2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    2,781名(単体) 20,279名(連結)
  • 平均年齢
    46.2歳(単体)
  • 平均勤続年数
    21.9年(単体)
  • 平均年収
    8,139,000円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

マテリアル

9,497

(589)

繊維・製品

5,724

(346)

ヘルスケア

2,634

(501)

その他

1,928

(254)

全社

496

(58)

合計

20,279

(1,748)

(注)1 従業員数は就業人員です。

      2 従業員数欄の( )は、臨時従業員の年間平均雇用人員を外数で記載しているものです。

3 当社は当連結会計年度において、2024年10月22日にIT事業を譲渡しています。なお、2024年3月31日現在におけるIT事業の従業員数は902名です。

(2) 提出会社の状況

 

 

 

 

2025年3月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

2,781

(208)

46.2

21.9

8,139

 

セグメントの名称

従業員数(名)

マテリアル

1,661

(100)

ヘルスケア

48

(4)

その他

576

(45)

全社

496

(58)

合計

2,781

(208)

(注)1 従業員数は就業人員です。

2 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

3 従業員数欄の( )は、臨時従業員の年間平均雇用人員を外数で記載しているものです。

 

 

(3) 労働組合の状況

特記すべき事項はありません。

 

 

(4) 女性活躍推進法及び育児・介護休業法に基づく指標

 帝人グループは、多様な人財を活用することが創造性を高めるとともにインクルーシブな企業風土を醸成すると考え、2000年より女性の活躍の推進等に積極的に取り組んできました。事業を取り巻く環境の変化、人々の価値観の変容を踏まえ、帝人グループに集う多様な従業員が、それぞれの人間的成長や豊かな人生を実現できるよう、魅力的な働く環境を整備しています。

 

(管理職に占める女性労働者の割合に関する説明)

帝人グループでは、女性リーダーの育成・登用促進に注力しております。日本においては、女性の採用強化、育児との両立支援、健康リテラシー向上セミナー等の様々なライフステージに応じて女性が自分らしく働き続けるための定着支援に加え、管理職手前層を対象に事業横断での女性リーダーシップ研修やメンタリング等によるキャリア支援強化にも取り組んでおります。その結果、改善の方向にはありますが、職級が高くなるに従い、同一職級の中でも女性比率が低くなる傾向があるため、より一層の育成・登用に取り組みます。

 

(男性労働者の育児休職取得率に関する説明)

  帝人グループでは、性別に関係なく誰もが育児支援の制度を利用できる企業風土の醸成に取り組んでいます。当社では、2022年度に育児休職取得時に男女共に最大55日間給与が支給されるように制度を改定し、トップマネジメントによる育休取得推奨のメッセージ発信や、男性の育児休業取得者の経験談を社内イントラネット等で周知するなどの取り組みをしてまいりました。結果、男性の育児休業取得率は71.4%(2024年度)と前年度より下がったものの一定の水準を維持しながら、育児休業取得者の平均取得日数は7日(2022年度)から27日(2024年度)まで増加しました。今後も、これらの取り組みをより一層進め、引き続き性別に関係なく誰もが育児支援の制度を利用できるように促進していきます。

 

(労働者の男女の賃金の差異に関する説明)

賃金差異の実態については下記の通りと認識しています。

 ①職級が高くなるに従い、同一職級の中でも女性比率が低くなります。このような労務構成が男女の賃金差異

に繋がっています。

    ②基本給以外の諸手当の支給実績で男女差があるケースがあり、これが男女の賃金の差異に繋がっています。

当社では、従業員における女性比率は20%(2024年度)ですが、主たる生計維持者に支給される家族手当や住宅手当、単身赴任者に支給される単身赴任手当や帰宅旅費手当は、実態として男性に多く支給されており、これら手当の総支給額のうち、女性への支給額は全体の12%でした。

③育児や介護のための短時間勤務制度を利用する男性従業員は少なく、これが男女の賃金の差異に繋がっています。当社では、育児短時間勤務・介護短時間勤務の男性の利用者割合は、それぞれ9%、0%でした。

賃金差異は、差異縮小の方向にありますが、上記の実態把握の中で判明した男女の賃金差異を生じさせる原因を把握し、引き続き女性管理職の計画的な育成と登用、ジェンダー意識の改善、また人事制度の更なる検討の余地を探るなど、賃金差異の縮小に積極的に取り組んでまいります。

 

 

当社(提出会社)及び連結子会社(国内)の多様性に関する指標は以下のとおりです。

 

