リスク
3 【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性のあるすべてのリスクを網羅したものではありません。
(1) 事業環境に関するリスク
① 事業環境に関するリスクについて(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループの売上の大部分は、自動車向けの自動運転及び先進運転支援システムへのHDマップ搭載に係る開発利用料やライセンス・メンテナンスフィーとなっております。先進運転支援システムについては、1990年代から開発が進められてきたシステムであり、矢野経済研究所「2023年版 ADAS/自動運転用 キーデバイス・コンポーネント」(2024年2月発行)によれば、先進運転支援システムの装着率は2030年までに日米欧で100%近くに達し、中国でも80%を超え、ASEANやインド向け需要が2028年以降に本格的に立ち上がると予測されているなど、今後さらなる普及が見込まれております。これらの記述は、本書に引用されている外部の情報源から得られた統計その他の情報に基づいており、それらの情報については当社グループは独自の検証を行っておらず、その正確性または完全性を保証することはできません。
当社グループでは、今後も先進運転支援システム装着車両の順調な拡大、自動運転市場の本格的な立ち上がりを見込んでおります。一方、当社が設立された2016年時点には、自動運転レベル3以上でのHDマップの本格的な搭載開始が2022年前後となると想定されておりましたが、現時点においては自動運転レベル3が商用車として販売実績はあるものの量産車種での本格展開には至らないなど、自動運転市場の本格的な立ち上がりは、設立当時想定と比べ数年遅れている状況にあります。そのため当社グループでは、2019年のDynamic Map Platform North America, Inc.買収時に計上したのれん・技術関連資産及び同社固定資産等につき、2022年3月期連結決算において、当初想定していた損益が買収時の計画のそれより著しく下方に乖離していると判断し、当該のれん等を全額減損処理しております。また、当社では、2024年3月期連結決算において、事業計画に基づく割引前将来キャッシュ・フローと固定資産の帳簿価額を比較した結果、割引前将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回ったことから固定資産の減損処理をしております。当該減損処理は自動運転市場の立ち上がりの遅れを背景とするものであり、当該市場の本質的な市場性あるいは当社事業の事業性によるものあるいはそれらに影響するものではなく、当社グループでは従来同様の成長性を見通しておりますが、仮に技術・安全性の観点から車種開発に遅れが生じる、部品供給の不足により販売時期が延期になる等、市場の立ち上がりが想定通りに進まなかった場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、直近での米国新政権による関税政策の動向が不透明であり、今後の先行きには不確実性が残っております。当該関税影響による、先進運転支援システム装着車両の販売台数減少や自動車業界全体における自動運転市場への投資意欲減退が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合について(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
自動運転機能の商流において、HDマップの生成プロセスはコストが膨大である一方、各自動車メーカー間でのカスタマイズを要しないものであることから、日本国内においては、共通の仕様が定義され、その実行組織として当社は設立されております。こうした経緯から、当社は日本国内におけるHDマップを広域で生成・提供しており、自動車メーカーをはじめとした取引先各社から相応の評価を得ております。
海外事業においては、既に複数自動車メーカーの自動運転及び先進運転支援システムに採用され、量産車に搭載されており、さらにGeneral Motors Companyにより搭載モデル数が拡大することが公表されております。広範な道路整備範囲とcm級の精緻な位置精度をはじめとした高い技術力を背景に導入車種拡大に向けた戦略的な施策を講じることで、当社グループは競争優位性の維持・向上に努めております。
しかしながら、当社グループのHDマップとの比較では少なくともその精度の面で上回る競争優位性を有するとは見られないものの、一定の競合事業者(Here、TomTom、Googleなど)の参入も見られており、当社グループを上回る技術力(例として地図データ更新サイクルの短縮を可能とするための変化点検知技術の確立、モービル・マッピング・システム(MMS)に代わる低コストかつ高速な計測手法の確立など)、営業力、価格競争力、または代替技術・ソリューションを有する競合他社の参入や競合の激化が生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 技術革新について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループの主な事業は自動運転に関連する業界に属しており、技術革新は早いスピードで進むと予想されます。