リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識しているリスクは以下のとおりであります。ただし、将来の業績や財務に影響を与えうるリスクや不確実性は、これらに限定されるものではありません。また、文中における将来に関する事項は当社グループが当連結会計年度末において判断したものであります。
1.リスクマネジメント推進体制について
当社グループは、執行役会の諮問機関であるリスクマネジメント委員会にて、経営戦略の推進や経営基盤に影響を与える重大な経営リスクについて検証および対応策等の検討を行い、その結果を執行役会に答申する体制を構築しております。また、グループ全体のリスクマネジメント推進のため、リスクマネジメント推進会議およびサイバーセキュリティ推進会議を設置しております。
リスクマネジメント推進会議では、リスクマネジメント年度方針ならびに実行計画等を策定し、その実行管理を通じてリスクマネジメント対策の実現を図っております。また、その具体的な実践や徹底を図るため、リスク対策部会を設置しております。
サイバーセキュリティ推進会議では、サイバーセキュリティ対策の年度方針ならびに実行計画等を策定し、その実行管理を通じてサイバーセキュリティ対策の実現を図っております。また、その具体的な実践や徹底を図るため、サイバーセキュリティ対策部会を設置しております。
※リスクマネジメント体制図
また、当社グループのリスクマネジメント体制は、3つのディフェンスラインと5つのレイヤーで構成されております。各グループ事業会社を第1線、三越伊勢丹ホールディングス(以下、HDS)リスク管理部門を第2線、HDS内部監査室を第3線とする3つのディフェンスラインをベースとして、グループ体制を事業実態に応じた5つのレイヤー(❶グループ事業会社現業部門、❷グループ事業会社管理部門、❸HDS統括部門、❹HDSリスクマネジメント室、❺HDS内部監査室)に整理し、各レイヤーの役割と責任を明確化することで、実効性の高いリスクマネジメント体制の構築を図っております。
2.リスクの分析・評価について
当社グループは、リスクを捉えるにあたり、日々変化する外部環境とグループの事業特性・事業戦略を考慮し、多角的な視点からリスクの把握に努めております。グループ全体の事業を取り巻くリスクを5つのカテゴリー(①経営戦略上のリスク、②財務に関するリスク、③人事・労務に関するリスク、④災害等のリスク、⑤オペレーショナルリスク)に分類し、カテゴリーごとのリスクを洗い出し、リスク一覧として整理しております。リスク一覧については、毎年、その内容を見直し、月次でリスクへの対応状況を確認し、必要に応じて評価を見直しております。
また、リスクが顕在化した際には、物的損害、人的損害、財務・経営戦略遂行の阻害、レピュテーション毀損などの損害を被るものと捉え、発生頻度や事業への影響をもとにリスクマップを作成し、その中から重点リスクを選定、部会等を通じて対策の強化を図っております。
なお、リスクへの対応状況については、執行役会および監査委員会に定期的に報告を実施しております。
(1) 経営戦略上のリスク
(リスク)
昨今、世界各地において気候変動による自然災害の頻発・激甚化や格差の拡大等の、社会課題が顕在化しております。そのような背景から、各企業はサーキュラーエコノミー社会の推進や人権の尊重、地域社会への貢献、ESG・SDGsへの取り組みなど、社会的な課題の解決に根差したビジネスモデルを推進しております。
しかし、このような社会の潮流に対して当社グループのサステナビリティ推進が遅れをとった場合、お客さまやお取組先、株主・投資家、従業員、地域社会・コミュニティ、全てのステークホルダーの信頼を失うことで資金調達が困難となる等、企業経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
あわせて脱炭素に向けた取り組みが遅れた場合、将来的に環境規制の強化等を背景に、エネルギーコストの増加等が発生し、当社グループの財務に悪影響を与える可能性があります。
(対 応)