 

①提出会社

女性管理職比率

男性育児休業の取得率

男女賃金差異

全労働者

正社員

パート・有期社員

7.8

71.4

78.2

81.2

59.9

 

 

②連結子会社

会社名

女性管理

職比率

男性育児

休業の取

得率

男女賃金差異

全労働者

正社員

パート・

有期社員

帝人フロンティアニッティング(株)

 

-

200.0

 

-

 

-

 

-

帝人コードレ(株)

0.0

100.0

80.9

80.4

63.1

帝人フロンティア(株)

6.2

61.5

59.1

60.0

68.0

帝人物流(株)

4.0

 

-

 

-

 

-

 

-

帝人ファーマ(株)

8.2

62.1

49.8

71.4

37.3

帝人ヘルスケア(株)

12.5

36.0

79.3

80.4

87.6

(株)ジャパン・ティッシュエンジニアリング

34.0

66.7

73.5

74.5

48.3

帝人ナカシマメディカル(株)

4.0

33.3

65.3

73.1

57.6

帝人エンジニアリング(株)

4.3

 

-

 

-

 

-

 

-

帝人エコ・サイエンス(株)

 

-

50.0

 

-

 

-

 

-

(注)1 対象期間:2024年度(2024年4月~2025年3月)。但し、女性管理職比率は2025年3月末時点の比率を示しています。

2 賃金:基本給、賞与、時間外労働手当のほか各種手当(通勤手当は除く)の合計額(退職手当は除く)

3 パート・有期社員:パートタイマー、嘱託等(派遣社員は除く)。なお、パートタイマーの人員数は労働時間をもとに換算して算定しています。

4 海外出向者: 出向先が実質的な賃金を負担しているため集計から除外しています。

5 女性管理職比率及び男女賃金差異は、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に定める方法により算出しています。

6 男性育児休業の取得率は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則第71条の6第1号に定める方法により算出しています。なお、帝人フロンティア(株)は同規則第71条の6第2号に定める方法により算出しています。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

帝人グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。

 

(1)重要課題に関する取り組み

帝人グループは、パーパス「Pioneering solutions together for a healthy planet」を軸に、地球環境とあらゆる生命が健康である「Healthy Planet」の実現を目指しています。社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ(持続可能性)を巡る課題から自社にとっての機会とリスクを整理し、以下のとおり、重要社会課題と重要経営課題を特定して、取り組みを推進しています。

 

重要社会課題

1) 気候変動の緩和と適応

2) サーキュラーエコノミーの実現

3) 人と地球社会の安心・安全の確保

4) 人々の健康で快適な暮らしの実現

重要経営課題

5) 持続可能な経営基盤のさらなる強化

 

①ガバナンス

サステナビリティに関する活動の責任者として、人事・総務/サステナビリティ管掌を定め、取締役会の指示・監督のもと、事業と一体化したサステナビリティの取り組みを推進しています。サステナビリティに関する方針や重要課題は、取締役会における決議事項であり、それらの方針に沿ったサステナビリティの取り組みは、執行側で管理指標も設定して進め、その対応状況については、適宜、CEOまたは人事・総務/サステナビリティ管掌から取締役会に報告され議論を行っています。さらに、サステナビリティに関する課題に迅速かつ適確に対応するため、CEOの下に「サステナビリティ・コミティー」を新たに設置し、サステナビリティに関する方針の検討や推進に取り組んでいきます。サステナビリティ・コミティーを含むコーポレート・ガバナンス体制図は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

②戦略

重要社会課題を事業の成長機会と捉え、社会が必要とする新たな価値を創造・提供していくことで、事業と社会の持続的な発展を目指します。

1) 気候変動の緩和と適応

「気候変動の緩和」では、高機能・高付加価値材料によるモビリティの軽量化や高耐久化を中心としたソリューションを提供します。「気候変動への適応」では、高機能素材によるインフラ補強材や、DXも駆使したヘルスケアサービス等を通し、自然災害発生時の被害低減と迅速な復旧に役立つソリューションの提供に取り組みます。また、事業活動に伴う地球環境への負荷低減として、脱石炭火力を図るとともに、省エネルギー・再生可能エネルギー化の推進やプロセスイノベーション等の技術革新にも取り組みます。

