リスク
3 【事業等のリスク】
当社は、社長を委員長とし、取締役・監査役(社外含む)、執行役員で構成される経営品質委員会を設置しております。経営品質委員会はコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方を実現し、企業の社会的責任を果たし「経営品質」を向上することを目的として設置されており、委員会の下に各種会議体を設け、品質管理、内部統制、コンプライアンス、CSR調達、ガバナンスなどについて包括的に検討しております。
経営品質委員会(年2回開催)では、経営に重大な影響を与える可能性のあるリスクの棚卸およびそのリスクのモニタリングならびに統制活動等の審議を行っております。このうち、統制活動が不十分と判断されたものに対しては、執行部門に是正を求めております。
経営品質委員会における審議により、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、将来に関する事項の記載が含まれておりますが、当事業年度末現在において判断したものであり、将来を含めた当社のリスク全般を網羅するものではありません。
(1) 経営成績等の状況の異常な変動
① 受注環境の変化リスク
当社は東京ガス株式会社等ガス事業者を主要顧客とするガス工事事業を中核事業とし、建築設備事業、電設・土木事業も展開しており、様々な取引先から工事を受注しておりますが、中でも、主要顧客である東京ガスグループの売上割合は約6割を占めております。当社は2022年度よりスタートした中期経営計画で「新築建物内の設備工事を担う建築設備事業を新たな中核事業とすべく、一括受注・施工体制の更なる整備を行う」ことにより、将来を見据えた事業ポートフォリオの構築と売上高の集中リスクの低減を図っております。また、四半期に一度、業務執行取締役、常勤監査役、執行役員、部長が出席する計画進捗会議において、業績進捗とともに、取引先の動向やエネルギー・原材料価格の高騰の影響など市場環境の変化を含め、確認しております。しかしながら、主要取引先の事業戦略の大幅な変更、少子高齢化による着工数減少による価格競争の激化、パンデミックや地政学的リスクの顕在化による供給網の混乱が想定を超えた場合には受注量の減少や資機材の供給不足、原材料価格の高騰が発生し、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
② 戦略的投資の未回収リスク
当社は2022年度よりスタートした中期経営計画において「新築建物内の設備工事を担う建築設備事業を新たな中核事業とすべく、一括受注・施工体制の更なる整備を行う」こととしており、そのためにはM&Aの実施も選択肢の一つとしております。また、営業上の戦略や、老朽化等による職場環境の改善を目的とした土地建物の取得・事業所の移転、DXの推進に伴うシステム投資など、大規模な投資を行う場合があります。このような大規模な投資を実行する場合には、職務権限規程において職務権限決裁基準を定め、経営会議における審議と取締役会決議により、適切に判断・実行しておりますが、想定したシナジー効果や期待通りの成果をもたらさなかった場合には、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
(2) 法的規制・取引慣行
① 法的規制リスク
当社では、事業活動にあたり会社法、金融商品取引法、建設業法、民法、労働基準法などさまざまな法令の規制を受けております。法改正およびそれに伴う作業内容の改定に関しては、都度社員・協力会社への周知・教育を行っており、管理者の現場巡視において遵守状況を確認しております。また、法令、規則等の遵守状況については、会社法に則った業務・コンプライアンス監査や金融商品取引法に係る内部統制監査を毎年実施し、その結果について取締役会に報告する仕組みとなっております。しかしながら、社会情勢の厳格化による法的規制の急激な強化、法規制に関する認識不足に起因する法律違反が顕在化した場合、それに対応するための追加費用の増加や社会的信用の失墜などにより、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
② 不採算工事の発生リスク
当社では、工事見積時および受注時に職務権限決裁基準で定めた金額に応じた決裁者による決裁を受けております。不採算となる可能性のある工事の受注については、より上位者による決裁基準を設定しているほか、毎月経理部において、一定のルールに従って抽出した不採算物件について調査し、役員に回覧するなど、不採算工事の早期把握と抑制に努めております。また、システム導入による営業部門と施工部門における情報共有および連携強化を図り、営業担当者と管理者による協議を経て適正価格での入札を推進しております。加えて、近年の原材料価格等の高騰に際しては、定期的な単価改定や、個別の件名に関しての発注者との協議の実施等により、不採算工事の発生抑制に努めております。しかしながら、受注環境の悪化に伴う競合他社との価格競争の激化や当初想定していた見積りからの乖離、工事の施工段階における想定外の原価等の発生や工期遅延に伴う損害に対する賠償金の支払い等により不採算工事が発生した場合は、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
