2024年6月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあります。当社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避に努め、発生した場合に適切に対応する所存であります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

① 新型コロナウイルス感染症拡大によるリスクについて

新型コロナウイルス感染症における行動制限の撤廃にともない、行動制限が緩和され経済活動は回復傾向にありますが、消費者の飲食スタイルが大きく変化しております。消費者のニーズに適切に対応できない場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 外食業界の動向及び競合の激化について

当社グループはお客様のニーズの変化を考慮した新規出店や業態開発を行っておりますが、外食市場の縮小、競争の激化などにより既存店の売上が当社グループの想定以上に減少した場合、又は経費削減策が奏功しなかった場合は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 店舗賃借物件について

当社グループの直営店舗は、賃借物件であり、その賃貸借契約は主に更新可能なものでありますが、賃貸人側のやむを得ない事情により解約又は解除された場合、業績好調な店舗であっても閉店を余儀なくされる可能性があります。
 また、新規出店に際して、商圏の人口、賃料などを総合的に判断した結果、条件に合致する物件が調達できない場合、新規出店の計画が達成できない可能性があります。
 さらに、当社グループは、賃貸借契約締結の際に敷金又は保証金を預託する場合、事前に賃貸人の与信審査を行うなど、賃貸人の信用不安に備えておりますが、これらの敷金又は保証金のうち全部又は一部が倒産その他の賃貸人側の事情により回収不能となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。加えて、定期借家契約の規定により賃貸借契約が早期に解約できない場合、また解約に伴う違約金等の発生、後継テナントがつかないことによる原状回復費用が発生する場合等、店舗閉鎖に伴い想定していなかった費用が発生する可能性があります。

 

④ 食材の調達について

BSEや鳥インフルエンザ等の疫病の発生、異常気象、天候不順、自然災害の発生、為替相場、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化等により、食材の調達が難しくなり、調達価格が上昇した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 食の安全性

当社グループは、食材の安全性確保のため、取引先の協力を仰ぎながら、食品のトレーサビリティを確立しております。加えて、産地、加工工場の現地確認及び添加物、微生物検査基準を遵守した食材を選定するなど、食材の安全を確保するとともに、お客様へ正確な情報の提供に努めております。万一、表示内容に重大な誤り等が発生した場合には信用低下等を招き、店舗売上が減少する他、調達先やメニューの主要食材の見直し等を実施するためのコストが発生するなど、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 

 

⑥ 営業店舗での食品事故

当社グループの各店舗では、食品衛生法に基づき、所轄の保健所より飲食店営業許可を受け、食品衛生責任者を設置しております。食中毒の発生を未然に防ぐために、品質管理及び衛生管理を徹底し、お客様に安心していただける料理の提供に努めておりますが、万一、食品事故が発生した場合、食材の廃棄処分、損害賠償による損失の発生、一定期間の営業停止などにより当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 

 

 

⑦ 人材の確保及び教育について

当社グループは、中長期的な飲食事業の展開(直営店及び運営受託店舗の出店等)や新規事業の開発等の各事業拡大を見据え、新卒採用・中途採用、海外人材の採用の他、アルバイト従業員からの社員登用も含めた人材の確保を行っております。また、階層別研修や評価制度を含めた人事制度のさらなる拡充に注力をしていく方針です。しかしながら、人材の確保及び教育が計画どおりに進まない場合には、各事業の拡大計画の遅延又は中止により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ アルバイト従業員に対する社会保険加入の義務化について

当社グループは、主に店舗にて多数のアルバイト従業員を雇用しております。今後、アルバイト従業員への社会保険適用範囲の拡大が実施された場合、社会保険料負担の増加などにより人件費が上昇し、当社グループの経営成績に影響が生ずる可能性があります。

 

⑨ 経済事情の急変

年度初めには予想もできなかった経済事情の急変があった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 

 

⑩ 自然災害等の影響について

当社グループの店舗は、首都圏を中心に運営をしており、地震、台風、津波等により、当該エリアの被害が甚大な場合や、火災等により営業の継続が困難となった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ 商標権の管理について

当社グループは、複数の業態を保有しております。業態の名称については、使用に先立ち、外部の専門家などを通じて、第三者の商標権を侵害する恐れがないか確認し、可能な限り、当社グループにおいてその名称を商標登録することで、第三者に対する権利侵害を回避するとともに、当社グループ権利の確保に努めております。しかしながら、当社グループの使用する名称が第三者のものと類似するなどの理由により、第三者の商標権を侵害していると認められた場合には、当該商標の使用差止め、使用料又は損害賠償の支払い請求がなされる可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。  

 