2) サーキュラーエコノミーの実現

高性能タイヤ補強材やコンベヤーベルト等、製品の長寿命化につながる「高耐久・高品質素材」や、ポリエステル繊維やアラミド繊維等の「リサイクル技術」の提供を通じて、バリューチェーン全体での資源循環性の向上に貢献します。また、事業活動に伴う資源循環の取り組みとして、リユース、リサイクル等による廃棄物の削減や、水使用量の少ない製品の拡大と事業活動における水の効率的利用に努めます。

3) 人と地域社会の安心・安全の確保

火災の高熱にも耐えるアラミド繊維、地震災害時の天井落下リスクを軽減する超軽量天井材等、高機能素材による防災ソリューションを提供します。また、ナノレベルの微細技術を活用したフィルターや環境エンジニアリング等により、地球環境汚染の防止・浄化に貢献します。事業活動における生態系の破壊や環境汚染につながる有害化学物質については、把握と管理を徹底し、事業活動に伴う有害化学物質排出量を計画的に削減します。

4) 人々の健康で快適な暮らしの実現

医薬品・医療機器・医療材料等を総合的に活用し、人々の健康的で快適な生活を支えるソリューションを提供します。特に、希少疾患・難病等疾患領域を中心に、より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決するソリューションを提供していくことを目指します。また、安全と健康に配慮した職場環境を提供するため、労働災害の撲滅、長時間労働の是正、メンタルヘルスの向上に取り組みます。

 

また、重要経営課題については、「未来の社会を支える会社」になるという長期ビジョンの実現に向け、その礎となる経営基盤の強化に取り組んでいます。

 

5) 持続可能な経営基盤の強化

2025年6月25日をもって機関設計を変更(監査等委員会設置会社に移行)し、コーポレート・ガバナンス体制の更なる強化を図ると同時に、経営人財も内部育成に拘らず、積極的に外部人財を迎え入れることにより、高度な専門性と新しい視点・発想を得ることにより、より強固な経営基盤の構築に取り組んでいます。

詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

③リスク管理

 当社では、サステナビリティのリスクを、気候変動に伴う物理リスクを含む風水害、地震などの大規模自然災害リスク、人権問題などの社会リスク、重大不祥事などのコンプライアンスリスク、気候変動の移行リスクを含む各種サステナビリティに関わる政策、法規制の当社への影響などと捉え、トータル・リスクマネジメント(TRM)の枠組みの中で他のリスクと合わせて統合的にリスクを管理しています。詳細は、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④指標と目標

環境関連課題に対して、次の表のとおり長期的なKPIを設定しています。当社が掲げる温室効果ガスの削減目標は「2℃を十分に下回る目標水準(Well-below 2℃)」であるとして、パリ協定の定める目標に科学的に整合する温室効果ガスの排出削減目標「Science Based Targets(SBT)」の認定を受けており、長期目標達成のロードマップを設定して、ネット・ゼロの実現に向けて取り組んでいます。なお、各KPIに対する実績については当社ウェブサイト(https://www.teijin.co.jp/csr/materiality/)をご参照ください。

*1 CO2以外に、メタン、一酸化二窒素を含んでいます。

*2 当社製品使用による、サプライチェーン川下でのCO2削減効果を貢献量として算出しています。

*3 事業基盤を強化するKPIはいずれも2018年度を基準年とする目標値です。

*4 スコープ3排出量のうち、カテゴリー1(購入した製品・サービス)の商社ビジネスを除く範囲を対象としています。

 

 

(2)人的資本(人材の多様性を含む)に関する取り組み

帝人グループは、パーパス「Pioneering solutions together for a healthy planet」を軸に、長期ビジョン「未来の社会を支える会社」となることを目指しており、「帝人グループ 中期経営計画2024-2025」で示した経営戦略・事業戦略を「組織」と「人財」を通じて実現するため、次のとおり「人的資本の考え方」を策定しました。

 

<人的資本の考え方>

帝人グループは、「人財」を究極の経営資本と位置付けています。

・帝人グループに集う多様な社員が、それぞれの人間的成長や豊かな人生を実現できるよう、会社は魅力的な働く環境を整備し、社員の自律的なキャリア形成を支援します。

・事業の成長には、組織と人財の能力開発・発揮が不可欠であり、それに必要な「組織設計」「採用」「配置」「人財開発」「評価・処遇」等といった一連の人事施策を通じて、適所適材を実現します。

 

①ガバナンス

帝人グループは、全経営役員をメンバーとする「グループ人事/D&I会議」(2024年度は15回開催)にて、役員及びグローバルレベルで重要なポジションにおけるサクセッションプランの検討状況の共有や個別アサインメントの検討、経営者育成に向けた施策に関する議論を実施しています。