今後市場の拡大が見込まれるV2Xへの展開や半導体メーカー等における自動運転システム開発への適用など、自動車向けHDマップの活用領域は拡大していくものと考えておりますが、今後、HDマップに係る代替技術・ソリューション(例として、自動運転・先進運転支援システムにおける「地図」データの利用に関する、制御に必要な位置情報を把握するための技術的アプローチが挙げられます。「HDマップ」を利用するアプローチと、「SDマップ(ナビ地図)に走行車両から得られる走行車線のレーン情報などを付加した地図」を利用するアプローチがあり、いずれも、これらの地図データと各種車載センサーから得られる情報を組み合わせて制御を行います。両者はそれぞれ特性と用途が異なり、前者は高度な自己位置推定や悪天候時等にセンサーを補完し、限定されたエリアでの高度な自動運転、先進運転支援を可能にするものであり、後者は走行エリアを限定しない先進運転支援(車線維持支援、衝突回避、アダプティブ・クルーズ・コントロール(前車追従機能)等)に用いられています。現時点では、大手自動車メーカーや米国及び中国における主要な自動運転タクシーサービス提供企業が採用する「HDマップ」のアプローチが主流でありますが、テスラ等一部のプレイヤーは後者のアプローチを採用しています。)の拡大など、当社グループが現在展開する事業が適合しない新たな技術革新や市場動向が生じる可能性があります。当社グループはこうした技術進展を踏まえた機能開発・ソリューションの提供など、仮にそうした代替技術・ソリューションが一般化する場合には、当該状況に適合し、当社グループとして当該技術・ソリューションにおいても優位性を確保していくよう事業運営に取り組んでまいります。また他社と共同で代替技術の研究開発も行っております。
現時点で、代替技術・ソリューションが実用面で現実的なものとなる可能性は乏しいと見ておりますが、仮に現実的になった場合で、上記技術やソリューションを当社グループが提供できなかった場合、市場からの需要を喪失し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ HDマップの整備・更新に係る投資が先行し、赤字を計上するリスクについて(顕在化の可能性:高/影響度:大/発生時期:1年以内)
当社グループの事業は、HDマップの整備道路範囲の拡大が当該マップ搭載の前提となるため、先行的にHDマップの整備範囲の拡大を進めており、当社グループは、設立以来赤字を継続しております。現時点での顧客ニーズに対応するためのHDマップの整備状況としましては、日本国内においては高速道路・自動車専用道路の整備を完了しており、北米においては対象を一般道に拡大し整備を進めております。その他の地域としては、欧州及び韓国において、高速道路の整備を完了しており、中東においては、高速道路相当より整備を進めている段階です。日本・海外ともに顧客ニーズに対応するための大きな費用を要する整備が先行する状況が継続する場合、当面赤字計上が続く可能性があります。今後は、自動運転及び先進運転支援システム市場の立ち上がりを捉えた売上の拡大と、機能開発による整備コストの低減により、収益性の向上に努めていく方針です。
一方で、当社グループを取り巻く経営環境の急激な変化や「事業等のリスク」に記載されたリスクが顕在化することにより、上記収益性の向上が想定通りに進まなかった場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 多用途展開の推進について(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:数年以内)
当社グループでは、スマートシティ、MaaSにおける自動走行をはじめ、道路や設備などの各種インフラ維持管理、国や地方自治体による防災・減災対策、各研究機関に向け、高精度3次元データを提供するなど、多用途展開の推進に取り組んでおります。当社グループでは、今後も多用途展開について積極的に取り組んでいく方針ですが高精度3次元データを活用できる技術が確立されない、安定的なライセンス料収入につながるビジネスモデルの構築・商品化が出来ない、などの外部要因により当初の想定通りに事業が進捗しなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 海外事業展開について(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループでは、Dynamic Map Platform North America, Inc.をはじめ、北米、欧州、中東及び韓国に拠点を有し、グローバルベースで事業を展開しております。当該海外事業の展開にあたっては、各国の経済・政治情勢の悪化、法律・規則、税制、外資規制等の差異及び変更、商慣習や文化の相違等が発生する可能性があります。これらの要因により特定の国での事業の遂行及び推進が困難になる場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは次のようなリスクシナリオを想定し、それぞれの防止体制を整備しております。
a 当該地域・国における経済情勢が想定外に極端に悪化し、事業採算が大きく悪化する