⑫ インターネットなどによる風評被害について

SNSの普及に伴い、インターネット上の書き込みや、それを発端とするマスコミの報道による風評被害が発生・拡散された場合において、当社グループ業態の価値が棄損され、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑬ 「固定資産の減損に係る会計基準」の適用について

当社グループは、営業店舗を中心に設備等を保有しており、直営店舗について営業活動から生ずる損益が、継続してマイナスとなる場合には、「固定資産の減損に係る会計基準」の適用により減損損失が計上され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。  

 

⑭ 水産事業の6次産業化モデルについて

当社グループは、外部環境に大きな影響を受けずに安定的な事業継続を実現する当社独自の事業ポートフォリオの構築を目的として、飲食事業とのシナジーを追求した水産事業の6次産業化モデルを構築しております。しかしながら、水産資源減少や国内外の魚食需要の変動など水産物の需要変化や水産流通の構造変化など予期しない事象の発生により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑮ M&Aについて

当社グループは、事業の拡大及び競合他社との差別化を図る有効手段のひとつとして、当社グループに関連する事業で、シナジー効果を期待できるM&Aを検討していく方針です。M&Aの実施に際しては、対象企業の財務・法務・ビジネス等について事前にデューデリジェンスを行い、十分にリスクを吟味したうえで決定いたしますが、買収後に事前の調査で把握することができなかった偶発債務の発生等の問題が生じた場合、また事業の展開等が計画通りに進まない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑯ 法的規制について

当社グループは、食品衛生法、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)、健康増進法、消防法、エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器リサイクル法)及びその他の当社グループ事業に関する各種法令による規制を受けております。これらの法的規制が強化された場合、当社グループは社会的責任を第一に考え、法令や各行政機関からの要請には応じる方針であることからも、それに対応するための新たな費用が増加すること等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑰ 海外事業展開拡大に係るリスクについて

当社グループは、アジア地域を中心に現地合弁企業による飲食事業を展開するとともに、同企業へ日本の食材を供給してまいります。当該外国において政治・社会不安、経済情勢の悪化、法令政策の変更、外国為替相場の変動によって海外事業展開に支障が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑱ 継続企業の前提に関する重要事象等について

当社は、首都圏一等立地に構える大型・空中階の「総合型居酒屋」への需要が減少したこと、及び新型コロナウイルス感染症拡大の時期において、主力事業である都心部の店舗を一気に閉店し、売上高の規模を失う反面事業構造を大きく転換し、新たな事業の柱を構築しに行ったことにより、前事業年度まで6期連続の営業損失を計上しております。なお、当社は2022年6月期より連結財務諸表を作成しており、前連結会計年度まで2期連続の営業損失を計上しております。当連結会計年度においては、営業損失6億83百万円、経常損失6億83百万円、親会社株主に帰属する当期純損失7億11百万円を計上し、営業キャッシュ・フローは8億80百万円のマイナスとなりました。

以上により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しておりますが、今後の資金計画を検討した結果、当面の事業活動の継続性に懸念はありません。以下に記載のとおり、当該事象又は状況を改善するための対応策を実施していることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

1.収益改善施策の実施

 現在、当社グループは短・中期的な事業構造改革を推し進めており、収益の改善を目指し次の施策に取り組んでおります。

 

イ.水産事業の6次産業化モデルの構築

当社グループは、「とる うる つくる 全部、SANKO」をスローガンに、当社グループ独自の事業ポートフォリオの構築を目的として、既存事業とのシナジーを追求した水産事業の6次産業化モデルを構築いたします。

2020年に静岡県沼津市を起点にスタートした水産プロジェクトは、沼津・下田で水揚げされた近海物の鮮魚や加工品等を当社飲食直営店舗で提供するだけでなく、法人営業による販路開拓を行うことによって、事業成長の推進力となりました。また、昨年には提携する漁業者からの鮮魚を漁獲、魚種、相場に関わらず一定の価額で全量買取りする取り組みを開始いたしました。

当社グループは、水産サプライチェーンを構築することを目的として、2021年11月に水産仲卸の株式会社SANKO海商(静岡県浜松市)、2022年7月に豊洲市場で7社しかない水産物卸売会社(大卸)である綜合食品株式会社(東京都江東区)を子会社化いたしました。また、2023年4月に水産物の小売店(鮮魚店)「漁港産直 積極魚食 『サカナタベタイ』」(千葉県市川市 MEGAドン・キホーテ本八幡店内)を新規出店、2023年10月にエンターテイメント型マグロ解体ショーのパイオニアである一般社団法人全国鮪解体師協会と業務提携、2024年2月に「炙り屋 せん」(東京都江東区、豊洲市場隣接の「豊洲千客万来」内)、及び「船上すし みこう」(東京都新宿区)を新規出店いたしました。両店舗は、SANKO船団が漁獲する朝獲れ鮮魚(船直便)や豊洲大卸の綜合食品及び浜松仲卸のSANKO海商といったグループ会社の仕入力を最大限に活かした新業態の店舗であります。

