リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、以下の記載における将来に関する事項については、提出日現在において当社グループで想定される範囲で記載したものであります。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクのすべてを網羅するものではありません。
①飲食店の支持獲得について
当社グループの連結売上高の大部分を占める飲食店販促サービス売上の成長は、有料加盟店舗数と店舗あたり契約高の増加に大きく依存しており、外食市場の動向や飲食業界の業況変動の影響を受けやすい構造です。
近年、飲食業界において、原材料費、人件費、光熱費の高騰による経営圧迫が深刻化しており、収益性悪化や新規出店・販促投資意欲の減退が懸念されます。
また、通商政策等アメリカの政策動向や米中対立といった地政学リスクの高まりは、景気減速やインバウンド客の減少を招き、飲食店の売上減少や経営悪化に繋がる可能性があります。このような飲食店の業績悪化は、当社の有料加盟店舗数や契約単価の低下を通じて、当社グループの業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。
このような状況に対応するため、当社グループは以下の施策に重点的に取り組んでおります。
飲食店情報サイト「楽天ぐるなび」を通じた送客力強化(サイト変革):顧客の来店意欲を高め、予約・来店に繋がるサイト機能の拡充と情報提供の強化により、コスト増に苦しむ飲食店にとって集客効果の高い販促手段としての魅力を向上させます。
多様な販促・集客支援による「マーケティングエージェント」確立:当社サイトに限定せず、デジタルマーケティング、SNS活用、地域連携など、多様な販促・集客ノウハウを提供することで、飲食店がコスト効率の良い集客方法を見出し、売上維持・向上を実現できるよう支援します。
飲食店運営DX支援(「ぐるなびFineOrder」等)による持続可能な経営モデル進化支援:省人化に貢献するモバイルオーダーや、業務効率化、顧客データ分析などのDXツール提供を通じて、飲食店の高コスト構造からの脱却、人件費やオペレーションコストの削減、顧客単価の向上を支援します。
さらに、飲食店からの収入への依存度を下げるため、飲食店支援以外の収益源の獲得を目指し、農業生産・流通の最適化事業の構築や、飲食店の仕入れ効率化に資するサービスの検討など、日本の外食産業全体の最適化に貢献する事業創出に取り組んでいます。具体的には、食材の安定供給やコスト削減に繋がるサプライチェーン構築支援などを検討しており、飲食店のコスト構造改善を通じて、間接的に当社のサービス利用の継続を促します。加えて、外食に留まらず内食や中食の楽しみの醸成に関するサービスの構築も進めております。
②「楽天ぐるなび」のユーザーの支持獲得について
当社グループは、主として「楽天ぐるなび」のコンテンツの魅力を高めユーザー数を増加させることにより、飲食店の販売促進ツールとしての「楽天ぐるなび」の価値を増大し、当社収益の拡大を図っております。
今後、競合他社のサービス進化や新たな飲食店向けサービスの出現によって「楽天ぐるなび」の相対的競争優位性が低下し、「楽天ぐるなび」に対するユーザーの支持が低迷した場合、また消費者の環境意識の高まりに伴う飲食店選びの基準の変容等により当社サービスの需要が低下した場合には、「楽天ぐるなび」を通じた送客数の伸び悩みによる加盟飲食店の減少等が、業績に影響を及ぼす可能性があります。
そこで当社グループは、「楽天ぐるなび」のユーザー数の維持・拡大を目的に、楽天グループ株式会社との協業のもと日本最大級の経済圏である楽天エコシステムを活用したエンゲージメントの高いユーザーの獲得に取り組むと同時に、消費者の安全・安心で充実した食体験を守るため消費者ニーズに即した掲載情報、コンテンツ等の継続的な見直しに取り組んでおります。
③事業計画の実現に関するリスクについて
当社グループは、「食でつなぐ。人を満たす。」とのパーパス(存在意義)のもと、飲食店に対する販促支援に留まらない事業環境変化に強い事業ポートフォリオ構築を目指しております。しかしながら、事業計画が必ずしも想定通り進展するとは限らず、とりわけ新規事業において人材確保や設備増強等に係る費用が想定以上に発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。また事業拡大の一環として企業買収や出資等を行った際、期待通りの成果を得られないリスクもあります。
