2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    381名(単体) 8,921名(連結)
  • 平均年齢
    47.5歳(単体)
  • 平均勤続年数
    23.8年(単体)
  • 平均年収
    9,228,366円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

百貨店業

6,498

(5,501)

クレジット・金融・友の会業

570

(87)

不動産業

296

(45)

その他

1,557

(1,315)

合計

8,921

(6,948)

 

(注) 1 従業員数は、当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む就業人員であります。

2 従業員数欄の(外書)は、臨時従業員の年間平均雇用人員(1日8時間換算)であります。

 

(2) 提出会社の状況

2025年3月31日現在

従業員数(名)

平均年齢

平均勤続年数

平均年間給与(円)

381

(56)

47.5歳

23.8年

9,228,366

 

 

セグメントの名称

従業員数(名)

百貨店業

381

(56)

合計

381

(56)

 

(注) 1 従業員数は、当社から他社への出向者を除き、他社から当社への出向者を含む就業人数であります。

2 従業員数欄の(外書)は、臨時従業員の年間平均雇用人員(1日8時間換算)であります。

3 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

 

(3) 労働組合の状況

当社グループには、三越伊勢丹グループ労働組合(2025年3月31日現在、20支部、12直轄分会・組合員数 14,500名)が組織されています。

三越伊勢丹グループ労働組合は、UAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)に加盟しております。会社と組合の関係は良好であります。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 ① 提出会社

当事業年度

管理職に

占める

女性労働者

の割合(%)

(注1)

男性労働者の

育児休業

取得率(%)

労働者の男女の

賃金の差異(%)

全労働者

うち、

正規雇用

労働者

うち、

パート・

有期労働者

27.7

(注2)

(注2)

(注2)

(注2)

 

(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定に基づき算出したものであります。

数値は、㈱三越伊勢丹ホールディングスの「管理職に占める女性労働者の割合」として、受入出向者の状況を示しております。

2 各項目について、出向者は出向元の従業員として、下記②の連結子会社の欄で集計しております。

  ㈱三越伊勢丹ホールディングスに直接雇用従業員が不在のため算出しておりません。

 

 

 ② 連結子会社

当事業年度

名称

管理職に

占める

女性労働者

の割合(%)

(注1、2)

男性労働者の

育児休業

取得率(%)

(注1、3)

労働者の男女の

賃金の差異(%)(注1、4)

全労働者

うち、

正規雇用

労働者(注5)

うち、

パート・

有期労働者

㈱三越伊勢丹

28.8

103.1

52.9

58.9

102.9

㈱札幌丸井三越

31.6

(注6)

59.4

62.4

90.0

㈱函館丸井今井

70.0

(注6)

69.6

70.7

(注7)

㈱仙台三越

37.5

0.0

61.8

65.1

92.1

㈱新潟三越伊勢丹

19.8

100.0

51.4

58.5

95.6

㈱静岡伊勢丹

19.0

100.0

53.1

57.4

133.2

㈱名古屋三越

25.5

100.0

54.9

63.5

96.3

㈱広島三越

35.3

100.0

69.5

72.3

88.3

㈱高松三越

26.3

200.0

60.4

67.2

93.4

㈱松山三越

54.5

(注6)

75.4

96.3

(注7)

㈱岩田屋三越

35.2

150.0

62.4

64.9

76.2

㈱エムアイカード

22.2

(注6)

51.2

55.4

73.7

㈱三越伊勢丹プロパティ・デザイン

20.0

66.7

70.2

70.7

(注7)

㈱三越伊勢丹システム・ソリューションズ

16.5

100.0

79.0

80.8

99.4

㈱三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ

72.2

(注6)

73.0

74.2

89.0

㈱三越伊勢丹ビジネス・サポート

28.6

100.0

67.5

82.5

72.8

㈱エムアイフードスタイル

15.6

50.0

52.3

76.0

101.8

㈱三越伊勢丹ニッコウトラベル

29.6

100.0

68.0

71.8

(注7)

 

