事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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売上
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利益
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利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
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(単一セグメント) | 1,434 | 100.0 | 294 | 100.0 | 20.5 |
事業内容
3【事業の内容】
当社は、「未来のインフラを創出し、HRの歴史を塗り替える」ことをビジョンに掲げ、大企業や成長企業を中心に、企業の人材獲得をDX化し、効率を上げるためのソリューションをSaaS(Software as a Service)(注1)にて提供しています。
日本における採用市場の歴史を振り返ると、1960年代に企業の採用を支援する民間企業の有料職業紹介が広まりました(注2)。1990年代にはインターネットの発展とともに、オンライン求人メディアが登場し、2010年代には求職者データベースを利用したダイレクトスカウトサービスが普及するなど、新たなサービスが次々に誕生してきました。しかし、これらはどれも人材紹介会社のデータベースに依存した外部依存型の採用手法であり、企業自体の採用力を本質的に向上させるものではなく、人材獲得競争が激化するなか、こうした方法のみでは優秀な人材の確保がますます難しい状況となっていると当社は考えております。このような背景の中で、当社が設立されました。当社は、テクノロジー・AIを通じて「企業の採用力を向上させる」ことをテーマに掲げた人材テクノロジー企業です。
当社は創業以来、外部の有料職業紹介(人材紹介エージェント)に依存せず、従業員がリクルーターとなり、友人知人のネットワークを活用して採用を加速するリファラル採用(注3)サービス「MyRefer」を提供してまいりました。2022年には、外部のスカウトデータベースに依存せず、企業がこれまで出会った応募者情報を資産として蓄積し、自社のスカウトデータベースを構築する採用MAサービス「MyTalent」をリリースしました。2024年には、外部の求人メディアに依存せず、企業がノーコードで独自メディアを作り、検索エンジン最適化を行いながら集客できる採用ブランディングサービス「MyBrand」をリリースしました。
日本では労働人口が減少し、概ね全ての職業が人手不足となる一方で、求人数は増加の一途を辿っており、企業の人材獲得はますます困難になると予想されています。日本の労働市場では労働力人口6,967万人のうち年間の転職者は331万人と全体の5%程度である中で、既存の採用サービスではリーチしきれない潜在層を含め転職等希望者数が1,000万人を突破し、過去最高となっております。(注4)。このような状況において、応募を待つだけの採用活動ではなく、潜在層に自社の認知を広め、検討や関心を促すマーケティングに則った新しい採用手法が必要と考えています。欧米では2013年頃から「Recruiting is Marketing」という考え方が広まり、自社採用比率を高めることで優秀な人材の獲得とコストの最適化が進められており、採用活動にAIや自動化を取り入れることも広まりつつあります(注5)。
当社は、こうした海外で進化した採用マーケティングの潮流を日本に導入し、テクノロジーとAIを駆使して日本企業の人材獲得力を強化する採用DXプラットフォームを提供しており、これまで従業員数1,000名以上の大手企業(注6)をはじめとし、累計1,000社以上に導入いただいており、本書提出日現在では日本の時価総額TOP50の40%以上の企業(注7)の採用マーケティングを支援しております。
当社の事業系統図及びビジネスモデルは以下の通りであります。なお、当社は「採用マーケティング事業」の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
<サービス概要>
サービス |
内容 |
|
Myシリーズ |
MyRefer |
従業員をリクルーター化し、ネットワークを活用したリファラル採用を促進するSaaS |
MyTalent |
過去応募者やアルムナイなどの潜在層を独自データベース化し、AIを活用したスカウトを可能にする採用MA SaaS |
|
MyBrand |
ノーコードで自社独自の採用メディアを作成できるSaaS |
|
その他 |
Myシリーズプラットフォームの展開を通じて寄せられる顧客のニーズに応え、 |
<事業系統図>
