2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業領域である高齢社会に関連する市場は年々拡大し、医療、介護/障害福祉、ヘルスケア、シニアライフといった高齢社会における事業領域に関する情報の量は飛躍的に増加し、その情報は多様化・複雑化しております。そのような情勢において、当社グループがグループミッションを実現し、長期的に企業価値を向上させるためには、これらの変化に対して適時適切に対応していく必要があると考えております。これらの環境を踏まえて、当社グループでは、グループミッションの実現の妨げになる一切の不確実性をリスクとして捉えており、そのマイナスの影響を可能な限りコントロールすることで、企業の持続的成長を維持し、グループミッションを実現していきたいと考えております。

 当社グループでは、当社の代表取締役社長の諮問機関である経営会議を通じて、当社グループ全体のリスクマネジメントの方針及び体制を決定するとともに、優先的に取り組むべき施策の決定と定期的な進捗の確認を実施しております。また、リスクマネジメントを所管する部門が当社グループにおけるリスク対応を組織横断的に統括し、関係部門と連携して個別具体的な施策を推進しております。

 当社グループでは、当連結会計年度末現在において、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクとして、以下に掲げるものを選定しております。また、その中でも特に経営への影響が大きく、企業活動の継続又は企業の持続的成長に重大な影響を与える可能性があるものを(1)重大なリスクとして記載し、それら以外のものを(2)その他リスクとして記載しております。

 なお、文中の将来に関する記述は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいております。

 

(1)重大なリスク

 

主要なリスクの内容

主な取組

① 市場環境

 当社グループは、医療、介護/障害福祉、ヘルスケア、シニアライフという変化の大きい領域で事業を行っており、市場環境の変化を的確に把握できなかったり、変化に適時適切に対応できない場合には、当社グループの事業活動に悪影響を与える場合があります。例えば、キャリア分野においては、介護保険法や医療法等が改正され、ケアマネジャーや看護師等の有資格者を事業者が一定数従事させることを義務付ける規制が緩和されることにより、当社グループが職業紹介サービスの対象としているこれら有資格者について、事業者の採用需要が低下する場合があります。また、職業安定法の改正等により、求人企業との間の手数料や返戻金に対する規制が追加されて、自由競争が阻害されることにより、当社グループが受領する手数料の金額が減少する場合があります。さらに、介護・障害福祉事業者分野においては、介護保険法の改正動向次第で当社グループや顧客である介護事業所の事業環境が大きく変わる場合があります。

 これらの事業環境の変化が顕在化し、また、適時適切に対応できない場合には、当社グループの事業活動に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、当社グループを取り巻く市場環境を注視し、その変化と将来像を踏まえて経営・事業戦略の策定・実行を推進するとともに、厚生労働省等の関連省庁や業界団体とも密接に連携しながら、医療法、介護保険法、職業安定法をはじめとする関連法令の動向等を捉え、それらを経営・事業の戦略に適時適切に反映しております。

② 自然災害

 自然災害や疾病の流行等の有事により、当社グループが人的・物的被害を受けたり、社会情勢が大きく変化したりした場合には、当社グループの全部又は一部のサービスについて、一定期間その提供が困難となるなど、当社グループの事業活動に悪影響を与える可能性があります。また、大規模な自然災害の発生等により、当社グループの顧客の事業活動が中断されるなどの二次的影響が生じ、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、自然災害や疾病の流行等の有事を想定して、従業員の安全、事業継続、社会への責任という3つの観点から、BCP(事業継続計画)の基本方針を定め、有事においても可能な限り事業を継続できるよう努めております。

 

 

 

主要なリスクの内容

主な取組

③ 事業開発・M&A

 当社グループは、グループミッションの実現と長期的な企業価値の向上に向け、自社で行う新規事業の開発に加えて、M&A及び他社との業務提携を通じて、新規事業の開発・育成及び既存事業の拡大を推進しております。新規事業を開始するにあたっては、相応の先行投資を必要としたり、当該事業に固有の要因によるリスクが発生する場合があります。また、M&A及び他社との業務提携にあたっては、期待通りの効果を生まず戦略上の目的を達成できない場合や、実行後に未認識の債務やコンプライアンス上の問題点等が判明する場合があります。さらに、景気の後退や為替の著しい変動等によりM&Aで取得した企業の収益性が当初計画より著しく低下した場合には、減損損失の計上が必要となる場合があります。