(注) 1 各項目について、出向者は出向元の従業員として集計しております。

2「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定に基づき算出したものであります。

3「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」の規定に基づき、「2024年度に配偶者が出産した男性従業員数」に対する「2024年度に育児休業等と育児目的休暇を取得した男性従業員数」の割合を算出しております。

4 男女の賃金差については、男性の平均年間賃金に対する女性の平均年間賃金の割合を示しております。なお、同一労働の賃金に制度上の差はなく、等級別人数構成の差が主な要因であります。

5 正規雇用労働者には、フルタイムで無期化した販売専任等の限定社員を含めて算出しております。

6 育児休業等取得の対象となる男性従業員がないことを示しております。

7 該当する従業員がすべて女性で男性が不在のため男女差を算出しておりません。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ経営に関する考え方

三越伊勢丹グループは、長期に目指す姿として「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」となることを企業理念のVISIONに掲げており、すべての企業活動の原点である企業理念のもとでサステナビリティ経営に取り組んでおります。


 

2018年度に制定したサステナビリティ基本方針に基づき、当社グループの強みを活かした企業活動を通じて社会課題の解決に貢献することで、ステークホルダーからの期待に応え、人々の豊かな未来と持続可能な社会の実現を目指しております。

 

サステナビリティ基本方針

社会に対する企業の責任として、社会の様々な課題に向き合い、
企業活動を通じてその解決に貢献することで、

関わりのあるすべての人々の豊かな未来と、

持続可能な社会の実現に向け役割を果たしていきます。

 

 

① ガバナンス

当社グループは、サステナビリティに関する重要事項について、グループ経営戦略会議にて審議・決議を行い、取締役会に報告を行っております。

2018年度より、CEOを議長とする「サステナビリティ推進会議」では、グループ全体でサステナビリティの実践を推進することを目的に、各種取り組みの進捗を確認するとともに、全社的な取り組みのさらなる加速に向けた情報共有を行っております。また、CAO兼CRO※を議長とする「サステナビリティ推進部会」を設置し、課題ごとの具体的な取り組みの検討を行っております。

さらに取り組みの実効性を高めるため、2022年度より「サステナビリティ推進部会」の傘下に6つのワーキンググループ(WG)を設置しております。また、サステナビリティ経営の実現に向けたグループ全体の活動を推進するため、ホールディングスのグループ総務部内にサステナビリティ推進部を設置しております

※CAO:チーフ・アドミニストレイティブ・オフィサー、CRO:チーフ・リスク・オフィサー

 

 2024年度推進体制


会議体及び

主な実行主体

役割

 

 

 

 

取締役会

業務執行において議論されたサステナビリティに関する取り組みの進捗を監督する。

グループ経営戦略会議

サステナビリティ会議体および各事業部門で検討された計画の審議・決議、実施された取り組みの進捗確認を行い、取締役会への報告を役割とする。

サステナビリティ

推進会議

当社グループのサステナビリティの活動の方向性や進捗の確認を行い、グループ全社での推進・浸透を役割とする。

サステナビリティ

推進部会

課題ごとの長期計画や方針の策定、およびワーキンググループの設置など、個別課題についての集中的な議論と具体的な施策実施を役割とする。

ワーキング

グループ

取り組みの実効性を高めるため、課題ごとに関連部門が連携して取り組みを検討・実行するための枠組みとしてWGを設置。

think good ※

サステナビリティ施策の推進

サプライチェーン

お取組先とともに環境・人権に配慮した調達に取り組むための体制整備

環境

中長期目標達成に向けた、気候変動への具体的な取り組みの推進(省エネ・再エネ)

資源循環・廃棄物抑制

4Rの推進に向けた方向付けおよび具体施策の検討

従業員エンゲージメント向上

DE&Iと健康経営の推進

政策・方針・情報開示

中長期目標に対する進捗確認と次なる中長期計画の検討、ステークホルダーへの情報開示の推進

代表執行役社長CEO

「グループ経営戦略会議」の長および「サステナビリティ推進会議」の議長。サステナビリティに関する経営判断の最終責任を担う。

執行役CAO兼CRO

「サステナビリティ推進部会」の議長。サステナビリティに関する具体的施策の計画・実行の監督を担う。

 

