2024年9月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性がある主要なリスクは以下のとおりであります。

当社はこれらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合における影響の最小化のため「リスク管理委員会」の開催等も含めて、最大限の努力をしてまいります。「リスク管理委員会」につきましては、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」に記載のとおりであります。

また、当社として必ずしも重要な事業上のリスクに該当しないと考える事項につきましても、投資者の判断上、あるいは当社の事業活動を理解するうえで重要であると考えられるものについては、投資者に対する積極開示の観点から記載しております。当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行っていただく必要があると考えております。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)事業環境に関するリスク

① ターゲットとなる業界について

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低

 当社がターゲットとしているウェルネス市場(医療/介護市場)のデジタルトランスフォーメーション市場の規模は、2020年度731億円から、2030年度予想では2,115億円に拡大することが見込まれております(『2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、ベンター戦略編』(富士キメラ総研))。市場拡大ペースの急速な鈍化や、当社サービスの競争優位性が発揮されないような局面においては、市場が拡大した場合においても当社の成長ペースが市場拡大と相関しない可能性があります。当該リスクへの対応として、サービスの横展開により市場を横断的に獲得する、サービスラインナップを拡充する等を行っておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② マクロ経済について

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低

 当社AIプロダクトは個人事業主や中小事業者に多数利用されており、国内の景気後退時には顧客のサービス利用者が減少し財務体制が脆弱な顧客の経営状態に影響を及ぼす可能性はありますが、顧客の属する業界・規模・地域は様々であり、AIソリューションにおいてはAIプロダクトと比較して顧客規模が大きい企業をターゲットとしていることからそのリスクは分散されているものと認識しております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 競合他社について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低

 当社は、本書提出時点においてAI/ウェルネス関連領域において事業展開をしておりますが、当該分野はその成長性から注目されており、多くの企業が参入しており、当社の競争力が低下する可能性があります。AIソリューションについては、これまでのプロジェクトで蓄積された知見やデータで学習・強化されたAIアルゴリズムを活用することで、事業の拡大及び競争力の維持に努めてまいります。また、AIプロダクトにおいては顧客の利用促進のため導入時のオンボーディングプログラムにおいて顧客業務フローに組み込むようなアドバイスの実施や、定期的なサポート等によりAIプロダクトの解約率(「シセイカルテ」「マルチカルテ」「カルティセールス」におけるMonthly Gross Revenue Churn Rateの平均値)は、2023年10月から2024年9月までの平均で0.82%と低くなっております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 技術革新について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低

 当社は「ひとを科学し、寄り添いをつくる」をミッションとして掲げ、「人の身体性・精神性・行動をデータとロジックに基づき分析/可視化する。また、その技術を簡単に利用できるように、仕組みを開発し続ける。その仕組みによって、人と社会がより最適な状態で触れ合い、人のポテンシャルを解放したり、生活の質を高めたり、と心身豊かになれる世界をつくります。」の実現を目指しております。そのため、これらの技術やその周辺技術、またその技術を活用したAIソリューション及びAIプロダクトが競争力の源泉となっており、急速な技術革新があった場合において、変化に対応する開発費や開発工数等が大幅に増加する可能性があります。当該リスクへの対応や更なる競争力の向上のため、継続的な情報収集、優秀なエンジニアやアルゴリズムエンジニアの採用や教育にも注力しております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、当社の事業進捗や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業内容に関するリスク

① 特定の取引先・サービスに対する売上比率について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低

 当社はAIソリューション及びAIプロダクトにおいて、新規開発からその後のライセンス提供や運用保守、さらに追加の開発が発生するなど継続的に売上高が計上される顧客が多くを占めております。その結果、当事業年度における売上比率は、上位取引先3社で全体の29.0%を占めております。新規顧客開拓を含めた積極的な営業活動により、特定の取引先への売上比率は低下することが見込まれ、それに伴い当該リスクの顕在化の可能性も低下すると想定しております。なお、AIソリューションにおいてそのプロジェクトの規模や期間により、一時的に特定の取引先に対する売上比率が上昇することが想定されその場合におけるリスクは限定的であると考えておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、AIプロダクトのうち「シセイカルテ」の売上高が占める割合は、2024年9月期において8割程度となっております。「シセイカルテ」は2021年1月にリリースされ、当社AIプロダクトでは最初にサービス提供を開始しており、提供期間に応じてストック収益が積み上がるビジネスモデルであることが要因でありますが、「マルチカルテ」等のサービス提供開始によりその割合は低下しております。これまで「シセイカルテ」において、当社収益に影響を及ぼすトラブル等は発生しておりませんが、今後の様々なAIプロダクトの拡販・創出により同サービスの売上割合が低下することが見込まれ、それに伴いに何らかのトラブル等があった場合の影響も低下すると想定しております。