また、人的資本や多様性を含めた人事・人財育成に関わる事項のうち重要なものについては経営会議及び取締役会に報告されます。

これらの活動は、人事・総務/サステナビリティ管掌(CHRO)を責任者として、国内の人事部門の部長、事業本部の人事トップマネージャー等と連携して進めています。

 

②戦略(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)

経営戦略・事業戦略を実現するためには、組織及び人財の競争力を高める必要があります。そのため、人事戦略の大きな柱を、「戦略を実装する『適所』の確立と『適材』の確保」と「人財が活躍するための施策」としました。人事戦略の全体像は、次のとおりです。

 

[人事戦略の全体像]

 ■「戦略を実装する『適所』の確立と『適材』の確保」とそれに関する取り組みの狙い

a.社内グローバル人財の最大限活用

b.人財ポートフォリオの最適化

c.社員のキャリア自律

 これらを達成するため、日本を含むグローバルにおいては適所適材を実現するための施策、日本国内においては、職務に基づく評価・処遇制度(いわゆるジョブ型の人事制度)への改定等を進めていきます。

 

■「人財が活躍するための施策」とそれに関する取り組みの狙い

d.多様な視点からのイノベーション促進

e.社員エンゲージメント向上

 帝人グループの多様な人財が、自らの能力やスキルを最大限に発揮し生き生きと活躍できる環境を作るため、多様性をより一層富ませるとともに、社員エンゲージメントの阻害要因を特定し、改善アクションを設定、かつそれを実行していくことで、社員エンゲージメントの向上を図っていきます。

 

グループ全体の経営戦略に基づく各事業戦略の実行に適した組織を設計し、それぞれのポジションの職務を定義し、事業戦略を実行する人財を適所適材で確保し、グローバルで職務に適した処遇を行っていくことで、戦略の実現及び事業競争力の強化を目指しています。併せて、帝人グループに集う多様な人財が、経験や価値観等からアイデアや考えを出し合い、時には衝突しながらも、それを乗り越えてより良いソリューションやイノベーションを創出していくとともに、多様な人財がエンゲージメント高く生き生きと活躍し、自分らしいキャリアを実現していくための施策を実行しています。また、社員のキャリア自律を促すこと、グローバル適所適材を推進することにより、事業戦略に貢献する人財ポートフォリオを構築し、企業価値向上を図っていきます。

 

上記を実現するために、2024年度は主に以下の取り組みを進めました。

1)日本を含むグローバルでの適所適材の推進

[推進策の全体像]

 

a.戦略の実装に向けた組織設計

2024年度は、「帝人グループ 中期経営計画2024-2025」の事業ポートフォリオ変革に基づく事業構造改革を行い、事業戦略の早期実現に向けて事業ごとに最適な組織の在り方を検討してきました。2025年度以降は、事業ごとに設計した組織改変を着実に実施することに加え、海外を含めた帝人グループ全体で管理職以上のジョブグレードを整合させるための第一段階として、海外/国内の主要会社を対象にグローバルで共通のグレードを設定し、人財のモビリティの向上を目指します。

 

b.人財ポートフォリオの構築、最適化

事業戦略の早期実現に向けて、DX人財・グローバル人財・専門人財などの経営戦略・事業戦略の実現に必要なスキルや経験等を洗い出して整理し、各種スキルの強化・育成を進めています。

 

c.コアポストのサクセッションプランニングの遂行

役員のポストについては、各役員がサクセッションプランを策定した後、CEO及び人事・総務/サステナビリティ管掌との三者面談で確認したうえ、グループ人事/D&I会議にて議論をするというプロセスによって、サクセッションプランのアップデートを行い、そのギャップを埋めるための施策(採用、配置、人財開発)を実行しています。グループ人事/D&I会議の中で、役員ポジションを起点としたサクセッションプランにおけるコアポスト就任候補者の外部採用の可能性や、社内サクセッサーの戦略的配置についても議論し、ポジションに就任させるまでの育成を加速しています。部門長クラスについては、部門長本人がサクセッションプランを策定した後、各役員がアップデートさせ、人事・総務/サステナビリティ管掌と役員との事業別人事会議で議論を実施し、戦略的配置のほか、サクセッサー候補者の人財開発のための個別育成を実施します。2024年度はプランを着実に実行することで、ポストごとに設定している必要サクセッサー候補者数のカバー率(*)は2023年度74%から、2024年度は84%に向上しました。