※think good:彩りある豊かな未来に向けて「想像力を働かせ、真摯に考えることからスタートする」という想いが込められた三越伊勢丹グループのサステナビリティ活動に関するスローガン。

 https://www.imhds.co.jp/corporate/sustainability/think-good/index.html

 

<2024年度サステナビリティ関連審議・報告実績>

 サステナビリティ推進会議、取締役会でサステナビリティ関連の審議、報告をしました。

 サステナビリティ推進会議は、サステナビリティ推進部会と合同形式で計2回開催し、(株)三越伊勢丹ホールディングスおよび(株)三越伊勢丹の執行役、さらにグループ事業会社・グループ百貨店の社長に加え、各部門の推進担当者あわせて約200名が参加しました。本会議では、各事業の戦略とサステナビリティの取り組みを連動させ、グループ全社での実践を推進するため、4つの重点取り組み(マテリアリティ)の進捗状況を共有し、今後の方向性について活発な議論を行いました。議題は以下の通りです。

 

・think good

 グループ全社への取り組みの拡大や、当社グループらしいサステナビリティの取り組みの精度向上に向けた基準設定、認知度向上に向けた議論

 

・サプライチェーン・マネジメント

 「お取組先行動規範」の通知拡大、お取組先との対話深化に向けた議論

 人権リスクマップで特定した重要リスクの共有と対応状況の報告

 人権救済外部窓口設置の報告(25年4月より運用開始)

 

・環境

 SBT認定取得に向けた温室効果ガス排出量削減のロードマップの内容報告

 省エネ、再エネ調達計画の内容報告

 

・資源循環・廃棄物削減

 4R※推進、廃棄物削減の取り組み拡大に向けたリサイクル施策推進や分別、計量の精度向上に向けた議論

※4R=Refuse、Reduce、Reuse、Recycle

 

・従業員エンゲージメント向上 

従業員エンゲージメント調査結果の共有

社内浸透に向けた具体的施策(従業員研修、部門の年度計画)の共有

 

・政策・方針・情報開示

中期経営計画における重点取り組み(マテリアリティ)の2030年目標とアクションプランに関する報告

サステナビリティに関するお客さまアンケート結果の報告

 

・社内浸透活動

 社内研修の実施内容と次年度計画の報告

 

取締役会では、計2回に渡り、2025年~2030年度までの中期経営計画に基づくサステナビリティの取り組み内容と目標設定について報告・議論を行い、執行側での議論結果を共有しました。サステナビリティ経営の更なる推進を目指し、サステナビリティに関する重要事項についても議論を行いました。具体的な議題は以下の通りです。

 

・4つの重点取り組み(マテリアリティ)の具体的な内容とKPIに関する報告、議論

・人的資本経営のあり方と推進についての報告、議論

 

この他に、四半期ごとに行う各執行役からの業務執行報告においても、具体取組の進捗や会議体の開催等を適宜報告しております。

 

②戦略

2023年度に外部環境の変化、ステークホルダーの皆さまの声、そして企業理念の再整理を踏まえて、マテリアリティの見直しを実施しました。2024年度からは新たに設定した4つの重点取り組み(マテリアリティ)に基づき、グループ全社で活動を推進しております。


※マテリアリティの特定・見直しのプロセスについては、当社webサイトをご参照ください。

https://www.imhds.co.jp/corporate/sustainability/materiality/process.html

 

サステナビリティ経営の更なる推進を目指し、2024年度に注力した具体的な項目は、重点取り組み(マテリアリティ)を事業活動の中で実践する具体的な活動think good、サプライチェーン・マネジメント、気候変動への対応、人的資本経営の4点です。

気候変動への対応、人的資本経営については、(2)サステナビリティに関する個別課題に記載しています。

 

