リスク
3【事業等のリスク】
当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項及びその他投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を以下のとおり記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に取り組む方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
なお、本項記載のうち将来に関する事項は、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではなく、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
以下の各事項において、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化したときに当社の経営成績等の状況に与える影響について合理的に予見することが困難な場合には、その可能性の程度や時期・影響についての記述は行っておりません。
(1)法的規制等に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
当社は、体外診断用医薬品の製造販売を行うために医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「薬機法」という。)等の関連法令をはじめ、様々なガイドラインに従い、適正に運用しております。
当社は、体外診断用医薬品及び医療機器の製造販売をするために、「体外診断用医薬品製造販売業許可」、「体外診断用医薬品製造業登録」及び「医薬品販売業許可」、また、医療機器の製造販売を行うために「第三種医療機器製造販売業許可」、「医療機器製造業登録」及び「高度管理医療機器等販売業許可」を受ける必要があり、関係する業許可を取得し法令遵守に努めており、現状においては当該許認可が取り消しとなる事由は発生しておりませんが、今後、これらの関係法令が改廃又は変更された場合や新たな法規制が設けられた場合には、これらの法規制を遵守できなかったことにより許認可の取り消し等の処分を受けこれにより事業活動を制限されることはもとより、社会的信用の低下を招く可能性があると共に、これらの法規制を遵守するために当社の事業活動が制限を受ける可能性があり、その結果、当社の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法規制を遵守するためのコストが発生又は増加し、利益率の低下につながる可能性があります。加えて、当社の業績は保険点数・条件等の影響を受ける可能性があるところ、これらの変更により、当社の収益を左右する可能性があります。さらに、海外販売にあたっては国内法令以外に、販売国の法令を遵守するために現地代理人と連携し薬事承認を目指しますが、当社の想定どおりに薬事承認を得ることができない又は薬事承認取得後に販売国の薬事法令が切り替わることにより事業活動の制限を受ける可能性があります。特に欧州においては新しい薬事規制・欧州体外診断用医療機器規制(IVDR)が2022年5月から適用開始となりましたが、欧州での販売の混乱を防ぐ目的で現在は旧指令(IVDD)と新規制が混在されて運用されております。当社製品では結核検査のCapilia TB-NeoはIVDR承認を取得しておりますが、その他はIVDD登録であります。当社製品が、2027年までにIVDRとしての申請ができない場合には、欧州でこれを販売することができなくなるため、当社は製品ごとに順次対応を進めております。さらに、将来的に進出を検討している米国市場においては、2024年2月にQSR(Quality System Regulation)改正法案が発出され、2026年2月よりQMSR(Quality Management System Regulation)が発効される予定であります。当社はこれら国内外の法規制等の改正動向につき、常時積極的な情報収集に努めるとともに、関係部署には情報共有を行いながら適時対応策の検討を行っております。
以下に、国内における薬事の業許可を示します。
許認可等の名称 |
許可番号 |
有効期限 |
取消事由 |
体外診断用医薬品製造販売業許可 |
静岡県知事 22E1X00002 |
2026年6月30日 |
薬機法第二十三条の十六 |
体外診断用医薬品製造業登録 |
静岡県知事 22EZ2000006 |
2026年6月30日 |
薬機法第二十三条の十六 |
医薬品販売業許可 |
静岡県東部保健所 東保A第22-94号 |
2027年6月30日 |
薬機法第二十三条の十六 |
第三種医療機器製造販売業許可 |
静岡県知事 22B3X10021 |
2026年6月30日 |
薬機法第二十三条の十六 |
医療機器製造業登録 |
静岡県知事 22BZ200150 |
2026年6月30日 |
薬機法第二十三条の十六 |
高度管理医療機器等販売業許可 |
静岡県東部保健所 東保A第11-554号 |
2027年6月30日 |
薬機法第二十三条の十六 |
(2)製品品質に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
当社では、医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(以下、「QMS」という。)等に基づき、重大な品質問題が発生しないように製品毎にリスクマネジメントを実施し、リスクの低減を行っております。また、海外販売においてはISO13485:2016(医療機器における品質マネジメントシステム)の適用を欧州の第三者認証機関を通じて認証を受け、開発から製造、品管、販売までのリスク低減に向けた取り組みを実施しております。