当社の事業は、求人を募集している企業から、原則として1年以上の月額課金(MRR:Monthly Recurring Revenue)(注8)を収受するモデルであり、売上全体の94%がこのようなストック収益で成り立っています。
従来の採用手法である有料職業紹介(人材エージェント)や求人メディアは成功報酬をベースとするフロー型のビジネス構造であり、求職者を獲得するためのマーケティング全般に関する投資や広告費といった仕入コストが発生します(注9)。
これに対し、当社の「Myシリーズ」は、利用企業の従業員ネットワークや応募者データを活用して採用を促進するストック型サービス(SaaS)であり、こうした求職者の仕入コストが不要であります。
国内大手企業でも新規採用手法の探索や採用コストの削減ニーズが高まる中、既存採用手法と比較して「費用対効果が高い自社採用」を採用マーケティングの力で実現可能にし、利用企業に対して高い費用対効果を実現するサービスを提供することで、安定的なビジネスモデルを構築しています(注10)。
「MyRefer」は従業員の利用アカウント数に応じた料金体系、「MyTalent」は候補者の登録数に応じた料金体系、「MyBrand」は機能追加に応じた料金体系を採用しています。これらのサービスはいずれも、月額課金モデルであり、継続的な顧客接点を通して、サービスのさらなる向上と収益基盤の拡充を目指しています。現在、収益の約7割は「MyRefer」関連サービスによるものとなり、「MyTalent」、「MyBrand」の新規顧客獲得に加え、「MyRefer」の既存の顧客基盤を活かしたクロスセルを推進しております。
人的資本経営が推進される国内において、“採用マーケティング”という独自の切り口で提案すること、一つの手段ではなく、Myシリーズとしてプラットフォーム展開することにより、サービス提供開始以降、ARRは増収を続けております。
(注1) SaaSとは、ソフトウエアやアプリケーションをユーザーが導入するのではなく、インターネット等のネットワークを経由して利用できるサービス形態のことです。
(注2) 『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ(2019年11月発行)』より参照
(注3) リファラル採用とは、自社の社員や取引先など社内外の信頼できる人々から、友人や知人を紹介してもらう採用方法です。
(注4) 総務省統計局「労働力調査 2024年」
(注5) The 2024 Global Guide to AI in Hiring。米国、英国、オーストラリアの労働者と人事担当者4,000人以上に調査したものであり、人事担当者のなかで候補者のソーシングにAIを信頼している割合は73%、今後1年以内に何らかの形でAIを使用する予定がある割合70%等の調査結果が出ています。AIが活用される採用プロセスは、「ソーシング(候補者集め)→スクリーニング(書類選考)→インタビュー(選考)→オンボーディング(入社後の活躍支援)」という流れで構成されており、優秀な候補者の発掘、マッチ度の見極め、面接日程の自動調整、そしてミスのない事務作業の実現といった観点でAIや自動化技術が活用されています。Myシリーズにおいて、ソーシングおよびスクリーニングの段階において、一部AIおよび自動化を導入しています。
(注6) 本書では、常時雇用する従業員数が1,000名以上の企業を指すものとします。以下同様。
(注7) 2025年5月31日時点の東京証券取引所プライム市場の時価総額を基準としています。
(注8) MRR=Monthly Recurring Revenueであり、毎月繰り返し得られる収益のことを指します。MyReferは利用従業員数、MyTalentは候補者登録数、MyBrandは利用機能および各Myシリーズに付属するサポートコンサルの範囲により月額課金金額が設定されます。
(注9) 厚生労働省の「令和4年度職業紹介事業報告書」および公益社団法人「全国求人情報協会」のデータに基づき、人材紹介および求人広告の市場規模と、それぞれの経由による想定転職者数をもとに計算した結果、人材紹介経由の採用コストは約160万円/人、求人広告経由の採用コストは約120万円となります。なお、MyRefer及びMyTalent利用顧客における累計契約金額と採用決定人数より算出した採用コストは約30万円/人となります。
(注10) 当社による営業時における大手企業顧客(3,757社)へのヒアリング調査において、「新たな採用手法を探している」と73.8%の企業が回答し、「採用コストを削減したい」と42.8%の企業が回答しています。
当社が提供するMyシリーズの各サービスの概要は以下のとおりであります。
(1)「MyRefer」
