢の長期化や中東における緊張の高まりなど、地政学的リスクの増大が先行き不透明感を一層強める要因となりました。

 当社の主要な事業領域である感染症POCT(臨床即時検査)業界においては、2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行以降も、感染の拡大と縮小を繰り返す状況が続いておりますが、当期における新型コロナおよびインフルエンザの流行水準はいずれも前年を下回る水準で推移したことにより、感染症POCTの市場規模は前期比で縮小いたしました。

一方で、24年6月期においては、インフルエンザの流行が例年より早い9月ごろから始まり翌年3月ごろまで長期間にわたって継続したため、医療機関ではインフルエンザ検査キットや、新型コロナとの同時検査が可能なコンボ検査キットへの需要が高止まりし、当社は相当期間にわたる出荷調整を余儀なくされましたが、当事業年度においては予め必要十分な在庫量を確保していたことから、年末年始の検査キット需要の急拡大に際しても出荷調整を最小化することが出来ました。

これらの結果として、当事業年度の売上高、各段階利益は前期比で増収増益となって着地しました。

 

<四半期売上高推移>(百万円)

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

合計

23年6月期

6,326

4,106

2,401

2,839

15,673

24年6月期

6,943

4,673

4,754

2,063

18,434

25年6月期

6,419

5,561

5,626

1,020

18,627

 四半期売上高実績推移としては、いずれの期においても第1四半期が最大の売上となっておりますが、23年6月期においては一過性である自治体向けの新型コロナ単品検査キット売上が14億円程度含まれていたことにご留意ください。

 また、25年6月期における第4四半期は、直近3期間で比較した場合に最も小さな売上高となりました。これは年末年始にかけてインフルエンザが大流行した際に卸業者による在庫確保がなされた後、想定よりも急速に流行が収束したことから市中在庫が滞留し、2月以降において市中在庫の消化局面が続いたことを背景としております。

 

<事業年度別 P/L比較>(百万円)

 

23年6月期

24年6月期

25年6月期

前年

同期比

売上高

15,673

18,434

18,627

1.0%

(内、自治体向け売上)

2,154

159

売上総利益

9,199

12,498

12,774

2.2%

売上総利益率(%)

58.7%

67.8%

68.6%

0.8%

営業利益

4,967

8,030

8,265

2.9%

営業利益率(%)

31.7%

43.6%

44.4%

0.8%

経常利益

4,953

7,840

8,219

4.8%

経常利益率(%)

31.6%

42.5%

44.1%

1.6%

当期純利益

3,034

5,774

6,315

9.4%

当期純利益率(%)

19.4%

31.3%

33.9%

2.6%

 事業年度別における損益の過去比較としては、24年6月期対比でインフルエンザ、新型コロナウイルスの流行水準はいずれも相当程度小さかったものの、当社の市場シェアの向上により25年6月期は増収となりました。また後述のとおり、新型コロナ単品検査キット、コンボ検査キットなど利益率の高い製品が売上に占める割合が高まったことから、期末における在庫評価損の計上などがありつつも各段階利益率は改善し、増益にて着地しました。

 

<第4四半期会計期間 P/L比較>(百万円)

 

23年6月期

24年6月期

25年6月期

前年

同期比

売上高

2,839

2,063

1,020

△50.6%

(内、自治体向け売上)

520

売上総利益

1,044

1,188

89

△92.4%

売上総利益率(%)

36.8%

57.6%

8.8%

△48.8%

営業損益

17

△195

△1,065

営業損益率(%)

0.6%

△9.5%

△104.5%

経常損益

13

△408

△1,076

経常損益率(%)

0.5%

△19.8%

△105.5%

四半期純損益

△340

△132

△330

四半期純損益率(%)

△12.0%

△6.4%

△32.4%

 第4四半期会計期間における損益の過去比較としては、減収減益となっております。減収の要因としては、流行期ズレと市中在庫の影響の2点が挙げられます。

1点目は、24年6月期において新型コロナの夏の流行が6月下旬ごろに到来し、期末に駆け込み需要が生じた一方で、25年6月期においては期末までに次の流行の兆しが明確に確認できず、検査キット需要の本格的な回復が次期に持ち越されたものです。2点目は、25年6月期においては年末年始のインフルエンザ流行を受け1月迄に卸業者に対して出荷した市中在庫の消化局面が、期末まで続いたものです。

 また上記の減収に加えて、期末における在庫評価損の計上が25年6月期の第4四半期会計期間の売上総利益を引き下げております。

 

<事業年度別 主要製品別売上高 >(百万円)