現地において日常の事業を通じ経済動向を継続的に把握し、また予算・事業計画の策定と予実管理の徹底により、事業面で取るべき行動を早期に察知し、撤退を含めた必要な行動を取れるような体制としております。
b 当該地域・国において外資規制等、当社グループ事業のそれまでの想定を許容しない制約につながる法律・規制の変化が生じる、あるいは法律・規制の複雑さ・不明瞭さが増し、事業展開における柔軟性が阻害される
法律・規制の動向につき、現地の日常的な事業を通じての情報収集の他、現地の法律・規制動向に通じる外部の法律事務所等を起用し、当該リスクの発生につながり得る動向を早期に把握できるようにしております。
c 当該地域・国の政情に不安が生じる
経済動向の把握と同様、現地における事業や現地勤務社員の日常生活を通じて政情の変化があればそれを早期に察知し、撤退を含めた必要な行動を取れるような体制としております。
d 当該地域・国において大きな自然災害が生じる
自然災害の影響の防止は手段が限定されますが、日本における対策と同様にBCPの体制を適用することで事業への影響を限定的にすべく想定しております。
e 当該地域・国において知的財産の侵害が起きる
日本における対策と同様、知的財産の保護のための必要な調査や手配を行っております。
f 当該地域・国における税制・関税に不利益な変化が生じる
経済情勢の動向把握の一環として税制についての状況も把握すべく努めており、仮に不利益な変化が生じる場合には当該地域・国における事業性を改めて精査すべく想定しております。関税については、事業を基本的には現地において完結できる体制とすることで影響を抑制すべく努めております。
また、各地域における財務諸表は日本円以外の通貨建てで作成されるため、連結財務諸表作成にあたっては円建てに換算することが必要となります。したがって、連結財務諸表数値は為替相場の変動による影響を受ける可能性があります。当社では、為替リスク管理方針を策定しており、今後必要に応じたヘッジ取引を行うことを検討してまいります。
⑦ 固定資産の減損リスクについて(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループは、HDマップやモービル・マッピング・システム(MMS)をはじめとした固定資産について、今後減損損失の認識をすべきであると判定され、減損損失を計上した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。固定資産の計上対象につき厳選し、業績への影響を抑制すべく努めております。
⑧ 自動車出荷台数の低下リスクについて(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループの主要な販売先は自動車メーカーであり、当該販売先への売上高はHDマップ搭載車のメーカー出荷台数に依存しております。そのため、景気動向などのマクロ環境の変化や、原材料価格の高騰や部材調達難に伴う供給能力の減少などに伴う自動車への需給変化が当社想定を上回って推移する場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。台数情報につきより最新の見通しを把握し、業績予想に常に最新情報が織り込まれるようにすることで、業績影響を抑制すべく努めております。
⑨ 業績の季節変動リスクについて(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループの事業は、3月を年度末として納入・売上計上がその年度末前後となる多くの企業や自治体を取引先としており、年度末に売上が集中する傾向があります。また、一定の期間にわたって履行義務が充足される開発プロジェクト契約では、履行義務の充足に係わる進捗度に基づき収益を認識しておりますが、一部業務を外注している場合、当該外注業務の検収をもって履行義務が充足し、収益を認識することとなります。これらの外注業務の納入のタイミングは年度末近くに集中する傾向があるため、その結果として履行義務の充足、売上計上のタイミングが年度末に集中する傾向にあります。当社グループでは、取引先や売上計上の観点でのビジネスモデルの多様化の一層の推進により売上計上時期が平準化されるよう努めております。一方で、季節変動による下振れ幅が想定よりも顕著な場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ プロジェクト進捗の遅延による業績見通しへの影響について(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループは開発プロジェクトに係わる案件においては、履行義務の充足に係る進捗度に基づき収益を認識しております。当該進捗度の見積にあたっては、対象期日までに発生した工事原価が、予想される工事原価の合計に占める割合に基づいて行っております。当社グループは、案件ごとに継続的に進捗状況に応じて見積総原価や予定案件期間の見直しを実施するなど適切な原価管理に取り組んでおりますが、その見積総原価や案件の進捗率は見通しに基づき計上しているため、修正される可能性があり、それらの見直しが必要になった場合は、売上計上時期の変更等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 収益の不確実性について(顕在化可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期無し)
