2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、将来に関する事項については、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において入手し得る情報に基づいて当社が判断したものであります。

 

(最も重要なリスク)

(1)医療業界・製薬業界への依存に関するリスク

当社グループの売上高は、大部分が製薬企業、医師及び医療従事者からの収入となっております。今後、医療費・薬価引き下げ、ジェネリック医薬品の普及、医療制度の変更などにより医療・ヘルスケア市場の停滞、縮小や新たな市場動向に当社グループが対応できない場合には、それらの事象が当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、製薬業界においては、グローバルな企業間競争が展開され、業界再編の動きが加速しております。企業間競争は当社グループが提供する各種サービスの採用を加速する可能性がある一方、再編された既存顧客による取引見直しの可能性もあり、その場合には当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(対応策)

当社グループでは、製薬企業等のニーズに合わせたサービス提供及び新商品の開発を進めることで、取引先等を特定の国・地域・企業に集中させず、様々な企業へ対応できる仕組みを構築することにより、リスクの分散化を図ります。また、取引先に対して定期的な与信管理を適切に実行することにより、取引先の信用リスク管理に努めております。

 

(2)競合参入・医師の獲得及び確保に関するリスク

当社グループは、多くの医師の協力を得る必要があり、当社グループは既に22万4千人(当連結会計年度末時点)の医師会員を有していることから、本サービスにおける当社グループの優位性は高いものと認識しております。しかしながら、サービス実現には多くの医師の協力を得る必要があり、今後の新規参入や、医師会員を保有する他の企業又は製薬企業自らにより類似のサービスが提供される等で競争が激化し、当社グループの優位性が保てなくなった場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(対応策)

当社グループでは、医師・医療従事者向け会員制サイト「ケアネット・ドットコム(CareNet.com)」等を通じて、医師会員へ満足度の高い医療情報を提供することで、医師会員の新規獲得を実現しております。これに加え、当社グループでは医師会員の協力を得ることにより、より一層の専門性の高いサイト構築に努めております。このような医師会員の増加により、インターネットを利用した製薬企業の営業・適正普及活動の支援に繋げていくことで、優位性の確保に努めてまいります。

 

(3)技術、システム面のリスクに関するリスク

当社グループは、主にインターネットを利用したサービスを行っており、サービス水準の維持向上を図るために、継続的な設備投資と保守管理を行っております。しかしながら、ハードウェア又はソフトウェアの不備、アクセスの急激な増加、人為的ミス、インターネット回線のトラブル、コンピュータウィルス、不正アクセス等、その他予測困難な様々な要因によって当社グループのシステムに被害又は途絶が生じた場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。また、当社グループの想定しない新しい技術の普及等により技術環境が急激に変化した場合、当社グループの技術等が陳腐化し、当社グループの事業展開に影響を与える可能性と、変化に対応するための費用が生じ、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(対応策)

当社グループでは、適宜新しいシステム技術やセキュリティ関連技術等を取り入れながらシステムの構築、運営を行い、サービス水準の維持、向上に努めております。その一方で、技術進化の速さを鑑み、技術面に偏重したサービスモデルとならない様に、医師会員獲得の仕組みの高度化、コンテンツ・データの品質向上等、各サービス構成要素を巧みに融合し、全体レベル向上を図ることで競争優位性を確保しています。

 

(重要なリスク)

(1)人材の確保及び育成に関するリスク

 当社グループの事業は、医療・医薬及びこれらに関わる諸法令の知識を基に、医療・医薬に関わる情報コンテンツを制作するための企画力や制作力を有する人材が必要であり、今後の事業の成長においても不可欠であります。しかしながら、このような人材を獲得するのは容易ではないため、社内での人材育成や、社外への人材流出を防ぐことに力を注いでいく必要があります。仮に、人材流出の発生や人材の育成に充分な手立てができず、事業の遂行に遅れが生じたり、また遂行不能となった場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(対応策)