 

② 研究開発やプロジェクトの進捗等について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社では、主に自社で研究開発を実施するAIプロダクト、当社の保有する知見やデータで学習・強化されたAIアルゴリズムを活用するAIソリューションを提供しており、各開発フェーズにおいて想定以上に工数がかかる可能性はあります。当社ではAIソリューション及びAIプロダクトの開発体制について様々な共通化(インフラ、アルゴリズムモジュール、開発人員)により柔軟な開発体制を構築することや、プロジェクト管理の徹底により当該リスクを低減しておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 新規サービス・新規機能の開発について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低

 当社では継続的に新規サービスや新規機能の開発を進めており、各サービスの事業拡大や顧客維持の源泉となっております。しかしながら、開発が想定どおりに進まない場合や、開発工数が想定以上となる可能性があります。そのため当社ではスケジュール管理の徹底や、複数パイプラインを持つことで当該リスクを低減しておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

④ システム障害について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

 当社のAIソリューション及びAIプロダクトにおいて提供しているサービスの大半は、インターネット通信網により提供しております。そのため、自然災害や事故によりインターネット通信網が切断された場合には、サービスの提供が困難となります。サイバー攻撃等により当社サービス基盤への攻撃を受けた場合には、システム障害により事業遂行が困難になることや、事業上の重要機密が漏洩する可能性があります。また、予想外の急激なアクセス増加等による一時的な過負荷やその他予期せぬ事象等により、当社のサービスが停止する可能性があります。当社はセキュリティの強化や冗長化等の対策を講じており、これまでそのような大規模なシステム障害は発生しておりませんが、サービスの安定的な提供が行えないような事態が発生する可能性があり、当該リスクが顕在化した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ ソフトウエアの資産計上について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

 当社は、第9期の期初より主にAIプロダクトに係るソフトウエアについて、将来の収益獲得が確実と認められるものに限り無形固定資産として資産計上しており、一定期間で減価償却を行っております。ソフトウエアの開発に際しては、市場環境等を慎重に見極めておりますが、市場や競合状況の急激な変化などにより、今後利用が見込めなくなった場合や、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、除却あるいは減損の対象となる可能性があり、当該リスクが顕在化した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 減価償却費の増加について

発生可能性:高、発生可能性のある時期:今後数期間、影響度:中

 上記「⑤ ソフトウエアの資産計上について」に記載のとおり、当社は第9期の期初よりソフトウエアの資産計上を開始しており、今後数期間にわたり徐々に減価償却費が増加することが見込まれております。当社としては固定的な減価償却費を上回る収益の獲得に努めてまいりますが、想定どおりに進捗しない場合には売上総利益率が低下する可能性があり、当該リスクが顕在化した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 先行投資から得られる効果が期待どおりに実現しないリスクについて

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 AIプロダクトは、先行的なソフトウエア投資や研究開発費及び広告宣伝費を投下し、サービス開発とユーザー獲得のためのマーケティング活動を進めることが必要であり、その結果、全社業績においても赤字を継続しております。今後についても、収益性の向上に努めながら、先行的な投資を継続する方針です。サービス開発においては顧客のニーズを見極めながらより成果につながるよう努めており、また提供するサービスについては効果的・効率的なマーケティング活動に努めておりますが、経営環境の急激な変化、その他本「事業等のリスク」に記載のリスクの顕在化等により、これらの先行投資が想定どおりの成果につながらない可能性があります。当該リスクが顕在化した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑧ 情報セキュリティ体制について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