本書提出日現在、当社グループにおいて継続的に商談を行っているオートモーティブビジネス領域のパイプライン(上記「第2 事業の状況 3経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)当社グループの強み ③今後のパイプラインを生み出す顧客基盤」に記載されたものを含みます。)は、段階別に「契約済み」、「RFQ:Request for Quotation」、「RFI:Request for Information」、「商談中」に分類されます。「契約済み」のパイプラインは法的拘束力のある契約を締結している状況を指し、顧客への役務提供時期や販売価格を含む諸取引条件が顧客との間で明確化されております。ただし、法的拘束力のある契約であっても、一般に、当社グループによる契約違反、不可抗力的な外部要因等を理由として、顧客側より解除される可能性があります。契約が解除された場合、当社グループは、当該契約から得られるはずであった潜在的な収益の全てまたは一部を失う可能性があります。また、「契約済み」パイプラインのうち、プロジェクト型に区分されるものについてはその契約金額が契約書上明記されておりますが、収益計上金額及び収益計上時期は実際の当社グループによる役務提供の成果により変動する可能性があります。また、「契約済み」パイプラインのうち、ライセンス型に区分されるものについては、1台あたりのライセンス単価は契約上明記されているものの、ライセンス台数については実際の自動車販売台数により変動し、結果として、収益計上金額及び収益計上時期が変動する可能性があります。「RFQ:Request for Quotation」の段階にあるパイプラインは顧客からの見積依頼書(RFQ:Request for Quotation)を受領し、その回答を行っている状況を指し、当該見積依頼書や回答自体には法的拘束力はなく当該見積依頼書や回答に基づく契約が将来締結される保証はありません。一般に、自動車業界においては数年先のサービス提供開始を見据えて開発契約や生産計画が検討されることが多く、見積依頼書(RFQ:Request for Quotation)を受ける時点においては当該パイプラインの具体性が高まっている状況にあると考えられるものの、見積依頼書に対して回答を行った取引内容や販売条件等がその後変更または失注となり、当社グループが想定する収益につながらない可能性があります。「RFI:Request for Information」の段階にあるパイプラインは顧客から情報提供依頼書(RFI:Request for Information)を受領し、その回答を行っている状況を指し、当該情報提供依頼書や回答自体には法的拘束力はなく当該情報提供依頼書や回答に基づく契約が将来締結される保証はありません。すなわち、「RFI:Request for Information」の段階は、見積依頼書(RFQ:Request for Quotation)受領に至る前段階であり、当該情報提供依頼書への回答で行われた取引内容や販売条件等は「RFQ:Request for Quotation」及び「契約済み」に進捗する段階においてその後変更または失注となり、当社グループが想定する収益につながらない可能性があります。「商談中」の段階にあるパイプラインは、現時点で具体的な条件面でのやり取りに至っておらず、初期的な商談が開始された状況を指し、具体的な収益計上金額及び収益計上時期について現時点で明確となっている事項はありません。
本書提出日現在、当社グループにおいて継続的に商談を行っている3Dデータビジネス領域のパイプライン(上記「第2 事業の状況 3経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)当社グループの強み ③今後のパイプラインを生み出す顧客基盤」に記載されたものを含みます。)は、段階別に「契約済み」、「商談中」に分類されます。「契約済み」のパイプラインは法的拘束力のある契約を締結している状況を指し、顧客への役務提供時期や販売価格を含む諸取引条件が顧客との間で明確化されております。ただし、法的拘束力のある契約は、一般に、当社グループによる契約違反、不可抗力的な外部要因等を理由として、顧客側より解除される可能性があります。契約が解除された場合、当社グループは、当該契約から得られるはずであった潜在的な収益の全てまたは一部を失う可能性があります。また、「契約済み」パイプラインのうち、プロジェクト型に区分されるものについてはその契約金額が契約書上明記されておりますが、収益計上金額及び収益計上時期は実際の当社グループによる役務提供の成果により変動する可能性があります。「商談中」の段階にあるパイプラインは、「契約済み」に至るまでの様々な段階で交渉が継続している状況を指します。パイプラインによっては具体的な諸取引条件について明確になりつつあるものも含まれますが、いずれも法的拘束力のある契約の締結には至っておらず、今後の契約締結及び収益計上について何ら保証されるものではありません。
