リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅することを保証するものではありません。また、リスクの発生可能性、発生時期及び影響度についても、当社が判断したものであり不確実性を内包しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
(1)経営環境に関連するリスク
① 事業環境
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社が研修サービスを提供する顧客は国内企業であります。景気変動等により、国内企業が教育研修費を抑制した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は、新規企業顧客の獲得手段として主にマーケティングを活用しております。しかし、外的要因により集客効果が低下した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は多様な業界・規模の企業にサービスを提供しております。当該リスクにおいては全ての業種や規模で画一的に教育研修費の抑制が生じるような事態は想定しておりませんが、顧客の属する業界・当社サービス内容として極端な偏向が生じないように取り組んでまいります。さらに、マーケティング効果を継続的に注視することで集客効果の安定化を図ってまいります。
② 競合
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
研修サービスは事業運営上、許認可を取得する必要がないことに加え、事業の開始にあたって大規模な設備投資も不要であることから、相対的に参入障壁が低い事業であります。このため、大手事業者から個人事業者まで多数の事業者が同様の事業を展開しており、豊富な研修コンテンツを提供する事業者が増える可能性があります。今後、同業者間での競争が激化した場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、研修サービスの標準化や研修実施プロセスのDX化を進めるとともに、これまでの経験で蓄積されたノウハウを社内で共有しています。また、当社は900種類以上の高品質な研修コンテンツを提供しており、この規模を競合他社が容易に整えることは困難であると見込んでいます。今後も研修コンテンツの拡充を図り、さらなる取り組みを継続してまいります。
③ 業績の季節変動
発生可能性:中、発生可能性のある時期:第1四半期、影響度:大
当社は、売上高、売上総利益及び営業利益が第1四半期に偏る傾向にあります。年間売上高のうち約57%及び年間営業利益のうち約76%が第1四半期に計上されます。これは、新入社員や若手人材の育成需要が、第1四半期に高くなるためです。当該時期に研修サービスの需要が低下する事象が生じた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
今後は、固定費を上回る売上総利益を確保できるよう、年間を通じて安定的に研修サービスを提供し、事業の成長を目指してまいります。
なお、当事業年度の四半期会計期間別の売上高、売上総利益、営業利益の推移は以下のとおりであります。
|
2025年3月期 |
|||
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
|
売上高(千円) |
1,109,293 |
314,103 |
278,194 |
257,178 |
構成比(%) |
56.6 |
16.0 |
14.2 |
13.1 |
売上総利益(千円) |
629,480 |
219,614 |
215,186 |
207,801 |
構成比(%) |
49.5 |
17.3 |
16.9 |
16.3 |
営業利益(千円) |
516,222 |
89,469 |
68,841 |
8,902 |
構成比(%) |
75.5 |
13.1 |
10.1 |
1.3 |
(2)事業内容に関連するリスク
① 設立からの年数が浅いこと
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社は、2022年5月設立であるため、期間業績比較を行うために十分な期間の財政状態及び経営成績に関する財務情報を得られない可能性があります。
当社は、上場後より投資者その他の財務諸表の利用者の理解に資する情報を提供してまいります。
② 特定サービスへの依存
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社は、日本国内において研修サービスのみを展開しております。研修サービスの実施企業数は年々増加しており、今後においても引き続き増加していくものと考えております。しかしながら、研修サービスに対する需要が期待通りに伸長しない場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営環境及び中期的な経営戦略 4.経営戦略で記載の通り、事業のグローバル化を進めていく予定であります。国内研修市場だけでなく、海外研修市場においても、研修サービスを提供してまいります。
③ 特定地域への依存
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社は、関東圏を中心として全国に事業展開しております。顧客の所在地が関東圏に多いことから、関東圏での売上依存度が高くなっております。これらの地域で経済情勢が悪化した場合や、地震・台風その他の災害が発生した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応策として、引き続き顧客獲得に注力しつつ、関東圏に絞ることなく関東圏以外に所在する企業に向けても新規開拓を図ることで、顧客所在地の偏在性の解消に努めてまいります。
(3)組織体制に関連するリスク
① 従業員の確保
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社は、今後も増加が見込まれる顧客の需要に応えるため、研修サービスの拡大を進めるにあたり、優秀な従業員の採用・確保及び育成が重要であると考えております。しかしながら、国内における人材の争奪により、優秀な人材の採用・確保及び育成が計画通りに進まない場合、競争力の低下や事業規模拡大の制約、顧客に提供するサービスレベルの低下をもたらし、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
今後も採用市場の変化を捉えながら採用手法の多様化を進めることで候補者との接点拡大を図ると同時に、社内人材に対しては研修等によるナレッジの共有を行うことで育成機会の多様化・均等化を図ってまいります。