* サクセッサーカバー率は、候補者数÷(ポスト数×各ポストに必要な候補者数(最大7名))で算出

 

d.グローバルジョブポスティングの拡充

社員がグローバルで自律的にキャリア形成できるよう、また、グローバルでの適所適材を推進する施策として、社内公募をグローバルに展開しています。2024年度は、日本とオランダの計4ポジションに対し、日本・ヨーロッパ・アメリカ・アジアから計6名の応募がありましたが、職務内容や期待役割、労働条件等とのマッチング不足から成立には至りませんでした。しかしながら、グローバルでの自律的なキャリア機会を社員に提供していくという会社の姿勢の明示に繋がりました。

また、日本では、1990年代から社内公募制度「ジョブチャレンジ制度」を実施しておりますが、2023年度より社内公募の活性化とともに社内のキャリア機会を知ってもらう取り組み「ジョブポスティングウィーク」(公募している部署の所属長がオンライン説明会などにより、職場や仕事の内容を紹介し、参加者と双方向のコミュニケーションをとることのできるイベント)を実施しています。

2024年度の募集件数は、日本とグローバル合計で105件となり、今後はグローバルでのジョブポスティングの一層の拡大を図っていきます。

 

2)日本における人事制度改革

[推進策の全体像]

 

a.職務に基づく評価・処遇の実現

2023年4月に役員層について、ポジションにおける役割・責任と処遇の関連性を明確にしたジョブ型人事・評価を導入しました。次いで、2024年4月に部門長以上の管理職について、職務の大きさ(幅、難易度、責任の重さなど)に応じて処遇を決める処遇制度に移行しました。2024年度は、その対象を広げ、部長以下の管理職についても移行に向けた準備を進め、2025年4月より制度運用を開始します。

これらの制度改定により、ポジションの職務内容を明確化し、職務に応じた処遇を実現することで、優秀人財の採用力を強化し、また社内では、適所適材となる人財配置や、個別の人財開発を促進します。

 

b. タレントアクイジション戦略

戦略を実現し、事業競争力を高めるためには、専門性の高い人財を獲得していく必要があります。帝人・帝人ファーマの2024年度の入社者におけるキャリア採用の割合は59.8%でした。2025年度以降、採用方法の多様化を進め、事業のニーズに適した専門性の高い人財の確実な採用を図っていきます。

 

c.自律的なキャリア形成/成長支援

社員の自律的なキャリア形成を促すことは、会社と社員の健全な関係のベースとなるものであり、社員の社内・市場競争力を高めるための努力は、企業価値の向上に大きな貢献をするものであると考えています。

2025年度より、旧来の自己申告制度を改修し、今後のキャリア形成について本人・上司が話し合う場としてのキャリア面談制度を本格的に開始します。キャリア形成は自己責任ではあるものの、会社はキャリア形成をし易い環境を整えるなど、社員のキャリア自律を最大限にサポートする責任があります。2024年度は本格開始に先駆けて、「上司(面談者)向けキャリア面談の進め方研修」を開始し、2024年度内で128名の管理職の履修がありました。

また、前記「1) d. グローバルジョブポスティングの拡充」のジョブポスティングウィークでは、公募している部署の所属長が自身の部署と仕事の魅力をPRすることで、社内にどのようなキャリアの可能性があるのかを示しています。

このように、今後も社員の自律的なキャリア形成・成長支援を行っていきます。

 

 

 

 

3)人財が活躍するための施策

グローバルで帝人グループに集う多様な社員が、自らの能力やスキルを最大限に発揮し生き生きと働き活躍することが必要であり、社員が活躍できる環境を作るため、「DE&Iの推進」と「社員エンゲージメントの向上」を進めています。

 

a.DE&Iの推進

帝人グループは、多様な人財を活用することが創造性を高め、イノベーションを促進すると考え、2000年より女性の活躍の推進、外国籍の社員の採用などに積極的に取り組んできました。事業のグローバル化に伴い、日本を中心とした取り組みを世界に広げ、役員層の多様性推進のためのKPIを設定しています。役員候補のパイプライン形成、また部課長として活躍している女性を増やすため、事業本部ごとに女性部課長の比率目標を設定し、事業本部内での計画的な育成と登用を実施しています。また、女性が自分らしいリーダーシップを発揮できるよう、2024年度より企業横断クロスメンタリングを実施し、メンターからのアドバイスや示唆を受けて実際の業務の中で実行するというPDCAサイクルの中で、リーダーとしての成長を促しています。