以上より、各段階にあるパイプラインが当社グループの想定するタイミングや取引条件で契約締結に至らない場合、契約締結に至った場合でも顧客により当該契約が解除された場合及び当社グループの想定するタイミングや条件・数量での取引が実施できない場合、実際の収益計上金額や収益計上時期が現時点で当社が想定しているものと異なる場合、為替が大幅に変動した場合等には、当社グループが現時点で想定する収益計上金額及び収益金額を実現することが難しくなり、当社グループの事業、業績及び財政状態に 深刻な影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 特定の販売先への依存について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループ、特に当社子会社であるDynamic Map Platform North America, Inc.は、販売先においては北米を中心にハンズフリー運転を可能にする先進運転支援システム「Super Cruise™」の搭載を拡大しているGeneral Motors CompanyにHDマップを提供していることから、同社向けの売上が過半を占めております。当社グループは、他の取引先への販売金額を拡大し、特定の販売先に依存しないよう営業活動を展開しており、それにより当該販売先への依存は低減方向にありますが、当該販売先との関係悪化、及び当該販売先の業績悪化等による事業活動に大きな変化が生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑬ 特定の外注先への依存について(顕在化の可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループは、HDマップ作成にあたって求められる技術水準を有する外注先を選定しており、特定の外注先への発注比率は低下傾向にはあるものの、図化業務及び計測業務においては特定の外注先への発注比率が比較的高くなっております。当社グループでは、外注候補先の拡充や内製プロセスの一層の活用を通じ、特定の外注先に過度に依存しない体制を構築してまいりますが、当該外注先の業績悪化等による倒産や事業活動に大きな変化が生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑭ 国内自動車メーカー向け販売活動について(顕在化の可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
日本国内における当社の国内自動車メーカー向けの販売活動は、地図会社又はシステムメーカー等の一次代理店を中心に推進しております。現時点において、各一次代理店とは良好な関係にあり、直接販売チャネルについても構築を進めておりますが、当該一次代理店と関係悪化や当該代理店の業績悪化等による倒産や事業活動に大きな変化が生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑮ 品質管理について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループは、品質管理専門部署を設置し、専任担当を置く等、一定の品質管理体制を整備し、安全性を確保できるように努めております。一方で、HDマップ搭載車における自動車事故などが生じ、当該事故原因がHDマップの不具合(経時的な変化によらないHDマップと現況との不一致など)にある場合、当社グループは製造物責任法等に基づき、損害賠償請求の対象となる可能性があります。しかしながら、一般的に自動車メーカーは自動運転・先進運転支援システムの中で、自動車に搭載される各種センサーの情報をHDマップと組み合わせて冗長性にも優れたシステムを構築しており、事故原因がHDマップのみに帰する可能性は高いとは言い難いと考えております。当社グループでは、販売先との契約において、賠償等を含む損害について当該取引において受領した対価を上限とする等の対応をしておりますが、契約上、当該上限の設定がない販売先もあり、損害賠償請求の対象となった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑯ 事業に関連する法的規制について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループは、独占禁止法等、日本及び諸外国において、様々な法律及び規制に服しております。当社グループは、コンプライアンス体制の充実が重要であると考えており、コンプライアンスに関する社内規則の策定や各種研修の実施により社内での周知徹底を図るとともに、法務担当部門による情報収集を行い、また日本及び米国において顧問弁護士を雇い、日本及び米国を含む諸外国の法規制に関する情報提供を受け、これら法規制について適宜相談できる体制を構築しております。しかしながら、将来において独占禁止法等の法律・規制に抵触した場合、あるいは予期せぬ法規制の変更、行政の運営方法の変更などが生じた場合、新たな対応コストが生じ、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑰ 株主間契約について(顕在化の可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社は、2019年に当社の事業運営等にも関わる 主要な株主7社との間で、当社事業を効果的に立ち上げ運営すべく定められた株主間契約を締結しました。