 これらの場合には、当社グループが戦略上意図した新規事業の開発・育成及び既存事業の拡大を実現することができず、当社グループの事業活動及び業績に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、自社で行う新規事業の開発並びにM&A及び他社との業務提携を実行するにあたって、当社グループのグループミッションの実現と長期的な企業価値の向上に貢献するかを慎重に検討し、投資判断を行っております。また、M&A等の検討にあたっては、必要に応じて外部専門家によるデューデリジェンス等を通して対象企業の企業価値、将来の収益性、リスクの分析を実施します。さらに、新規事業、M&A等により当社グループ傘下となった企業のいずれについても、既存事業と同様に継続的な事業モニタリングを実施し、当初の事業計画との乖離が生じた場合には、速やかに原因を分析し対策を実施しております。

④ 人材・組織

 当社グループの事業領域である高齢社会に関連する市場は今後も拡大が見込まれ、膨大な事業機会が生まれると認識しております。当社グループのグループミッションを実現するためには、その機会をいち早く捉え様々なサービスを数多く生み出し続ける必要があり、社会からの要請を真摯に受け止め主体的に変化対応できる人材の採用及び育成が非常に重要です。また、当社グループの主力事業である国内のキャリア事業においては、事業者と求職者との間に介在して適切な情報を伝達する役割を果たすキャリアパートナーが多く必要です。しかしながら、日本国内での少子高齢化による労働人口減少、グローバルを含めた事業地域の拡大に伴う人材需要の増加、必要スキルの変化及び高度化、並びに競争力がある就労条件が整備できないことにより、多様で有能な人材を、必要数採用、育成及び定着させることができない可能性があります。

 この場合には、事業を遂行するうえで必要な人員を十分に確保できず、当社グループの事業活動に悪影響を与える場合があります。

 当社グループでは、当社グループの持続的成長に伴い、従業員に対して成長機会を継続的に提供し続けることが、人材獲得競争が激しくなる採用市場における採用力の向上と人材の定着に寄与すると考えております。また、採用市場における競争力のある報酬制度、能力を適切に評価する考課制度、能力向上のための教育制度や魅力的なキャリアパスの整備等に取り組んでおります。

⑤ 情報セキュリティ

 当社グループは、展開する各サービスの運営過程において、個人情報を含む顧客情報やその他の機密情報を取り扱っております。これらの情報は、当社グループ又は業務委託先の従業員及び関係者の故意・過失、悪意を持った第三者の攻撃、その他想定外の事態の発生により、漏洩、破壊又は改ざんされる場合があります。

 この場合には、当社グループの社会的信用が失墜し、当社グループの事業活動に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、取り扱う顧客情報等の漏洩、破壊及び改ざんを防止するため、経営陣を中心とした情報セキュリティマネジメント体制のもと、定期的な会議体にて、全社的な情報セキュリティのモニタリング、インシデントの対応、抜本対策の検討・実施に取り組んでおります。

・情報セキュリティ管理体制の構築

 情報セキュリティ管理責任者を配置するとともに、定期的に開催する経営レベルでの会議体においてグループ全体の情報セキュリティリスクを体系的に把握し、必要な対策を迅速に実施しています。

・情報セキュリティ対策技術の導入

 情報資産に対する不正な侵入、漏洩、改ざん、紛失、破壊、利用妨害等を防止するため、情報セキュリティ対策の導入に努めています。

・内部規程の整備

 情報セキュリティに関する内部規程を整備し、個人情報を含む情報資産全般の適切な取扱いについて明確な方針を示すとともに、社内に周知徹底しています。

・継続的な改善

 業務の遂行において法令や社内規程等が遵守されていることを担保するため、定期的又は重大な変化があった場合に内部監査を実施しています。また、社内規程を継続的に見直すことにより、情報セキュリティ対応を継続的に改善しています。

・従業員に対する教育

 契約社員、アルバイト、派遣社員を含む全社員及び業務委託先を対象に、個人情報保護をはじめとする情報セキュリティに関する教育・研修を定期的に実施し、社内の意識とリテラシーの向上に取り組んでいます。

 

 