そこで当社グループでは、新規事業を含む各事業計画の進捗や収支等を経営執行会議等にて詳細に点検することで、計画との乖離が生じた際のリカバリー策の検討や撤退に伴うリスク及び費用等を評価する等適切な対策を実施しております。
④楽天グループ株式会社との関係について
当社グループは、インターネットサービス事業において高いシナジー効果を実現し、これによる将来の当社グループの業績拡大と発展を見込んで、楽天グループ株式会社(以下「同社」といいます。)と資本業務提携関係にあります。
2025年3月31日現在、同社は当社グループの議決権の16.44%を保有する主要株主であり筆頭株主であります。ただし当社グループの重要な経営判断において、同社への事前報告や同社による事前承認は必要とされておらず、また当社グループと同社との間の取引は、独立した第三者間の取引と同様に一般的な条件で行われており、同社からの独立性は確保されております。
将来的にこの提携関係が解消される可能性は極めて低いと考えておりますが、仮に維持できなくなった場合、飲食店への送客力の減少による収益の低下や当社グループの事業展開及び資本政策に影響を及ぼす可能性があります。
そこで、当社グループでは同社との資本業務提携関係を維持するため、楽天ID連携会員数の拡大や楽天エコシステム内での外食事業の存在感の向上を図る等、緊密で相互的な協力関係を強化し、両社のさらなる発展に努めております。
⑤人材の確保について
当社グループでは、事業領域の拡大に伴い人材の確保・育成がますます重要になっております。そのため、人的資本の活用が計画通りに進まない場合や重要な人材が流出した場合には、期待通りの収益を得ることができず、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して、当社グループでは社員の働きやすさとやりがいの向上による「働きがいの向上」を図るため、2020年に「働き方進化プロジェクト」を発足し、当社グループにおける人的資本経営の基礎を強化してまいりました。さらに2024年4月に人的資本経営の基本方針となる「人事ポリシー」を制定し、本ポリシーのもと採用・育成の強化、配置・異動の適切化のほか、環境整備や人事制度の強化、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでおります。
⑥事業環境の変化や技術革新に対応するための投資について
当社グループは、ITを事業の根幹と位置づけ、サービス価値の向上に寄与する最新技術を積極的に採用しております。特に生成AI技術については、その急速な進化を踏まえ、専門組織(CoE:Center of Excellence)を立ち上げ、トップマネジメントのもと全社的に取り組みを推進しております。生成AIの検証及び導入においては、サービスや業務への適用可能性を見極めながら、段階的かつ効果的な実装を進めております。
しかしながら、IT技術の進歩は目まぐるしく、すでに導入済みの技術が時代遅れとなった場合、ネットワーク機器やソフトウェアの開発および導入に係る投資費用が想定以上に発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
そこで当社グループでは、生成AIを含む最新技術の動向を常に注視しつつ、資金の確保と戦略的な技術投資を行うことで、将来的な技術変革に柔軟に対応できる体制を整えております。
⑦開発体制について
当社グループでは、絶えず新たなサービスを創出するため、開発人材の積極的な投入に努めております。しかしながら、計画通りに開発要員を確保できない場合や、開発計画に対する人員配置やスキルレベルのバランス調整が困難な場合には、事業進行の遅延や投資効果の未達等が発生し、業績へ影響を及ぼす可能性があります。
これに対処するため、当社グループでは多様な採用手法を駆使し必要な人材確保に努めるとともに、計画的かつ効果的な開発人材の配置・スキルアップを推進しております。
⑧システムに関わるリスクについて
当社グループの主力である飲食店販促支援サービスは、インターネットを介して提供されており、接続環境やコンピューターネットワーク基盤の安定稼働に大きく依存しております。そのため、外部からの攻撃や内部の人的過誤、自然災害等によるシステム障害が発生した場合、顧客に対するサービス提供の中断やユーザー情報の損失等が起こるリスクがあります。こうした事態が生じた場合には、サービス利用料の減少やユーザーへの補償、当社サービスへの信頼性低下等が発生し、業績へ影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクを低減するため、当社グループでは、バックアップセンターの充実やサーバーの拡充および冗長化、サーバールームへの入退室管理システム導入によるセキュリティ強化、社内ネットワークの監視体制強化に加え、クラウド環境への段階的な移行(クラウドマイグレーション)を進めることで、柔軟かつ災害耐性の高いインフラ基盤の構築を図っております。