<think good>

think goodとは、彩りある豊かな未来に向けて「想像力を働かせ、真摯に考えることからスタートする」という想いが込められた三越伊勢丹グループのサステナビリティ活動に関するスローガンです。2021年4月より、サステナビリティ基本方針に基づいた取り組みとして百貨店事業を中心にスタートし、2024年度より百貨店事業だけでなく不動産事業、金融事業、その他関連事業に範囲を広げ、グループ全社で取り組みを拡大しております。当社グループの強みである国内外の広範なお取組先ネットワークや地域社会とのつながり、さらにはマーチャンダイジング力を活かし、社会・環境に配慮した商品やサービスのご提案を行うなど、様々な取り組みを推進しています。2024年度の企画数は約1300件、think goodのスタートから4年間累計で約3300件となりました。今後も、グループ全体でthink goodの取り組みをさらに進化させ、認知度の向上を図るとともに、より多くのお客さまのご支持を得られるように努め、社会課題の解決に貢献してまいります。

※think goodの具体的な取り組み事例は当社webサイトをご参照ください。

https://www.imhds.co.jp/corporate/sustainability/think-good/index.html

 

<サプライチェーン・マネジメント>

当社グループは環境や人権に配慮した調達活動を推進しております。2023年4月に改訂した「三越伊勢丹グループ人権方針」「同 調達方針」に基づいて、持続可能な調達に取り組むとともに、同年6月には「お取組先行動規範」を制定しました。この規範は、累計でお取組先約1万3600社へ通知し、当社方針へのご理解とご協力をお願いしております。さらに、取り組みの進捗や課題を把握するため、2021年度以来、2年に一度アンケートを実施しています。

2024年度にはお取組先アンケートや対話を通じて収集した情報を基に、人権リスクを「発生可能性」と「深刻度」の観点から評価・整理した人権リスクマップを作成しました。これにより、特に重大な人権リスクがサプライチェーン上に潜在する可能性を認識し、人権リスクマップを活用して常に意識を高め、適切な対応を行うことで、人権リスクの是正、防止、低減に向けた取り組みを進めています。

また、お取組先との個別対話にも注力しており、2022年度から2024年度までに約1550社との対話を実施いたしました。対話を通じて、実践に向けた課題やご要望をヒアリングするとともに、取り組み改善に向けた意見交換を行っております。さらに、人権リスクマップで特定した重点リスクを対話の確認事項に組み込み、是正、防止、低減に向けた協議や働きかけを行い、人権デュー・ディリジェンスを推進しています。加えて、サプライチェーン全体に対して通報ができる「人権救済外部窓口」を設置し2025年4月より運用開始しています。これらの取り組みを通じて、持続可能なサプライチェーンの構築を目指しています。

※人権リスクマップおよび特定プロセスについては当社webサイトをご参照ください。

https://www.imhds.co.jp/corporate/sustainability/society/human-rights.html

 

③リスク管理

サステナビリティ課題を含むグループの事業を取り巻くリスクについて洗い出しおよび整理を行い、「リスクマネジメント推進会議」において、対応方針等の策定、実行管理を通じてリスクマネジメント対策を図っております。リスク管理の詳細は、「3.事業等のリスク」に記載しています。

気候変動への対応・人的資本経営に関するリスクについては、(2)サステナビリティに関する個別課題 に記載しています。

 

④指標と目標

2025年度からの中期経営計画でサステナビリティに関する2027年、および2030年の目標を設定し、2024年度の取り組みの状況を評価し課題を抽出します。その上で、目標達成に向けた実践的な取り組みとその進捗のモニタリングを進めてまいります。

気候変動に関する指標と目標については、(2)サステナビリティに関する個別課題 (ア)気候変動への対応に記載しています。


 

 

(2)サステナビリティに関する個別課題

重点取り組み(マテリアリティ)のうち、(ア)気候変動への対応(「持続可能な環境・社会をつなぐ」)、(イ)人的資本経営(「ひとの力の最大化」)については、以下に詳細を記載します。

 

(ア)気候変動への対応

気候変動が社会にもたらす影響は、年々増大・深刻化しています。当社グループは、気候変動を重要な経営課題の一つと位置づけ、「三越伊勢丹グループ環境方針」「同 調達方針」のもと、次世代に持続可能な環境・社会をつないでいくため、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを行っています。また、当社グループは気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)による提言に賛同しています。そのフレームに基づき、ガバナンスやリスク管理体制へと脱炭素社会の実現に向けた取り組みの考慮を組み込むとともに、シナリオ分析を用いて評価したリスクと機会への対応を推進しております。