主要なリスクの内容

主な取組

⑥ システム障害

 当社グループは、主なサービス提供手段として、当社グループ又は業務提携先が提供するウェブサイトや業務システムを利用しております。自然災害や事故による通信ネットワークの障害、誤作動やシステム障害、当社グループもしくは提携先の従業員もしくは関係者の操作過誤、又はコンピュータウイルスや第三者による不正アクセスによる破壊もしくは改ざん等により、ウェブサイトや業務システムが正常に稼働できなかった時には、提供するサービスの全部又は一部が停止したり、その品質が低下したりする場合があります。
 この場合には、当社グループのサービスの全部又は一部の提供が困難になることに加えて、当社グループの社会的信用が失墜し、当社グループの事業活動に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、サービスの信頼性及び取引の安全性の観点から、当社グループの事業用ITインフラについて高可用性、耐障害性を備えた設計としております。また、重要なデータを取り扱うサービスにおいては、十分なセキュリティ対策を施したうえで、クラウド化を実施するなど、有事の際にもサービスを提供できるよう対処しております。さらに、システム開発及びシステム運用経験の豊富な人材を採用するとともに、システムに関する従業員向け教育を積極的に実施するなど、体制面での強化も継続して取り組んでおります。

⑦ 許認可

 当社グループの主要な事業である職業紹介事業の遂行には有料職業紹介の許可が必要であり、当社グループは、有料職業紹介事業者として、厚生労働大臣の許可を受けております。何らかの理由により、当該許可が取り消されたり、業務停止となった場合には、当社グループによる職業紹介事業の遂行が困難となり、当社グループの事業活動に悪影響を与える可能性があります。

 なお、当該許可の取消事由及び業務停止事由は職業安定法第32条の9に定められておりますが、当連結会計年度末現在において当社グループが認識している限りでは、当社グループにはこれらの事由に該当する事実はありません。また、当社グループが保有している主な有料職業紹介事業許可の許可番号及びその取得年月等は以下のとおりです。

所轄官庁等

取得者名

許可番号

取得年月

有効期限

厚生労働省

株式会社エス・エム・エス

13-ユ-190019

2003年

7月1日

2026年

6月30日

 

 当社グループは、厚生労働省等の関連省庁や業界団体とも密接に連携しながら、職業安定法等の動向をいち早く把握するとともに、職業安定法等の法令を遵守すべく、必要な規程及びガイドラインの制定や各種研修を通して、役職員に対してその周知、徹底を図り、継続的にコンプライアンス体制の強化に取り組んでおります。

 

(2)その他リスク

 

主要なリスクの内容

主な取組

① 技術革新

 当社グループは、価値提供先である従事者・事業者・エンドユーザに情報をコアとした様々なサービスを提供しており、それを支えるソフトウエア、システム及びセキュリティ関連技術は事業運営上、非常に重要です。しかしながら、近年の技術革新のスピードは極めて速く、当社グループが競争力を維持し高めるためには、将来における技術の変化を見極めながら、適時適切に技術への投資と導入を行う必要があります。当社グループが技術革新のトレンドを正確に把握することができず、想定しない新しい技術の普及等により技術環境が急激に変化し当社グループの技術が陳腐化する場合があります。

 この場合には、当社グループの事業活動に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、当社グループが保有する技術が陳腐化することがないように、適宜新しいソフトウエア、システム及びセキュリティ関連技術等を取り入れながら、継続的な投資を行っております。また、事業活動で得られたビッグデータの解析やAIの活用等の先端的な技術を導入する体制を構築し、継続した技術向上を図るとともに、それらを当社グループの事業に導入できるよう取組を進めております。

② 競合

 当社グループは、医療、介護/障害福祉、ヘルスケア、シニアライフを高齢社会における事業領域として定義しております。これらの市場は年々拡大しており、当社グループにとって膨大な事業機会が生まれるものと認識しております。
 一方で、このような魅力的な市場に対して、新規の参入者が増加し、競争環境が激化した場合には、当社グループの事業活動に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、高齢社会に関連する市場において圧倒的な地位を確立しております。特に医療、介護領域の人材関連ビジネスにおいては、パイオニアとして市場を創造し、従事者及び事業者の充実した顧客基盤を構築して高い市場シェアを獲得しております。そして、高齢社会全体を当社グループの事業領域として捉えて、充実した顧客基盤をサービス横断で活用することにより、競合他社に対して十分な競争優位性を実現しております。

③ カントリーリスク

 当社グループは、海外、特に人口の増加や経済発展により医療・ヘルスケア分野のニーズが急拡大しているAPACを重点地域と位置付け、多くの国と地域でサービスを提供しております。このような海外での事業展開においては、世界経済全体の動向に加え、各国固有の政治、経済、社会、法規制、税制、文化・商慣習の違い、自然環境等の要素により、事前に想定することが困難な事象が発生する場合があります。