主要製品別売上高

23年6月期

24年6月期

25年6月期

前年

同期比

新型コロナ単品

検査キット

8,687

4,712

4,854

3.0%

新型コロナ/インフル

エンザコンボ検査キット

3,415

6,375

7,921

24.2%

インフルエンザ

検査キット

1,435

4,087

3,314

△18.9%

その他

2,135

3,259

2,537

△22.2%

合計

15,673

18,434

18,627

1.0%

 主要製品別に事業年度別の売上高を前年と比較すると、24年6月期は長期間にわたってインフルエンザの流行が継続しましたが、25年6月期においてはインフルエンザの流行期間が短く、インフルエンザ検査キットの売上は減少しました。一方で前年は長期間にわたって出荷調整を余儀なくされていたコンボ検査キットは、25年6月期は出荷調整を最小限に止めて安定供給を継続したこと、市場全体としてもコンボ検査キットへの需要が拡大したことを背景として増収となりました。また、インフルエンザ同様に前期比での流行規模の縮小がありながらも、市場シェアを大きく拡大した新型コロナ単品検査キットについても増収となりました。

 

<第4四半期会計期間 主要製品別売上高>(百万円)

主要製品別売上高

23年6月期

24年6月期

25年6月期

前年

同期比

新型コロナ単品

検査キット

744

755

183

△75.7%

新型コロナ/インフル

エンザコンボ検査キット

923

333

192

△42.2%

インフルエンザ

検査キット

355

220

61

△72.2%

その他

815

753

582

△22.7%

合計

2,839

2,063

1,020

△50.6%

 主要製品別の第4四半期会計期間における売上高としては、いずれも過去期と比較して大きく減収となりました。背景としては前述のとおりです。

 

 このような環境下において、当社はコーポレートスローガン「診断技術で、安心な毎日を。」に基づき、社会的責務として検査キットの供給責任を全うすべく最善を尽くしました。
 その結果、当事業年度における経営成績は、売上高は18,627,990千円(前年同期比1.0%増)となり、営業利益は8,265,025千円(前年同期比2.9%増)となりました。また経常利益は8,219,959千円(前年同期比4.8%増)となり、当期純利益は6,315,407千円(前年同期比9.4%増)となりました。

なお、当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ158,260千円減少し、9,266,630千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は、6,818,472千円(前事業年度は9,935,074千円の獲得)となりました。これは主に税引前当期純利益8,201,875千円の計上に加え、売上債権の減少額2,459,087千円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、9,258,084千円(前事業年度は4,110,382千円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出4,679,989千円及び投資有価証券の取得による支出4,141,797千円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は、2,281,350千円(前事業年度は2,355,823千円の獲得)となりました。これは主に長期借入れによる収入5,642,000千円、及び配当金の支払額2,782,432千円等によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

事業区分の名称

当事業年度

(自 2024年7月1日

 至 2025年6月30日)

生産高(千円)

前年同期比(%)

体外診断用医薬品事業

21,582,909

92.8

合計

21,582,909

92.8

 (注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当社は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

事業区分の名称

当事業年度

(自 2024年7月1日

 至 2025年6月30日)

売上高(千円)

前年同期比(%)

体外診断用医薬品事業

18,627,990

101.0

合計

18,627,990

101.0

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

当事業年度

(自 2024年7月1日

至 2025年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

スズケングループ

9,957,369

54.0

11,058,579

59.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。

 なお、採用している重要な会計方針及び見積りに関しましては、「第5 経理の状況」に記載のとおりであります。

 

② 経営成績等の分析

当事業年度においても、世界経済は引き続き不安定な状況が続きました。特に、ウクライナ情勢の長期化や中東における緊張の高まりなど、地政学的リスクの増大が先行き不透明感を一層強める要因となりました。

 当社の主要な事業領域である感染症POCT(臨床即時検査)業界においては、2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行以降も、感染の拡大と縮小を繰り返す状況が続いておりますが、当期における新型コロナおよびインフルエンザの流行水準はいずれも前年を下回る水準で推移したことにより、感染症POCTの市場規模は前期比で縮小いたしました。

一方で、24年6月期においては、インフルエンザの流行が例年より早い9月ごろから始まり翌年3月ごろまで長期間にわたって継続したため、医療機関ではインフルエンザ検査キットや、新型コロナとの同時検査が可能なコンボ検査キットへの需要が高止まりし、当社は相当期間にわたる出荷調整を余儀なくされましたが、当事業年度においては予め必要十分な在庫量を確保していたことから、年末年始の検査キット需要の急拡大に際しても出荷調整を最小化することが出来ました。

これらの結果として、当事業年度の売上高、各段階利益は前期比で増収増益となって着地しました。

 

a.売上高

 当事業年度における売上高は18,627,990千円となり、前事業年度に比べ193,126千円増加(対前年同期比1.0%増)いたしました。これは主に、当事業年度にてインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行による感染症の感染拡大が継続し、当社のコンボキット等の販売が堅調に推移したことで、国内売上を18,095,733千円計上、輸出売上を532,257千円計上したこと等によるものであります。

 

b.売上原価、売上総利益

 当事業年度における売上原価は5,852,992千円となり、前事業年度に比べ83,538千円減少(対前年同期比1.4%減)いたしました。これは主に、製品売上増加に伴い材料費が407,052千円増加(対前年同期比14.8%増)、労務費が197千円減少(対前年同期比0.0%減)、製造経費が270,401千円増加(対前年同期比11.1%増)したことによるものであります。