・当社グループは、お客さま、お取組先、株主・投資家、従業員、地域社会・コミュニティ、全てのステークホルダーと未来志向で友好的な対話やコミュニケーションを通じて、Win-Winの関係性を構築することで企業価値の向上を目指しております。また、ステークホルダーからの意見を経営の意思決定に反映する事は、社会課題や経営課題の解決に繋がる手段と考えております。各ステークホルダーとのコミュニケーションにより得た情報や要望を踏まえ、毎年取り組みの見直しを行っております。
・当社グループではサステナビリティを推進するにあたり基本方針を策定し、CEOを議長とするサステナビリティ推進会議を通じ、グループ全体の重要取り組みを共有し、実効性の向上につなげております。また、従業員に向けた教育を実施し、当社グループを取り巻く環境への理解を深め、環境・社会課題の解決に向けた施策に取り組んでおります。
・当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)へ賛同しており、気候変動によるリスクの把握と当社の財務への影響を分析し、情報開示を行っております。そして「三越伊勢丹グループ2030年環境中期目標」および「三越伊勢丹グループ2050年環境長期目標」を設定し、脱炭素社会の実現に向けた様々な取り組みを推進しております。
気候変動への対応については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する個別課題(ア)気候変動への対応」において詳しく記載しております。
・当社グループは、サステナビリティの基本方針に基づき、当社グループの強みを活かしたサステナビリティ活動を通じた環境・社会課題の解決を目指しております。サステナビリティ活動に関するスローガンとして「think good」を掲げ、営業施策としてサステナブルな商品・サービスの提供に取り組んでおります。
・小売業を中核とする当社グループの事業活動は、多種多様、多数のお取組先との協働が不可欠と考えております。サプライチェーン上の持続可能性に配慮するため「お取組先行動規範」の遵守をお取組先と調達先に対してお願いしております。2021年度と2023年度にお取組先へアンケート調査を実施し、サプライチェーン上の実態・課題の把握と改善に努めております。
(リスク)
当社グループは、デジタル社会への変化に対応するために、実店舗とオンラインをシームレスにつなぐオンラインサイトやアプリの提供、デジタルツールを利用した業務効率化を進めております。また、事業活動を通じて蓄積したデータを活用してお客さまやお取組先への新たな価値提供を目指すなど、デジタルテクノロジーを活用したビジネスの変革(以下、DX)に取り組んでおります。デジタル社会に対応すべきリスクの捉え方としては内部リスクと外部リスクが存在していると認識しております。
内部リスクとしては、DXを実行する社内リソースの不足により、デジタル社会を前提としたお客さまのご要望への迅速な対応や業務効率化、経営効率化が進まずに業績や財務状況、今後の経営計画の実行への悪影響を与える可能性があります。また、新システム導入や更改、日々のシステム運用のなかで不測の障害が発生することにより、実店舗およびオンライン上の営業活動に支障が生じる恐れがあります。さらに、SNS活用が浸透・拡大するにつれ、従業員個人が関与するSNSトラブル増加の恐れがあります。また、AIチャットサービスは、将来的には業務生産性を高める無限の可能性を持つツールとして積極的な活用が求められる一方で、使い方によっては重要な機密情報の漏洩や意図せず第三者の権利侵害につながるリスク等も懸念されております。
外部リスクとしては、デジタル社会における詐欺犯罪の増加が挙げられます。当社グループのECサイト等においても対策が不十分な場合、財務上の損失につながる可能性があります。
(対 応)
・デジタルテクノロジーやデータの活用に長けた専門組織を設置し、人財育成や各部門へのデジタル人財の配置を行うことで、グループ全体としてDXを実行する社内リソースの強化を図っております。
・システム部門による障害発生の事前防止活動とともに、システム部門と営業部門が一体となり障害発生時の損失を極小化する対応力を向上させる取り組みを行っております。
・SNS活用が浸透・拡大するにつれ、想定しなかった事故やトラブルが増加していることから、デジタルな顧客接点として、お客さまに安心してご利用いただける環境の構築を図るとともに、従業員が公私を問わず、SNSを利用するにあたって遵守すべきルールとして、禁止・注意・推奨する事項を明示した「ソーシャルメディアガイドライン」を策定しております。