当該契約においては、株主による当社への事業支援、競業避止義務や事業機会の優先権付与等が定められており、当社は当該契約の存在によりそれら便益を享受しております。当社が株式の上場申請を行って以降、当社の役員体制や株主への報告事項、株主による質問検査権、事業運営における協力や競業避止等の主要条項につき効力停止となり、それら条項の効力は、すべての契約当事者との間で当社の株式上場により完全に終了しました。株式上場により当社の経営の独立性を一層確保する観点から、従前よりそれら便益の享受を得ることがなくなることへの備えを進めてきておりますが、想定とは異なる影響がある場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、主要な株主7社のうちジオテクノロジー株式会社は、当社株式の上場に際して行われた売出しにより保有する全株式を売却しており、同社は当社の株式を所有しないこととなり、同社との関係における株主間契約は終了しております。
⑱ 資金繰りについて(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループは、④ HDマップの整備・更新に係る投資が先行し、赤字を計上するリスクについてに記載のとおり、設立以来赤字を継続しており、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスの状況にあります。今後も、HDマップの整備の拡大、更新等を中心とした投資需要が継続する想定です。これは当社北米子会社のDynamic Map Platform North America, Inc.においても同様であり、当社からの追加出資により事業運営が行われております。
上記状況の中、当社は設立以来、株式発行及び銀行からの負債による資金調達を継続的に行ってまいりました。負債による資金調達においては、調達先、調達スキーム、契約内容、契約期間等を分散させることに留意しながら調達を行ってまいりました。また、直接の借入だけではなくコミットメントライン契約も締結することで、資金量が減少する局面において、短期間で追加的に資金を確保する体制も整えております。今後も事業運営に必要な資金を見通し、市場環境を見極めた上で、継続的に資金調達を行ってまいります。
今後は、グループ全体で収益性の向上を図ることで営業キャッシュ・フローを改善し、また、引き続き必要に応じ適切なタイミングで資金調達を行うことで、財務基盤の強化を図る方針ですが、当社グループを取り巻く経営環境の急激な変化や本「事業等のリスク」に記載されたリスクが顕在化することにより、収益性の向上が想定通りに進まなかった場合、キャッシュ・フローが改善せず、当社資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。
(2) 経営管理体制に関するリスク
① 社歴が浅いことについて(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社は2016年6月に設立されており、現在第9期と社歴の浅い会社であります。当社グループは今後も経営状況を継続的に開示してまいりますが、事業の初期段階・成長段階にあることから当社グループの過年度の経営成績は年度毎の変動も少なくなく、また比較対象とできる期間業績が限定的であることから期間業績比較を行うための十分な材料とはならず、過年度の実績のみでは今後の業績を判断する情報としては不十分な可能性があります。
② 内部管理体制について(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループは、企業価値の持続的な向上にむけて、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。また、当社グループはDynamic Map Platform North America, Inc.など海外子会社を通じて、北米、欧州、中東、韓国の各国で事業を展開しておりますが、子会社管理の責任者であるコーポレート統括執行役員及び子会社管理を担当する関連各部署の担当者が海外子会社の責任者との情報共有を密にし、現地の経済・社会情勢に関する情報を収集して事業展開への影響を把握しております。今後も業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、各社内規則及び法令遵守を徹底してまいりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追い付かない場合には、適正な事業運営が困難となり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 優秀な人材の獲得・育成について(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループは、当社グループの将来にわたる持続的成長に向けて、優秀な人材の採用と育成が欠かせないものと認識しております。また、当社は設立当初より株主からの出向者も受け入れておりますが、独立した事業体として社員のプロパー化を推進してまいりました。