 

①ガバナンス

気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれています。体制図を含む詳細については、(1)サステナビリティ経営に関する考え方 ①ガバナンス に記載しています。

 

②戦略

気候変動という大きな社会課題は、当社のビジネスに様々な影響を与えると考えられます。不確実な中でも将来に向けた意思決定をしていくために、シナリオ分析を用いてリスク・機会を分析いたしました。なお、分析にあたっては、当社の経営計画と整合する、下記3つの時間軸にて検討を行いました。

 

・短期=2027年(2025年度から始まった中期経営計画フェーズⅠの最終年)

・中期=2030年(2025年度から始まった中期経営計画および環境中期目標の最終年)

・長期=2050年(環境長期目標の最終年)

 

消費志向の変化や実店舗の営業条件の変更などシナリオ分析にて想定した事象が発生した場合でも、目指す姿(ビジョン)に向けて「館業」から「個客業」へと変革し、お客さまとのつながりを拡張し暮らし全般を豊かにしていく当社の戦略を通じて、レジリエンスを保ってまいります。また、リスクを抑制し、機会を実現させるために、それぞれ対応策を行っています。

 

<1.5℃シナリオ>

 規制強化や消費動向の変化を通じて脱炭素社会へと向かっていくことにより移行リスクが強まる一方で、物理的リスクの顕在化可能性が4℃シナリオより相対的に低い世界を想定。

内容

種類

影響度

対策

短・中期

長期

移行

リスク

気候変動対応の遅延・劣後によるお取組先の離反

市場

省エネの推進・再エネ導入等、GHG排出量削減にむけた具体策の実施

炭素価格制度の導入によるコスト増※

規制

20.8億円

-

環境関連法規制対応等のコスト増

規制

廃棄物の削減や包装資材の使用量抑制など、資源循環施策の強化

当社の脱炭素への取り組みや開示が劣後した場合の、お客さまからのイメージ低下

評判

サステナブルな商品・サービスを展開する営業施策(think good、買取・引取サービスのi’m greenなど)の拡大、顧客接点における環境課題への取り組み(包装資材の使用量抑制や、店舗への再エネ導入など)

移行

機会

お客さまのサステナビリティ・環境志向の上昇による、イメージ向上

市場

 

※2030年の想定排出量(Scope1・2)に、IEA WEO2024 Net Zero Emissions by 2050 Scenarioで示された炭素価格の値($140/t-CO2)を乗じた。$1=150円にて換算。

 

<4℃シナリオ>

脱炭素に向けた政策や技術の変化は起こらず移行リスクの影響が1.5℃シナリオより相対的に低い一方、平均気温の上昇や異常気象の激甚化により物理的リスクが顕在化する世界を想定。

内容

種類

影響度

対策

短・中期

長期

物理的

リスク

台風による営業停止での売上減※1

急性

1.2億円

実店舗以外での、顧客とのタッチポイントの確保

BCPによる自然災害発生時の体制整備

浸水による営業停止での売上減※2

急性

1.4億円

1.6億円

浸水による資産の減損※2

急性

1.2億円

1.5億円

 

4℃シナリオの影響度(金額)は、いずれも国内百貨店業を対象にて算出。短・中期の時間軸は中期を用いた。

※1 台風の増加に起因する追加の売上減を試算。台風の増加による休業増加日数に、休業1日当たりの売上減を乗じた。台風の増加率は、IPCC AR6 SSP5-8.5を参照。

※2 100年に一度の河川の洪水や高潮が起きた場合を想定。影響度には、期待値として1/100を乗じた。洪水や高潮による浸水が想定される店舗をIPCC AR5: RCP8.5、IPCC AR6: SSP3-7.0に基づき分析。想定浸水深は、国土交通省『治水経済調査マニュアル(案)』を参照。

売上減では想定される営業停止日数に1日当たりの売上を、資産の減損では償却資産(土地以外)および在庫に想定被害率を乗じた。

 