・AIチャットサービスについては、昨年、当社グループ専用のデジタルツールを作成し、利活用できる環境を整備しております。また、利用前には必ずeラーニングを受講するなど社内ルールを周知徹底することで、機密情報の漏洩や第三者の権利侵害といったリスク回避の対策を講じております。
・オンライン上の不正行為を抑止するために、技術的対策の導入をより一層強化してまいります。
・仮想空間プラットフォームやAIを組み合わせた顧客データ分析等、新しいデジタルテクノロジーを活用したビジネス価値創造に持続的に取り組むことによって、デジタル社会の発展に適応してまいります
(リスク)
当社グループの主要事業である百貨店事業は、これまでマスマーケティング型のビジネスモデルに重きを置いておりました。しかしながら、近年の少子高齢化といった人口動態の変化や所得の二極化といった社会構造の変化、さらにはデジタル化の加速と情報化社会の進化により、お客さまの価値観、消費行動は大きく変化を遂げております。このような時代の変化に対応したビジネスモデルへの転換が遅れた場合、業績や財務に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、同業や異業態の小売業他社との競争激化を背景とした業界再編の動きが活発化してきており、新たなビジネスモデルの構築が急務となっております。
(対 応)
・当社グループは、上記のリスクを加味したうえで新しいビジネスモデルの確立が必須であるという認識のもと、次期中期経営計画(2025~2030年度)において、従来の「“館”業」(百貨店の“館”の力に頼ったマス向けビジネスモデル)から「個客業」(「館」+「まち」の力で世界中からお客さまを集め、識別化し、つながったお客さまに多様な顧客価値を提案するビジネスモデル)への変革を図ってまいります。
・個客業ビジネスモデルへの変革は、次の4つの視点で進めてまいります。
(リスク)
当社グループは、百貨店事業での東南アジア、中国、台湾、および米国の店舗営業のほか、海外の不動産事業にも参画しております。これらの売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のため円換算されており為替変動の影響を受けております。また事業展開をする各国において、事業・投資の許可、税制等、様々な政府規制や法制度の適用を受けております。
海外情勢リスクとしては、テロ・戦争・政治・宗教その他の要因による政治・経済的不安や社会的混乱等の地政学リスクがあります。なかでもウクライナや中東情勢の悪化は、エネルギーコストや商品価格の高騰および商品供給のリードタイムの長期化等、当社グループのビジネスに影響を与えており、引き続き注視が必要であると捉えております。
海外事業リスクとしては、海外で事業展開するうえで、従業員の安全管理上の問題、海外現地法規制への対応不備、現地のガバナンス不全等のリスクが内在しております。
これらのリスクにより、当社財務への損害だけでなく、海外実店舗の物的・人的損害の発生や事業の停止・撤退を余儀なくされる可能性があります。また、商品供給網においても、現地法人やお取組先を介してのグローバルな取引が多く存在し、商品供給の停滞、遅延が発生する可能性があります。
(対 応)
・当社グループは、海外へ赴任する従業員に対し、海外事業リスクに関する教育を実施しております。
・海外拠点とのリモート会議やタイムリーな現地リスク情報の共有等、定期的なコミュニケーションを実施し連携を図っております。
・有事におけるレポートラインの確立や日本と海外拠点とが一体となった組織的対応の実施計画を策定しております。昨今では特に、従業員の安全を確保できるよう、東アジアを中心とした海外情勢の変化を常に注視しております。
・資金管理等においては、銀行のシステムを利用し、日本側からのモニタリング体制を構築しております。
・ガバナンス強化の一環として、海外拠点を対象にした内部通報制度を導入し、通報窓口を設置、運用しております。
(2)財務に関するリスク
(リスク)