また、当社では、QMS及びISO13485:2016のルールに則り品質マニュアルを定め、製品毎のリスクマネジメント及び教育、社内外の監査、苦情処理、是正措置、購買先管理等の規定文書を定めており、さらに、監査による問題の洗い出しや、厚生労働省及び海外薬事規制当局、第三者認証機関における監査を受け、適時、改善を継続的に実施し、且つ市販後調査等により重大な品質問題が発生するリスクの軽減に努めております。
このように、当社は、薬機法及び関連法令、ガイドライン等に基づき、万全の品質管理体制を敷いて製品の品質確保に取り組んでおりますが、製品に重大な品質問題が発生した場合には、当社レピュテーションへのダメージは勿論のこと、売上高の減少やコストの増加、法令上の制裁に伴う事業活動の制限等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)訴訟・係争リスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:特定不能)
当社は、本書提出日現在係争中の訴訟事案はありませんが、事業活動を継続していく過程において、製造物責任(PL)関連、労務関連、知的財産関連、商取引関連、その他に関する訴訟が提起される可能性があります。このようなリスクを事前に予防するため又は仮に訴訟に発展した場合にも業績への影響が限定的となるよう社内の法令遵守体制を徹底するため、社内に複数の法律又は会計等の専門家を配置しておりますが、これらの訴訟の結果によっては、損害賠償を請求される、社会的信用の低下、レピュテーションへのダメージ等、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)新製品開発力に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、2020年10月に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原検査キットを発売する等、新規の感染症向け製品、既存製品の性能向上等、継続的に新たな収益基盤として期待される新製品の開発に注力しております。
体外診断用医薬品は、国内では所轄官庁の承認、海外では承認や認証を得てはじめて上市可能となります。また、体外診断用医薬品業界は、技術開発及び性能の向上において常に競合他社と競争状態にあります。このため、研究開発の遅延や中断により研究開発投資の回収が困難になり、将来にわたり業績に影響を与える可能性があります。また、他社の革新的技術により当社製品の優位性が低下した場合、製品売上が減少する可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社は、研究開発部門が営業部門と連携することで課題の共有を密に図る他、規制当局及び関連学会等の動向を常時積極的、且つ継続的に情報収集し、大学等公的研究機関や医療機関と共同研究等による連携も行いながら、業界と市場の変化及び顧客ニーズをタイムリーに把握するよう努めております。また、開発された製品は薬事申請が必要となることから、生産部門、品質管理部門と連携しながら医療機関において臨床評価試験も行います。製品化においては、QMSに則り、開発計画から薬事承認まで、研究開発部門、生産部門、品質管理部門との連携により遂行しております。
また、外部からの技術導入や外部との連携を進め、並行して人的リソースの拡充も含め開発力の更なる強化に取り組むとともに、開発に係るマネジメント体制の強化にも努め、且つ市場環境の変化を考慮しながら開発案件の優先順位等を判断し、業界と市場の変化及び顧客ニーズを踏まえて注力すべきと考えられる新製品に開発力を集中できる体制を整備しております。
(5)感染症の動向による業績への影響(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
インフルエンザ検査キットは、2019年6月期及び2020年6月期において、売上高の大きな割合を占める製品となっております。その後、2021年6月期から2024年6月期においては、新型コロナウイルス関連の検査キットが売上高の大きな割合を占める状況が続いております。
当社は、新たな感染症に対応する製品の開発や既存の感染症領域における新製品の開発等により感染症領域における競争力の強化を図るとともに、感染症以外の領域での強化を図ることで、特定の製品への売上げの依存度を減少させることを目指しておりますが、上記の主要製品に係る感染症の流行が当初の想定より小規模であった場合、又は予期せぬ事由により当該製品の売上高が大幅に減少した場合、在庫の評価減、廃棄損も含め、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)原料、商品等の調達に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)
製品の製造に使用している原料の中には、海外からの輸入原料もあるため、輸入原料や特殊な原料、商品等につきましては、個別にリスク管理を行い適切な在庫となるよう管理するとともに、極力複数社からの調達体制を構築し、国際情勢等の変化に柔軟に対応できるよう努めております。また、入手困難な原料が生じた場合は、代替原料の調査及び評価を行い、製品供給が滞らないよう努めております。しかしながら、国際情勢の変化等により、原料並びに商品等の品質の変化、又は製造停止、終了や輸入経路の寸断等により調達に問題が生じる場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)外注先に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)