<共通シナリオ>

気候変動の緩和を目指す、当社グループの環境中期・長期目標の達成に向けた取り組みに伴う影響を想定。

内容

種類

影響度

対策

短・中期

長期

移行

リスク

エネルギーコストの高騰(再エネ調達額を含む)※

技術

18.2億円

60.9億円

複数手法による再エネ調達ポートフォリオ組成、省エネの推進

カーボンニュートラルに向けた設備投資額等の増加

技術

-

省エネの推進、適切なタイミング・手法での設備更新

移行

機会

省エネによるエネルギーコストの削減

市場

省エネの推進

 

※2030年、2050年の想定エネルギー調達額と、2023年時点の調達額の差。想定調達額は、IEA WEO2024 Net Zero Emissions by 2050 Scenarioを含む複数のレポートを参照。

 

③リスク管理

気候変動に関するリスクは、サステナビリティ全般の課題におけるリスクと同様に、組織全体のリスク管理プロセスにも組み込みモニタリングを行っています。対応に向けた詳細は、「サステナビリティ推進会議」やその傘下のワーキンググループを筆頭とする会議体、関連部署において、方針の策定、実行管理を行うことで、リスクマネジメントの実現を図っております。リスク管理に関する詳細は、「3.事業等のリスク」も合わせてご覧ください。

 

<リスクと機会の識別・評価のプロセス>

1.当社グループに影響を与えると考えられる、気候変動に関するリスク・機会項目を抽出(当社のビジネスモデルおよびバリューチェーン、お客さま・お取組先・株主/投資家・地域社会/コミュニティ・従業員などのステークホルダーの視点を考慮)

2.抽出したリスク・機会の定性評価を、発生可能性と影響の大きさの2軸でプロット

3.定量評価が可能な項目は定量評価を行ったうえで、定性評価と双方確認し、影響度を判断

 

 

④指標と目標

<指標>

 当社グループでは、気候変動関連リスク・機会やその進捗状況を管理するための指標として、Scope1・2・3の温室効果ガス(GHG)排出量を用いています。2025年3月期分の実績については、当社webサイト※にて開示予定です。

https://www.imhds.co.jp/corporate/sustainability/esg-data/environment.html

 

<温室効果ガス(GHG)排出量>

 

バウンダリ

単位

2024年
3月期

GHG
排出量
※1

GHG Scope1

グループ

(連結)

※2

t-CO2

29,081

GHG Scope2

141,677

小計(Scope1・2)

170,758

GHG Scope3

4,257,344

 

※1 Scope1・2・3は、GHGプロトコルに基づき策定した当社グループGHG排出量算定規定にて算定を行っています。その信頼性向上を目的に、第三者検証(限定的保証)を依頼し、保証報告書を取得しています。(2025年3月期分も取得予定)

※2 本指標はグループ全体の財務報告範囲と一致させるべきとの考えのもと、2024年3月期より、集計バウンダリをグループ(連結)へと変更いたしました。2023年3月期以前の実績はバウンダリが異なります。具体的な値は、上記webサイトにて掲載しております。

 

<目標>

気候変動のリスクと機会をマネジメントするための中期目標としては、Scope1・2の温室効果ガス排出量および再生可能エネルギー導入比率を使用しています。

 

●環境中期目標:2030年におけるGHG排出量(Scope1・2) 2023年度比▲42%

2030年における再生可能エネルギー導入比率 55%

当社グループは、本環境中期目標の水準がパリ協定と整合していることを明確にするため、SBT(Science Based Targets)認定取得を目指しており、コミットメントを表明いたしました。

また、長期の視点では、サプライチェーン全体に関連するリスク・機会を一層考慮していくことが適切なマネジメントにつながるという考えに基づき、中期目標に加え、下記の目標を掲げております。

 

●環境長期目標:2050年におけるGHG排出量実質ゼロ(Scope1・2・3)


 

 

(イ)人的資本経営

三越伊勢丹グループは2023年度に新たな企業理念を制定、ミッションとして「こころ動かす、ひとの力で。」を掲げています。そして「ひとの力の最大化」を進めるため、2024年度に“三越伊勢丹グループ人財マネジメント方針”を定めました。