(3) その他投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項
① 自然災害リスク
地震、大雨、洪水などの自然災害・異常気象やパンデミックが発生した場合、社員や所有建物・設備など事業継続のリソースに対する被害が発生し、事業活動が停止することなどにより、当社または取引先が被害を受ける可能性があります。当社は自然災害などの重大災害に備え、BCP(事業継続計画)を策定し、全役職員に周知するとともに、BCPに基づいた防災訓練の実施や必要物資の備蓄、拠点や関係会社との連携・情報共有などの対策を講じております。また、ライフラインを支える設備工事会社として、災害が発生した場合、二次災害の防止とライフラインの復旧のために社員・協力会社の職員が一定期間活動を行うために十分な現預金を確保するとともに、社員の安否を確認する安否確認システムの導入や建物・設備・システム等の耐震対策(データ等のバックアップを含む)を実施するなど各種災害に備えております。加えて、災害に対する都市の強靭性向上に寄与すべく、当社の事業であるライフラインのメンテナンスや耐震化工事を推進しております。
しかしながら、全ての被害や影響を回避できるとは限らず、これに伴う役職員の被災、営業拠点の修復または代替のための費用発生等により、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
② 組織力の低下リスク
当社は、中長期の事業展開を見据え、「求められる人材像」を定め、新卒だけではなく中途採用を強化するとともに、これまで男性主体であった職種、業務への女性の配置拡大など、多様性の確保も意識し、各部において育成計画や各種研修、資格取得支援等の充実化を図り、将来を担う優秀な人材の採用・育成に努めております。本人の希望と適性を踏まえたキャリアパスの選択や成果に応じたメリハリのある処遇の設定、適材適所な人材配置の実施、本人の希望と能力に応じた定年後再雇用制度の運用により、多機能人材の育成や働きがいのある職場作りに取り組んでおります。加えて、2023年9月にはエンゲージメントサーベイを導入し、業務に影響を与える指標の分析を行っております。また、管理職を対象とした弁護士によるハラスメント研修や、メンタルヘルス不調発生防止を目的に全従業員を対象とした体験カウンセリング(日本産業カウンセラー協会のカウンセラーによる職場の悩み等に関する相談体験)など、心の健康を含む健康経営施策を実施しております。さらに、従業員ならびに就職希望者にとってより魅力的な企業となるよう、従業員の労働環境の改善を図るために、働き方改革推進委員会において、長時間労働抑制に向けた施策の立案、実施に加えて、管理者が労務管理を正確に行うツールとして、勤怠システムを改善するなどのITを活用した環境整備を実施しております。また、2022年9月、基幹システム刷新委員会を設置し、業務管理の見直し・高度化・効率化を目的とした新しい基幹システムの整備に着手いたしました。しかしながら、少子化の影響や景気拡大に伴う大手企業の採用数増加などにより、必要な人材を継続的に確保できなかった場合、ならびに人材の多機能化および働き方改革への対応が遅延した場合、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
③ 施工力の確保リスク
当社では、受注した工事等を協力会社に発注しております。少子高齢化による人手不足、後継者難は建設業界に共通する難しい問題ですが、2022年度より協力会社を含めたCSR調達方針・ガイドラインおよび推進の枠組みを定め、アンケートやヒアリング等を行っており、2023年度の実施結果では、大きな問題は確認されませんでしたが、寄せられた要望や意見に基づき、協力会社への経営指導や働き方改革を推進することで協力会社従業員の労働環境の改善を行い、魅力ある仕事となるよう可能な限りの支援策を講じてまいります。しかしながら、後継者難、経営状態の悪化、若年層の採用難や若年層の退職増加等により、主要な協力会社に不測の事態が発生した場合、施工能力が低下するなど、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
④ 不良工事の発生リスク
ISO9001:2015規格で培ったノウハウを進化させ、当社独自に策定した品質管理システム(QP(Quality Plus)マネジメントシステム)に基づいて各部・拠点の事業所監査を行い、クレーム処理、是正処置、予防処置を実施するとともに、代表取締役を委員長とした品質マネジメント会議を設置し、品質の向上に取り組んでおります。また安全品質環境室を事務局としたリスクマネジメント会議や再発防止検討会において、予防策、事故の傾向分析、原因究明、再発防止策を検討しております。また、安全品質環境室における安全パトロールにおいて、この再発防止策が実施されているかを確認し、必要に応じて指導を行っております。加えて、業務・コンプライアンス監査を定期的に実施し、各部・各拠点において法令、規則等を遵守した業務遂行が行われているかチェックしております。しかしながら、工事施工上の問題、各種法令やルールの理解あるいは確認不足等に起因する品質の不備もしくは事故等が発生した場合、発注元や監督官庁からの工事施工資格や入札参加資格の停止、受注済み件名の発注取り消しといった処分を受けることにより、当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