 当社は、AIプロダクトにおいては個人情報を取扱っており、またAIソリューションにおいては顧客の機密情報及び顧客が保有する個人情報が含まれるデータを取扱う場合があります。そのため、情報セキュリティ体制や情報管理体制を構築や継続的な強化を行うとともに、より高度な情報管理体制の構築のため2022年5月にJIS Q 27001:2014(ISO/IEC 27001:2013)の認証を取得しております。しかしながら、人為的なミスや不正アクセス等による情報漏洩が発生する可能性は完全に否定できず、当該リスクが顕在化した場合には、顧客への損害賠償や当社の社会的信用の失墜等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑨ 法的規制等について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社は、「カルティチャット」を提供するにあたり、電気通信事業法に基づき「電気通信事業者」として届出を行っており、通信の秘密の保護が課せられております。本法令のほか、当社の事業上運営に関連する法令に違反した場合には、業務改善命令等の処分を受ける可能性があります。当該リスクを低減させるため、リスク管理委員会の設置や適時に担当者が顧問弁護士に直接相談できる体制を整備しておりますが、当該リスクが顕在化した場合には当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 知的財産管理について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社は知的財産権を重要な資産と捉えて、弁理士と連携し必要に応じて事業に関する知的財産権の保護に努めております。また、当社による第三者の知的財産権侵害の可能性についても、調査可能な範囲で対応を行っており、こちらも必要に応じて弁理士と連携することが可能となっております。当社が認識せずに他社の特許を侵害した場合には、損害賠償請求、使用差止請求又はロイヤリティの支払要求が発生する可能性がありますが、その時期は想定されるものではなく短期的に顕在化する可能性は低いと想定しております。しかしながら、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当該リスクが顕在化した場合には当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)事業運営に関するリスク

① 特定の人物への依存について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低

 当社代表取締役社長である築山英治は、当社の創業者であるとともに、大株主であり、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしております。現状において、何らかの理由により築山英治が当社の業務を継続することが困難になった場合には次の代表取締役社長が就任するまでの期間やその後の定着までの期間において業務執行に支障をきたす可能性はあります。当該リスクに対応するため、当社は特定の人物に過度に依存しない体制を構築するべく、幹部人材の採用・育成や積極的な情報共有等により経営組織の強化を図っております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 人材の確保及び育成について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社が今後も持続的な高成長を続けるためには、優秀な人材の確保・育成が必要不可欠であります。当社の求める水準に合致する人材の確保及び育成が計画どおりに進まない可能性があります。当該リスクに対応するため、積極的な採用活動を進めるとともに、人材の育成も進めており、また外部の業務委託者との連携を強化することでリソースの確保にも努めております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 小規模組織であることについて

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社は、2024年9月30日現在において、取締役(監査等委員を除く)3名、取締役監査等委員3名、従業員41名と小規模な組織となっており、内部管理体制は事業の拡大及び従業員の増加に合わせて整備を進めております。適切な人材確保や配置ができず組織的な対応が困難となる場合や、事業規模に応じた事業体制、内部管理体制の構築が追いつかない可能性はあります。当該リスクに対応するため今後もより一層の人員充実を図る予定ですが、当該リスクが顕在化した場合には当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 訴訟について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中~大

 当社は本書提出日現在において、当社が当事者として提起されている訴訟はありません。コンプライアンス規程を整備して役職員へ周知すること等により法令違反などの発生リスクの低減に努めておりますが、当社又は当社役職員を当事者とした訴訟が発生した場合には、その訴訟の内容や進行状況によっては、当該訴訟に対する金銭的な負担の発生や、当社又は当社役職員のレピュテーションが悪化して当社の社会的信用が毀損されるなど、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 大規模な災害等に関するリスク

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中~大

 当社は、テレワークが可能な体制を構築しており、大規模な地震、台風、津波等の自然災害、火災、停電、未知の感染症の拡大等が発生した場合でも事業継続が可能となっており、新型コロナウイルス流行下においても大きな影響は発生しておりません。しかしながら、これらの災害等が長期間に及ぶ場合には、顧客企業や当社の顧客ターゲットとなる企業の経営判断・事業運営に大きな影響を与える可能性があります。当該リスクに対応するため、顧客及び顧客の属する業界の拡充を行っておりますが、当該リスクが顕在化した場合に、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他のリスク

