2025年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3【事業等のリスク】

当社グループは、業績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクを発生可能性と影響度を勘案の上認識し、影響を最小化する仕組みの構築を図っています。特に重要なリスクとしては、世界的な原材料価格、穀物価格及びエネルギーコストの上昇や家畜伝染病の蔓延などがあげられますが、これらのリスクに対して適切に対応し、設定した課題に対する各種施策を着実に実行することによって、業績の向上に努めてまいります。
 その他重要と思われるリスクとその対応方針は下表のとおりです。しかしながら、これらはすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない、若しくは重要とみなしていないリスクの影響を将来的に受ける可能性や、対策の不足による損害が発生する可能性があります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

リスクの内容

対応

①市場動向に関するリスク

 

経済情勢の変化による影響で消費活動が減退した場合、当社グループの商品に対する消費者の需要が低下する可能性があります。また、当社グループの取扱商品の一部が価格競争に陥ることにより、収益力が低下し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、お客様及び社会の課題を解決する新たな価値を創造し、人々の豊かな食生活と健康に貢献することを目指しています。新たな食シーンの創造につながるような商品をスピーディに提案し、市場と需要の開拓を推進しています。

②市況変動に関するリスク

 

販売用食肉、ハム・ソーセージ、調理加工食品等の原材料として、国内外より調達する畜産物において、相場変動や輸入豚肉、輸入牛肉を対象としたセーフガード(緊急輸入制限措置)の発動及び入船の遅延、世界的な人口増加による食糧需給の逼迫、その他調達コストの大幅な上昇や仕入数量の制限の発生等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、製品に使用する副原料、包装資材及び電力や物流費等のコスト上昇、生産肥育事業における飼料価格の大幅な上昇が生じた場合も、同様に当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、製造コスト低減のための継続的業務改革、商品や原材料の調達先分散化、製品や商品の適正在庫水準の維持、効率を意識した物流の集約、適正な販売価格の設定・変更等の施策を推進しています。また、仕入および販売に関するポジション管理を通じて、価格変動リスクの低減を図っております。具体的には、需給動向や市場価格の変動を踏まえた在庫水準の適正化、ならびに販売契約のタイミング調整等により、安定的な収益確保を目指しております。

③金融市場の変化に関するリスク

 

当社グループは、必要資金の一部を有利子負債で調達するとともに、原材料及び商品の一部を海外から調達しています。資金調達環境の悪化や金利負担額の増加、外国為替相場の大幅な変動による差損の発生等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、金利の変動リスクや調達の流動性低下リスクを軽減するため、コミットメントライン設定を行うなどの対策を講じています。また、為替相場の変動リスクを軽減するために、為替予約等でリスクヘッジをしています。

 

 

 

リスクの内容

対応

④事業投資・設備投資に関するリスク

 

当社グループでは持続的な事業成長のため、M&A及び老朽化対策を含む設備投資を継続的に実施していますが、投資判断時に想定しなかった、市場環境や経営環境の悪化により、保有する固定資産やのれんの投資額の回収が不能になった場合、減損処理が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、企業価値向上に資する重要な投資については、担当役員を委員長とする投融資委員会での慎重な審議を踏まえ、最終的に取締役会での決議を行っています。また、投資実行後も定期的に当初計画からの進捗状況の確認や、計画から乖離していた場合の対応の検証を行っています。

⑤食品の安全性に関するリスク

 

消費者への健康被害及び製品や商品の回収・廃棄が発生した場合、社会的信用の失墜やブランド価値の毀損により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、製品や商品の「安全・安心」の確保がお客様との信頼関係の礎と捉え、フードディフェンスやトレーサビリティの強化及び国際的な管理基準をもとにした厳格な品質管理体制を構築しています。また、安全衛生教育についても積極的に推進しています。

⑥家畜の疾病に関するリスク

 

ASF(アフリカ豚熱)や鳥インフルエンザ、BSE(牛海綿状脳症)などの家畜の疾病が拡大した場合、国内外の食肉相場が大幅に変動して食肉の調達や販売に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、自社農場や協力農場で家畜の疾病が発生した場合も、当該農場からの出荷停止等の実施により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、過去の家畜伝染病や疫病発生の経験を活かし、家畜の疾病に対応するマニュアルを整備し、対策に取り組んでいます。また、疾病発生時においても、迅速に代替調達が可能となるよう、複数地域・複数業者からの調達体制を構築・維持することで、供給リスクの分散を図っております。