⑤ 交通事故・労働災害の発生リスク
当社は、安全運転管理規程および安全衛生管理規程を定め、定例勉強会や再発防止策の教育を実施するとともに、本社においては、年4回、安全衛生中央委員会、拠点においては毎月安全衛生委員会を開催し、事故・災害事例の共有と再発防止策の共有に努めています。また、安全品質環境室を事務局としたリスクマネジメント会議や再発防止検討会において、予防策、事故の傾向分析、原因究明、再発防止策を検討しております。加えて、2023年12月に交通安全強調月間を開催し、安全運転意識を高めるとともに、事故惹起者への運転訓練や2カメラドライブレコーダーの設置による運転状況の把握に努めているほか、年に1度、社員、協力会社を集めた安全大会を開催するなど安全管理活動の推進に努めております。しかしながら、予期せぬ事由による事故・災害の発生や基本作業の逸脱による重大事故等の発生による人的被害・物的被害・社会的信用の失墜などにより当社の事業展開、財政状態および経営成績が影響を受ける可能性があります。
⑥ コンプライアンスリスク
当社では、コンプライアンス規程を定め、各部門の長を委員としたコンプライアンス推進会議において定めた年度実施計画の基本方針に基づき、各部門で強化策を展開するとともに、2か月に1度、役員からのコンプライアンスメッセージの配信やコンプライアンスに関する研修等を実施することによって「協和日成グループ行動基準」の浸透とコンプライアンスマインドの継続的な高揚を図っております。特に、反社会的な勢力・団体との関係の遮断を「協和日成グループ行動基準」で明文化するとともに、本社地区特殊暴力防止対策協議会への加盟、本社・各拠点に不当要求防止責任者を選任し、反社会的な勢力・団体に関する情報の収集・管理や対応マニュアルの整備等、体制構築に向けての検討を行い、積極的に全社展開を推進しております。また、業務・コンプライアンス監査により、コンプライアンスを逸脱した業務遂行が行われていないかを確認しております。しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスクは完全に回避できない可能性があり、法令・規則・関係マニュアル・企業倫理に反する行為等が発生した場合には、対応に要する直接的な費用に止まらず、社会的責任の発生等有形無形の損害が発生する可能性があります。
⑦ 情報セキュリティスリスク
当社では、情報管理規程、情報システム利用規程、個人情報管理規程、特定個人情報取扱規程といった各種規程を整備しており、セキュリティソフトの配備、PCデータ・記録媒体・メールの添付ファイル等の暗号化を行い、モバイル機器ユーザーを対象とした情報セキュリティ教育を実施するとともに、各組織における情報管理責任者のもとで情報システム運用を補佐するITリーダーを設置し、ITリーダーを通じた各種情報共有や各組織の要望に合わせたIT教育を行っております。また、日常的なサーバー監視や、内部統制のひとつであるIT統制監査、個人情報の保有状況・保管状況チェック等を通じて、情報セキュリティリスクの低減を図っております。しかしながら、このような施策を講じても情報セキュリティリスクは完全に回避できない可能性があり、情報漏洩や情報システムの稼働停止が発生した場合には、対応に要する直接的な費用に止まらず、社会的責任の発生等有形無形の損害が発生する可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆様に対する適正な利益還元を経営の最重要政策の一つとして認識しております。
配当方針につきましては、「経営基盤の強化に留意しつつ、当期の業績ならびに経営環境や今後の事業展開に備えるための内部留保の充実などを総合的に勘案し、長期的かつ安定的な配当を維持・向上することを基本とし、業績に応じた配当を検討する上で、今次中期経営計画の最終年度となる2024年度に配当性向40%を達成することを目標に、配当性向30%からの引き上げを図ってまいります。
なお、非日常的な特殊要因により当期純利益が大きく変動する場合は、その影響を除いて配当金額を決定することがあります。」としております。
当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回としており、配当の決定機関は株主総会であります。
2024年3月期の期末配当金につきましては、1株当たり30円を予想しておりましたが、当期の業績等を勘案した結果、株主の皆様のご支援にお応えするため、1株当たり5円増配の35円(配当性向37.9%)を予定しております。
なお、次期の配当につきましては、当社配当方針に基づき、1株当たり38円(配当性向40.1%)を予定しておりますが、業績予想の修正が必要となった場合には、速やかに配当予想の修正を公表することといたします。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。