この方針の中で、「こころ動かす“主役”は、従業員一人一人の“個”の力であり、“変化の先の未来”に向けて、勇気を持って挑戦と努力を続ける一人一人を上司と会社は“後押し”します」とし、あわせて、従業員と会社は互いに成長し、互いに高め合っていく関係性を明確にしました。さらに、「個」・「組織」・「人財基盤」それぞれの目指す姿を掲げ、「従業員」と「上司・会社」への期待をそれぞれ明確にすることで、従業員、上司、会社が三位一体となって取り組んでいきます。

<三越伊勢丹グループ人財マネジメント方針>


 

①ガバナンス

人的資本に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれています。体制図を含む詳細については、(1)サステナビリティ経営に関する考え方 ①ガバナンス に記載しています。

 

・執行役とCHROの連携

当社グループでは、業務領域を管掌する執行役と人事分野の責任者であるCHROが連携して業務執行を行うことで、経営戦略と人財戦略の連動を図りグループ全体での取り組みを進めております。

 

・労働組合との連携

当社グループでは、「三越伊勢丹グループ労働組合」が設立されています。この労働組合は、グループ内の各企業と協議し、労使関係や人事・労働条件を定めるための労働協約を締結しています。

また、グループの経営トップと組合本部幹部、各社トップと組合支部幹部による懇話会も定期的に開催しています。情報共有を行い、相互理解や信頼・協力関係を築くことで、円滑な事業運営と働く環境の維持・向上を図っています。

 

②戦略

人財戦略として「個客業への変革に向けた企業風土改革(人事の感性)」、「生産性向上と人的資本投資の両立(人事の科学)」、「事業実現人財の確保・育成・活性化(縦の人財確立)」、「グループ経営人財・事業変革人財の創造(横の人財創造)」、の4つの取り組みを定めました。

 この人財戦略をグループ一丸となって推し進めていくことで、「ひとの力の最大化」を図り、中期経営計画の実現および④指標と目標の達成に繋げていきます。


■「個客業」への変革に向けた“企業風土改革”「人事の感性」

当社グループでは「三越伊勢丹グループ人財マネジメント方針」のもと、グループ従業員一人ひとりのマインドチェンジと行動変容を促進しています。

 

・生涯CDP

※CDP=キャリアデベロップメントプログラム(従業員のキャリアや能力を開発するための中長期的な計画)

従業員自らが「自律的なキャリア」を築けるよう、「従業員」・「会社」・「上司」が三位一体となって「生涯CDP」を推進しています。この考え方のもと、個人の成長と会社の成長を両立できる仕組みづくりと、その取り組みを促進する風土醸成を進めています。具体的には、上司と部下、人事と従業員によるキャリア面談の推進や、グループ内の多様な仕事情報の提供、自律的なキャリアを支援するチャレンジキャリア制度(手上げによる社内公募制度等)や自己申告制度、リアル、オンラインを通じた研修、学びの機会の拡充などの各種人事制度を設け、「ひとの力の最大化」に取り組んでいます。

 

■“人的資本投資”に繋げる生産性向上「人事の科学」

各事業で少数精鋭体制を推進し、労働生産性を最大限に高めることで生み出した原資を「人的資本投資」に活用し、「ひとの力の最大化」を目指していきます。

2025年度から2030年度にかけて人的資本への投資総額は約300億円を計画しています。

従業員の成長と企業の戦略実現を両立させるため、処遇改善や人財育成、働きやすい環境づくりや健康経営の推進、人事DX等、メリハリを持った投資を進めてまいります。

 

■事業実現人財の確保・育成・活性化 「縦の人財確立」

中期経営計画を実現するためには、百貨店事業以外の事業領域の確立、それぞれの事業分野の強化が不可欠です。そのために必要な人財の「計画」「確保」「育成」「活性化」を促進し、戦略的に人財基盤を整えていきます。

 ・専門人財の育成

百貨店事業から金融・不動産・システム・広告事業まで拡がる当社グループの多様な事業展開を支えるためのさまざまな知見や技術を持つ人財の確保と育成を進めています。

 