当社グループは、事業を多角的に展開しており、今後の経営計画として、保有不動産の開発にあたり百貨店の魅力あるインフラ機能を併せ持つ「まちづくり」として結実させていくビジョンを描いております。その実現のため、保有不動産の建て替え、改修等で今後一定の資金が必要となることが想定されます。しかしながら、当社グループの業績の悪化や格付けの変更による資金調達力の低下、さらには政策の転換による金融市場の資金調達コストの上昇等、様々な要因が資金調達を困難にする可能性があります。資金調達が困難になった場合には、事業計画実行の遅延や戦略の変更を余儀なくされるリスクがあります。
(対 応)
・当社グループは、構造改革を積極的に推進し、固定費の削減を実施することで、営業黒字を拡大する取り組みを行っております。また、営業キャッシュフロー改善を通じて、有利子負債削減に取り組むとともに、経費や投資キャッシュアウトのコントロールを徹底することで、財務体質の改善を図っております。
・さらに、中長期的な投資に向けた余力を確保しながら、株主還元や有利子負債削減、収益に貢献する投資をバランス良く実施しております。このような取り組みにより、フローとストックの観点でも最適な財務基盤を構築することで、全てのステークホルダーとの良好な関係性を築いてまいります。
(3) 人事・労務に関するリスク
(リスク)
当社グループにおいては事業戦略を遂行するうえで既存の事業分野のみならず、不動産、金融、デジタルをはじめとした新たな事業分野で、高度な専門知識を有する人財の持続的な育成、確保が必要と認識しております。人財獲得競争が激化するなかで、計画通りに事業戦略に必要なスキルを有する人財の確保が図れなかった場合は、当社グループの目指す経営目標の達成や事業の存続に影響を及ぼす可能性があります。
(対 応)
・当社グループは、「マルチステークホルダー方針」を公表しており、経営資源の成長分野への重点的な投入や従業員の能力開発、スキル向上等を通じて、イノベーションによる持続的な成長と生産性向上に取り組み、付加価値の最大化に注力しております。その上で、生み出した収益・成果に基づいて、従業員への持続的な還元を目指しております。
・経営戦略の実現に向けた専門人財の育成に関しては、戦略的な出向政策や既存人材のリスキル、事業別に異なる専門スキルに応じた制度の拡充に取り組んでおります。
・合わせて、経営戦略の実現に必要な「多様な事業の組み合わせ」により新たな価値を創造する人材の育成に向けて、グループ内外への人材流動化を計画的に進めることで、個人の持つ知と経験、ネットワークの多様性を拡大し、新たな価値を生み出す人財の育成に取り組んでおります。
・人財獲得競争の激化に対しては、従業員エンゲージメントの向上に継続的に取り組むことでグループ従業員の離職率低下や、企業イメージの向上による外部人財の獲得を図っております。
・人財基盤を支える取り組みとしては、一人ひとりのライフワークバランスを尊重し、個人のライフスタイルに合わせた多種多様な働き方を認める両立支援制度の拡充やひとの力を引き出すための対話活動の推進、従業員の心身の健康に配慮した適正な労働時間管理やハラスメント撲滅の取り組みを推進しております。
・その他、女性活躍推進に向けた取り組みや、高年齢者雇用安定法の改正を踏まえた、エルダー社員人財の活用、障がい者の活動機会の確保などの施策にも継続して取り組んでおります。
・人的資本については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する個別課題(イ)人的資本経営」において詳しく記載しております。
(4) 災害等のリスク
(リスク)
当社グループは、百貨店事業を中心として店舗による事業展開を行っております。このため、地震、水害、火山噴火などの自然災害が発生すると、店舗の営業継続に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、首都直下型の大地震が発生した場合、当社グループの店舗は首都圏に集中しているため、お客さま、従業員および建物等が甚大な損害を受けることが予想されます。これにより、業績や財務状況に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。また、東日本大震災の経験から、大規模震災による電力の使用制限や消費の自粛、放射能による食料品汚染などが営業活動に影響を及ぼすことが予想されます。特に富士山噴火では、東海地方および首都圏の店舗において、噴火発生時に火山灰が飛来することで、営業活動をはじめ、交通インフラを中心とした混乱が予想されるほか、システムや物流網等、全国的な影響が考えられます。