当社は、体外診断用医薬品等の製造の一部、これに付随する保管、在庫管理、荷造り及び納入の業務を外注しており、当社の業務が一部取引先に集中する場合があります。当社は、外注先との関係強化・維持を図る共に、複数の外注先を確保することとしております。また、日常的、定期的に検査、整備等を行い自社生産の更なる充実を図ると共に、恒常的に2~3か月程度の製品在庫を保管し、リスクの極小化に努めておりますが、外注先の方針転換等により外注先へ業務委託できない状況が発生した場合には、製品の製造及び供給が困難となる等、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)知的財産権に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、新規性あるいは進歩性のある技術を特許化し、その複数の特許は一定期間保護されております。しかし、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が失われる可能性があり、侵害を受けた場合は損害賠償請求を進める等の措置をとりますが、それでも当社が被った損害について十分な賠償を受けることができない可能性があります。また、当社の製品が意図せず他社の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償を請求される可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対し、当社は、特許権、実用新案権、意匠権及び商標権の「産業財産権」を含む知的財産権を適正に管理し、第三者からの侵害あるいは第三者の知的財産権を侵害するおそれについても、常に監視を行うとともに、当該情報を当社内の関連部門間で共有することによって管理体制の強化を図っております。
また、海外に向けても知的財産権を行使していることから、国内外の特許法の遵守に努めております。
(9)市場環境の変化に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
医療制度改革や診療報酬の改定が行われている中、国内の人口減少が続いており、当社の事業環境は、市場における他社との競合等も加わり、一段と厳しさを増しておりますが、新たな感染症対応製品の開発・販売開始等、市場環境は日々変化しております。足元では海外メーカーや国内後発メーカー等により、価格を重視した製品の市場投入が散見されております。
MarketsandMarketsが2024年3月4日に発行した「ポイントオブケア (POC) 診断・迅速診断の世界市場 - 2028年までの予測」によると、当社のターゲット市場である臨床現場即時検査検査(POTC)市場について、「世界臨床現場即時検査(POCT)市場は、2023年から2028年までにCAGR9.4%の成長が予測されております。(2023年USD497億、2028年USD778億)」とされており、国際的な視点では、体外診断用医薬品市場は拡大傾向にあるとされております。そのため、海外市場への積極的な展開をすることで市場環境のリスク分散も進めております。
当社では、市場及び競合動向の情報収集及び分析評価を継続的に行い、既存ビジネスの競争力維持・強化等のための施策や、新規分野への展開等に活用しております。また、市場環境の変化に柔軟に対応するべく、新製品開発力の維持・強化等に努めております。
以上のような取り組みにもかかわらず、当社の市場環境の変化への対応が遅れた場合には、主要製品の需要減少、販売価格の低下、既存シェアの喪失等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。他方で新型コロナウイルスの抗原定性検査キットにおいては、2024年6月に診療報酬がそれまでの300点から150点へと引き下げられましたが、当社では相当程度前から診療報酬引き下げの影響をすでに織り込んだ定価設定としていたため、今回の改定を受けた形での大幅な販売単価の下落懸念は小さいものと考えております。新型コロナウイルスを除いた既存の5類感染症については過去において2年に1度の頻度で小幅な薬価改定が行われてきたため、新型コロナウイルスの抗原定性検査においても今後は同等の薬価改定が行われる可能性があります。
(10)海外事業展開に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:中)
当社は、日本国内の他、欧州・アジア及びその他の地域における事業活動を展開しております。また、今後については、当社の海外売上比率を高めることを企図しております。
これらの海外事業展開に関しては、カントリーリスクを初め、為替リスク、法規制・薬事ガイドライン、商習慣の相違等に起因するリスク、更には地政学的リスク等、海外ならではの付加的なリスクにさらされております。
これに対し当社は、各国の状況に精通した現地代理店を通じて規制当局への薬事承認を取得し、販売を通じて法規制の遵守以外に当該国での医療事情の情報収集を行い、販売業績へのリスク低減に努め、またカントリーリスク及び個社の信用力等に基づく信用リスク管理も行うことにより、リスクのコントロールを図っておりますが、上記のリスクが顕在化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)特定の販売先への依存によるリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期~中期、影響度:中)