 これらの事象に対し適時適切に対応できない場合には、当社グループの事業活動に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、シンガポールに海外事業の統括拠点を置き、日本本社から当該統括拠点に経営人材や経営管理人材を派遣し、当該統括拠点のもとで各海外拠点にも同様の人材を配置しており、日本本社、統括拠点及び各海外拠点が適切な連携を取るための体制を構築しております。このような体制を通じて、世界経済全体の動向に加え、各国固有の政治、経済、社会、法規制、税制、文化・商習慣の違い、自然環境等に関する情報を収集し、必要な対策を実施しております。

④ 情報発信

 当社グループは、インターネット等を通じて、医療、介護/障害福祉、ヘルスケア、シニアライフといった事業領域において様々な情報発信を行っております。

 これらの発信物について、その内容の適法性、正確性又は妥当性について社会的批判を受けた場合には、当社グループの社会的信用が失墜し、当社グループの事業活動に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、様々な情報発信を行ううえで、その内容の適法性、正確性及び妥当性について、顧問法律事務所の助言や専門家による監修等、社内外で慎重に確認するための体制を構築しております。

⑤ 法令

 当社グループは、国内外の幅広い領域で事業を展開しており、事業を展開する国又は地域の法令等を遵守する必要があります。今後、事業の急速な拡大等により、十分なコンプライアンス体制の構築が追い付かず、法令違反等が生じたり、将来適用される法令等の新設や改正、当局による解釈の変更等への対応の遅れや、それによる事業機会の逸失等が生じる場合があります。

 この場合には、当社グループの社会的信用が失墜し、当社グループの事業活動に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、国内外の幅広い領域で事業を展開していくうえで、各国の社会規範や法令その他諸規則を遵守すべく、必要な規程及びガイドラインの制定や各種研修を通して、役職員に対してその周知、徹底を図り、継続的にコンプライアンス体制の強化に取り組んでおります。当該規程及びガイドラインや研修のテーマには、個人情報保護法や職業安定法といった当社グループの事業に関連の深い法令の遵守や、反社会的勢力との関係遮断、不正行為の防止等が含まれております。

⑥ 訴訟

 当社グループが事業活動を推進する過程において、当社グループが提供するサービスの不備、従業員の労務管理、個人情報の漏洩、知的財産の侵害等に関する訴訟その他の法的手続を提起され、当社グループに不利な判断がなされた場合には、当社グループの社会的信用が失墜したり、当社グループが多額の賠償金の支払義務を負ったりすることにより、当社グループの事業活動及び業績に悪影響を与える可能性があります。

 なお、当連結会計年度末現在において、当社グループに重要な影響を与える訴訟等は提起されておらず、その恐れも認識しておりません。

 当社グループは、社会の要請や法令その他諸規則を遵守したうえで適切に事業が展開されるようコンプライアンス体制の強化に取り組むことで、不当な紛争に巻き込まれることがないよう努めております。また、万が一訴訟が提起された場合に備え、重要な訴訟の提起や状況に関する報告がグローバルで迅速かつ確実になされる仕組みを構築するとともに、各国の関係会社の担当者及び弁護士事務所等と連携し、訴訟等に対応する体制を整備しております。

配当政策

3【配当政策】

 当社は、成長への投資を優先したうえで、財務の状況を勘案し、配当の実施と金額を決定することを基本方針としております。

 配当の実施については、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めております。これら剰余金の配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会です。

 内部留保金の使途につきましては、既存事業のさらなる拡大と積極的な新規事業の開発・育成のための投資資金等に充当する予定です。

 当事業年度においては、利益還元として株主配当を実施できる状況にあると判断いたしました。当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2024年6月21日

1,734

20.0

定時株主総会

 

 なお、当社は、2015年のMIMSグループ子会社化以降、財務の健全性向上のため内部留保を優先して進めてまいりましたが、一定財務の健全性が高まってきたことから、2024年4月26日開催の取締役会の決議を経て、配当方針を以下のとおり更新し、2025年3月期における配当より適用いたします。

 

<配当方針>

 成長への投資を優先したうえで、財務の状況を勘案し、連結配当性向30%を目安に各期の業績に応じた配当を行うことを基本方針とする。ただし、M&A等の大きな投資機会発生の際には、この限りではない。