さらに近年の地球環境の変化に伴い、台風や集中豪雨といった災害の規模と被害が甚大化するケースが増加しております。また、洪水や浸水、強風により、お客さま、従業員および建物等に被害が発生し、営業停止による営業損失を引き起こす可能性があります。加えて、百貨店事業は全国各地からの商品供給や物流により成り立っているため、供給網に影響が及ぶことで、当社グループの事業活動全体に影響を及ぼす可能性があります。
火災については、当社グループでは火災の発生を防止するために消防法に基づいた対策を徹底しております。しかし、店舗にて火災が発生した場合、お客さまや従業員の罹災による人命の危機の発生および人的資源の喪失、建物等固定資産や棚卸資産への被害、被害者に対する損害賠償責任等が発生する可能性があります。さらに、これらの被害以外にも法令違反が発覚した場合の罰則や営業停止に伴う営業損失も懸念され、当社グループの業績や財務に悪影響を及ぼす可能性があります。
近年では、他国からのミサイルが日本の領土等に着弾・落下するケースも想定されます。従業員や施設に直接的な損害が無くても、攻撃が継続され、より深刻な事態となれば、全国的な事業継続に多大な影響を及ぼす可能性があります。
また、新たな感染症の拡大により、国内の消費マインドやインバウンド需要の低迷等、当社グループの業績や財務に影響を与える可能性があります。
(対 応)
・当社グループでは、地震、水害、パンデミック、富士山噴火、ミサイル攻撃等、今後想定される大規模災害への対応のため、災害対策基本計画および事業継続計画(以下、BCP)において、日頃の防災・減災対策や災害発生時の初動・復旧に向けた具体的な行動計画を策定しております。
・計画の実行性を高めるために、各店舗および事業所での非常用物資の備蓄や定期的な訓練、安否確認システムの導入、ITツールを活用した情報共有等を実施しております。
・株式会社三越伊勢丹は、BCPの取り組みと店頭での募金活動や従業員のボランティア活動を支援する仕組み等が評価され、「事業継続」と「社会貢献」の分野において、外部の認証機関より、百貨店として初の「レジリエンス認証」を取得しております。
・各店舗において、所轄消防署と協力のうえ、火災を想定した消防訓練の実施や設備点検、さらには自衛消防隊設置による平時からの安全管理を実施しております。
・他国からのミサイル発射等による脅威については、Jアラートが発動された場合の対応マニュアルを作成し、あわせて、訓練強化に取り組んでおります。
・新たな感染症の拡大に際しては、当社グループはお客さまと従業員の安心・安全を第一に、グループ全店舗で感染状況に応じた対策を実施してまいります。また、当社グループのBCPにおいても、「新型インフルエンザ等によるパンデミック」について、被害想定ならびに行動目標を定め、対応しております。
(リスク)
当社グループは多岐にわたる事業活動やサービス提供のなかで、お客さま、お取組先の様々な情報をお預かりし、管理しております。昨今、日本企業が国内外からのサイバー攻撃を受ける事例が増加しており、当社グループでも情報セキュリティガバナンスのさらなる強化は急務となっております。サイバー攻撃等によるシステムの破壊や停止、不正アクセス犯罪等による機密情報や個人情報の漏洩が発生した場合、システムの停止と復旧に時間を要することにより広範な業務に支障をきたすことを余儀なくされます。加えて、社会的信用の失墜による売上の減少や賠償金等の支払い負担等、当社グループの業績や財務に影響を与える可能性があります。
(対 応)
・当社グループでは、情報セキュリティガバナンス強化のため、サイバーセキュリティ対策部会において、日常の業務活動のなかで技術的および人的・組織的な対策の推進を図っております。
・技術的対策では、サイバー攻撃を防御、監視、検知、駆除するためのセキュリティツールの導入と運用を強化しております。
・人的・組織的対策では、情報セキュリティに関する従業員のリテラシーの向上を図るため、システム部門における専門的なセキュリティ人財の育成や、従業員へのセキュリティ教育・訓練を適時実施しております。
(5) オペレーショナルリスク
(リスク)