当社は、2024年6月期において、主要顧客であるスズケングループへの売上が54.0%を占め、特定の販売先に対する依存度が高い状況にあり、販売先の集中による信用管理リスクも高くなっております。また、株式会社スズケンの経営方針等の変更により取引が打ち切りになった場合や取引金額が引き下げられた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社は特定の販売先に対する集中を緩和するために、依存度が高い販売先以外の販売先との関係強化、新規販売先の開拓、及び海外売上の拡大に努めており取引先の分散化を図っております。信用管理の面では、販売先全社に対して信用力に基づく与信限度額を設定する等、信用リスク管理に努めておりますが、これらの取組みにもかかわらず当社がスズケングループに対する信用リスク管理を適切に行うことができない場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)人財の確保と育成に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
当社では、海外事業展開を含めた中長期における当社の経営計画達成のために、新製品の企画、開発能力のある人財、海外国内を問わず活躍できるグローバル人財やプロフェッショナル人財、全ての局面で自律・自立して成果をあげる人財の確保と育成が必要であると考えております。当社では、このような人財の確保のため国内に限らず、多様な人財確保を目指し、雇用した多様な人財が、多様な価値観を尊重しつつ健康に働ける環境を整える努力をしております。人財の確保は、通年で計画的に、経営や事業関連のスキルを持つ経験者や新卒者の採用を国籍に関係なく行い、人財の育成には企業倫理の育成から始まりキャリアプランに応じた成長教育の強化に取り組んでおります。しかしながら、当社の持続的な成長に必要な人財の確保が達成できなかった場合、また、達成のために人件費等増加が生じた場合には、当社の事業及び業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(13)労務に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、法令に基づく適正な労務管理等により、全社的に労務関連リスクの低減に取り組んでおります。具体的には、当社は、日常的に労働災害が発生する可能性のある現場では災害を未然に防ぐための努力を行っております。災害が発生した場合には安全衛生委員会にて発生現場部署と連携し発生原因の特定から再発防止策の実施までを行い労働災害の再発防止に努めております。
長時間労働については、当社の事業拡大に沿った人員計画に基づき採用を行うことや業務効率化を図ることで長時間労働が発生しないように人員体制を強化しております。また、勤怠管理システム上で時間外勤務時間が多くなるとアラートを出す設定をして、過度な長時間労働を未然に予防するようにしております。また日頃より36協定を遵守するための啓蒙活動の一環として管理本部や人事部からの警告と注意喚起を毎月行い、長時間労働をなくす努力をしております。長時間労働が発生してしまった場合には、必要に応じて対象者の産業医面談を行うとともに所属本部から改善策を提出させて、再発防止に努めております。
ハラスメントに関してはハラスメント防止規程を設定し、社内掲示板にはハラスメント禁止を明示し、定期的にハラスメント防止のための研修受講を義務付けております。また、全従業員、役員が相談・通報できる社内・社外(弁護士直通)の「コンプライアンスに関する通報・相談窓口」を設置、個別に対応するようにしております。
メンタルヘルスについては、事前予防策としてエンゲージメントサーベイを定期的に実施しメンタルヘルスの異変を事前に察知できるようにすることや、株式会社Smart相談室の提供する法人向けオンライン相談サービスの「スマート相談室」を利用し、従業員のメンタルヘルス改善に資する幅広い相談に応じており、問題を小さな芽のうちに解決するようにしております。また、産業医とも連携し人事部を中心に面談の実施等の対応もしております。
以上のような取り組みにもかかわらず、労務関連のコンプライアンス違反(労働災害、長時間労働、ハラスメント等)が発生した場合、争訟の発生、社会的信用の低下及びレピュテーションへのダメージ等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)情報の取扱い及び情報セキュリティに関するリスク
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、事業上の営業秘密及び開発関連情報、薬事申請関連書類、規定文書、手順書、製造関係書類、品質管理書類、倫理関連書類、事業活動の過程で入手した個人情報や取引先等の多岐にわたる機密情報を保有しております。当社では当該情報の盗難・紛失等を通じて第三者に不正に情報が流出することを防ぐため、文書管理の徹底、社員及び委託先の情報リテラシー及びモラル向上、及びITガバナンスの強化に取り組んでおります。また、社内情報システムへの外部からの侵入防止対策も講じておりますが、当該情報の流出や漏洩が発生した場合には、社会的信用の低下、レピュテーションへのダメージ、訴訟や損害賠償に伴う金銭的負担・対応のための負担の増大、情報セキュリティ体制の見直し、強化等におけるコストの増加等、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)システム障害に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は各種情報システムを活用して業務を遂行しており、大規模な自然災害、社会インフラ(クラウドサービスやネットワーク回線、流通・供給網等)の遮断・混乱、想定を超えたサイバー攻撃等により、システムの長時間停止、又は事業活動における重要情報、顧客・従業員等の個人情報等の機密情報の漏洩、改ざん、消失等が発生する可能性があります。これらのリスクに対処するため当社では、絶えずシステム強化やセキュリティ対策をハード面から行うとともに、従業員のセキュリティ管理教育等のソフト面も徹底することにより障害が発生しないようにするとともに、万が一そのようなリスクが顕在化してしまった場合の迅速な対応やバックアップ体制の構築に取り組んでおりますが、これらの事象が発生した場合には、社会的信用の低下、レピュテーションへのダメージ、損害賠償請求に伴う金銭的負担、事業戦略の見直しの必要等が発生するおそれがあり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(16)投資有価証券・関係会社株式・関係会社社債の減損に関するリスク