 この結果、当事業年度における売上総利益は12,774,997千円となり、前事業年度に比べ276,665千円増加(対前年同期比2.2%増)いたしました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業損益

 当事業年度における販売費及び一般管理費は4,509,972千円となり、前事業年度に比べ41,734千円増加(対前年同期比0.9%増)いたしました。これは主に、人件費総額が93,135千円減少(対前年同期比6.1%減)したものの、その他の項目で134,869千円増加(対前年同期比4.6%増)したこと等によるものであります。

 この結果、当事業年度における営業利益は8,265,025千円となり、前事業年度に比べ234,931千円増加(対前年同期比2.9%増)いたしました。

 

d.営業外収益、営業外費用、経常損益

 当事業年度において、営業外収益が60,614千円発生いたしました。主な要因は、補助金収入を43,388千円、受取配当金7,110千円計上したこと等によるものであります。また、営業外費用が105,681千円発生いたしました。主な要因は、借入に伴い発生する支払利息を102,904千円計上したこと等によるものであります。

 この結果、当事業年度における経常利益は8,219,959千円となり、前事業年度に比べ379,333千円増加(対前年同期比4.8%増)いたしました。

 

e.特別損益、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額、当期純損益

 当事業年度において、特別利益が3,398千円発生いたしました。主な要因は、固定資産売却益が3,394千円発生したことによるものであります。また、特別損失が21,481千円発生しました。主な要因は、固定資産除却損が21,451千円発生したこと等によるものであります。

 法人税、住民税及び事業税が1,968,359千円、法人税等調整額が△81,891千円発生いたしました。

 この結果、当事業年度における当期純利益は6,315,407千円となり、前事業年度に比べ541,321千円増加(対前年同期比9.4%増)いたしました。

 

③ 財政状態の分析

 当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は金融機関からの借入により資金調達することとしております。また、当社は、資金の効率的な活用と借入金利息の削減を目的として、月次での資金計画等により資金管理を行っております。

 なお、財政状態の分析は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

④ キャッシュ・フローの状況の分析

 当社のキャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

a.資本の財源

 当社の資金需要については、人件費や外注費、支払手数料、広告宣伝費等の販売費及び一般管理費等の営業活動に必要な運転資金が主なものであります。これらの資金需要に対する資本の財源は、手許資金、営業キャッシュ・フロー及び金融機関からの借入により必要とする資金を調達しております。なお、当面の資金繰りのための資金は十分に確保していると判断しております。

 

b.資金の流動性に関する分析

 月次での資金計画等により資金管理に努めており、また、当座貸越契約により、必要に応じて資金調達ができる体制を整えることで十分な流動性を確保しております。

 

⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因について、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑦ 経営戦略の現状と見通し

 当社の経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

(参考情報)

 当社は経営成績の推移を把握するために、以下の算式により算出されたEBITDA及びEBITDAマージンを重要な経営指標として位置づけており、過去の推移は以下のとおりであります。なお、第6期は、連結財務諸表を作成していたため、連結財務諸表の数値を記載しております。

 

・EBITDA及びEBITDAマージン

(単位:千円)

 

(株)タウンズ

ホールディングス(連結)

当社

(単体)

 

第6期

第7期

第8期

第9期

第10期

決算期

2021年6月期

2022年6月期

2023年6月期

2024年6月期

2025年6月期

売上高

5,906,350

17,456,987

15,673,099

18,434,863

18,627,990

うち、厚生労働省との買取取引に係る売上高

8,411,808

厚生労働省との買取取引分を除く売上高

9,045,179

売上総利益

3,543,171

14,682,308

9,199,913

12,498,332

12,774,997

うち、厚生労働省との買取取引に係る売上総利益

7,762,670

厚生労働省との買取取引分を除く売上総利益

6,919,637

営業利益又は営業損失

1,143,757

11,189,556

4,967,275

8,030,094

8,265,025

厚生労働省との買取取引分を除く営業利益

3,426,885

+減価償却費

523,752

567,260

639,973

676,163

715,426

+特許権償却費

5,000

+のれん償却費

EBITDA

1,672,510

11,756,816

5,607,249

8,706,258

8,980,452

厚生労働省との買取取引分を除くEBITDA

3,994,146

EBITDAマージン

28.3%

67.3%

35.8%

47.2%

48.2%

厚生労働省との買取取引分を除くEBITDAマージン

44.2%

 (注)1.EBITDA=営業利益又は営業損失+減価償却費+特許権償却費+のれん償却費

2.EBITDAマージン=EBITDA÷売上高

3.厚生労働省との買取取引分を除く営業利益=営業利益-厚生労働省との買取取引に係る売上総利益

4.厚生労働省との買取取引分を除くEBITDA=厚生労働省との買取取引分を除く営業利益+減価償却費+特許権償却費+のれん償却費

5.厚生労働省との買取取引分を除くEBITDAマージン=厚生労働省との買取取引分を除くEBITDA÷厚生労働省との買取取引分を除く売上高