創業時の2015年10月にリリースされた「MyRefer」は、人材紹介会社の仲介による採用活動ではなく、従業員をリクルーター化し、ネットワークによる採用活動を促進するリファラル採用サービスです。リファラル採用は現場社員の紹介による採用であることから求人企業、求職者双方にとって情報の信頼性が高く、ミスマッチが起きづらいことや、転職市場に出ていない人材を採用できるという特徴があります。人材紹介会社を利用した場合、採用コストの高騰や早期離職などのミスマッチ、人材が集まりにくいといった課題がありますが、「MyRefer」を活用することで、採用コストの削減、マッチング精度の向上、転職潜在層からの新たな応募者の創出などのメリットが期待できます。リファラル採用の推進においては、人事部門が募集ポストの周知や進捗管理をアナログで行うため業務が滞りがちであり、社員側にも友人知人の情報共有による負担が生じます。これらの課題を解決するため、「MyRefer」は多彩な機能を提供します。主要SNSと連携し、自社の求人情報やニュースをリアルタイムでシェア可能であり、こうした広報活動を自動化することもできます(注1)。それだけでなく、従業員にポイント付与などの仕組みを通じて動機づけを行い、楽しく自発的な紹介活動を促します。
さらに、従業員や求人ごとの紹介活動データを可視化し、リファラル採用の課題を特定する仕組みも整備しています。
これらの機能により、リファラル採用を簡単に導入・活性化できる環境を構築でき、人事システムや従業員向けアプリを通じて、採用活動を効率的かつ効果的に進められるサービスとして、大手企業を中心に採用されており、2023年9月時点で累計100万名を超える従業員に利用されています。
(注1) 社内広報オートメーション機能は「パーソナライズ自動化」を活用し、従業員一人ひとりに対して適切なタイミングで最適なコンテンツを配信し、リファラル採用の社内広報と従業員の動機付けを自動化するための機能です。従業員の属性(部署、職種、タグなど)やリクルーター活動状況をもとに、配信対象や頻度、内容を決定して自動配信しリファラル採用を効率的に促進します。
(2)「MyTalent」
「MyTalent」は、2022年2月にリリースされた採用MA(注1)ツールです。「MyTalent」は、中途・新卒採用の過去応募者やイベント参加者、将来的にリファラル採用の候補となる人材、自社を退職したアルムナイ社員に登録してもらうことで独自のスカウトデータベースを構築することができます。従来の外部スカウトデータベースとは異なり、転職市場に現れない潜在層であり、過去に自社と何らかの繋がりがある層(自社への理解または関心のある層)を対象にAIを活用して半自動的にスカウトを実施します。その結果、候補者の転職意向が高まるタイミングを的確に捉え、他社に先駆けて採用に結びつけることが可能となります。
一般的な外部スカウトデータベースでは、競合が多いため返信率が低下し、優秀な候補者を他社に取られてしまうリスクが課題です。しかし、「MyTalent」では独自のスカウトデータベースをもとにスカウトするためそうしたリスクが軽減されます。
また、「MyTalent」は採用サイトや関連ページに計測タグを設置し、タレントプール(注2)に登録された候補者の行動履歴を自動収集・分析します。メールへの反応やウェブサイト訪問などの行動を「興味スコア」として数値化し、AIが応募意欲の高い候補者を抽出します。適切なタイミングで最適化されたメールを送ることで、競合他社とのバッティングを回避し、効率的な採用活動を実現します。
「MyTalent」は「MyRefer」同様、採用活動を効率的かつ効果的に進められるサービスとして、大手企業を中心に採用されており、2024年2月時点で累計17万件を超えるタレントプールが登録されています。
(注1) MAとは「Marketing Automation(マーケティングオートメーション)」の略で、マーケティング活動を自動化・効率化するための技術やツールを指します。
(注2) タレントプールとは、将来的に採用の可能性がある優秀な人材と関係を維持していくため、候補者のデータを集約することを指します。
※「MyTalent」による行動履歴の収集範囲はご利用企業の採用サイトや関連ページ、「MyTalent」経由で送付さ
れたメールに限定されており、また事前に応募者個人より許諾を得ております。
(3)「MyBrand」
「MyBrand」は、2024年1月にリリースした採用メディアの作成支援ツールです。ノーコードでオリジナルの採用メディアを作成でき、外部の制作会社を使わずに自社で採用メディアの作成や更新等の作業が可能になります。採用サイトからの流入を増やしたい、認知ギャップを改善しマッチした人材を獲得したい、という顧客の要望に応えるサービスです。外部の求人メディアでは、採用における競合企業と横並びになり、応募が分散するほか、自社の魅力が十分に伝わりづらいことや、候補者が他社と併願で応募することで競合に負けるリスクが課題となります。また自社採用メディアを運用する場合においても、制作会社に外注するよりもコストを削減でき、かつ自前での運用が可能となります。「MyBrand」を活用して自社の採用メディアを構築することで、検索エンジン最適化による独自の集客が可能となり、従業員のストーリーを通じてリアルな魅力を伝え、自社のファンを育成できます。これにより、採用競合企業とバッティングすることなく、独自の採用活動を進めることができます。