⑦物流・流通に関するリスク

 

通信販売業態の普及による宅配物流の増加、労働人口減少に伴う運送ドライバーや荷役作業員の人手不足、働き方改革関連法における「時間外労働の上限規制」等の影響による輸送能力の不足、複合的な要因に起因した海上輸送の混乱、冷蔵や冷凍を要する食品・食材の輸入量増加による都市部での低温倉庫などのインフラの不足等により、適正なサプライチェーンが構築できなくなった場合、製品や商品を適時適切に供給できず、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、製品や商品を安全な状態で、迅速かつ安定的に店舗及び消費者に届けるという使命に基づき、受発注の精度向上や在庫管理の適正化、納品リードタイムの改善、積載効率の向上、定温輸送の厳格化、調達国の分散等、サプライチェーンに必要な物流体制の構築に取り組んでいます。

⑧情報セキュリティに関するリスク

 

当社グループは、調達、製造、物流、販売、財務等あらゆる業務において情報システムを活用しており、地震その他の自然災害、サイバー攻撃、ハードウェア・ソフトウェア・遠隔通信の欠陥・障害、新種のコンピュータウイルス感染、システム開発の遅延・失敗、不正アクセス等により、情報の漏洩、消失、情報システムの不具合等が生じる可能性があります。

これらの事由が生じた場合、多額の費用発生及び企業イメージの低下や社会的信用の失墜等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、情報システムの運用について、コンピュータウイルスの感染防止等やセキュリティ対策の実施、また、基幹システム及びデータ保管サーバーの二重化と分散設置による管理体制の強化等、予期せぬ障害や損壊に備えた厳重な対策を講じています。

 また、情報の取り扱いについては、「情報セキュリティポリシー」のもと、個人情報や機密情報の安全管理と漏洩防止、情報セキュリティ遵守意識の維持・向上のための抜き打ち訓練等、様々なセキュリティ対策を実施しています。

 

 

 

リスクの内容

対応

⑨事故などの安全上のリスク

 

当社グループでは、安全を最優先として、事故防止に努めていますが、万一事故が発生した場合は、社会的信用の失墜、受注機会の喪失、損害賠償等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、事故防止に関する教育を定期的に実施し、安全意識の向上を図っています。また、安全衛生管理規程を定め、職場における従業員の安全と健康の確保に努めています。

⑩人材の確保・育成に関するリスク

 

更なる少子高齢化による若年労働者の確保不足や雇用環境の変化による人材流出、また、優秀な人材育成の遅れ等が生じた場合、企業としての競争力低下や製品や商品の供給力不足に起因した信用失墜により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、人材は最も重要な資産であると捉え、従業員一人ひとりが持つ素質や能力を引き出し、最大限活かすことが組織の活力に繋がると認識し、多様な人材の採用、エンゲージメント向上に繋がる人事制度の整備や教育研修を推進しています。

⑪人権に関するリスク

 

当社グループ及びサプライチェーンにおいて、労働環境・安全衛生の悪化、ハラスメントや差別などの人権を侵害する行為が発生した場合には、当社グループに対する社会的な信用低下を招き、当社グループの商品供給や販売体制に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、事業に関わるすべての人々の人権を尊重し、企業としての社会的責任を果たしていくために伊藤ハム米久グループ人権方針を定めています。人権への負の影響の特定とその防止、軽減を目的に人権デュー・デリジェンスの仕組みを構築し、プロセスを事業活動に組み込み、継続的に実施しています。

⑫コンプライアンスに関するリスク

 

役職員による法令違反を含むコンプライアンス上の問題や職場における重大なハラスメント行為、労働基準関係法令違反が発生した場合、社会的信用の失墜や風評により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、コンプライアンス委員会委員長に担当役員を指名し、その推進体制を整備・強化しており、定期的なトップメッセージの発信、コンプライアンス推進委員に対する定期講習や役職員に対する継続的な職場研修の実施等、コンプライアンス最優先の意識向上・浸透に積極的に取り組んでいます。また、独立した内部監査部門による定期的な監査を実施しており、不正防止のための体制を整備しています。

⑬内部統制システムの整備・運用に関するリスク

 

内部統制システムが有効に機能しなかった場合、予期せぬ費用の増加や社会的信用失墜等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、内部統制システムに関する基本方針を定め、この基本方針に基づく内部統制システムの体制整備・運用状況を常に評価し、法令遵守及び業務の適正の確保に努めています。