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)
当社は、ビジネス上のパートナーシップを強化するため、投資有価証券を保有しております。取得前には投資委員会においてビジネス、財務経理、法務等々の観点から十分な検討を行い、投資額の重要性に基づき取締役会で決議ないしは報告がなされてから投資が実行されるようになっております。投資有価証券の継続的な保有の合理性についても、取引額、将来的なビジネスの可能性、保有に伴う便益やリスク、資本コストとの見合い等の観点から少なくとも年に一度投資委員会に諮問した内容を取締役会にて報告・協議しており、その結果、保有の合理性が低い株式については、市場環境等を考慮しつつ、売却を行うことを基本方針としております。
以上のように、取得後もリスクに見合ったリターンが得られているか、定量面・定性面での情報収集及び収集された情報の検証を含めリスク管理を徹底しておりますが、収益性の悪化等により投資先会社の純資産価値が毀損した場合や事業計画に大きな下振れが生じた場合等、当該投資有価証券・関係会社株式・関係会社社債の減損処理を実施することで、当社の業績に影響が及ぶ可能性があります。
(17)固定資産の減損リスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)
当社は、工場、機械設備等多くの有形固定資産や顧客関連資産、技術関連資産等の無形固定資産を有しておりますが、投資に対する回収が不可能になることを示す兆候を認識した場合には、将来キャッシュ・フローの算定等により減損の有無を判定しております。その結果、減損損失の計上が必要になることも考えられ、その場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(18)金利変動と財務制限条項に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
当社では、金融機関からの借入によって製造設備、運転資金その他必要な資金を調達しておりますが、有利子負債の金額は売上高に比して多額なものであると認識しております。今後、市場において金利が上昇した場合には当社の借入金利も上昇することが予想され、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社の借入金には財務制限条項が付されている契約があり、具体的には純資産の減少及び経常損失の計上に関する財務制限条項が付されております。万一、当社の業績が悪化し、財務制限条項に抵触した場合には、当該契約による借入金の返済を求められる結果、当社の財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(19)災害、事故、感染症等に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
大規模な地震、風水害等の自然災害や火災、事故、感染症の流行等により、販売等事業活動への影響及び生産設備等で発生する操業中断の影響を完全に防止することができない事態が想定されます。また、当社の生産拠点は神島工場の1ヵ所のみであるため、この地域において大規模災害の発生や事故等により、操業中断に追い込まれる事態になった場合には、製品の生産、供給能力が著しく低下し、当社の事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社では、BCPを策定し、大規模な災害が発生した場合も事業を継続できるよう災害発生時の対応能力の継続的向上に取り組んでまいりました。また、抜本的な対策として三島市に新工場を建設中であり、2025年12月の稼働開始を目指しております。その他、恒常的に2~3か月程度の製品在庫を本社所在地以外に位置する複数の外部倉庫で保管していることや、各拠点において、事業が中断に追い込まれるリスクを極小化するため、あるいは事業中断による影響を極小化するため、日常的、定期的に検査、整備等を行っております。
(20)CITIC(現Trustar) Groupとの関係(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:短期~中期、影響度:小)
当社は、グローバルプライベート・エクイティファームである、CITIC(現Trustar) Groupに属するCITIC Capital Japan Partners Ⅲ, L.P.及びCCJP Ⅲ Co-Investment, L.P.からの出資を受けており、本書提出日現在において、合計で当社発行済株式総数の41.60%を保有しております。また、伊藤政宏氏が当社取締役としてCITIC(現Trustar) Groupから派遣されております。当社株主の今後の当社株式の保有方針及び処分方針によっては、当社株式の流動性や市場価格等に影響を及ぼす可能性があります。