帝人グループでは、毎年エンゲージメントサーベイを実施していますが、2023年度に実施したサーベイの結果からDE&Iの方針や考え方のグローバルでの浸透度に課題があることが分かり、2024年度は、下記「b.社員エンゲージメントの向上」に記載の通り、トップダウンとボトムアップ双方の取り組みを継続し、DE&Iの浸透と意識の向上を図っています。

障がい者活躍に関しては、特例子会社の帝人ソレイユで野菜・バラ・胡蝶蘭を中心とした農業事業と、オフィスサポート事業を実施し、障がい者一人ひとりの特性に応じた活躍の場を作っています。ハンディキャップがあってもそれぞれの持つ能力を最大限発揮することで、会社・事業に貢献するだけでなく、自らが経済社会を構成する労働者の一員であることに“やりがい”と“誇り”を感じられることを目指しています。特に農業事業においては売上増加及び営業利益黒字化を目標に販売拡大に取り組んでいます。なお、2025年3月時点での帝人・帝人ファーマ・帝人ヘルスケア・帝人ソレイユにおける障がい者の雇用率は2.86%で、法定雇用率である2.5%を上回っています。2021年度にはノウフク・アワード(*1)で特例子会社として初のチャレンジ賞を受賞、2023年度は「もにす認定」(*2)を受けました。

また、LGBTQ+当事者の活躍のため、2017年以降、①会社としての方針明示、②社員への啓発活動、③当事者に配慮した人事給与の制度改定、④当事者への支援の取り組みを実施してきました。①及び③は既に実施済であることから、②については、社員への関連映画や動画の展開、階層研修のテーマとして取り扱うなどの啓発活動に取り組み、④については当事者との個別相談などの支援を継続して実施しています。

上記のとおり、これまでは、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂性)を推進しておりましたが、社員の属性やニーズがさらに多様化している状況の中、今後は、一人ひとりがパフォーマンスを発揮できるよう、個々に合わせて支援内容を調整し、公平な土台をつくり上げる「エクイティ(公平性)」の施策も検討、実施しています。

   *1 障がい者をはじめとする多様な人々が農林水産業などの分野で活躍することを通じて持続可能な共生社会を生み出す農福連携(自然・農林水産業と人・福祉の連携)の取り組みを表彰する制度

   *2 障がい者の雇用の促進及び雇用の安定に関する取り組みの実施状況などが優良な事業主を、厚生労働大臣が認定する制度

 

[DE&I施策の全体像]

 

 

b.社員エンゲージメントの向上

事業戦略の実現には、社員一人ひとりが会社の理念に共感し、自身の仕事にやりがいを持って意欲的に取り組むエンゲージメントの高い組織を築く必要があり、年に1回、エンゲージメントサーベイを実施しています。

特に、事業ポートフォリオ変革やグローバル経営基盤強化等に取り組んでいる中、帝人グループ全体で“One Teijin”としてシナジーを創出することが急務であると考え、地域や事業ごとの取り組みに加え、グループ全体の強みと機会を特定し、エンゲージメントの向上に向けた取り組みを推進しています。2024年度は、日本・海外のグループ社員約19,500人を対象として実施し、回答率は76%と前年比+5%増加、エンゲージメントスコアは64と前年比2スコア上昇しました。すべての質問、事業、地域において前年比でスコアが改善もしくは維持されており、全社的にエンゲージメントの向上が見られました。

2024年度以降は、エンゲージメントスコアのKPIを設定することで、役員自らがエンゲージメント向上へコミットし、改善へ向けた取り組みを責任を持ってリードする体制を整えています。また、部課単位でのエンゲージメントサーベイの結果は上司から所属する社員にも共有され、チーム全体で改善点を対話した上で、対策を決定・実行することで、社員一人ひとりがエンゲージメント向上に向けた取り組みを進めています。

グループ全体のエンゲージメントスコアは社内イントラネット上に公開し、“One Teijin”でエンゲージメントの高い組織を築いていけるよう情報提供を進めています。

また、サーベイを通じて、社員からは部門や事業を超えたコミュニケーション機会を増やしていくことに期待する声が多く寄せられました。コミュニケーションに関しては、グループ全体でのタウンホールの開催や、パーパスワークショップを実施することで、社員一人ひとりが考えや想いを共有する場を定期的に設けており、グループ全体でコミュニケーション機会の創出に努めています。今後も現場の社員から役員層まで、全階層を巻き込んだ取り組みを推進することで、エンゲージメントの高い競争力のある組織を目指していきます。