当社グループでは、中長期的ビジネスを担う人材を質と量を伴って採用・育成しています。採用においては事業成長見込みや事業部門のニーズを勘案して採用目標数を設定し、デジタル技術の素養のある人材や、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進できる素養のある人材の採用の強化及び即戦力となる経験者採用の強化を推進しております。また、先進技術領域や急速に利活用が進むデジタル領域において卓越した専門性を有し、即座に当社ビジネスの拡大・牽引に寄与できる人材の獲得に取り組んでおります。労働環境の面では、育児・介護と仕事の両立、女性の活用や定年退職後の雇用継続等、当社グループの持続的成長を支える人事制度の構築や働きやすい職場環境作りに取り組んでおります。

 

(2)企業買収と戦略的提携に関するリスク

当社グループは、事業拡大の手段の一つとして戦略的提携、M&A及び投融資等を行う可能性があります。戦略的提携、M&A等の投融資の実施に際しては十分な検討のもとに実行に移してまいりますが、実施した戦略的提携、M&A及び投融資等が、当初期待した成果をあげられない場合や、投融資先の業績が悪化した場合には、損失が発生することにより、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(対応策)

当社グループでは、戦略的提携、M&A及び投融資等を行う際は、その目的や意義を明確にした上でリスクを把握し、投下資本に対する回収実績の定量的な評価を行い、投資委員会での検討を経て、取締役会で審議を行っております。M&A及び投融資後は投資回収に努めますが、経済情勢の変化に伴い中長期的に損失が見込まれる場合は、一定の仮定のもとで将来の回収可能見込額を見積り、必要に応じた会計処理を決算に反映させております。

 

(3)個人情報の取り扱いに関するリスク

当社グループの事業は、医師の協力を得ることで成り立っており、事業遂行上、多くの医師等の個人情報を保有しております。そのため、当社グループは2005年3月に、JIS Q15001(個人情報保護に関するコンプライアンス・プログラムの要求事項)規格に準拠したプライバシーマークの付与認定を受けており、個人情報保護に関する社内規程の整備及び運用状況の監査を行うなど、個人情報管理の徹底を図っております。また、システム自体のセキュリティ対策も強化しています。これらの対策により医師等の個人情報が漏洩する可能性は極めて低いと考えておりますが、万一医師等の個人情報の漏洩が発生した場合には、医師等からの信用を失うこととなり、医師会員の協力により支えられている当社グループのほぼ全てのサービスに支障が生じる等、その後の当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(対応策)

これらの個人情報の管理に関しては、研修等により継続的に啓蒙活動を行い役職員の個人情報保護に対する意識を高めるとともに、個人情報保護の具体的な業務手続きを定めた個人情報保護に関する規程に則って業務を遂行しております。また、コンピュータシステム・サーバー等のセキュリティを強化すると共に、情報毎にアクセス権限を設定するなど、システム部門・管理部門と各部門との連携を強化し、情報漏洩の防止対策を実施しております。

 

(4)知的財産に関するリスク

当社グループは、ブランドによる知名度向上を図ることや競合参入に障壁を築く手段のひとつとして、商品及びサービスに対し、商標権や特許権等の知的財産権を確保していくことを、事業推進上の重要事項として認識しております。しかしながら、商標権や特許権等は、特許庁に出願すれば必ず取得できるわけではなく、当社グループのブランドが確実に保護される保障はありません。また、これらが取得できたとしても、当社グループのビジネスに対し完全な参入障壁を築ける保障もありません。今後、類似ブランドの出現等によるブランド浸透力の弱まり、競合参入を防ぐ手段である知的財産権の確保の失敗、又はその確保が有効な手段となり得なかった場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

一方、当社グループはインターネットを利用したサービスの提供及び医療コンテンツの提供にあたり、他社の知的財産を侵害することがないよう弁護士など専門家の助言を得ながら十分注意を払っていますが、他社知的財産への侵害リスクを完全に無くすことはできません。したがって、万一当社グループが他社の知的財産を侵害するような事態が発生した場合には、損害賠償請求や当社グループサービスの提供の中止等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(対応策)