<Myシリーズプラットフォームについて> コンパウンドSaaS(注1)として柔軟性の高い事業創造を実現
「Myシリーズ(「MyRefer」「MyTalent」「MyBrand」)」は、個別に利用することもできますが、複数利用いただくことで効果が上昇する共通の基盤上で事業展開を行うコンパウンドSaaSです。「Myシリーズ」各プロダクトは「Myシリーズ共通基盤」上で構築されており、利用企業は同じIDでシームレスに各プロダクトを利用できます。
このプラットフォームは、企業が人材を引きつけ(ブランディング)、興味を持たせ(マーケティング)、入社後の動機づけ(リファラル)を一連のプロセスとして統合しています。新たな事業もこの共通基盤に追加することで、ユーザーの利便性を高めつつ、費用対効果の高い新規プロダクトの事業開発(注2)を可能にしています。これが、多くの大企業から選ばれる要因であり、参入障壁ともなっています。
<Myシリーズのテクノロジーについて>
従来の採用活動は、求職者が登録する人材紹介会社や求人広告を通じて応募者を集めることが主流でした。しかし、労働人口が減少し、転職活動を行っていない「潜在層」へのアプローチが重要性を増す中、マーケティングファネルの考え方を取り入れた新しい採用手法が求められています。具体的には、「認知」「検討」「興味喚起」の各プロセスを採用活動に適用し、潜在層の関心を引き出すことが不可欠です。
当社は、これらを実現するための先進的なテクノロジーを提供しており、「MyRefer」「MyTalent」「MyBrand」などのプロダクトを通じて転職活動を行っていない潜在層へのアプローチを可能にしています。特に、AIや自動化技術を駆使することで、労働人口減少時代における新たな採用スタンダードを創造し、企業の採用活動を支援しています。
(注1) コンパウンドSaaSとは、多くの機能を持つ一つのプラットフォームに、様々な機能を持つ他のSaaSを載せていく(データ連携が可能な状態にする)SaaSです。SaaS間のデータ連携を進めることで、①開発効率の向上、②システム拡張性の向上、③利用可能な機能の向上が見込めます。その結果、利用企業に対する幅広い解決策の提案が可能となり、複数利用契約によるアカウント当たりの売上高の最大化及び解約の防止に繋がります。
(注2) 上述のとおり、一つのプラットフォームに様々な機能を持つ他のSaaSを載せるため、新たに一からプロダクトを開発するよりも負荷を抑えることができ、すでにリリースしたプロダクトと同レベルのプロダクトを短期間に、繰り返し開発することが可能となります。
当社事業及び「Myシリーズ」の特徴は以下のとおりです。
(1)人材採用課題を解決するAll in one solution
当社の「Myシリーズ」は、企業が採用活動を自社で完結できる採用DXプラットフォームです。
従来の人材採用では、採用サイトや求人広告の制作から人材募集、人材紹介会社による候補者紹介やスクリーニングまで、多くの工程で外部の協力会社に依存することが一般的でした。しかし、「Myシリーズ」を活用すれば、これらの工程を「自社完結」で「ワンストップ」で行うことができ、従来と比べて低コストで効率的に優秀な人材を獲得できます。
例えば、「MyBrand」を利用すると、企業は自社で採用メディアを制作・更新でき、求人情報や社員インタビュー、イベント告知などのコンテンツをノーコードで掲載できます。また、「MyRefer」を活用すれば、従業員を通じてスクリーニング済みの候補者を推薦してもらえます。こうして紹介された候補者は、入社後に紹介者である従業員との関係を通じて、会社への愛着が高まることも期待されます。さらに、採用に至らなかった候補者についても、「MyTalent」を利用して情報を資産として蓄積し、適切なタイミングで再度オファーすることが可能です。
このように、従来外部に依存していた採用活動をワンストップで行うことで、より効率のよい人材獲得をサポートしております。
(2)「採用×SaaS」のポジショニングで安定と成長を両立
当社は採用領域で低い解約率を実現し、売上の変動が激しい人材採用市場において、設立以来6期連続で増収を達成しています。この成長の背景には、従来の人材紹介や求人広告といったフロー型ビジネスではなく、SaaSとしてのストック型ビジネスを構築し、顧客に高い費用対効果を提供していることが挙げられます。
また、利用を重ねるごとにプラットフォームの価値が向上するビジネスモデルも当社の特徴です。例えば、「MyRefer」では、新入社員が毎年新たなリクルーターとしてアプリを活用することで会社のネットワークが拡大します。また、「MyTalent」では、応募者情報が毎年資産として蓄積され、経年利用により自社データベースが充実していきます。
このように、単発ではなくストック型の価値を提供し、経年利用により価値が向上し続けるビジネスモデルが、当社の安定と成長を支える基盤となっています。