 

③ リスク管理

帝人グループでは「人財」を究極の経営資本と位置づけ、人財が帝人グループの競争力の源泉の一つであると認識しています。そのうえで、人的資本を巡るリスクについては、コンプライアンス、労働慣行、健康・安全、DE&I、流動性、社員エンゲージメント、人財育成などの多くの要素が複雑に絡み合い、企業価値に与える影響は重大かつ多岐にわたっていることから、各社・各所の人事部門による対応のほか、帝人グループ全体のリスクとして捉え、トータル・リスクマネジメント(TRM)体制のもとで対応すべきリスク領域として位置づけ管理しています。詳細は、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

人事戦略の柱の一つである「人財が活躍するための施策」の状況を測るため、役員層・管理職層の多様性と社員エンゲージメントに関する指標を設定しています。計画的な育成と登用で役員層・管理職層の多様性を改善し、エンゲージメント改善アクションの設定と実行で社員エンゲージメントを向上させ、目標の達成を目指します。

なお、各KPIに対する実績については当社ウェブサイト(https://www.teijin.co.jp/csr/materiality/)にも掲載しております。

 

   [多様性に関するKPI]

多様性に関するKPI

2023年10月

2024年10月

2026年4月

2030年4月

実績

実績

マイルストーン

目標

役員*1

女性

12%

20%

20%

30%

外国籍

8%

8%

10%

30%

管理職*2

女性部課長

10%

11%

12%

20%

 

   [社員エンゲージメントに関するKPI]

社員エンゲージメントに

関するKPI

2023年9月

2024年9月

2026年4月*3

2030年4月*3

実績

実績

マイルストーン

目標

社員エンゲージメントスコア

62

64

64

68

*1 取締役、監査役(2025年6月以降は監査等委員である取締役)、グループ執行役員

*2 日本を含めたグローバルでラインポストに就く役職者

*3 前年9月実施分

 

(3) 知的財産に関する取り組み

帝人グループでは、知的財産は重要な無形の経営基盤の一つであるとの認識のもと、知的財産に関する基本方針を下記のとおり定め、事業戦略及び技術戦略と一体となって経営戦略に積極的に関与する知的財産戦略を遂行しています。また、中長期的な視点で各事業の知的財産戦略を策定し、これに基づいて知的財産を創造、保護及び活用することで、帝人グループの各事業がグローバル競争において優位に事業活動を展開できるようにしています。さらに、ここ数年で「知財インテリジェンス(意思決定に資する知財情報解析)」を帝人グループの最も重要な知財機能の一つとして強化したことによって、経営や事業における重要な意思決定にIPランドスケープを活用する取り組みが定着しています。

 

 [知的財産に関する基本方針]

(1)知的財産の創造

帝人グループは、グループ内外の研究開発等により創造された知的財産を、高い参入障壁となる「知的財産」および「知的財産権」として獲得且つ確立する。

(2)知的財産の保護

帝人グループは、事業戦略に基づいて知的財産を取得し、維持管理する。

(3)知的財産の活用

帝人グループは、知的財産の適正な評価に基づいて、事業戦略の一環として権利行使またはライセンスする。

(4)他者知的財産権の尊重

帝人グループは、自社事業の障害となる他者知的財産権に対しては、これを尊重しつつ必要な対応策を講じる。

(5)技術流出防止への対応

帝人グループは、技術流出を防止し、グローバルな技術競争力を維持する。

 

①ガバナンス

帝人グループの知財・無形資産に関するガバナンス体制としては、知的財産部は、経営戦略・事業戦略に対応した知財戦略に関する全社的な事項と各事業における知財に関連する事項を、事業本部等は、各部門の競争優位につながる事項を取締役会へそれぞれ報告することで、取締役会が、全社の知財・無形資産に関する戦略、投資活動を実効的に監督する体制を構築しています。本体制において、知的財産部は、海外グループ会社も含め各事業責任者と事業知財戦略会議を年2回の頻度で実施し、知財面からみた事業の強みと弱みの分析や、IPランドスケープを活用した競合比較、それに基づく課題と対策を議論することで、実効的な知財戦略の策定及び遂行をしています。さらに、知的財産部は帝人グループ全体の知財状況に加えて、事業知財戦略会議を通して集約された各事業の知財状況を、CEOが主催するグループ経営戦略会議で報告し指示を受けた事項に対応したうえで、取締役会へ報告し、監督を受けています。2024年度は、事業単位の知財戦略の報告に加え、全社の知財戦略についても経営層と知的財産部が議論を深めたうえ、今後目指すべき方向性を明確化するために、①帝人グループ各事業のプロダクトライフサイクル(PLC)の分析・評価及び各PLCにおいて採用するべき知財戦略、②地政学的評価を通した各事業環境状況、③知財価値創出力向上策、などについて取締役会に報告し、監督を受けました。