斯かる状況から、今後も積極的な採用活動を行っていく予定でありますが、当社グループの求める人材が十分に確保されなかった場合や人材の流出が進んだ場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 知的財産管理について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループは、第三者の知的財産権を侵害することなく事業運営を行う体制を整備しておりますが、当社グループが知的財産権の侵害を理由に第三者から訴訟の提起等を受け、これを斥けられなかった場合、これらに対する対価の支払いやこれらに伴う当社グループの提供データの販売若しくは使用の中止、第三者からの不利な条件でのライセンスの取得等が必要となる可能性があります。これらの対応により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 安全保障に係る管理について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
HDマップに関しては、国によって規制の在り方が異なっております。当社グループがHDマップを供給する国については、各国の弁護士等の専門家と密に連携を取り、各国の規制について事前に調査・確認を行い、当該規制に従ってHDマップの供給を行うこととしております。現時点で当社グループがHDマップを供給している一部地域において、当社グループのHDマップの整備や提供にあたり、安全保障上当局等からの許可が必要とされ、既に当局の許認可を取得しております。
今後も、国によっては、HDマップの整備や国外への持ち出し等について当局からの許可を必要とするなどの規制が存在する場合があり、将来において、これらの規制が存在する国でHDマップを整備・供給する場合、または現在規制のない国において、これらの既存の規制が変更され、あるいは新たな規制が制定されるなどし、当該規制に対応する必要性が生じた場合、これらの対応を実施するための対応コストが発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 個人情報に係る管理について(顕在化の可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループは顧客情報や従業員情報の他、HDマップ作成時に取得される人物の顔等の個人情報を管理しております。当社グループでは、個人情報管理規則を定めた上で、入退室管理等の物理的安全管理措置、アクセス制御や外部からの不正アクセス等の防止等の技術的安全管理措置により、個人情報を厳格に管理しております。
一方で、万が一、これらの個人情報が外部からの不正アクセスや業務上の過失等により、当社グループまたは業務委託先から外部に流出し、不適切な利用や改ざん等が発生した場合には、当社グループへの損害賠償請求や当該流出への対応に多額の費用が必要となる他、社会的信用が毀損されるなどにより、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) その他のリスク
① 自然災害、事故等に関するリスク(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループでは、大規模な自然災害や事故等が発生した場合に備え、HDマップに係るデータはクラウド上に保管する、あるいは定期バックアップを行うなど、BCP対策を講じており、事業継続に対する影響を最小限に留めるよう努めておりますが、当該災害、事故等の発生によりデータに毀損が生じた場合には、HDマップデータの再整備が必要になる可能性がある等、事業の継続に支障が生じ、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 公募増資による調達資金使途について(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
新規株式上場時に実施した公募増資による調達資金の使途については、オートモーティブビジネス及び3Dデータビジネス向け高精度3次元位置情報の整備更新、海外事業拡大のための子会社宛投融資、研究開発に充当する予定であります。しかしながら、経営環境の急激な変化等により、上記の資金投入から想定通りの効果を得られない可能性があります。また、市場環境の急激な変化により、調達資金を上記以外の目的で使用する可能性があり、その場合は速やかに資金使途の変更について開示する予定です。
③ 配当政策について(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社は創業以来配当を実施しておらず、当面も事業拡大のため、内部留保による財務体質の強化及びHDマップの整備範囲の拡大、HDマップの整備コスト削減に向けた研究開発といった投資を優先する方針です。株主への利益還元についても重要な経営課題として捉え、財政状態及び経営成績を勘案しつつ配当の実施を検討してまいりますが、利益計画が当社グループの想定通りに進捗せず、今後安定的に利益を計上できない状態が続いた場合には、配当による株主還元が困難となる可能性があります。