また、CITIC(現Trustar) Groupが相当数の当社株式を保有し続けたり、又は当社株式を買い増したりする場合には、当社の役員の選解任、他社との合併等の組織再編、減資、定款の変更等の当社の株主総会決議の結果に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(21)資金調達に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、既存事業の強化並びに新規事業領域への進出により成長を目指しており、今後の資金調達が必要になる可能性があります。そのため、短期資金、長期資金のバランスを勘案し資金調達することで、借り換えリスクの低減を図っており、また、必要運転資金の最適化を図り、資金需要を抑制することでリスクの軽減に努めておりますが、金融市場の混乱、あるいは金融機関の融資方針の変更は、当社の資金調達に制約を課すとともに、調達コストを増大させ、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(22)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期~中期、影響度:小)
当社は、役員及び従業員に対して、業績向上に対する貢献意欲及び士気を高めるため、新株予約権を付与しております。これらの新株予約権の権利が行使された場合には、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権の割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日現在、これらの新株予約権による潜在株式数は7,037,371株であり、発行済株式総数100,866,819株の6.98%であります。
(23)配当政策について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、株主への利益還元を重要な経営課題の一つとして位置づけております。配当につきましては、経営環境の変化に対応すべく、企業体質の強化及び将来の事業環境を勘案したうえで、株主に対して配当性向30%程度の安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針であります。更に通常の配当政策に加え、業績や財務状態を総合的に勘案のうえ、周年記念等にあたっては記念配当も実施していく方針であります。なお、内部留保資金につきましては、今後の研究開発や製造体制の強化等の成長投資として有効に使用してまいりたいと考えております。
上記方針のもと、30%の配当性向を目標に安定的な配当を継続していくことを目指しておりますが、事業環境の急激な変化等により、目標とする配当性向を達成できなくなる可能性があります。
(24)当社株式の流動性について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社は、当社株式の流動性の確保に可能な限り努めることとしておりますが、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は当事業年度末時点において28.19%にとどまっております。
今後は、当社の事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達、当社代表取締役社長野中雅貴を含む主要株主への一部売出しの要請、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加分等を勘案の上、これらの組み合わせにより流動性の向上を図っていく方針ではありますが、当事業年度末日現在よりも何らかの事情により流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主還元を適切に行っていくことが重要であると認識しており、剰余金の配当については、内部留保とのバランスを考慮して適切な配当を実施していくことを基本方針としております。
経営環境の変化に対応すべく、企業体質の強化及び将来の事業環境を勘案したうえで、株主に対して配当性向30%程度の安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針であります。更に通常の配当政策に加え、業績や財務状態を総合的に勘案のうえ、周年記念等にあたっては記念配当も実施していく方針であります。
当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回を基本方針としており、決定機関は株主総会であります。また、当社は「取締役会の決議によって、毎年12月31日を基準日として中間配当をすることができる。」旨を定款に定めております。
当事業年度の期末配当につきましては、上記方針に基づき、普通配当を1株につき10円65銭とするとともに、当社が2024年6月20日付で東京証券取引所スタンダード市場に新規上場いたしましたことを記念して、1株につき11円10銭の上場記念配当を加え、合計21円75銭と決定いたしました。これにより、中間配当6円00銭と合わせて、年間配当金27円75銭(普通配当16円65銭、上場記念配当11円10銭)、配当性向48.1%となります。
内部留保資金につきましては、今後の研究開発及び製造体制の強化等へ有効に投資してまいりたいと考えております。
基準日が当事業年度に帰属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (千円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年2月14日 |
600,000 |
6.00 |
取締役会 |
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2024年9月26日 |
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21.75 |
定時株主総会 |