実際に、Myシリーズの解約率(注1)は、2022年3月期には2.0%であったのに対し、2023年3月期には1.3%、2024年3月期時点は0.2%、2025年3月期では0.5%まで低下しております
(注1) 解約率:Myシリーズをご利用いただいているお客様におけるNet Revenue Churn Rateの12か月平均。Net Revenue Churn Rateとは解約やダウングレードによる損失だけでなく、サービスのアップグレードやクロスセルによって得た利益も含めた金額の割合を示すチャーンレートです。売上全体の把握や予測に役立つ指標です。
(3)大手企業の顧客を中心とした、安定した顧客基盤
創業期より大手企業向けにプロダクト開発を進めてきた結果、「Myシリーズ」利用企業の65%(2025年3月末時点)が従業員数1,000名以上の大手企業となっております。
大手企業に支持されている理由として、まず創業期から大手企業をユーザーとして取り込むことを重視した事業開発方針があります。具体的には、大手企業の要望に応える柔軟かつ堅牢なシステム(注1)を備えたプロダクト設計としています。
また、大手企業へのARPA(注2)は導入以降、アップセル(注3)やクロスセル(注4)により年々増加しております。「MyRefer」単体のアップセル、「Myシリーズ」のクロスセルと多くのキャッシュポイントが存在しており、今後もアップ/クロスセルによる更なる拡大が見込まれ、実際に大手企業の中で「Myシリーズ」を複数導入いただいている企業におけるARPAの平均値は、2023年3月末時点395千円、2024年3月末時点614千円、2025年3月末時点780千円と増加しています。
(注1) カスタマイズ可能な機能を備え、優れたUI/UXや他のシステムとの統合性を提供することに加え、強固なセキュリティ対策が施されている点が特徴です。また、企業のニーズに応じた柔軟なサポート体制もその一環として重要な役割を果たしています。
(注2) 「Myシリーズ」をご利用いただいている1社当たりの月額サブスクリプション売上高です。
(注3) アップセルとは、顧客に提供しているサービスよりも上位のサービスを提案し、利用いただくことを意味します。当社であれば、例えば「MyRefer」について一部の支店が利用いただいているものを全社で利用いただくことや、利用人数が増加したことで適用されるプランがアップすることが当てはまります。
(注4) クロスセルとは、顧客が利用しているサービスとは異なる別のサービスを提案し、併せてご利用いただくことを意味します。当社であれば、例えば「MyRefer」を利用中の顧客に「MyTalent」や「MyBrand」も一緒に活用いただくこと、「MyTalent」を利用中の顧客に「MyRefer」や「MyBrand」も一緒にご活用いただくことが当てはまります。
(4)プラットフォームの価値を高める「Myシリーズ」のネットワーク効果
「Myシリーズ」は、人材採用という共通の市場ニーズに対応するSaaSで構成されたプラットフォームです。当社の営業窓口は利用企業の採用担当部署に統一されており、「Myシリーズ」全プロダクトで同じ窓口を活用できます。そのため、新規営業時に複数のプロダクトを同時に提案しやすく、新規案件獲得後もアップセルやクロスセルの提案が容易で、営業生産性や収益性の複利的な成長を後押ししています。実際に、MyRefer単独サービスとして運営していた2022年3月期と、MyTalentリリース後にMyシリーズプラットフォームとして運営していた2025年3月期を比較すると、セールスマーケティング効率を示すROAS(注2)は約2.5倍に向上し、ACV(注3)は約1.6倍へ成長しております。
(注1) 採用市場(1.5兆円)は、以下の2つの市場規模を合算した推定値です。
厚生労働省「2023年度 人材仲介会社市場規模」:8,362億円
全国求人情報協会「2022年度 求人広告市場規模」:7,267億円
(注2) ROASとは、「Return on Advertising Spend」の略語で、新規受注金額を新規営業およびマーケティング コストで除して算出される指標です。
(注3) ACVとは、「Annual Contract Value」の略語で、顧客1人あたりの年間契約額を表す指標です。
業績
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末の資産合計は1,162,629千円となり、前事業年度末に比べ532,112千円増加となりました。これは主に、現金及び預金が436,517千円、繰延税金資産が90,771千円、前払費用が22,446千円増加した一方で、有形固定資産が19,461千円減少したこと等によるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債合計は700,779千円となり、前事業年度末に比べ130,894千円増加となりました。これは主に、取引金額の増加により前受金が102,818千円、未払金が37,750千円増加した一方で、長期借入金が31,798千円減少したこと等によるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産合計は461,850千円となり、前事業年度末に比べ401,217千円増加となりました。これは主に、当期純利益366,717千円を計上したこと、新株式の発行により34,500千円増加したことによるものであります。