 

 

②戦略

1) 事業ポートフォリオ評価への知財情報活用

事業ポートフォリオの評価に際して、事業の属する技術分野における特許件数のCAGR(年平均成長率)と、事業の総特許価値(Patent Asset IndexTM)の情報を活用した、独自のプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)手法を用いることで、帝人グループ各事業の競争優位性や成長性、ライフサイクルの状況を知的財産の観点から客観的に可視化・評価し、その結果を事業ポートフォリオマネジメントに役立てる取り組みを実施しています。

 

使用ツール:PatentSight(LexisNexis社)

横軸:各事業が属する技術分野における自社の総特許価値(Patent Asset IndexTM(PAI))の割合(シェア)

縦軸:各事業が属する技術分野における生存特許件数のCAGR(年平均成長率)

バブルの大きさ:自社の各事業の総特許価値(PAI)

 

 

2) 経営陣・事業本部における知財情報活用に関する仕組み作り

経営や事業での重要な決定案件については、検討の初期段階からIPランドスケープによる客観分析を実施する仕組みを構築することで、知財情報を経営戦略や事業戦略に役立てる取り組みを実施しています。これにより、例えば投資判断時において、知財情報を意思決定プロセスに活用することで、その投資案件の合目的性をより客観的に判断できるようになります。

 

③リスク管理

第三者から知的財産権侵害の指摘を受け、製造販売の差止めや損害賠償等が生じた場合または帝人グループが保有する知的財産権が第三者によって不法に侵害された場合に、帝人グループの業績に影響が生じる可能性があります。また、帝人グループが営業秘密として管理する未公開の技術ノウハウ等が第三者によって不正に取得された場合に、帝人グループの競争優位性が損なわれる可能性があります。

このような知的財産に関するリスクについては、トータル・リスクマネジメント(TRM)体制においても全社共通のリスク分類に従って抽出・管理(詳細は「3 事業等のリスク」をご参照)すると同時に、次のような管理を行っています。

1)帝人グループに関連する事業分野において他社が保有する知的財産権を定常的に監視するとともに、帝人グループ知的財産権の侵害被疑品に対しては正当な権利主張を行っています。

2)営業秘密管理の帝人グループ統一基準である「グループ営業秘密管理ガイドライン」等に基づく管理と、定期的な管理状況の監査により、厳格な営業秘密の管理を行っています。

 

 

(4) 社会貢献活動

 帝人グループ社会貢献基本方針に則り、自然との調和を大切にし、地域コミュニティとともに発展するため、よき企業市民として事業特性や地域性を尊重した適切な社会貢献活動を推進しています。主な活動は以下の通りです。

[学術・教育]

・若き科学技術者の育成を目的とした「帝人奨学会久村奨学生制度」や、中国の南通地区の学生を支援する「南通帝人愛心慈善助学基金」などの奨学金制度を運用しています。

・「科学甲子園 全国大会」に協賛し、科学技術系人材の育成を支援しています。

・国内グループ社員から提供された、不要になった物品を換金して日本の絵本を購入し、海外の図書館等に寄贈する「ブック・ドリーム・プロジェクト」を2008年度から継続して行っています。

    [健康・スポーツ]

・「全国高校サッカー選手権大会」に協賛し、区大会で優勝し全国大会に出場する高校に帝人グループの人工皮革「コードレ」を使用したオリジナルサッカーボールを寄贈しています。

・東南アジア諸国におけるサッカークリニック開催などの活動を通じて、子供たちに夢を与えるとともに日本とアジアのサッカーの発展を支援しています。

    [環境保全活動]

・全国の小学生を対象に実施している環境教育「みどりの小道」環境プロジェクトに協賛し、小学生たちが日ごろから身近な地球環境について考えるきっかけを提供しています。

    [被災地支援]

・自然災害によって被災された方の支援や被災地復興に役立てていただくことを目的に寄付や製品の無償提供を行っております。また、「令和6年能登半島地震・豪雨災害」に対して被災地に対する復興支援を行いました。