① 配当政策について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題と認識しておりますが、財務体質の強化に加えて事業拡大のための内部留保の充実等を図り、収益力強化のための投資に充当することが株主に対する最大の利益還元につながるものと考え、創業以来配当を実施しておりません。今後においては、業績・財務状況及び事業環境等を勘案したうえで、株主への利益配当を検討していく方針でありますが、持続的な成長に向けた投資を戦略的に実行する場合や当社の事業が計画どおり推移しない場合など、配当を実施できない可能性があります。

 

② ストック・オプションによる株式価値希薄化について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社は事業価値・企業価値向上に貢献した、役員、従業員に対するインセンティブ等を目的としたストック・オプション制度を採用しております。また、今後も事業価値・企業価値向上のための施策としてストック・オプション制度を活用していくことを予定しており、現在付与している新株予約権に加え、今後新たに付与される新株予約権について行使が行われた場合は、既存株主が有する株式価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。新たに付与される新株予約権について、その時期は想定されるものではありませんが、現在付与している新株予約権については短期及び中期において一定程度が行使され当該リスクが顕在化するものと想定しております。なお、本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は111,100株であり、発行済株式数1,577,100株の7.04%に相当しておりますが、業績の達成条件を付すことで、株式価値希薄化を上回る株式価値向上に努めてまいります。

 

③ 税務上の繰越欠損金及び資本政策・税制適用について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社は事業拡大のための先行投資等により2021年9月期から2023年9月期まで当期純損失を計上したこと、及び当該資金を株式会社PKSHA Technologyからの借入れにより調達したことにより、2023年9月期においても債務超過となっておりましたが、2024年4月に行った第三者割当増資により債務超過は解消しております。一方で税務上の繰越欠損金は引続き存在しており、将来における法人税等の税負担が軽減されることが予想されております。当社の事業が順調に推移し、当該繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく税負担が生じることとなり、当社の業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。また、資本金の額によっては、当社の規模に照らして税負担が重くなることが想定されることから、株主還元等の機動的かつ柔軟な資本政策の実現と適切な税制への適用を通じて財務内容の健全性の確保に努めてまいりますが、法令の改正や社会情勢等から当社の想定する施策が実施できない場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

④ 当社株式の流動性について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社の大株主には親会社である株式会社PKSHA Technology、当社役職員が含まれており、株式会社東京証券取引所の定める上場維持基準は25.0%であるところ、本書提出時点において30.31%となっております。

 今後は、親会社からの売出し協力、当社の事業計画に沿った公募増資による成長資金の確保、役職員への一部売出し要請、ストックオプションの行使による流通株式数の増加分等の組み合わせにより、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 資金使途について

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 2024年10月28日払込みの公募増資及びその後のオーバーアロットメントの売出しに伴う第三者割当増資による調達資金につきましては、設備投資(AIプロダクトソフトウエア)及び借入金の返済に充当する予定であります。しかしながら、急激な経営環境の変化が生じ、その変化に柔軟に対応していくため、調達資金の使途を現時点での計画以外の使途へ変更する可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を正確に予測することはできませんが、計画以外の使途へ変更が発生した場合は、速やかに開示いたします。また、計画どおりに使用された場合でも、想定どおりの投資効果を得られない可能性があります。

 

⑥ 株式会社PKSHA Technologyとの関係に関する事項

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 株式会社PKSHA Technology(東京証券取引所市場プライム上場企業)は、当事業年度末時点において当社発行済株式総数の53.45%を保有し、本書提出時点においては35.97%を保有する筆頭株主であり、AI Research & Solution事業及びAI SaaS事業を行っております。当社は、同社の子会社となった以降においても、引き続き独自に経営方針・政策決定及び事業展開についての意思決定を行いそれが尊重されていたことで、経営の独立性は確保されておりました。当社上場後も同社は当社筆頭株主として株主としての権利は保持しておりますが、適切なコミュニケーションを引き続き行うことにより、株主総会での議案の賛否やその他の株主としての権利行使により、当社の独立性が阻害されるリスクが顕在化する可能性は低いと想定しております。