④ 税務上の繰越欠損金について(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループは、2025年3月末時点において25,938百万円の税務上の繰越欠損金が存在しております。当社グループの業績が順調に推移することにより繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 財務制限条項について(顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:数年以内)
当社グループの主要な借入金に係る金融機関との契約には、財務制限条項が付されています。これらに抵触した場合には期限の利益を喪失する等、当社グループの財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。財務制限条項の詳細につきましては「第5 経理の状況」に記載しております。
⑥ ベンチャーキャピタル等投資事業者の株式所有割合に伴うリスクについて(顕在化の可能性:高/影響度:大/発生時期:数年以内)
当社の発行済株式総数に対するベンチャーキャピタル等の投資事業者の所有割合(ベンチャーキャピタル、ベンチャーキャピタルが組成した投資事業有限責任組合、政府系投資ファンド等を含む)は2025年3月末時点において55.6%であります。当社の株式公開後において、投資事業者が所有する株式の全部又は一部を売却する可能性があります。特に投資事業者が所有する株式の過半を所有する株式会社INCJは、旧産業競争力強化法と同趣旨の枠組みのもと2025年3月末までを活動期間としており、活動期間終了までに投資資産(当社株式を含む)の処分を実施することを目標に設定していましたが、投資資産の処分は経済事情及び投資先の事業の状況等も考慮した上で検討されるため、必ずしも2025年3月末までに全ての投資資産の処分が実施されたわけではありません。株式会社INCJは、2025年3月末以降も含め、株式市場で当社株式の売却を行う場合には、株価下落圧力とならないような譲渡または売却方法を可能な限り模索するとのことですが、当社株式の全部又は一部が短期間で売却される場合、株式市場における当社株式の需給バランスが短期的には損なわれ、当社株価に影響を及ぼす可能性が有ります。
⑦ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:数年以内)
当社グループでは、当社グループの役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しており、今後も優秀な人材の獲得に向けてさらなる新株予約権の付与も検討しております。これらの新株予約権が行使された場合には、既存株主が保有する株式価値が希薄化する可能性があります。本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は2,807,800株であり、発行済株式総数23,624,850株の11.88%に相当しております。
⑧ 当社株式の流動性について(顕在化の可能性:中/影響度:中/発生時期:1年以内)
当社は、東京証券取引所グロース市場への上場に際しての公募増資及び売出しによって当社株式の一定の流動性を確保しておりますが、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は25%以上であるところ、2025年3月末時点における流通株式比率は32.0%にとどまっております。
今後は、大株主への一部売出しの要請、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加等を勘案し、これらの組み合わせにより、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 訴訟等について(顕在化の可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループは、本書提出日現在において、訴訟を提起されている事実はございません。一方で、事業運営の中で当社グループが提供するソフトウェア・データの不備等により、何らかの問題が生じた場合等、これらに起因した損害賠償請求や訴訟の提起がなされる可能性があります。その場合、当社グループの社会的信用が毀損され、また損害賠償の金額、訴訟内容及び結果によっては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、現在成長段階にあると認識しており、財務体質の強化及び事業の拡大発展に向けた事業基盤整備に取り組むため、内部留保の充実が重要であると考え、会社設立以来配当を実施しておらず、当事業年度においても配当は行っておりません。しかしながら、株主への利益還元については、重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態、事業基盤整備の状況を勘案しつつ、剰余金の配当を行うことを検討していく方針であります。剰余金の配当を行う場合には、取締役会決議によって行うことができる旨を定款にて定めている会社法454条に規定する中間配当(毎年9月30日を基準日とする)及び期末配当の年2回を基本的な方針としますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。内部留保資金につきましては、収益力強化や事業基盤整備のための投資や今後の成長に資する人員の採用等に有効活用していく方針であります。