当社グループでは、知的財産の適正権利化や第三者権利調査、知的財産権に関する専門家からの各種相談対応や当社グループ内での教育・啓発活動を実施し、当社グループの知的財産の保護・活用、第三者の知的財産権侵害防止に努めております。

 

(5)法的規制に関するリスク

①インターネットについて

当社グループは、インターネットを利用した医療・医薬情報の提供サービスを展開しております。現在は、当該サービスに影響を及ぼすようなインターネットに係わる法規制は実施されておりませんが、今後、当社グループのインターネットを利用したサービスや、インターネット業界全体を対象とした法規制が実施され事業運営の変更を余儀なくされた場合、又は事業運営を中止しなければならない事態が生じた場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

②医薬品医療機器等法等について

当社グループは、医療従事者向けにインターネットや紙媒体などにより医療・医薬情報の提供を行っており、また製薬企業へは広告宣伝に係わる制作請負を行っております。このため、これら媒体等に記載される表示・表現には、医薬品医療機器等法、医療用医薬品プロモーションコード、医療用医薬品製品情報概要記載要領、医療用医薬品専門誌(紙)広告作成要領、及び医薬品等適正広告基準の規制を受けます。これら法規制は、ウェブサイト等に掲載される医療・医薬に係わる名称の使い方、効能・性能・安全性、及び他社製品の取り扱い等の表現や必要記載事項を制限しております。仮に、このような法規制に当社グループが違反した場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(対応策)

これらの法的規制に関するリスクに対して、当社グループでは、関係法令の制定、改廃に関する情報収集やモニタリングを専門分野ごとに確実に行い、事前の対策を図るとともに、法令等で定められた専門家への確認や役職員への関係法令の周知徹底等に努めることで、法的規制のリスクの低減に努めております。

 

(6)自然災害、事故災害等に関するリスク

地震、台風、洪水等の自然災害や火災等の事故災害が発生した場合、当社グループの設備等の損壊や、電力、ガス、水の供給困難により、一部又は全部の業務が中断し、サービスの提供が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(対応策)

当社グループでは、策定したBCPに基づき、防災、減災、適切な管理体制の構築を行うとともに、リスク発生時には、対策本部を設置し、迅速な判断・対応ができる体制を整備しております。

 

(7)風評に関するリスク

当社グループは、法令順守違反などの不適切な行為が発覚した場合は、速やかに適切な対応を図って参りますが、当社グループに対する悪質な風評が、マスコミ報道やインターネット上の書き込み等により発生・流布し、また、商号等を騙った詐欺又は詐欺的行為が発生した場合は、それが正確な事実に基づくものであるか否かにかかわらず、当社グループの社会的信用が毀損し、経営成績等に影響を与える可能性があります。

(対応策)

当社グループでは、教育研修等による人材育成を行うことで、医師会員・製薬企業等の満足度の向上を図り、さらに第三者からの誹謗・中傷等の抑制・防止に努めております。なお、トラブルが生じた場合には、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会を中心に迅速な対応を行うとともに、クレーム案件に関しては外部の専門機関や顧問弁護士と密に連携し、事例を分析・検証し、再発防止に向けた取り組みを行っております。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主への利益還元を重要政策の一つと認識しており、配当については、各期の経営成績と事業への投資に備えるための内部留保の充実とを勘案して決定する方針をとっております。

 当社は期末に配当を行うことを基本方針としており、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当を行う場合においては取締役会であります。
 当連結会計年度の配当につきましては、上記方針に基づき当期は1株当たり12.00円の配当を実施することを決定しました。

 内部留保につきましては、企業価値向上のための事業成長に必要な事業開発等を中心に投資を行い、将来の事業展開を通じて株主の皆様に還元させていただく所存であります。

 なお、当社は、株主への機動的な利益還元を目的として、取締役会の決議により、6月30日を基準日として中間配当をすることのできる旨を定款に定めております。

 当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たり配当額

(円)

2024年3月26日

539,223

12.00

定時株主総会決議