当社グループは、百貨店事業を中心として事業展開を行っております。お客さまのニーズに合わせて、 常に安全で安心な商品やサービスを提供する事を最優先に考え、お客さまのご満足と信頼に応えられる品質を追求しております。
百貨店事業は、私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律を始めとする経済法や各種消費者保護法、また営業許認可に関わる各種業法の適用を受けております。これらの法規制に適合し、お取組先との取引や、消費者との取引においても、競争力や情報量の格差に乗じた不当な拘束等を排除し公正な取引を行うことが求められております。これらの法規制を遵守できなかった場合、行政処分により当社グループの活動に制限がかかる可能性や、社会的信用の失墜、売上の減少、損害賠償金の支払い、罰金や課徴金の負担等の財務上の損失が生じる可能性など、当社グループの事業継続に大きな影響を与えることが考えられます。
当社グループが実施しているサステナビリティ活動に関するお客さまアンケートでも、例年「商品の品質・安全の確保・正確な表示」が、当社グループに期待されている項目の上位に挙げられております。なかでも食料品販売から飲食サービスまで多岐にわたる食品衛生に関わる事業においては、アレルギー表記の不備等が原因となる食物アレルギー有症事故や、調理者の健康管理不良や食材管理不良等に伴う食中毒が懸念されます。これらが発生した場合、お客さまへの重篤な健康被害だけでなく、営業停止や罰則などの行政処分、社会的信用の失墜による売上の減少や損害賠償金等の支払いが発生し、当社グループの財務に悪影響を与える可能性があります。
(対 応)
・当社グループは、持続可能なサプライチェーンやビジネスと人権等の社会課題に対応するため、「三越伊勢丹グループ調達方針」、「三越伊勢丹グループ人権方針」を策定しております。また、主要お取組先を対象としたサステナビリティ調達に関するアンケートの実施や方針説明会の開催等を通じて、お取組先各社との対話を深め、サプライチェーン・マネジメント体制を整えております。
・当社グループは、お取組先や価値創造を図る事業者の皆さまとの連携・共存共栄を重視して、新たなパートナーシップを構築することを宣言する「パートナーシップ構築宣言」を策定しております。宣言の内容は、eラーニングを通じて従業員全員が理解・実践に努めており、公平・公正な取引を通じてお取組先との信頼関係を築き、社会的価値と経済的価値の両立を目指しております。
・グループ全体の商品取引における法令遵守体制を構築するために、下請代金支払遅延等防止法や不当景品類及び不当表示防止法、特定商取引に関する法律に則したガイドラインやマニュアルを整備し、法改正やオペレーションの見直し等時宜に適った改定を行い、社内に周知しております。
・コンプライアンス推進会議を組織し、定例会議において、法改正等への対応の指針の策定と社内懸念事項の報告および解決に向けた取り組みを強化しております。
・「三越伊勢丹グループ企業理念」を実践するために、グループの役職員が日々の業務においていかに判断し、行動すべきかの倫理的基準を示す「三越伊勢丹グループ行動規範」を定め浸透を図っております。
・コンプライアンスを担当する実務者向けに、法令、社内規程等を含めた定期的な教育を実施し、実務とコンプライアンス遵守の両立に取り組んでおります。
・当社グループ内に派遣いただいている従業員を含め、店頭において法令違反や社内規程に反する行為がないか、定期的に点検を行うとともに、法令、社内規程等のOJT教育を実施しております。
・万が一、事件・事故が発生した場合には、各ガイドラインとレポートラインに則った関連部署間での連携による解決を図り、その後、社内にて事例を共有し再発防止に努めております。
・不正行為等があった場合に、その事実を速やかに認識し自浄的に改善するため、「三越伊勢丹グループホットライン」を設置するなど、内部通報に係る適切な体制整備を行っております。
・食品衛生の基本となるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理計画書を策定し、お取組先まで共有することで食品衛生確保の網羅性を図っております。また、計画書に基づき日々の記録と保管を徹底し、定期的な点検を実施することで、法令遵守と食中毒予防の両面からお客さまの安全確保に取り組んでおります。