 

⑦ PKSHA Technologyグループにおける当社の位置付けについて

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 PKSHA Technologyグループは、AI Research & Solution事業及びAI SaaS事業を行っており、当社はAI SaaS事業セグメントに属しています。当社はExpert AIをコアに販売促進に強みを持つ当社と、業務効率化等に強みを持つ同社グループの事業領域は明確に区分されております。その中でも当社は、AIプロダクトの中核サービスである「シセイカルテ」を中心とした独自のSaaSプロダクトを展開しており、グループ内に同様の事業や類似事業を行う会社はありません。PKSHA Technologyグループ内の会社において、当社と同様の事業や類似事業が行われる可能性がありますが、グループ内競合の発生によるグループ全体での営業効率の低下等といったデメリットが見込まれることから当該リスクが顕在化する可能性は低いと想定しております。なお、同社グループ及び同社AI SaaS事業セグメント売上高に対する当社売上割合は以下のとおりであります。

                                        (単位:千円)

 

当社

PKSHA Technology

グループ

PKSHA Technology

AI SaaS事業セグメント

売上高

634,946

16,893,185

6,963,467

当社売上割合

3.76%

9.12%

 

※ いずれの数値も2024年9月期の数値であります。

   なお、当社とPKSHA Technologyグループとの人的関係及び取引関係については以下のとおりであります。

 

 

(人的関係)

 本書提出日現在、株式会社PKSHA Technology及び同社を含めたグループ会社からの出向者はおりません。

 

(取引関係)

 当事業年度における当社と株式会社PKSHA Technology及び同社を含めたグループ会社との主な取引は、以下のとおりであります。

                                      (単位:千円)

取引先

取引内容

取引金額

株式会社PKSHA Technology

AIソリューション提供

74,300

家賃の支払い

500

管理業務委託

1,850

利息の支払い ※

3,353

株式会社PKSHA Associates

AIソリューション提供

33,400

 

※ 対象となる借入金は、前事業年度末において450,000千円ありましたが、2024年9月期第3四半期において

  同社からの借入金は全額返済しております。また、家賃の支払い及び管理業務委託は終了しております。

 

 取引にあたっては、当社における標準的な価格や市場の実勢価格等を勘案して、取締役会で決定のうえ行っております。特に当社サービス提供に関しては、その状況を取締役会において定期的に確認しており、また監査等委員監査の重点監査項目としております。当事業年度における取引金額の割合は、PKSHA Technologyグループ全体との間で、売上において15%程度、原価・販管費の合計額において1%程度であります。今後については、潜在的な事業機会を捉える中で、PKSHA Technologyグループのネットワークを通じた顧客にアクセスをすること、PKSHA Technologyグループ各社との協業やPKSHA Technologyグループ全体での取り組みを進めることで、グループに対する事業上の依存度が増して、結果として株式会社PKSHA Technologyが当社に与える影響力が高まる可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

 当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題と認識しておりますが、財務体質の強化に加えて事業拡大のための内部留保の充実等を図り、収益力強化のための投資に充当することが株主に対する最大の利益還元につながるものと考えております。

 そのため、第9期事業年度においても、上記方針に沿って配当は実施しておりません。また、創業以来配当は実施しておらず、当面は機動的に有効投資ができるよう内部留保の充実を図る方針であります。

 内部留保資金については、財務体質の強化や人材への投資・育成といった収益基盤の構築、AIプロダクトの機能拡充や新たなプロダクト開発に充当することを検討しております。

 投資の結果、事業の成長、資本効率の改善等による中長期的な株式価値の向上を実現し、業績・財務状況及び事業環境等を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的に剰余金の配当を実施してまいりたいと考えておりますが、本書提出時点において配当実施の可能性及びその時期については未定であります。

 当社は定款において剰余金の配当を中間配当及び期末配当で行う旨を定めておりますが、配当を行う場合は期末配当にて年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。配当の決定機関は取締役会であります。