② 経営成績の状況
当事業年度においては、前事業年度に引き続き「Myシリーズ」各プロダクトの収益が順調に推移するとともに、AIを活用した生産性向上及びプロダクト間のシナジー強化をテーマに、機能開発・サービス改善を推進いたしました。
特に、AIと自動化で日本企業の採用変革を加速する組織「AI X Lab.」を起点に、以下5つの機能をリリースしました。
MyTalent:AIホットフラグ機能/AI OCR機能/アプローチオートメーション機能
MyRefer :社内広報オートメーション機能/リクルーターレコメンド機能
また、リファラル採用SaaS「MyRefer」と、採用MA「MyTalent」や採用CMS「MyBrand」との連携強化にも注力し、「採用はマーケティングになる。」という思想のもと、顧客の業務効率化と体験価値の最大化を実現いたしました。
以上の取り組みの結果、当事業年度における売上高は1,434,211千円(前年同期比34.9%増)となり、営業利益は293,858千円(前年同期比979.8%増)、経常利益は276,146千円(前年同期比936.8%増)、当期純利益は366,717千円(前年同期比1,260.2%増)となっております。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は901,710千円と前事業年度末と比べ436,517千円の増加となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は434,739千円(前事業年度は148,108千円)の獲得となりました。これは主に、税引前当期純利益276,146千円、減価償却費20,791千円、前受金の増加102,818千円、未払金の増加37,750千円による資金の増加があったためであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は924千円(前事業年度は7,853千円)の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,195千円、無形固定資産の取得による支出388千円があった一方で、貸付金の回収660千円があったためであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は2,702千円(前事業年度は20,578千円の支出)となりました。これは、新株式の発行による収入34,500千円があった一方で、長期借入金の返済31,798千円があったためであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社で行う事業は、生産に該当する事項がありませんので、記載を省略しております。
b.受注実績
当社で行う事業は、受注から役務提供の開始までの期間が短いため、記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は「採用マーケティング事業」の単一セグメントのため、セグメント別の記載は省略しております。
事業分野別の名称 |
当事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
採用マーケティング事業 |
1,434,211 |
134.9 |
合計 |
1,434,211 |
134.9 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は総販売実績の100分の10未満であるため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成に当たり、決算日における財政状態及び会計期間における経営成績に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、この見積りと異なる場合があります。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
当事業年度の売上高は1,434,211千円(前年同期比34.9%増)となりました。これは主に、リファラル採用支援ツール「MyRefer」に加え、採用MAツール「MyTalent」の販売が順調に推移したこと、顧客企業のタレント・アクイジションの支援を行ったこと、「Myシリーズ」の共通基盤化を行い、顧客価値を高めるとともにカスタマーサクセスの強化、積極的なクロスセル機会が創出できたことによるものであります。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は、237,966千円(前年同期比18.9%増)となりました。これは主に開発に係る労務費が31,096千円増加したこと等によります。この結果、売上総利益は1,196,245千円(前年同期比38.7%増)となりました。