・アレルギー有症事故を予防するため、正確なアレルギー情報を提供するためのマニュアルと社内体制を整備しております。定期的な点検を通じて情報の正確性を確認し、お客さまとも積極的なリスクコミュニケーションを日々推進しております。
(リスク)
昨今、個人情報を用いたビジネスの拡大や新規ビジネス創出に伴う個人情報の漏洩や不適切な利用事案の増加から、消費者の個人情報保護への意識と利用状況への関心が高まっております。また、個人情報に関する各国法も相次いで整備されるなか、企業には、越境移転も踏まえた厳重な管理体制や、厳格な目的内利用の仕組みの構築が求められております。
当社グループは、百貨店業、クレジット・金融・友の会業、情報処理サービス業を中心に、多くのお客さまの個人情報をお預かりし管理しております。しかし、犯罪による漏洩や管理体制の不備による紛失、また個人情報の保護に関する法律等への違反が発覚した場合には、損害賠償費用や罰金などの費用が発生する可能性があります。さらに、当社グループの社会的信用の失墜による売上の減少等、当社グループの業績や財務に悪影響を及ぼす可能性があります。
(対 応)
・適切な個人情報の取得および利用のための自主基準やマニュアルを策定し、これらに基づいて管理システム・社内管理体制を整備し、実店舗からオンライン環境に至る全ての事業環境において、日々厳重に個人情報の管理を実施しております。
・個人情報を含む情報セキュリティ体制の策定と周知の徹底を行い、さらに継続的な見直しとモニタリングを実施しております。
・対応スキルの維持向上を目的として従業員に向けた教育を実施し、リテラシーと意識の向上を図っております。
・行政によるデジタル社会の形成に向けた法整備状況や個人情報の保護に関する法律、法規制、ガイドライン等への対応を図っております。
・海外拠点においては、関連する現地法規制に関する情報収集を継続的に行い、適切な対応を行っております。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、企業価値の長期的な向上を図りつつ株主の皆様への利益還元を行っております。
経営環境、業績、財務の健全性を総合的に勘案しながら、安定的な配当水準の維持、利益成長にあわせた中長期的な増配に加え、自己株式取得を組み合わせたトータルな還元を、総還元性向50%の水準を意識して行ってまいります。
資本効率向上に向けた自己株式取得につきましては、業績動向や成長投資の機会その他の要因を考慮し、その金額や時期を含め、機動的に決定してまいります。
なお、当社は配当について以下の内容を定款で定めております。
①当社は、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる旨を定めております。
②また、取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる旨を定めております。
(ご参考)政策保有株式に関する方針
①当社の政策保有株式の方針
当社グループは、グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資すると認められる場合を除き、原則として政策保有株式を取得・保有しないことを基本方針としております。既に保有する政策保有株式については、毎年取締役会において、保有目的、取引状況、配当収益など、定量面と定性面から総合的に継続保有の合理性を検証しておりますが、政策保有株式縮減に向けて、市場環境や保有銘柄の状況等を勘案しつつ段階的に売却を進めてまいります。
②政策保有株式に係る議決権の行使基準
政策保有株式の議決権の行使については、当該企業の持続的な企業価値の向上につながるか否か、また当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するものであるか否かなどを総合的に判断し、各議案について適切に議決権を行使してまいります。
③政策保有株主から売却の意向が示された場合の対応方針
当社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)から売却等の意向が示された場合、取引の縮減を示唆することなど、売却等を妨げる行為は行いません。
(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。