 ■グループ経営人財・事業変革人財の創造「横の人財創造」

当社グループ人財の強み(DNA)である「キュレーション力(編集力)」を“グループ事業全体”に拡大することで、“「個客業」としての新たな成長”につなげていきます。

 イノベーションの創出に向けて、組織内にさまざまなバックグラウンドを持つ人財を増やすとともに、個人が多領域で豊富な経験を積めるように推進し組織力の向上を目指していきます。

 

・動的な人財ポートフォリオ

多様な個(人財)を活かす組織づくりとして、グループ内外への出向や、部門をまたいだ異動など、人財の流動性を高めることで、さまざまな知見や人的ネットワークを掛け合わせ、新たな価値やイノベーションの創出につなげています。

特に、今後、経営戦略上強化していく事業領域では外部企業への出向を進め、従業員が新しい知識や経験を得ることで、特別な百貨店を中核とした小売グループとしてのまち化戦略を推し進めていきます。

 

・次世代人財、及びグループ視点を持った人財の育成

イノベーションを創出するため、コーポレートベンチャーキャピタルの取り組みなどを通じて、次世代人財の育成にも取り組んでいます。人財の流動化を通じてグループ全体の一体感と共創を推進しています。

 

■「人財基盤」の整備

人財戦略の実現のために、人財基盤の整備にも取り組んでいます。

・健康経営

 当社グループは、従業員が「働きがい」と「働きやすさ」を実感できる職場づくりを目指し、ライフワークバランスの推進や、多様な働き方や健康サポートの充実に取り組んでいます。

また、上司や同僚との積極的なコミュニケーションを通じて対話文化の醸成にも努めています。

そして、職場環境の更なる向上を目指し、2023年6月には、会社とグループ労働組合が共同で宣言を発信しました。この労使共同宣言では、「適正な労働時間管理」と「ハラスメント・ゼロ」に関する具体的な行動指針を示し、「安心して働くことのできる職場環境」の実現に向けて労使が一体となって取り組んでいます。

 

 

●三越伊勢丹 健康経営優良法人2024(大規模法人部門)認定取得 


 

・女性活躍推進

当社グループでは従業員の約7割が女性であり、今後の企業成長に向けて「女性の活躍推進」を進めていくことが不可欠であると考えています。多様な個性や価値観を尊重し、性別や時間的制約にかかわらず、すべての従業員が最大限に力を発揮できる環境づくりを目指しています。具体的には、短時間勤務制度や配偶者転勤休職制度などの制度の充実に加え、男性の育児休業取得の推進をしています。また、組織風土や従業員一人ひとりの意識醸成にも取り組み、誰もが“働きがい”と“働きやすさ”を実感しながら活躍できる環境づくりを進めています。

 

●えるぼし認定3段階目(2023年)

 


 

●Nextなでしこ共働き・共育て支援企業 選定(2025年)

 


 

・従業員エンゲージメント

従業員と会社が「互いに成長し、互いに高め合う関係」を築くことを目指し、年に1度「従業員エンゲージメント調査」を実施しています。この調査結果をもとに、従業員の満足度とモチベーションを高めるための具体的な取り組みを進め、組織全体のエンゲージメント向上に努めています。

 

③リスク管理

・安心安全な職場環境の整備

 当社グループでは、従業員の安全と心身の健康を最優先とし、「適正な労働時間管理」と「ハラスメント・ゼロ」を重要なリスク管理項目と位置付けています。2023年6月に発した労使共同宣言のもと、労使共同で安心・安全な職場環境の整備に向けた取り組みを進めています

 

④指標と目標

・従業員エンゲージメント調査「企業理念の浸透・実践」数値 2030年度3.75以上の達成(グループ計)

・女性管理職比率 2030年度37%の達成(グループ計)

・育児休業取得率(性別問わず) 2030年度100%の達成(グループ計)

・障がい者雇用比率 2030年度前年以上の達成((株)三越伊勢丹および首都圏主要グループ会社の合計)

・年間総実労働時間1,700時間台達成企業数 2030年度21社の達成(グループ計)

 

※各指標の実績については、(1)サステナビリティ経営に関する考え方④指標と目標に記載のとおりです。

※経年実績については当社webサイトに掲載しております。

https://www.imhds.co.jp/corporate/sustainability/esg-data/society.html