② 講師の確保
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社は、今後も増加が見込まれる顧客の需要に応えるため、研修サービスの拡大を進めるにあたり、当社が求める品質基準を満たす講師との業務委託契約が重要であると考えております。しかしながら、優秀な講師との業務委託契約が計画通りに進まない場合、事業規模の拡大が制約され、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
今後も積極的に講師を募集するとともに、既存講師に対しては研修を実施し、品質の均一化を図るほか、研修後のアンケート結果を共有することで研修品質の改善に努めてまいります。
③ 特定の人物へ依存
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社代表取締役社長である松田航は、当社の設立者であるとともに、大株主であり、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしております。現状において、何らかの理由により当人が当社の業務を継続することが困難になった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、特定の人物に過度に依存しない体制を作るために、取締役会等における役員間の相互の情報共有や経営組織の強化に努めております。
④ 小規模組織
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社は組織規模が小さく、内部管理体制や業務執行体制もそれに応じたものとなっております。そのため、役員や重要な業務を担当する従業員が退職等で流出した場合、事業活動に支障を来し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は組織規模の拡大に応じて、内部管理体制や業務執行体制を維持・強化し、業務遂行が特定の人物に偏らないように取り組んでまいります。
⑤ コンプライアンス
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社では、役員及び従業員に対して行動規範を定め、コンプライアンス意識の徹底を図っています。しかし、万が一、役員や従業員がコンプライアンス違反を行った場合、当社の社会的信用、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
コンプライアンス意識を高めるため、テストを含む研修を実施し、役員及び従業員の意識向上に努めております。また、社内コミュニケーションを活性化させ、風通しの良い職場環境を構築しています。さらに、内部通報制度を整備し、問題が発生した場合には速やかに検知できる仕組みを導入しています。
(4)法的規制に関連するリスク
① 政策変更
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社の顧客は、政府による教育推進による人材育成関連政策の助成金を利用していることがあります。助成金減額等の政策変更があった場合、顧客側の需要が変化する可能性があり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社の顧客からのアンケート結果にて、当社を選んだ理由として「高い利便性」が最も多いです。当社は、そのような助成金の利用を営業における主たる訴求手段とせず、引き続き研修サービスそのものを訴求してまいります。
② 法規制
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社は、事業を行う上で労働基準法(その他労務管理に関わる法令等を含む)、下請法、個人情報保護法、著作権法等様々な法的規制を受けております。
現時点において、これらに抵触する事実はないものと認識しておりますが、今後運用の不備等により法令義務違反が発生した場合、若しくは新たな法令の制定や既存法令における規制強化等がなされ、当社の事業が制約を受ける場合、当社の主要な事業活動全体に支障をきたす可能性があり、当社の事業運営、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
各種法令遵守のため、社外の弁護士や社会保険労務士、税理士等の専門家とのコミュニケーションを定期的に行うことで法的規制の変更点等のアップデートを行い、リスク・コンプライアンス委員会等を通じて社内で共有しております。研修テキストに関係する著作権法やマーケティングに関係する景品表示法に関しては、弁護士確認済のチェックリストを使用し、随時の確認を行っております。また、従業員に対しても定期的に必要な研修を実施しております。
③ 訴訟
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社は、顧客から申込を受ける際に、利用規約にて事前にトラブル時の責任分担を取り決める同意を取得する等、過大な損害賠償の請求をされないようリスク管理を行っております。しかしながら、申込時に想定していないトラブルの発生等、当社の提供したサービスに問題が生じた場合、予定通りに進捗しなかった場合、取引先等との何らかの問題が生じた場合、これらに起因する損害賠償を請求される、あるいは訴訟を提起されるリスクがあります。かかる損害賠償の金額、訴訟の内容及び結果によっては、当社の社会的信用、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
現時点において訴訟は生じておりません。今後もリスク管理を十分に行ってまいります。
(5)システムに関連するリスク
① 情報セキュリティ
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社の研修サービス提供に際し、顧客の機密情報や講師を含む各種個人情報を取り扱うことがあります。不測の事態により、これらの情報が外部に漏洩した場合、当社の社会的信用に重大な影響を与えるだけでなく、対応費用を含め、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、情報セキュリティ管理規程及び個人情報保護規程を制定し、徹底した情報管理を行っております。また、役員及び従業員には、守秘義務の遵守や機密情報・個人情報の適切な管理を徹底させるため、定期的な研修と情報セキュリティを含むコンプライアンステストを実施しております。さらに、個人情報の適切な取り扱いを強化するため、プライバシーマークの認証を取得し、その運用を行っています。講師に対しては、研修サポートシステムのアクセス権を限定し、業務委託契約書には機密情報及び個人情報の取り扱いに関する条項を明記しています。研修開始時の業務ガイダンスにおいても、これらの事項について再確認を行っております。