⑨資金繰りについて
当社グループでは、将来の成長のための投資強化に向けて追加資金の調達が必要となる場合があるところ、金融市場の変動、信用状況の悪化に加え、今後の金利上昇等により、資金調達が困難となるリスクが存在します。
また、予期せぬ事態が発生した場合、想定外の費用が発生することもあり得ます。これらの資金繰りに関連するリスク(金利変動リスクを含む)が現実のものとなった場合、当社グループの財務計画や事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
これに対して、当社グループでは財務の健全性を維持するため、適切なキャッシュフロー管理及びリスク管理を徹底しております。また、状況に応じ多様な資金調達を行えるよう、投資家及び金融機関等からの信頼感醸成に向けた情報開示の充実等、安定した資金繰りの確保に努めております。
⑩知的財産権について
当社グループが提供するサービスの技術やノウハウ、サービス名称等の知的財産権が他社に先行して取得されている場合、必要な権利を保有していないことによりサービス開発及び販売等において支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。また将来、当社に対する権利侵害に係る訴訟が起きるリスクがあり、ライセンス料の支払いや損害賠償等の負担が業績に影響を及ぼす可能性があります。
これに対処するため、当社グループでは知的財産専門部署を設け、権利の適切な取得と侵害防止に取り組んでおります。また、新たに開発されたサービスのうち権利の対象となる可能性があるものは、必要に応じて特許や商標の出願を進めております。
⑪個人情報の取扱いについて
当社グループでは当社グループが運営する各種サービスの利用促進を目的に、広範に会員登録を推進しており、その過程で様々な個人情報を取得しております。そのため、外部からの侵入者や内部関係者、業務委託先等による個人情報の流出や不正使用が発生した場合、損害賠償請求を含む法的責任や当社グループの信頼性低下等が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これに対処するため、当社グループでは個人情報の保護及び管理に特化した専門部署を設け、ハード及びソフト両面のセキュリティ対策を講じております。ハード面では、物理的なセキュリティ強化としてセキュリティシステムの更新及び強化を定期的に行うほか、不正アクセスやデータ漏洩を防ぐための最新技術の導入に努めております。ソフト面では、個人情報の取り扱いに関する厳格な規程のもと社員や業務委託先等のセキュリティ意識向上のための研修を定期的に実施する等、その遵守を徹底しております。加えてユーザーに対する透明性を確保すべくプライバシーポリシーを当社グループのサイト上に明示する等、会員情報の安全性保持及び当社グループに対する信頼性の維持・向上に取り組んでおります。
⑫法規制の変更可能性及び影響について
オンラインプラットフォーム運営、データ収集・利用、ポイント付与等のユーザーインセンティブに関し、新たな法的規制が制定された場合、情報表示やデータ取扱等に係るシステムの大規模な改修、開発・運営労力の増大、コンプライアンス体制強化費用が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、下請法等サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を促す規制が強化された場合、当社グループの取引条件の見直しやコスト構造の変動が生じ、業績に影響を与える可能性があります。
これに対処するため、当社グループでは新たな法的規制(価格転嫁に関する規制を含む)の動向を継続的に注視し、適切なコンプライアンス体制の保持と必要な対応策の検討を進めております。
なお、CO2排出量に関する規制強化に伴うコスト増加リスクについては、当社グループの事業の特性上限定的との認識であります。
⑬震災等の巨大災害の発生について