当社グループは、これからも全国の産地に入り込み、地域の皆様(地元漁師や漁協その他水産事業者、地方自治体等)と共に地域ビジネスの創出に取り組み、これまで飲食事業で蓄積した3次産業のノウハウを活かした「売れるものを創る」ことで、水産事業の6次産業化モデルの構築を引き続き進めてまいります。

当社は、当社グループのサステナビリティ基本方針に沿った持続的な成長と、中長期的な企業価値の向上を果たすべく、「生産者とともに歩む『産地活性化プラットフォーマー』」を目指してまいります。

 

ロ.店舗事業における収益基盤の再構築(水産シナジー、高効率、ライセンス等)

テレワークの定着や外出自粛等の影響から、お客様の消費行動の中心は都市部から郊外に分散されつつあり、この傾向は今後も続くものと想定されます。これまでの串焼きやおでん、煮込み料理を中心とした大衆酒場「アカマル屋」のほか、当社グループシナジーを最大化し、かつ、お客様に還元するための新業態として、「アカマル屋鮮魚店」を開発いたしました。「アカマル屋鮮魚店」は鮮魚店併設型の大衆酒場であり、下田・沼津からの朝獲れ鮮魚や浜松のSANKO海商、豊洲の綜合食品と連携したまぐろの解体ショーの実施など連日お客様で賑わう新しいコンセプトの大衆酒場であります。これら「アカマル屋」のビジネスモデルは、高効率かつ高収益モデルのブランドであり、今後、商圏及び立地条件を見極めたうえで積極的に出店してまいります。なお、2024年4月には、承継した店舗のうち1店舗を「まぐろの海商」(海鮮どんぶり)として、イオンモール浜松市野フードコート内にリニューアルオープンいたしました。「まぐろの海商」は、マグロ一筋40年のSANKO海商の目利きが仕入れ、職人が加工するマグロや鮮魚をメインにした丼や、自社船を含むSANKO船団が漁獲する魚と豊洲の大卸・綜合食品の仕入力を最大活用した海鮮をふんだんに活用したメニューを提供しております。

また、大きな固定投資を伴わない受託事業では、今後もこれらの事業について慎重な出店判断を行ってまいります。「東京チカラめし」につきましては、今後もアジア地域でのライセンス契約獲得に取り組んでまいります。

 

ハ.コストの削減

当社グループの取り組みとして、引き続きコストの見直し及び削減をより強力に進めてまいります。具体的な取り組みとして、業務プロセス及びITシステムの見直しによって業務の省力化を実現することで、人件費等をより一層極小化いたします。さらに本社費用等、様々な施策によりコストを削減いたします。

 

2.財務基盤の強化
① 資本注入

2023年1月に発行した第5回新株予約権の行使により5億63百万円を調達いたしました。調達した資金は、運転資金、新規出店資金及び新規事業資金等に充当してまいります。また、2024年4月に発行した第2回無担保転換社債型新株予約権付社債及び第6回新株予約権の行使により2億2百万円を調達いたしました。調達した資金は、運転資金、新規出店資金及び新規事業資金等に充当してまいります。

 

② 金融機関との関係強化

前述した収益改善施策の実施による営業収支の改善効果が表れるには一定の時間を要することから、今後も安定した資金繰り管理を目的として金融機関との関係強化と調達交渉に努めてまいります。

 

③ 運転資金の十分な確保

事業の利益管理をより一層強化し、また、経営環境の変化を慎重に見極めながら投資を実行し、確実な回収を実現することで、運転資金の十分な確保に努めてまいります。

 

以上のように、当連結会計年度において進める構造改革の効果が経常的に見込まれることから、収益改善及び財務基盤の強化が図られ、これによって安定的に営業収支が改善する見込みであります。

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様に対する利益還元を重要な施策の一つとして認識しており、収益力の向上・財務体質の改善を図りながら、長期的かつ安定した配当及び利益還元を行うことを基本方針としております。

そして、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、その決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
 一方、内部留保金の使途につきましては、経営体質を強化しつつ今後の事業拡大と設備投資に投入していくこととしております。
 なお、通期業績におきましては、大幅な当期純損失となったことにより、無配当とさせていただきました。

当社は、「取締役会の決議によって、毎年12月31日の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対し、会社法第454条第5項に定める剰余金の配当(中間配当)をすることができる。」旨を定款に定めております。