② システム障害
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社のサービスは、外部クラウドサーバー(Amazon Web Services)・外部通話システム(Zoom)・外部クラウドプラットフォーム(Google Workspace)等にて提供しており、それらの安定的な稼働が当社の事業運営上、重要な事項となっております。しかしながら、それらの障害、自然災害やサイバー攻撃、その他何らかの要因等によりシステム障害やネットワークの切断等予測不能なトラブルが発生した場合には、社会的信用失墜等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対して、当社は安定的なサービス運営を行うために、セキュリティ対策の強化や障害発生時の社内体制の構築等システム障害に対し備えるよう努めております。
(6)その他
① 当社株式の流動性
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
株式会社東京証券取引所の定める上場維持基準は25%であるところ、当社の流通株式比率は当事業年度末時点で31.0%程度となっております。今後は、当社の事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達、大株主の売出し、これらの組み合わせにより、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
今後、流通株式比率を注視し、既存大株主への一部売出しの要請等、流動性の向上を図ってまいります。
② 風評
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社は、顧客ニーズを充足する高品質なサービスの提供に努めるとともに経営管理室を設置し、役員及び従業員に対する研修、コンプライアンステストによる法令遵守意識、情報管理やコンプライアンスに対する意識を浸透させ、経営の健全性、効率性及び透明性の確保を図っております。しかしながら、当社のサービスや役員及び従業員に対して意図的に根拠のない噂や悪意を持った評判等を流布された場合には、当社の社会的信用、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、顧客や講師等社外の関係者に対して誠実に対応することを重視しております。また、継続的に役員及び従業員に対する研修等を実施し、全社向けの会議においても定期的に周知することに努めてまいります。
③ 大株主
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社の代表取締役社長である松田航の所有株式数の割合は、当事業年度末時点で発行済株式総数の68.6%となっております。松田航は、当社の創業者であるとともに代表取締役社長であるため、当社といたしましても安定株主であると認識しておりますが、将来的に何らかの事情によりこれらの当社株式が売却された場合には、当社株式の市場価格及び流通状況に影響を及ぼす可能性があります。
松田航は、安定株主として引き続き一定の議決権を保有し、その議決権行使に当たっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。
④ 自然災害
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社は、研修サービスを事業としているため、災害発生時に損害を受ける固定資産は極めて限定的ですが、当社の従業員が勤務する事業所や、当社の事業を支えるITインフラが被害を受けた場合、また当社に勤務する者や契約講師が多数被災する等の人的損傷が発生した場合、業務遂行が遅延する、若しくは不可能になる可能性があります。また、顧客が自然災害により被害を受けた場合、受注の減少を招き、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
自然災害による被害を最小にするために、オンラインによる研修サービスの提供を可能としており、BCP対策によって平時より準備する取り組みをしております。
⑤ 資金使途
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年内、影響度:小
新規上場時の新株発行による調達資金の使途は、主として人材採用費、オフィス拡張のための設備投資、海外事業への展開費、人件費となります。しかしながら、事業環境の変化に伴い、現在計画している資金使途を変更する可能性があります。また、現在の計画通り資金を使用したとしても、記載しているリスクが起因して、期待どおりの売上高をあげられない可能性があり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
資金使途に変更が生じた場合には速やかに適時開示を行います。
⑥ 配当政策
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年内、影響度:小
当社は、事業の成長・拡大による企業価値の向上を最重要課題として認識するとともに、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題の一つと位置付けております。当社は現在、成長過程にあると考えており、事業拡大のための成長投資に充当することを優先し無配としております。
利益配分につきましては、今後の成長・拡大戦略に備えた内部留保の充実等を総合的に勘案した上で業績の動向を踏まえた配当を検討していく方針であり、今後の配当実施の可能性、実施時期については現時点で未定であります。
配当政策
3【配当政策】
当社は株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして位置付けておりますが、財務体質の強化に加えて事業拡大のための内部留保の充実等を図り、事業の効率化と事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。
将来的には、経営成績及び財政状態を勘案しながら株主への利益還元を検討していく所存でございますが、今後においても当分は内部留保の充実を図る方針であります。内部留保資金につきましては、更なる事業拡大、優秀な人材を確保するための資金等として有効利用してまいりたいと考えております。
なお、剰余金の配当を行う場合、年2回の中間及び期末配当を基本方針としており、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる旨を定款で定めております。