⑭国内外の公的・法的規制の変化、権利侵害に関するリスク

 

当社グループは、事業を展開する各国において、事業投資の許認可、国家安全保障またはその他の理由による輸出制限、関税や家畜の疾病等による輸出入規制の他、様々な規制の適用を受けています。

将来において、新たな法的規制等の制定や、権利侵害または被侵害の防止遅れや不能が発生した場合、その対応のための費用負担の増加および知的財産の喪失等により、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、関連法規の改正状況、リスクの迅速な把握及び法令遵守に万全の体制で臨んでいます。また、社内研修やコンプライアンス教育の実施を通じて、従業員の法令遵守意識と知的財産保護意識の向上を図るとともに、知的財産の出願・管理体制の強化により、第三者権利の侵害防止及び当社の技術・ブランドの保護を推進しております。

 

 

 

リスクの内容

対応

⑮災害・紛争等による事業継続に関するリスク

 

国内外の事業拠点において、大規模な地震や風水害、干ばつ、戦争、紛争、テロの発生、または大規模な火災等が発生した場合、若しくは事業拠点に大きな被害が及ばずとも従業員の人命確保を最優先として活動を停止させた場合、製品の製造や商品の供給に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、安全で安定した事業活動を維持するため、災害等に対する事業継続計画(BCP)を策定し、代替製造や配送の準備、及び定期的な防災訓練等を実施しています。

⑯感染症、疫病等に関するリスク

 

ヒトに対する未知の感染症や、その他影響が深刻な感染症が地球規模で拡大した場合、従業員の業務就労自粛による生産性の低下や世界的な経済活動の縮小に伴う消費低迷等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、過去の感染症や疫病発生の経験を活かし、感染症等に対する対応マニュアルを整備し、対策に取り組んでいます。
 
 

⑰環境・気候変動に関するリスク

 

事業活動に関して過失の有無に拘わらず、環境に関する法的、社会的責任を過去に遡及して負う可能性があります。また、将来環境に関する規制や社会的要求が強まることで、その対応のための人員や費用負担の増加や新たな環境税導入などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、環境理念及び環境行動指針に則り、その関連法令の更新を適切に把握しこれを遵守するとともに、資源・エネルギーを有効に活用し、環境に配慮した事業活動を行っています。
 また、担当役員を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、推進体制を強化、整備しています。

⑱レピュテーションリスク

 

ソーシャルネットワーキング(以下、SNS)は誤った使い方をするとお客様や取引先のみならず、会社に多大な損害を与えるリスクがあります。当社グループにおいても、従業員による不適切な表現や、不適切な書き込み等がSNSを通じて拡散した場合、また、当社製品やブランド、事業活動等について誤った投稿が拡散した場合、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下につながり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループで、国内外におけるSNS等のモニタリングを行い、早期のリスク発見に努めており、事業及びブランドの活動に悪影響を及ぼすレピュテーションリスク事象が発生した場合は、迅速に対応すると同時に、必要に応じて、情報や企業姿勢を公表する等、当社グループの評判・信用の維持に努めています。

 

 

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、中期経営計画2026において、DOE(株主資本配当率)3.0%以上かつ累進配当の配当方針を掲げております。当該方針に基づき、当事業年度の配当につきましては、DOE3.1%となる1株当たり145円(中間配当70円、期末配当75円)の普通配当を実施しました。

2026年3月期の普通配当は1株当たり145円(中間配当70円、期末配当75円)を実施予定であり、年間普通配当のDOEは3.1%となる見込みです。また、2026年3月期に経営統合10周年を迎えるにあたり、総額約100億円となる1株当たり175円(第1四半期末85円、第3四半期末90円)の記念配当を実施します。これにより2026年3月期の1株当たり配当金の年間合計は320円となる予定です。

当社の剰余金の配当等につきましては、会社法第459条第1項の規定に基づき取締役会の決議をもって期末配当及び中間配当を行うことができる旨を定款で定めております。なお、上記の第1四半期末及び第3四半期末の記念配当は、会社法第124条第1項乃至第3項の規定に基づく基準日設定公告を行い実施する予定です。

内部留保資金につきましては、長期的展望に立ち持続的な成長を実現するために有効投資し、企業価値の向上に努めてまいります。

 

(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2024年11月1日

取締役会決議

3,971

70

2025年5月22日

取締役会決議

4,255

75