震災や台風、洪水等の巨大災害が発生した場合、飲食店をはじめとする多くの顧客に甚大な被害がもたらされることが想定されます。また当社グループの人員、施設、システム等にも著しい損害が生じる可能性があり、これにより顧客ネットワークやサービス提供のインフラが損なわれ、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
これに備えて、当社グループでは主として以下の施策を実施しております。
・就業場所に捉われないリモートワークの仕組みや環境の構築
・災害影響の軽減及びサービス継続のためのデータセンターの地理的分散、サーバーの冗長化、クラウド環境
への段階的な移行(クラウドマイグレーション)
・緊急時の迅速な意思決定及び行動のための事業継続計画(BCP)の策定・定期的な見直し
・従業員の安全確保及び緊急時の迅速な対応に向けた訓練・教育プログラムの実施
これらの対策により、万一災害が発生した場合においても、顧客へのサービス提供を迅速に復旧し、業績への影響を最小限に抑える体制を整えております。
なお、温暖化の進行に伴い自然災害の激甚化や当社グループサービスの需要低下が生じるリスクに対しては、飲食店支援以外の収益源の獲得による事業環境変化に強い事業ポートフォリオ構築の必要性を認識し、農業生産、流通の最適化に資する事業の構築、飲食店の仕入れ効率化に資するサービスの検討のほか、内食や中食の楽しみの醸成に関するサービスの構築に取り組んでおります。
⑭レピュテーション
当社グループが提供するサービスの品質や当社グループの誠実性及び公正性、環境・社会への取り組み姿勢等についてネガティブな評判が生じ、ステークホルダーからの信用やブランド価値の低下のほか訴訟提起や行政処分等が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
そこで、当社グループではすべてのステークホルダーからの信頼に応え、期待される社会的責任を果たすため、創業からつなぐ「日本の食文化を守り育てる」との想いを礎とした「食でつなぐ。人を満たす。」とのパーパス(存在意義)を中核とした理念体系にもとづく経営を徹底しております。具体的には、継続的なコーポレートガバナンスの強化や人的資本経営の推進、また気候変動に関するリスク・機会の特定とそれらへの対応等に取り組んでおります。
なお、経営の透明性を高めるにあたっては、財務情報のみならず気候変動対応を含む非財務情報の開示の充実に取り組んでまいります。
⑮プライム上場維持基準の適合について
当社グループは、2025年3月末時点におけるプライム市場の上場維持基準への適合状況について、流通株式時価総額が基準に適合せず、2025年4月1日より改善期間に入っております。2026年3月末までに適合しない場合には、監理銘柄・整理銘柄(原則として6か月)に指定後、2026年10月1日に上場廃止となります。
そこで当社グループでは、「上場維持基準の適合に向けた計画に基づく進捗状況及び計画期間の変更について(2025年5月23日公表)」に記載のとおり、中期事業方針(2024年3月期から2026年3月期)に基づくビジネスモデルの進化と株式市場との積極的な対話及び非財務情報の発信強化により、改善期間内での基準適合に取り組んでまいります。同時に、内外の環境変化や市況の影響等により適合しない場合を考慮し、スタンダード市場への市場区分変更に必要な対応について、適宜検討・実行してまいります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆様への利益配分を経営の重要課題として捉えており、企業価値の最大化を念頭に健全な財務体質の維持及び積極的な事業展開に備えるための内部留保の充実等を勘案しつつ収益状況に応じた利益還元を実施することを基本方針としております。
当社の剰余金の配当は基本的に中間配当と期末配当の年2回実施することとしており、会社法第459条第1項の規定に基づき取締役会の決議によって剰余金の配当を行うこと、また毎年9月30日又は3月31日を基準日とし配当を行うことができる旨を定款に定めております。
当期の普通株式に係る配当については、前述のとおり当社業績は黒字転換したものの利益創出力を一段と高める必要があり、現時点においては当社事業の中長期にわたる再成長のための事業展開に備えた内部留保の確保が最も重要な課題であること等から、誠に遺憾ながら無配とする予定です。
なお、2025年2月7日開催の取締役会決議に基づき、同年2月25日にA種優先株式の全部を償還したため、当期の当該株式に係る優先配当はありません。