(販売管理費及び営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、902,386千円(前年同期比8.0%増)となりました。これは主に人件費が62,607千円増加したこと等によるものであります。この結果、営業利益は293,858千円(前年同期比979.8%増)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当事業年度において、営業外収益が1,579千円、営業外費用が19,291千円発生しております。この結果、経常利益は276,146千円(前年同期比936.8%増)となりました。
(特別損益、法人税等及び当期純利益)
当事業年度における、特別利益及び特別損失の発生はありませんでした。法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合算した法人税等は△90,571千円となりました。この結果、当期純利益は366,717千円(前年同期比1,260.2%増)となりました。
③ 財政状態の状況の分析・検討内容
財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。
④ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、事業上必要な資金を手許資金で賄う方針でありますが、事業収益から得られる資金だけでなく、過去における増資資金及び株式公開における調達資金で賄う予定であります。資金の流動性については、資産効率を考慮しながら、現金及び現金同等物において確保を図っております。資金需要としては、企業価値を増加させるために、主に人材採用、システム開発等を予定しております。
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
⑤ 経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は経営成績を把握することを目的として、売上高、MyシリーズMRRを含むサブスクリプション売上高比率、売上高総利益率、営業利益率を重要な客観的な指標と捉えております。
また、2025年3月期における当社売上高のおよそ94%がサブスクリプション売上高であるため、経営上の目標の達成状況を判断するための指標として、ARR(Annual Recurring Revenue)、課金利用社数、ARPA(Myシリーズ1アカウント当たりの月額サブスクリプション売上高)を重要な経営指標と捉えております。これらの指標につきましては今後も継続的に向上させるよう努めてまいります。
(年度ベース)
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
売上高(百万円) |
1,062 |
1,434 |
売上高総利益率 |
81.2% |
83.4% |
サブスクリプション売上高比率 |
95.4% |
94.0% |
ARR(百万円) |
1,205 |
1,421 |
課金利用社数(社) |
330 |
357 |
ARPA(円) |
280,368 |
317,822 |
営業利益(百万円) |
27 |
293 |
営業利益率 |
2.6% |
20.5% |
|
2024年3月期 |
|||
1Q |
2Q |
3Q |
4Q |
|
サブスクリプション売上高比率 |
97.8% |
94.4% |
96.1% |
93.9% |
|
2025年3月期 |
|||
1Q |
2Q |
3Q |
4Q |
|
サブスクリプション売上高比率 |
95.4% |
95.4% |
93.3% |
92.3% |
(注1)ARR(Annual Recurring Revenue): 年間経常収益。各期末時点におけるMRR(Monthly Recurring Revenue、対象月の月末時点における管理会計上のサブスクリプション売上高)を12倍して算出。
(注2)課金利用社数:Myシリーズを課金利用していただいている社数。複数アカウントを利用している企業も存在する。
(注3)ARPA:Myシリーズをご利用いただいている1社当たりの月額サブスクリプション売上高。2025年3月期のARPAは前年比113.4%。
(注4)サブスクリプション売上高比率:当該期間におけるサブスクリプション売上高累計額の売上高合計に占める比率。例えば、2025年3月期のサブスクリプション売上高比率94.0%は、2024年4月~2025年3月の累計額に基づいて算出。